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  • 特開-粉体粒子表面の改質方法 図1
  • 特開-粉体粒子表面の改質方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055949
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】粉体粒子表面の改質方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/18 20060101AFI20240412BHJP
   C01B 33/12 20060101ALI20240412BHJP
   C01G 23/047 20060101ALI20240412BHJP
   B01J 13/00 20060101ALI20240412BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20240412BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20240412BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C01B33/18 C
C01B33/12 A
C01G23/047
B01J13/00 A
C09K3/00 R
A61K8/25
A61K8/06
A61Q17/04
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024029915
(22)【出願日】2024-02-29
(62)【分割の表示】P 2022063165の分割
【原出願日】2016-12-28
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂▲崎▼ ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】ウルフ オルソン
(57)【要約】
【課題】
簡易に粉体粒子表面を改質する方法を提供することを目的とする。また、表面が改質された粒子を用いたピッカリングエマルション又はその製造方法を提供すること。
【解決手段】
粉体粒子を分子構造中に酸素を有する油剤に浸漬させることを特徴とする、粉体粒子表面の改質方法。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカを含む粉体粒子を、分子構造中に酸素原子を有する油剤に浸漬させることを特徴とする、粉体粒子表面の改質方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体粒子表面の改質方法と、表面が改質された粒子を用いたピッカリングエマルション及びピッカリングエマルションの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エマルションとは、互いに混じり合わない2種以上の液体であって、一方の液体が他方の液体中に分散しているものをいう。エマルションとしては、油滴が水に分散している水中油型(O/W)や、水滴が油に分散する油中水型(W/O型)が知られており、化粧品等の皮膚外用剤に応用されている。
【0003】
このようなエマルションを形成するために、乳化剤と呼ばれる両親媒性物質が通常用いられる。この乳化剤は、2つの相の界面に吸着することで界面張力を低下させ、立体障害又は静電反発を増大させることによりエマルションを安定化させることができる。
【0004】
しかし、乳化剤として使われているもののほとんどが界面活性剤であり、界面活性剤は肌に刺激を与えることから、エマルション剤形の皮膚外用剤として、界面活性剤を含まないものが望まれている。
【0005】
乳化剤を含まないエマルションとして、微粒子安定化エマルション(ピッカリングエマルション)が知られている。ピッカリングエマルションとは、微細に分散した固体粒子が2つの相の界面に吸着することで安定化されたエマルションのことをいう。
【0006】
これまでに、表面を疎水化処理した固体粒子をピッカリングエマルションの調製に使用することが提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007-530721号公報
【特許文献2】特表2010-527332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、固体粒子の表面を疎水化処理するという手法では、目的のエマルションの形態及び乳化粒子径に合わせて表面処理剤を変更しなければならず、また、思い通りのエマルションを作れないこともあり、大きな手間を要する。
【0009】
そこで、本発明の解決しようとする第一の課題は、簡易に粒子の表面を改質する方法を提供することにある。また、本発明は多様な乳化状態のピッカリングエマルションを調製することを可能にし、好ましくは新規のピッカリングエマルションを提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究の結果、粒子を特定の油剤に浸漬させ、浸漬時間を変えることで簡易に粉体粒子の表面を改質することができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、上記第1の課題を解決する本発明は、粉体粒子を、分子構造中に酸素原子を有する油剤に浸漬させることを特徴とする、粉体粒子表面の改質方法である。
従来技術では、任意の乳化状態を有するエマルションを得るために目的の表面特質を有する粉体粒子を得るためには、まず表面処理剤を選択し、これと粒子を反応させるという煩雑な手間が必要であった。しかし、本発明の粉体粒子表面の改質方法によれば、このような煩雑な工程を踏むことなく、簡易に粉体粒子表面を改質することができる。
【0011】
本発明の改質方法は、粉体粒子表面に水酸基を有する粉体粒子に適用することが好ましい。
粉体粒子表面に水酸基を有する粉体粒子は、分子構造中に酸素原子を有する油剤と相互作用しやすいため、特に粉体粒子表面を改質しやすい。
【0012】
本発明の改質方法は、粉体粒子表面にシラノール基を有する粉体粒子に適用することが好ましい。
粉体粒子表面にシラノール基を有する粉体粒子は、分子構造中に酸素原子を有する油剤と相互作用しやすいため、特に粉体粒子表面を改質しやすい。
【0013】
本発明の改質方法は、金属酸化物を含む粉体粒子に適用することが好ましい。
本発明により金属酸化物を含む粉体粒子の表面を改質することにより、通常では調製が難しい、金属酸化物により安定化されたピッカリングエマルションを得ることが可能となる。
【0014】
本発明の改質方法は、酸化チタンを含む粉体粒子に適用することが好ましい。
本発明により酸化チタンを含む粉体粒子の表面を改質することにより、紫外線防御能を有し、かつ安定なピッカリングエマルションを得ることが可能となる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記油剤がシリコーン油である。
粉体粒子をシリコーン油に浸漬させることで、より簡易に粒子の表面を改質することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記油剤が環状シリコーン油である。
環状シリコーン油は、一般的にサンスクリーン剤等の皮膚外用剤の油剤として用いられる。そのため、粉体粒子を環状シリコーン油に浸漬させることにより、皮膚外用剤への応用が可能な粉体粒子を提供することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、粉体粒子を前記油剤に浸漬させる工程を室温以上で行う。
浸漬させる工程を室温以上で行うことで、粉体粒子の表面を改質するための浸漬時間を短縮することができる。
【0018】
また、上記第2の課題を解決する本発明は、ピッカリングエマルションの乳化状態の調整方法であって、前記粉体粒子表面の改質方法を用いて前記粉体粒子表面を改質する工程と、油相と水相の割合を調整する工程とを備える、乳化状態の調整方法である。
本発明の乳化状態の調整方法によれば、簡易にエマルションの乳化状態を調整することができる。
【0019】
また、上記第2の課題を解決する本発明は、上述した粉体粒子表面の改質方法を用いて粒子の表面を改質する工程と、表面が改質された粒子を用いて乳化を行う工程とを備える、ピッカリングエマルションの製造方法である。
本発明のピッカリングエマルションの製造方法によれば、様々な形態のエマルションを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の粉体粒子表面の改質方法によれば、簡易に粉体粒子の表面を改質することができる。また、本発明のピッカリングエマルションの製造方法によれば、様々な乳化状態のピッカリングエマルションを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、乳化状態の調整方法のフローチャートである。
図2図2は、ピッカリングエマルションの乳化粒子を示した図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<1>粉体粒子
本発明の粉体粒子表面の改質方法は、有機粉体、無機粉体のいずれの粉体粒子にも適用することができる。
無機粉体としては、金属、金属塩、金属酸化物、金属水酸化物又は鉱物等が例示できる。
有機粉体としては、有機高分子粉体が例示できる。
【0023】
また、本発明の粉体粒子表面の改質方法は、これらの粉体を2種以上組み合わせた複合粒子にも適用することができる。
【0024】
また、表面処理剤によって粉体粒子表面が全部若しくは部分的に被覆された粉体粒子にも適用することができる。
ここで、「粉体粒子表面が全部若しくは部分的に被覆された」とは、粉体粒子の表面に表面処理剤が物理的に付着することにより被覆された状態だけではなく、粉体粒子表面に露出している官能基に化合物が共有結合している状態も含む。
【0025】
表面処理剤としては、メッキ処理剤、疎水化処理剤又は親水化処理剤等を用いることができ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉛、酸化錫、有機ケイ素化合物、シリコーン、炭化水素油、脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、高級アルコール、ポリオキシアルキレン化合物、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリリン酸、メタリン酸、ヒアルロン酸、アルギン酸又はこれらの塩等が例示できる。
【0026】
本発明の粉体粒子表面の改質方法は、粉体粒子表面に水酸基を有する粉体粒子に適用することが好ましい。
「粉体粒子表面に水酸基を有する粉体粒子」としては、例えば、金属酸化物やシリカ等の表面水酸基を有する粉体や、水溶性高分子等の構造式上で水酸基を有する分子からなる粉体が挙げられる。
【0027】
また、水酸基を有する表面処理剤によって被覆されている粉体も「粉体粒子表面に水酸基を有する粉体粒子」に含まれる。
【0028】
さらに、上述した「粉体粒子表面に水酸基を有する粉体粒子」と他の粉体粒子との複合粒子も、「粉体粒子表面に水酸基を有する粉体粒子」に含まれる。
【0029】
また、本発明の粉体粒子表面の改質方法は、粉体粒子表面にシラノール基を有する粉体粒子に適用することが好ましい。
ここで、シラノール基とは、孤立シラノール基、ビシナルシラノール基及びジェミナルシラノール基等の何れのシラノール基も含む。
【0030】
粉体粒子表面に水酸基又はシラノール基を有する粉体粒子として、シリカ粒子単体及びシリカ粒子によって粉体粒子表面が全部あるいは部分的に被覆された複合粒子が例示できる。
このような複合粒子は、本発明の改質方法により容易に粒子表面の改質をすることができる。また、シリカ粒子は、ピッカリングエマルションの乳化粉体として通常用いられるものであり、安定性が高いピッカリングエマルションを形成することができるため好ましい。さらに、シリカ粒子は人体に対して無毒であるため、シリカ粒子を用いて製造したピッカリングエマルションは、化粧料、食品又は医薬等に応用することができる。
【0031】
シリカ粒子としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成される、いわゆる乾式シリカ粉末、及び水ガラス等から製造される、いわゆる湿式シリカ粉末の何れを用いてもよい。
乾式シリカ粉末としては、例えばAerosilシリーズ(日本アエロジル株式会社)、CAB-O-SILシリーズ(キャボットコーポレーション)、HDKシリーズ(旭化成ワッカーシリコーン株式会社)、湿式シリカ粉末としては、例えばNipsilシリーズ(東ソー・シリカ株式会社)、HI-SILシリーズ(PPG)等の市販品の市販品を用いることができる。
【0032】
また、本発明の粉体粒子表面の改質方法は、金属酸化物を含む複合粒子に適用することが好ましい。
金属酸化物としては、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化鉛又は酸化錫等が好ましく例示でき、酸化チタンがより好ましく例示できる。
一般的に、ピッカリングエマルションを製造するための粉体粒子として、金属酸化物を含むものを用いることは少ないが、本発明の粉体粒子表面の改質方法を適用させることにより、金属酸化物を含む粉体粒子をピックリングエマルションに容易に適用させることができる。
【0033】
本発明は特に金属酸化物を主たる成分として含む複合粒子に適用することが好ましい。
さらに、本発明は金属酸化物を主たる成分として含み、かつ、シリカ粒子を従たる成分として含む複合粒子に適用することが好ましい。
この場合、複合粒子全体における、シリカ粒子の含有量は、特に制限されないが、粉体粒子の表面の改質にかかる時間を短縮する観点から、下限値は、好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは18質量%以上とすることが好ましい。
【0034】
また金属酸化物を主たる成分として含む複合粒子全体における、シリカ粒子の含有量は、粉体粒子の表面の改質にかかる時間を短縮する観点から、上限値は45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下とすることが好ましい。
【0035】
また本発明は酸化アルミ粒子(Al2O3)を従たる成分として含み、その他の金属酸化物を主たる成分として含む複合粒子に適用することが好ましい。
この場合、複合粒子全体における、酸化アルミ粒子の含有量は、特に制限されないが、粉体粒子の表面の改質にかかる時間を短縮する観点から、下限値は、好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上とすることが好ましい。
他方、複合粒子全体における、酸化アルミ粒子の含有量の上限値は特に制限されず、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下を目安とすることができる。
【0036】
ここで、「主たる成分として含む」とは「全体の50質量%以上の含有量で含む」ことをいう。一方、「従たる成分として含む」とは「全体の50質量%未満の含有量で含む」ことをいう。
【0037】
複合粒子は、構成粉体を自動乳鉢、ボールミル、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、レディゲミキサー、V型ミキサー、ハンマーミル、ピンミル等の混合機を用いて混合することにより製造することができる。
【0038】
<2>分子構造中に酸素原子を有する油剤
本発明の粉体粒子表面の改質方法で用いる分子構造中に酸素原子を有する油剤としては、分子構造中にヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシ基、ニトロ基及びスルホ基等の官能基を有する油剤、又はシロキサン結合、エーテル結合、エステル結合等の結合を有する油剤が挙げられる。
【0039】
分子構造中に酸素原子を有する油剤としては、液体油脂、固体油脂、ロウ、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油等が例示できる。
【0040】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、メドウフォーム油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン、トリオクタン酸グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリン等が例示できる。
【0041】
固体油脂としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が例示できる。
【0042】
ロウ類としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が例示できる。
【0043】
高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸等が例示できる。
【0044】
高級アルコールとしては、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等が例示できる。
【0045】
エステル油としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、酢酸ラノリン、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソセチル、ステアリン酸スクロース、オレイン酸スクロース、12-ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジ-2-エチルヘキシル酸エチレングリコール、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、モノイソステアリン酸N-アルキルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ-2-エチルヘキシル酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ペンタンエリスリトール、トリ-2-エチルヘキシル酸グリセリン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、セチル2-エチルヘキサノエート、2-エチルヘキシルパルミテート、トリミリスチン酸グリセリン、トリ-2-ヘプチルウンデカン酸グリセライド、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、オレイン酸オイル、セトステアリルアルコール、アセトグリセライド、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、パルミチン酸セチル、アジピン酸ジイソブチル、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、エチルラウレート、セバチン酸ジ-2-エチルヘキシル、ミリスチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、セバチン酸ジイソプロピル、コハク酸2-エチルヘキシル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、クエン酸トリエチル等が例示できる。
【0046】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン等の鎖状シリコーン油や、ペンタシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサンなどの環状シリコーン油等が例示できる。
【0047】
本発明の粉体粒子表面の改質方法において、分子構造中に酸素原子を有する油剤としては、シリコーン油を用いることがより好ましく、環状シリコーン油を用いることがさらに好ましい。
シリコーン油を用いることで、より簡易に粉体粒子表面を改質することができる。
環状シリコーン油は、サンスクリーン剤の油剤として一般的に用いられている。本発明の粉体粒子表面の改質方法において、前記油剤として環状シリコーン油を用いることで、化粧品等の皮膚外用剤への応用が容易となる。
【0048】
<3>粉体粒子表面の改質方法
本発明の粉体粒子表面の改質方法によれば、粉体粒子を分子構造中に酸素原子を有する油剤に浸漬させることにより、粉体粒子の表面を改質、より具体的には、粉体粒子の表面の疎水化度を向上させることができる。ここで、「粉体粒子を分子構造中に酸素原子を有する油剤に浸漬させる」とは、粉体粒子表面の全体を前記油剤に接触させることをいう。
【0049】
粉体粒子表面の改質方法を用いれば、濡れ性が親水性である粒子を、親油性の粒子に改質することができ、また、濡れ性が親油性である粒子を、より親油性の粒子に改質することができる。
【0050】
粉体粒子を用いてピッカリングエマルションを調製する場合、該ピッカリングエマルションの乳化状態(油中水-水中油の別、乳化粒子径、乳化安定性など)は、該粉体粒子の表面の濡れ性に左右される。
つまり、ある粉体粒子に本発明の改質方法を適用し、適用後の粉体粒子を用いてピッカリングエマルションを調製すれば、適用前の同粉体粒子を用いて調製したピッカリングエマルションと異なる乳化状態を示すものとなる。
【0051】
粉体粒子を分子構造中に酸素原子を有する油剤に浸漬する際の前記油剤の温度は、好ましくは室温以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上である。
上記温度範囲とすることで、短い浸漬時間で粒子の表面を改質することができる。
【0052】
粉体粒子を分子構造中に酸素原子を有する油剤に浸漬する時間は特に限定されない。粉体粒子の種類や組成によって異なるが、本発明の改質方法の適用前後の粉体粒子を用いて調製したピッカリングエマルションにおいて油相と水相の逆転が見られる程の効果を得たい場合には、粉体粒子を前記油剤に浸漬する時間は、室温で6時間以上、または80℃で30分以上を目安とすることができる。
【0053】
粉体粒子の表面の改質の程度は、常法に従って接触角を測定することにより確認することができる。また、その粒子を用いて乳化を行い、ピッカリングエマルションを製造することで確認することもできる。
【0054】
乳化安定性や乳化粒子径などのピッカリングエマルションの性状は、粉体粒子の表面特性に左右される。したがって、本発明の改質方法によって粉体粒子の表面特性を調製することで、任意の性状を有するピッカリングエマルションを得ることができる。
【0055】
粉体粒子を前記油剤に一定時間浸漬させた後に、前記油剤と分離することで、表面が改質された粉体粒子を得ることができる。
【0056】
<4>乳化状態の調整方法
本発明は、上述した粉体粒子表面の改質方法を用いて粉体粒子表面を改質する工程と、油と水の割合を調整する工程とを備える乳化状態の調整方法にも関する。
本発明の乳化状態の調整方法によれば、粒子の浸漬時間及び水相と油相の割合を調整することで、ピッカリングエマルションを様々な乳化状態に調整することができる。
【0057】
従来、任意の乳化状態のピッカリングエマルションを得るため、粉体粒子表面を適切な表面処理剤により被覆し、粉体粒子の表面特性を最適化することが一般的であった。
本発明の乳化状態の調整方法によれば、適切な表面処理剤を選択し被覆するという煩雑な手間を要せずに、ピッカリングエマルションの乳化状態を調整することができる。
【0058】
図1は、乳化状態の調整方法を示したフローチャートである。これを参照して、本発明の乳化状態の調整方法について詳細に説明する。
【0059】
まず、ステップS1において、任意の粉体粒子を用いてピッカリングエマルションを製造し、その乳化状態の評価を行う。評価項目としては、W/O型又はO/W型等の乳化の種類や乳化粒子径、乳化状態の安定性等が挙げられる。ステップS1の評価によって、任意の粉体粒子をどのように調整すれば、任意の乳化状態のピッカリングエマルションを得ることができるか推定することができる。
【0060】
具体的には、油中水型のピッカリングエマルションについては、粉体粒子の分子構造中に酸素原子を有する油剤への浸漬時間を長くするほど、それを用いて調製したピッカリングエマルションの乳化粒子径を大きくすることができる。
【0061】
また、水中油型のピッカリングエマルションについては、粉体粒子の前記油剤への浸漬時間を長くするほど、それを用いて調製してピッカリングエマルションの乳化粒子径を小さくすることができ、さらに浸漬時間を長くすると、油中水型のピッカリングエマルションとすることができる。
【0062】
ステップS2において、ピッカリングエマルションの乳化状態を調整するために、粉体粒子表面を改質する工程(ステップS3)、水相と油相の割合を調整する工程(ステップS4)、及びこれら2つの工程を同時に行うかいずれかを選択する。
ステップS3については、<3>で述べた粉体粒子表面の改質方法を用いる。
ステップS4については、常法により水相と油相の割合を調整する。
【0063】
ステップS3により表面を改質した粉体粒子、またステップS4により調整した水相と油相の割合をもってピッカリングエマルションを調製し、このピッカリングエマルションについて、ステップS5の評価を行う。評価の項目はS1と同様である。
【0064】
そして、ステップS6において、調製したピッカリングエマルションが任意の乳化状態となっていれば調整を終了する。調製したピッカリングエマルションが任意の乳化状態となっていない場合には、ステップS2に戻る。
【0065】
本発明の調整方法において用いる粉体粒子としては、<1>で述べたものを用いることができる。
図示はしないが、ステップS2の後に、スッテプS3及びS4と並列して、粉体粒子を選択する工程を設けてもよい。より具体的には、ピッカリングエマルションの調製に複合粒子を用いる場合には、その複合粒子を構成する粉体粒子の割合を調整する工程を設けてもよい。
【0066】
本発明の乳化状態の調整方法において、水相としては、水又は水溶液のいずれも用いる
ことができる。また、油相としては<2>で述べた油剤の他に、炭化水素油等を用いるこ
とができる。
【0067】
<5>ピッカリングエマルションの製造方法
本発明のピッカリングエマルションの製造方法によれば、<3>で述べた粉体粒子表面の改質方法を用いて、粒子の表面を改質し、該表面が改質された粒子を用いて乳化を行うことで、様々な形態及び粒子径のピッカリングエマルションを得ることができる。
【0068】
ピッカリングエマルションの油相としては、<2>で述べた油剤の他に、炭化水素油等を用いることができる。
【0069】
本発明のピッカリングエマルションの製造方法は、粉体粒子表面を改質した後に、粒子が浸漬している分子構造中に酸素原子を有する油剤、水又は水溶液を加えることでピッカリングエマルションを製造する実施の形態とすることができる。
【0070】
また、粉体粒子表面を改質した後に、分子構造中に酸素原子を有する油剤から表面が改質された粉体粒子を分離し、該粉体粒子を用いて、別途調製した油相と水相を乳化することにより、ピッカリングエマルションを製造する実施の形態とすることもできる。前記油剤と粉体粒子の分離方法は、常法を用いることができ、遠心分離等が例示できる。
【0071】
本発明のピッカリングエマルションの製造方法における乳化の工程は、常法を用いることができる。
【0072】
また、本発明のピッカリングエマルションの製造方法によれば、従来技術では製造することのできなかった形態の粒子を含むピッカリングエマルションを製造することができる。
【0073】
<6>ピッカリングエマルション
本発明は上述の製造方法により製造されたピッカリングエマルションにも関する。すな
わち、本発明は、分子構造中に酸素原子を有する油剤に浸漬させた粉体粒子を含むことを
特徴とする、ピッカリングエマルションである。
【0074】
油剤については<2>に記載した事項をそのまま適用することができる。
本発明においては、環状シリコーン油に浸漬させた粉体粒子を含む実施の形態とすることが特に好ましい。
【0075】
また、本発明は環状シリコーン油により被覆されている粉体粒子を含むことを特徴とする、ピッカリングエマルションにも関する。
【0076】
本発明に用いる環状シリコーン油としては、ペンタシロキサン、デカメチルポリシロキサン、ドデカメチルポリシロキサン、テトラメチルテトラハイドロジェンポリシロキサン等が例示できる。
【0077】
粉体粒子としては、<1>で述べたものをそのまま適用することができる。
【0078】
本発明のピッカリングエマルションにおいては、上記成分以外に通常化粧料で使用される任意成分を発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。かかる任意成分としては、脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類、イミダゾリン系両性界面活性剤(2-ココイル-2-イミダゾリニウムヒドロキサイド-1-カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE-ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE-グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2-オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック(登録商標)型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2-デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類、表面処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、表面処理されていても良い、酸化コバルト、群青、紺青、酸化亜鉛の無機顔料類、表面処理されていても良い、酸化鉄二酸化チタン焼結体等の複合顔料、表面処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類、レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類、ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩,ビタミンB6トリパルミテート,ビタミンB6ジオクタノエート,ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12,ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α-トコフェロール,β-トコフェロール,γ-トコフェロール,ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸モノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジエトキシパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸ブチルエステル、N,N-ジメチルパラアミノ安息香酸エチルエステル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル等の安息香酸誘導体;ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等のアントラニル酸誘導体;サリチル酸及びそのナトリウム塩、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸誘導体;オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、2-エチルヘキシルp-メトキシシンナメート(メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸オクチル)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート(シノキサート)、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリラート(オクトクリレン)、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート、フェルラ酸及びその誘導体等のケイ皮酸誘導体;2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン(オキシベンゾン-3)、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4’-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4’-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体;3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール;2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン;4-t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン等のジベンゾイルメタン誘導体;オクチルトリアゾン;ウロカニン酸及びウロカニン酸エチル等のウロカニン酸誘導体;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、1-(3,4-ジメトキシフェニル)-4,4-ジメチル-1,3-ペンタンジオン、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル等のヒダントイン誘導体;フェニルベンズイミダソゾールスルホン酸、テレフタリリデンジカンフルスルホン酸、ドロメトリゾールトリシロキサン、アントラニル酸メチル、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ルチン及びその誘導体、オリザノール及びその誘導体等の紫外線吸収剤などが例示できる。
【0079】
本発明のピッカリングエマルションは界面活性剤を含んでもよいがその含有量は極力少なくすることが好ましい。界面活性剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0質量%である。
このような形態とすることにより、界面活性剤による皮膚刺激を抑制し、使用時のべたつきを軽減し、化粧持ち及び安定性を向上することができる。
【0080】
本発明のピッカリングエマルションは、皮膚外用剤に好適である。また、中でも、サンスクリーン皮膚外用剤とすることが好ましい。
特に、化粧料に用いることが好ましく、日焼け止め、化粧下地等とすることが好ましい。
【実施例0081】
<試料及び試験方法>粉体粒子表面の改質及びピッカリングエマルションの製造
後述する試験例1~3において用いた粉体粒子の調製及びその表面の改質、並びにピッカリングエマルションの製造は、下の(1)及び(2)に記載の通りに行った。
(1)粉体粒子の調製
表1に記載の組成にて粉体粒子を混合し、粒子1~9の9つの粒子を作製した。
【0082】
(2)粉体粒子の表面の改質
この粉体粒子を、ガラス瓶に入っているデカメチルシクロペンタシロキサンに、一定の温度で一定時間浸漬した。デカメチルシクロペンタシロキサン中の粉体粒子の重量分率は、0.0125となるように調整した。
【0083】
(3)ピッカリングエマルションの製造
粉体粒子を分子構造中に酸素原子を有する油剤に一定時間浸漬させた後、粉体粒子が浸漬している状態の前記油剤へ、適当な量の水を加え、超音波装置(Vibracell VCX130、歯先円直径3mm、Sonics&Material社製)を用いて、5分間、20kHzの条件下で乳化を行った。
形成したエマルションの形態を評価するために、水相にエオジンブルーを加え、着色した。
【0084】
【表1】
【0085】
<試験例1>形成したエマルションの形態
粒子3及び粒子9を、25℃で0分~30日の間シクロペンタシロキサンに浸漬させ、ピッカリングエマルションを製造した。水は、水と油の全重量に対して、水の重量分率(φw)が0.10~0.80になるように加えた。製造したエマルションを、光学顕微鏡観察により観察し、評価した。粒子3の結果を表2(実施例1)、粒子9の結果を表3(実施例2)に示す。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
実施例1は、油剤への浸漬時間が0~6時間及び水の重量分率が0.1~0.8の条件では、いずれもo/w型のピッカリングエマルションを形成した。また、油剤への浸漬時間が6時間を超えると、水の重量分率によって形成されるエマルションの乳化状態が変化し、w/o型のエマルション及びo/w/o又はw/o/w型のダブルエマルションが形成された。
【0089】
一方で、実施例2は、φw=0.35~0.4の場合には、o/w/o型のエマルショ
ンを形成したが、浸漬時間が3~6時間を超えると、乳化されていない水相部分が観察さ
れなくなった。
これらの結果から、粉体粒子を分子構造中に酸素原子を有する油剤へ浸漬させることで、粒子の疎水化度が向上していき、粉体粒子表面を改質することができることがわかった。また、浸漬時間と水と油の重量分率を調整することで、ピッカリングエマルションの乳化状態を調整できることがわかった。
【0090】
<試験例2>乳化粒子径の調整
粒子3(実施例3)及び粒子9(実施例4)を用いて調製したピッカリングエマルション(Ts:12時間~120日、φw:0.2)の乳化粒子径を、光学顕微鏡を用いて測定した。結果を図2に示す。
【0091】
実施例3の結果から、浸漬時間が12時間の場合の乳化粒子径は約6μmであったが、浸漬時間が120日の場合の乳化粒子径は30μmであることがわかった。
また、実施例4の結果から、浸漬時間0日のエマルション(浸漬させずに乳化させた場合のエマルション)に見られた小さい乳化粒子が、浸漬時間120日のエマルションには見られなかった。
【0092】
これらの結果から、油中水型のピッカリングエマルションは、調製に用いた粉体粒子の
分子構造中に酸素原子を有する油剤への浸漬時間が長くなるほど乳化粒子径が大きくなる
ことがわかった。
【0093】
また、実施例3の12時間後の写真を見ると、乳化粒子のほとんどが小さく不定形であることがわかる。これは、o/w型からw/o型のピッカリングエマルションに変化した直後であることが原因であると考えられる。この結果から、水中油型のピッカリングエマルションは、調製に用いた粒子の分子構造中に酸素原子を有する油剤への浸漬時間が長くなるほど乳化粒子径が小さくなり、一定時間を超えると、油中水型に変化することがわかった。
【0094】
<試験例3>
粒子1~8を、デカメチルシクロペンタシロキサンに80℃で一定時間浸漬させた。その後、φwが0.2となるように水を加え、エマルションを製造し、それぞれエマルションの形態を光学顕微鏡により観察し、評価した。結果を表4に示す(実施例5~12)。
【0095】
【表4】
【0096】
表4の結果から、いずれの粒子を用いても、浸漬時間が短いとo/w型のエマルションを形成するが、浸漬時間が長くなるとo/w/o型又はw/o型のエマルションを形成することがわかった。また、その浸漬時間は、粉体粒子の組成により異なっていることがわかった。
【0097】
さらに、表2及び表4の実施例1及び実施例7の結果から、浸漬を25℃で行うと、6時間以上浸漬させることでw/o型のエマルションを形成するが、浸漬を80℃で行うと、1時間以上浸漬させることでw/o型のエマルションを形成することがわかった。
この結果から、粒子を分子構造中に酸素原子を有する油剤に浸漬する際の温度を高くすることで、粉体粒子表面の改質に要する浸漬時間を短縮できることがわかった。
【0098】
また、上で調製したピッカリングエマルションは、調製後、経時的に乳化状態が変化することはなかった。
この結果は、粉体粒子はピッカリングエマルション中、水相と油相の界面に吸着している状態においては、その表面の一部が油相に接触していることをもって、表面特性が改質されないということを示している。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、乳化剤形の皮膚外用剤に応用することができる。

図1
図2