(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055880
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】テレケリックポリウレタン、その調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C08G 18/66 20060101AFI20240412BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240412BHJP
C08G 18/50 20060101ALI20240412BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240412BHJP
C08G 18/12 20060101ALI20240412BHJP
C08G 18/40 20060101ALI20240412BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20240412BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20240412BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C08G18/66
C08G18/42
C08G18/50 021
C08G18/32 025
C08G18/12
C08G18/40 009
C08G18/32 093
C08G18/73
C08G18/75 010
C08G18/75 080
C08G18/76 057
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151996
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】202211225537.9
(32)【優先日】2022-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】592112352
【氏名又は名称】中国科学院蘭州化学物理研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100096758
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100114845
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 雅和
(74)【代理人】
【識別番号】100148781
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友和
(72)【発明者】
【氏名】張新瑞
(72)【発明者】
【氏名】徐静
(72)【発明者】
【氏名】王暁月
(72)【発明者】
【氏名】楊増輝
(72)【発明者】
【氏名】張耀明
(72)【発明者】
【氏名】王斉華
(72)【発明者】
【氏名】王廷梅
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA06
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA02
4J034CA05
4J034CA13
4J034CA15
4J034CA16
4J034CB03
4J034CB04
4J034CB07
4J034CB08
4J034CC03
4J034CC10
4J034CC12
4J034CC23
4J034CC26
4J034CC34
4J034CC45
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4J034CC61
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4J034DA03
4J034DF01
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4J034DF12
4J034DG02
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4J034HA06
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4J034RA03
4J034RA09
4J034RA10
4J034RA12
4J034RA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】テレケリックポリウレタン、その調製方法及び使用を提供する。
【解決手段】2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン中のウレイドピリミジノン基をポリエステルポリオールセグメントに導入し、そのミクロ相構造を制御することにより、高強度・高靭性ポリウレタンエラストマー材料であるテレケリックポリウレタンが得られる。ポリマーセグメント中のウレイドピリミジノン基は、二量化によって四重水素結合ネットワークを形成し、その可逆的な特性は、相分離を誘導し、巨大なエネルギー散逸の実現に役立つだけでなく、π-πスタッキング相互作用によって、周囲温度で安定した微結晶を形成することもでき、ポリウレタン材料の機械的強度を向上させ、一方、ポリマー鎖のソフトセグメント上の豊富な弱い水素結合作用の存在は、材料に超高靭性を付与する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テレケリックポリウレタンの調製方法であって、
ポリエステルポリオール、ポリエーテルアミン及びジアミン系鎖延長剤を混合して、混合液を得るステップと、
前記混合液、ジイソシアネート、触媒及び有機溶媒を混合して予備重合反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得るステップと、
前記ポリウレタンプレポリマー、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン及び有機溶媒を混合して第1の付加反応を行い、付加生成物を得るステップと、
前記付加生成物、架橋剤及び有機溶媒を混合して第2の付加反応を行い、前記テレケリックポリウレタンを得るステップとを含むことを特徴とするテレケリックポリウレタンの調製方法。
【請求項2】
前記ポリエステルポリオール、ポリエーテルアミン、ジイソシアネート、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン及び架橋剤のモル比は、3~30:3~30:9~90:3~30:1~10であることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記ポリエステルポリオールの平均分子量は1000~3000であり、前記ポリエステルポリオールは、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール及びポリエステルポリオールのうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項4】
前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項5】
前記予備重合反応の温度は60~100℃であり、時間は2~3hであり、前記予備重合反応は保護雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項6】
前記第1の付加反応の温度は60~100℃であり、時間は1~3hであり、前記第1の付加反応は保護雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項7】
前記架橋剤はトリオール系架橋剤又はトリアミン系架橋剤であり、前記トリオール系架橋剤はトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン及びグリセリンのうちの1種以上を含み、前記トリアミン系架橋剤はトリス(2-アミノエチル)アミンを含むことを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項8】
前記第2の付加反応の温度は60~100℃であり、時間は1~3hであり、前記第2の付加反応は保護雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1に記載の調製方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の調製方法で調製されたテレケリックポリウレタン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン材料の技術分野に関し、特にテレケリックポリウレタン、その調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリウレタンは、その優れた総合性能、リサイクル性及び幅広い応用の見通しから注目されている。ポリウレタンは、新しい高分子材料として、優れた耐摩耗性、耐オゾン性、耐低温性及び耐腐食性などの利点を有し、航空宇宙、自動車、紡織、建築、医療、インテリジェント検出などの分野において幅広い応用の見通しを有する。
【0003】
しかしながら、従来のポリウレタン材料は、材料の強度と靭性の間に固有の矛盾があるため、材料の自動車コーティング、ウェアラブル電子デバイス、ソフトロボット、フレキシブルエレクトロニクス、生物医学などの分野における実用化が大きく制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本発明の目的は、テレケリックポリウレタン、その調製方法及び使用を提供することにある。本発明により調製されたテレケリックポリウレタンは靭性と強度を兼ね備える。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記発明の目的を達成するために、本発明は、以下の技術的解決手段を提供する。
【0006】
本発明は、テレケリックポリウレタンの調製方法であって、
ポリエステルポリオール、ポリエーテルアミン及びジアミン系鎖延長剤を混合して、混合液を得るステップと、
前記混合液、ジイソシアネート、触媒及び有機溶媒を混合して予備重合反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得るステップと、
前記ポリウレタンプレポリマー、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン及び有機溶媒を混合して第1の付加反応を行い、付加生成物を得るステップと、
前記付加生成物、架橋剤及び有機溶媒を混合して第2の付加反応を行い、前記テレケリックポリウレタンを得るステップとを含む、テレケリックポリウレタンの調製方法を提供する。
【0007】
好ましくは、前記ポリエステルポリオール、ポリエーテルアミン、ジイソシアネート、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン及び架橋剤のモル比は、3~30:3~30:9~90:3~30:1~10である。
【0008】
好ましくは、前記ポリエステルポリオールの平均分子量は1000~3000であり、前記ポリエステルポリオールは、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール及びポリエステルポリオールのうちの1種以上を含む。
【0009】
好ましくは、前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのうちの1種以上を含む。
【0010】
好ましくは、前記予備重合反応の温度は60~100℃であり、時間は2~3hであり、前記予備重合反応は保護雰囲気中で行われる。
【0011】
好ましくは、前記第1の付加反応の温度は60~100℃であり、時間は1~3hであり、前記第1の付加反応は保護雰囲気中で行われる。
【0012】
好ましくは、前記架橋剤はトリオール系架橋剤又はトリアミン系架橋剤であり、前記トリオール系架橋剤はトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン及びグリセリンのうちの1種以上を含み、前記トリアミン系架橋剤はトリス(2-アミノエチル)アミンを含む。
【0013】
好ましくは、前記第2の付加反応の温度は60~100℃であり、時間は1~3hであり、前記第2の付加反応は保護雰囲気中で行われる。
【0014】
本発明はさらに、上記技術的解決手段に記載の調製方法で調製されたテレケリックポリウレタンを提供する。
【0015】
本発明はさらに、上記技術的解決手段に記載のテレケリックポリウレタンの航空宇宙、自動車、紡織、建築、医療及びインテリジェント検出の分野における使用を提供する。
【0016】
本発明は、テレケリックポリウレタンの調製方法であって、ポリエステルポリオール、ポリエーテルアミン及びジアミン系鎖延長剤を混合して、混合液を得るステップと、前記混合液、ジイソシアネート、触媒及び有機溶媒を混合して予備重合反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得るステップと、前記ポリウレタンプレポリマー、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン及び有機溶媒を混合して第1の付加反応を行い、付加生成物を得るステップと、前記付加生成物、架橋剤及び有機溶媒を混合して第2の付加反応を行い、前記テレケリックポリウレタンを得るステップとを含む、テレケリックポリウレタンの調製方法を提供する。
【0017】
本発明は、ニューロンをヒントにした高強靭性テレケリックポリウレタンを提供し、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン中のウレイドピリミジノン基をポリエステルポリオールセグメントに導入し、トリオール系架橋剤又はトリアミン系架橋剤を加え、そのミクロ相構造を合理的に制御することにより、高強度・高靭性ポリウレタンエラストマー材料が得られる。ポリマーセグメント中のウレイドピリミジノン基は、二量化によって四重水素結合ネットワークを形成し、その可逆的な特性は、相分離を誘導し、巨大なエネルギー散逸の実現に役立つだけでなく、π-πスタッキング相互作用によって、周囲温度で安定した微結晶を形成することもでき、ポリウレタン材料の機械的強度を向上させ、ポリマー鎖のソフトセグメント上の豊富な弱い水素結合作用の存在は、材料に超高靭性を付与する。さらに、導入された多官能化学架橋剤は、強固な化学ネットワーク架橋点の構築に役立ち、ポリウレタン材料に優れた機械的特性を付与する。ポリマーネットワーク構造に存在する動的可逆的な階層的水素結合及び安定した共有結合の相乗効果により、得られたポリウレタンフィルムは、高い引張強度及び優れた靭性を示す。
【発明の効果】
【0018】
本発明により調製されたテレケリックポリマーは、分子の両端に反応性官能基を有する液体ポリマーであり、液体ゴム、塗料、接着剤、シーラントなどとして使用することができ、最後に、活性末端基の相互作用により、高分子量のポリマーに連結又は架橋することは、ポリウレタン材料の航空宇宙、自動車、紡織、建築、医療、インテリジェント検出などの分野における使用の拡大に対して重要な意義と価値を有する。
そして、本発明の調製方法は、効率が高く、安全で、環境に優しいなどの利点を有し、調製されたポリウレタンエラストマーは、高強度、高靭性及び高分子材料の成膜性、優れた耐熱性などの特性を兼ね備え、次世代の高強度・高靭性ポリウレタン材料の開発に新しい構想を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1におけるテレケリックポリウレタンの調製の反応フローチャートである。
【
図2】実施例1~3におけるサンプルの応力-ひずみ曲線の概略図である。
【
図3】実施例1で調製されたサンプルの異なる引張速度での応力-ひずみ曲線である。
【
図4】実施例1で調製されたサンプルの加熱減量曲線の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、テレケリックポリウレタンの調製方法であって、
ポリエステルポリオール、ポリエーテルアミン及びジアミン系鎖延長剤を混合して、混合液を得るステップと、
前記混合液、ジイソシアネート、触媒及び有機溶媒を混合して予備重合反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得るステップと、
前記ポリウレタンプレポリマー、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン及び有機溶媒を混合して第1の付加反応を行い、付加生成物を得るステップと、
前記付加生成物、架橋剤及び有機溶媒を混合して第2の付加反応を行い、前記テレケリックポリウレタンを得るステップとを含む、テレケリックポリウレタンの調製方法を提供する。
【0021】
本発明において、使用する原料は、特に説明しない限り、いずれも本分野の市販品である。
【0022】
本発明は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルアミン及びジアミン系鎖延長剤を混合して、混合液を得る。
【0023】
本発明において、前記ポリエステルポリオールの平均分子量は、1000~3000であることが好ましく、前記ポリエステルポリオールは、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール及びポリエステルポリオールのうちの1種以上を含むことが好ましい。
【0024】
本発明において、前記ポリエーテルアミンは、D230、D400またはD2000であることが好ましい。
【0025】
本発明において、前記ジアミン系鎖延長剤は、アジピン酸ジヒドラジド、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジチオジアニリン又は2,2’-エチレンジアニリンなどであることが好ましい。
【0026】
本発明において、前記混合は、3つ口フラスコ中で行うことが好ましい。
【0027】
本発明において、前記混合の温度は、100~120℃であることが好ましく、時間は、30~120minであることが好ましく、前記混合は、油浴条件、窒素雰囲気下で撹拌することが好ましく、前記混合の作用は、水を除去して乾燥させることである。
【0028】
混合液が得られた後、本発明は、前記混合液、ジイソシアネート、触媒及び有機溶媒を混合して予備重合反応を行い、ポリウレタンプレポリマーを得る。
【0029】
本発明において、前記ジイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及び4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)のうちの1種以上を含む。
【0030】
本発明において、前記触媒は、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)であることが好ましい。
【0031】
本発明において、前記ジイソシアネートと触媒のモル比は、10~30:1であることが好ましい。
【0032】
本発明において、前記予備重合反応の温度は、60~100℃であることが好ましく、時間は、2~3hであることが好ましく、前記予備重合反応は、保護雰囲気中で行われることが好ましい。前記予備重合反応の過程において、前記ポリエステルポリオール、ポリエーテルアミンはすべて、ジイソシアネートと反応し、このとき、反応系には予備重合反応生成物が存在するだけでなく、ポリエーテルアミンがジイソシアネートと反応する物質も存在する。
【0033】
本発明において、前記保護雰囲気は、N2であることが好ましい。
【0034】
本発明において、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、トルエン及びテトラヒドロフラン(THF)のうちの1種以上を含むことが好ましい。本発明は、ゲル化を防止するために、前記有機溶媒の量を調整して反応物の粘度を制御することが好ましい。
【0035】
本発明は、前記混合液を60~100℃に冷却した後、前記ジイソシアネートと有機溶媒の混合物を反応フラスコに滴下し、前記触媒を滴下し、N2雰囲気中で前記予備重合反応を行い、前記ポリウレタンプレポリマーを得ることが好ましい。
【0036】
ポリウレタンプレポリマーが得られた後、本発明は、前記ポリウレタンプレポリマー、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン(UPy)及び有機溶媒を混合して第1の付加反応を行い、付加生成物を得る。
【0037】
本発明において、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、トルエン及びテトラヒドロフラン(THF)のうちの1種以上を含むことが好ましく、前記予備重合反応に用いられる有機溶媒と一致することがより好ましい。
【0038】
本発明は、まず、前記2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジンと有機溶媒を超音波混合して、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン溶液を得、前記2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン溶液を前記ポリウレタンプレポリマーに滴下することが好ましい。
【0039】
本発明において、前記2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン溶液の濃度は、0.01g/mLであることが好ましい。
【0040】
本発明において、第1の付加反応の温度は、60~100℃であることが好ましく、時間は、1~3hであることが好ましく、前記第1の付加反応は、保護雰囲気中で行われることが好ましい。
【0041】
付加生成物が得られた後、本発明は、前記付加生成物、架橋剤及び有機溶媒を混合して第2の付加反応を行い、前記テレケリックポリウレタンを得る。
【0042】
本発明において、前記第2の付加反応の温度は、60~100℃であることが好ましく、時間は、1~3hであることが好ましく、前記第2の付加反応は、保護雰囲気中で行われることが好ましい。
【0043】
本発明において、前記架橋剤は、トリオール系架橋剤又はトリアミン系架橋剤であることが好ましく、前記トリオール系架橋剤は、トリメチロールプロパン(TMP)、トリメチロールエタン(TME)及びグリセリンのうちの1種以上を含み、前記トリアミン系架橋剤は、トリス(2-アミノエチル)アミン(TAN)を含むことが好ましい。
【0044】
本発明において、前記有機溶媒は、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、トルエン及びテトラヒドロフラン(THF)のうちの1種以上を含むことが好ましく、前記予備重合反応に用いられる有機溶媒と一致することがより好ましい。
【0045】
本発明は、まず、前記架橋剤と有機溶剤を超音波混合して、架橋剤溶液を得、前記架橋剤溶液を前記付加生成物に滴下することが好ましい。
【0046】
本発明において、前記ポリエステルポリオール、ポリエーテルアミン、ジイソシアネート、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン及び架橋剤のモル比は、3~30:3~30:9~90:3~30:1~10であることが好ましい。
【0047】
前記第2の付加反応が完了した後、本発明は、得られた溶液をポリテトラフルオロエチレン金型に流し込み、60~100℃で48h真空乾燥処理し、残留した溶媒を除去して、前記テレケリックポリウレタンを得る。
【0048】
本発明はさらに、上記技術的解決手段に記載の調製方法で調製されたテレケリックポリウレタンを提供する。
【0049】
本発明はさらに、上記技術的解決手段に記載のテレケリックポリウレタンの航空宇宙、自動車、紡織、建築、医療及びインテリジェント検出の分野における使用を提供する。
【0050】
本発明において、前記使用の具体的な方法は特に限定されず、当業者に周知の方法を採用すればよい。
【0051】
本発明をさらに説明するために、以下、実施例を参照しながら本発明が提供するテレケリックポリウレタン、その調製方法及び使用を詳細に説明するが、それらは本発明の保護範囲を限定するものとして理解されない。
【0052】
実施例1
(1)まず、分子量2000g/molのポリカーボネートジオール(PCDL-2000)6.00g/3mmol及び分子量230g/molのポリエーテルアミン(D230)0.69g/3mmolを秤量し、混合して、3つ口フラスコに入れ、120℃の油浴条件で、N2雰囲気下で30分間撹拌した。
(2)次に、上記混合液の温度を80℃まで冷却した後、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30mLを量り取り、イソホロンイソシアネート(IPDI)2.20g/9mmolを秤量して反応フラスコに滴下し、触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTDL)0.03gを滴下し、N2雰囲気中で2h反応させ、ゲル化を防止するために、有機溶媒の量を適切に調整して反応物の粘度を制御して、プレポリマーを得た。
(3)プレポリマーの調製が完了した後、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン(UPy)0.38g/3mmolを秤量し、DMF溶液(濃度0.01g/ml)3.8mlを量り取り、反応フラスコに滴下し、N2雰囲気下で、80℃で60分間反応させた。
(4)トリメチロールプロパン(TMP)0.134g/1mmolを秤量してDMF溶媒5mLに溶解し、完全に溶解した後に反応フラスコに滴下し、N2雰囲気下で、80℃で60分間行った。
(5)反応終了後、溶液をポリテトラフルオロエチレン金型に流し込み、80℃で48時間真空乾燥処理し、残留した溶媒を除去した。サンプルは、PUD-UPyと名付けられた。
【0053】
図1は、実施例1におけるテレケリックポリウレタンの調製の反応フローチャートである。
【0054】
実施例2
(1)まず、分子量2000g/molのポリカーボネートジオール(PCDL-2000)6.00g/3mmolを秤量し、3つ口フラスコに入れ、120℃の油浴条件で、N2雰囲気下で30分間撹拌し、水を除去して乾燥させた。
(2)次に、上記混合液の温度を80℃まで冷却した後、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30mLを量り取り、イソホロンイソシアネート(IPDI)2.20g/9mmolを秤量して反応フラスコに滴下し、触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTDL)0.03gを滴下し、N2雰囲気中で2h反応させ、ゲル化を防止するために、有機溶媒の量を適切に調整して反応物の粘度を制御して、プレポリマーを得た。
(3)プレポリマーの調製が完了した後、分子量210.37g/molの4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン(DDM)0.631g/3mmolを秤量してDMFに溶解し、十分に溶解した後に反応系に滴下した。
(4)さらに2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン(UPy)0.38g/3mmolを秤量し、DMF溶液(濃度0.01g/ml)3.8mlを量り取り、反応フラスコに滴下し、N2雰囲気下で、80℃で60分間反応させた。
(5)トリメチロールプロパン(TMP)0.134g/1mmolを秤量してDMF溶媒5mLに溶解し、完全に溶解した後に反応フラスコに滴下し、N2雰囲気下で、80℃で60分間行った。
(6)反応終了後、溶液をポリテトラフルオロエチレン金型に流し込み、80℃で48時間真空乾燥処理し、残留した溶媒を除去した。サンプルは、PUD-UPy-1と名付けられた。
【0055】
実施例3
(1)まず、分子量2000g/molのポリカーボネートジオール(PCDL-2000)6.00g/3mmolを秤量し、3つ口フラスコに入れ、120℃の油浴条件で、N2雰囲気下で30分間撹拌し、水を除去して乾燥させた。
(2)次に、上記混合液の温度を80℃まで冷却した後、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30mLを量り取り、イソホロンイソシアネート(IPDI)2.20g/9mmolを秤量して反応フラスコに滴下し、触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTDL)0.03gを滴下し、N2雰囲気中で2h反応させ、ゲル化を防止するために、有機溶媒の量を適切に調整して反応物の粘度を制御して、プレポリマーを得た。
(3)プレポリマーの調製が完了した後、分子量174.20g/molのアジピン酸ジヒドラジド(ADH)0.523g/3mmolを秤量してDMFに溶解し、十分に溶解した後に反応系に滴下した。
(4)さらに2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン(UPy)0.38g/3mmolを秤量し、DMF溶液(濃度0.01g/ml)3.8mlを量り取り、反応フラスコに滴下し、N2雰囲気下で、80℃で60分間反応させた。
(5)トリメチロールプロパン(TMP)0.134g/1mmolを秤量してDMF溶媒5mLに溶解し、完全に溶解した後に反応フラスコに滴下し、N2雰囲気下で、80℃で60分間行った。
(6)反応終了後、溶液をポリテトラフルオロエチレン金型に流し込み、80℃で48時間真空乾燥処理し、残留した溶媒を除去した。サンプルは、PUD-UPy-2と名付けられた。
【0056】
実施例4
(1)まず、分子量1000g/molのポリカーボネートジオール(PCDL-1000)3.00g/3mmol及び分子量400g/molのポリエーテルアミンD400 1.20g/3mmolを秤量し、混合して、3つ口フラスコに入れ、120℃の油浴条件で、N2雰囲気下で30分間撹拌し、水を除去して乾燥させた。
(2)次に、上記混合液の温度を80℃まで冷却した後、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30mLを量り取り、イソホロンイソシアネート(IPDI)2.20g/9mmolを秤量して反応フラスコに滴下し、触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTDL)0.03gを滴下し、N2雰囲気中で2h反応させ、ゲル化を防止するために、有機溶媒の量を適切に調整して反応物の粘度を制御して、プレポリマーを得た。
(3)プレポリマーの調製が完了した後、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン(UPy)0.38g/3mmolを秤量し、DMF溶液(濃度0.01g/ml)3.8mlを量り取り、反応フラスコに滴下し、N2雰囲気下で、80℃で60分間反応させた。
(4)トリス(2-アミノエチル)アミン(TAN)0.146g/1mmolを秤量してDMF 5mLに溶解し、完全に溶解した後に反応フラスコに滴下し、N2雰囲気下で、80℃で60分間行った。
(5)反応終了後、溶液をポリテトラフルオロエチレン金型に流し込み、80℃で48時間真空乾燥処理して、残留した溶媒を除去した。サンプルは、PCDL-1000-UPy-TANと名付けられた。
【0057】
実施例5
(1)まず、分子量2000g/molのポリカプロラクトンジオール(PCL-2000)6.00g/3mmol及び分子量400g/molのポリエーテルアミンD400 1.20g/3mmolを秤量し、混合して、3つ口フラスコに入れ、120℃の油浴条件で、N2雰囲気下で30分間撹拌し、水を除去して乾燥させた。
(2)次に、上記混合液の温度を80℃まで冷却した後、溶媒としてN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)30mLを量り取り、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)2.20g/9mmolを秤量して反応フラスコに滴下し、触媒としてジブチル錫ジラウレート(DBTDL)0.03gを滴下し、N2雰囲気中で2時間反応させ、ゲル化を防止するために、有機溶媒の量を適切に調整して反応物の粘度を制御して、プレポリマーを得た。
(3)プレポリマーの調製が完了した後、2-アミノ-4-ヒドロキシ-6-メチルピリミジン(UPy)0.38g/3mmolを秤量し、DMF溶液(濃度0.01g/ml)3.8mlを量り取り、反応フラスコに滴下し、N2雰囲気下で、80℃で60分間反応させた。
(4)トリメチロールエタン(TME)0.12g/1mmolを秤量してDMF溶媒5mlに溶解し、完全に溶解した後に反応フラスコに滴下し、N2雰囲気下で、80℃で60分間行った。
(5)反応終了後、溶液をポリテトラフルオロエチレン金型に流し込み、80℃で48時間真空乾燥処理して、残留した溶媒を除去した。サンプルは、PCL-2000-UPy-TMEと名付けられた。
【0058】
試験結果:
調製されたポリウレタン材料の力学的性質を効果的に評価するために、実施例1を例とし、実施例1~3で調製されたサンプルに対して応力-ひずみ曲線試験を行い、得られた結果を
図2及び
図3に示し、結果を表1にまとめた。
図2及び表1のデータから、PUD-UPyは、非常に高い引張特性、優れた引張強度を示すことがわかり、その最大引張強度は35.26MPa、破断ひずみは957%、靭性値は159.65MJ/m
3であった。PUD-UPy-1の最大引張強度は52.17MPa、破断ひずみは445%、靭性値は101.55MJ/m
3、PUD-UPy-2の最大引張強度は69.11MPa、破断ひずみは685%、靭性値は198.36MJ/m
3であった。
【0059】
したがって、合理的な分子設計及びソフトセグメントとハードセグメントの分布の制御により、PUD-UPy、PUD-UPy-1、PUD-UPy-2ポリウレタン材料はすべて、並外れた機械的特性、すなわち、高い機械的強度、高い引張特性及び高い靭性を示し、上記これらの特性はポリウレタンの分野において高いレベルに達している。ここで、四重水素結合を含むウレイドピリミジノン基の含有量は、ポリマーの機械的特性に大きな影響を及ぼし、効果的なエネルギー散逸により、非共有結合ポリウレタンは、外力下で顕著な機械的靭性向上効果を示す。さらに、ポリマー鎖におけるトリオール/トリアミンを含む架橋剤は、強固な共有結合架橋ポリウレタンネットワークを構築し、材料に非常に高い引張強度及び高い弾性率を付与するために使用される。
【0060】
サンプルの応力-ひずみ曲線:
【0061】
試験基準:GB/T 1040-2006
【0062】
試験速度:100mm/min、試験環境:25℃
【0063】
表1 実施例1~3の破断伸び、極限引張強度及び靭性データ
【0064】
サンプルPUD-UPyの異なる引張速度での応力-ひずみ曲線を
図3に示し、本実施例1で調製されたPUD-UPyは良好な応力-ひずみ特性を有することが分かった。
【0065】
試験基準:GB/T 1040-2006
【0066】
試験速度:10mm/min~100mm/min、試験環境:25℃
【0067】
サンプルPUD-UPyの異なる引張速度での機械的特性を表2にまとめた。
【0068】
材料の靭性:応力-ひずみ曲線の下の面積、すなわち、破断が発生する前に単位体積当たりの材料によって吸収されるエネルギー量。
【0069】
表2 実施例1で調製されたPUD-UPyの破断伸び、極限引張強度及び靭性
【0070】
本発明により調製されたポリウレタンエラストマーの強化及び靭性向上機構をさらに分析するために、異なる引張速度での機械的特性試験も行った。
図3及び表2の結果から、サンプルPUD-UPyは、引張速度が異なると、わずかに異なる機械的特性を示すことが分かった。変形率に関連する引張挙動は、鎖の動力学的特性をさらに実証する。すなわち、サンプルPUD-UPyは、明らかな速度依存性を示し、変形率が増加するにつれて、降伏及び引張強度が顕著に増加し、破断伸びが低下する傾向がある。
【0071】
低ひずみ(10mm/min及び50mm/min)では、材料は、低い引張強度及び高い破断伸びを示した。高いひずみ(100mm/min)では、材料の引張強度は明らかに増加し、破断伸びは低下した。これは、主に、ポリマーネットワーク構造における可逆的な非共有結合相互作用の存在、すなわち、四重水素結合基を含むウレイドピリミドン単位の導入によるものであり、変形速度は、四重水素結合の切断と再構築に密接に関係している。高いひずみでは、可逆的な多重水素結合は、迅速に集合するのが難しく、エネルギー散逸が抑制されるため、破断伸びが低下した。低ひずみでは、低い引張速度は、ポリマー鎖中の多重水素結合の切断と再構築のための機会を提供し、効果的かつ十分なエネルギー散逸を実現するのに役立つことにより、材料に高い破断伸びを付与し、ポリウレタンの機械的特性を効果的に調節し、外力下で顕著な機械的強化及び靭性向上効果を示した。
【0072】
実施例1の熱安定性を試験した。
【0073】
試験雰囲気:窒素、試験温度範囲:室温~800℃。
【0074】
サンプルPUD-UPyの加熱減量曲線を
図4に示した。
図4から、PUD-UPyは優れた耐熱性を示すことが分かった。サンプルは2つの分解温度範囲を示し、すなわち、ハードセグメントは240~350℃で分解し、ソフトセグメントは350~450℃で分解した。サンプルの加熱減量温度(Td、サンプルの5%の重量損失に対応する温度)は約273℃であった。したがって、熱重量分析(TGA)の結果は、本発明により調製されたポリウレタンエラストマーが、高強度及び高靭性を示すだけでなく、優れた耐熱性も有することを十分に実証した。
【0075】
本発明では、合理的な分子設計及びソフトセグメントとハードセグメントの分布の制御により、PUD-UPyポリウレタン材料は、並外れた機械的特性、すなわち、高い機械的強度、高い引張特性及び高い靭性を示す。ここで、四重水素結合を含むウレイドピリミジノン基の含有量は、ポリマーの機械的特性に大きな影響を及ぼし、効果的なエネルギー散逸により、非共有結合ポリウレタンは、外力下で顕著な機械的靭性向上効果を示した。さらに、ポリマー鎖におけるトリオール/トリアミンを含む架橋剤は、強固な共有結合架橋ポリウレタンネットワークを構築し、材料に非常に高い引張強度及び高い弾性率を付与するために使用される。
【0076】
以上は、本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明をいかなる形式でも限定するものではない。なお、当業者であれば、本発明の原理から逸脱することなく、若干の改良及び修飾を行うことができ、これらの改良及び修飾は保護範囲ともみなされるべきである。