IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ヒューム株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-螺旋階段、水処理施設 図1
  • 特開-螺旋階段、水処理施設 図2
  • 特開-螺旋階段、水処理施設 図3
  • 特開-螺旋階段、水処理施設 図4
  • 特開-螺旋階段、水処理施設 図5
  • 特開-螺旋階段、水処理施設 図6
  • 特開-螺旋階段、水処理施設 図7
  • 特開-螺旋階段、水処理施設 図8
  • 特開-螺旋階段、水処理施設 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005593
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】螺旋階段、水処理施設
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/032 20060101AFI20240110BHJP
   E04F 11/104 20060101ALI20240110BHJP
   E04F 11/02 20060101ALI20240110BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
E04F11/032
E04F11/104
E04F11/02
C02F1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105843
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】三岡 善平
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕作
(72)【発明者】
【氏名】後藤 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘輔
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC01
2E301CC21
2E301CC34
2E301CC54
2E301CD12
2E301DD17
2E301DD72
(57)【要約】
【課題】水処理施設内で用いられる螺旋階段において、機械的強度を高くし、かつ踏板の下面側の空気を抜けやすくする。
【解決手段】第1リブ23が上板部21に設けられたことによって、踏板20全体の機械的強度を高めることができる。しかしながら、このように下側からこの螺旋階段1(踏板20)が水に浸漬した場合、これらのリブに囲まれた領域には空気が溜まりやすくなる。これに対して、この踏板20が用いられる場合には空気は、前記のような上板部21の下面側の形状より、図中左側から右側に向かって流れる。更に、踏板20における図中の中央に設けられた第1リブ23がこの空気の流れの障害となるが、通気孔23Aがあるために、空気は通気孔23Aを介して図中左側から右側に向けて流れる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側から水が溜められる水処理施設内に設置され、鉛直方向に延伸する心柱を中心として複数の踏板が螺旋状に配置されることによって、複数の前記踏板により階段が形成されると共に、投入される水を上方から下方に案内する螺旋階段であって、
前記踏板は、
前記心柱と交差する板状の構成を有する上板部と、
前記心柱を中心とした周方向で当該踏板よりも下側に設けられて隣接する他の前記踏板である下側踏板が設けられた側である第1の側において、前記上板部よりも下側に突出し、前記心柱を中心とした径方向及び鉛直方向に広がる板状の側板部と、
前記側板部よりも前記第1の側と反対側である第2の側において前記上板部の下面側に形成され、前記径方向及び鉛直方向に広がる板状の第1リブと、
を具備し、
前記第1リブの上部には、前記第1リブを前記第2の側から前記第1の側に向けて貫通する通気孔が形成され、
前記上板部の下面は、前記第1の側から前記第2の側に向けて高くなるように傾斜したことを特徴とする螺旋階段。
【請求項2】
前記踏板において、
前記第1リブと交差する板状の第2リブが前記上板部の下面側に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の螺旋階段。
【請求項3】
前記踏板において、
前記第2リブが前記径方向に沿って複数形成され、
前記通気孔は、隣接する2つの前記第2リブの間における前記第1リブに形成されたことを特徴とする請求項2に記載の螺旋階段。
【請求項4】
複数の前記踏板は共通の構造を具備し、
鉛直方向で隣接する2つの前記踏板の間における前記心柱の周りの設定角度の差は、複数の前記踏板の間で一定とされたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の螺旋階段。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の螺旋階段が立坑の内部に設置された構成を具備することを特徴とする水処理施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が昇降のために用いることができると共に、水処理装置の中において水流を案内する螺旋形状の構成を具備する螺旋階段の構造に関する。また、この螺旋階段が設置された水処理施設に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛直方向に延伸する心柱に対して、平板状の上面を具備する複数の踏板が階段を形成するように螺旋状に装着された構造を具備する螺旋階段が、例えば特許文献1等に記載されている。ここで、防災用の大型の水処理施設内にこの螺旋階段を設ければ、作業者が作業の際にこの螺旋階段を昇降することができる。一方、この螺旋階段の上部から水が投入される構成とすれば、この螺旋階段を水の案内のためにも用いることができる。
【0003】
特許文献1に記載されたように、心柱周りの角度を隣接する2つの踏板間で一定値だけずらし、かつこの2つの踏板の高さを一定値だけ変えることによってこれらの間で部分的に重複する領域を設けて段差を形成し、この2つの踏板で階段を構成することができ、多数の踏板を同様に心柱に対して装着することによって、螺旋階段を形成することができる。この際、例えば FRP(Fiber Reinforced Plastics)で構成された共通の構造の複数の踏板を用いることができる。これによって、この螺旋階段の機械的強度を高くし、かつ安価とすることができる。このため、この水処理施設を安価とすることができる。
【0004】
また、特許文献1に記載の技術においては、手摺を固定するための2本の手摺柱が単一の踏板に対して装着され、この2本の手摺柱の間に手摺が装着される。この際、隣接する踏板が重複した部分で1本の手摺柱を共有するような構成とすることによって、隣接する踏板の位置関係を固定することができる。この構成を全ての踏板間で採用することによって、全ての踏板間の位置関係が固定された螺旋階段を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-78313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような螺旋階段を水処理施設内に用いる場合においては、この螺旋階段に対する作業者の昇降の際の荷重に抗する強度と、水が投入される際に加わる荷重に抗する強度が共に要求される。
【0007】
ここで、前者のためには、特許文献1に記載されたように、踏板を補強するためのリブを踏板に形成することによって、踏板の機械的強度を高めることができる。ただし、作業者の昇降に用いるためには踏板の上面側は突起物をなくした平坦な形状とすることが好ましいため、リブは踏板の下面側に設ける必要がある。
【0008】
一方、踏板は、自重によって加わる下向きの荷重によって、安定して心柱に対して固定される。これに対して、水処理施設内に水が徐々に溜まる際には、踏板は下側から順に水没し、このように踏板の下面側にリブが複数形成された場合には、踏板の下面側に空気が溜まりやすくなり、これによる浮力が踏板に働き、踏板が安定して固定されなくなるという問題がある。このため、水が投入される際に踏板の下側に空気が溜まることを抑制することが好ましく、特許文献1に記載の技術では、踏板の表面に空気抜き穴が形成された。しかしながら、前記のリブの場合と同様に、このような構造を踏板の上面側に設けることは好ましくない。また、これによって踏板の機械的強度も低下する。
【0009】
このため、水処理施設内で用いられる螺旋階段においては、踏板の機械的強度を高くする一方で、踏板の下面側の空気が抜けやすいことが求められた。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明は、上側から水が溜められる水処理施設内に設置され、鉛直方向に延伸する心柱を中心として複数の踏板が螺旋状に配置されることによって、複数の前記踏板により階段が形成されると共に、投入される水を上方から下方に案内する螺旋階段であって、前記踏板は、前記心柱と交差する板状の構成を有する上板部と、前記心柱を中心とした周方向で当該踏板よりも下側に設けられて隣接する他の前記踏板である下側踏板が設けられた側である第1の側において、前記上板部よりも下側に突出し、前記心柱を中心とした径方向及び鉛直方向に広がる板状の側板部と、前記側板部よりも前記第1の側と反対側である第2の側において前記上板部の下面側に形成され、前記径方向及び鉛直方向に広がる板状の第1リブと、を具備し、前記第1リブの上部には、前記第1リブを前記第2の側から前記第1の側に向けて貫通する通気孔が形成され、前記上板部の下面は、前記第1の側から前記第2の側に向けて高くなるように傾斜したことを特徴とする。
本発明は、前記踏板において、前記第1リブと交差する板状の第2リブが前記上板部の下面側に形成されたことを特徴とする。
本発明は、前記踏板において、前記第2リブが前記径方向に沿って複数形成され、前記通気孔は、隣接する2つの前記第2リブの間における前記第1リブに形成されたことを特徴とする。
本発明において、複数の前記踏板は共通の構造を具備し、鉛直方向で隣接する2つの前記踏板の間における前記心柱の周りの設定角度の差は、複数の前記踏板の間で一定とされたことを特徴とする。
本発明の水処理施設は、螺旋階段が立坑の内部に設置された構成を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成されているので、水処理施設内で用いられる螺旋階段において、機械的強度を高くし、かつ踏板の下面側の空気を抜けやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態に係る螺旋階段が設置された水処理施設の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る螺旋階段が設置された水処理施設の断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の部分的な斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の部分的な上面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の上面図(a)、下面図(b)である。
図7】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の2方向からみた側面図である
図8】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の径方向における異なる2箇所における断面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る螺旋階段が浸水する際の状況を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る螺旋階段について説明する。図1は、この螺旋階段1が設けられる水処理施設200の構成を示す斜視図である。この水処理施設200においては、例えばhttps://www.nipponhume.co.jp/product/pcwellmeth.htmlに記載されたウェルマンである。ここで、ウェルマンは、PCウェル工法によって地中において円環状のプレキャストコンクリートブロックが積層されて構築された立坑100であり、地中で水を溜める構造として特に好ましく用いることができる。
【0015】
図1においては、立坑100は点線で簡略化されて記載され、底版Bの上に、鉛直方向(z方向)に沿った中心軸をもつ短い円筒形状のプレキャストコンクリートブロック100A~100Cが積層されて構成されることによって、長い円筒形状に形成されている。この内径は例えば4m~10mの範囲である。このため、作業者が昇降できる螺旋階段1を立坑100の内部に設置することができ、この螺旋階段1に沿って水を導入することもできる。図1における螺旋階段1に沿った矢印は、この際の作業者及び水の動きを示す。鉛直方向に沿った心柱10が螺旋階段1の中心軸となり、螺旋階段1は、共通の構造を有する多数の踏板20が心柱10に装着されて構成される。螺旋階段1の記載も図1において簡略化されて示され、ここでは螺旋階段1における心柱10と踏板20以外の構成要素、の記載は省略されている。
【0016】
図2は、図1における心柱10に沿った断面図である。ここでは、構成を模式化して示すために、縦横の縮尺は実際のものとは異なる。また、各踏板20の断面形状は後述する形状とは異なり、単純化されて矩形形状とされている。この立坑100においては、図2における上側の流入口101から水が投入されて螺旋階段1に沿って水が溜められ、溜められた水は下側の流出口102から排出される。ただし、立坑100に流出口102が設けられている必要はない。この場合には、例えば立坑100の内部に溜められた水をポンプ等を用いて汲み上げることによって、水が排出される。
【0017】
図3は、この螺旋階段1における13枚の踏板20(20A~20M)に対応した部分の構成を示す斜視図であり、ここでは図1、2で省略された構成要素も記載されている。ここでは、下側から順に踏板20A~20Mが心柱10に対して、下側からみて右回りで上側に向かう螺旋状で装着されている。ここで、ある一つの踏板20(例えば踏板20E)は、その下側で隣接する踏板20(踏板20Eに対しては踏板20D:下側踏板)、その上側で隣接する踏板20(踏板20Eに対しては踏板20F:上側踏板)と、鉛直方向から見て部分的に重複する。
【0018】
図4は、螺旋階段1における心柱10と踏板20A~20Kまでの位置関係を示す上面図である。図4において、ある一つの踏板20(例えば踏板20E)に対して、その下側で隣接する踏板20(踏板20D:下側踏板)は、中心(心柱10)の周りで時計回りの側(第1の側)で30°ずれた角度で存在し、これらは平面視において部分的に重複する。同様に、踏板20Eに対して、その上側で隣接する踏板20(踏板20F:上側踏板)は、心柱10の周りで反時計回りの側(第2の側)で30°ずれた角度で存在し、これらは平面視において部分的に重複する。同様の位置関係は、上端部と下端部の踏板20以外の全てで成立するため、全ての踏板によって螺旋状に階段が形成される。この際、この螺旋階段1は、連続した12枚の踏板20を一周期とした周期的構造を有する。
【0019】
また、図3、4に示されるように、各踏板20における心柱10からみた外側には、第1の側、第2の側のそれぞれにおいて、鉛直方向に沿って上側に延伸する側壁部材支持柱(踏板固定部材)31が設置される。ここで、例えば踏板20Eにおける第1の側の側壁部材支持柱31は、踏板20Eを上下方向で貫通し、下側の踏板20Dにおける第2の側の側壁部材支持柱31となっており、踏板20Eにおける第2の側の側壁部材支持柱31は、踏板20Eを上下方向で貫通し、上側の踏板20Fを貫通し、踏板20Fにおける第1の側の側壁部材支持柱31となっている。他の踏板においても、同様に側壁部材支持柱31が装着され、これによって鉛直方向で隣接する2つの踏板20間の水平方向における位置関係が定まる。
【0020】
図3、4に示されるように、隣接する側壁部材支持柱31間には、鉛直方向に広がる板状の側壁部材32が固定されている。側壁部材32とその下側の踏板20との間には隙間が生じないように設定される。側壁部材32は、作業者がこの螺旋階段1を昇降する際の手摺になると共に、水をこの螺旋階段1に流す際に、水を螺旋階段1に沿って流し外側に漏らさないために機能する。側壁部材支持柱31は、側壁部材32を支持するため、及び前記のように上下方向で隣接する踏板20の水平方向の位置関係を固定するために機能する。上記のような踏板20、側壁部材支持柱31、側壁部材32の関係は、特許文献1に記載されたものと同様である。
【0021】
この螺旋階段1においては、踏板20の構造が特許文献1に記載のものと大きく異なる。以下にこの点について説明する。図5は、この踏板20の構造を示す、上側かつ第1の側(下側踏板がある側)からみた斜視図(a)、上側かつ第2の側(上側踏板がある側)からみた斜視図(b)である。また、図6は、この踏板20の上面図(a)、下面図(b)である。図7は、図6(a)における図中上側(x方向正側)からみた側面図(a)、図中左側(y方向負側)からみた側面図(b)である。また、図8は、図6(b)におけるC-C方向の断面図(a)、D-D方向の断面図(b)である。図5等において、鉛直方向をz方向(上側を正とする)、径方向をx方向(心柱10からみた外側を正とする)、z方向及びx方向と垂直な方向をy方向(第1の側を正とする)とする。
【0022】
これらの図に示されるように、踏板20は、平面視において、心柱10を中心とする円弧形状の外周と、心柱10がある側からこの外周側に向かうそれぞれ第1の側(図6(a)における右側、図6(b)における左側)、第2の側(図6(a)における左側、図6(b)における右側)における2つの側面を具備する。また、図5(b)に示されるように、この踏板20の上側には、水平(xy方向)に広がる上面を具備する板状の上板部21が設けられる。踏板20の上面側はこの上板部21で占められる。上板部21には、心柱10が挿通する孔部である心柱挿入用孔21Aと、側壁部材支持柱(踏板固定部材)31が挿通する孔部である側壁部材支持柱挿入用孔(踏板固定部材挿入用孔)21B(2つ)が設けられる。踏板20の上面側(上板部21)は、これらの孔部以外では平坦な水平面を構成する。このため、作業者は上板部21の上面に足を乗せることができる。
【0023】
また、図5(a)、図6に示されるように、踏板20の第1の側(y方向正側)においては、上板部21から下側(z方向負側)に向けて突出する板状の側板部22が設けられる。側板部22は、心柱10を中心とした径方向(x方向)、及び鉛直方向(z方向)に広がる、上板部21と直交する板状とされる。図3の構成においては、側板部22の下端は、この踏板20の下側で隣接する踏板20の上板部21に当接する。このため、図5(a)における上板部21、側板部22と、この踏板20の下側で隣接する踏板20の上板部21で、一つの階段が形成される。
【0024】
上板部21は階段において作業者が体重を預ける部分となるため、特にその機械的強度が高いことが要求され、上板部21を補強するために、側板部21と同様の鉛直方向(z方向)で広がる板状の構造であるリブが、下面側において上板部21と一体化されて設けられる。このリブとしては、図6に示されるように、踏板20における心柱10の周りの周方向の中間に位置し径方向(x方向)で延伸する第1リブ23が設けられる。また、第1リブ23と直交してy方向で遠心する第2リブ24が、径方向(x方向)において2つ離間して設けられる。
【0025】
また、上板部21の下側かつ径方向外側における側壁部材支持柱挿入用孔21Bに対応する2箇所には、鉛直方向に延伸する柱状の側壁部材支持柱支持部(踏板固定部材支持部)25が設けられ、前記の側壁部材支持柱挿入用孔21Bは、上板部21と側壁部材支持柱支持部25を貫通するように形成される。これによって、側壁部材支持柱31をこの踏板20で強固に支持することができる。同様に、心柱挿入用孔21Aに対応した柱状の心柱支持部26が心柱10側かつ上板部21の下側に設けられ、心柱挿入孔21は上板部21と心柱支持部26を貫通するように形成される。側壁部材支持柱支持部25、心柱支持部26については、特許文献1に記載の技術と同様である。踏板20をFRPで構成すれば、上板部21、側板部22、第1リブ23、第2リブ24、側壁部材支持柱支持部25、心柱支持部26を一体化して容易に形成することができる。
【0026】
ここで、図7(a)、図8に示されるように、上板部21の上面は水平面であるのに対して、上板部21の下面は水平方向から傾斜している。具体的には、図8に示されるように、この下面はy方向正側から負側に向けて高くなる(上板部21がy方向正側から負側に向けて薄くなる)ように傾斜している。
【0027】
また、図6に示されるように、第1リブ23の長手方向(径方向)における5箇所には、上板部21と接する側において第1リブ23を厚さ方向で貫通する通気孔23Aが形成されている。ここで、図6に示されるように、通気孔23Aは、図中下側(径方向内側)の第2リブ24よりも下側に一つ、図中下側の第2リブ24と図中上側(径方向外側)の第2リブ24の間に二つ、図中上側の第2リブ24よりも上側に二つ形成されている。図8の断面図は、いずれも通気孔23Aがある箇所の断面となっている。
【0028】
この螺旋階段1が図1、2に示されたように用いられ、下側から水が溜まる(浸水する)際の状況を模式的に図9に示す。図4に示されたように踏板20は円周に沿ってに配置されるが、ここでは、隣接する2つの踏板20が図中左右方向で隣接するものとし、ここでは特に図8(b)の断面となった箇所が隣接した場所が示されている。この図では、前記の第1の側は左側、第2の側は右側となり、実際には隣接する2つの踏板20は心柱10に対する設置角度が30°ずれているが、ここではこれらの踏板20が単純にy方向で並んでいるように示されている。図9において、矢印Pは、この螺旋階段1において上側から流入する水の流れを示し、矢印Qは水面H(水位)の上昇を示す。矢印Rは、この際の空気の流れを、それぞれ単純化して示す。
【0029】
前記のように、第1リブ23、第2リブ24が上板部21に設けられたことによって、踏板20全体の機械的強度を高めることができる。しかしながら、このように下側からこの螺旋階段1(踏板20)が水に浸漬した場合、これらのリブに囲まれた領域には空気が溜まりやすくなる。
【0030】
これに対して、図9に示されるように、この踏板20が用いられる場合には空気は、前記のような上板部21の下面側の形状より、図中左側から右側に向かって流れる。更に、踏板20における図中の中央に設けられた第1リブ23がこの空気の流れの障害となるが、通気孔23Aがあるために、空気は通気孔23Aを介して図中左側から右側に向けて流れる。このため、図9に示されたような空気の流れ(矢印R)が実現される。このため、踏板20の下側に空気が溜まることが抑制される。図6図7(b)において、この効果は、特に2つの第2リブ24で挟まれた中央の領域、あるいは径方向内側の第2リブ24と心柱支持部26に挟まれた下側の領域において顕著である。
【0031】
前記のように、第1リブ23は踏板20(上板部21)の補強のために設けられるが、このように通気孔23Aをこのように小さく設けることによる踏板20の機械的強度の低下は僅かである。一方、このように通気孔23Aが小さくともこれを介した空気の流れは実現されるため、このように踏板20の下側に空気が溜まることを抑制する効果は得られる。
【0032】
なお、前記の例においては、図4に示されたように、隣接する踏板20の間のなす角度が30°であるものとした。しかしながら、この設定は適宜行うことができる。例えば、螺旋階段が平面視において大きな場合には、隣接する踏板の間の角度をより小さくすることができる。ただし、隣接する2つの踏板の間のなす角度(°)を、360の整数分の1とすることによって、踏板の配置を周期的とすることができる。また、前記の例では、上板部21の上面は心柱10の延伸方向(z方向)と垂直とされたが、これらの間が厳密に垂直である必要はない。
【0033】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0034】
1 螺旋階段
10 心柱
20、20A~20M 踏板
21 上板部
21A 心柱挿入用孔
21B 側壁部材支持柱挿入用孔(踏板固定部材挿入用孔)
22 側板部
23 第1リブ
23A 通気孔
24 第2リブ
25 側壁部材支持柱支持部(踏板固定部材支持部)
26 心柱支持部
31 側壁部材支持柱(踏板固定部材)
32 側壁部材
100 立坑
101 流入口
102 流出口
100A~100C プレキャストコンクリートブロック
200 水処理施設
B 底版
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9