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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005597
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】螺旋階段、水処理施設
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/032 20060101AFI20240110BHJP
   E04F 11/02 20060101ALI20240110BHJP
   E04F 11/104 20060101ALI20240110BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
E04F11/032
E04F11/02
E04F11/104
C02F1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105847
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】大関 宗孝
(72)【発明者】
【氏名】三岡 善平
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕作
(72)【発明者】
【氏名】後藤 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘輔
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC01
2E301CC34
2E301CC54
2E301CD12
2E301DD17
2E301DD76
(57)【要約】
【課題】水処理施設内で用いられる螺旋階段の耐久性を高くする。
【解決手段】踏板20は、従来の踏板における心柱支持部以外の構造を、対称に具備する。すなわち、第1踏板部201と、第2踏板部202とが、心柱10の中心軸の周りの設定角度が180°異なるように、単一の心柱支持部に対して固定される。この構成では、水は、踏板20M~20Jにおける第1踏板部201のみを介して螺旋状に下方に向かう流れと、踏板20M~20Jにおける第2踏板部202のみを介して螺旋状に下方に向かう流れ、のいずれかをとる。この場合において、各踏板20における第1踏板部201に装着された側壁部材32が受ける力(水の遠心力)と、第2踏板部202に装着された側壁部材32が受ける力は同一の大きさで逆向きとなる。このため、心柱10が各踏板20から水の遠心力によって受ける力は零となる。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側から水が溜められる水処理施設内に設置され、鉛直方向に延伸する心柱を中心として複数の踏板が螺旋状に配置されることによって、複数の前記踏板により階段が形成される螺旋階段であって、
前記踏板は、
前記心柱と交差する板状の構成を有する上板部と、
前記上板部の上側における前記心柱を中心とした径方向の外側において設けられた、前記径方向と交差する板状の側壁部材と、
を具備し、
平面視において、前記上板部と前記側壁部材が前記心柱の周りで2組以上設けられた前記踏板が用いられたことを特徴とする螺旋階段。
【請求項2】
前記踏板において、前記上板部と前記側壁部材が平面視において前記心柱に対して対称な位置に存在するように2組以上設けられたことを特徴とする請求項1に記載の螺旋階段。
【請求項3】
前記踏板は、前記心柱を中心とした周方向で当該踏板よりも下側に設けられて隣接する他の前記踏板である下側踏板が設けられた側である第1の側において、前記上板部よりも下側に突出し、前記心柱を中心とした径方向及び鉛直方向に広がる板状の側板部を具備し、
前記踏板において、前記上板部、前記側壁部材、及び前記側板部が平面視において前記心柱に対して対称な位置に存在するように2組以上設けられた前記踏板が用いられたことを特徴とする請求項2に記載の螺旋階段。
【請求項4】
前記踏板に設けられた複数の前記上板部の上面は、同一の高さとされたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の螺旋階段。
【請求項5】
前記螺旋階段において、
複数の前記踏板は共通の構造を具備し、
鉛直方向で隣接する2つの前記踏板の間における前記心柱の周りの設定角度の差は、複数の前記踏板の間で一定とされたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の螺旋階段。
【請求項6】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の螺旋階段が、上側から水が投入される立坑の内部に設置されたことを特徴とする水処理施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が昇降のために用いることができると共に、水処理装置の中において水流を案内する螺旋形状の構成を具備する螺旋階段の構造、及びこの螺旋階段が用いられた水処理施設に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛直方向に延伸する心柱に対して、平板状の上面を具備する複数の踏板が階段を形成するように螺旋状に装着された構造を具備する螺旋階段が、例えば特許文献1等に記載されている。ここで、防災用の大型の水処理施設内にこの螺旋階段を設ければ、作業者が作業の際にこの螺旋階段を昇降することができる。一方、この螺旋階段の上部から水が投入される構成とすれば、この螺旋階段を水の案内のためにも用いることができる。
【0003】
特許文献1に記載されたように、心柱周りの角度を隣接する2つの踏板間で一定値だけずらし、かつこの2つの踏板の高さを一定値だけ変えることによってこれらの間で部分的に重複する領域を設けて段差を形成し、この2つの踏板で階段を構成することができ、多数の踏板を同様に心柱に対して装着することによって、螺旋階段を形成することができる。この際、例えば FRP(Fiber Reinforced Plastics)で構成された共通の構造の複数の踏板を用いることができる。これによって、この螺旋階段の機械的強度を高くし、かつ安価とすることができる。このため、この水処理施設を安価とすることができる。
【0004】
また、特許文献1に記載の技術においては、踏板の径方向外側には、鉛直方向に広がる板状の側壁部材が装着され、水が投入された際には、水が外側の側壁部材に沿って螺旋状に流れる。側壁部材を踏板に固定するために、踏板の径方向外側における周方向の両側にそれぞれ側壁部材支持柱が固定され、これによって側壁部材は支持される。この際、隣接する踏板が重複した部分で1本の側壁部材支持柱を共有するような構成とすることによって、隣接する踏板の位置関係を固定することもできる。この構成を全ての踏板間で採用することによって、全ての踏板間の位置関係が固定された螺旋階段を得ることができ、これによって螺旋状に水を案内して流すこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-163619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような螺旋階段を水処理施設内に用いる場合においては、この螺旋階段に対する作業者の昇降の際の荷重に抗する強度と、水が投入される際に加わる荷重に抗する強度が共に要求される。
【0007】
ここで、水が落下する際にはその水路は外側で側壁部材によって制限され、この側壁部材には水の遠心力が作用する。この遠心力は、側壁部材が固定された踏板を介して、踏板が装着された心柱に伝わる。側壁部材及び踏板は心柱に固定されているため、この力の方向は一つの踏板については一定である。ただし、踏板は複数螺旋状に装着されるため、心柱においてはこの力が加わる向きは円周方向を回転するように高さに従って変化する。
【0008】
このため、水が流れる際には、心柱においては、高さによって互いに逆向きの大きな力が働く場合もあり、これによって心柱には大きな力が加わった。心柱は鉛直方向に細長い形状とされるが、この力に対して十分な耐久性が求められた。
【0009】
このため、水処理施設内で用いられる螺旋階段においては、水の流れに際して作用する遠心力に対して耐久性を有することが求められた。
【0010】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明の螺旋階段は、上側から水が溜められる水処理施設内に設置され、鉛直方向に延伸する心柱を中心として複数の踏板が螺旋状に配置されることによって、複数の前記踏板により階段が形成される螺旋階段であって、前記踏板は、前記心柱と交差する板状の構成を有する上板部と、前記上板部の上側における前記心柱を中心とした径方向の外側において設けられた、前記径方向と交差する板状の側壁部材と、を具備し、平面視において、前記上板部と前記側壁部材が前記心柱の周りで2組以上設けられた前記踏板が用いられたことを特徴とする。
本発明は、前記踏板において、前記上板部と前記側壁部材が平面視において前記心柱に対して対称な位置に存在するように2組以上設けられたことを特徴とする。
本発明において、前記踏板は、前記心柱を中心とした周方向で当該踏板よりも下側に設けられて隣接する他の前記踏板である下側踏板が設けられた側である第1の側において、前記上板部よりも下側に突出し、前記心柱を中心とした径方向及び鉛直方向に広がる板状の側板部を具備し、前記踏板において、前記上板部、前記側壁部材、及び前記側板部が平面視において前記心柱に対して対称な位置に存在するように2組以上設けられた前記踏板が用いられたことを特徴とする。
本発明において、前記踏板に設けられた複数の前記上板部の上面は、同一の高さとされたことを特徴とする。
本発明は、前記螺旋階段において、複数の前記踏板は共通の構造を具備し、鉛直方向で隣接する2つの前記踏板の間における前記心柱の周りの設定角度の差は、複数の前記踏板の間で一定とされたことを特徴とする。
本発明の水処理施設は、前記螺旋階段が、上側から水が投入される立坑の内部に設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は以上のように構成されているので、水処理施設内で用いられる螺旋階段の耐久性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】従来の螺旋階段が設置された水処理施設の斜視図である。
図2】従来の螺旋階段が設置された水処理施設の断面図である。
図3】従来の螺旋階段の部分的な斜視図である。
図4】従来の螺旋階段の部分的な上面図である。
図5】従来の螺旋階段の踏板の斜視図である。
図6】従来の螺旋階段の踏板の上面図(a)、下面図(b)である。
図7】従来の螺旋階段の踏板の2方向からみた側面図である
図8】従来の螺旋階段における心柱に加わる力の高さ依存性を模式的に示す図である。
図9】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の斜視図である。
図10】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の上面図(a)、下面図(b)である。
図11】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の側面図である
図12】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の部分的な斜視図である。
図13】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の部分的な上面図である。
図14】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の第1の変形例の下面図である。
図15】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の第2の変形例の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態に係る螺旋階段について説明する。まず、比較のために、従来の螺旋階段9が設けられる水処理施設290について説明する。図1は、この螺旋階段9が設けられる水処理施設290の構成を示す斜視図である。この水処理施設200においては、例えばhttps://www.nipponhume.co.jp/product/pcwellmeth.htmlに記載されたウェルマンである。ここで、ウェルマンは、PCウェル工法によって地中において円環状のプレキャストコンクリートブロックが積層されて構築された立坑100であり、地中で水を溜める構造として特に好ましく用いることができる。
【0015】
図1においては、立坑100は点線で簡略化されて記載され、底版Bの上に、鉛直方向(z方向)に沿った中心軸をもつ短い円筒形状のプレキャストコンクリートブロック100A~100Cが積層されて構成されることによって、長い円筒形状に形成されている。この内径は例えば4m~10mの範囲である。このため、作業者が昇降できる螺旋階段9を立坑100の内部に設置することができ、この螺旋階段9に沿って水を導入することもできる。図1における螺旋階段9に沿った矢印は、この際の作業者及び水の動きを示す。鉛直方向に沿った心柱10が螺旋階段9の中心軸となり、螺旋階段9は、共通の構造を有する多数の踏板80が心柱10に装着されて構成される。螺旋階段9の記載も図1において簡略化されて示され、ここでは螺旋階段9における心柱10と踏板80以外の構成要素、の記載は省略されている。
【0016】
図2は、図1における心柱10に沿った断面図である。ここでは、構成を模式化して示すために、縦横の縮尺は実際のものとは異なる。また、各踏板80の断面形状は後述する形状とは異なり、単純化されて矩形形状とされている。この立坑100においては、図2における上側の流入口101から水が投入されて螺旋階段1に沿って水が溜められ、溜められた水は下側の流出口102から排出される。ただし、立坑100に流出口102が設けられている必要はない。この場合には、例えば立坑100の内部に溜められた水をポンプ等を用いて汲み上げることによって、水が排出される。
【0017】
図3は、この螺旋階段9における13枚の踏板80(80A~80M)に対応した部分の構成を示す斜視図であり、ここでは図1、2で省略された構成要素も記載されている。ここでは、下側から順に踏板80A~80Mが心柱10に対して、下側からみて右回りで上側に向かう螺旋状で装着されている。ここで、ある一つの踏板80(例えば踏板80E)は、その下側で隣接する踏板80(踏板80Eに対しては踏板80D:下側踏板)、その上側で隣接する踏板80(踏板80Eに対しては踏板80F:上側踏板)と、鉛直方向から見て部分的に重複する。
【0018】
図4は、螺旋階段1における心柱10と踏板80A~80Kまでの位置関係を示す上面図である。図4において、ある一つの踏板80(例えば踏板80E)に対して、その下側で隣接する踏板80(踏板80D:下側踏板)は、中心(心柱10)の周りで時計回りの側(第1の側)で30°ずれた角度で存在し、これらは平面視において部分的に重複する。同様に、踏板80Eに対して、その上側で隣接する踏板80(踏板80F:上側踏板)は、心柱10の周りで反時計回りの側(第2の側)で30°ずれた角度で存在し、これらは平面視において部分的に重複する。同様の位置関係は、上端部と下端部の踏板80以外の全てで成立するため、全ての踏板によって螺旋状に階段が形成される。この際、この螺旋階段9は、連続した12枚の踏板80を一周期とした周期的構造を有する。
【0019】
また、図3、4に示されるように、各踏板80における心柱10からみた外側には、第1の側、第2の側のそれぞれにおいて、鉛直方向に沿って上側に延伸する側壁部材支持柱31が設置される。ここで、例えば踏板80Eにおける第1の側の側壁部材支持柱31は、踏板80Eを上下方向で貫通し、下側の踏板80Dにおける第2の側の側壁部材支持柱31となっており、踏板80Eにおける第2の側の側壁部材支持柱31は、踏板80Eを上下方向で貫通し、上側の踏板80Fを貫通し、踏板80Fにおける第1の側の側壁部材支持柱31となっている。他の踏板においても、同様に側壁部材支持柱31が装着され、これによって鉛直方向で隣接する2つの踏板80間の水平方向における位置関係が定まる。
【0020】
図3、4に示されるように、隣接する側壁部材支持柱31間には、鉛直方向に広がる板状の側壁部材32が固定されている。側壁部材32とその下側の踏板20との間には隙間が生じないように設定される。側壁部材32は、作業者がこの螺旋階段9を昇降する際の手摺になると共に、水をこの螺旋階段9に流す際に、水を螺旋階段9に沿って流し外側に漏らさないために機能する。側壁部材支持柱31は、側壁部材32を支持するため、及び前記のように上下方向で隣接する踏板80の水平方向の位置関係を固定するために機能する。図4において、水は矢印Cで示されるように流れ、この進路は作業者がこの螺旋階段9を降りる際と同様である。上記のような踏板80、側壁部材支持柱31、側壁部材32の関係は、特許文献1に記載されたものと同様である。
【0021】
図5は、この踏板80の構造を示す、上側かつ第1の側(下側踏板がある側)からみた斜視図(a)、上側かつ第2の側(上側踏板がある側)からみた斜視図(b)である。また、図6は、この踏板80の上面図(a)、下面図(b)である。図5等において、鉛直方向をz方向(上側を正とする)、径方向をx方向(心柱10からみた外側を正とする)、z方向及びx方向と垂直な方向をy方向(第1の側を正とする)とする。図7は、図6(a)における図中上側(心柱10を中心とした径方向外側:x方向正側)からみた側面図(a)、図中左側(y方向負側)からみた側面図(b)である。
【0022】
これらの図に示されるように、踏板80は、平面視において、心柱10を中心とする円弧形状の外周と、心柱10がある側からこの外周側に向かうそれぞれ第1の側(y方向正側)、第2の側(y方向負側)における2つの側面を具備する。また、図5(b)に示されるように、この踏板20の上側には、水平(xy方向)に広がる上面を具備する板状の上板部81が設けられる。踏板20の上面側はこの上板部81で占められる。上板部81には、心柱10が挿通する孔部である心柱挿入用孔81Aと、心柱10からみた外側において側壁部材支持柱31が挿通する孔部である側壁部材支持柱挿入用孔(踏板固定部材挿入用孔)81B(2つ)が設けられる。踏板80の上面側(上板部81)は、これらの孔部以外では平坦な水平面を構成する。このため、作業者は上板部81の上面に足を乗せることができる。
【0023】
また、図5(a)、図6に示されるように、踏板80の第1の側(y方向正側)においては、上板部81から下側に向けて突出する板状の側板部82が設けられる。側板部82は、心柱10を中心とした径方向(x方向)、及び鉛直方向(z方向)に広がる、上板部81と直交する板状とされる。図3の構成においては、側板部82の下端は、この踏板80の下側で隣接する踏板80の上板部81に当接する。このため、図5(a)における上板部81、側板部82と、この踏板80の下側で隣接する踏板80の上板部81で、階段が形成される。
【0024】
また、上板部81の下側かつ径方向外側における側壁部材支持柱挿入用孔81Bに対応する2箇所には、鉛直方向に延伸する柱状の側壁部材支持柱支持部85が設けられ、前記の側壁部材支持柱挿入用孔81Bは、上板部81と側壁部材支持柱支持部85を貫通するように形成される。これによって、側壁部材支持柱31をこの踏板80で強固に支持することができる。同様に、心柱挿入用孔81Aに対応した柱状の心柱支持部86が心柱10側かつ上板部81の下側に設けられ、心柱挿入用孔81Aは上板部81と心柱支持部86を貫通するように形成される。
【0025】
図5~7に示された踏板80を、図3、4に示すように複数組み合わせて螺旋階段9を構成することができる。図3の構成において、水がこの螺旋階段9の上側から投入されて下側に流れる場合、その径方向外側の経路が各踏板80に固定された側壁部材32で制限されることによって、作業者の昇降の際の経路と同様に、水が螺旋形状に流れる。この際に、水の遠心力が側壁部材32に加わる。この際に各踏板に加わる遠心力の向きが図4において各踏板の外側の白矢印で示されている。図8は、この際に心柱10に加わる遠心力の左右方向の1次元上での高さ依存性を模式的に示す図である。また、実際には水流の速度は一定ではなく下方で速くなるが、ここでは速度が一定であるものとしており、このために遠心力の絶対値が一定でその向きのみが変わるものとしている。この場合、心柱10には高さに応じて異なる向きの力が加わるため、部分的は力のモーメントも働く。このため、心柱10にはこのような力に抗する高い機械的強度が要求される。
【0026】
次に、本発明の実施の形態に係る螺旋階段について説明する。この螺旋階段は、上記と同様に心柱10に対して複数の踏板が装着されることによって構成されるが、踏板の構成が上記とは大きく異なる。これによって、上記と同様に使用した場合でも、心柱10に対して加わる力(遠心力)が小さくなる。このため、水を流す際の耐久性を高くすることができる。
【0027】
図9はこの踏板20を鉛直方向上側からみた斜視図であり、図10はその上面図(a)、下面図(b)、図11はその側面図である。図10(a)(b)は、図6(a)(b)に対応し、図11図7(b)に対応する。なお、これらの図では、後述する第1踏板部201に対して前記の踏板80と同様にx軸、y軸を定義し、z方向は心柱10の延伸方向であるため、前記と同様である。
【0028】
これらの図に示されるように、踏板20は、心柱10を挿通させるための単一の心柱支持部26(心柱挿入用孔21A)を中心として、前記の踏板80における心柱支持部86以外の構造(上板部81、側板部82等)と同様の構造を、対称に具備する。すなわち、図8、9において、上板部211、側板部221、2つの側壁部材支持柱支持部251(壁部材支持柱挿入用孔211B)を具備する第1踏板部201と、上板部212、側板部222、2つの側壁部材支持柱支持部252(壁部材支持柱挿入用孔212B)を具備する第2踏板部202とが、心柱10(心柱挿入用孔21A)の中心軸の周りの設定角度が180°異なるように、単一の心柱支持部26に対して固定される。
【0029】
また、図11に示されるように、上板部211の上面と上板部212の上面が同一の高さとなるように第1踏板部201と第2踏板部202は心柱支持部26に対して装着され、第1踏板部201と第2踏板部202は、同一の構造で同一の高さに存在する。踏板20をFRPで構成すれば、第1踏板部201、第2踏板部202、心柱支持部26を一体化して、踏板20を容易に形成することができる。また、上板部211、212の下面側には、これらの機械的強度を補強するための構造(リブ構造等)を適宜向けてもよい。
【0030】
この踏板20を図4と同様に心柱10に対して装着し、第1踏板部201、第2踏板部202の各々と、前記の踏板80における側壁部材支持柱31、側壁部材32を同様に用いて、前記の踏板80と同様に螺旋階段をそれぞれ構成することができる。
【0031】
この場合における、図3に対応した螺旋階段1の部分的な斜視図を図12に、図4に対応した部分的な上面図を図13に、それぞれ示す。図12においては、便宜上、特に図3における上側の4つの踏板80J~80Mに対応した踏板20J~20Mについてのみ第2踏板部202が点線で記載されており、これよりも下側の踏板20については第2踏板部202(及びこれに付属する側壁部材支持柱31等)の記載は省略されている。また、図13においては、4つの踏板20J~20Mについてのみが記載されている。
【0032】
この構成では、水は、図13における矢印Dで示されるような、踏板20M~20Jにおける第1踏板部201のみを介して螺旋状に下方に向かう流れと、矢印Eで示されるような、踏板20M~20Jにおける第2踏板部202のみを介して螺旋状に下方に向かう流れ、のいずれかをとる。この場合において、両者の流れにおける流量が同一であれば、各踏板20における第1踏板部201に装着された側壁部材32が受ける力(水の遠心力)と、第2踏板部202に装着された側壁部材32が受ける力は同一の大きさで逆向きとなる。このため、心柱10が各踏板20から水の遠心力によって受ける力は零となる。あるいは、これらの流量が同一でなくとも、第1踏板部201側の受ける力と第2踏板部202側の受ける力は逆向きであり相殺するため、心柱10が受ける力は小さくなる。あるいは、第1踏板部とこれに装着される側壁部材支持柱、側壁部材の構成と、第2踏板部とこれに装着される側壁部材支持柱、側壁部材の構成が上記のように完全に同一でなくとも、同様である。
【0033】
また、この場合には各流路に流れる水の流量、前記の螺旋階段9のように流路が単一であった場合と比べて、水処理施設に投入される水の流量が同一である場合には、半分となる。このため、各流路において側壁部材32が受ける遠心力の絶対値も、螺旋階段9の場合と比べて小さくなり、この観点からも、心柱10が各踏板20から水の遠心力によって受ける力は小さくなる。
【0034】
このため、上記の螺旋階段1を図1の水処理施設290における螺旋階段9の代わりに用いた場合には、心柱10に対して加わる力が小さくなるため、螺旋階段1の耐久性が高くなる。
【0035】
なお、前記のように、踏板20において、第1踏板部201と第2踏板部202は同一の高さに設置されたが、これらの高さが異なっても、第1踏板部201側の受ける力と第2踏板部202側の受ける力は逆向きであることは変わらないため、心柱10が各踏板20から水の遠心力によって受ける力はやはり小さくなる。すなわち、第1踏板部と第2踏板部が同一の高さにある必要はない。同様に、上記の例では第1踏板部201と第2踏板部202の心柱10に対する設定角度差が180°でありこれらが対称とされたが、これらが完全に対称である必要もない。すなわち、この設定角度差は、180°前後であってもよく、例えば180°±45°の範囲であってもよい。
【0036】
上記の踏板20の変形例について説明する。上記の踏板20においては、第1踏板部201のみを介した流れと、第2踏板部202のみを介した流れの2つがそれぞれ形成された。しかしながら、この流れの数を更に多くすることもできる。図14は、この流れを3つにすることができる踏板50、図15は、この流れを4つにすることができる踏板60の構成を示す下面図であり、これらは図10(b)に対応する。ここで示された第1踏板部501等の構成は前記の第1踏板部201、第2踏板部202におけるものと同様であるために、これらの詳細は省略する。
【0037】
上記の踏板20においては第1踏板部201と第2踏板部202が心柱10の周りの設定角度差が180となるように設けられたのに対し、図14の踏板50においては、第1踏板部501、第2踏板部502、第3踏板部503が、この設定角度差を120°として対称に設けられ、流路が各踏板部に対応して3つ形成される。図15の踏板60においては、第1踏板部601、第2踏板部602、第3踏板部603、第4踏板部604が、この設定角度差を90°として対称に設けられ、流路が各踏板部に対応して4つ設けられる。
【0038】
これらの場合でも、上記と同様に、心柱10に対して加わる力を小さくすることができることは明らかである。また、このように流路の数を多くした場合には、前記のように、個々の流路に流れる流量を流路の数に応じて小さくできるため、一つの側壁部材に加わる遠心力を小さくできる。このため、前記のように遠心力を完全に相殺して零とすることができなくとも、心柱10に加わる力を充分に小さくすることができる。このため、各踏板部の構成が同一であること、あるいは各踏板部が同一の高さにあることは必ずしも必要ない。また、流路を3つ、4つ設けた場合における上記の設定角度差が、それぞれ正確に120°、90°である必要もない。例えば、理想的な設定角度差が120°である踏板部が3つの場合には、この設定角度差を120°±15°の範囲、理想的な設定角度差が90°である踏板部が4つの場合には、この設定角度差を90°±22.5°の範囲とすることができる。単一の踏板における踏板部の数を、踏板部の配置を対称にして更に増やすこともできる。
【0039】
なお、上記のように、踏板20、50、60を用いた場合には、流路の数はそれぞれ2つ、3つ、4つとされた。この流路は、作業者が昇降する際の進路と等しいため、このように流路を増やすことによって、作業者が進行可能な進路も増やすことができる。ただし、図12に示されるように、このように流路(進路)を増やした場合には、各進路における踏板部周りの空間が狭くなるため、作業者の進行に障害が発生する場合もある。このため、このような流路の数の設定は、全体の大きさを考慮した上で行うことができる。あるいは、このような踏板部周囲の空間の広さを考慮して、各踏板部の構造を同一とはせずに調整する、あるいは上記のような設定角度差を完全に対称な場合(上記の例では120°、90°)からずらすこともできる。このような踏板20、50、60は、例えばFRPで構成すれば、容易に形成することができる。
【0040】
また、前記の例においては、図13等に示されたように、隣接する踏板20の間のなす角度が30°であるものとした。しかしながら、この設定は適宜行うことができる。例えば、螺旋階段が平面視において大きな場合には、隣接する踏板の間の角度をより小さくすることができる。あるいは、この角度が全ての踏板間で一定である必要はない。ただし、隣接する2つの踏板の間のなす角度(°)を、360の整数分の1で一定とすることによって、踏板の配置を周期的とすることができる。
【0041】
また、上記の例では、踏板間の位置関係が側壁部材支持柱によって固定されると共に、この側壁部材支持柱で支持される側壁部材によって水の流路が制限され、水の遠心力がこの側壁部材に加わるものとした。しかしながら、踏板間の位置を他の手法で固定すると共に、水の流路を制限する側壁部材を他の手法で踏板に対して固定してもよい。この場合においても、踏板あるいは心柱に加わる力は同様となるため、上記のような複数の踏板部を単一の踏板に設けた構成は有効である。
【0042】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0043】
1、9 螺旋階段
10 心柱
20、20A~20M、80、80A~80M、50、60 踏板
21A、81A 心柱挿入用孔
26、86 心柱支持部
31 側壁部材支持柱
32 側壁部材
100 立坑
101 流入口
102 流出口
100A~100C プレキャストコンクリートブロック
201、501、601 第1踏板部
202、502、602 第2踏板部
211、212、81 上板部
211B、212B、81B 側壁部材支持柱挿入用孔(踏板固定部材挿入用孔)
221、222、82 側板部
251、252、85 側壁部材支持柱支持部(踏板固定部材支持部)
290 水処理施設
503、603 第3踏板部
604 第4踏板部
B 底版
図1
図2
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図15