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特開2024-55956測位装置、作業車両、測位方法、及び測位プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055956
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】測位装置、作業車両、測位方法、及び測位プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/43 20100101AFI20240412BHJP
【FI】
G01S19/43
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031955
(22)【出願日】2024-03-04
(62)【分割の表示】P 2020139843の分割
【原出願日】2020-08-21
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181869
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 雄一
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】西野 光哉
(72)【発明者】
【氏名】楠野 順也
(72)【発明者】
【氏名】寺川 剛史
(57)【要約】
【課題】特定の基地局に対応する補正情報に基づいて移動体を測位する場合に、当該基地局の切り替えを防ぐことが可能な測位装置、作業車両、測位方法、及び測位プログラムを提供すること。
【解決手段】測位装置14は、一の圃場において、一の基地局が衛星から受信する衛星信号に基づいて生成される補正情報に基づいて作業車両10の位置を算出するRTK測位が可能になった場合に、RTK測位が可能になる直前に衛星信号に基づいて算出された圃場内における作業車両10の位置の測位情報を利用することによって、圃場内の全ての位置において、同一の基地局に対応する補正情報に基づいてRTK測位を実行する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の圃場において、一の基地局が衛星から受信する衛星信号に基づいて生成される補正情報に基づいて移動体の位置を算出する特定測位が可能になった場合に、
前記特定測位が可能になる直前に前記衛星信号に基づいて算出された前記圃場内における前記移動体の位置の測位情報を利用することによって、前記圃場内の全ての位置において、同一の前記基地局に対応する前記補正情報に基づいて前記特定測位を実行する、
測位方法。
【請求項2】
前記特定測位が可能になった場合に、前記特定測位が可能な間は、複数の基地局の中から測位情報に基づいて一の基地局を選択する基地局サーバーに、前記特定測位が可能になる直前の前記測位情報を送信し、
前記基地局サーバーから取得する前記補正情報に基づいて前記特定測位を実行する、
請求項1に記載の測位方法。
【請求項3】
前記特定測位が可能になった場合に、前記特定測位が可能な間は、前記圃場内の前記移動体の位置に関わらず、同一の前記測位情報を前記基地局サーバーに送信する、
請求項2に記載の測位方法。
【請求項4】
前記補正情報に基づく前記移動体の前記特定測位が不可能になった場合に、前記補正情報に基づく前記移動体の前記特定測位が不可能になった後に算出される前記移動体の位置に対応する測位情報を前記基地局サーバーに送信する、
請求項2又は3に記載の測位方法。
【請求項5】
前記測位情報は、少なくとも経度情報、緯度情報、及び時刻情報を含み、
前記移動体の前記特定測位が可能になった場合に、前記移動体の前記特定測位が可能になる直前の前記経度情報及び前記緯度情報を前記基地局サーバーに送信する、
請求項2~4のいずれかに記載の測位方法。
【請求項6】
前記移動体は前記圃場を走行する作業車両であって、
請求項1~5のいずれかに記載の測位方法により前記作業車両を測位する測位装置と、
前記測位装置により算出される位置情報に基づいて走行処理を実行する制御装置と、
を備える作業車両。
【請求項7】
一の圃場において、一の基地局が衛星から受信する衛星信号に基づいて生成される補正情報に基づいて移動体の位置を算出する特定測位が可能になった場合に、
前記特定測位が可能になる直前に前記衛星信号に基づいて算出された前記圃場内における前記移動体の位置の測位情報を利用することによって、前記圃場内の全ての位置において、同一の前記基地局に対応する前記補正情報に基づいて前記特定測位を実行する、
測位装置。
【請求項8】
一又は複数のプロセッサーに、
一の圃場において、一の基地局が衛星から受信する衛星信号に基づいて生成される補正情報に基づいて移動体の位置を算出する特定測位が可能になった場合に、
前記特定測位が可能になる直前に前記衛星信号に基づいて算出された前記圃場内における前記移動体の位置の測位情報を利用することによって、前記圃場内の全ての位置において、同一の前記基地局に対応する前記補正情報に基づいて前記特定測位を実行させるための測位プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の現在位置を算出する測位装置などに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクタなどの作業車両を高精度に測位することが可能なリアルタイムキネマティック方式(RTK-GPS測位方式、以下「RTK方式」という。)が知られている。RTK方式によれば、作業車両に近い基地局(基準局)に対応する補正情報を利用することにより高精度な測位が可能となる。
【0003】
また、他の測位方式として、VRS(仮想基準点:Virtual Reference Station)方式も知られている。例えば特許文献1には、固定基準局(R1~R4)からの衛星観測情報を利用してアンテナ局(Ak:A1~An)のVRS参照情報をVRS情報放送センターによって生成し、生成したVRS参照情報を移動局に送信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-318273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記従来の技術では、作業車両に最も近い基地局が選択されて当該基地局に対応する補正情報を利用して作業車両の現在位置を算出するため、例えば2つの基地局の中間地点に作業車両が作業する圃場が存在する場合には、作業車両が圃場内を自律走行中に、前記補正情報に対応する基地局が切り替わってしまう可能性がある。作業車両が自律走行中に基地局が切り替わると、RTK方式による測位が一時的に途絶えて作業車両の自律走行が中断してしまう問題が生じる。この問題は、圃場を自律走行する作業車両に限定されず、補正情報を利用して移動体を測位する種々のシステムにおいて同様に起こり得る。
【0006】
本発明の目的は、特定の基地局に対応する補正情報に基づいて移動体を測位する場合に、当該基地局の切り替えを防ぐことが可能な測位装置、作業車両、測位方法、及び測位プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る測位方法は、一の圃場において、一の基地局が衛星から受信する衛星信号に基づいて生成される補正情報に基づいて移動体の位置を算出する特定測位が可能になった場合に、前記特定測位が可能になる直前に前記衛星信号に基づいて算出された前記圃場内における前記移動体の位置の測位情報を利用することによって、前記圃場内の全ての位置において、同一の前記基地局に対応する前記補正情報に基づいて前記特定測位を実行する。
【0008】
本発明に係る作業車両は、前記移動体は前記圃場を走行する作業車両であって、請求項1~5のいずれかに記載の測位方法により前記作業車両を測位する測位装置と、前記測位装置により算出される位置情報に基づいて走行処理を実行する制御装置と、を備える。
【0009】
本発明に係る測位装置は、一の圃場において、一の基地局が衛星から受信する衛星信号に基づいて生成される補正情報に基づいて移動体の位置を算出する特定測位が可能になった場合に、前記特定測位が可能になる直前に前記衛星信号に基づいて算出された前記圃場内における前記移動体の位置の測位情報を利用することによって、前記圃場内の全ての位置において、同一の前記基地局に対応する前記補正情報に基づいて前記特定測位を実行する。
【0010】
本発明に係る測位プログラムは、一又は複数のプロセッサーに、一の圃場において、一の基地局が衛星から受信する衛星信号に基づいて生成される補正情報に基づいて移動体の位置を算出する特定測位が可能になった場合に、前記特定測位が可能になる直前に前記衛星信号に基づいて算出された前記圃場内における前記移動体の位置の測位情報を利用することによって、前記圃場内の全ての位置において、同一の前記基地局に対応する前記補正情報に基づいて前記特定測位を実行させるための測位プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の基地局に対応する補正情報に基づいて移動体を測位する場合に、当該基地局の切り替えを防ぐことが可能な測位装置、作業車両、測位方法、及び測位プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態に係る測位システムの構成を示す模式図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る測位システムのシステム構成を示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る作業車両の一例を示す外観図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係る作業車両の走行経路の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係る測位装置によって記録される測位情報の一例を示す図である。
図6図6は、本発明の実施形態に係る測位装置によって記録される移動情報の一例を示す図である。
図7図7は、本発明の実施形態に係る基地局サーバーに登録される基地局情報の一例を示す図である。
図8図8は、本発明の実施形態に係る測位装置による作業車両の測位処理の一例を示す図である。
図9図9は、本発明の実施形態に係る測位装置によって実行される測位処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態に係る測位装置による作業車両の測位処理の一例を示す図である。
図11図11は、本発明の実施形態に係る測位装置による作業車両の測位処理の一例を示す図である。
図12図12は、本発明の実施形態に係る測位装置によって実行される測位処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、本発明の他の実施形態に係る測位装置による作業車両の測位処理の一例を示す図である。
図14図14は、本発明の他の実施形態に係る測位装置による作業車両の測位処理の一例を示す図である。
図15図15は、本発明の他の実施形態に係る測位装置による作業車両の測位処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0014】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る測位システム1は、作業車両10と、基地局サーバー20と、基地局30と、衛星40とを含んでいる。作業車両10及び基地局サーバー20は、携帯電話回線網、パケット回線網、又は無線LANなどの通信網N1(図2参照)を介して通信可能である。
【0015】
本実施形態では、作業車両10がトラクタである場合を例に挙げて説明する。なお、他の実施形態として、作業車両10は、田植機、コンバイン、建設機械、又は除雪車などであってもよい。作業車両10は、圃場F(図4参照)内を走行経路に沿って自律走行(自動走行)可能な構成を備えている。例えば、作業車両10は、測位システム1により算出される作業車両10の現在位置の位置情報に基づいて、圃場Fに対して予め生成された走行経路に沿って自律走行することが可能である。作業車両10は、本発明の移動体の一例である。
【0016】
衛星40は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを構成する測位衛星であり、GNSS信号(衛星信号)を送信する。測位システム1は、複数の衛星40を含んでいる。基地局30は、衛星測位システムを構成する基準点(基準局)であり、予め複数の地点に設置される。本実施形態では、2つの基地局30A,30Bを例示している。基地局サーバー20は、複数の基地局30を管理する管理サーバーであり、作業車両10の現在位置を算出するための補正情報を作業車両10に送信する。基地局30Aは、本発明の第1基地局の一例であり、基地局30Bは、本発明の第2基地局の一例である。
【0017】
作業車両10は、衛星40から送信されるGNSS信号と、基地局サーバー20から送信される補正情報とに基づいて、作業車両10の現在位置(緯度及び経度)を算出する測位処理を実行する。ここで、本実施形態では、測位システム1は、RTK方式の測位方法を利用して作業車両10を測位する。RTK方式による測位方法は周知の方法であるため詳細な説明は省略し、概要のみ以下に述べる。例えば、作業車両10は、衛星40からGNSS信号を受信すると当該GNSS信号に基づいて作業車両10の位置を算出(単独測位)する。基地局サーバー20は、作業車両10に最も近い基地局30から取得する測位情報(GNSS信号など)に基づいて前記位置を補正するための補正情報を生成する。測位システム1は、算出された作業車両10の位置を前記補正情報に基づいて補正して、作業車両10の現在位置を算出する。作業車両10は、圃場F内において前記現在位置を取得しながら前記走行経路を自律走行する。
【0018】
[作業車両10]
図2及び図3に示されるように、作業車両10は、車両制御装置11、走行装置12、作業装置13、及び測位装置14などを備える。車両制御装置11は、走行装置12、作業装置13、及び測位装置14などに電気的に接続されている。なお、車両制御装置11及び測位装置14は、無線通信可能であってもよい。
【0019】
車両制御装置11は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。そして、車両制御装置11は、作業車両10に対する各種のユーザー操作に応じて当該作業車両10の動作を制御する。また、車両制御装置11は、後述の測位装置14により算出される作業車両10の現在位置と、予め生成される走行経路(図4参照)とに基づいて、当該作業車両10の自律走行処理を実行する。車両制御装置11は、本発明の制御装置の一例であり、前記自律走行処理は、本発明の走行処理の一例である。前記走行経路は、作業車両10又は作業車両10を管理するサーバー(不図示)に記憶される。
【0020】
走行装置12は、作業車両10を走行させる駆動部である。図3に示されるように、走行装置12は、エンジン121、前輪122、後輪123、トランスミッション124、フロントアクスル125、リアアクスル126、ハンドル127などを備える。なお、前輪122及び後輪123は、作業車両10の左右にそれぞれ設けられている。また、走行装置12は、前輪122及び後輪123を備えるホイールタイプに限らず、作業車両10の左右に設けられるクローラを備えるクローラタイプであってもよい。
【0021】
エンジン121は、不図示の燃料タンクに補給される燃料を用いて駆動するディーゼルエンジン又はガソリンエンジンなどの駆動源である。走行装置12は、エンジン121と共に、又はエンジン121に代えて、電気モーターを駆動源として備えてもよい。なお、エンジン121には、不図示の発電機が接続されており、当該発電機から作業車両10に設けられた車両制御装置11等の電気部品及びバッテリー等に電力が供給される。なお、前記バッテリーは、前記発電機から供給される電力によって充電される。そして、作業車両10に設けられている車両制御装置11及び測位装置14等の電気部品は、エンジン121の停止後も前記バッテリーから供給される電力により駆動可能である。
【0022】
エンジン121の駆動力は、トランスミッション124及びフロントアクスル125を介して前輪122に伝達され、トランスミッション124及びリアアクスル126を介して後輪123に伝達される。また、エンジン121の駆動力は、不図示のPTO軸を介して作業装置13にも伝達される。作業車両10が自律走行を行う場合、走行装置12は、車両制御装置11の命令に従って走行動作を行う。
【0023】
作業装置13は、例えば耕耘機、プラウ、施肥機、草刈機、又は播種機などであって、作業車両10に着脱可能である。これにより、作業車両10は、作業装置13各々を用いて各種の作業を行うことが可能である。
【0024】
具体的に、図3に示される作業装置13は、エンジン121からの駆動力によって回転軸131を中心に回転して圃場を耕耘する複数の耕耘爪132を備える耕耘機である。また、作業装置13は、作業車両10において、不図示の昇降機構により昇降可能に支持されている。車両制御装置11は、前記昇降機構を制御して作業装置13を昇降させる。例えば、車両制御装置11は、作業車両10が圃場の作業対象領域において前進する場合に作業装置13を下降させ、作業車両10が後進する場合には作業装置13を上昇させる。
【0025】
ハンドル127は、ユーザー又は車両制御装置11によって操作される操作部である。例えば走行装置12では、車両制御装置11によるハンドル127の操作に応じて、不図示の油圧式パワーステアリング機構などによって前輪122の角度が変更され、作業車両10の進行方向が変更される。
【0026】
また、走行装置12は、ハンドル127の他に、車両制御装置11によって操作される不図示のシフトレバー、アクセル、ブレーキ等を備える。そして、走行装置12では、車両制御装置11による前記シフトレバーの操作に応じて、トランスミッション124のギアが前進ギア又はバックギアなどに切り替えられるとともに、変速比が操作され前輪122及び後輪123の回転数を制御する。作業車両10の走行態様が前進又は後進などに切り替えられる。また、車両制御装置11は、前記アクセルを操作してエンジン121の回転数を制御する。また、車両制御装置11は、前記ブレーキを操作して電磁ブレーキを用いて前輪122及び後輪123の回転を制動する。
【0027】
測位装置14は、制御部141、記憶部142、通信部143、及び測位用アンテナ144などを備える通信機器である。例えば、測位装置14は、図3に示されるように、ユーザーが搭乗するキャビン17の上部に設けられている。また、測位装置14の設置場所はキャビン17に限らない。さらに、測位装置14の制御部141、記憶部142、通信部143、及び測位用アンテナ144は、作業車両10において異なる位置に分散して配置されていてもよい。なお、前述したように測位装置14には前記バッテリーが接続されており、当該測位装置14は、エンジン121の停止中も稼働可能である。また、測位装置14として、例えば携帯電話端末、スマートフォン、又はタブレット端末などが代用されてもよい。
【0028】
制御部141は、一又は複数のプロセッサーと、不揮発性メモリ及びRAMなどの記憶メモリとを備えるコンピュータシステムである。記憶部142は、制御部141に後述の測位処理(図9参照)を実行させるための測位プログラム、及び後述の測位情報D1(図5参照)、移動情報D2(図6参照)などを記憶する不揮発性メモリなどである。例えば、前記測位プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、所定の読取装置(不図示)で読み取られて記憶部142に記憶される。なお、前記測位プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して測位装置14にダウンロードされて記憶部142に記憶されてもよい。
【0029】
通信部143は、測位装置14を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して基地局サーバー20などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0030】
測位用アンテナ144は、衛星40から発信される電波(GNSS信号)を受信するアンテナである。
【0031】
制御部141は、第1測位処理部151、送信処理部152、取得処理部153、及び第2測位処理部154などの各種の処理部を含む。なお、制御部141は、前記測位プログラムに従って各種の処理を実行することにより前記各種の処理部として機能する。また、他の実施形態として、第1測位処理部151、送信処理部152、取得処理部153、及び第2測位処理部154の一部又は全部が電子回路で構成されていてもよい。
【0032】
第1測位処理部151は、測位用アンテナ144が衛星40から受信するGNSS信号(本発明の衛星信号の一例)に基づいて作業車両10の位置を算出する。例えば、作業車両10が圃場F内を自律走行する場合に、測位用アンテナ144が複数の衛星40のそれぞれから発信される電波(発信時刻、軌道情報など)を受信すると、第1測位処理部151は、測位用アンテナ144と各衛星40との距離を算出し、算出した距離に基づいて作業車両10の位置(緯度及び経度)を算出する。このように、第1測位処理部151は、所謂、単独測位(本発明の第1測位に相当)により作業車両10の位置を算出する。第1測位処理部151は、算出した位置に対応する測位情報(以下、「単独測位情報」という。)を記憶部142の測位情報D1に記録する。第1測位処理部151は、本発明の第1測位処理部の一例である。
【0033】
図5は、測位情報D1の一例を示す図である。測位情報D1には、単独測位情報及び送信測位情報などが含まれる。第1測位処理部151は、衛星40から受信するGNSS信号に基づいて前記単独測位情報を算出する。図5では、前記単独測位情報がX1~X15及びY1~Y15で示されているが、実際の前記単独測位情報には、X1~X15及びY1~Y15に代えて作業車両10の位置を示す緯度及び経度などが含まれる。なお図5に示す測位情報D1には時刻情報が示されているが、前記時刻情報は測位情報D1に含まれなくてもよい。
【0034】
送信処理部152は、第1測位処理部151により算出される作業車両10の位置に対応する測位情報(単独測位情報)を基地局サーバー20に送信する。
【0035】
具体的には、送信処理部152は、所定の送信データフォーマットにより前記単独測位情報を所定の周期(例えば1秒周期)で基地局サーバー20に送信する。例えば、送信処理部152は、NMEA0183のデータ伝送規格により、前記単独測位情報に対応する時刻、緯度及び経度を含むGGAメッセージ(センテンス)を1秒周期で基地局サーバー20に送信する。前記GGAメッセージは、本発明の測位情報(前記単独測位情報)の一例である。送信処理部152は、本発明の送信処理部の一例である。
【0036】
また、送信処理部152は、基地局サーバー20に送信する前記単独測位情報を送信測位情報として測位情報D1(図5参照)に記録する。図5では、前記送信測位情報がX1~X12及びY1~Y12で示されているが、実際の前記送信測位情報には、X1~X12及びY1~Y12に代えて作業車両10の位置を示す緯度及び経度などが含まれる。また、測位情報D1には、前記単独測位情報及び前記送信測位情報が互いに関連付けられて記録される。
【0037】
基地局サーバー20は、送信処理部152から送信される前記送信測位情報(前記単独測位情報)を受信すると、複数の基地局30の中から作業車両10の位置に基づいて一の基地局30を選択し、選択した基地局30が衛星40から受信するGNSS信号に基づいて前記補正情報を生成する。前記補正情報には、基地局30がGNSS信号に基づいて算出した位置の測位情報、基地局30が設置された位置の基準位置情報、時刻情報などが含まれる。基地局サーバー20は、生成した前記補正情報を作業車両10に送信する。基地局サーバー20の具体的構成は後述する。
【0038】
取得処理部153は、基地局サーバー20から前記補正情報を取得する。取得処理部153は、例えば作業車両10が自律走行している間、リアルタイムに基地局サーバー20から前記補正情報を取得する。取得処理部153は、取得した前記補正情報を移動情報D2に記録する。取得処理部153は、本発明の取得処理部の一例である。
【0039】
図6は、移動情報D2の一例を示す図である。移動情報D2には、単独測位情報、補正情報、及び位置情報などが含まれる。取得処理部153は、基地局サーバー20から前記補正情報を取得すると、前記単独測位情報に関連付けて移動情報D2に記録する。図6では、前記補正情報がXs3~Xs15及びYs3~Ys15で示されているが、実際の前記補正情報には、Xs3~Xs15及びYs3~Ys15に代えて基地局30の位置(測位情報、基準位置情報など)を示す緯度及び経度、時刻情報などが含まれる。なお図6に示す移動情報D2には時刻情報が示されているが、前記時刻情報は移動情報D2に含まれなくてもよい。
【0040】
第2測位処理部154は、取得処理部153により取得される前記補正情報に基づいて作業車両10の位置を算出するRTK測位(本発明の特定測位、第2測位に相当)を実行する。例えば、第2測位処理部154は、衛星40から受信した信号に基づく作業車両10の単独測位情報を、選択された基地局30の測位情報に対応する補正情報に基づいて補正して、作業車両10の現在位置を算出する。第2測位処理部154は、算出した作業車両10の現在位置を示す位置情報を移動情報D2(図6参照)に記録する。上記のようにして作業車両10の現在位置が算出される。車両制御装置11は、測位装置14が作業車両10の現在位置を算出しながら、当該現在位置及び予め生成された走行経路に基づいて、当該作業車両10の自律走行処理を実行する。第2測位処理部154は、本発明の第2測位処理部の一例である。
【0041】
[基地局サーバー20]
図2に示されるように、基地局サーバー20は、制御部21、記憶部22、及び通信部23などを備えるサーバーである。なお、基地局サーバー20は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステムであってもよい。また、基地局サーバー20で実行される各種の処理は、一又は複数のプロセッサーによって分散して実行されてもよい。
【0042】
通信部23は、基地局サーバー20を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して一又は複数の作業車両10などの外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0043】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。記憶部22には、制御部21に各種処理を実行させるための制御プログラムが記憶されている。例えば、前記制御プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、基地局サーバー20が備えるCDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。なお、前記制御プログラムは、サーバー(不図示)から通信網N1を介して基地局サーバー20にダウンロードされて記憶部22に記憶されてもよい。
【0044】
また、記憶部22には、基地局情報D3などのデータが含まれる。図7は、基地局情報D3の一例を示す図である。基地局情報D3には、基地局名、基準位置情報などが含まれる。前記基地局名は、測位システム1に含まれる全ての基地局30のそれぞれの名称(識別情報)である。前記基準位置情報は、基地局30の設置位置を示す位置情報(緯度及び経度)である。基地局30は、通信事業者、自治体などにより設置され、前記基地局名及び前記基準位置情報は、基地局30が設置されたときに基地局情報D3に登録される。
【0045】
制御部21は、受信処理部211、選択処理部212、生成処理部213、及び送信処理部214などの各種の処理部を含む。なお、制御部21は、前記制御プログラムに従って各種の処理を実行することにより前記各種の処理部として機能する。また、他の実施形態として、受信処理部211、選択処理部212、生成処理部213、及び送信処理部214の一部又は全部が電子回路で構成されていてもよい。
【0046】
受信処理部211は、作業車両10に搭載される測位装置14の第1測位処理部151により算出される作業車両10の位置に対応する測位情報(単独測位情報)を測位装置14から受信する。具体的には、受信処理部211は、測位装置14の送信処理部152が所定の周期(例えば1秒周期)で送信する前記単独測位情報(図5参照)を受信する。
【0047】
選択処理部212は、複数の基地局30の中から一の基地局30を作業車両10の位置に基づいて選択する。具体的には、選択処理部212は、予め登録された基地局情報D3に含まれる複数の基地局30の中から、受信処理部211が受信する前記単独測位情報に対応する作業車両10の位置に最も近い1つの基地局30を選択する。
【0048】
図8には、圃場Fと圃場F内で作業を行う作業車両10とを例示している。圃場Fは、2つの基地局30A,30Bの間に位置している。作業車両10が作業を開始する地点P1に位置する場合、受信処理部211は、測位装置14から地点P1に対応する前記単独測位情報を受信する。この場合、選択処理部212は、基地局情報D3に含まれる複数の基地局30の中から、地点P1に最も近い基地局30(ここでは基地局30A)を選択する。
【0049】
生成処理部213は、測位装置14の第1測位処理部151により算出される作業車両10の位置(単独測位情報)を補正するための前記補正情報を生成する。具体的には、生成処理部213は、選択処理部212により選択される基地局30が衛星40から受信するGNSS信号(衛星信号)に基づいて、前記補正情報を生成する。図8に示す例では、生成処理部213は、基地局30Aが衛星40から受信するGNSS信号に基づいて、作業車両10用の前記補正情報を生成する。前記補正情報には、基地局30AがGNSS信号に基づいて算出した位置の測位情報と、基地局30Aが設置された位置の基準位置情報(図7の「Xa,Ya」参照)と、時刻情報とが含まれる。
【0050】
送信処理部214は、生成処理部213により生成される前記補正情報を作業車両10に送信する。作業車両10が基地局サーバー20から最初に送信される前記補正情報を取得した場合に、RTK方式による測位(RTK測位)が開始される。すなわち、作業車両10が基地局サーバー20から最初に送信される前記選択された基地局30に対応する前記補正情報を取得した時点で、当該基地局30に対応する前記補正情報に基づくRTK測位が可能になる。なお、本実施形態では、「選択された一の基地局30(上記の例では基地局30A)に対応する補正情報に基づくRTK測位が可能な状態」を、「作業車両10と基地局30(基地局30A)との通信が確立された状態」ともいう。
【0051】
以上のように、測位システム1は、RTK方式により作業車両10を測位する。また、作業車両10は、RTK方式による測位情報を利用して自律走行を実施する。
【0052】
ところで、例えば2つの基地局30の中間地点に圃場Fが位置する場合には、作業車両10が圃場F内を自律走行中に基地局30が切り替わってしまう可能性がある。例えば図8に示すように、圃場F内に基地局30Aと基地局30Bとの中間地点C0が位置する場合、圃場Fには、中間地点C0よりも基地局30A側の第1領域F1と、中間地点C0よりも基地局30B側の第2領域F2とが含まれる。この場合に、作業車両10は、第1領域F1内では基地局30Aに対応する前記補正情報を利用して算出される位置情報を取得しながら自律走行する。しかし、作業車両10が中間地点C0を超えて第2領域F2に入ると、基地局30Bが作業車両10に最も近い基地局となるため、作業車両10と通信を確立する基地局30が切り替わる。これにより、作業車両10において前記補正情報が切り替わりRTK方式による測位計算が一時的に途切れ、作業車両10の自律走行が中断してしまう。なお、図8に示す例では、作業車両10が第1領域F1に位置する場合及び第2領域F2に位置する場合のそれぞれにおいて、基地局30Aに対応する補正情報を利用して作業車両10をRTK測位することが可能であり、また基地局30Bに対応する補正情報を利用して作業車両10をRTK測位することも可能である。すなわち、圃場Fでは、複数の基地局30に対応するそれぞれの補正情報を利用したRTK測位が可能となっている。
【0053】
これに対し、以下に説明するように、本実施形態に係る測位装置14によれば、特定の基地局30に対応する補正情報に基づいて作業車両10を測位する場合に、当該基地局30の切り替えを防ぐことが可能である。
【0054】
ここでは図8に示す例を挙げて説明する。作業車両10が第1領域F1の地点P1に位置する場合、基地局サーバー20は、作業車両10から受信する地点P1に対応する前記単独測位情報に基づいて基地局30A(地点P1に最も近い基地局)を選択し、選択した基地局30Aに対応する補正情報を生成して作業車両10に送信する。測位装置14の取得処理部153が基地局サーバー20から最初の前記補正情報を取得すると、基地局30Aに対応するRTK測位が可能になる。すなわち、作業車両10と基地局30Aとの通信が確立される。
【0055】
基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位(本発明の第2測位に相当)が可能になった場合に、測位装置14の送信処理部152は、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になる直前の前記単独測位情報と同一の測位情報を基地局サーバー20に送信する。なお、前記単独測位情報には、少なくとも緯度情報、経度情報、及び時刻情報が含まれる。例えば、送信処理部152は、作業車両10のRTK測位が可能になった場合に、作業車両10のRTK測位が可能になる直前の前記経度情報及び前記緯度情報と同一の緯度情報及び経度情報を基地局サーバー20に送信する。
【0056】
例えば、測位装置14が単独測位情報「X3,Y3」(図5参照)を基地局サーバー20に送信し、基地局サーバー20が、単独測位情報「X3,Y3」に基づいて基地局30Aを選択し、選択した基地局30Aが衛星40から受信するGNSS信号に基づいて補正情報を生成し、最初の補正情報を作業車両10に送信したと仮定する。測位装置14は、基地局サーバー20から最初の前記補正情報を取得することにより、基地局30Aに対応する前記補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になる。この場合に、測位装置14の送信処理部152は、図5に示すように、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になる直前に送信した前記単独測位情報「X3,Y3」と同一の測位情報「X3,Y3」を基地局サーバー20に送信する。すなわち、測位装置14から基地局サーバー20に送信する前記送信測位情報を、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になる直前の前記単独測位情報「X3,Y3」に固定する(図5参照)。
【0057】
これにより、送信処理部152は、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能である間、作業車両10の位置に関わらず同一の前記単独測位情報「X3,Y3」を基地局サーバー20に送信し続ける。例えば図8に示す例において、圃場F内の全ての位置において基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能な場合には、作業車両10が第1領域F1から第2領域F2の地点P2に移動した場合であっても、送信処理部152は、第1領域F1内の位置に対応する前記単独測位情報「X3,Y3」を基地局サーバー20に送信し続ける。このため、基地局サーバー20は、作業車両10の実際の位置に関わらず同一の前記単独測位情報「X3,Y3」(送信測位情報)を受信するため、基地局30Aを選択し続け、基地局30Bを選択しない。そして、基地局サーバー20は、基地局30Aに対応する前記補正情報を作業車両10に送信し続ける。これにより、測位装置14は、作業車両10が少なくとも圃場F内を走行している間は、基地局30Aに対応する前記補正情報を途切れることなく受信し続け、作業車両10の現在位置を算出し続ける。よって、圃場F内において作業車両10の自律走行が中断してしまうことを防ぐことができる。
【0058】
このように、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になった場合に、測位装置14の取得処理部153は、衛星40から基地局30Aが受信するGNSS信号に基づいて生成される前記補正情報を基地局サーバー20から取得し、第2測位処理部154は、取得処理部153により取得される基地局30Aに対応する補正情報に基づいて作業車両10を測位する。具体的には、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になった場合に、作業車両10が基地局30Bよりも基地局30Aに近い場所(図8では第1領域F1)に位置する場合及び基地局30Aよりも基地局30Bに近い場所(図8では第2領域F2)に位置する場合のそれぞれにおいて、取得処理部153は基地局30Aに対応する補正情報を基地局サーバー20から取得し、第2測位処理部154は、取得処理部153により取得される基地局30Aに対応する補正情報に基づいて作業車両10の位置を算出する。換言すると、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になった場合に、作業車両10が第1領域F1を走行する場合及び第2領域F2を走行する場合のそれぞれにおいて、第2測位処理部154は、作業車両10の位置を基地局30Aに対応する補正情報に基づいて測位する。
【0059】
また、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になった場合に、作業車両10が基地局30Aに近い場所(図8では第1領域F1)から基地局30Bに近い場所(図8では第2領域F2)に移動した場合であっても、取得処理部153は基地局30Aに対応する補正情報を基地局サーバー20から取得し、第2測位処理部154は、作業車両10の位置を取得処理部153により取得される基地局30Aに対応する補正情報に基づいて測位する。このようにして、測位装置14は、作業車両10の現在位置を算出する。
【0060】
[測位処理]
以下、図9を参照しつつ、測位装置14の制御部141によって実行される前記測位処理の一例について説明する。例えば、前記測位処理は、制御部141が衛星40から衛星信号(GNSS信号)を受信した場合に制御部141によって開始される。また、前記測位処理は、測位装置14を搭載した作業車両10に対する所定のユーザー操作に応じて開始されてもよい。
【0061】
なお、本願発明は、制御部141により前記測位処理の一部又は全部を実行する測位方法の発明、又は、当該測位方法の一部又は全部を制御部141に実行させるための測位プログラムの発明として捉えてもよい。また、前記測位処理は、一又は複数のプロセッサーによって実行されてもよい。例えば、前記測位処理は、測位装置14の制御部141及び基地局サーバー20の制御部21によって協働して実行されてもよい。
【0062】
ステップS1において、制御部141は、衛星40からGNSS信号を受信する受信処理を開始する。例えば、制御部141は、複数(4個)の衛星40のそれぞれから発信時刻、軌道情報などを含む電波(GNSS信号)を受信する。
【0063】
ステップS2において、制御部141(第1測位処理部151)は、衛星40から受信したGNSS信号に基づいて作業車両10の位置を算出する単独測位を開始する。制御部141は、算出した位置に対応する測位情報(単独測位情報)を記憶部142の測位情報D1(図5参照)に記録する。
【0064】
ステップS3において、制御部141(送信処理部152)は、ステップS2で算出した作業車両10の位置に対応する単独測位情報を基地局サーバー20に送信する送信処理を開始する。例えば、制御部141は、NMEA0183のデータ伝送規格により、前記単独測位情報に対応する時刻、緯度及び経度を含むGGAメッセージを1秒周期で基地局サーバー20に送信する。また、制御部141は、基地局サーバー20に送信する前記単独測位情報を送信測位情報として測位情報D1(図5参照)に記録する。
【0065】
基地局サーバー20は、測位装置14から送信される前記単独測位情報に基づいて作業車両10に最も近い基地局30を選択して、選択した基地局30に対応する補正情報を生成して作業車両10に送信する。
【0066】
ステップS4において、制御部141は、RTK測位が可能になったか否かを判定する。例えば、制御部141は、基地局サーバー20から最初の前記補正情報を取得した場合にRTK測位が可能になったと判定し(S4:Yes)、処理がステップS5に移行する。制御部141は、基地局サーバー20から最初の前記補正情報を取得するまで待機する(S4:No)。例えば、図8に示す例において、制御部141が、基地局サーバー20から基地局30Aに対応する最初の前記補正情報を取得した場合に、基地局30Aに対応する補正情報に基づくRTK測位が可能になったと判定する。
【0067】
ステップS5において、制御部141(送信処理部152)は、基地局サーバー20に送信する前記単独測位情報(送信測位情報)を、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になる直前の前記単独測位情報(図5の「X3,Y3」参照)に固定する。すなわち、上記の例では、制御部141は、前記単独測位情報「X3,Y3」(GGAメッセージ)を1秒周期で基地局サーバー20に送信する。また、制御部141は、前記単独測位情報のうち緯度情報及び経度情報(「X3,Y3」)のみを1秒周期で基地局サーバー20に送信する。なお、前記GGAメッセージに含まれる時刻情報は更新される。
【0068】
ステップS6において、制御部141(取得処理部153)は、基地局サーバー20から前記補正情報を取得したか否かを判定する。ここでは、制御部141は、基地局30Aに対応する前記補正情報を取得したか否かを判定する。制御部141が前記補正情報を取得した場合(S6:Yes)、処理はステップS7に移行する。制御部141は、前記補正情報を取得するまで待機する(S6:No)。
【0069】
なお、前記単独測位情報が固定された後は、制御部141は、同一の前記単独測位情報(「X3,Y3」)を基地局サーバー20に送信し続ける。また、基地局サーバー20は、測位装置14から送信される前記単独測位情報(「X3,Y3」)に基づいて基地局30Aを選択し、選択した基地局30Aに対応する補正情報を生成して作業車両10に送信し続ける。これにより、制御部141は、作業車両10の位置に関わらず同一の基地局30Aに対応する補正情報を取得し続ける。
【0070】
ステップS7において、制御部141(第2測位処理部154)は、ステップS2において算出した作業車両10の前記単独測位情報に対応する位置を、ステップS6において取得した前記補正情報に基づいて補正して、作業車両10の現在位置を算出する。ここでは、制御部141は、前記単独測位情報に対応する位置を、基地局30Aに対応する補正情報に基づいて補正して、作業車両10の現在位置を算出する。また、図8に示すように、作業車両10が第1領域F1に位置する場合であっても、第2領域F2に位置する場合であっても、制御部141は、基地局30Aに対応する補正情報を利用して作業車両10の現在位置を算出する。
【0071】
ステップS8において、制御部141は、作業車両10による作業が終了したか否かを判定する。例えば、作業車両10が圃場F内の全ての領域の作業を完了した場合、すなわち設定された走行経路の自律走行が完了した場合に、制御部141は、作業車両10による作業が終了した判定する(S8:Yes)。作業が終了すると、制御部141は前記測位処理を終了させる。一方、制御部141が作業車両10による作業が終了していないと判定した場合(S8:No)、処理はステップS6に移行する。ステップS6に移行すると、制御部141は、基地局サーバー20から前記補正情報を取得して作業車両10の現在位置を算出する処理を継続する。以上のようにして、制御部141は、前記測位処理を実行する。
【0072】
ところで、測位装置14は、作業車両10と基地局30との距離L10が所定距離以上になると基地局30との通信環境が悪化して測位対象の移動体(本実施形態では作業車両10)の測位(RTK測位)を行うことができなくなる。例えば、作業車両10(測位装置14)が基地局30Aから5km以上離れると、測位装置14は基地局30Aに対応する補正情報に基づいて作業車両10のRTK測位を行うことができなくなる。
【0073】
ここで図8に示す例において、例えば、作業車両10が圃場F内のどの位置にいても作業車両10と基地局30Aとの距離L10が所定距離未満である場合には、測位装置14は基地局30Aに対応する補正情報に基づいてRTK測位が可能である。しかし、例えば図10に示すように、作業車両10が圃場F外の地点P4に移動するなどして、作業車両10と基地局30Aとの距離L10が所定距離以上になると、測位装置14が基地局30Aに対応する補正情報に基づいて作業車両10のRTK測位を行うことができなくなる問題が生じる。なお、測位装置14が基地局30Aに対応する補正情報に基づいてRTK測位が可能な前記所定距離は、測位装置14と基地局30との通信環境などに応じて変化する。このため、例えば、測位装置14が基地局30Aに対応する補正情報に基づいてRTK測位が可能な状態である場合に作業車両10が基地局30Aから離れ過ぎると、その時点で測位装置14が前記RTK測位を行うことが不可能になる。
【0074】
そこで、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が不可能になった場合には、送信処理部152は、前記単独測位情報の固定を解除して、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が不可能になった後に第1測位処理部151により算出される作業車両10の位置に対応する単独測位情報を基地局サーバー20に送信する。
【0075】
例えば図5において、時刻t9は、作業車両10が移動したことにより基地局30Aに対応する前記補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が不可能になった時刻を表している。基地局30Aに対応する前記補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が不可能になると、送信処理部152は、前記単独測位情報「X3,Y3」の固定を解除して、解除後に第1測位処理部151により算出される作業車両10の位置に対応する単独測位情報「X9,Y9」を基地局サーバー20に送信する。その後、送信処理部152は、作業車両10の位置に応じて第1測位処理部151により算出される新たな単独測位情報を順次、基地局サーバー20に送信する。
【0076】
また、前記単独測位情報「X3,Y3」の固定が解除されると、例えば作業車両10が中間地点C0を超えて基地局30B側に移動した場合に、基地局サーバー20は、基地局30B側の前記単独測位情報を取得するため、基地局30Bを選択することになる。そして、基地局サーバー20は、基地局30Bが衛星40から受信するGNSS信号に基づいて補正情報を生成して測位装置14に送信する。測位装置14では、取得処理部153が、基地局30Bに対応する補正情報を基地局サーバー20から取得し、第2測位処理部154が、第1測位処理部151により算出される作業車両10の前記単独測位情報に対応する位置を、取得処理部153により取得される基地局30Bに対応する補正情報に基づいて測位して、作業車両10の現在位置を算出する。
【0077】
上記のように作業車両10と通信を確立する基地局30を切り替えて作業車両10の現在位置を算出する構成は、例えば図11に示すように作業車両10が圃場Fa内の作業を終了した後に圃場Fbに移動して圃場Fb内で作業を行う場合に有効である。図11に示す例では、作業車両10は圃場Fb内の地点P5において作業を開始する。なお、地点P5において、作業車両10と基地局30Bとの距離L10は所定距離未満である。
【0078】
作業車両10が作業を開始する地点P5に位置する場合、送信処理部152は、第1測位処理部151により算出される作業車両10の位置に対応する単独測位情報「X12,Y12」(図5参照)を基地局サーバー20に送信する。基地局サーバー20の受信処理部211は、測位装置14から地点P5に対応する前記単独測位情報「X12,Y12」を受信する。この場合、選択処理部212は、基地局情報D3に含まれる複数の基地局30の中から、地点P5に最も近い基地局30Bを選択する。生成処理部213は、基地局30Bが衛星40から受信するGNSS信号に基づいて作業車両10用の前記補正情報を生成し、送信処理部214は生成された基地局30Bに対応する前記補正情報を作業車両10に送信する。作業車両10が基地局サーバー20から最初に送信される前記選択された基地局30Bに対応する前記補正情報を取得した時点で、当該基地局30Bに対応する前記補正情報に基づくRTK測位が可能となる。
【0079】
また、測位装置14の送信処理部152は、図5に示すように、基地局30Bに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になる直前に送信した前記単独測位情報「X12,Y12」と同一の測位情報「X12,Y12」を基地局サーバー20に送信する。すなわち、測位装置14から基地局サーバー20に送信する前記送信測位情報を、基地局30Bに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になる直前の前記単独測位情報「X12,Y12」に固定する(図5参照)。
【0080】
これにより、送信処理部152は、基地局30Bに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能である間、作業車両10の位置に関わらず同一の前記単独測位情報「X12,Y12」を基地局サーバー20に送信し続ける。そして、圃場Fb内の全ての位置において基地局30Bに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能な場合には、送信処理部152は、同一の前記単独測位情報「X12,Y12」を基地局サーバー20に送信し続ける。このため、基地局サーバー20は、作業車両10の実際の位置に関わらず同一の前記単独測位情報「X12,Y12」(送信測位情報)を受信するため、基地局30Bを選択し続け、他の基地局30を選択しない。そして、基地局サーバー20は、基地局30Bに対応する前記補正情報を作業車両10に送信し続ける。これにより、測位装置14は、作業車両10が少なくとも圃場Fb内を走行している間は、基地局30Bに対応する前記補正情報を途切れることなく受信し続け、作業車両10の現在位置を算出し続ける。よって、圃場Fb内において作業車両10の自律走行が中断してしまうことを防ぐことができる。
【0081】
図10及び図11に示す例に対応する前記測位処理の一例について、図12を参照しつつ説明する。なお、図12に示す測位処理において、図9に示した前記測位処理と同一の処理については同一のステップ番号を付しその説明を省略する。図12に示す測位処理では、図9に示す前記測位処理にさらにステップS81,S82の処理が追加されている。
【0082】
ステップS8において、制御部141が作業車両10による作業が終了していないと判定した場合(S8:No)、処理はステップS81に移行する。
【0083】
ステップS81において、制御部141は、作業車両10と通信を確立している基地局30Aに対応する補正情報に基づいて作業車両10のRTK測位を行うことが不可能になったか否かを判定する。制御部141により基地局30Aに対応するRTK測位が不可能になったと判定された場合(S81:Yes)、処理はステップS82に移行する。一方、制御部141により基地局30Aに対応するRTK測位が可能であると判定された場合(S81:No)、処理はステップS6に移行する。
【0084】
ステップS82において、制御部141は、前記単独測位情報の固定を解除する。例えば図10に示すように、作業車両10が地点P3から地点P4に移動したことにより作業車両10が基地局30Aから前記補正情報を取得できずRTK測位が不可能になった場合に、制御部141は、前記単独測位情報「X3,Y3」の固定を解除する(図5参照)。制御部141は、前記単独測位情報「X3,Y3」の固定を解除すると、その後、ステップS3において、作業車両10の位置に応じた単独測位情報の送信を開始する。
【0085】
その後ステップS4において、制御部141は、作業車両10のRTK測位が可能になったか否かを判定する。ここでは例えば、図10及び図11に示す例において、制御部141が、基地局サーバー20から基地局30Bに対応する最初の前記補正情報を取得した場合に、基地局30Bに対応する補正情報に基づくRTK測位が可能になったと判定する(S4:Yes)。
【0086】
またステップS5において、制御部141は、基地局サーバー20に送信する前記単独測位情報(送信測位情報)を、基地局30Bに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になる直前の前記単独測位情報(図5の「X12,Y12」参照)に固定する。そして、制御部141は、基地局30Bに対応する補正情報を取得して(ステップS6)、ステップS2において算出した作業車両10の前記単独測位情報に対応する位置を、ステップS6において取得した前記補正情報に基づいて補正して、作業車両10の現在位置を算出する(ステップS7)。
【0087】
以上説明したように、測位装置14は、衛星40から受信する衛星信号(GNSS信号)に基づいて移動体(作業車両10)の位置(単独測位情報)を算出(単独測位)し、算出した単独測位情報を基地局サーバー20に送信する。基地局サーバー20は、複数の基地局30の中から前記単独測位情報に基づいて一の基地局30を選択して、選択した基地局30に対応する補正情報を生成して測位装置14に送信する。測位装置14は、基地局サーバー20から前記補正情報を取得すると、前記補正情報に基づいて作業車両10を測位する。また、測位装置14は、選択された基地局30に対応する補正情報に基づく前記移動体のRTK測位が可能になった場合に、当該補正情報に基づく前記移動体のRTK測位が可能になる直前に送信した前記単独測位情報と同一の測位情報を基地局サーバー20に送信する。このように、測位装置14は、基地局サーバー20において基地局30が切り替えられないように、前記単独測位情報の位置情報を固定する。これにより、例えば2つの基地局の中間地点に圃場Fが位置する場合(図8参照)において、作業車両10が圃場F内を自律走行中に、前記補正情報に対応する基地局30が切り替わることを防ぐことができる。このため、例えば基地局サーバー20から前記補正情報の受信が途絶えて作業車両10の自律走行が中断してしまうことを防ぐことができる。
【0088】
[他の実施形態]
以下、本実施形態に係る測位システム1の他の実施形態について説明する。
【0089】
他の実施形態として、測位装置14は、RTK測位が可能な範囲(以下、「測位可能範囲AR」という。)を予め設定してもよい。例えば、測位装置14は、作業車両10(測位装置14)を中心として半径R(例えば5km)の範囲を前記測位可能範囲ARに設定する。
【0090】
ここで図13に示す例において、例えば、作業車両10が圃場F内のどの位置にいても基地局30Aが測位可能範囲ARに含まれる場合にはRTK測位が可能である。しかし、例えば、作業車両10が圃場F外の地点P4に位置する場合には、基地局30Aが測位可能範囲ARから外れてしまう。なお、図13において、「AR4」は地点P4に対応する前記測位可能範囲ARを示し、「AR3」は地点P3に対応する前記測位可能範囲ARを示している。この場合、測位装置14が基地局30Aに対応する補正情報に基づいて作業車両10のRTK測位を行うことができなくなる。
【0091】
制御部141は、前記補正情報に含まれる基地局30Aの測位情報に基づいて、基地局30Aが測位可能範囲AR内にあるか否かを判定し、基地局30Aが測位可能範囲ARから外れた場合に、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が不可能になったと判断する。すなわち、基地局30Aが作業車両10から所定範囲(測位可能範囲AR)内に位置する場合に、基地局30Aに対応する前記補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になり、基地局30Aが作業車両10から所定範囲外に位置する場合に、基地局30Aに対応する前記補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が不可能になる。
【0092】
基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が不可能になった場合には、送信処理部152は、前記単独測位情報の固定を解除して、基地局30Aに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が不可能になった後に第1測位処理部151により算出される作業車両10の位置に対応する単独測位情報を基地局サーバー20に送信する。
【0093】
その後、例えば作業車両10が中間地点C0を超えて基地局30B側に移動した場合に、基地局サーバー20は、基地局30B側の前記単独測位情報を取得するため、基地局30Bを選択することになる。そして、基地局サーバー20は、基地局30Bが衛星40から受信するGNSS信号に基づいて補正情報を生成して測位装置14に送信する。測位装置14では、取得処理部153が、基地局30Bに対応する補正情報を基地局サーバー20から取得し、第2測位処理部154が、第1測位処理部151により算出される作業車両10の前記単独測位情報に対応する位置を、取得処理部153により取得される基地局30Bに対応する補正情報に基づいて測位して、作業車両10の現在位置を算出する。
【0094】
ここで、図14に示すように、基地局30B側に圃場Fbが存在し、作業車両10が圃場Fa内の作業を終了した後に圃場Fbに移動して圃場Fb内で作業を行う場合には、測位装置14は、上述の実施形態と同様の処理を実行して作業車両10の現在位置を算出する。
【0095】
また、他の実施形態として、測位装置14は、作業車両10と基地局30との距離を測定し、RTK測位の対象となる基地局30を、作業車両10に近い方の基地局30に切り替える構成を備えてもよい。例えば、図11に示すように、作業車両10が圃場Fb内に位置する場合において、測位装置14は、作業車両10が中間地点C0を超えて基地局30B側に移動した時点で、RTK測位の対象となる基地局30を基地局30Aから基地局30Bに切り替える。
【0096】
具体的には、作業車両10に最も近い基地局30が基地局30Aから基地局30Bに変化した場合に、送信処理部152は、前記単独測位情報の固定を解除して、第1測位処理部151により算出される作業車両10の位置に対応する単独測位情報を基地局サーバー20に送信する。これにより、基地局サーバー20は、基地局30B側の前記単独測位情報を取得するため、基地局30Bを選択する。そして、基地局サーバー20は、基地局30Bが衛星40から受信するGNSS信号に基づいて補正情報を生成して測位装置14に送信する。測位装置14では、取得処理部153が、基地局30Bに対応する補正情報を基地局サーバー20から取得し、第2測位処理部154が、第1測位処理部151により算出される作業車両10の前記単独測位情報に対応する位置を、取得処理部153により取得される基地局30Bに対応する補正情報に基づいて測位して、作業車両10の現在位置を算出する。
【0097】
このように、測位装置14は、作業車両10と基地局30との距離を監視し、RTK測位の対象となる基地局30を、作業車両10に最も近い基地局30に自ら切り替えてもよい。
【0098】
例えば図15に示すように、2つの基地局30A,30Bの間に位置する圃場Fがいずれかの基地局側(ここでは基地局30B側)に位置する場合がある。すなわち、圃場Fは、基地局30A及び基地局30Bの中間地点で分割される2つの分割領域を含み、一方の分割領域が他方の分割領域よりも面積が広くなっている。ここでは、圃場Fが基地局30A側の第1領域F1と基地局30B側の第2領域F2とに分割され、第2領域F2が第1領域F1よりも面積が広くなっている。このような圃場Fを走行する作業車両10を測位する場合には、測位の精度の観点からは、面積が広い第2領域F2側の基地局30Bに対応する補正情報を利用して作業車両10を測位することが望ましい。
【0099】
しかし、例えば作業車両10が地点P1に位置するタイミングで基地局サーバー20が基地局30Aを選択して基地局30Aに対応する補正情報を生成して測位装置14に送信した場合には、測位装置14は、圃場F内の作業車両10の位置に関わらず基地局30Aに対応する補正情報を利用して作業車両10の現在位置を算出することになる。このため、例えば作業車両10が第2領域F2に位置する場合には、作業車両10と基地局30Aとの距離が遠くなるため作業車両10の測位の精度が低下する恐れがある。
【0100】
そこで、他の実施形態として、送信処理部152は、面積が広い第2領域F2(本発明の第1分割領域の一例)に対応する単独測位情報を基地局サーバー20に送信する。また、取得処理部153は、面積が広い第2領域F2に近い基地局30Bが衛星40から受信するGNSS信号に基づいて生成される補正情報を取得する。そして、第2測位処理部154は、取得処理部153により取得される前記補正情報に基づいて作業車両10の位置を算出(測位)する。
【0101】
具体的には、測位装置14は、作業車両10が初めに面積の狭い第1領域F1に位置する場合には、単独測位情報に基づいて作業車両10の現在位置を算出する。すなわち、作業車両10は、作業開始地点が第1領域F1である場合には、第1領域F1を走行する間は、第1測位処理部151により算出される単独測位情報に基づいて算出される位置情報を利用して自律走行を行う。このため、送信処理部152は、作業車両10が第1領域F1を走行する間は、前記単独測位情報を基地局サーバー20に送信しない。
【0102】
その後、作業車両10が面積の広い第2領域F2に入ると、送信処理部152は、第1測位処理部151により算出される第2領域F2内の単独測位情報を基地局サーバー20に送信する。これにより、基地局サーバー20は、基地局30Bを選択して基地局30Bに対応する補正情報を生成して測位装置14に送信する。測位装置14が基地局サーバー20から前記補正情報を取得して前記補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になると、送信処理部152は、基地局30Bに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になる直前に送信した前記単独測位情報と同一の測位情報を基地局サーバー20に送信する。すなわち、測位装置14から基地局サーバー20に送信される前記送信測位情報を、基地局30Bに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になる直前の前記単独測位情報に固定する。
【0103】
そして、基地局30Bに対応する補正情報に基づく作業車両10のRTK測位が可能になった場合に、作業車両10が第1領域F1を走行する場合及び第2領域F2を走行する場合のそれぞれにおいて、第2測位処理部154は、基地局30Bに対応する補正情報に基づいて作業車両10の位置を算出する。
【0104】
これにより、前記単独測位情報が固定された後は、測位装置14は、圃場F内の作業車両10の位置(第1領域F1、第2領域F2)に関わらず基地局30Bに対応する補正情報を利用して作業車両10の現在位置を算出することが可能になる。このように、測位装置14は、面積の狭い第1領域F1では単独測位により作業車両10の現在位置を算出し、その後に面積の広い第2領域F2に移動した場合には、それ以降は、第2領域F2に近い基地局30Bに対応する補正情報を利用したRTK測位により作業車両10の現在位置を算出する。
【0105】
なお、作業車両10が初めに面積が広い第2領域F2に位置する場合には、前記実施形態に示す構成により、圃場F全体において、基地局30Bに対応する補正情報を利用して作業車両10の現在位置を算出することが可能である。
【0106】
上述した各実施形態では、本発明の移動体(移動局)として作業車両を例に挙げたが、本発明の移動体は作業車両に限定されない。例えば、本発明の移動体は、測位装置14を所持して移動する作業者であってもよい。また、本発明の測位装置は、車両に予め搭載された機器であってもよいし、車両に持ち込み可能(着脱可能)な携帯機器であってもよい。また、上述した各実施形態では、測位装置14により算出される位置情報に基づいて作業車両10が自律走行を行う場合を例に挙げたが、測位装置14により算出される位置情報の利用形態は作業車両10の自律走行に限定されない。例えば、測位装置14により算出される位置情報は、作業車両10の走行経路の作成処理、作業車両10が作業時に走行した走行軌跡の作成処理などに利用されてもよい。
【0107】
本発明の一態様に係る測位装置は、第1測位処理部と、送信処理部と、取得処理部と、第2測位処理部とを備える。前記第1測位処理部は、衛星から受信する衛星信号に基づいて移動体の位置を算出する第1測位を実行する。前記送信処理部は、複数の基地局の中から前記第1測位処理部により算出される前記移動体の位置に基づいて一の基地局を選択する基地局サーバーに、前記第1測位処理部により算出される前記移動体の位置に対応する測位情報を送信する。前記取得処理部は、前記衛星から前記一の基地局が受信する衛星信号に基づいて生成される補正情報を前記基地局サーバーから取得する。前記第2測位処理部は、前記取得処理部により取得される前記補正情報に基づいて前記移動体の位置を算出する第2測位を実行する。また、前記送信処理部は、前記一の基地局である第1基地局に対応する第1補正情報に基づく前記移動体の前記第2測位が可能になった場合に、前記第1補正情報に基づく前記移動体の前記第2測位が可能になる直前の前記測位情報と同一の測位情報を前記基地局サーバーに送信する。
【0108】
本発明の一態様に係る作業車両は、前記測位装置と、前記測位装置により算出される位置情報に基づいて走行処理を実行する制御装置と、を備える。
【0109】
本発明の一態様に係る測位方法は、衛星から受信する衛星信号に基づいて移動体の位置を算出する第1測位を実行することと、複数の基地局の中から前記算出される前記移動体の位置に基づいて一の基地局を選択する基地局サーバーに、前記算出される前記移動体の位置に対応する測位情報を送信することと、前記衛星から前記一の基地局が受信する衛星信号に基づいて生成される補正情報を前記基地局サーバーから取得することと、前記補正情報に基づいて前記移動体の位置を算出する第2測位を実行することと、を一又は複数のプロセッサーにより実行する測位方法である。また、前記測位方法では、前記一の基地局である第1基地局に対応する第1補正情報に基づく前記移動体の前記第2測位が可能になった場合に、前記第1補正情報に基づく前記移動体の前記第2測位が可能になる直前の前記測位情報と同一の測位情報を前記基地局サーバーに送信する。
【0110】
本発明の一態様に係る測位プログラムは、衛星から受信する衛星信号に基づいて移動体の位置を算出する第1測位を実行することと、複数の基地局の中から前記算出される前記移動体の位置に基づいて一の基地局を選択する基地局サーバーに、前記算出される前記移動体の位置に対応する測位情報を送信することと、前記衛星から前記一の基地局が受信する衛星信号に基づいて生成される補正情報を前記基地局サーバーから取得することと、前記補正情報に基づいて前記移動体の位置を算出する第2測位を実行することと、を一又は複数のプロセッサーに実行させるための測位プログラムである。また、前記測位プログラムでは、前記一の基地局である第1基地局に対応する第1補正情報に基づく前記移動体の前記第2測位が可能になった場合に、前記第1補正情報に基づく前記移動体の前記第2測位が可能になる直前の前記測位情報と同一の測位情報を前記基地局サーバーに送信する。
【符号の説明】
【0111】
1 :測位システム
10 :作業車両
14 :測位装置
20 :基地局サーバー
30 :基地局
40 :衛星
144 :測位用アンテナ
151 :第1測位処理部
152 :送信処理部
153 :取得処理部
154 :第2測位処理部
211 :受信処理部
212 :選択処理部
213 :生成処理部
214 :送信処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15