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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005595
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】水処理施設
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20240110BHJP
   E04F 11/032 20060101ALI20240110BHJP
   E04F 11/02 20060101ALI20240110BHJP
   E04F 11/104 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C02F1/00 J
E04F11/032
E04F11/02
E04F11/104
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105845
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】大関 宗孝
(72)【発明者】
【氏名】三岡 善平
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕作
(72)【発明者】
【氏名】後藤 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘輔
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC01
2E301CC34
2E301CC54
2E301CD12
2E301DD17
(57)【要約】
【課題】水処理施設内に設置された螺旋階段の機械的強度を高くする。
内部に設置された螺旋階段の機械的強度を高めた水処理施設を得る。
【解決手段】下側から順に踏板20A~20Mが心柱10に対して、下側からみて右回りで上側に向かう螺旋状で装着されている。この螺旋階段1は、連続した12枚の踏板20を一周期とした周期的構造を有する。立坑の内面側にある踏板20Bの、下側かつ踏板20C側において、心柱10と立坑側の間を水平に延伸して直線的に連結する心柱支持部材30Aが設けられている。心柱支持部材30Bは、踏板20Bとの間に踏板20Cを挟んで存在する踏板20Dにおいて、踏板20Bにおける場合と同様に設置される。心柱10は、心柱支持部材30A、30Bによって立坑の内面に固定される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延伸する心柱を中心として複数の踏板が、隣接する前記踏板が平面視において部分的に重複するように、鉛直方向に沿って前記心柱の周りの設定角度が徐々に異なるように螺旋状に配置されることによって構成された螺旋階段が、上側から水が溜められる立坑の内部において設置された水処理施設であって、
前記踏板は、前記心柱と交差する板状の構成を有する上板部を具備し、
前記心柱と前記立坑の内面との間を水平方向において連結する心柱支持部材が、前記設定角度の異なる2つの前記踏板の前記上板部の下側において、それぞれ設けられたことを特徴とする水処理施設。
【請求項2】
前記螺旋階段において、
複数の前記踏板は共通の構造を具備し、
鉛直方向で隣接する2つの前記踏板の間における前記心柱の周りの設定角度の差は、複数の前記踏板の間で一定とされたことを特徴とする請求項1に記載の水処理施設。
【請求項3】
前記螺旋階段における複数の前記踏板の配置は、鉛直方向に沿った高さに対して周期的とされ、
2つの前記心柱支持部材の各々は、前記踏板の配置の周期に同期して、各周期内における対応した前記踏板の前記上板部の下側において、それぞれ設けられたことを特徴とする請求項2に記載の水処理施設。
【請求項4】
前記螺旋階段は、前記踏板の、前記心柱を中心とした径方向外側の周方向の両側においてそれぞれ装着された、鉛直方向に沿って上方に延伸する踏板固定部材を具備し、
一方の側にある前記踏板固定部材は、前記心柱を中心とした周方向で隣接する他の前記踏板に装着された他方の側にある踏板固定部材と共通とされ、
前記踏板は、前記踏板固定部材の各々を挿通させる箇所においてそれぞれ設けられ、前記上板部よりも下側に突出した踏板固定部材支持部を具備し、
前記踏板固定部材を挿通させる貫通孔が前記上板部及び前記踏板固定部材支持部を貫通して形成され、
前記心柱支持部材は、平面視において、2つの前記踏板固定部材支持部の間に設けられたことを特徴とする請求項2又は3に記載の水処理施設。
【請求項5】
前記立坑は複数のプレキャスト部材が鉛直方向で積層されて構成され、
前記心柱支持部材は、前記プレキャスト部材の前記内面に形成された凹部の内部において、固定具を用いて固定されたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の水処理施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が昇降のために用いることができると共に、投入された水を案内する螺旋階段が設置された水処理施設の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛直方向に延伸する心柱に対して、平板状の上面を具備する複数の踏板が階段を形成するように螺旋状に装着された構造を具備する螺旋階段が、例えば特許文献1等に記載されている。ここで、防災用の大型の水処理施設内にこの螺旋階段を設ければ、作業者が作業の際にこの螺旋階段を昇降することができる。一方、この螺旋階段の上部から水が投入される構成とすれば、この螺旋階段を投入された水の案内のためにも用いることができる。
【0003】
特許文献1に記載されたように、心柱周りの角度を隣接する2つの踏板間で一定値だけずらし、かつこの2つの踏板の高さを一定値だけ変えることによってこれらの間で部分的に重複する領域を設けて段差を形成し、この2つの踏板で階段を構成することができ、多数の踏板を同様に心柱に対して装着することによって、螺旋階段を形成することができる。この際、例えば FRP(Fiber Reinforced Plastics)で構成された共通の構造の複数の踏板を用いることができる。これによって、この螺旋階段の機械的強度を高くし、かつ安価とすることができる。このため、この水処理施設を安価とすることができる。
【0004】
また、特許文献1に記載の技術においては、手摺を固定するための2本の手摺柱が単一の踏板に対して装着され、この2本の手摺柱の間に手摺が装着される。この際、隣接する踏板が重複した部分で1本の手摺柱を共有するような構成とすることによって、隣接する踏板の位置関係を固定することができる。この構成を全ての踏板間で採用することによって、全ての踏板間の位置関係が固定された螺旋階段を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-78313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような螺旋階段を水処理施設内に用いる場合においては、この螺旋階段に対する作業者の昇降の際の荷重に対する強度と、水が投入される際に印加される荷重に対する強度が共に要求される。
【0007】
前記のような螺旋階段においては、全ての踏板は、単一の細長い心柱に対して装着され、踏板に印加された荷重は全て心柱に加わるため、螺旋階段全体の機械的強度は細長い心柱に委ねられることになり、十分な機械的強度を得ることは容易ではなかった。
【0008】
このため、水処理施設内に設置された螺旋階段の機械的強度を高くすることが求められた。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明は、鉛直方向に延伸する心柱を中心として複数の踏板が、隣接する前記踏板が平面視において部分的に重複するように、鉛直方向に沿って前記心柱の周りの設定角度が徐々に異なるように螺旋状に配置されることによって構成された螺旋階段が、上側から水が溜められる立坑の内部において設置された水処理施設であって、前記踏板は、前記心柱と交差する板状の構成を有する上板部を具備し、前記心柱と前記立坑の内面との間を水平方向において連結する心柱支持部材が、前記設定角度の異なる2つの前記踏板の前記上板部の下側において、それぞれ設けられたことを特徴とする。
本発明は、前記螺旋階段において、複数の前記踏板は共通の構造を具備し、鉛直方向で隣接する2つの前記踏板の間における前記心柱の周りの設定角度の差は、複数の前記踏板の間で一定とされたことを特徴とする。
本発明において、前記螺旋階段における複数の前記踏板の配置は、鉛直方向に沿った高さに対して周期的とされ、2つの前記心柱支持部材の各々は、前記踏板の配置の周期に同期して、各周期内における対応した前記踏板の前記上板部の下側において、それぞれ設けられたことを特徴とする。
本発明において、前記螺旋階段は、前記踏板の、前記心柱を中心とした径方向外側の周方向の両側においてそれぞれ装着された、鉛直方向に沿って上方に延伸する踏板固定部材を具備し、一方の側にある前記踏板固定部材は、前記心柱を中心とした周方向で隣接する他の前記踏板に装着された他方の側にある踏板固定部材と共通とされ、前記踏板は、前記踏板固定部材の各々を挿通させる箇所においてそれぞれ設けられ、前記上板部よりも下側に突出した踏板固定部材支持部を具備し、前記踏板固定部材を挿通させる貫通孔が前記上板部及び前記踏板固定部材支持部を貫通して形成され、前記心柱支持部材は、平面視において、2つの前記踏板固定部材支持部の間に設けられたことを特徴とする。
本発明において、前記立坑は複数のプレキャスト部材が鉛直方向で積層されて構成され、前記心柱支持部材は、前記プレキャスト部材の前記内面に形成された凹部の内部において、固定具を用いて固定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のように構成されているので、内部に設置された螺旋階段の機械的強度を高めた水処理施設を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係る水処理施設の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係る水処理施設の断面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る水処理施設において用いられる螺旋階段の部分的な斜視図である。
図4】本発明の実施の形態に係る水処理施設において用いられる螺旋階段の部分的な上面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る水処理施設において用いられる螺旋階段の踏板の斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る水処理施設において用いられる螺旋階段の踏板の上面図(a)、下面図(b)である。
図7】本発明の実施の形態に係る水処理施設において用いられる螺旋階段の踏板の2方向からみた側面図である
図8】心柱支持部材が固定された状態の踏板の上面図(a)下面図(b)である。
図9】心柱支持部材を心柱に固定する構造の第1の例の斜視図である。
図10】心柱支持部材を心柱に固定する構造の第2の例の斜視図である。
図11】心柱支持部材が立坑に対して固定された状態の断面図である。
図12】心柱支持部材が固定される立坑の内面の構造の一例の斜視図である。
図13】心柱支持部材が固定される立坑の内面の構造の一例に対して心柱支持部材が固定される際の断面図である。
図14】心柱支持部材が固定される立坑の内面の構造の他の一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る螺旋階段について説明する。図1は、この螺旋階段1が設けられる水処理施設200の構成を示す斜視図である。この水処理施設200においては、例えばhttps://www.nipponhume.co.jp/product/pcwellmeth.htmlに記載されたウェルマンである。ここで、ウェルマンは、PCウェル工法によって地中において円環状のプレキャストコンクリートブロックが積層されて構築された立坑100であり、地中で水を溜める構造として特に好ましく用いることができる。
【0014】
図1においては、立坑100は点線で簡略化されて記載され、底版Bの上に、鉛直方向(z方向)に沿った中心軸をもつ短い円筒形状のプレキャストコンクリートブロック100A~100Cが積層されて構成されることによって、長い円筒形状に形成されている。この内径は例えば4m~10mの範囲である。このため、作業者が昇降できる螺旋階段1を立坑100の内部に設置することができ、この螺旋階段1に沿って水を導入することもできる。図1における螺旋階段1に沿った矢印は、この際の作業者及び水の動きを示す。鉛直方向に沿った心柱10が螺旋階段1の中心軸となり、螺旋階段1は、共通の構造を有する多数の踏板20が心柱10に装着されて構成される。螺旋階段1の記載も図1において簡略化されて示され、ここでは心柱10と踏板20以外の構成要素の記載は省略されている。
【0015】
ここで、鉛直方向に沿った心柱10が螺旋階段1の中心軸となり、螺旋階段1は、共通の構造を有する多数の踏板20が心柱10に装着されて構成される。この螺旋階段1は、心柱10が底版Bに固定され、かつ図1における6つの心柱支持部材30A、30Bが立坑100の内面に固定されることによって、この水処理施設200において固定される。後述するように、踏板20の水平方向における配置は鉛直方向における高さに対して周期的であり、それぞれ水平に延伸する6つの心柱支持部材が、鉛直方向で隣接する2つ(30A、30B)ずつが組になり、この周期内において一組ずつが設けられる。3つの心柱支持部材30A、3つの心柱支持部材30Bは、それぞれ心柱10の周りの周方向における同一の箇所に設けられる。心柱支持部材30A、30Bは例えば金属製の角パイプで構成することができる。
【0016】
図2は、図1における心柱10に沿った断面図である。ここでは、構成を模式化して示すために、縦横の縮尺は実際のものとは異なる。また、各踏板20の断面形状は後述する形状とは異なり、単純化されて矩形形状とされている。この立坑100においては、図2における上側の流入口101から水が投入されて螺旋階段1に沿って水が溜められ、溜められた水は下側の流出口102から排出される。ただし、立坑100に流出口102が設けられている必要はない。この場合には、例えば立坑100の内部に溜められた水をポンプ等を用いて汲み上げることによって、水が排出される。
【0017】
図3は、この螺旋階段1における13枚の踏板20に対応した部分の構成を示す斜視図であり、ここでは図1、2で省略された構成要素も記載され、心柱支持部材30A、30Bも記載されている。ここでは、下側から順に踏板20A~20Mが心柱10に対して、下側からみて右回りで上側に向かう螺旋状で装着されている。各踏板は、下側からみて右回りで上側に向かう螺旋状で心柱10に装着されている。ここで、ある一つの踏板20(例えば踏板20E)は、その下側で隣接する踏板20(踏板20D:下側踏板)、その上側で隣接する踏板20(踏板20F:上側踏板)と、鉛直方向から見て(平面視において)部分的に重複する。また、心柱支持部材30Aは踏板20Bの下側に、心柱支持部材30Bは踏板20Dの下側に、それぞれ設けられている。
【0018】
図4は、このような心柱10と踏板20A~20Jまでの位置関係を示す、上面図である。ここでは、心柱支持部材30A、30Bと立坑100の一部も記載されている。図4において、ある一つの踏板20(例えば踏板20E)に対して、その下側で隣接する踏板20(踏板20D:下側踏板)は、中心(心柱10)の周りで時計回りの側(第1の側)で30°ずれた角度で存在し、これらは平面視において部分的に重複する。同様に、踏板20Eに対して、その上側で隣接する踏板20(踏板20F:上側踏板)は、心柱10の周りで反時計回りの側(第2の側)で30°ずれた角度で存在し、これらは平面視において部分的に重複する。同様の位置関係は、上端部と下端部の踏板20以外の全てで成立するため、全ての踏板によって螺旋状に階段が形成される。この際、この螺旋階段1は、連続した12枚の踏板20を一周期とした周期的構造を有する。
【0019】
また、図3、4に示されるように、各踏板20における心柱10からみた外側には、第1の側、第2の側のそれぞれにおいて、鉛直方向に沿って上側に延伸する側壁部材支持柱(踏板固定部材)31が設置される。ここで、例えば踏板20Eにおける第1の側の側壁部材支持柱31は、踏板20Eを下側に向けて上下方向で貫通し、下側の踏板20Dにおける第2の側の側壁部材支持柱31となっており、踏板20Eにおける第2の側の側壁部材支持柱31は、踏板20Eを上側に向けて上下方向で貫通し、上側の踏板20Fを貫通し、踏板20Fにおける第1の側の側壁部材支持柱31となっている。他の踏板においても、同様に側壁部材支持柱31が装着され、これによって鉛直方向で隣接する2つの踏板20間の水平方向における位置関係が定まる。
【0020】
図3、4に示されるように、隣接する側壁部材支持柱31間には、鉛直方向に広がる板状の側壁部材32が固定されている。側壁部材32とその下側の踏板20との間には隙間が生じないように設定される。側壁部材32は、作業者がこの螺旋階段1を昇降する際の手摺になると共に、水をこの螺旋階段1に流す際に、水を螺旋階段1に沿って流し外側に漏らさないために機能する。側壁部材支持柱31は、側壁部材32を支持するため、及び前記のように上下方向で隣接する踏板20の水平方向の位置関係を固定するために機能する。上記のような踏板20、側壁部材支持柱31、側壁部材32の関係は、特許文献1に記載されたものと同様である。
【0021】
図4において、立坑100の内面側にある踏板20Bの、下側かつ踏板20C側(第2の側)において、心柱10と立坑100側の間を水平に延伸して直線的に連結する心柱支持部材30Aが設けられている。心柱支持部材30Aの心柱100側の端部は心柱100に対して固定される。この際、例えば踏板20H及び心柱100に形成された凹部にこの端部が嵌合するような形態とすることができる。心柱支持部材30Aの立坑100側の端部は、この心柱支持部材30Aと同じ高さにおいて立坑100の内面に設置された心柱支持部材固定部40に対して、固定具(例えばボルト、ナット)を用いて固定される。心柱支持部材固定部40も、固定具によって立坑100の内面に固定される。心柱支持部材30Bは、踏板20Bとの間に踏板20Cを挟んで存在する踏板20Dにおいて、踏板20Bにおける場合と同様に設置される。このため、図4において心柱支持部材30Aと心柱支持部材30Bのなす角度は、踏板20Bと踏板20Dの設定角度差である60°となる。心柱10は、心柱支持部材30A、30Bによって立坑100の内面に固定される。
【0022】
図5は、この踏板20の構造を示す、上側かつ第1の側(下側踏板がある側)からみた斜視図(a)、上側かつ第2の側(上側踏板がある側)からみた斜視図(b)である。また、図6は、この踏板20の上面図(a)、下面図(b)である。図5等において、鉛直方向をz方向(上側を正とする)、径方向をx方向(心柱10からみた外側を正とする)、z方向及びx方向と垂直な方向をy方向(第1の側を正とする)とする。図7は、図6(a)における図中上側(心柱10を中心とした径方向外側:x方向正側)からみた側面図(a)、図中左側(y方向負側)からみた側面図(b)である。
【0023】
これらの図に示されるように、踏板20は、平面視において、心柱10を中心とする円弧形状の外周と、心柱10がある側からこの外周側に向かうそれぞれ第1の側(y方向正側)、第2の側(y方向負側)における2つの側面を具備する。また、図5(b)に示されるように、この踏板20の上側には、水平(xy方向)に広がる上面を具備する板状の上板部21が設けられる。踏板20の上面側はこの上板部21で占められる。上板部21には、心柱10が挿通する孔部である心柱挿入用孔21Aと、心柱10からみた外側において側壁部材支持柱(踏板固定部材)31が挿通する孔部である側壁部材支持柱挿入用孔(踏板固定部材挿入用孔)21B(2つ)が設けられる。踏板20の上面側(上板部21)は、これらの孔部以外では平坦な水平面を構成する。このため、作業者は上板部21の上面に足を乗せることができる。
【0024】
また、図5(a)、図6に示されるように、踏板20の第1の側(y方向正側)においては、上板部21から下側に向けて突出する板状の側板部22が設けられる。側板部22は、心柱10を中心とした径方向(x方向)、及び鉛直方向(z方向)に広がる、上板部21と直交する板状とされる。後述するように、図3の構成においては、側板部22の下端は、この踏板20の下側で隣接する踏板20の上板部21に当接する。このため、図5(a)における上板部21、側板部22と、この踏板20の下側で隣接する踏板20の上板部21で、階段が形成される。
【0025】
また、上板部21の下側かつ径方向外側における側壁部材支持柱挿入用孔21Bに対応する2箇所には、鉛直方向に延伸する柱状の側壁部材支持柱支持部(踏板固定部材支持部)25が設けられ、前記の側壁部材支持柱挿入用孔21Bは、上板部21と側壁部材支持柱支持部25を貫通するように形成される。これによって、側壁部材支持柱31をこの踏板20で強固に支持することができる。同様に、心柱挿入用孔21Aに対応した柱状の心柱支持部26が心柱10側かつ上板部21の下側に設けられ、心柱挿入孔21は上板部21と心柱支持部26を貫通するように形成される。踏板20をFRPで構成すれば、上板部21、側板部22、側壁部材支持柱支持部25、心柱支持部26を一体化して容易に形成することができる。また、上板部21の下面側には、心柱支持部材30A等と干渉しない限りにおいて、上板部21(踏板20)の機械的強度を補強するための構造(リブ構造等)を適宜向けてもよい。
【0026】
図3、4等に示されるように、この踏板20は心柱10の周りの設定角度が上側からみて30°ずつ反時計回りにずれるように装着され、この設定角度は踏板12枚で一回りするように、平面視における周期的な構成を具備する。このため、鉛直方向において図4の構成は繰り返され、心柱支持部材30A、30Bは鉛直方向で周期的に設けられる。このため、心柱支持部材30A、30Bによって、心柱10は鉛直方向における複数の箇所で支持される。このため、螺旋階段1の機械的強度を高めることができる。
【0027】
図8は、心柱支持部材30Aを心柱10に対して固定した際の踏板20Bとの間の位置関係を図6に対応させて示す図である。ここで、心柱支持部材30Aと心柱10の間の固定のための構造については後述する。心柱支持部材30Aは、図8に示されるように、上板部21の下側で下側に突出した2つの側壁部材支持柱支持部25の間に設けられる。このため、心柱支持部材30Aが作業者の昇降時に障害となることはなく、水流の障害となることもない。
【0028】
図9は、心柱支持部材30Aを心柱10に対して固定する構造の第1の例を示す斜視図である。ここでは、心柱10が鉛直方向で分割され、下側の心柱10Aの最上段に薄い円板形状の鋼製の固定用フランジ51が固定される。図9においては、固定用フランジ51よりも下側の踏板20は全て装着されているが、その記載は省略されている。固定用フランジ51の心柱10Aに対する固定方法は適宜設定され、例えば、心柱10Aがパイプ形状である場合には、その内面側から固定具を用いて固定することができる。固定用フランジ51の径方向外側に突出する板状のフランジ側固定部511を設け、かつ心柱支持部材30Aの心柱10A側に板状の心柱支持部材側固定部301を設ければ、図9に示されるように、フランジ側固定部511と心柱支持部材側固定部301を、例えばボルトとナットで構成される固定具61を用いて固定し、固定用フランジ51と心柱支持部材30Aを固定することができる。
【0029】
その後、上側の心柱10Bを、例えば下側の心柱10Aに対して嵌合させて装着し、心柱10Bに対して複数の踏板20を装着することができる。固定用フランジ51を薄く構成すれば、この前後の踏板20で構成される階段の高さも、他の部分と大差がないようにすることができる。
【0030】
上記の例では心柱10Aに対して固定された固定用フランジ51が用いられたが、踏板20(心柱支持部26)と同様に心柱10を挿通させたリング状の部材を用いて心柱支持部材30Aを固定することもできる。図10は、このとうな第2の例の構造を示す斜視図である。図10(a)、(b)は、心柱支持部材30Aの固定前、固定後の状態をそれぞれ示す。ここで、上から2番目の踏板20(心柱支持部26)と上から3番目の踏板20(心柱支持部26)の間には、心柱支持部26と同様に心柱10を挿通させる固定用リング52が装着されている。前記の固定用フランジ51と同様に、固定用リング52も心柱支持部26よりも鉛直方向で薄く形成されている。固定用リング52からは、径方向外側に向けて局所的に突出する棒状の固定用突起部521が設けられている。
【0031】
一方、心柱支持部材30Aの心柱10側には、固定用突起部521が嵌合する凹部である固定用突起部収容部302が形成されている。このため、図10(b)に示されるように、固定用突起部521を固定用突起部収容部302に嵌合させることによって、心柱支持部材30Aを固定用リング52に固定することができる。固定用リング52が心柱10に対して固定されずに回動可能であっても、後述するように心柱支持部材30Aが立坑100の内面側で固定されれば、心柱10が心柱支持部材30Aによって支持される。なお、図10(b)の状態で、心柱支持部材30Aの外側から心柱支持部材30Aと固定用突起部521をネジ等の固定具で固定すれば、より確実に心柱支持部材30Aが固定用リング52(心柱10)に対して固定される。
【0032】
前記のように図2における踏板20の配置を周期的とすれば、心柱支持部材30A、30Bとその直上に設けられる踏板20と立坑100の内面との間の位置関係は各周期内で同様となるため、共通の構造の心柱支持部材30A、30Bを用いることができる。この際、3つの心柱支持部材30A、3つの心柱支持部材30Bは、それぞれ異なる高さに設けられるため、これによってこの螺旋階段1が立坑100に対して強固に固定される。
【0033】
図11は、心柱支持部材30A(30B)が心柱支持部材固定部40によって立坑100に固定される際の構造を示す鉛直方向に沿った断面図である。ここでは、この断面がL字形状である心柱支持部材固定部40における立坑100側の面が、立坑100に対して、心柱支持部材固定部40及び立坑100を貫通する固定具41(例えばボルトとナット)で固定される。一方、心柱支持部材30Aは、断面が矩形形状である角パイプで構成されるものとし、心柱支持部材30Aの下面が、心柱支持部材固定部40における立坑100側の面と直交した面に対して、同様の固定具42で固定される。
【0034】
また、このような心柱支持部材固定部40を用いず、この固定のための構造を立坑100側に設け、心柱支持部材30A、30Bあるいは螺旋階段1をより強固に立坑100に対して固定することができる。このような固定のための構造を設けることは、前記のように立坑100をPCウェル工法で構築する場合には、このような構造を図1、2におけるプレキャストコンクリートブロック100A~100Cに形成することが容易である。
【0035】
図12は、このような構造として、立坑100の内面において凹部を形成した例について示す斜視図である。図12においては、プレキャストコンクリートブロック100Bにおいてこのような凹部である固定用凹部103が形成された場合における、プレキャストコンクリートブロック100B(立坑100)の一部を内面側からみた斜視図である。プレキャストコンクリートブロック100Bは、施工現場(水処理施設200が設置される場所)とは異なる工場で型枠を用いて作成されるため、このような構造のプレキャストコンクリートブロック100Bを型枠を用いて容易に製造することができる。
【0036】
図13は、この場合において心柱支持部材30Aをプレキャストコンクリートブロック100Bに対して固定した際の形態を示す、心柱支持部材30Aの延伸方向及び鉛直方向に沿った断面図である。ここでは、心柱支持部材30Aが、断面が矩形形状である角パイプで構成されるものとする。固定用凹部103内部の下面に対して、心柱支持部材30Aの下面が例えばアンカー(アンカーナット)を用いた固定具43で固定される。この構造によって、心柱支持部材30Aあるいは螺旋階段1をより強固に立坑100に対して固定することができる。
【0037】
また、固定用凹部として、図12のような形態ではなく、プレキャストコンクリートブロック100Bの上下の端部から形成された溝を用いることもできる。図14は、このような場合の形態を図10に対応させて示す図である。図14においては2つの固定用凹部が形成され、左側の固定用凹部103A、右側の固定用凹部103Bは共にプレキャストコンクリートブロック100Bの上端側と連結して形成される。固定用凹部103A、103B内においても、図11における固定用凹部103内と同様に心柱支持部材30Aを固定できることは明らかである。固定用凹部のプレキャストコンクリートブロック100B内の位置(心柱支持部材30A、30Bの高さ)に応じて、固定用凹部の形態を適宜設定することができる。
【0038】
なお、前記の例においては、図4に示されたように、隣接する踏板20の間のなす角度が30°であるものとし、心柱支持部材30Aと心柱支持部材30Bが、一つの踏板20を挟んだ2つの踏板20の下面側に設けられ、これによって心柱支持部材30Aと心柱支持部材30Bのなす角度が60°とされた。しかしながら、これらの設定は適宜行うことができる。例えば、螺旋階段が平面視において大きな場合には、隣接する踏板20の間の間の角度をより小さくすることができ、これに応じて2つの心柱支持部材の間の角度、あるいは心柱支持部材が設けられた踏板の間に挟む踏板の数を適宜設定することができる。ただし、、隣接する2つの踏板の間のなす角度を、360の整数分の1とすることが、対になる2つの心柱支持部材(心柱支持部材30A、30B)を平面視における同一の箇所において異なる高さで設置することができ、これによって共通の構造、長さの心柱支持部材を用いることができるため、特に好ましい。
【0039】
また、図4に示された例では、心柱支持部材30Aの方が心柱支持部材30Bよりも長くされた。しかしながら、例えば螺旋階段1全体の心柱10周りの角度を調整し、図4における心柱支持部材30Aと心柱支持部材30Bの長さを等しくすることもできる。この場合、心柱支持部材30Aと心柱支持部材30Bで共通の角パイプ等を用いることができると共に、立坑に対して特に強固に螺旋階段を固定することができる。また、前記の例では、上板部21の上面は心柱10の延伸方向(z方向)と垂直とされたが、これらの間が厳密に垂直である必要はない。
【0040】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0041】
1 螺旋階段
10、10A、10B 心柱
20、20A~20M 踏板
21 上板部
21A 心柱挿入用孔
21B 側壁部材支持柱挿入用孔(踏板固定部材挿入用孔)
22 側板部
25 側壁部材支持柱支持部(踏板固定部材支持部)
26 心柱支持部
30A、30B 心柱支持部材
31 側壁部材支持柱(踏板固定部材)
32 側壁部材
40 心柱支持部材固定部
41~43、61 固定具
51 固定用フランジ
52 固定用リング
100 立坑
100A~100C プレキャストコンクリートブロック(プレキャスト部材)
101 流入口
102 流出口
103、103A、103B 固定用凹部
200 水処理施設
301 心柱支持部材側固定部
302 固定用突起部収容部
511 フランジ側固定部
521 固定用突起部
B 底版
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14