(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055963
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】粒子充填シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 11/01 20060101AFI20240412BHJP
H01R 43/00 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H01R11/01 501Z
H01R43/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024032214
(22)【出願日】2024-03-04
(62)【分割の表示】P 2019014279の分割
【原出願日】2019-01-30
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴田 章広
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 広和
(72)【発明者】
【氏名】土井 克浩
(57)【要約】
【課題】粒子充填部が高アスペクト化された、新規かつ改良された粒子充填シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、200~1600nmの波長帯域のうち少なくとも1箇所以上の波長帯域で透明性を有する基材シートと、基材シートを基材シートの表面から裏面まで貫通する複数の貫通孔と、複数の貫通孔の各々に形成された粒子充填部と、を有し、基材シートのいずれかの領域は、粒子充填部のアスペクト比が0.5以上である高アスペクト領域となっていることを特徴とする、粒子充填シートが提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
200~1600nmの波長帯域のうち少なくとも1箇所以上の波長帯域で透明性を有する基材シートと、
前記基材シートを前記基材シートの表面から裏面まで貫通する複数の貫通孔と、
前記複数の貫通孔の各々に形成された粒子充填部と、
を有し、
前記粒子充填部は、前記基材シートの前記表面および前記裏面の双方から突出しておらず、
前記基材シートは、弾性を有し、
前記基材シートの厚さは、100μm以上であり、
前記基材シートは、前記粒子充填部のアスペクト比が1.0以上である高アスペクト領域を含むことを特徴とする、粒子充填シート。
【請求項2】
前記粒子充填シートは、電子部品に電気的に接続される接続用コネクタまたは検査用コネクタとして使用される粒子充填シートであることを特徴とする、請求項1に記載の粒子充填シート。
【請求項3】
前記複数の貫通孔の配列は、接続対象または検査対象となる前記電子部品の複数の電極に対応するように設定されており、
前記複数の貫通孔のピッチは、前記電子部品の前記複数の電極のピッチ以下であることを特徴とする、請求項2に記載の粒子充填シート。
【請求項4】
前記電子部品の端子は、200μm以下のファインピッチで配列されており、
前記高アスペクト領域内では、前記貫通孔のピッチが200μm以下であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の粒子充填シート。
【請求項5】
前記粒子充填シートは、ボールグリッドアレイ基板の検査用コネクタとして使用される、
ことを特徴とする、請求項1~4の何れか1項に記載の粒子充填シート。
【請求項6】
前記貫通孔の壁面には無機物が付着していることを特徴とする、請求項1~5の何れか1項に記載の粒子充填シート。
【請求項7】
前記基材シートは、ゴム材料からなることを特徴とする、請求項1~6の何れか1項に記載の粒子充填シート。
【請求項8】
前記基材シートの弾性は、硬さタイプA(JIS K 7215-1986)の硬さで70以下であることを特徴とする、請求項1~7の何れか1項に記載の粒子充填シート。
【請求項9】
前記粒子充填部に含まれる粒子は、弾性を有する導電性粒子であることを特徴とする、請求項1~8の何れか1項に記載の粒子充填シート。
【請求項10】
前記基材シートの前記高アスペクト領域では、前記粒子充填部の前記アスペクト比が2.0以上であることを特徴とする、請求項1~9の何れか1項に記載の粒子充填シート。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の粒子充填シートの製造方法であって、
前記基材シートが透明性を有する波長帯域の短パルスレーザを前記基材シートに集光照射することで、前記基材シートに複数の前記貫通孔を形成する工程と、
前記複数の貫通孔の各々に前記粒子充填部を形成する工程と、を含み、
前記短パルスレーザのパルス間隔の単位はナノ秒以下であることを特徴とする、粒子充填シートの製造方法。
【請求項12】
前記短パルスレーザのパルス間隔の単位はフェムト秒以下であることを特徴とする、請求項11に記載の粒子充填シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子充填シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、粒子が充填された粒子充填シートとして、基材シートと、基材シートを厚さ方向に貫通する複数の貫通穴と、各貫通穴に形成された粒子充填部とを有する粒子充填シートが知られている。
【0003】
粒子充填部を構成する粒子が導電性を有する場合、粒子充填シートは導電性を有することになる。この場合、粒子充填シートは、半田付けまたは機械的嵌め合いなどの手段を用いずにコンパクトな電気的接続を達成することが可能であること、機械的な衝撃や歪み(凹凸)を吸収してソフトな接続が可能であることなどの特徴を有する。さらに、粒子充填シートは、ファインピッチ接続も可能である。このため、粒子充填シートは、例えばコンピュータ、デジタルカメラ、ディスプレイなどの分野において、電子部品相互間(例えばプリント回路基板とリードレスチップキャリアーまたは液晶パネル等との間)の電気的な接続を達成するためのコネクタ(以下、「接続用コネクタ」とも称する)として広く用いられている。さらに、粒子充填シートは、電子部品の製品検査装置におけるコネクタ(以下、「検査用コネクタ」とも称する)としても使用される。例えば、粒子充填シートは、各種のプリント基板の検査用コネクタとして使用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-245745号公報
【特許文献2】特開2009-140866号公報
【特許文献3】特開平10-247536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、粒子充填シートには、粒子充填部のさらなる高アスペクト化が求められている。ここで、粒子充填部のアスペクト比は、粒子充填シートの厚さを粒子充填部のピッチで除算した値であり、粒子充填シートが厚いほど、または粒子充填部のピッチが狭いほど高くなる。
【0006】
例えば、ボールグリッドアレイ基板(上記プリント基板の一種)の検査用コネクタとして粒子充填シート(導電性を有する粒子充填シート)が用いられる場合、粒子充填シートには粒子充填部の高アスペクト化が求められることが多い。近年のボールグリッドアレイ基板では、電極であるボールが非常にファインピッチで配列されていることが多い。このため、各ボールに粒子充填部を確実に接触させるためには、粒子充填部をファインピッチで形成する必要がある。さらに、ボールの高さには比較的大きなばらつき(例えば10~100μm程度のばらつき)がある。したがって、粒子充填シートがこのようなばらつきを吸収するように変形し、各ボールに粒子充填部を確実に接触させるためには、粒子充填シートに十分な厚さが必要である。このため、粒子充填シートには粒子充填部の高アスペクト化が求められる。
【0007】
特許文献1~3には、導電性を有する粒子充填シートの製造方法が開示されている。特許文献1に開示された技術では、粒子ペースト膜に部分的に平行磁界を掛けることで、粒子ペースト膜の一部(平行磁界が掛けられた部分)に導電性粒子を集中させる。その状態で粒子ペースト膜を硬化させる。特許文献2に開示された技術では、基材シートに貫通孔を形成する。ついで、貫通孔に導電性物質を充填する。ここで、特許文献2には、貫通孔を形成する方法として、イオンミリング及びリソグラフィの他、基材シート中に親水性高分子鎖を格子状に林立させた後、親水性高分子鎖を選択的に除去する方法も開示されている。特許文献2では、電解めっきまたは無電解めっきにより貫通孔に導電性物質を充填する。
【0008】
特許文献3に開示された技術では、基材シートにレーザ等で貫通孔を形成した後、この貫通孔に粒子ペーストを充填する。ここで、粒子ペーストは導電性粒子と未硬化樹脂の混合物である。ついで、貫通孔中の粒子ペーストに平行磁界を掛けることで、粒子ペースト中の導電性粒子を基材シートの厚さ方向に配列させる。ついで、粒子ペーストを硬化させる。
【0009】
しかし、いずれの方法でも粒子充填シートを十分に高アスペクト化することができなかった。例えば、特許文献1に開示された技術では、厚い基材シート中に粒子充填部をファインピッチで形成しようとすると、隣接する平行磁界同士が干渉してしまう。このため、基材シートが厚い場合に、粒子充填部をファインピッチで形成することができなかった。特許文献2、3に開示された技術では、基材シートが厚い場合に、貫通孔をファインピッチで形成することができなかった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、粒子充填部が高アスペクト化された、新規かつ改良された粒子充填シート及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、200~1600nmの波長帯域のうち少なくとも1箇所以上の波長帯域で透明性を有する基材シートと、基材シートを基材シートの表面から裏面まで貫通する複数の貫通孔と、複数の貫通孔の各々に形成された粒子充填部と、を有し、基材シートのいずれかの領域は、粒子充填部のアスペクト比が0.5以上である高アスペクト領域となっていることを特徴とする、粒子充填シートが提供される。
【0012】
ここで、高アスペクト領域内では、貫通孔のピッチが200μm以下であってもよい。
【0013】
また、基材シートの厚さが100μm以上であってもよい。
【0014】
また、貫通孔の壁面には無機物が付着していてもよい。
【0015】
本発明の他の観点によれば、上記の粒子充填シートの製造方法であって、基材シートが透明性を有する波長帯域の短パルスレーザを基材シートに集光照射することで、基材シートに複数の貫通孔を形成する工程と、複数の貫通孔の各々に粒子充填部を充填する工程と、を含み、短パルスレーザのパルス間隔の単位はナノ秒以下であることを特徴とする、粒子充填シートの製造方法が提供される。
【0016】
ここで、短パルスレーザのパルス間隔の単位はフェムト秒以下であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、粒子充填部が高アスペクト化された粒子充填シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る粒子充填シートの外観を示す斜視図である。
【
図2】同実施形態に係る粒子充填シートの断面図である。
【
図3】粒子充填部の配列の一例を示す平面図である。
【
図4】粒子充填シートの製造方法の概要を示すフローチャートである。
【
図5】基材シートに貫通孔を形成する方法の概要を示す斜視図である。
【
図6】基材シートに貫通孔を形成する方法の概要を示す断面図である。
【
図7】貫通孔に充填用粒子を充填する方法の概要を示す斜視図である。
【
図8】貫通孔に充填用粒子を充填する方法の概要を示す断面図である。
【
図9】貫通孔に充填用粒子を充填する他の方法の概要を示す斜視図である。
【
図10】貫通孔に充填用粒子を充填する他の方法の概要を示す断面図である。
【
図11】基材シートに短パルスレーザを集光照射する様子を示す断面図である。
【
図12】短パルスレーザの焦点深度を説明するための説明図である。
【
図13】基材シートに連続波レーザ(CWレーザ)を集光照射する様子を示す断面図である。
【
図14】連続波レーザを吸収する基材シートに連続波レーザ(CWレーザ)を集光照射する様子を示す断面図である。
【
図16】導通性の評価装置の一例を示す側面図である。
【
図17】プローブの押圧面が粒子充填シートに接触する様子を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。なお、図はあくまで模式的なものであり、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0020】
<1.粒子充填シートの構成>
まず、
図1~
図3に基づいて、本実施形態に係る粒子充填シート1の構成について説明する。
図1~
図3に示すように、粒子充填シート1は、基材シート10と、基材シート10に形成された複数の貫通孔20と、貫通孔20に形成された粒子充填部30とを有する。
【0021】
基材シート10は、シート状の部材である。基材シート10は、200~1600nmの波長帯域のうち少なくとも1箇所以上の波長帯域で透明性を有する。詳細は後述するが、本実施形態では、基材シート10が透明性を有する波長帯域の短パルスレーザを基材シート10に集光照射することで、基材シート10に高アスペクト比の貫通孔20を形成する。本実施形態における「透明性」は、80%以上の全光線透過率を示すことを意味する。全光線透過率は90%以上であることが好ましい。なお、基材シート10が透明性を有する波長帯域を200~1600nmとしたのは、各種の加工に使用されるレーザの波長が概ねこの範囲内の値となる(YAGレーザ:266~1030nm程度、エルビウムドープファイバーレーザ:1550nm程度)からである。つまり、この波長帯域内で透明性を有していれば、本実施形態による加工が可能となる。基材シート10が透明性を有する波長帯域の下限値は300nm以上であってもよい。
【0022】
基材シート10は上記以外の特性を有していてもよい。基材シート10が有する特性は、例えば粒子充填シート1の用途に応じて決定されてもよい。例えば、粒子充填シート1が接続用コネクタまたは検査用コネクタ等に使用される場合、基材シート10は弾性及び絶縁性を有していることが好ましい。もちろん、粒子充填シート1の用途はこれらに限定されず、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)用のフィルムとしても使用可能である。基材シート10が弾性(より具体的には押し込み弾性)を有する場合、粒子充填シート1を接続対象または検査対象の電子部品(以下、単に「電子部品」とも称する)にソフトに接続することができる。例えば、電子部品がボールグリッドアレイ基板となる場合、基材シート10が弾性変形することで各ボールの高さのばらつきを吸収し、各ボールをより確実に粒子充填部30に接触させることができる。基材シート10が弾性を有しない場合、高さが小さいボールに粒子充填部30を接触させようとした際に、高さが大きいボールが基材シート10によって破損する可能性がある。
【0023】
ここで、基材シート10の弾性の度合いは粒子充填シート1の用途または求められる特性等に応じて適宜調整すればよい。例えば、粒子充填シート1が接続用コネクタまたは検査用コネクタ等に使用される場合、基材シート10は、粒子充填シート1が電子部品に対してソフトに(言い換えれば、電子部品を破損させないように)接続される程度の弾性を有していればよい。例えば、基材シート10の弾性は、例えば硬さタイプA(JIS K 7215-1986)の硬さで70以下とすることが好ましく、30以下とすることがより好ましい。この場合、粒子充填シート1を電子部品によりソフトに接続することができる。
【0024】
基材シート10の絶縁性の度合いも粒子充填シート1の用途または求められる特性等に応じて適宜調整すればよいが、例えば電気抵抗率が1×103Ω・cm以上であることが好ましく、1×105Ω・cm以上であることがより好ましく、1×107Ω・cm以上であることがより好ましい。これにより、粒子充填シート1の意図しない導通を抑制することができる。
【0025】
基材シート10を構成する材料(材質)は、上記特性を満たす材料から選択される。基材シート10を構成する材料としては、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(スチレンブタジエンゴム)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴムなどの共役ジエン系ゴムおよびこれらの水素添加物、スチレン-ブタジエン-ジエンブロック共重合体ゴム、スチレン-イソプレンブロック共重合体などのブロック共重合体ゴムおよびこれらの水素添加物、クロロプレンゴム、ウレタンゴム、ポリエステル系ゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム(エチレンプロピレンゴム)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム、ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、及びブチルゴムなどが挙げられる。粒子充填シート1に耐候性が要求される場合には、共役ジエン系ゴム以外のものを用いることが好ましい。ここで、表1にいくつかの材料の特性(外観色、吸収帯)、適合レーザ波長例(その材料が透明性を示す波長)を示す。Gが適合、NGが不適合を示す。各材料は、吸収帯以外の波長帯域のレーザに対して透明性を示す。
【0026】
【0027】
基材シート10の厚さT(
図2参照)は、粒子充填シート1の用途または求められる特性等に応じて適宜調整すればよい。例えば粒子充填シート1が接続用コネクタまたは検査用コネクタ等に使用される場合、基材シート10の厚さTは100μm以上であることが好ましい。基材シート10がこのような厚さTを有することで、押し込み変形性が十分に大きくなり(つまり、粒子充填シート1を押し込んだ際に十分に変形し)、電子部品の凹凸(例えば電極の高さのばらつき)をより確実に吸収することができる。例えば、粒子充填シート1をボールグリッドアレイ基板の検査用コネクタとして使用する場合、ボールグリッドアレイ基板のボールの高さは、10~100μm程度の範囲でばらつくことがある。したがって、基材シート10の弾性変形量を10~30%程度と見積もった場合、基材シート10の厚さTが100μm以上であれば、ボールグリッドアレイ基板のボールの高さのばらつきを十分に吸収することができる。基材シート10の厚さは300μm以上であることがより好ましい。厚さの上限値は粒子充填シート1の用途または求められる特性等に応じて設定されればよいが、例えば500μm以下であってもよい。
【0028】
貫通孔20は、
図1及び
図2に示すように、基材シート10をその表面から裏面まで貫通する孔であり、基材シート10に複数形成される。貫通孔20の開口面の形状は特に制限されず、例えば円形、楕円形、または矩形等であってもよい。ただし、貫通孔20をファインピッチで形成する場合の加工性を考慮すると、貫通孔20の開口面の形状は円形または楕円形が好ましい。
【0029】
貫通孔20の配列は、例えば、貫通孔20の配列は千鳥配列であってもよいし、矩形配列であってもよいし、ランダム配列であってもよく、これら以外の配列であってもよい。貫通孔20の配列は、粒子充填シート1の用途等に応じて設定されてもよい。例えば、粒子充填シート1が接続用コネクタまたは検査用コネクタ等に使用される場合、貫通穴20の配列は、接続対象または検査対象となる電子部品に対応するように設定されてもよい。すなわち、貫通孔20の配列は電子部品中の所望の電極(基本的には全ての電極)に粒子充填部30が接触するように設定されてもよい。
【0030】
貫通孔20のピッチ(言い換えれば、粒子充填部30のピッチ)Pも、粒子充填シート1の用途に応じて設定されてもよい。例えば、粒子充填シート1が接続用コネクタまたは検査用コネクタ等に使用される場合、貫通孔20のピッチPは、電子部品の電極のピッチ以下であることが好ましく、電極のピッチより狭いことがより好ましい。ここで、
図3に示すように、貫通孔20のピッチPは、貫通孔20の中心点P0と当該貫通孔20に最も近接する貫通孔20の中心点P0との距離である。中心点P0は、開口面の中心点を意味する。つまり、ピッチPはいわゆる最小ピッチである。
【0031】
本実施形態では、基材シート10のいずれかの領域が高アスペクト領域となっている。ここで、高アスペクト領域は、貫通孔20のアスペクト比が0.5以上となる領域である。貫通孔20のアスペクト比は、基材シート10の厚さTを貫通孔20のピッチで除算した値であり、粒子充填部30のアスペクト比と同義である。このように、本実施形態では、0.5以上という高アスペクト比が実現されている。アスペクト比は、1.0以上であることがより好ましく、2.0以上であることがより好ましい。
【0032】
高アスペクト領域では、貫通孔20がファインピッチで配列されている。例えば基材シート10の厚さが100μmとなる場合、貫通孔20のピッチPは200μm以下となる。つまり、基材シート10が厚くても貫通孔20がファインピッチで形成される。
【0033】
近年では、電子部品の端子が200μm以下のファインピッチで配列されることも多くなっており、粒子充填シート1には、このようなファインピッチの端子への接続も求められている。上述したように、粒子充填シート1には高アスペクト領域が形成されているので、端子がファインピッチで配列された電子部品にも粒子充填シート1を接続することができる。すなわち、電子部品の凹凸(例えば、電極の高さのばらつき)を十分に吸収することができ、かつ、各電極に粒子充填部30を接触させることができる。
【0034】
例えば、基材シート10の厚さが100μmとなり、貫通孔20のピッチPが200μm以下となる粒子充填シート1は、ボールが200μmのファインピッチで配列されているボールグリッドアレイ基板の検査用コネクタとして好適に使用することができる。つまり、粒子充填シート1は十分な厚さを有しているので、ボールの高さのばらつきを十分に吸収することができる。さらに、貫通孔20(すなわち粒子充填部30)がファインピッチで配列されているので、各ボールに粒子充填部30を接触させることができる。ボールのピッチが200μm以下となる場合、貫通孔20のピッチPをボールのピッチ以下とすればよい。
【0035】
高アスペクト領域における貫通孔20のピッチPは200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることがより好ましい。これにより、粒子充填シート1を電極がファインピッチで配列された電子部品により確実に接続することができる。ピッチPの下限値は特に制限されないが、3μm以上であってもよく、10μm以上であってもよい。
【0036】
貫通孔20の直径は、粒子充填シート1の用途または求められる特性等に応じて調整されればよいが、例えば下限値は1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。上限値は30μm以下であってもよく、25μm以下であってもよく、20μm以下であってもよい。
【0037】
なお、粒子充填シート1の全域が高アスペクト領域であることが好ましいが、一部の領域だけが高アスペクト領域であってもよい。例えば、電子部品に配列された電極の一部だけがファインピッチで配列される場合もある。この場合、ファインピッチで配列された電極に接続される領域だけが高アスペクト領域となっていればよい。
【0038】
貫通孔20の壁面には、無機物が付着していることが好ましい。これにより、貫通孔20の壁面の滑り性が向上する。後述するように、粒子充填シート1の製造過程では、充填用粒子を含む粒子ペーストを貫通孔20に流し込む。したがって、貫通孔20の壁面の滑り性が良好であれば、粒子ペーストをスムーズに貫通孔20に流し込むことができる。詳細は後述するが、貫通孔20は、基材シート10に短パルスレーザを集光照射することで形成される。その際、貫通孔20の壁面にはデブリが形成される。このデブリを上記無機物とすることができる。無機物の種類は基材シート10の材料によって異なるが、例えばシリコーン系の樹脂で基材シート10を構成した場合、無機物はSiOxまたはSi等となる。
【0039】
粒子充填部30は、貫通孔20内に形成されている。粒子充填部30は、貫通穴20に充填された多数の充填用粒子を有する。充填用粒子の種類、特性等は特に制限されず、粒子充填シート1の用途等に応じて適宜決定されればよい。例えば、充填用粒子は導電性粒子であっても、絶縁性粒子(例えば樹脂粒子等)であってもよい。例えば、粒子充填シート1が接続用コネクタまたは検査用コネクタ等に使用される場合、充填用粒子は導電性粒子が含まれる。充填用粒子には、製造工程において貫通孔20に流し込まれる流動性が求められる。充填用粒子が導電性粒子となる場合、導電性粒子には、流動性のほか、粒子充填シート1の押し込み変形があった際にも電子部品の電極との電気的接触を維持できる弾性が求められる。このような観点から、導電性粒子は、Ni、Cu、Ag、またはFeなどの導電金属からなる導電粒子、または樹脂からなるコア粒子に上記の導電金属を被覆した被覆粒子等であることが好ましい。一方、絶縁性粒子を構成する樹脂としては、例えばポリエステルやアクリルポリマー等の熱可塑性樹脂のほか、シリコーンゴム粒子などが挙げられる。粒子充填部30は、充填用粒子が貫通孔20から脱落することを防止するために、バインダを含んでいてもよい。バインダを構成する材料としては、基材シート10の材料と同種の材料の他、アクリルポリマー、エポキシポリマー等が挙げられる。粒子充填シート1に耐候性が要求される場合には、共役ジエン系ゴム以外のものを用いることが好ましく、特に、成形加工性および電気特性の観点から、アクリルポリマーやシリコーンゴムを用いることが好ましい。充填用粒子とバインダとの混合比は粒子充填シート1の用途または求められる特性等に応じて調整されればよい。
【0040】
このように、粒子充填シート1には高アスペクト領域が形成されているので、電極がファインピッチで配列された電子部品に粒子充填シート1をより確実に接続することができる。
【0041】
<2.粒子充填シートの製造方法の概要>
次に、
図4に示すフローチャートに沿って粒子充填シート1の製造方法の概要を説明する。ステップS10では、
図5及び
図6に示すように、基材シート10に短パルスレーザLを集光照射することで、基材シート10に複数の貫通孔20を形成する。本実施形態では、短パルスレーザを使用することで、高アスペクト比の貫通孔20を形成することができる。ステップS10の詳細については後述する。
【0042】
ステップS20では、貫通孔20に粒子充填部30を形成する。ここで、貫通孔20に粒子充填部30を形成する方法は特に制限されず、粒子充填シート1が適用される各分野(例えば電子材料分野)において一般的な充填方法を使用することができる。例えば、粒子ペーストを用いた刷り込み、圧入、またはディッピング等によって貫通孔20に粒子充填部30を形成しても良い。具体的な方法の一例を
図7及び
図8に基づいて説明する。
【0043】
図7及び
図8は所謂刷り込み方法の一例を示す。これらの図に示すように、基材シート10を基板105上に設置し、粒子ペースト110を基材シート10上に展開する。ここで、粒子ペースト110は、充填用粒子及び未硬化のバインダを含む。未硬化のバインダは、例えばバインダを構成する樹脂のモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーである。粒子ペーストには、未硬化のバインダを硬化させるための触媒(例えば、有機過酸化物、脂肪酸アゾ化合物、ヒドロシリル化触媒等)をさらに添加しても良い。
【0044】
ついで、スキージ100を用いて粒子ペースト110を基材シート10上で移動させることで、粒子ペースト110を貫通孔20内に刷り込む(すなわち充填する)。ついで、粒子ペースト110中の未硬化のバインダを硬化させる。硬化の方法はバインダの種類によって異なるが、例えば加熱処理を行えば良い。これにより、粒子充填シート1が作製される。
【0045】
粒子ペースト110を用いて粒子充填部30を形成する方法は上記に限定されず、例えば
図9及び
図10に示す方法であってもよい。
図9及び
図10は所謂ディッピング方法の一例を示す。これらの図に示すように、水槽120内に粒子ペースト110を貯留することで水槽120内に粒子ペースト浴を形成する。ついで、水槽120内を真空ポンプ130で吸引しながら、基材シート10を粒子ペースト浴内に浸漬する。これにより、貫通孔20内に粒子ペースト110を充填する。ついで、基材シート10を粒子ペースト浴から引き上げ、貫通孔20内の粒子ペースト110を硬化させる。これにより、粒子充填シート1が作製される。
【0046】
ステップS30では、粒子充填シート1の検査を行う。検査は粒子充填シート1が所望の特性を有するか否かを判定するものである。例えば、粒子充填シート1が接続用コネクタまたは検査用コネクタ等に使用される場合、粒子充填シート1には導電性が求められる。この場合、本工程では、粒子充填シート1の導通性の検査を行う。導通性の検査は、例えば
図16に示す評価装置500を用いて行う。検査方法の具体的な方法は実施例で説明する。もちろん、検査方法は実施例に示す方法に限られず、粒子充填シート1の品質を評価するため行われる任意の検査を行えば良い。検査に合格した粒子充填シート1を製品とする。
【0047】
図15に、上記製造方法により実際に作製された粒子充填シート1の断面写真を示す。この断面写真は粒子充填シート1の断面を光学顕微鏡で観察することで得られたものである。この例では、基材シート10の厚さが250μmとなっており、貫通孔20のピッチPが100μmとなっている。したがって、アスペクト比は2.5となる。なお、充填用粒子は導電性粒子となっている。ある1つの貫通孔20の直径は、上端側(レーザ入射面側)の領域Aで21.5μm、下端側の領域Bで9.1μmとなっており、若干のテーパが形成されているものの、実用上問題はない。
【0048】
<3.ステップS10の処理の詳細>
つぎに、
図11~
図14に基づいて、ステップS10の処理の詳細について説明する。ステップS10では、上述したように、基材シート10に短パルスレーザLを集光照射することで、基材シート10に複数の貫通孔20を形成する。集光照射は、例えば対物レンズを用いて行われる。
【0049】
ここで、基材シート10は、200~1600nmの波長帯域のうち少なくとも1箇所以上の波長帯域で透明性を有する。そこで、ステップS10では、基材シート10が透明性を有する波長帯域の短パルスレーザLを基材シート10に照射する。例えば、表1によれば、基材シート10がシリコーンゴムで構成される場合、短パルスレーザLの波長は343~1550nmの範囲内から適宜選択すれば良い。さらに、短パルスレーザLのパルス間隔の単位はナノ秒以下であることが必要である。つまり、本実施形態のパルス間隔の単位は、例えばナノ秒、ピコ秒、フェムト秒、またはアト秒となる。パルス間隔の単位はフェムト秒以下であることが好ましい。
【0050】
短パルスレーザLの波長帯域に対して基材シート10は透明性を有する。このため、短パルスレーザLは一見すると基材シート10を透過すると考えられる。しかし、本発明者が短パルスレーザLを基材シート10に照射したところ、貫通孔20が形成されることが判明した。
図11に示すように、短パルスレーザLの集光点L1においてアブレーションが生じ、基材シート10が短パルスレーザLのエネルギーを吸収したと考えられる。つまり、短パルスレーザLを基材シート10に集光照射することで、集光点L1以外では短パルスレーザLを透過させる一方で、集光点L1においては時間的空間的に強力な光量(エネルギー)を基材シート10に与えてアブレーション(多光子吸収)を発生させる。すなわち、集光点L1で2光子吸収または3光子吸収の吸収率で基材シート10にエネルギーを吸収させることで、集光点L1及びその周囲の基材を分解、溶融、または蒸発させる。これにより、貫通孔20を形成する。なお、このような現象は、パルス間隔の単位がナノ秒以下である場合にのみ生じる。
【0051】
なお、焦点深度が基材シート10の厚さTの1/2以上あれば、アブレーションが基材シート10の厚さ方向の全域に生じ、貫通孔20を形成することができる。焦点深度を
図12に模式的に示す。
図12は、短パルスレーザLが対物レンズ50により集光される様子を示す。焦点深度(DOF)は、レーザ径がスポット径2ω(ω:スポット径の半径)に対して2×√2×ωまで広がるまでの光軸方向の距離を意味する。焦点深度は、以下の数式(1)、(2)で示される。数式(1)、(2)は
図12にも示した。
【0052】
DOF=2πω2/λ (1)
2ω=2λ/πNA (2)
【0053】
数式(1)、(2)において、λは短パルスレーザLの波長(μm)であり、NAは対物レンズ50の開口数である。したがって、短パルスレーザLの波長及び対物レンズ50の開口数を調整することで、焦点深度を調整することができる。
【0054】
なお、焦点深度が基材シート10の厚さTの1/2より小さい場合、基材シート10に短パルスレーザLを照射させた状態で集光点L1を基材シート10の厚さ方向に掃引すればよい。このような掃引を行う方法として、例えば基材シート10をリニアステージ等に設置し、ステージを移動させる方法等が挙げられる。これにより、高アスペクト比の貫通孔20を形成することができる。なお、貫通孔20の直径は、概ねスポット径2ωと同程度となり、テーパもほとんど形成されないことが多い。
【0055】
なお、高アスペクト比の貫通孔20は、上述したように、透明性を有する基材シート10に短パルスレーザLを照射することによってのみ形成される。例えば、
図13に示すように、基材シート10に連続波レーザL10を集光照射した場合、連続波レーザL10は単に基材シート10を透過するだけであり、アブレーションは生じない。
【0056】
また、
図14に示すように、連続波レーザL10を吸収する基材シート10Aに連続波レーザL10を集光照射した場合、連続波レーザL10が照射された部分が除去されるので、貫通孔は一応形成される。しかし、貫通孔を形成するためには、集光点を基材シート10Aの裏側に配置する必要がある。さらに、貫通孔はテーパ形状となり、レーザ入射側の開口面が大きくなる。したがって、基材シート10Aが厚くなるほど貫通孔のレーザ入射側の開口面が大きくなるので、貫通孔をファインピッチで形成することができない。つまり、貫通孔を高アスペクト比で形成することができない。例えば厚さ200μmの基材シート10Aにピッチ200μmの貫通孔を形成することは非常に困難である。貫通孔をファインピッチ化するためには、開口面の面積を小さくする必要がある。しかし、この場合、
図14に示すように、連続波レーザL10は基材シート10Aの裏側まで届かない場合がある。この場合、形成される孔20Aは貫通孔とならない。連続波レーザL10を短パルスレーザLに変えても同様の現象が見受けられる。
【実施例0057】
<1.実施例1>
(1-1.粒子充填シートの作製)
つぎに、本実施形態の実施例について説明する。実施例1では、以下の工程により粒子充填シートを作製した。
【0058】
まず、基材シートとして、ハギテック社製の高透明シリコーンシート(厚さ200um)を用意した。基材シートの波長800nmに対する全光線透過率を分光光度計によって測定したところ、90%以上であった。また、デュロメータによって、基材シートのデュロメータ硬さ(タイプA;JIS K7215-1986)を測定したところ、30であった。
【0059】
ついで、基材シートをガラス基板に設置した。ついで、波長800nm、パルス幅220フェムト秒の短パルスレーザをミツトヨ社製対物レンズMPlanApox2にて集光した後、上記の基材シートに照射することで貫通孔を複数形成した。ここで、対物レンズの開口数は0.055なので、焦点深度は168μmであった。したがって、基材シートを移動させることなく、貫通孔を形成することができた。貫通孔は矩形配列されており、ピッチは100μmであった。したがって、アスペクト比は2.0であった。
【0060】
ついで、アクリル樹脂からなるコア粒子にAuめっきを施して粒径3μmとした導電性粒子を準備した。この導電性粒子とバインダとを混合することで粒子ペーストを作製した。ついで、粒子ペーストを基材シート上に展開した。ついで、ウレタン製のスキージを用いて粒子ペーストを基材シート上で移動させることで、貫通孔内に粒子ペーストを充填した。ついで、貫通孔内の粒子ペーストを硬化した。以上の工程により粒子充填シートを作製した。粒子充填シートの特性を表1にまとめて示す。
【0061】
<2.評価>
(2-1.粒子充填部の完成可否)
粒子充填シート1の厚さ方向の断面を観察し、基材シート内に目的の粒子充填部が形成されているか確認した。粒子充填部が形成されていない(例えば、粒子充填部が基材シートを貫通していない、粒子充填部が隣接する他の粒子充填部と連結している等)箇所が断面内で1箇所でもあれば評価を不合格(NG)とし、それ以外の場合には評価を合格(G)とした。また、断面内に存在する粒子充填部のいずれかをピックアップし、その直径を測定した。具体的には、粒子充填部を構成する貫通孔の上端側(レーザ入射面側)の開口面の直径と、下端側の開口面の直径を測定した。結果を表2にまとめて示す。表2では、上端側の直径と下端側の直径とがほぼ同じであればいずれかの値を示し、ばらつきがある場合には両者の値を示した。
【0062】
(2-2.導通性評価)
つぎに、
図16に示す評価装置500を用いて粒子充填シートの導通性を評価した。この評価装置500は、上述したステップS30の検査で使用される装置である。評価装置500は、ステージ510と、ステージ510上に設けられる基板520と、基板を被覆する導電層530と、導電性のプローブ540と、テスタ550とを備える。テスタは抵抗値を測定するものである。プローブの押圧面(粒子充填シートに接触する面)の直径は200μmである。押圧面の直径は少なくとも粒子充填部のピッチ(最小ピッチ)よりも大きくなるように設定される。
【0063】
粒子充填シートを導電層530上に設置し、粒子充填シートをその上面からプローブ540で400mNの押圧力で押し込んだ。
図17に示すように、プローブ540の押圧面は複数の粒子充填部に接触する。この状態でテスタ550により電気抵抗値Ωを測定した。粒子充填シートの上面内の任意の十箇所で抵抗値を測定し、最も大きい値を粒子充填シートの抵抗値とした。表2には実施例1の抵抗値を100としたときの相対値及び評価を記述した。抵抗値が1000以上の場合、導電性を不合格(NG)と評価し、それ以外の場合を合格(G)と評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0064】
(2-3.押し込み変形性評価)
評価装置500を用いて押し込み変形性を評価した。具体的には、粒子充填シートを導電層530上に設置し、粒子充填シートをその上面からプローブ540で400mNの押圧力で押し込んだ。この際の押し込み量μmを測定した。押し込み量が3μm以下の場合、押し込み変形性を不合格(NG)と評価し、押し込み量が3μm超5μm以下の場合をN(実用上問題ないレベル)とし、それ以外の場合を合格(G)と評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0065】
(2-4.総合判定)
評価項目が全て合格または実用上問題ないレベルとなるものを総合判定で合格とし、いずれか1つでも不合格となるものを総合判定で不合格とした。結果を表2にまとめて示す。
【0066】
<2.実施例2>
導電性粒子を直径30nmのAuナノ粒子とした他は実施例1と同様の処理を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0067】
<3.実施例3>
基材シートをダイキン工業社製フッ素ゴムシート(ダイエルT-530)とした他は実施例1と同様の処理を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0068】
<4.実施例4>
基材シートをハギテック社製の高透明シリコーンシート(厚さ100um)とし、貫通孔のピッチを10μmとした他は実施例1と同様の処理を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0069】
<5.実施例5>
短パルスレーザの波長を355nm、対物レンズをミツトヨ社製対物レンズMPlanApox1とした他は実施例1と同様の処理を行った。ここで、対物レンズの開口数は0.02なので、焦点深度565μmであった。結果を表2にまとめて示す。
【0070】
<6.実施例6>
短パルスレーザの波長を1550nmとした他は実施例1と同様の処理を行った。焦点深度は326μmであった。結果を表2にまとめて示す。
【0071】
<7.実施例7>
基材シートをハギテック社製の高透明シリコーンシート(厚さ50um)とした他は実施例1と同様の処理を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0072】
<8.実施例8>
基材シートをハギテック社製の高透明シリコーンシート(厚さ100um)とし、貫通孔のピッチを200μmとした他は実施例1と同様の処理を行った。結果を表2にまとめて示す。
【0073】
<8.比較例1>
シリコーンゴム(信越化学工業(株)社製 品名:SIM-240)に、鉄を芯粒子として表面に金めっきした粒子を分散し、上下から磁場を作用させて粒子を配向させた状態で150℃30分加熱による硬化処理を行った。これにより、粒子充填シートを作製した。この粒子充填シートを実施例1と同様の工程で評価した。結果を表2にまとめて示す。
【0074】
<9.比較例2>
基材シートをハギテック社製の黒色シリコーンシート(E12S10)に変更した他は実施例1と同様の処理を行った。この基材シートは波長800nmの短パルスレーザを吸収する。結果を表2にまとめて示す。
【0075】
【0076】
表2から明らかな通り、本実施形態の要件を満たす実施例1~8では良好な結果が得られた。特に、厚さが100μm以上となる実施例1~6、8では、押し込み変形性も含めて良好な結果が得られた。これに対し、比較例1では、磁場配向により粒子充填部を形成したため、高アスペクト比の粒子充填部を形成することができなかった。比較例2では、基材シートが短パルスレーザを吸収したため、高アスペクト比の粒子充填部を形成することができなかった。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。