(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005598
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】螺旋階段、水処理施設
(51)【国際特許分類】
E04F 11/032 20060101AFI20240110BHJP
E04F 11/02 20060101ALI20240110BHJP
E04F 11/104 20060101ALI20240110BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240110BHJP
【FI】
E04F11/032
E04F11/02
E04F11/104
C02F1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105848
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】三岡 善平
(72)【発明者】
【氏名】村野 耕作
(72)【発明者】
【氏名】後藤 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弘輔
【テーマコード(参考)】
2E301
【Fターム(参考)】
2E301CC01
2E301CC21
2E301CC34
2E301CC54
2E301CD12
2E301DD17
2E301DD72
(57)【要約】
【課題】水処理施設内で用いられても、踏板の上に土砂等が残存しにくい螺旋階段を得る。
【解決手段】上板部21には、多数の小さな開口が配列されたグレーティング部211が設けられる。グレーティング部211における各開口は、上板部21をz方向で貫通するように形成されるため、上板部21の上側の水はこの開口を通って上板部21の下側に流れる。この踏板20においては、上板部21の下側において、グレーティング部211を上下方向で透過した水を受けてこれをy方向正側に向けて流す水流案内部が設けられる。水流案内部の上面は、y方向負側からy方向正側にかけて降下するように傾斜した面となっている水流案内面となっている。水は、各踏板20における上板部21の下側を順次流れて、下方に達する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側から水が溜められる水処理施設内に設置され、鉛直方向に延伸する心柱を中心として複数の踏板が螺旋状に配置されることによって、複数の前記踏板により階段が形成されると共に、投入される水を上方から下方に案内する螺旋階段であって、
前記踏板は、
前記心柱と交差する板状の構成を有し、水を上下方向で透過させる開口が格子状に複数配列されて形成されたグレーティング部を具備する上板部と、
前記グレーティング部を透過した水を、前記心柱を中心とした周方向で当該踏板よりも下側に設けられて隣接する他の前記踏板である下側踏板が設けられた側である第1の側、かつ前記下側踏板の前記上板部に向けて流すように、前記第1の側と反対側である第2の側から前記第1の側に向けて降下するように傾斜した水流案内面と、
前記心柱を中心とした径方向外側において、前記上板部よりも下側に突出し、前記周方向及び鉛直方向に広がる板状の外板部と、
を具備し、
投入された水が、各前記踏板において、前記上板部の下側で流れることを特徴とする螺旋階段。
【請求項2】
前記踏板の、前記径方向外側の前記周方向の両側においてそれぞれ装着された、鉛直方向に沿って上方に延伸する踏板固定部材を具備し、
一方の側にある前記踏板固定部材は、前記周方向で隣接する他の前記踏板に装着された他方の側にある前記踏板固定部材と共通とされたことを特徴とする請求項1に記載の螺旋階段。
【請求項3】
前記踏板は、前記踏板固定部材の各々を挿通させる箇所においてそれぞれ設けられ、前記上板部よりも下側に突出した踏板固定部材支持部を具備し、
前記上板部及び前記踏板固定部材支持部を鉛直方向で貫通する貫通孔が形成され、
前記径方向外側の2つの前記踏板固定部材支持部の間において、前記外板部が形成されたことを特徴とする請求項2に記載の螺旋階段。
【請求項4】
複数の前記踏板は共通の構造を具備し、
鉛直方向で隣接する2つの前記踏板の間における前記心柱の周りの設定角度の差は、複数の前記踏板の間で一定とされたことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の螺旋階段。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の螺旋階段が立坑の内部に設置された構成を具備することを特徴とする水処理施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者が昇降のために用いることができると共に、水処理装置の中において水流を案内する螺旋形状の構成を具備する螺旋階段の構造に関する。また、この螺旋階段が設置された水処理施設に関する。
【背景技術】
【0002】
鉛直方向に延伸する心柱に対して、平板状の上面を具備する複数の踏板が階段を形成するように螺旋状に装着されて積層された構造を具備する螺旋階段が、例えば特許文献1等に記載されている。ここで、防災用の大型の水処理施設内にこの螺旋階段を設ければ、作業者が作業の際にこの螺旋階段を昇降することができる。一方、この螺旋階段の上部から水が投入される構成とすれば、この螺旋階段を水の案内のためにも用いることができる。これによって、水処理施設内において水が投入された際の衝撃を緩和することができる。
【0003】
特許文献1に記載されたように、心柱周りの角度を隣接する2つの踏板間で一定値だけずらし、かつこの2つの踏板の高さを一定値だけ変えることによってこれらの間で部分的に重複する領域を設けて段差を形成し、この2つの踏板で階段を構成することができ、多数の踏板を同様に心柱に対して装着することによって、螺旋階段を形成することができる。
【0004】
また、特許文献1に記載の技術においては、手摺を固定するための2本の手摺柱が単一の踏板に対して装着され、この2本の手摺柱の間に手摺が装着される。この際、隣接する踏板が重複した部分で1本の手摺柱を共有するような構成とすることによって、隣接する踏板の位置関係を固定することができる。この構成を全ての踏板間で採用することによって、全ての踏板間の位置関係が固定された螺旋階段を得ることができる。
【0005】
このような構造を有する共通の構造の複数の踏板を、例えば FRP(Fiber Reinforced Plastics)製とすれば、踏板を安価とすることができる。上記のような螺旋階段を水処理施設内に用いる場合においては、この螺旋階段には、作業者の昇降の際の荷重と、水が投入される際に印加される荷重が加わるため、前記のように、中心の心柱は特に機械的強度の高い鋼製とされる。これによって安価な螺旋階段、水処理施設を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記のように、この螺旋階段は、作業者の昇降に用いられると共に、投入された水の案内のために用いられる。この際、水の中には土砂が混入されている場合も多い。このような場合には、水が投入されて蓄積された後で水を排出した場合には、踏板の上に土砂が残存することがあった。これによって、その後の作業者の昇降に障害が発生する場合もあった。
【0008】
このため、水処理施設内で用いられても、踏板の上に土砂等が残存しにくい螺旋階段が求められた。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、上記問題点を解決する発明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべく、以下に掲げる構成とした。
本発明は、上側から水が溜められる水処理施設内に設置され、鉛直方向に延伸する心柱を中心として複数の踏板が螺旋状に配置されることによって、複数の前記踏板により階段が形成されると共に、投入される水を上方から下方に案内する螺旋階段であって、前記踏板は、前記心柱と交差する板状の構成を有し、水を上下方向で透過させる開口が格子状に複数配列されて形成されたグレーティング部を具備する上板部と、前記グレーティング部を透過した水を、前記心柱を中心とした周方向で当該踏板よりも下側に設けられて隣接する他の前記踏板である下側踏板が設けられた側である第1の側、かつ前記下側踏板の前記上板部に向けて流すように、前記第1の側と反対側である第2の側から前記第1の側に向けて降下するように傾斜した水流案内面と、前記心柱を中心とした径方向外側において、前記上板部よりも下側に突出し、前記周方向及び鉛直方向に広がる板状の外板部と、を具備し、投入された水が、各前記踏板において、前記上板部の下側で流れることを特徴とする。
本発明は、前記踏板の、前記径方向外側の前記周方向の両側においてそれぞれ装着された、鉛直方向に沿って上方に延伸する踏板固定部材を具備し、一方の側にある前記踏板固定部材は、前記周方向で隣接する他の前記踏板に装着された他方の側にある前記踏板固定部材と共通とされたことを特徴とする。
本発明において、前記踏板は、前記踏板固定部材の各々を挿通させる箇所においてそれぞれ設けられ、前記上板部よりも下側に突出した踏板固定部材支持部を具備し、前記上板部及び前記踏板固定部材支持部を鉛直方向で貫通する貫通孔が形成され、前記径方向外側の2つの前記踏板固定部材支持部の間において、前記外板部が形成されたことを特徴とする。
本発明において、複数の前記踏板は共通の構造を具備し、鉛直方向で隣接する2つの前記踏板の間における前記心柱の周りの設定角度の差は、複数の前記踏板の間で一定とされたことを特徴とする。
本発明の水処理施設は、前記螺旋階段が立坑の内部に設置された構成を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は以上のように構成されているので、水処理施設内で用いられても、踏板の上に土砂等が残存しにくい螺旋階段を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態に係る螺旋階段が用いられた水処理施設の斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る螺旋階段が用いられた水処理施設の断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の部分的な斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の部分的な上面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る螺旋階段における、連続した3つの踏板に係る部分の斜視図(その1)である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る螺旋階段における、連続した3つの踏板に係る部分の斜視図(その2)である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る螺旋階段における、連続した3つの踏板に係る部分の斜視図(その3)である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の上面図(a)、下面図(b)である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の2方向からみた側面図である
【
図10】本発明の実施の形態に係る螺旋階段の踏板の断面図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る螺旋階段において、連続した3つの踏板に係る部分における水の流れを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態に係る螺旋階段について説明する。
図1は、この螺旋階段1が設けられる水処理施設200の構成を示す斜視図である。この水処理施設200においては、例えばhttps://www.nipponhume.co.jp/product/pcwellmeth.htmlに記載されたウェルマンである。ここで、ウェルマンは、PCウェル工法によって地中において円環状のプレキャストコンクリートブロックが積層されて構築された立坑100であり、地中で水を溜める構造として特に好ましく用いることができる。
【0014】
図1においては、立坑100は点線で簡略化されて記載され、底版Bの上に、鉛直方向(z方向)に沿った中心軸をもつ短い円筒形状のプレキャストコンクリートブロック(プレキャスト部材)100A~100Cが積層されて構成されることによって、長い円筒形状に形成されている。この内径は例えば4m~10mの範囲である。このため、作業者が昇降できる螺旋階段1を立坑100の内部に設置することができ、この螺旋階段1に沿って水を導入することもできる。
図1における螺旋階段1に沿った矢印は、この際の作業者及び水の動きを示す。鉛直方向に沿った心柱10が螺旋階段1の中心軸となり、螺旋階段1は、共通の構造を有する多数の踏板20が心柱10に装着、積層されて構成される。螺旋階段1の記載も
図1において簡略化されて示されている。
【0015】
ここで、鉛直方向に沿った心柱10が螺旋階段1の中心軸となり、螺旋階段1は、共通の構造を有する多数の踏板20が心柱10に装着されて構成される。この螺旋階段1は、心柱10が底版Bに固定されることによって、この水処理施設200において固定される。
【0016】
図2は、
図1における心柱10に沿った断面図である。ここでは、構成を模式化して示すために、縦横の縮尺は実際のものとは異なる。また、各踏板20の断面形状は後述する形状とは異なり、単純化されて矩形形状とされている。この立坑100においては、
図2における上側の流入口101から水が投入されて螺旋階段1に沿って水が流れて溜められ、溜められた水は下側の流出口102から排出される。ただし、立坑100に流出口102が設けられている必要はない。この場合には、例えば立坑100の内部に溜められた水をポンプ等を用いて汲み上げることによって、水が排出される。特許文献1に記載の技術においては、螺旋階段において主に各踏板の上側を水が流れるのに対し、この螺旋階段においては、各踏板の下側あるいは内部(上面よりも下側)を水が流れる。
【0017】
図3は、この螺旋階段1における13枚の踏板20に対応した部分の構成を示す斜視図である。ここでは、下側から順に踏板20A~20Mが心柱10に対して、下側からみて右回りで上側に向かう螺旋状で装着されている。各踏板は、下側からみて右回りで上側に向かう螺旋状で心柱10に装着されている。ここで、ある一つの踏板20(例えば踏板20E)は、その下側で隣接する踏板20(踏板20D:下側踏板)、その上側で隣接する踏板20(踏板20F:上側踏板)と、鉛直方向から見て(平面視において)部分的に重複する。
【0018】
図4は、このような心柱10と踏板20A~20Kまでの位置関係を示す、上面図である。
図4において、ある一つの踏板20(例えば踏板20E)に対して、その下側で隣接する踏板20(踏板20D:下側踏板)は、中心(心柱10)の周りで時計回りの側(第1の側)で30°ずれた角度で存在し、これらは平面視において部分的に重複する。同様に、踏板20Eに対して、その上側で隣接する踏板20(踏板20F:上側踏板)は、心柱10の周りで反時計回りの側(第2の側)で30°ずれた角度で存在し、これらは平面視において部分的に重複する。同様の位置関係は、上端部と下端部の踏板20以外の全てで成立するため、全ての踏板によって螺旋状に階段が形成される。この際、この螺旋階段1は、連続した12枚の踏板20を一周期とした周期的構造を有する。
【0019】
また、
図3、4に示されるように、各踏板20における心柱10からみた外側には、第1の側、第2の側のそれぞれにおいて、鉛直方向に沿って上側に延伸する踏板固定部材31が設置される。ここで、例えば踏板20Eにおける第1の側の踏板固定部材31は、踏板20Eを下側に向けて上下方向で貫通し、下側の踏板20Dにおける第2の側の踏板固定部材31となっており、踏板20Eにおける第2の側の踏板固定部材31は、踏板20Eを上側に向けて上下方向で貫通し、上側の踏板20Fを貫通し、踏板20Fにおける第1の側の踏板固定部材31となっている。他の踏板においても、同様に踏板固定部材31が装着され、これによって鉛直方向で隣接する2つの踏板20間の水平方向における位置関係が定まる。
【0020】
踏板固定部材31は、特許文献1における手摺柱に対応する。ただし、特許文献1に記載の技術においては、この手摺柱に対して踏板の上側で手摺が装着されるため、この手摺柱は踏板間の位置の固定だけでなく手摺の固定のために用いられたのに対し、この踏板支持部材31は、踏板20間の位置の固定のためのみに用いられる。このため、踏板支持部材31の鉛直方向の長さは、2つの踏板20を貫通する程度で充分である。
【0021】
この螺旋階段1における連続した3つの踏板20の、第1の側及び上側からみた斜視図を
図5に、心柱10を中心とした径方向外側かつ上側からみた斜視図を
図6に、第2の側及び上側からみた斜視図を
図7に、それぞれ示す。なお、ここでは後述するx、y、z方向が記載されているが、x方向とy方向は単一の踏板20に対して定義されるため、ここで示されたx方向とy方向は上下方向における中央の踏板20に対するものである。また、心柱10は破線で記載され、踏板固定部材31は記載されていないが、前記のように、これによって踏板20間の位置関係は固定されているものとする。
【0022】
また、
図8は、この踏板20の上面図(a)、下面図(b)である。
図8等において、鉛直方向をz方向(上側を正とする)、径方向をx方向(心柱10からみた外側を正とする)、z方向及びx方向と垂直な方向をy方向(第1の側を正とする)とする。
図9は、
図8(a)における図中上側(心柱10を中心とした径方向外側:x方向正側)からみた側面図(a)、図中左側(y方向負側)からみた側面図(b)である。
【0023】
これらの図に示されるように、踏板20は、平面視において、心柱10を中心とする円弧形状の外周と、心柱10がある側からこの外周側に向かうそれぞれ第1の側(y方向正側)、第2の側(y方向負側)における2つの側面を具備する。また、
図5(b)に示されるように、この踏板20の上側には、水平(xy方向)に広がる上面を具備する板状の上板部21が設けられる。踏板20の上面側はこの上板部21で占められる。
【0024】
また、
図5(a)、
図9に示されるように、踏板20の第1の側(y方向正側)においては、その下側に位置する踏板20の上板部21が露出している。このため、
図5(a)におけるある一つの踏板20の上板部21と、この踏板20の下側で隣接する踏板20の上板部21で、階段が形成される。
【0025】
図5~8に示されるように、上板部21には、多数の小さな開口が配列されたグレーティング部211が設けられる。グレーティング部211における各開口は、上板部21をz方向で貫通するように形成されるため、上板部21の上側の水はこの開口を通って上板部21の下側に流れる。前記のように、鉛直方向で隣接する2つの踏板20は平面視において部分的に重複するが、
図5、6に示されるように、下側の踏板20におけるグレーティング部211の大部分は上側の踏板20によって覆われずに露出している。
【0026】
図3、
図8に示されるように、上板部21には、心柱10が挿通する孔部である心柱挿入用孔21Aと、心柱10からみた外側において踏板支持部材31が挿通する孔部である踏板支持部材挿入用孔21B(2つ)が設けられる。上板部21の上面におけるグレーティング部211の開口、心柱挿入用孔21A、踏板支持部材挿入用孔21B以外の箇所は平面(水平面)を構成する。また、グレーティング部211における各開口は、作業者の足(靴)よりも充分に小さく設定されるため、作業者は、グレーティング部211の上に足を置き、この螺旋階段1を昇降することができる。上板部21の上面には作業者が足を置くために、この上面は平坦であることが好ましいが、開口を設けた場合であっても、このようなグレーティング部211を設ければ、作業者は、この上面が平坦である場合と同様に足を置くことができる。
【0027】
また、
図7、8に示されるように、上板部21の下側かつ径方向外側における踏板支持部材挿入用孔21Bに対応する2箇所には、鉛直方向に延伸する柱状の踏板支持部材支持部23が設けられ、前記の踏板支持部材挿入用孔21Bは、上板部21と踏板支持部材支持部23を貫通するように形成される。これによって、踏板支持部材31を踏板20に対して強固に固定し、隣接する2つの踏板20間の位置関係を固定することができる。同様に、心柱挿入用孔21Aに対応した柱状の心柱支持部24が心柱10側かつ上板部21の下側に設けられ、心柱挿入孔21は上板部21と心柱支持部26を貫通するように形成される。これによって、踏板20の心柱10に対する位置関係を固定することができる。
【0028】
図5、7に示されるように、踏板20が積層されるに際しては、積層方向で隣接する踏板20の心柱支持部24が当接して積層される。また、
図6に示されるように、上下の踏板20においてそれぞれ異なる側(上側の踏板20における第1の側、下側の踏板20における第2の側)にある踏板支持部材支持部23同士も積層される。このため、踏板20同士の積層方向(鉛直方向)における位置関係は、心柱支持部24、踏板支持部材支持部23によって定まり、これによって複数の踏板20によって階段が形成される。
【0029】
この踏板20においては、上板部21の下側において、グレーティング部211を上下方向で透過した水を受けてこれをy方向正側に向けて流す水流案内部25が設けられる。水流案内部25の上面は、y方向負側からy方向正側にかけて降下するように傾斜した面となっている水流案内面25Aとなっている。
【0030】
また、
図5~8に示されるように、径方向外側の2つの踏板支持部材支持部23の間において、下側に突出する外板部26が形成されている。外板部26は、周方向(略y方向)及びz方向に広がる板状とされる。
【0031】
図10は、
図8におけるA-A方向の断面図であり、この踏板20におけるx方向の中間付近におけるx方向と垂直な断面である。ここでは、水流案内部25は、y方向正側に向けて下降するような板状とされる。
図11は、
図4において連続する3つの踏板20(ここでは踏板20D、20E、20Fとする)おける
図10に対応した部分の位置関係を模式的に示す図である。ここでは、最も上側の踏板20Fの上側の水は踏板20Fの上板部21(グレーティング部211)を下側に透過し、踏板20Fの水流案内面25Aによってその進行方向が下向きかつy方向正側(下側で隣接する踏板20がある側)に向けて流れ、その下側の踏板20Eにおける上板部21(グレーティング部211)に流れる。この水は、前記と同様に踏板20Eの上板部21(グレーティング部211)を下側に透過し、踏板20Eの水流案内面25Aによってその進行方向が下向きかつ更にy方向正側(下側で隣接する踏板20がある側)に向けて流れる。このため、
図10においては、上側から投入された水は矢印Bに示されるように流れる。すなわち、水は、各踏板20における上板部21の下側を順次流れて、下方に達する。
【0032】
この際、水が踏板20に沿って螺旋形状に流れる場合、心柱10の周りで遠心力が働く。これに対して、
図6等に示されるように、踏板20の径方向外側には、外板部26が設けられているため、水がこの遠心力によって踏板20よりも径方向外側に流れることは抑制される。このため、上記の構造によって、水を、各踏板20の上板部21よりも下側において、各踏板20に沿って螺旋状に流すことができる。
【0033】
また、
図11において、例えば最も上側の踏板20Fのグレーティング部211を透過した水は、直下の水流案内面25Aに当たってから更に下側かつy方向正側に流れる。このため、例えば上側の踏板20Fの上板部21上の水が踏板20Dと踏板20Fの高低差に応じた重力で下側の踏板20Dに直接当たることは抑制される。このため、水流案内部25に水の重力によって大きな力が働くことが抑制される。
【0034】
このように、この螺旋階段1においては、水は作業者が昇降の際に足を置く上板部21の上側を流れず、各踏板20において上板部21の下側を流れる。このため、例えば水に土砂等が混入していた場合でも、水を水処理施設200から除去した後で土砂等が踏板20(上板部21)の上側に残存することが抑制される。この際、前記のように、踏板20における下側の傾斜面(水流案内面25A)に沿って水が流れるため、水の円滑な流下が実現される。
【0035】
踏板20をFRPで構成すれば、上板部212、踏板支持部材支持柱支持部23、心柱支持部24、水流案内部25、外板部26を一体化して容易に形成することができる。
【0036】
なお、水流案内部25の上面は、このような水流案内面25Aとされるが、その下面側では水は流れず、かつ作業者の昇降の際に作業者がこの部分に触れることもない。このため、上記の踏板20においては水流案内部25は傾斜した板状とされていたが、この下面側の形状あるいは水流案内部25の形状は、水流案内部25の機械的強度等を考慮して適宜設定が可能である。踏板20をFRP製とした場合には、このような水流案内部25等が設けられた踏板20を製造することも容易である。
【0037】
なお、前記の例においては、
図4に示されたように、隣接する踏板20の間のなす角度が30°であるものとされた。しかしながら、この設定は適宜行うことができる。例えば、螺旋階段が平面視において大きな場合には、隣接する踏板20の間の角度をより小さくすることができる。ただし、、隣接する2つの踏板の間のなす角度(°)を、360の整数分の1とすることによって、
図4に示されたような平面視における踏板20の配置を周期的とすることができる。また、前記の例では、上板部21の上面は心柱10の延伸方向(z方向)と垂直とされたが、これらの間が厳密に垂直である必要はない。
【0038】
また、上記の例では、螺旋階段1は水処理施設200(立坑100)内に設置されるために水を案内するために用いられるものとしたが、立坑内に設けられる場合以外でも、作業者の昇降のためと、水の案内のために用いられる場合には、上記の構造が有効であることは明らかである。
【0039】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0040】
1 螺旋階段
10 心柱
20、20A~20M 踏板
21 上板部
21A 心柱挿入用孔
21B 踏板固定部材挿入用孔
23 踏板固定部材支持部
24 心柱支持部
25 水流案内部
25A 水流案内面
26 外板部
31 踏板固定部材
100 立坑
100A~100C プレキャストコンクリートブロック(プレキャスト部材)
101 流入口
102 流出口
200 水処理施設
211 グレーティング部
B 底版