(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005589
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】配線基板及び配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240110BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H05K1/02 R
H05K3/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105836
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 一哲
(72)【発明者】
【氏名】福本 悟
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA18
5E338BB19
5E338BB25
5E338CD23
5E338DD01
5E338EE43
(57)【要約】
【課題】 電子部品を高い位置精度で実装することが可能な配線基板及びその配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 基板1上に配線が形成された配線基板10において、前記配線は前記基板1の表面に形成された金属膜3と、前記基板1に埋め込まれた金属体4とを有し、前記金属体4は前記基板1の表面から突出している突出部を有する配線基板10とし、前記金属体4の断面における角部を画像認識装置で認識して電子部品を配線基板10に実装するようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配線が形成された配線基板において、
前記配線は前記基板表面に形成された金属膜と、前記基板に埋め込まれた金属体とを有し、
前記金属体は前記基板の表面から突出している突出部を有する、
ことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記突出部における前記金属体の側面と底面とが接続する角部は、その断面において曲率を有さない、または曲率半径が3μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記金属膜と前記金属体の前記突出部とは接触し電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
前記金属体の側面の少なくとも一部は外部に露出していることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項5】
前記金属体の側面は、前記基板と直交する少なくとも一つの面を備えることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項6】
基板に配線が形成された配線基板の製造方法において、
凹部を有する基板を用意する工程と、
前記凹部に金属体を埋め込む金属体埋込工程と、
前記基板の表面の一部および前記金属体上に保護膜膜を形成する保護膜形成工程と、
前記保護膜を形成した前記基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、
前記保護膜を除去する保護膜除去工程と、を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレーザ素子などの電子部品を搭載する配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、レーザ素子等の発光素子を基板上に実装した発光装置が利用されている。発光素子を実装する配線基板は、放熱性の高い基板の表面に発光素子を機械的および電気的に接続させるための金属電極を備える。配線基板への発光素子の実装は、画像認識装置によって金属電極のエッジを検出して金属電極の位置を特定し、その金属電極の位置情報に基づいて発光素子の搭載位置を特定している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光装置では、基板への発光素子の実装位置のばらつきが発光装置の集光性に影響を及ぼすため、発光素子の実装には高い位置精度が求められる。ここで、発光素子の基板への実装において、基板上の金属電極のエッジを検出して発光素子の実装位置を特定しようとした場合、金属電極の側面と上面との接続部であるエッジが丸みを帯びている(曲率を備えている)と、エッジを精度よく認識することができず、発光素子の実装位置にばらつきが生じる。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、電子部品を高い位置精度で実装することが可能な配線基板及びその配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
基板上に配線が形成された配線基板において、前記配線は前記基板表面に形成された金属膜と、前記基板に埋め込まれた金属体とを有し、前記金属体は前記基板の表面から突出している突出部を有する配線基板とする。前記突出部における前記金属体の側面と底面とが接続する角部は、その断面において曲率を有さない、または曲率半径が3μm以下としてもよい。また、前記金属膜と前記金属体の前記突出部とは接触し電気的に接続されていてもよい。また、前記金属体の側面の少なくとも一部は外部に露出していてもよい。また、前記金属体の側面は、前記基板と直交する少なくとも一つの面を備えていてもよい。また、基板に配線が形成された配線基板の製造方法において、凹部を有する基板を用意する工程と、前記凹部に金属体を埋め込む金属体埋込工程と、前記基板の表面の一部および前記金属体上に保護膜膜を形成する保護膜形成工程と、前記保護膜を形成した前記基板上に金属膜を形成する金属膜形成工程と、前記保護膜を除去する保護膜除去工程と、を有する配線基板の製造方法とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の配線基板及び配線基板の製造方法によれば、配線基板に高い位置精度で電子部品を実装することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による配線基板を示す図である。
【
図2】本発明の一実施例による配線基板の製造方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。図面においては各構成をわかりやすくするために実際の形状や実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0010】
図1は本発明の配線基板の一実施例を示す図であり、(a)は配線基板の平面図、(b)はA-A断面図である。本実施例の配線基板10は基板1の一方の面に配線としての金属膜3および金属体4を備える。
図1では、配線基板10の金属膜3上にレーザ素子6を実装した状態を示している。基板1は炭化珪素基板であり、長辺が4.8mm、短辺が4mmの矩形状であり、厚さが0.3mmである。そして、基板1の1つの短辺に沿った位置に凹部2が形成されている。凹部2は、それぞれ基板1の一方の面から平面視した際の開口が基板1の短辺に沿った辺が3.6mm、長辺に沿った辺が0.4mmであり、基板1の表面からの深さが0.15mmの長方形断面を備えている。
【0011】
金属膜3は、基板1の一方の面の表面側からTi/CuまたはTiW/Cuのシードメタル層、シードメタル層上に形成されたCuめっき、Cuめっきの表面上に形成され、Cuめっきの表面側から順にTi/Pt/Auの膜が積層された積層膜、および積層膜の表面上に形成されレーザ素子との接合膜としてのAuSnはんだ膜からなる。
【0012】
金属体4は、底面が3.6mm×0.4mmよりわずかに大きく、高さ0.153mmの直方体の部材であり、Cuにより構成されている。金属体4は凹部2に圧入により埋め込まれ、金属体4の一部は基板1の表面より略0.003mm程度突出している(以下、金属体4の基板1の表面から突出した部分を突出部とする。)。そして、金属体4の突出部における基板1の短辺に沿い、基板1の中央側に位置する側面と接するように金属膜3が配置されており、金属膜3と金属体4とは電気的に接続されている。なお、金属体4の軸方向と基板1の一方の面とは直交しており、金属体4の突出部の側面は基板1の一方の表面と直交し、金属体4の底面と基板1の一方の面とは平行である。また、金属体4の突出部の底面(上面)と側面との接続部である角部は、その断面において丸み(曲率)がない、または丸み(曲率)が小さい略直角構造であり、丸みがある場合その曲率半径は3μm以下、好ましくは1μm以下である。なお、金属体4が埋め込まれる基板1の凹部2の底面には、TiW等の金属膜3が形成されていてもよい。
【0013】
配線基板10は、金属膜3の上にレーザ素子6が実装される。配線基板10に搭載されたレーザ素子6は発光面より光が放出される。レーザ素子6は金属膜3の一部を覆うように配線基板10に実装され、金属膜3の一部および金属体4はレーザ素子6で覆われていない露出した構成であり、この露出した金属膜3および金属体4は、配線基板10と外部機器などとを電気的に接続する際にワイヤボンドなどの電気的接続手段の接続部位として利用することができる。なお、金属膜3および金属体4に熱伝導率の高いCuを含む材料を適用したことでレーザ素子6の放熱性が向上する。
【0014】
本発明では、基板1上の一部に金属体4を埋め込む構造とした点が特徴の一つである。予め角部に丸みのない、または小さい金属体4を準備し、その金属体4を基板1に埋め込む構成としたことによって、角部が略直角構造の配線を容易に形成することが可能となる。これは、フォトリソグラフィー技術を利用し蒸着等によって金属膜3を形成する場合は角部の丸みを小さく制御することが困難であるのに対し、バルク材である金属体4の角部を加工することの方が容易かつ加工精度も高いことによる。
【0015】
このように構成された配線基板10は、金属体4の角部が略直角構造となっているため、画像認識装置による誤認識などがなく高い精度で角部を認識することができる。そして、認識した金属体4の角部の位置情報に基づきレーザ素子6等の電子部品を配線基板10上へ実装することで、ばらつきのない高精度な実装が可能となる。本発明の金属体4としては、画像認識装置での認識性を向上させるため、金属体4の露出部における側面の少なくとも一部を外部に露出しておき、その露出した側面と底面との角部を画像認識装置にて認識させることが好ましい。
【0016】
なお、基板1上へ形成する配線をすべて金属体4の埋め込みとすることもできるが、その場合、基板1の凹部2の面積が大きくなり、つまり基板1の薄肉部の面積が大きくなるため基板1の強度が不足に繋がる。したがって、基板1の強度が問題となる場合は、金属体4の大きさを画像認識装置によって角部を確実に認識できる程度の大きさとし、その他の部位は蒸着等によって形成する金属膜3とすることが好ましい。
【0017】
次に、配線基板10の製造方法を説明する。
図2は本発明の配線基板10の製造方法を示す模式図であり、
図1に示す配線基板10のA-A断面を示している。配線基板10の製造では、複数の配線基板10の形成領域を備えたウェハ上に金属膜3および金属体4の配線を一括して形成した後、隣接する配線基板10形成領域間の切断領域にてウェハを切断して個々の配線基板10として完成させる。ウェハの切断については、回転刃を用いてダイシングする方法、基板に切削溝を設けてブレーキングによって個片化する方法、レーザ光を用いて切断する方法等の公知の方法によって行うことができる。ここではウェハの切断領域や切断工程については省略し、配線基板10に対応する外形を備えた基板1より一つの配線基板10を製造する工程を説明する。
【0018】
[金属体埋込工程:
図2(a)]
まず、配線基板10の基材となる基板1と金属体4とを準備する。基板1は、一方の面に凹部2がブラスト加工やレーザ加工等の手段によって形成されている。また、金属体4は銅箔をエッチングやレーザ加工することによって所定の直方体形状に形成されている。そして、基板1の凹部2に金属体4を埋め込む。凹部2への金属体4の埋め込みは、凹部2の開口よりわずかに大きな底面をもって形成された金属体4を凹部2の開口に配置し、金属体4を凹部2上部より押圧し、凹部2内へ圧入することで実現される。金属体4の高さは凹部2の深さより大きい構成であるため、金属体4の一部は基板1の表面より突出する。
【0019】
[保護膜形成工程:
図2(b)]
次に、金属体4が埋め込まれた基板1の一方の面全体に樹脂製保護膜テープレジストを形成する。次に、公知技術のフォトリソグラフィー技術を利用して、樹脂製保護膜テープレジストの配線基板10における金属膜3の形成領域に対応する位置に開口を形成する。このように形成された樹脂性保護膜テープレジストは、基板1の金属膜3形成領域を除く表面と金属体4の底面(上面)、および突出部における金属膜3と隣接しない側面を覆う保護膜7となる。
【0020】
[金属膜形成工程:
図2(c)]
次に、保護膜7が形成された基板1の全面に金属膜3を形成する。金属膜3は蒸着やめっきなどによって行い、形成する金属膜3の厚さは金属体4の突出部の高さと同一である。その結果、金属膜3の表面と金属体4の上面とは面一となる。また、形成された金属膜3は、金属体4の突出部の一部の側面、具体的には配線基板10で金属膜3と隣接することとなる側面と接触し、金属膜3と金属体4とが電気的に接続される。
【0021】
[保護膜除去工程:
図2(d)]
最後に、保護膜7を基板1及び金属体4上から除去する。このとき保護膜7の表面に形成された金属膜3も除去され、不要な金属膜3は基板1及び金属体4上に残存しない。保護膜7の除去においては、保護膜7に紫外線を照射した後に行うことで、保護膜7の粘着力が低下し、基板1及び金属体4から容易に除去することができる。保護膜7を除去することで配線基板10を得ることができる。
【0022】
以上、本発明の配線基板及び配線基板の製造方法について、実施例に基づき説明してきたが、本発明の範囲は前述の実施例に限定されるものではなく本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。例えば、実施例においては基板1上に配置する金属体4を1つ備えた構成としたがこれに限らず凹部2を複数備えた構成としてもよい。また、金属膜3および金属体4についてCuを含む構成としたが、Cuを含む構成に限定されず種々の金属を適用できる。ただし、配線基板10に実装される部品がレーザ素子6等のように発熱しその熱に対する放熱性が求められる場合は、金属膜3、金属体4を放熱性の高い金属を含む材料によって構成することが好ましい。また、金属体4は直方体としたが直方体に限定されず三角柱や五角柱の多角形などの角柱を用いてもよい。また、金属膜3の厚さ(金属体4の突出部の高さ)は配線基板10に搭載するレーザ素子6等の光学素子の特性に応じて適宜選択することができる。なお、本実施例では、配線基板10に実装する部品は発光素子に限らず、基板への実装精度が求められる種々の電子部品に適用することができる。また、基板1の基材は炭化珪素としたが、炭化珪素に限定されず窒化アルミニウム等の他の材料を用いても構わない。また、樹脂製保護膜テープを使用して保護膜7を形成したが液状レジストを用いてもよい。
【符号の説明】
【0023】
1 基板
2 凹部
3 金属膜
4 金属体
6 電子部品(レーザ素子)
7 保護膜
10 配線基板