(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055996
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】木質繊維ボードのエッジのコート用およびシール用の組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20240412BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240412BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240412BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240412BHJP
【FI】
C09K3/10 Z
C09D183/04
C09D7/65
C09D7/61
C09K3/10 D
C09K3/10 L
C09K3/10 E
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033491
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2021502590の分割
【原出願日】2019-07-15
(31)【優先権主張番号】18183673.5
(32)【優先日】2018-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】509091387
【氏名又は名称】フローリング・テクノロジーズ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Flooring Technologies Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】カルバ・ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ギエル・アンドレアス
(57)【要約】
【課題】複合的保護によって対照試料と比べてエッジ膨張を50%以上減少可能なラミネ
ートフローリングを提供する。
【解決手段】木質繊維ボードのエッジをシーリング/コーティングする組成物は、一般式
(I)の少なくとも1種の化合物および/またはその加水分解生成物
R1
aSiX(4-a) (I)
(式中、Xは、H、OH、あるいは、アルコキシ基、アリールオキシ基およびアシルオキ
シ基からなる群から選択される加水分解性基であり、R1は、アルキル基、アリール基お
よびシクロアルキル基を含む群から選択され、-O-または-NH-が挿入されていても
よい有機基であり、R1は、ヒドロキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、カルボキ
シ基、メルカプト基、アルコキシ基、アルデヒド基、アクリル基、アクリロキシ基、メタ
クリル基、メタクリロキシ基、シアノ基、イソシアノ基およびエポキシ基を含む群から選
択される少なくとも1つの官能基Q1を有しており、aは、0、1、2または3である。
)と、一般式(II)の少なくとも1種の化合物および/またはその加水分解生成物
R2
bSiX(4-b) (II)
(式中、Xは、上記の意味であり、R2は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ア
ルキニル基、シクロアルキル基およびシクロアルケニル基を含む群から選択される非加水
分解性有機基であり、bは、1、2、3または4である。)と、少なくとも1種のポリマ
ーの水性分散液と、から得られる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質繊維ボードのエッジをシーリング/コーティングする組成物であって、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物および/またはその加水分解生成物
R1
aSiX(4-a) (I)
(式中、
-Xは、H、OH、あるいは、アルコキシ基、アリールオキシ基およびアシルオキシ
基からなる群から選択される加水分解性基であり、
-R1は、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基を含む群から選択され、
-O-または-NH-が挿入されていてもよい有機基であり、
-R1は、ヒドロキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、カルボキシ基、メルカ
プト基、アルコキシ基、アルデヒド基、アクリル基、アクリロキシ基、メタクリル基、メ
タクリロキシ基、シアノ基、イソシアノ基およびエポキシ基を含む群から選択される少な
くとも1つの官能基Q1を有しており、
-aは、0、1、2または3、特には0または1である。)と、
-一般式(II)の少なくとも1種の化合物および/またはその加水分解生成物
R2
bSiX(4-b) (II)
(式中、
-Xは、上記の意味であり、
-R2は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル
基およびシクロアルケニル基を含む群から選択される非加水分解性有機基であり、
-bは、1、2、3または4である。)と、
-少なくとも1種のポリマーの水性分散液と、
から得られる、組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の組成物において、Xは、H、OH、C1~6アルコキシ基(特には、
メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基およびブトキシ基)、C6~10アリールオ
キシ基(特には、フェノキシ基)ならびにC2~7アシルオキシ基(特には、アセトキシ
基またはプロピオノキシ基)を含む群から選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の組成物において、Xは、H、OHまたはアルコキシ基(特に
は、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基もしくはi-プロポキシ基)であること
を特徴とする、組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物において、R1は、C1~C30アルキ
ル基(特には、C5~C25アルキル基、C2~C6アルケニル基、C3~C8シクロア
ルキル基およびC3~C8シクロアルケニル基)を含む群から選択されることを特徴とす
る、組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物において、少なくとも1つの官能基Q1
は、エポキシ基および/またはヒドロキシ基および/またはエーテル基および/またはア
クリル基および/またはアクリロキシ基および/またはメタクリル基および/またはメタ
クリロキシ基および/またはアミノ基および/またはアルコキシ基および/またはシアノ
基および/またはイソシアノ基を含む群から選択されることを特徴とする、組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物において、一般式(I)の化合物は、式
:SiX4(式中、特には、XはOHまたはアルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキ
シ基、n-プロポキシ基もしくはi-プロポキシ基)である。)に対応することを特徴と
する、組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物において、非加水分解性有機R2は、C
1~C15アルキル基(特には、C1~C10アルキル基、C2~C6アルケニル基、C
2~C6アルキニル基およびC6~C10アリール基)を含む群から選択されることを特
徴とする、組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物において、非加水分解性有機R2は、メ
チル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t
-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、シクロヘキ
シル基、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、ブテニル基、アセチレニル基
、プロパルギル基、フェニル基およびナフチル基からなる群から選択されることを特徴と
する、組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物において、当該組成物は、一般式(I)
の少なくとも1種の化合物と、一般式(II)の少なくとも2種の(好ましくは少なくと
も3種の)化合物と、を含有していることを特徴とする、組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物において、一般式(I)の化合物は、0
.08~0.2モル、好ましくは0.1~0.15モル、特に好ましくは0.1~0.1
2モルのモル量で含有されており、一般式(II)の化合物は、0.05~0.1モル(
好ましくは0.06~0.09モル、特に好ましくは0.07~0.08モル)のモル量
で含有されていることを特徴とする、組成物。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物において、少なくとも1種のポリマー
は、ポリウレタン類(特には、ポリジフェニルメタンジイソシアネート(PMDI))、
エポキシ樹脂類、メラミン樹脂類およびポリアクリレート類を含む群から選択されること
を特徴とする、組成物。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物において、無機粒子(特には、SiO
2粒子、Al2O3粒子、ZrO2粒子、TiO2粒子)が含有されていてもよいことを
特徴とする、組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物および一般式(II)の少なくとも1種の化
合物を用意する工程と、
-任意で、少なくとも無機粒子の分散液を添加する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも1種の化合物との混合
物に、少なくとも1種の触媒(特には、酸)を添加する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも1種の化合物との反応
混合物の水相を分離する工程と、
-式(I)の少なくとも1種の化合物と式(II)の少なくとも1種の化合物との分離
した水性反応混合物に、少なくとも1種のポリマーを添加する工程と、
を備える、方法。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物の、木質繊維ボード、HDFボードま
たはMDFボードのエッジをコーティング/シーリングするための使用。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物を少なくとも1種有する木質繊維ボー
ド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質繊維ボードのエッジのコート用やおよびシール用の組成物、当該組成物
の製造方法、当該組成物の使用、および当該組成物を有する木質繊維ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
ラミネートフローリングは、特に、実継ぎ(tongue-and-groove)において部材同士を
互いに接着剤により接着する設置構成から、接着剤フリーの設置構成が行われるようにな
って以降、水分の浸入(moisture attack)や湿害の発生に関して弱い領域が部材同士の
継ぎ部に存在することが知られている。このダメージは、水分への直接の曝露や過度な手
入れ等によって起こり得る。しかしながら、同床材に極めて簡単かつ迅速に設置可能ない
わゆるクリック式の輪郭部(profile)を設けることで、この問題は軽減される。今日の
ラミネートフローリングの90%超が、クリック実型材で製造されていると考えられる。
【0003】
湿害を抑制するのに、これまで様々な対策が単独又は組合せでとられてきた。上記輪郭
部に水分が浸入するのを困難にする最も簡単な手法は、実継ぎの嵌め合いを最大限緊密に
することである。しかし、これでは部材同士を嵌め込むのがより難しくなったり損傷が生
じたりする可能性がある。また、この手法には、水分が実継ぎ部分に浸入した場合に木質
パネルが一般的に膨張するという短所がある。
【0004】
この効果は、特殊なプレスプレートによるダイレクトコーティング成形(direct coati
ng)時に部材同士の継ぎ部(transition)を予め圧密化しておくことで、より期待すること
ができる。これは、WO 2017/072657A1(特許文献1)に記載されている。しかし、これは
膨張するのを遅らせるだけで一般的に阻止することまではできない。
【0005】
他の選択肢は、上記輪郭部を疎水化剤でシーリングすることである。つまり、WO 2006/
038867(特許文献2)には、エッジをコーティングするワックスの使用が記載されている
。同ワックスは、木質材内に少なくとも部分的に浸透することが認められる。EP 903451
A2(特許文献3)には、エッジ処理用のジイソシアネート-ジフェニルメタンの使用が記
載されている。同物質は、木質材内に容易に浸透する。また、WO 2008/078181 A1(特許
文献4)では、コーティング剤としてフッ素化ポリマー、例えばペルフルオロアルキルメ
タクリル共重合体が使用される。この層形成材料は、室温で固体である。
【0006】
コーティング剤は、ほかにも、とりわけWO 2012/017235 A1(特許文献5)やWO 01/533
87 A1(特許文献6)やUS 2006/0110541 A1(特許文献7)やUS 2008/0250978 A1(特許
文献8)やWO 2009/032988 A1(特許文献9)に記載されている。
【0007】
特許文献5は、床への床材の接着を補助するために当該床材の裏側にポリマーコーティ
ングを使用することに関する。特許文献6には、耐摩耗性を向上させた、各種表面用のコ
ーティングが記載されている。特許請求の範囲からみて、同コーティングは、シリコン粒
子などの無機粒子、加水分解シラン類を含むカップリング試薬、および各種アクリレート
類の混合物を含む樹脂を含有していると結論付けることができる。特許文献7は、各種表
面に透明な保護コーティングを形成する方法および組成物に関する。特許文献8および特
許文献9には、特に有機シラン類又はアルキルシラン類で処理した修飾シリコン粒子を含
有する、疎水性自己浄化コーティング組成物がそれぞれ記載されている。
【0008】
これらの周知のシーリング剤は、塗布時に木質基材内に移動してしまいがちであり、疎
水効果が落ちるという短所がある。ただし、シーリング剤の移動は、後から発生して効果
が使用時に徐々に失われていくような場合もある。
【0009】
他の選択肢は、製造過程で高品質接着剤(メラミン混和UF接着剤、PMDIなど)を
用いてなる膨張抑制(swell-modified)木質パネルを使用することである。
【0010】
上述した対策のうち、高品質接着剤の使用だけがボードの膨張を抑制する。それ以外は
、輪郭部への水分の浸入を単に遅らせるだけである。
【0011】
膨張は、通常、DIN EN 13329:2016又はISO 24336: 2005に準拠したいわゆるエッジ膨張
試験を用いて測定される。同試験では、コーティング済み且つ輪郭部なしの試料(150
×50mm)を水浴(20℃)中に垂直に50mm浸漬させた24時間後、浸漬部分の3
箇所でエッジ膨張を測定する。それ以外の対策の効果を調べるには、塗布による試験法(
水塗布試験や濡布載置試験)が一般的に採用される。このとき、こぼれた液体や長期にわ
たって作用した水分により生じる水分応力については、輪郭部で重なり合う(folded)部
材同士でシミュレーションする。
【0012】
大半の製品は、複数の対策を組み合わせて講じたとしても、エッジ膨張試験で最大50
%の膨張減少率しか得られない。これは、短期間で水分に曝された際にはある程度の保護
を奏するものの、より長期間にわたって水分に曝された際にはしばしば不満をもたらす。
【0013】
つまり、既知の対策には様々な短所がある。例えば、膨張に対する保護の効果向上が少
な過ぎることや、提案の対策では実際の荷重に耐えられない場合があることや、効果の期
間が限られていること等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2017/072657号
【特許文献2】国際公開第2006/038867号
【特許文献3】欧州特許出願公開第903451号明細書
【特許文献4】国際公開第2008/078181号
【特許文献5】国際公開第2012/017235号
【特許文献6】国際公開第01/053387号
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0110541号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2008/0250978号明細書
【特許文献9】国際公開第2009/032988号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明は、挙げた短所を克服するという課題に基づいたものである。具体
的に述べると、本発明は、複合的保護によって対照試料(zero sample)と比べてエッジ
膨張を50%以上抑制可能なラミネートフローリングを製造するという技術的課題に基づ
いたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、この課題は、請求項1の構成を備えた組成物によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
つまり、木質繊維ボードのエッジをシーリングまたはコーティングする組成物であって
、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物および/またはその加水分解生成物
R1
aSiX(4-a) (I)
(式中、
-Xは、H、OH、あるいは、アルコキシ基、アリールオキシ基およびアシルオキシ
基からなる群から選択される加水分解性基であり、
-R1は、アルキル基、アリール基およびシクロアルキル基を含む群から選択され、
-O-または-NH-が挿入されていてもよい有機部位であり、
-R1は、ヒドロキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、カルボキシ基、メルカ
プト基、アルコキシ基、アルデヒド基、アクリル基、アクリロキシ基、メタクリル基、メ
タクリロキシ基、シアノ基、イソシアノ基およびエポキシ基を含む群から選択される少な
くとも1つの官能基Q1を有しており、
-aは、0、1、2または3、特には0または1である。)と、
-一般式(II)の少なくとも1種の化合物および/またはその加水分解生成物
R2
bSiX(4-b) (II)
(式中、
-Xは、上記の意味であり、
-R2は、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル
基およびシクロアルケニル基を含む群から選択される非加水分解性有機部位であり、
-bは、1、2、3または4である。)と、
-少なくとも1種のポリマーの分散液と、
から製造可能な、組成物が提供される。
【0018】
本組成物は、一般式(I)の化合物による架橋成分と、一般式(II)の化合物による
疎水性成分とを、含有している。式(I)が親水性架橋成分の場合、この化合物と木質繊
維とを特には(存在しているか又は例えばアルコキシ基等の加水分解で形成される)遊離
OH基により接着すると共に、ネットワークを形成することが可能である。式(II)の
、例えば部位R2のアルキル基等から構成される疎水性成分は、撥水性バリアを形成する
。これにより、水分は、形成されたコーティングの前記ネットワークを通過して拡がるこ
とができなくなる。
【0019】
本組成物は、繊維ボード中の空孔を埋めて木質繊維を包み込むことにより、木質繊維の
「シーリング」を行うことができる。一方で、疎水性修飾物の使用により、残った空孔や
未だコーティングされていない木質繊維の「疎水化」が実現される。
【0020】
前記コーティングの可撓性を最大限高めるため、上記の無機バインダー成分(inorgani
c binder)は、適切なポリマー水性分散液と混ぜ合わされる。使用するポリマーは、上記
の無機母材(inorganic matrix)に対して相溶性を示す官能基を有するものとされる。こ
れにより、低温でも高い架橋度を有するコーティングを調製することが可能となる。
【0021】
後で詳述するように、本組成物は、あらゆるパネル類やあらゆる接着剤に適用すること
ができる。つまり、前記組成物は、使用される接着剤や有孔度の違いやボードの厚さに関
係なく木質繊維ボードの膨張を抑制する。本組成物の膨張抑制効果は、ウレア-ホルムア
ルデヒド接着剤(UF接着剤)、メラミン-ウレア-ホルムアルデヒド接着剤(MUF接
着剤)またはポリウレタン系接着剤(PMDI接着剤)を有するHDFボードや、木材プ
ラスチック複合材(WPC)からなるボードについても実証可能である。
【0022】
本発明にかかる組成物には、幾つかの利点がある。例えば、エッジの膨張が大いに抑制
されることや、当該組成物がボード内に浸透または移動しないことや、当該組成物があら
ゆるボードやあらゆる接着剤と使用可能であることや、必要な塗布量が比較的少量のみで
済むこと等が挙げられる。
【0023】
有利には、加水分解性部位Xは、H、OH、C1~6アルコキシ基(特には、メトキシ
基、エトキシ基、n-プロポキシ基およびブトキシ基)、C6~10アリールオキシ基(
特には、フェノキシ基)ならびにC2~7アシルオキシ基(特には、アセトキシ基または
プロピオノキシ基)を含む群から選択される。特に好ましい部位Xは、H、OHまたはア
ルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基もしくはi-プロポキ
シ基)である。
【0024】
好ましくは、有機部位R1は、C1~C30アルキル基(特には、C5~C25アルキ
ル基、C2~C6アルケニル基、C3~C8シクロアルキル基およびC3~C8シクロア
ルケニル基)を含む群から選択される。一実施形態において、有機R1は、メチル基、エ
チル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基
、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロ
ペニル基、ブテニル基、アセチレニル基、プロパルギル基、ブタジエニル基またはシクロ
ヘキサジエニル基、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基またはビニル基を含む
群から選択される。
【0025】
本組成物の一実施形態において、少なくとも1つの官能基Q1は、エポキシ基および/
またはヒドロキシ基および/またはエーテル基および/またはアクリル基および/または
アクリロキシ基および/またはメタクリル基および/またはメタクリロキシ基および/ま
たはアミノ基および/またはアルコキシ基および/またはシアノ基および/またはイソシ
アノ基を含む群から選択される。つまり、有利には、官能基Q1が、UV照射によって活
性化させて重合反応させることが可能な、二重結合を有する基やエポキシ基を保有し得る
。
【0026】
本組成物の一変形例において、官能基Q1を有する一般式(I):R1
aSiX(4-
a)、特にはR1SiX3の化合物は、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(M
PTS)、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、グリシジルオキシプロピル
トリエトキシシランなどのエポキシ官能化シラン類、またはビニルトリメトキシシランな
どのビニル官能化シラン類から選択され得る。
【0027】
前述したように、残余の基R1は、少なくとも1つの官能基Q1を有し得る。これに加
えて、R1基は、さらに、他種の基で置換されていてもよい。
【0028】
「アルキル」、「アルケニル」、「アリール」などに対して用いられる「置換」という
用語は、少なくとも1つの原子(通常、H原子)が、次の少なくとも1種の置換基、好ま
しくは次の1種又は2種の置換基によって置換されていることを意味する:ハロゲン基;
ヒドロキシ基;保護ヒドロキシ基;オキソ基;保護オキソ基;C3~C7シクロアルキル
基;ビシクロアルキル基;フェニル基;ナフチル基;アミノ基;保護アミノ基;モノ置換
アミノ基;保護モノ置換アミノ基;ジ置換アミノ基;グアニジノ基;保護グアニジノ基;
複素環基;置換複素環基;イミダゾリル基;インドリル基;ピロリジニル基;C1~C1
2アルコキシ基;C1~C12アシル基;C1~C12アシルオキシ基;アクリロイルオ
キシ基;ニトロ基;カルボキシ基;保護カルボキシ基;カルバモイル基;シアノ基;メチ
ルスルホニルアミノ基;チオール基;C1~C10アルキルチオ基;およびC1~C10
アルキルスルホニル基。置換アルキル基、置換アリール基および置換アルケニル基は、同
一又は異なる置換基で一回以上、好ましくは一回または二回置換された基としてもよい。
【0029】
本明細書で用いる「アルキニル」という用語は、式:R-C≡C-の部位、特には「C
2~C6アルキニル」を指している。C2~C6アルキニルの例には:エチニル;プロピ
ニル;2-ブチニル;2-ペンチニル;3-ペンチニル;2-ヘキシニル;3-ヘキシニ
ル;4-ヘキシニル;ビニル;直鎖アルキル鎖のジイン及びトリイン;ならびに分岐アル
キル鎖のジイン及びトリイン;が含まれる。
【0030】
本明細書で用いる「アリール」という用語は、フェニル、ベンジル、ナフチル、アント
リルなどの芳香族炭化水素を指している。置換アリール基とは、前述したような少なくと
も1種の置換基で置換されているアリール基である。
【0031】
「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチ
ル基、シクロヘキシル基およびシクロへプチル基を包含する。
【0032】
本組成物の特に好ましい一変形例において、前記化合物は、一般式(I)のうちの式:
SiX4(式中、部位XはOHまたはアルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキシ基、
n-プロポキシ基もしくはi-プロポキシ基)である。)に対応する。テトラメトキシシ
ランおよびテトラエトキシシランが、特に好ましい架橋剤として使用される。
【0033】
本組成物のさらなる実施形態において、式(II)の化合物の非加水分解性有機部位R
2は、C1~C15アルキル基(特には、C1~C10アルキル基、C2~C6アルケニ
ル基、C2~C6アルキニル基およびC6~C10アリール基)を含む群から選択される
。これらは、さらなる疎水基で置換されていなくても置換されていてもよい。
【0034】
好ましくは、非加水分解性有機部位R2は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イ
ソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、
ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、シクロヘキシル基、ビニル基、1-プロペニル基、
2-プロペニル基、ブテニル基、アセチレニル基、プロパルギル基、フェニル基およびナ
フチル基を含む群から選択される。メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基または
フェニル基が、特に好ましい。
【0035】
本発明の文脈では、「非加水分解性有機部位」という用語を、水の存在下であっても、
Si原子に結合したOH基又はNH2基が形成されない、有機部位であるとして理解され
たい。
【0036】
式(II)の化合物は、特には、下記の式のいずれか一つを含み得る:
-R2をC1~C5アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基としたR2
4Si
、例えば、テトラメチルシラン;
-R2をC1~C5アルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基とし、XをHとし
たR2
3SiX、例えば、トリメチルシラン;ならびに
-R2をC1~C10アルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ペ
ンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基もしくはオクチル基)またはC6~C10アリール基
(好ましくは、フェニル基)とし、Xをアルコキシ基(特には、メトキシ基、エトキシ基
、n-プロポキシ基もしくはi-プロポキシ基)としたR2SiX3、例えば、オクチル
トリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン等。
【0037】
本組成物の一変形例では、一般式(I)の化合物が1種、および一般式(II)の化合
物が1種使用される。
【0038】
ただし、本組成物の他の変形例は、一般式(I)の少なくとも1種の化合物と、一般式
(II)の少なくとも2種の、好ましくは少なくとも3種の化合物と、を含有しているも
のとしてもよい。このとき、あらゆる組合せを考えることが可能である。
【0039】
つまり、一変形例では、前記組成物が、式(I)の化合物としてテトラエトキシシラン
を、式(II)の化合物としてトリメチルシランおよびフェニルトリエトキシシランを含
有するものとしてもよい。
【0040】
他の変形例では、前記組成物が、式(I)の化合物としてテトラエトキシシランを、式
(II)の化合物としてトリメチルシラン、フェニルトリエトキシシランおよびオクチル
トリエトキシシランを含有している。
【0041】
さらなる実施形態において、一般式(I)の化合物は、0.08~0.2モル、好まし
くは0.1~0.15モル、特に好ましくは0.1~0.12モルのモル量で前記組成物
中に含有されており、一般式(II)の化合物は、0.05~0.1モル、好ましくは0
.06~0.09モル、特に好ましくは0.07~0.08モルのモル量で前記組成物中
に含有されている。
【0042】
一般式(II)の化合物について記したモル量の範囲は、一般式(II)の1種の化合
物、または2種の化合物もしくは3種の化合物の合計を指し得る。
【0043】
つまり、式(I)の化合物としてテトラエトキシシラン、式(II)の化合物としてト
リメチルシランおよびフェニルトリエトキシシランからなる前記変形例の組成物であれば
、0.15モルのテトラエトキシシラン、および0.04モルのトリメチルシラン/0.
033モルのフェニルトリエトキシシランを含有し得る。
【0044】
式(I)の化合物としてテトラエトキシシラン、式(II)の化合物としてトリメチル
シラン、フェニルトリエトキシシランおよびオクチルトリエトキシシランのもう一方の前
記変形例の組成物であれば、0.1モルのテトラエトキシシラン、および0.03モルの
トリメチルシラン/0.025モルのフェニルトリエトキシシラン/0.043モルのオ
クチルトリエトキシシランが存在し得る。
【0045】
式(I)のシラン化合物と式(II)のシラン化合物との比は、好ましくは1:0.5
~1:2、特に好ましくは1:0.75~1:1.5、極めて好ましくは1:1~1:1
.2である。
【0046】
本組成物のより広範な一実施形態では、前記少なくとも1種のポリマーが、ポリウレタ
ン類、エポキシ樹脂類、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂などのメラミン樹脂類、および
ポリアクリレート類を含む群から選択される。
【0047】
芳香族ポリイソシアネート類に基づくポリウレタンポリマー、特には、ポリジフェニル
メタンジイソシアネート(PMDI)および/またはトリレンジイソシアネート(TDI
)および/またはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の使用が好ましく、PM
DIが特に好ましい。
【0048】
前記ポリマーは、シラン化合物で形成された前記ネットワーク中に組み込まれて前記組
成物に可撓性を付与し、塗布を容易にする。
【0049】
好ましくは、使用するポリマーの種類は、使用するシラン化合物に適合したものとされ
る。つまり、エポキシ基で修飾されたシラン類はエポキシポリマー類と共に、メタクリレ
ート基で修飾されたシラン類はアクリレートポリマーと共に使用されるのが有利である。
【0050】
本組成物の他の実施形態では、2種以上のポリマーを使用することも可能である。
【0051】
さらなる実施形態では、本件で用いる組成物中の前記ポリマーの含有量が、30重量%
以上、好ましくは20重量%以上、特に好ましくは10重量%以上である。一実施形態で
は、ゾルゲルとポリマーとの(固形分に基づく)比が、1:0.1~1:0.5、好まし
くは1:0.2~1:0.4である。
【0052】
シラン類の使用に主に起因する溶媒分は、1~15重量%、好ましくは2~13重量%
、特に好ましくは4~10重量%である。これらの数字は、使用する前記ポリマーの溶媒
分を考慮に入れていない。溶媒は、特には水および/またはアルコール類、好ましくはエ
タノールである。アルコール分は、例えば1%未満であり得る。また、本組成物はアルコ
ールのみを含有し水を全く又は実質的に含有しないものとすることも可能であり、すなわ
ち、シラン化合物だけでなく前記ポリマーの分散液もアルコールの形態で使用することが
可能である。
【0053】
さらなる実施形態では、本組成物が、無機粒子、特には、SiO2粒子、Al2O3粒
子、ZrO2粒子、TiO2粒子を含有し得る。好ましくは、ここで使用する粒子の粒径
は、2~400nm、好ましくは2~100nm、特に好ましくは2~50nmである。
無機粒子を添加することで前記組成物の固形分が増加し、前記組成物の塗布時の挙動が向
上する。また、無機粒子の添加により、収縮や亀裂の発生が阻止される。無機粒子は、シ
ラン物質(ゾルゲル物質)の固形分に基づいて0.1~25重量%、好ましくは5~20
重量%の範囲の量で使用されてもよい。
【0054】
本組成物の特に好ましい一変形例は、テトラエトキシシランと、トリメチルシランと、
フェニルトリエトキシシランと、オクチルトリエトキシシランと、ポリウレタンと、を含
有している。
【0055】
本組成物の極めて特に好ましい一変形例は、テトラエトキシシランと、トリメチルシラ
ンと、フェニルトリエトキシシランと、オクチルトリエトキシシランと、ポリウレタンと
、SiO2粒子と、を含有している。
【0056】
本件で使用する組成物は、
-一般式(I)の少なくとも1種の化合物および一般式(II)の少なくとも1種の化
合物を用意する工程と、
-任意で、少なくとも無機粒子の分散液を添加する工程と、
-前記式(I)の少なくとも1種の化合物と前記式(II)の少なくとも1種の化合物
との混合物に、少なくとも1種の触媒(特には、酸)を添加する工程と、
-前記式(I)の少なくとも1種の化合物と前記式(II)の少なくとも1種の化合物
との反応混合物の水相を分離する工程と、
-前記式(I)の少なくとも1種の化合物と前記式(II)の少なくとも1種の化合物
とから分離した水性反応混合物に、少なくとも1種のポリマーを添加する工程と、
を備える方法で、製造することが可能である。
【0057】
触媒として適した無機酸および/または有機酸は、リン酸、酢酸、p-トルエンスルホ
ン酸、塩酸、ギ酸および硫酸を含む群から選択される。また、弱酸として反応する、硫酸
アンモニウムなどのアンモニウム塩類も適している。p-トルエンスルホン酸が、特に好
ましい。
【0058】
好ましくは、その後に前記反応混合物を中和するのに、アンモニアなどの塩基性化合物
が添加される。これにより、アルコール相(エタノール相)と、バインダー成分(binder
portion)を含む水相とが、分離する。すると、水相をアルコール相から容易に分離する
ことが可能となる。
【0059】
無機粒子をバインダー成分に添加する場合には、好ましくは、当該無機粒子が0.1~
15重量%、好ましくは0.5~10重量%、特に好ましくは1~5重量%の割合で使用
される。
【0060】
前述したように、本組成物は、木質繊維ボードの(特にはWPCボード、HDFボード
またはMDFボードの)エッジをコーティングまたはシーリングするのに使用可能である
。
【0061】
本発明の課題は、本組成物を有する木質繊維ボードによっても解決される。
【0062】
つまり、HDFボード、MDFボードなどの1種以上の木質繊維ボードが本発明にかか
る組成物を少なくとも1種有しており、特には、当該木質繊維ボードはエッジをシーリン
グする目的で当該組成物によりコーティングされている。
【0063】
前記組成物は、例えばスプレー塗布、ローラー塗布、真空塗装機の使用等によって、前
記木質繊維ボードのエッジに塗布することが可能である。
【0064】
前記ボードのエッジ上の前記組成物の層厚は、10~50μm、好ましくは20~40
μmの範囲内としてもよい。
【0065】
前記組成物は、液状の形態でパネルのエッジへと、100~200シラン流体量(fl
.g/m2)、好ましくは120~150シラン流体量(fl.g/m2)の量で塗布さ
れてもよい。これにより、パネルのエッジ上の固形分が、5~25mg/cm2、好まし
くは10~20mg/cm2となる。
【0066】
対象の繊維ボードは、木質繊維と混ぜ合わされて圧縮される様々な結合剤を結合剤とし
て有してもよい。好ましい結合剤は:ウレア-ホルムアルデヒド樹脂類、メラミン-ホル
ムアルデヒド樹脂類、メラミン-ウレア-ホルムアルデヒド樹脂類などのホルムアルデヒ
ド樹脂類;ポリウレタン類、好ましくはポリジフェニルメタンジイソシアネート(PMD
I)に基づくポリウレタン類;エポキシ樹脂類;またはポリエステル樹脂類;である。
【0067】
対象の繊維ボードは、表側がフィルム(例えば、PVC、PPなどの熱可塑性材料から
なるフィルム等)、または加飾紙層、オーバーレイ紙などの紙層でさらにコーティングさ
れてもよい。
【0068】
木質繊維ボードとしては:
-ウレア-ホルムアルデヒド接着剤によるHDFボードであって、イソシアネートとポ
リオールとのプレポリマーを含浸させたHDFボード;
-ウレア-ホルムアルデヒド接着剤による、PVCフィルムなどのフィルムが少なくと
も1つの表側に接着したHDFボード;
-メラミンウレアホルムアルデヒド接着剤によるHDFボード;
-PMDI接着剤によるHDFボード;および
-ポリプロピレン(PP)フィルムなどのフィルムが接着したWPCボード;
が特に好ましい。
【0069】
つまり、まず、HDFボードを高品質接着剤(MUF接着剤、PMDI接着剤)を用い
て製作するか、あるいは、標準的なUF接着剤を用いてHDFを製作し、さらに含浸ステ
ーションでPUプレポリマーを完全に含浸させる。そして、当該ボードに対して、メラミ
ン樹脂を含浸させた紙の層(オーバーレイ紙、加飾紙および裏打紙)をショートサイクル
プレス(KT press)でコーティングする。これは、高圧高温下で行われる(p=40ba
r、T=200℃、t=15秒)。コーティング済みのボードは、冷却後、厚板製造に使
用可能となる。さらなる変形例では、WPCボードやHDFボードに熱可塑性フィルムを
コーティングする。どの変形例についても、床材製造ライン(flooring line)で厚板へ
と切断すると共に、そのエッジの輪郭部を本発明にかかる組成物でシーリングした。シー
リングを行わない、比較例の試料も製作した。塗布した組成物は、赤外線放射器で熱的に
活性化させる。活性化エネルギーは、厚板にて80℃以上とする必要がある。
【実施例0070】
以下では、実施例を参照しながら本発明を詳細に説明する。
【0071】
(実施例1:シーリング組成物の調製)
12.3gのオクチルトリエトキシシラン、2.4gのトリメチルシラン、6.1gの
フェニルトリエトキシシラン、20.8gのテトラエトキシシラン、および28.8gの
SiO2(50重量%)水性分散液(Obermaier社製)を配合しし、80℃に加
熱攪拌する。3.6gのパラトルイル酸(para toluenic acid)(30重量%)を攪拌し
ながら水に添加し、これを前記混合物に添加し、120分間攪拌する。さらに24時間後
、25%アンモニア溶液(本例では6.2g)を攪拌しながら添加することにより、pH
値をpH値=7に上げる。
【0072】
さらに2時間攪拌した後、80gの水を添加し30分間再攪拌してから、この懸濁液を
攪拌せずに4時間静置する。
【0073】
この待機時間後、バインダー成分を含む水相と、エタノール相とが、分離する。そして
、水相を分離漏斗で取り出す。これにより、水性無機コーティング液が得られる。
【0074】
次に、50gの得られた水性無機コーティング液(固形分:52%)を、20gのポリ
ウレタン水溶液(Alberdingk U 3251)(固形分:35%)と混ぜ合わせ
る。
【0075】
このコーティング液混合物は、フォームローラーまたはピペットでエッジに塗布して熱
硬化(例えば、100℃で5分間)させることが可能である。
【0076】
(実施例2:UF接着剤およびプレポリマーを有するHDF)
7.4mmHDF(比重=約850kg/m3)に対し、キャスティング装置によって
プレポリマー(量=1.2kg/m2)をキャスティングする。このボードを真空ステー
ションに移送することで、前記プレポリマーが真空でHDF内に吸収される。3日間静置
した後、当該ボードにショートサイクルプレスでメラミン樹脂含浸紙(オーバーレイ、加
飾および裏打)を加圧加温下でコーティングする(p=40bar、T=200℃、t=
15秒)。
【0077】
このボードを熟成庫に移送して冷却し、3日後に、床材製造ラインで厚板へと切断する
。そして、当該厚板に実と溝を設けた後、その輪郭部に対して実施例1の組成物を連続流
でスプレー塗布する(塗布量:100gfl./m2;固形分:約42%)。赤外線放射
機により、シランを乾燥させた。また、比較用として、同じボードを用いて、エッジをシ
ーリングすることなく厚板へと切断した。
【0078】
(実施例3:PMDI接着剤を有するMDF)
HDFボードを、MDFラインでPMDI結合剤を用いて製作した。接着剤比率=8%
、嵩比重=850kg/m3とした。プレス後、HDFを冷却しサンディングした。そし
て、3日間静置した後、当該ボードにショートサイクルプレスでメラミン樹脂含浸紙(オ
ーバーレイ、加飾および裏打)を加圧加温下でコーティングした(p=40bar、T=
200℃、t=15秒)。
【0079】
このボードを熟成庫に移送して冷却し、3日後に、床材製造ラインで厚板へと切断する
。そして、当該厚板に実と溝を設けた後、その輪郭部に対して実施例1の組成物を連続流
でスプレー塗布する(塗布量:100gfl./m2;固形分:約42%)。赤外線放射
機により、シランを乾燥させた。また、比較用として、同じボードを用いて、エッジをシ
ーリングすることなく厚板へと切断した。
【0080】
(実施例4:MUF接着剤を有するHDF)
HDFボードを、MDFラインでMUF結合剤を用いて製作した。接着剤比率=25%
、メラミン補強率=24%、嵩比重=850kg/m3とした。プレス後、HDFを冷却
しサンディングした。そして、3日間静置した後、当該ボードにショートサイクルプレス
でメラミン樹脂含浸紙(オーバーレイ、加飾および裏打)を加圧加温下でコーティングさ
せた(p=40bar、T=200℃、t=15秒)。
【0081】
このボードを熟成庫に移送して冷却し、3日後に、床材製造ラインで厚板へと切断する
。そして、当該厚板に実と溝を設けた後、その輪郭部に対して実施例1の組成物を連続流
でスプレー塗布する(塗布量:100gfl./m2;固形分:約42%)。赤外線放射
機により、シランを乾燥させた。また、比較用として、同じボードを用いて、エッジをシ
ーリングすることなく厚板へと切断した。
【0082】
(実施例5:エッジ膨張試験)
エッジ膨張試験用に、コーティング済みの各ボードから2×2個の試料(150×50
mm×厚さ)を切断した。そして、半分の試料について、その切断エッジを実施例1の組
成物でシーリングした(塗布量はどれも約100g/m2とした)。次に、エッジ膨張試
験をISO 24 336:2005に準拠して実施した。
【0083】
膨張は、DIN EN 13329:2016又はISO 24336: 2005に準拠したいわゆるエッジ膨張試験を
用いて測定する。同試験では、コーティング済み且つ輪郭部なしの試料(150×50m
m)を水浴(20℃)中に垂直に50mm浸漬させ、24時間後に、浸漬部分の3箇所で
エッジ膨張を測定する。結果を、下記の表にまとめる。
【0084】
【0085】
*シラン系エッジシーリング剤の塗布量は、約100gfl./m2とした。
**このHDFは、比重を約850kg/m3とし、標準的な床構造物(オーバーレイ
、加飾および裏打)でコーティングした。
***このHDFは、嵩比重を850kg/m3、繊維に対する接着剤比率(Beleimung
)を約8%とし、標準的な床構造物(オーバーレイ、加飾および裏打)でコーティングし
た。
****このHDFは、比重を約850kg/m3、メラミン修飾(24%)UF接着剤
の接着剤比率を25%とし、標準的な床構造物(オーバーレイ、加飾および裏打)でコー
ティングした。
*****このWPCは、約50重量%のPET繊維および約50重量%の木質繊維で構
成した。同ボードには、0.4mm厚のPETフィルムをPUホットメルトで接着した。
******このHDFは、嵩密度を850kg/m3とした。同HDFには、0.5mm
厚のPVCフィルムをPUホットメルトで接着する。
【0086】
表から分かるように、使用する接着剤の種類およびパネル組成に関係なくエッジ膨張を
多かれ少なかれ抑制できることは明らかである。したがって、このシーリング類は、幅広
い様々なパネルタイプに適用することが可能である。