(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055994
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】電子機器及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 29/13 20060101AFI20240412BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
B41J29/13
B41J3/36 T
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033443
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2022048053の分割
【原出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】亀井 康一
(57)【要約】
【課題】デザイン性と蓋部を開く際の利便性に優れる電子機器を得る。
【解決手段】装置本体(11)に対して開閉が可能な蓋部(12)と、装置本体に対して蓋部を閉じた状態で、蓋部の保持を行う保持機構(20)と、装置本体の底部又は装置本体の側部に設けられた押さえ部(71e)と、装置本体の底部に設けられた外力印加部(32)が外力により押さえ部に向かう第1の方向(X1)へ移動されることによって、解除部(41)を介して保持機構による蓋部の保持を解除するスライダ(27)と、スライダに設けられた第1壁部(43a)と装置本体に設けられた第2壁部(65a)とに挟持され、スライダを第1の方向とは反対の第2の方向(X2)へ付勢する弾性部材(50)と、を備える電子機器。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して開閉が可能な蓋部と、
前記装置本体に対して前記蓋部を閉じた状態で、前記蓋部の保持を行う保持機構と、
前記装置本体の底部又は前記装置本体の側部に設けられた押さえ部と、
前記装置本体の底部に設けられた外力印加部と、前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除する解除部と、を有し、外力により前記外力印加部が前記押さえ部に向かう第1の方向へ移動されることによって、前記解除部を介して前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除するスライダと、
前記スライダに設けられた第1壁部と前記装置本体に設けられた第2壁部とに挟持され、前記スライダを前記第1の方向とは反対の第2の方向へ付勢する弾性部材と、
を備える、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記装置本体の底部に、下方に向けて開放した収容部を備え、
前記外力印加部は、前記収容部内において前記第1の方向への外力の印加が可能なように設けられており、
前記押さえ部は、前記収容部を囲む壁部の一部である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1の方向及び前記第2の方向は、前記装置本体の底部の長手方向であり、
前記収容部は、前記装置本体の底部の長手方向の端部に設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
電気配線を接続するコネクタを前記収容部内に接続可能であり、
前記外力印加部は、前記収容部内へ前記コネクタが接続されている状態で、前記第1の方向及び前記第2の方向へ移動可能な位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記外力印加部は、前記スライダの前記第1の方向及び前記第2の方向に沿う一方の端部に設けられ、
前記解除部は、前記スライダの前記第1の方向及び前記第2の方向に沿う他方の端部に設けられ、前記第1の方向及び前記第2の方向と交差する方向に突出しており、外力により前記外力印加部が第1の方向へ移動されるときに、前記保持機構に当接することによって前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項6】
前記保持機構は、
前記蓋部が閉じるときに保持方向へ回転することにより前記蓋部を保持して開く動作を規制し、前記保持方向とは反対の保持解除方向へ回転することにより前記保持を解除する第1回動部材と、
前記蓋部が閉じるときに嵌合方向へ回転することにより前記第1回動部材に嵌合して前記保持解除方向への回転を規制し、前記嵌合方向とは反対の嵌合解除方向へ回転することにより前記嵌合を解除する第2回動部材と、を有し、
前記解除部は、外力により前記外力印加部が第1の方向へ移動されるときに、前記第2回動部材に当接することによって前記第1回動部材による前記蓋部の前記保持を解除する、
ことを特徴とする請求項5に記載の電子機器。
【請求項7】
被印刷媒体を搬送する搬送部に接近する印刷位置と、前記搬送部から離間する離間位置と、に移動可能な印刷部を備える装置本体と、
前記装置本体に対して開閉が可能な蓋部と、
前記装置本体に対して前記蓋部を閉じた状態で、前記蓋部の保持及び前記印刷位置での前記印刷部の保持を行う保持機構と、
前記装置本体の底部又は前記装置本体の側部に設けられた押さえ部と、
前記装置本体の底部に設けられた外力印加部と、前記保持機構による前記蓋部及び前記印刷部の前記保持を解除する解除部と、を有し、外力により前記外力印加部が前記押さえ部に向かう第1の方向へ移動されることによって、前記解除部を介して前記保持機構による前記蓋部及び前記印刷部の前記保持を解除するスライダと、
前記スライダに設けられた第1壁部と前記装置本体に設けられた第2壁部とに挟持され、前記スライダを前記第1の方向とは反対の第2の方向へ付勢する弾性部材と、
を備える、
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被印刷媒体であるロール状のテープに文字や図形などを印刷して印刷物を作成する印刷装置が知られている。この種の印刷装置はラベルプリンタとも呼ばれ、印刷ヘッドとプラテンローラとの間にテープを挟持し、テープを搬送しながら印刷を行い、印刷処理が終了した後にテープカットを行って印刷物(ラベル)を作成する。
【0003】
ラベルプリンタでは、ロール状のテープを使い切った場合、筐体に対して蓋を開けてテープ交換することが一般的である。また、蓋を開ける際には、印刷ヘッドとプラテンローラによるテープの挟持を解除させるように構成されている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載された印刷装置は、プリンタ本体部と蓋部を備え、記録ヘッドとプラテンローラの一方が蓋部に取り付けられ、記録ヘッドとプラテンローラの他方がプリンタ本体部に取り付けられる。プリンタ本体部には、プラテンローラをロックするロックレバーが設けられ、蓋部の外面にはスライド可能なオープンレバーが設けられる。オープンレバーのスライドにより、オープンレバーに設けられた突起部がロックレバーを押圧して、蓋部が開く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年では、ラベルプリンタ側で印刷データを作成するものに限られず、スマートフォンやパーソナルコンピュータなどの外部機器によって印刷データを作成し、無線又は有線接続によって印刷データをラベルプリンタに送信する機種が増えている。これに伴い、文字入力のためのキーボードなどをラベルプリンタに搭載せず、筐体外観をシンプルにする傾向がある。さらに、筐体に対して蓋を開かせるための操作部材などについても、デザイン上の観点から、ラベルプリンタの使用時には外観に表れないことが望まれている。
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、記録ヘッドやプラテンローラとの位置の関係上、蓋部の外面に設けられたスライド式のオープンレバーが容易に視認できてしまい、デザイン上好ましくない。また、ロック解除操作を行う度に、互いの動作方向が異なるオープンレバーとロックレバーとの接触による摩擦が発生するため、接触箇所が劣化してしまい、時間経過とともに正常に動作しなくなる可能性がある。
【0008】
そこで本発明は、デザイン性と蓋部を開く際の利便性に優れる電子機器及び印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の電子機器は、装置本体に対して開閉が可能な蓋部と、前記装置本体に対して前記蓋部を閉じた状態で、前記蓋部の保持を行う保持機構と、前記装置本体の底部又は前記装置本体の側部に設けられた押さえ部と、前記装置本体の底部に設けられた外力印加部と、前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除する解除部と、を有し、外力により前記外力印加部が前記押さえ部に向かう第1の方向へ移動されることによって、前記解除部を介して前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除するスライダと、前記スライダに設けられた第1壁部と前記装置本体に設けられた第2壁部とに挟持され、前記スライダを前記第1の方向とは反対の第2の方向へ付勢する弾性部材と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
以上の態様によれば、デザイン性と蓋を開く際の利便性に優れる電子機器及び印刷装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】印刷装置の蓋部を閉じた状態の斜視図である。
【
図2】印刷装置の蓋部を閉いた状態の斜視図である。
【
図3】印刷装置の本体の内部構造を示す正面図である。
【
図5】スライダとプッシュレバーの関係を示す斜視図である。
【
図6】スライダとスライダ付勢バネの斜視図である。
【
図7】スライダとスライダ付勢バネの斜視図である。
【
図8】スライダにおける操作部材と伝達部材の結合部分を示す斜視図である。
【
図9】操作部材と伝達部材を結合させる前の状態の斜視図である。
【
図10】ベース部材への伝達部材の組み付け工程を示す斜視図である。
【
図11】ベース部材と底部ユニットを結合させる前の状態の斜視図である。
【
図12】底部ユニットへの操作部材の組み付け工程を示す斜視図である。
【
図13】底部ユニットへの操作部材の組み付け工程を示す斜視図である。
【
図14】スライダを操作していない状態の本体の内部構造を示す斜視図である。
【
図15】スライダを第1の方向に操作した状態の本体の内部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1から
図3は、本実施形態の印刷装置10を示している。印刷装置10は、帯状の被印刷媒体であるテープ(図示略)に印刷を行ってラベルを作成するラベルプリンタであり、本発明を適用する電子機器の一つの態様である。
【0013】
互いに垂直な関係にあるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向を基準として、印刷装置10の構成を説明する。印刷装置10は、印刷時にZ軸方向が上下方向になるように設置され、X軸方向とY軸方向が水平方向になる。
【0014】
印刷装置10は、Z軸方向の両側に上面10aと底面10bを有し、Y軸方向の両側に前面10cと後面10dを有し、X軸方向の両側に側面10eと側面10fを有する箱型の外面形状を有している。上面10aと底面10bはそれぞれ、X軸方向及びY軸方向と略平行な面(つまり、略水平な面)である。前面10c、後面10d、側面10e、側面10fはZ軸方向に対してやや傾斜しており、上面10a側から底面10b側へ進むにつれて、前面10cと後面10dの間隔が徐々に大きくなり、側面10eと側面10fの間隔が徐々に大きくなる。
【0015】
底面10bには4つの脚部10g(
図2参照)が設けられている。印刷装置10での印刷時には、底面10bを下方に向け、脚部10gを机や床などに載せて使用する。この使用状態での印刷装置10の向きに基づいて、Z軸方向のうち上面10a側を上方、底面10b側を下方と定義する。側面10eから側面10fまでの距離は、前面10cから後面10dまでの距離よりも大きい。すなわち、水平方向においては、X軸方向が印刷装置10の長手方向であり、Y軸方向が印刷装置10の短手方向である。
【0016】
印刷装置10は、テープへの印刷を行う装置本体11と、装置本体11に対して開閉可能な開閉部材である蓋部12を有している。
図1は蓋部12が閉じた状態を示し、
図2は蓋部12を途中まで開いた状態を示している。
図3は、蓋部12を取り外した状態の装置本体11を示している。
【0017】
蓋部12は、上面10aと前面10cの境界付近に設けたヒンジ部12a(
図3参照)を中心として、Y軸方向に引き上げるようにして開くことができる。蓋部12を開閉する動作は、ユーザーの手動によって行われる。蓋部12を閉じた状態では、印刷装置10の前面10cを蓋部12が覆う。蓋部12は、前面10cに加えて、側面10eと側面10fの途中まで覆う形状を有している。
【0018】
図2及び
図3に示すように、装置本体11の内部に、テープへの印刷を行う印刷部である印刷ヘッド13と、テープの搬送を行う搬送部であるプラテンローラ14と、テープの切断を行うテープカッター15などを備えている。
【0019】
装置本体11にはテープカートリッジ装着部16が形成されている。テープカートリッジ装着部16は、前面10c側に向けて開放された凹部であり、その内部にテープカートリッジ17(
図3参照)を収容可能である。テープカートリッジ17には、ロール形状に巻かれたテープが収められる。閉じた状態の蓋部12によってテープカートリッジ装着部16が覆われる。蓋部12を開くことでテープカートリッジ装着部16が露出して、テープカートリッジ装着部16へのテープカートリッジ17の着脱が可能になる。
【0020】
印刷ヘッド13は、テープの長手方向(搬送方向、X軸方向)に対して垂直な主走査方向(Y軸方向)に配列された複数の発熱素子を有しており、発熱素子でテープを加熱することにより1ラインずつ印刷(印字)を行う。印刷ヘッド13による印刷は、熱転写式、感熱式などによって行われる。
【0021】
印刷ヘッド13は、プラテンローラ14から離間する離間位置と、プラテンローラ14に接近する印刷位置とに移動可能である。離間位置と印刷位置への印刷ヘッド13の移動は、後述する保持機構20を介して、蓋部12の開閉に連動して行われる。蓋部12が開いた状態(
図2)では、印刷ヘッド13がプラテンローラ14から離間し、蓋部12が閉じた状態(
図1)では、印刷ヘッド13がプラテンローラ14に接触する。
【0022】
プラテンローラ14は、Y軸方向に延びる軸を中心として回転可能に支持されており、搬送用モータの駆動力によって回転する。
【0023】
テープカートリッジ17をテープカートリッジ装着部16に取り付ける際には、蓋部12を開く。蓋部12が開くのに連動して、印刷ヘッド13がプラテンローラ14から離間した状態になるため、テープカートリッジ17の取り付けによって、印刷ヘッド13とプラテンローラ14の間にテープが入り込むことができる。
【0024】
蓋部12を閉じるのに連動して、印刷ヘッド13が印刷位置に移動し、印刷ヘッド13とプラテンローラ14の間にテープが挟持される。印刷の際には、このテープ挟持状態で印刷ヘッド13を加熱する。また、テープ挟持状態でプラテンローラ14を回転させると、テープが長手方向(X軸方向)に搬送される。
【0025】
印刷装置10の側面10fの側にはテープ排出口18が形成されている。印刷ヘッド13によって印刷されたテープは、プラテンローラ14の回転によって排出方向に搬送され、テープ排出口18から外部に排出される。
【0026】
テープ排出口18の手前にテープカッター15が設けられている。テープカッター15はハーフカッターとフルカッターを備えており、ハーフカッターは剥離紙を残してテープの厚みの途中まで切断し、フルカッターはテープの厚み全体を切断する。
【0027】
印刷装置10は、蓋部12と印刷ヘッド13の保持を行う保持機構20を備える。保持機構20によって、蓋部12が閉じた状態に保持されると共に、印刷ヘッド13が印刷位置に保持される。装置本体11の底部に設けた操作部材30を操作することにより、保持機構20による保持を解除して蓋部12を開くことができる。
【0028】
図3及び
図4は、保持機構20の構成を示している。保持機構20を構成する要素として、蓋部12には押し込み突起21が設けられており、装置本体11内には、第1回動部材であるスイッチレバー22と、第2回動部材であるプッシュレバー23と、ヘッドアーム24(
図3参照)とが設けられている。スイッチレバー22とプッシュレバー23には、プッシュレバー戻しバネ25が接続している。スイッチレバー22とヘッドアーム24には、ヘッド押圧バネ26が接続している。
【0029】
図2に示すように、押し込み突起21は蓋部12の内面側に突出している。蓋部12を閉じると、押し込み突起21が、テープカートリッジ装着部16の下端付近に形成された挿入空間16a(
図3参照)へ挿入される。蓋部12の開閉に伴う押し込み突起21の移動方向は、蓋部12を支持するヒンジ部12aを中心とする回動であるが、挿入空間16aへ進入する際には、押し込み突起21は概ねY軸方向へ移動する。
【0030】
図4に示すように、押し込み突起21の先端近くには保持溝21aが形成されている。保持溝21aはX軸方向へ延びており、X軸方向の片方の側部に開口している。
【0031】
ヘッドアーム24は、Y軸方向に向く支持軸を中心として回動(揺動)可能に支持されている。ヘッドアーム24に印刷ヘッド13が取り付けられており、ヘッドアーム24の回動によって印刷ヘッド13が前述の離間位置と印刷位置に移動する。
【0032】
図4に示すように、スイッチレバー22は、Z軸方向に向く支持軸22aを中心として回動(揺動)可能に支持されている。スイッチレバー22は、支持軸22aによる支持箇所から異なる方向に延びる第1腕部22bと第2腕部22cを有している。
【0033】
第1腕部22bの先端付近のバネ掛け部22dに、ヘッド押圧バネ26が接続している。ヘッド押圧バネ26は引張バネであり、一端がスイッチレバー22のバネ掛け部22dに接続し、他端が
図3に示すようにヘッドアーム24に接続している。スイッチレバー22が回動すると、ヘッド押圧バネ26が伸縮しながらヘッドアーム24の動作を制御する。
【0034】
第2腕部22cの先端付近には、保持突起22eが設けられている。保持突起22eはZ軸方向に突出する円柱形状の突起であり、押し込み突起21の保持溝21aの幅に対応する径を有している。つまり、保持溝21aの内部に保持突起22eが進入可能である。
【0035】
第2腕部22cの先端付近にはさらに、嵌合部22fが設けられている。嵌合部22fは第2腕部22cの先端から突出するフック形状である。
【0036】
第1腕部22bの途中に、バネ掛け部22iを有している。バネ掛け部22iにプッシュレバー戻しバネ25が接続している。
【0037】
図4に示すように、プッシュレバー23は、Z軸方向に向く支持軸23aを中心として回動(揺動)可能に支持されている。プッシュレバー23は、支持軸23aによる支持箇所から異なる方向に延びる第1腕部23bと第2腕部23cを有している。
【0038】
第1腕部23bの先端付近のバネ掛け部23dに、プッシュレバー戻しバネ25が接続している。プッシュレバー戻しバネ25は引張バネであり、プッシュレバー戻しバネ25が伸縮しながら、スイッチレバー22とプッシュレバー23の相対的な動作を制御する。
【0039】
第2腕部23cの先端付近には、被操作突起23eが設けられている。被操作突起23eはZ軸方向に突出する円柱形状の突起である。
【0040】
第2腕部23cの先端付近にはさらに、嵌合部23fが設けられている。嵌合部23fは、第1腕部23bの突出方向と同じ方向に向けて屈曲するフック形状である。
【0041】
以上の構造の保持機構20の動作を説明する。
図4は、蓋部12が完全に閉じて保持機構20により保持された保持状態を示している。
図4に示すスイッチレバー22の回転方向について、時計方向を保持解除方向とし、反時計方向を保持方向とする。
図4に示すプッシュレバー23の回転方向について、時計方向を嵌合方向とし、反時計方向を嵌合解除方向とする。
【0042】
蓋部12を閉じた状態では、スイッチレバー22とプッシュレバー23は
図4に示す保持状態にある。保持状態では、プッシュレバー戻しバネ25とヘッド押圧バネ26がそれぞれ伸ばされており、スイッチレバー22に対して保持解除方向への付勢力が作用している。スイッチレバー22の嵌合部22fに対してプッシュレバー23の嵌合部23fが嵌合しており、保持解除方向へのスイッチレバー22の回転が規制される。プッシュレバー戻しバネ25の付勢力は、プッシュレバー23を嵌合方向に牽引しており、嵌合部22fと嵌合部23fの嵌合が維持される。
【0043】
保持状態では、保持溝21aの内面が保持突起22eに当接して、挿入空間16aから引く抜く方向(
図4の上方)への押し込み突起21の移動が規制されることにより、蓋部12を開く動作が規制される。また、保持状態では、スイッチレバー22がヘッド押圧バネ26を介してヘッドアーム24を牽引(
図3の反時計方向に牽引)することによって、印刷ヘッド13が印刷位置に保持される。
【0044】
従って、蓋部12を閉じた状態では、保持機構20は、印刷ヘッド13を印刷位置に保持すると共に、蓋部12を保持した(蓋部12の開放を規制した)状態になる。
【0045】
詳細は後述するが、装置本体11の内部には、操作部材30に対する操作(外力印加)によってX軸方向に移動する伝達部材40が設けられており、伝達部材40の解除部41が被操作突起23eに当接可能である(
図5参照)。蓋部12が閉じた状態で操作部材30を操作すると、伝達部材40がX軸方向に移動して解除部41が被操作突起23eに当接する。解除部41は被操作突起23eを嵌合解除方向(反時計方向)に押圧し、プッシュレバー23が、プッシュレバー戻しバネ25を引っ張って伸ばしながら、嵌合解除方向に回転する。
【0046】
プッシュレバー23が嵌合解除方向に回転すると、スイッチレバー22の嵌合部22fに対するプッシュレバー23の嵌合部23fの嵌合が解除される。伸ばされた状態のプッシュレバー戻しバネ25とヘッド押圧バネ26とによって、スイッチレバー22が保持解除方向(時計方向)に付勢されており、嵌合部22fと嵌合部23fの嵌合解除に伴って、スイッチレバー22が付勢力によって保持解除方向に回転する。
【0047】
スイッチレバー22が付勢力によって保持解除方向に回転すると、スイッチレバー22とプッシュレバー23は保持解除状態になる。保持解除状態では、スイッチレバー22の保持解除方向への回転によって、保持突起22eが保持溝21aの内面を蓋部12の開放方向に押し込んで、蓋部12が少量開かれる。また、スイッチレバー22が保持解除方向に回転することによってヘッドアーム24が回転され、印刷ヘッド13が印刷位置から離間位置に移動してプラテンローラ14から離れる。
【0048】
操作部材30への操作を解除すると、プッシュレバー戻しバネ25の付勢力によって、プッシュレバー23が嵌合方向(時計方向)に回転する。しかし、保持解除状態では、嵌合部23fに対して嵌合部22fがY軸方向に離間しているため、嵌合部22fと嵌合部23fは嵌合しない。
【0049】
以上のように、蓋部12が閉じた状態で操作部材30を操作すると、保持機構20の動作により、印刷位置への印刷ヘッド13の保持を解除して離間位置に移動させると共に、蓋部12の保持を解除した(蓋部12を開放可能にした)状態になる。保持機構20が保持解除状態になると、装置本体11に対して蓋部12が少量開く。この状態からユーザーが蓋部12を把持して、手動でさらに大きく蓋部12を開くことができる。
【0050】
続いて、蓋部12を開いた状態から閉じる場合を説明する。蓋部12を閉じる動作によって押し込み突起21がテープカートリッジ装着部16の挿入空間16aに挿入される。Y軸方向で押し込み突起21の挿入方向の延長上にはスイッチレバー22の保持突起22eが位置しており、押し込み突起21がY軸方向に挿入されると、押し込み突起21の先端付近に設けた傾斜面21bが保持突起22eを押圧してX軸方向への力が生じ、スイッチレバー22が保持解除方向(時計方向)へ僅かに回転する。
【0051】
押し込み突起21がさらに挿入されると、保持突起22eが保持溝21aの開口部分に達する。押し込み突起21を挿入する力が保持溝21aから保持突起22eに伝わると、スイッチレバー22が保持方向(反時計方向)に回転する。
【0052】
スイッチレバー22が保持方向へ回転すると、ヘッド押圧バネ26を介してスイッチレバー22と弾性的に接続したヘッドアーム24が回転し、印刷ヘッド13が離間位置から印刷位置へ向けて移動してプラテンローラ14に接近する。印刷ヘッド13が印刷位置に達すると、印刷ヘッド13とプラテンローラ14の当接によって、ヘッドアーム24はそれ以上の反時計方向の回転が制限される。
【0053】
この段階で蓋部12は完全には閉じられておらず、押し込み突起21の挿入に伴ってスイッチレバー22はさらに保持方向へ回転を行う。すると、ヘッド押圧バネ26が引っ張られて伸び、ヘッド押圧バネ26が縮まろうとする力によってヘッドアーム24を付勢し、印刷ヘッド13がプラテンローラ14に押し付けられる。これにより、印刷ヘッド13が印刷位置に向けて付勢された状態で保持される。
【0054】
押し込み突起21の挿入に伴ってスイッチレバー22が保持位置(保持方向)へ回転すると、嵌合部22fが嵌合部23fに接近して当接する。このときの嵌合部22fと嵌合部23fの当接箇所は、Y軸方向に対して傾斜した面22g、23gであり、スイッチレバー22が保持位置へ向けて回転して嵌合部23fが嵌合部22fを押圧すると、X軸方向への力が伝わり、プッシュレバー23が嵌合解除方向(反時計方向)に回転する。このプッシュレバー23の回転は、嵌合部22fが嵌合部23fを乗り越えるために行われる退避動作である。
【0055】
プッシュレバー23が嵌合解除方向に回転することにより、プッシュレバー戻しバネ25が引っ張られて伸び、プッシュレバー戻しバネ25が縮まろうとする力によって、プッシュレバー23が嵌合方向(時計方向)へ付勢される。嵌合部22fの先端が嵌合部23fの先端を乗り越えると、嵌合部22fからの嵌合部23fに対する押圧が解除されたプッシュレバー23が、プッシュレバー戻しバネ25の付勢力によって嵌合方向に回転する。
【0056】
蓋部12が完全に閉じて押し込み突起21がテープカートリッジ装着部16の挿入空間16aへ最も深く挿入されると、スイッチレバー22とプッシュレバー23は
図4に示す保持状態になる。保持状態では、嵌合部22fと嵌合部23fの嵌合によって、スイッチレバー22が保持位置に保持され、印刷ヘッド13を印刷位置に保持すると共に、蓋部12を保持して開放を規制する。
【0057】
続いて、ユーザーの操作によって保持機構20に保持解除動作を行わせる操作機構の詳細を説明する。この操作機構は、操作部材30と伝達部材40が結合したスライダ27と、スライダ27を付勢する弾性部材であるスライダ付勢バネ50と、を備えている。
図5から
図7は、スライダ27の全体的な構造を示している。
図8及び
図9は、操作部材30と伝達部材40が結合する部分の構造を示している。以下の説明における各方向は、印刷装置10の装置本体11にスライダ27とスライダ付勢バネ50を組み付けた状態での方向を意味している。
【0058】
伝達部材40はX軸方向に長い部材であり、X軸方向の一方の端部に解除部41を備え、X軸方向の他方の端部付近に結合部42を備え、X軸方向の途中の位置にバネ支持部43を備えている。解除部41は、プッシュレバー23の被操作突起23eに当接する部位である。結合部42は、操作部材30が結合する部位である。バネ支持部43は、スライダ付勢バネ50を支持する部位である。
【0059】
伝達部材40は、合成樹脂の成形加工などで形成され、解除部41と結合部42とバネ支持部43を含む全体が一部品で構成されている。伝達部材40の全体的な構造として、X軸方向及びY軸方向に広がりを有する略水平な板状の底壁部40aの周縁から、立壁部40bがZ軸方向の上方に突出している。つまり、伝達部材40は、底壁部40aと立壁部40bで囲まれて上方側が開放された箱型の構造を有しており、高い剛性と軽量さを兼ね備えている。
【0060】
伝達部材40の解除部41は、X軸方向に対して交差する方向に突出している。より詳しくは、解除部41は、Y軸方向の後方側に向けて突出する屈曲形状を有し、立壁部40bの一部からなる当接面41aを備えている。当接面41aは、X軸方向でプッシュレバー23の被操作突起23eに対向して位置する平面である。
【0061】
伝達部材40の結合部42は、立壁部40bによって形成される一対の支持壁42aを備えている。一対の支持壁42aは、X軸方向及びZ軸方向に広がりを有する平板形状であり、Y軸方向に間隔を空けて平行に配されている。個々の支持壁42aの外側の面には、X軸方向に間隔を空けてZ軸方向に延びる一対の支持リブ42bが突出している。
【0062】
結合部42はさらに、底壁部40aからZ軸方向の下方に突出する嵌合突起42cを備えている(
図9参照)。嵌合突起42cは、X軸方向に向く一対の側面と、Y軸方向に向く一対の側面とを有する角柱形状の突出部である。
【0063】
操作部材30は、X軸方向及びY軸方向に広がりを有する板状のベース部31と、ベース部31からZ軸方向の下方に突出する指掛け部32と、ベース部31からZ軸方向の上方に突出する一対の結合突起33と、ベース部31からZ軸方向の上方に突出する嵌合筒部34と、を備えている。操作部材30は、合成樹脂の成形加工などで形成され、ベース部31、指掛け部32、結合突起33及び嵌合筒部34を含む全体が一部品で構成されている。
【0064】
ベース部31と指掛け部32は、ユーザーからの操作が入力される外力印加部である。ベース部31は、伝達部材40の底壁部40aに対してZ軸方向の下方に位置する。指掛け部32は、ユーザーが触れる部分に凹状の湾曲形状を有しており、X軸方向に力を加えやすくなっている。
【0065】
一対の結合突起33は、Y軸方向に間隔を空けて配置された細長い板状の突出部である。
図9に示すように、一対の結合突起33はそれぞれ、Y軸方向で互いに対向する平面形状の内側面33aと、Y軸方向で内側面33aとは反対側に突出する爪部33bと、を備えている。各爪部33bは、結合突起33の先端側から基端側(ベース部31側)に進むにつれて結合突起33の厚みを増大させる傾斜形状のテーパ面33cと、テーパ面33cの下端に連続してZ軸方向の下方に向く係止面33dと、を備えている。
【0066】
嵌合筒部34は、Y軸方向で一対の結合突起33の間に設けられている。嵌合筒部34は、X軸方向に離間する一対の壁部と、Y軸方向に離間する一対の壁部とによって囲まれる角筒形状の突出部であり、Z軸方向の上方に向けて開口している。嵌合筒部34の内部には、伝達部材40の嵌合突起42cを挿入可能である。
【0067】
一対の結合突起33は、ベース部31に接続する基端部を支点として、先端側の位置をY軸方向で変化させる弾性変形が可能である。一対の結合突起33と嵌合筒部34との間にはY軸方向に隙間があり、各結合突起33の弾性変形が嵌合筒部34によって妨げられない。
【0068】
図5から
図7は、操作部材30と伝達部材40が結合した状態を示している。この結合状態では、一対の結合突起33の内側面33aの間に一対の支持壁42aを挿入し、嵌合筒部34の内部に嵌合突起42cを挿入して嵌合させている。嵌合筒部34と嵌合突起42cの嵌合によって、X軸方向及びY軸方向における操作部材30と伝達部材40の位置関係が決まる。また、一対の結合突起33がそれぞれ、支持壁42aと一対の支持リブ42bとによって囲まれる溝状部分に挿入されることによっても、X軸方向及びY軸方向における操作部材30と伝達部材40の位置関係が決まる。
【0069】
操作部材30と伝達部材40だけの状態では、Z軸方向への着脱が可能な関係にあり、完全には結合されない。操作部材30と伝達部材40を完全に結合させる構造については後述する。
【0070】
伝達部材40のバネ支持部43は、Y軸方向及びZ軸方向に広がりを有する板状の第1壁部43aを有する。第1壁部43aの両側には、第1壁部43aに対してX軸方向に向けて屈曲した一対の側壁部43bが形成されている。伝達部材40を上方から平面視すると、バネ支持部43は、第1壁部43aと一対の側壁部43bとで囲まれるコ字型の形状になっている。第1壁部43a及び一対の側壁部43bは、バネ支持部43以外の部分における立壁部40bよりもZ軸方向への突出量が大きく、一対の側壁部43bはそれぞれ、立壁部40bの一部を上方に延長したものとなっている。
【0071】
第1壁部43aのうち、X軸方向の一方の面(第1壁部43aに対して側壁部43bが屈曲する方向の面)には、位置決め突起43cが設けられている。位置決め突起43cは、Z軸方向に細長く延びる矩形状の突出部である。
【0072】
バネ支持部43はさらに、底壁部40a上に設けられた支持リブ43dを有している。支持リブ43dは、底壁部40aからZ軸方向の上方に突出し、X軸方向に長い突出部である。底壁部40aからのZ軸方向の支持リブ43dの高さは、第1壁部43a及び一対の側壁部43bの高さよりも小さい。支持リブ43dの側方には、立壁部40bの一部をZ軸方向に低くして凹部43eが形成されている。
【0073】
スライダ付勢バネ50は圧縮バネ(圧縮コイルバネ)であり、X軸方向に軸線を向けて配置される。スライダ付勢バネ50のうちX軸方向の一端が第1壁部43aに当接し、位置決め突起43cがスライダ付勢バネ50の内部に入り込む。支持リブ43dによって、スライダ付勢バネ50の外周面がZ軸方向の下方から支持される。また、一対の側壁部43bが、Y軸方向でスライダ付勢バネ50の両側に位置する。これらの構造によって、伝達部材40に対するスライダ付勢バネ50の位置が定まる。
【0074】
但し、伝達部材40だけでは、スライダ付勢バネ50のうちX軸方向の他端(第1壁部43aに当接する側とは反対の端部)が支持されない。スライダ付勢バネ50の他端を支持する構造については後述する。
【0075】
印刷装置10は、装置本体11を構成するベース部材60と底部ユニット70を備えている。伝達部材40及びスライダ付勢バネ50がベース部材60に支持され、操作部材30が底部ユニット70に支持される。ベース部材60と底部ユニット70を結合させることによって、操作部材30と伝達部材40が結合してスライダ27が完成する。
【0076】
図10は、ベース部材60の一部を示している。ベース部材60は、第1支持板61と第2支持板62とガイドリブ63とによって囲まれる収容空間64を備えている。第1支持板61は、収容空間64の下部に位置し、X軸方向及びY軸方向に広がりを有する板状の構造である。第1支持板61の一部には、Z軸方向の上方を向く平坦な支持面61aが形成されている。第2支持板62は、支持面61aの上方に位置し、支持面61aと平行な面を有している。第2支持板62には、X軸方向の途中に切り欠き62aが形成されている。ガイドリブ63は、Z軸方向で第1支持板61(支持面61a)と第2支持板62の間に設けられ、収容空間64のうちY軸方向の前方側を部分的に塞いでいる。収容空間64は、Y軸方向の後方側が開放されている。
【0077】
Y軸方向に沿って後方側から前方側へ伝達部材40をスライドさせながら、収容空間64内に伝達部材40を組み付ける。
【0078】
Z軸方向での支持面61aと第2支持板62の間隔は、伝達部材40における底壁部40aからの立壁部40bの高さに対応している。収容空間64に伝達部材40を挿入すると、支持面61aと第2支持板62の間に伝達部材40が挟まれて、Z軸方向での伝達部材40の位置が定まる。また、収容空間64に伝達部材40を挿入すると、ガイドリブ63の先端が伝達部材40の立壁部40bに当接して、Y軸方向での伝達部材40の位置が定まる。
【0079】
図示を省略しているが、ベース部材60の後方側には、装置本体11を構成する別部品が取り付けられる。この別部品によって、収容空間64の後方側が塞がれて、収容空間64への挿入方向とは反対方向への伝達部材40の移動(収容空間64からの伝達部材40の離脱)が規制される。
【0080】
このようにしてY軸方向及びZ軸方向の位置が定まる伝達部材40は、収容空間64内でX軸方向へ直線的に移動(スライド)することができる。収容空間64に伝達部材40を挿入すると、バネ支持部43の第1壁部43aと側壁部43bが、第2支持板62の切り欠き62aに入り込む。X軸方向での切り欠き62aの長さは、X軸方向での第1壁部43aと側壁部43bの厚みよりも大きく、切り欠き62aの長さの範囲内で、伝達部材40がX軸方向へ移動可能に支持される。
【0081】
ベース部材60は、第2支持板62の切り欠き62aの近傍にバネ支持部65を備えている。バネ支持部65は、Y軸方向及びZ軸方向に広がりを有する板状の第2壁部65aと、X軸方向及びY軸方向に広がりを有する板状の上壁部65bと、を備えたL字状の構造である。
【0082】
伝達部材40を収容空間64に組み付けると、第2壁部65aが凹部43eに入り込んで、伝達部材40の第1壁部43aとバネ支持部65の第2壁部65aがX軸方向で対向する。第1壁部43aと第2壁部65aは互いに平行である。また、第1壁部43a及び側壁部43bの上方に上壁部65bが位置する。
【0083】
伝達部材40を収容空間64に組み付ける際には、スライダ付勢バネ50をバネ支持部43に支持させておく。すると、バネ支持部43とバネ支持部65とにより囲まれる空間内にスライダ付勢バネ50が配置される。具体的には、スライダ付勢バネ50の一端部と他端部が第1壁部43aと第2壁部65aに当接して、スライダ付勢バネ50がX軸方向に挟持される。また、スライダ付勢バネ50の外周面が、一対の側壁部43bと、支持リブ43dと、上壁部65bとによって囲まれる。
【0084】
なお、スライダ付勢バネ50に相当する弾性部材を挟持する第1壁部及び第2壁部は、第1壁部43aと第2壁部65aのような平板形状以外にも、様々な構成を適用可能である。一例として、メッシュ状の形状である第1壁部及び第2壁部を用いてもよい。このように、本発明における第1壁部及び第2壁部は、平坦な壁部だけではなく、他の形状や構成を含む概念である。
【0085】
X軸方向のうち、第2壁部65aに対する第1壁部43aの間隔を小さくするスライダ27の移動方向を第1の方向X1とし、第2壁部65aに対する第1壁部43aの間隔を大きくするスライダ27の移動方向を第2の方向X2とする。解除部41は、伝達部材40における第2の方向X2側の端部に設けられており、結合部42(操作部材30)は、伝達部材40における第1の方向X1側の端部付近に設けられている。
【0086】
圧縮バネであるスライダ付勢バネ50は、圧縮されると、固定の壁部である第2壁部65aに対して、伝達部材40を第2の方向X2へ押し込む(第1壁部43aを第2壁部65aから離間させる)付勢力を生じる。第1壁部43aが切り欠き62aの縁部に当接すると、伝達部材40は第2の方向X2へのそれ以上の移動が制限される。従って、ベース部材60に対して、スライダ付勢バネ50と共に伝達部材40を組み付けると、伝達部材40は、第2の方向X2への付勢力を受けた状態で安定して保持され、外力が加えられた場合にのみ、スライダ付勢バネ50の付勢力に抗して第1の方向X1へ移動する。
【0087】
以上のようにしてベース部材60に対して伝達部材40を組み付けた状態を
図11に示す。ベース部材60は、第1支持板61の下方に底側空間66を有しており、底側空間66に対して下方から底部ユニット70が組み付けられる。底部ユニット70は装置本体11の底部を構成し、X軸方向が底部の長手方向、Y軸方向が底部の短手方向となる。
【0088】
図12及び
図13は、底部ユニット70の一部と全体を示している。底部ユニット70は箱型の筐体71を備えている。筐体71は、Z軸方向の上側に位置する上壁部71aと、Y軸方向の前側と後側を覆う前壁部71b及び後壁部71cと、X軸方向の両側を覆う端壁部71d及び端壁部71eと、を有する。筐体71はさらに、端壁部71dと端壁部71eの間に、筐体71の内部をX軸方向で2つに区画する隔壁部71fを有する。
【0089】
底部ユニット70のうち、端壁部71dから隔壁部71fまでの部分は、内部に電池(図示略)を収容する電池ボックス77となっている。
図2に示すように、電池ボックス77の底部には着脱可能な底蓋72が設けられ、底蓋72が印刷装置10の底面10bになっている。底蓋72を外すと電池ボックス77の内部が露出して、電池を着脱することができる。
【0090】
図2に示すように、底部ユニット70のうち、端壁部71eから隔壁部71fまでの部分(長手方向の一方の端部側)は、下方に向けて開放した収容部73である。より詳しくは、筐体71の上壁部71a、前壁部71b、後壁部71c、端壁部71e、隔壁部71fに囲まれる部分が収容部73である。収容部73は、上壁部71aに対向する下方側が塞がれておらず、Z軸方向の下方に向けて開かれた内部空間を有する。端壁部71eは、印刷装置10の側面10eの一部を構成しており、端壁部71eをX軸方向に貫通する切り欠き71gが形成されている。
【0091】
収容部73の上側には、外部電源端子74(
図12参照)が設けられている。外部電源端子74は外部からの電力供給を受けるための端子部であり、電源アダプタ(図示略)から延びる電気配線76の先端に設けた電源コネクタ75(
図2参照)が、外部電源端子74に接続される。上壁部71aにはZ軸方向へ貫通する貫通孔71h(
図13参照)が形成されており、電源コネクタ75の端子部が貫通孔71hを通して外部電源端子74に接続される。この接続状態で、切り欠き71gを通して収容部73の外側に電源コネクタ75の一部を導出させることができる(
図2参照)。
【0092】
収容部73はさらに、操作部材30を組み付けるための組み付け部78を備えている。
図12及び
図13に示すように、組み付け部78は、上壁部71aをZ軸方向に貫通する貫通孔78aと、貫通孔78aのY軸方向の両側に位置してZ軸方向の上方に突出する一対の立壁部78bと、を有している。
【0093】
操作部材30を底部ユニット70に組み付ける際には、貫通孔78aに対して下方から一対の結合突起33と嵌合筒部34とを挿入する。一対の結合突起33に設けた一対の爪部33bの間隔は、Y軸方向での貫通孔78aの開口幅(一対の立壁部78bの間隔)よりも大きい。そのため、貫通孔78aに一対の結合突起33を挿入する際には、一対の結合突起33を互いの間隔を狭める方向に弾性変形させながら、操作部材30をZ軸方向に移動させる。それぞれの結合突起33の爪部33bに設けたテーパ面33cが貫通孔78aの内面に接触することにより、一対の結合突起33は、互いの間隔を狭めながらスムーズに貫通孔78aを通過することができる。
【0094】
一対の結合突起33は一対の立壁部78bの内面に沿って挿入され、各爪部33bが各立壁部78bの高さを越えるまで挿入されると、弾性変形から復元しようとする力によって一対の結合突起33の間隔が広がる。すると、一対の結合突起33の係止面33dが、一対の立壁部78bの上端に係合して、Z軸方向の下方への操作部材30の移動が規制される。つまり、組み付け部78から操作部材30が脱落しなくなり、底部ユニット70に対して操作部材30が組み付けられた状態になる。
【0095】
X軸方向において、一対の結合突起33の長さは、貫通孔78aの長さよりも小さい。そのため、底部ユニット70に操作部材30を組み付けた状態で、操作部材30はX軸方向への移動が可能である。操作部材30は、ベース部31が収容部73の内面(端壁部71e、隔壁部71f)に当接するまでの範囲で、X軸方向に移動できる。
【0096】
図2に示すように、底部ユニット70の組み付け部78に組み付けた状態の操作部材30は、X軸方向で端壁部71eの近傍に位置し、Y軸方向で前壁部71bの近傍に位置する。すなわち、操作部材30は、装置本体11の底部の四隅のうち一つの角部に近い位置に配されている。
【0097】
以上のようにして底部ユニット70に対して操作部材30を組み付けた状態を
図11に示す。そして、伝達部材40を支持するベース部材60の底側空間66に対して、操作部材30を支持する底部ユニット70を結合させると、
図14及び
図15に示す状態になり、操作部材30と伝達部材40が結合する。
【0098】
ベース部材60と底部ユニット70を結合させる際には、組み付け部78を貫通部61bの下方に位置付けて、底側空間66に対して下方から底部ユニット70を接近させる。すると、組み付け部78に取り付けられた操作部材30の結合突起33と嵌合筒部34が貫通部61bを通過し、貫通部61bの上方に位置する伝達部材40の結合部42に対して操作部材30が結合する。
【0099】
具体的には、操作部材30がZ軸方向の上方へ移動して結合部42に接近すると、一対の結合突起33の内側面33aの間に一対の支持壁42aが挿入される。一対の結合突起33が一対の支持壁42aを挟むことによって、Y軸方向で一対の結合突起33の間隔を狭める変形が規制される、すると、各爪部33bの係止面33dが各立壁部78bの上端に係合する状態が維持される。その結果、一対の結合突起33が貫通孔78aから下方へ離脱しなくなる。また、嵌合筒部34の内部に嵌合突起42cが嵌合して、操作部材30と伝達部材40が一体化される。
【0100】
以上のようにして、操作部材30と伝達部材40を結合させたスライダ27は、ベース部材60と底部ユニット70を含む装置本体11に対して、Y軸方向及びZ軸方向への移動が規制され、X軸方向への移動のみが可能な状態で支持される。前述のように、スライダ付勢バネ50が伝達部材40に対して第2の方向X2への付勢力を及ぼしており、この付勢力によって、スライダ27がX軸方向でガタつきなどを生じずに安定して保持される。
【0101】
図14は、スライダ27に対して外力が加えられていない状態、すなわち操作部材30をユーザーが操作していない状態を示している。この状態では、スライダ付勢バネ50の付勢力によって、伝達部材40の第1壁部43aがベース部材60の第2壁部65aから離れる方向(第2の方向X2)に押圧されて保持されている。そのため、伝達部材40の解除部41がプッシュレバー23の被操作突起23e(
図14には図示していない)を押圧せず、保持機構20における保持解除動作が行われない。
【0102】
図15は、操作部材30をユーザーが操作して、スライダ27に対して第1の方向X1へスライドさせる外力を加えた状態を示している。この状態では、スライダ付勢バネ50の付勢力に抗して、伝達部材40の第1壁部43aがベース部材60の第2壁部65aに接近する方向(第1の方向X1)に移動している。このスライダ27の移動により、伝達部材40の解除部41がプッシュレバー23の被操作突起23e(
図15には図示していない)を押圧して、プッシュレバー23を嵌合解除方向(
図4参照)に回転させる。その結果、保持機構20の保持解除動作が行われて、蓋部12に対する保持と、印刷ヘッド13に対する保持が解除される。
【0103】
以上に説明したように、本実施形態の印刷装置10では、蓋部12と印刷ヘッド13の保持を行う保持機構20を、スライダ27を介して保持解除操作する。
【0104】
スライダ27における外力印加部であるベース部31及び指掛け部32は、印刷装置10の装置本体11の底部(底部ユニット70)に設けられている。印刷装置10は、印刷時に底面10bを机や床などに載置して使用されるため、ベース部31及び指掛け部32を装置本体11の底部に配することで、印刷装置10の上面10a、前面10c、後面10d、側面10e、側面10fなどの目立ちやすい外面部分に外力印加部が露出せず、外観への操作系部品の露出を極力控えた、シンプルでデザイン性の高い外面構造の印刷装置10を実現できる。
【0105】
図2に示すように、ベース部31及び指掛け部32は、装置本体11の底部に設けた収容部73の内部に配置されている。収容部73は印刷装置10の底面10bに対して凹んだ内部空間を有しており、収容部73内に配置したベース部31及び指掛け部32は、印刷装置10の箱型の外形形状に対して外方(特に、底面10bよりも下方)へ突出しない。操作部材30は、ベース部31から指掛け部32を突出させて指の掛けやすさを実現した形状であり、Z軸方向への厚みを有しているが、収容部73の内部に指掛け部32を収めることで、印刷時に指掛け部32が机や床に接触せず、印刷装置10を安定して自立させることができる。
【0106】
また、収容部73を囲む壁部(前壁部71b、後壁部71c、端壁部71e、隔壁部71f)によってベース部31及び指掛け部32の周囲を覆っているので、側方からもベース部31及び指掛け部32が視認されにくい。
【0107】
また、収容部73は、印刷装置10の底部の長手方向(X軸方向)の一方の端部に設けられており、印刷装置10を底部側から見た場合でも、収容部73内のベース部31及び指掛け部32が目立ちにくいレイアウトである。
【0108】
このように、スライダ27の外力印加部であるベース部31及び指掛け部32は、外観上目立ちにくい位置に設けられており、印刷装置10の外観をシンプルにさせて、デザイン性を向上させる効果が得られる。
【0109】
また、収容部73内の奥まった位置に指掛け部32を設けているため、装置本体11の底部側から意図的にアクセスしない限り指掛け部32に接触しにくく、ユーザーによる意図しない誤操作や、外部からの物体の接触によって、不用意に指掛け部32への入力が行われてしまうおそれが少ない。換言すれば、収容部73を囲む壁部(前壁部71b、後壁部71c、端壁部71e、隔壁部71f)は、指掛け部32に対して接触可能な方向を限定する保護部として機能する。
【0110】
図2に示すように、収容部73は、外部電源端子74経由で電力供給する際の電源コネクタ75の配置スペースとしても用いられる。ベース部31及び指掛け部32と、電源コネクタ75とによって、収容部73の内部空間を共用することで、印刷装置10の外観構造がシンプルになり、デザイン性が向上する。
【0111】
また、指掛け部32はY軸方向で前壁部71bに近い位置(底部ユニット70の短手方向の端部)に配されており、操作部材30と電源コネクタ75がY軸方向に並ぶ関係になっている。従って、電源コネクタ75を外部電源端子74に接続した状態でも、電源コネクタ75によって妨げられずに操作部材30をX軸方向(第1の方向X1及び第2の方向X2)へスライドさせることができる。
【0112】
また、端壁部71eに設けた切り欠き71gを通して、電源コネクタ75の一部を収容部73の外側に導出させているため、電源コネクタ75や電気配線76が底面10bよりも下方へ突出せず、電源コネクタ75を接続した状態で印刷装置10を安定して自立させることができる。
【0113】
スライダ27は、ベース部材60と底部ユニット70を含む装置本体11に対して、Z軸方向及びY軸方向への移動が制限され、X軸方向へのスライドのみが可能に支持されている。保持機構20の保持解除を行う際には、ユーザーの外力印加によって、操作部材30の指掛け部32を第1の方向X1へ移動させる。
【0114】
第1の方向X1と第2の方向X2を含むX軸方向は装置本体11の底部の長手方向であるため、スライダ27の移動方向をX軸方向にすることで、スライダ27の大きさ、形状、配置などが制約されにくい。これにより、スライダ27における動作の精度や安定性を良くすることができる。また、スライダ27から保持機構20に至るまでの動力伝達経路を設計上無理なく構成することができる。
【0115】
操作部材30に対する第1の方向X1へのユーザーの操作力は、途中で力の伝達方向を変換することなく直接的に伝達部材40に伝達され、伝達部材40が第1の方向X1へ移動する。伝達部材40が第1の方向X1へ移動すると、第1壁部43aと第2壁部65aとの間でスライダ付勢バネ50を圧縮させながら、解除部41の当接面41aが被操作突起23eを押圧して、プッシュレバー23が嵌合解除方向へ回転される。ユーザーによる操作部材30への外力印加を解除すると、圧縮されたスライダ付勢バネ50の付勢力によってスライダ27が第2の方向X2に戻る。
【0116】
このように、操作部材30への外力印加から、伝達部材40の解除部41による被操作突起23eの押圧に至るまで、スライダ27はX軸方向への動作のみを行う。そのため、途中での力の伝達ロスが少なく、効率的に保持機構20の保持解除を行わせることができる。また、途中で動力の伝達方向を変更しないため、スライダ27の構造がシンプルであり、部品の精度管理を行いやすい。さらに、スライダ27の各部における摩耗などの劣化が生じにくく、動作の信頼性や耐久性が高いという点でも優れている。
【0117】
例えば、本実施形態とは異なり、操作部材30に相当する部材がY軸方向に移動し、伝達部材40に相当する部材がX軸方向に移動する構造の場合、Y軸方向への移動力をX軸方向への移動力に変換する変換構造が必要である。この種の変換構造の一例として、2つの部材の移動方向に対して傾斜する傾斜面(カム面などを含む)と、傾斜面に当接するフォロワとを用いるものが知られているが、傾斜面とフォロワの接触部分で摩擦が生じて摩耗したり、摩擦による動力ロスが生じたりして、耐久性や動作効率において課題がある。また、別々の方向に移動する2つの部材を支持するので、支持構造も複雑になりやすい。
【0118】
これに対して、本実施形態の印刷装置10では、保持機構20を操作するための機構が、X軸方向に移動するスライダ27としてまとめられているので、構造がシンプルであり、動作の信頼性や耐久性に優れている。
【0119】
スライダ27を付勢するスライダ付勢バネ50は、X軸方向に伸縮する圧縮バネであり、X軸方向に対向して配した第1壁部43aと第2壁部65aとの間に挿入されている。従って、シンプルな構造によって効率的にスライダ27を付勢することができる。また、スライダ付勢バネ50の外周面は、一対の側壁部43b、支持リブ43d、上壁部65bによって四方(Z軸方向とY軸方向)から囲まれているため、スライダ付勢バネ50がX軸方向に伸縮する際に、スライダ付勢バネ50の座屈が生じず、安定した動作を実現できる。
【0120】
図2に示すように、収容部73を囲む壁部の一部として、操作部材30の指掛け部32に対して第1の方向X1に対向する位置に端壁部71eを備えている。端壁部71eは、ユーザーが指掛け部32へ外力印加する際に支持するための押さえ部(把持部)として用いられる。すなわち、第1の方向X1は、外力印加部である指掛け部32を押さえ部である端壁部71eに向かわせる(接近させる)方向である。端壁部71eを利用した支持とは、ユーザーが端壁部71eを把持したり押さえたりすることなどを意味する。
【0121】
この構成に基づくユーザーによる操作の一例として、手の第1の指を指掛け部32に掛け、同じ手の第2の指を端壁部71eに添えて、第1の指と第2の指を近づけるようにして、スライダ27を第1の方向X1へ移動させることができる。第1の指が親指で第2の指が人差し指であるパターンや、第1の指が人差し指で第2の指が親指であるパターンなど、印刷装置10の持ち方に応じて様々な選択が可能である。
【0122】
そして、指掛け部32だけに力を付与するのではなく、装置本体11の底部の一部である端壁部71eを支えにして操作することにより、片手操作でも指掛け部32に対して力を加えやすくなり、保持解除操作の利便性が向上する。
【0123】
例えば、印刷装置10では、指掛け部32が底部側の収容部73内に配置されているので、保持機構20の保持解除操作を行う際には、前面10cや後面10dを下向きにした横置きの姿勢にすることが想定される。ここで、押さえ部として機能する端壁部71eが存在しない場合、指掛け部32だけを操作すると、支えとなる部分が無いため、印刷装置10の全体が滑って移動し、スライダ27を動作させることができない可能性がある。これを防ぐためには、例えば指掛け部32を操作する側と反対の手で、印刷装置10を保持する必要がある。
【0124】
これに対して、本実施形態のように端壁部71eが存在していると、指掛け部32を端壁部71eへ向かわせる第1の方向X1への移動を、端壁部71eを支えとして容易に行わせることができる。その結果、印刷装置10全体を保持することなく、端壁部71eを把持しながら指掛け部32に力を加える態様の片手操作で、効率的にスライダ27のスライド操作を実行できる。つまり、例えば床や机などの面に対して略垂直方向(本実施形態でいう横置き姿勢でのY軸方向)に操作部材30をスライドさせるような構成では、床や机などの面に対して略水平方向に外力が加わりにくいため、印刷装置10全体を滑らせずに操作部材30をスライドさせやすくなるが、本実施形態のように床や机などの面に対して略水平方向(本実施形態でいうX軸方向)に操作部材30をスライドさせる場合では、印刷装置10全体が外力により滑りやすくなるため、押さえ部としての端壁部71eを設けることでこれを防止することができる。
【0125】
また、このような効果を得るには、指掛け部32を含むスライダ27の移動方向が、X軸方向(底面10bに沿う方向)であることも大きく関係している。例えば、本実施形態とは異なり、操作部材30に相当する部材が、Z軸方向に移動する押しボタンである場合、押しボタンの押し込み方向は装置本体11の内方に向かう方向であるから、装置本体11の内部に端壁部71eのような押さえ部を設けることは難しい。そのため、印刷装置を滑らさずに押しボタンを押し込むには、押しボタンを操作する側と反対の手で、印刷装置を保持する必要がある。
【0126】
これに対して、本実施形態の印刷装置10のように、装置本体11の底部に設けた指掛け部32が底部に沿ってX軸方向に移動する構成では、底部の範囲内に端壁部71eのような押さえ部を設けやすい。
【0127】
特に、本実施形態では、収容部73を囲む壁部の一部である端壁部71eを押さえ部として利用するので、構造がシンプルである。端壁部71eは、Z軸方向で装置本体11の底部に設けられており、X軸方向で装置本体11の側部に設けられている。そして、保持機構20の保持を解除させる際に移動する第1の方向X1を、収容部73の内側から印刷装置10の外面(側面10e)に向かう方向としたことにより、印刷装置10の外面を構成する端壁部71eを押さえ部として利用することができ、ユーザーが端壁部71eを把持しやすくなっている。
【0128】
なお、印刷装置10の外面部分(装置本体11の底部又は側部)を押さえ部として利用するという観点では、前壁部71bや後壁部71cも押さえ部の候補となる。例えば、本実施形態とのスライダ27とは異なり、Y軸方向に移動するスライダを適用する場合には、前壁部71bを押さえ部として用いて、前壁部71bに接近する方向を第1の方向として定めることができる。さらに、収容部73内に電源コネクタ75を接続しない構成の場合には、後壁部71cを押さえ部として用いて、後壁部71cに接近する方向を第1の方向として定めることも可能である。
【0129】
さらなる変形例として、本実施形態のスライダ27とは第1の方向と第2の方向を逆にして、隔壁部71fに向かう方向を第1の方向にすることも可能である。この場合、隔壁部71fの位置に、ユーザーが把持などの支持を行うことが可能な押さえ部を設けるとよい。底部ユニット70の中央部分に電池ボックス77が配されている本実施形態とは異なり、装置本体11の底部中央にスペースの余裕がある場合には、このような変形例が有用である。
【0130】
以上のように、収容部73の内部に外力印加部であるベース部31及び指掛け部32を配置することで、印刷装置10のデザイン性の良さと、スライダ27を操作する際の利便性の高さとを両立させることができる。特に、本実施形態では、収容部73を囲む壁部の一部である端壁部71eを押さえ部として利用しながら、指掛け部32が端壁部71eに接近する第1の方向X1への移動によって保持機構20の保持を解除させることで、デザイン性の良さと操作時の利便性に関して非常に優れた効果を得ることができる。
【0131】
装置本体11へのスライダ27の組み付けについては、操作部材30と伝達部材40を別部材として個別に組み付けることにより、組み付けの作業性が向上する。伝達部材40は、解除部41によって保持機構20を操作することから、印刷装置10の底面10bよりもやや上方の奥まった位置に配置される。そのため、伝達部材40は、底部ユニット70の上方に位置するベース部材60によって支持することが適している。外力印加部である指掛け部32を備える操作部材30は、底部側からの操作を行いやすい底部ユニット70によって支持することが適している。
【0132】
ベース部材60に対する伝達部材40の組み付けは、Y軸方向に沿って収容空間64に挿入することで行われる。スライダ27がスライドするX軸方向(第1の方向X1、第2の方向X2)に対して交差(直交)する方向への組み付けであるため、複雑な位置調整を要さずに、ガイドリブ63に当接するまで挿入するだけでY軸方向とZ軸方向の位置を定めることができ、組み付け作業を行いやすい。
【0133】
伝達部材40のバネ支持部43にスライダ付勢バネ50を支持させた上で、伝達部材40を収容空間64に挿入することにより、第1壁部43aと第2壁部65aによりスライダ付勢バネ50が挟持される。従って、スライダ付勢バネ50の組み付けを簡単に行うことができる。
【0134】
底部ユニット70に対する操作部材30の組み付けは、貫通孔78aへの一対の結合突起33と嵌合筒部34の挿入で行われる。一対の結合突起33の間隔を狭めながら挿入すると、爪部33bによって貫通孔78aからの離脱が規制されるため、複雑な動作を要さずに、操作部材30を簡単に組み付けることができる。
【0135】
そして、ベース部材60と底部ユニット70の結合に伴って、操作部材30と伝達部材40が結合される。操作部材30は伝達部材40に対して、Z軸方向への組み付けによって結合される。この結合方向は、スライダ27がスライドするX軸方向(第1の方向X1、第2の方向X2)に対して交差(直交)する方向であるため、X軸方向へ力を確実に伝達できる強度的に優れた構造(具体的には、嵌合筒部34と嵌合突起42c)によって、操作部材30と伝達部材40を結合させることができる。
【0136】
また、操作部材30と伝達部材40を結合させることによって、一対の結合突起33が一対の支持壁42aを挟んで、一対の結合突起33の間隔を狭める変形が規制される。これにより、貫通孔78aから離脱する方向(Z軸方向の下方)への一対の結合突起33の移動が規制され、操作部材30と伝達部材40の結合が維持される。つまり、操作部材30を支持する底部ユニット70を、伝達部材40を支持するベース部材60に組み付けるだけで、操作部材30と伝達部材40の結合を完了させることができる。操作部材30と伝達部材40の間で特別な固定作業などを要さないので、印刷装置10を組み立てる際の作業効率に優れている。
【0137】
以上の実施形態は、発明の理解を容易にするために具体例を示したものであり、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲において、さまざまな変形、変更が可能である。
【0138】
例えば、上記実施形態では、組み立て時の利便性などを考慮して、操作部材30と伝達部材40に分けてスライダ27を構成しているが、外力印加部(指掛け部32)や第1壁部(第1壁部43a)や解除部(解除部41)などを含む一部材からなるスライダを用いることも可能である。
【0139】
上記実施形態では、収容部73を囲む壁部の一部である端壁部71eを押さえ部としているが、端壁部71eのような外壁部とは別に押さえ部を設けることも可能である。例えば、指掛け部32からから収容部73を囲む壁部までの距離が大きい場合には、上壁部71aから下方へ突出する突出部を設け、この突出部を押さえ部として適用してもよい。
【0140】
上記実施形態では、収容部73内に給電用の電源コネクタ75を接続させているが、電気配線を接続するコネクタは、これに限定されない。例えば、信号送信用のコネクタを収容部73内に接続させてもよい。
【0141】
上記実施形態は印刷装置10への適用例であるが、本発明は、装置本体に対して開閉が可能な蓋部を有するものであれば、印刷装置以外の電子機器に適用することも可能である。
【0142】
以下、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記1]
装置本体に対して開閉が可能な蓋部と、
前記装置本体に対して前記蓋部を閉じた状態で、前記蓋部の保持を行う保持機構と、
前記装置本体の底部又は前記装置本体の側部に設けられた押さえ部と、
前記装置本体の底部に設けられた外力印加部と、前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除する解除部と、を有し、外力により前記外力印加部が前記押さえ部に向かう第1の方向へ移動されることによって、前記解除部を介して前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除するスライダと、
前記スライダに設けられた第1壁部と前記装置本体に設けられた第2壁部とに挟持され、前記スライダを前記第1の方向とは反対の第2の方向へ付勢する弾性部材と、
を備える、
ことを特徴とする電子機器。
[付記2]
前記装置本体の底部に、下方に向けて開放した収容部を備え、
前記外力印加部は、前記収容部内において前記第1の方向への外力の印加が可能なように設けられており、
前記押さえ部は、前記収容部を囲む壁部の一部である、
ことを特徴とする付記1に記載の電子機器。
[付記3]
前記第1の方向及び前記第2の方向は、前記装置本体の底部の長手方向であり、
前記収容部は、前記装置本体の底部の長手方向の端部に設けられている、
ことを特徴とする付記2に記載の電子機器。
[付記4]
電気配線を接続するコネクタを前記収容部内に接続可能であり、
前記外力印加部は、前記収容部内へ前記コネクタが接続されている状態で、前記第1の方向及び前記第2の方向へ移動可能な位置に設けられている、
ことを特徴とする付記2又は付記3に記載の電子機器。
[付記5]
前記外力印加部は、前記スライダの前記第1の方向及び前記第2の方向に沿う一方の端部に設けられ、
前記解除部は、前記スライダの前記第1の方向及び前記第2の方向に沿う他方の端部に設けられ、前記第1の方向及び前記第2の方向と交差する方向に突出しており、外力により前記外力印加部が第1の方向へ移動されるときに、前記保持機構に当接することによって前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除する、
ことを特徴とする付記1から付記4のいずれかに記載の電子機器。
[付記6]
前記保持機構は、
前記蓋部が閉じるときに保持方向へ回転することにより前記蓋部を保持して開く動作を規制し、前記保持方向とは反対の保持解除方向へ回転することにより前記保持を解除する第1回動部材と、
前記蓋部が閉じるときに嵌合方向へ回転することにより前記第1回動部材に嵌合して前記保持解除方向への回転を規制し、前記嵌合方向とは反対の嵌合解除方向へ回転することにより前記嵌合を解除する第2回動部材と、を有し、
前記解除部は、外力により前記外力印加部が第1の方向へ移動されるときに、前記第2回動部材に当接することによって前記第1回動部材による前記蓋部の前記保持を解除する、
ことを特徴とする付記5に記載の電子機器。
[付記7]
被印刷媒体を搬送する搬送部に接近する印刷位置と、前記搬送部から離間する離間位置と、に移動可能な印刷部を備える装置本体と、
前記装置本体に対して開閉が可能な蓋部と、
前記装置本体に対して前記蓋部を閉じた状態で、前記蓋部の保持及び前記印刷位置での前記印刷部の保持を行う保持機構と、
前記装置本体の底部又は前記装置本体の側部に設けられた押さえ部と、
前記装置本体の底部に設けられた外力印加部と、前記保持機構による前記蓋部及び前記印刷部の前記保持を解除する解除部と、を有し、外力により前記外力印加部が前記押さえ部に向かう第1の方向へ移動されることによって、前記解除部を介して前記保持機構による前記蓋部及び前記印刷部の前記保持を解除するスライダと、
前記スライダに設けられた第1壁部と前記装置本体に設けられた第2壁部とに挟持され、前記スライダを前記第1の方向とは反対の第2の方向へ付勢する弾性部材と、
を備える、
ことを特徴とする印刷装置。
【符号の説明】
【0143】
10 :印刷装置(電子機器)
10a :上面
10b :底面
10c :前面
10d :後面
10e :側面
10f :側面
11 :装置本体
12 :蓋部
13 :印刷ヘッド
14 :プラテンローラ
15 :テープカッター
16 :テープカートリッジ装着部
17 :テープカートリッジ
18 :テープ排出口
20 :保持機構
21 :押し込み突起
22 :スイッチレバー(第1回動部材)
23 :プッシュレバー(第2回動部材)
23e :被操作突起
24 :ヘッドアーム
25 :プッシュレバー戻しバネ
26 :ヘッド押圧バネ
27 :スライダ
30 :操作部材
31 :ベース部(外力印加部)
32 :指掛け部(外力印加部)
33 :結合突起
34 :嵌合筒部
40 :伝達部材
41 :解除部
42 :結合部
42a :支持壁
42c :嵌合突起
43 :バネ支持部
43a :第1壁部
43b :側壁部
43c :位置決め突起
43d :支持リブ
43e :凹部
50 :スライダ付勢バネ(弾性部材)
60 :ベース部材
61 :第1支持板
62 :第2支持板
63 :ガイドリブ
64 :収容空間
65 :バネ支持部
65a :第2壁部
65b :上壁部
70 :底部ユニット(本体の底部)
71 :筐体
71a :上壁部
71b :前壁部
71c :後壁部
71d :端壁部
71e :端壁部(押さえ部)
71f :隔壁部
71g :切り欠き
72 :底蓋
73 :収容部
74 :外部電源端子
75 :電源コネクタ
77 :電池ボックス
78 :組み付け部
78a :貫通孔
78b :立壁部
X1 :第1の方向
X2 :第2の方向
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明の一態様の電子機器は、装置本体に対して開閉が可能な蓋部と、前記装置本体に対して前記蓋部を閉じた状態で、前記蓋部の保持を行う保持機構と、前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除する解除部と、前記装置本体の底部に設けられるとともに、壁部により形成される収容部と、前記収容部内に設けられるとともに前記壁部に対向するように配置された外力印加部と、外力により前記外力印加部が前記壁部側に移動されることによって、前記解除部を介して前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除するスライダと、を備える。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に対して開閉が可能な蓋部と、
前記装置本体に対して前記蓋部を閉じた状態で、前記蓋部の保持を行う保持機構と、
前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除する解除部と、
前記装置本体の底部に設けられるとともに、壁部により形成される収容部と、
前記収容部内で前記壁部に対向するように配置された外力印加部と、
外力により前記外力印加部が前記壁部側に移動されることによって、前記解除部を介して前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除するスライダと、
を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記収容部は、前記装置本体の底部において下方に向けて開放しており、
前記壁部は、前記装置本体における長手方向の端部側を覆う端壁部を有し、
前記外力印加部は、前記収容部内において前記端壁部側への外力の印加が可能な位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
外力によって前記外力印加部が移動される方向及び当該方向の反対方向は、前記装置本体の底部の長手方向であり、
前記収容部は、前記装置本体の底部の長手方向の端部に設けられている、
ことを特徴とする請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
電気配線を接続するコネクタを前記収容部内に接続可能であり、
前記外力印加部は、前記収容部内へ前記コネクタが接続されている状態で、前記長手方向へ移動可能な位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項3に記載の電子機器。
【請求項5】
前記端壁部は、前記長手方向に貫通する切り欠き部を形成し、
前記切り欠き部は、当該切り欠き部を通じて前記収容部の外側に前記コネクタの一部を導出可能な位置に設けられている、
ことを特徴とする請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記外力印加部は、前記スライダの前記長手方向に沿う一方の端部に設けられ、
前記解除部は、前記スライダの前記長手方向に沿う他方の端部に設けられ、前記長手方向と交差する方向に突出しており、外力により前記外力印加部が前記壁部側へ移動されるときに、前記保持機構に当接することによって前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除する、
ことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項7】
被印刷媒体を搬送する搬送部に接近する印刷位置と、前記搬送部から離間する離間位置と、に移動可能な印刷部を備える装置本体と、
前記装置本体に対して開閉が可能な蓋部と、
前記装置本体に対して前記蓋部を閉じた状態で、前記蓋部の保持及び前記印刷位置での前記印刷部の保持を行う保持機構と、
前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除する解除部と、
前記装置本体の底部に設けられるとともに、壁部を有する収容部と、
前記収容部内で前記壁部に対向するように配置された外力印加部と、
外力により前記外力印加部が前記壁部側に移動されることによって、前記解除部を介して前記保持機構による前記蓋部の前記保持を解除するスライダと、
を備えることを特徴とする印刷装置。