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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055998
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】内服組成物およびその吸湿抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/8888 20060101AFI20240412BHJP
   A61K 36/07 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 36/575 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 36/076 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 36/536 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 36/804 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 36/54 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 36/708 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 36/234 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 36/24 20060101ALI20240412BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240412BHJP
【FI】
A61K36/8888
A61K36/07
A61K36/575
A61K36/076
A61K36/536
A61K36/804
A61K36/54
A61K36/484
A61K36/48
A61K36/708
A61K36/234
A61K36/24
A61K47/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033534
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2019177789の分割
【原出願日】2019-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2018184189
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】巽 一憲
(72)【発明者】
【氏名】杉平 貴史
(57)【要約】
【課題】満足する服用感が得られ、吸湿が抑制される内服組成物を提供する。
【解決手段】漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方と、テルペン類とを有する内服組成物とした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経時的劣化が効果的に防止され、長期にわたって優れた薬効が安定に保たれる、漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方を含有する内服組成物およびその吸湿抑制方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、漢方エキスや生薬エキスを含有する内服組成物は吸湿性が高いため、水分を吸収することによる変色や変質を防止するため、その対策を講じる必要がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-222729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、新規な内服組成物およびその吸湿抑制方法の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明は、以下の[1]~[8]を要旨とする。
[1]漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方と、テルペン類とを含有する内服組成物。
[2]上記テルペン類の含有量が、内服組成物全体に対し0.0005~20質量%である、[1]に記載の内服組成物。
[3]上記漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方に対するテルペン類の含有割合(テルペン類/漢方エキスおよび生薬エキス)が質量比で0.00001~10である、[1]または[2]に記載の内服組成物。
[4]上記テルペン類が、メントールである、[1]~[3]のいずれかに記載の内服組成物。
[5]上記漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方が、根、根茎および花蕾からなる群から選ばれた少なくとも一つを由来とする生薬を構成生薬として用いるものである、[1]~[4]のいずれかに記載の内服組成物。
[6]上記漢方エキスの処方が、桂枝五物湯、甘露飲、響声破笛丸、半夏瀉心湯、半夏厚朴湯、排膿散及湯、辛夷清肺湯、竹葉石膏湯、抑肝散、六君子湯からなる群から選ばれた少なくとも一つである、[1]~[5]のいずれかに記載の内服組成物。
[7]漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方を含有する内服組成物に対し、テルペン類を含有させる、内服組成物の吸湿抑制方法。
【0006】
すなわち、本発明者らは、漢方エキスや生薬エキスを含有する内服組成物について、吸湿の抑制を図るため、種々の検討を重ねた。通常、漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方を含有する内服組成物に、その漢方処方や生薬とは別の生薬に由来する成分を配合すると、所望の生薬エキス由来の効能の発現を阻害することや、漢方処方を崩すことにつながりかねないとして敬遠する傾向がみられる。しかしながら、本発明者らはそのような既成概念を打ち崩し、漢方エキスや生薬エキスを意外にもテルペン類とともに含有させると、優れた吸湿抑制ができることを見い出した。さらに、漢方エキスや生薬エキスを含む製剤は、懸濁した際に膜透過性が悪く、泡の発生が著しいものであるが、テルペン類を含有させることで、内服組成物を水等に懸濁した際の懸濁液や内服組成物を液剤とした場合の膜透過性が向上し、泡の発生によって服用感が低下することを抑制できることを見い出した。
【発明の効果】
【0007】
このように、本発明の内服組成物は、漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方を含有しているにもかかわらず、吸湿抑制に優れるため、吸湿による変色や変質が生じにくく、内服組成物の品質を長期にわたって担保することができる。さらに、本発明の内服組成物は、内服組成物を水等に懸濁した際の懸濁液や、内服組成物が液剤の場合における膜透過性を向上させ、泡の発生も抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0009】
本発明は、漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方と、テルペン類とを有するものである。以下に詳細を説明する。
【0010】
本実施の形態に係る内服組成物で用いられる「漢方エキス」とは、漢方処方に沿った生薬から、水、エタノール等の有機溶媒またはその混合物を用いて抽出した、抽出液由来のもの全般を意味し、抽出液そのもの、抽出液を濃縮した軟エキス、抽出液または軟エキスを乾燥させた乾燥エキス等の、いずれの形態をも含む趣旨である。
また、「生薬エキス」とは、単一または複数種類の生薬を水または有機溶媒で抽出したエキス全般を意味し、抽出液そのもの、抽出液を濃縮した軟エキス、抽出液または軟エキスを乾燥させた乾燥エキス等の、いずれの形態をも含む趣旨である。
漢方エキスおよび生薬エキスはいずれも単独でもしくは2種以上併せて用いることができ、漢方エキスと生薬エキスを併せて用いてもよい。
【0011】
上記漢方エキスおよび生薬エキスは、第十七改正日本薬局方の製剤総則に記載の、生薬関連製剤「エキス剤」を製する方法に準じて製造されたものを用いることができる。上記方法としては、例えば、適切な大きさとした生薬に適切な抽出剤を加えて、一定時間冷浸、温浸して抽出液を得る方法や、適切な大きさとした生薬を処方に従って一定量ずつ量り、その全量に約10~20倍量の水を加えて一定時間加熱して抽出液を得る方法があげられる。なお、得られた抽出液は、通常、遠心分離、ろ過等の固液分離に供され、固形分が除去されて用いられる。
【0012】
本実施の形態に係る内服組成物における「生薬」とは、日本薬局方および日本薬局方外生薬規格に「生薬」として収載されたものを意味するものである。また、「漢方処方」とは、漢方の考え方による生薬の組み合わせ(レシピ)をいうものである。
【0013】
本実施の形態に係る内服組成物は、漢方処方を構成する生薬として、根、根茎および花蕾からなる群から選ばれた少なくとも一つを由来とする生薬を含有することが好ましく、これらを2種類以上含有することが好ましい。根、根茎、花蕾を由来とする生薬からなる生薬エキスおよびこれらを由来とする生薬を含有する漢方エキスは、通常、吸湿性が高い傾向がみられるため、より吸湿抑制効果を発揮できる。また、これらを由来とする生薬は多糖類が多く含まれる傾向がみられるため、これらが配合された製剤は、懸濁した際の膜透過性に劣り、泡の発生も著しい傾向がみられる。本実施の形態に係る内服組成物は、これらに対して効果的に膜透過性を向上させ、顆粒剤のような固形製剤における泡の発生による水で服用した時の服用感の低下や液剤製造における泡発生を抑制できる。このような生薬のなかでも、オウゴン、ジオウ、ショウキョウ、ダイオウ、カンゾウ、ニンジン、シンイを含むものが好ましく、オウゴン、ジオウ、カンゾウ、ニンジンを含むものがより好ましく、オウゴンおよびジオウの少なくとも一方を有していることがさらに好ましい。
【0014】
上記漢方処方とは、例えば、「傷寒論」(しょうかんろん)、「金匱要略」(きんきようりゃく)、「改訂 一般用漢方処方の手引き」(財団法人日本公定書協会監修、日本漢方生薬製剤協会編集、じほう社発行)に記載されているものがあげられる。
また、根、根茎および花蕾からなる群から選ばれた少なくとも一つを由来とする生薬を処方の生薬として含有する漢方処方としては、限定はされないが、例えば、桂枝五物湯、甘露飲、清熱補気湯、清熱補血湯、清肺湯、辛夷清肺湯、排膿散及湯、響声破笛丸、半夏瀉心湯、半夏厚朴湯、竹葉石膏湯、抑肝散、六君子湯等があげられ、なかでも、桂枝五物湯、甘露飲、響声破笛丸、半夏瀉心湯、半夏厚朴湯、排膿散及湯、辛夷清肺湯、竹葉石膏湯、抑肝散、六君子湯が好ましい。オウゴンおよびジオウの少なくとも一方を処方の生薬とする漢方処方としては、例えば、桂枝五物湯、甘露飲、五淋散、滋血潤腸湯、清肺湯、辛夷清肺湯等があげられる。また、オウゴンおよびジオウの両方を含有するものとしては、桂枝五物湯、甘露飲、五淋散があげられる。
【0015】
上記漢方エキスは、通常、限定はされないが、一日服用量として、1mg~100gを含有することができ、好ましくは10mg~50g、より好ましくは10mg~10gである。また、固形製剤とする場合は、限定はされないが、製剤中、通常1~99質量%、好ましくは10~95質量%、より好ましくは20~90質量%である。液剤とする場合は、限定はされないが、製剤中、通常0.01~100質量%、好ましくは0.1~95質量%、より好ましくは1~90質量%である。
【0016】
上記生薬エキスは、通常、限定はされないが、一日服用量として、1~10000mgを含有することができ、好ましくは1~2000mgを含有することであり、より好ましくは5~1000mgを含有することである。
【0017】
本実施の形態に係る内服組成物で用いられるテルペン類とは、化学構造がイソプレンの炭素骨格の単位から形成されている一群の天然有機化合物全般を意味し、例えば、テルペノイド,テルペノイド類,テルペノイド化合物等があげられる。なかでも、メントール、カンフル、ボルネールが好ましく用いられ、より好ましくはメントールが用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0018】
上記テルペン類は、内服組成物全体に対し、通常、0.00001~40質量%の範囲で含有させることができるが、0.0005~20質量%含有させることが好ましく、0.001~5質量%含有させることが好ましく、服用感の観点から0.01~2質量%含有させることがより好ましい。
上記漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方に対するテルペン類の含有割合(テルペン類/漢方エキスおよび生薬エキス)は、質量比で、通常、0.00001~20の割合で含有させることができるが、0.00001~10の割合で含有させることが好ましく、より好ましくは0.0001~2の割合であり、服用感の観点から0.0005~0.2の割合で含有させることがさらに好ましく、0.001~0.1の割合とすることがさらにより好ましい。なお、内服組成物に漢方エキスと生薬エキスとが含有される場合には、上記テルペン類の含有割合(テルペン類/漢方エキスおよび生薬エキス)は、漢方エキスと生薬エキスの総量に対するものとする。
【0019】
上記メントールとしては、例えばl-メントール、dl-メントールがあげられるが、経時的な安定性に優れる点でl-メントールが好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
上記メントールは、内服組成物全体に対し、通常、0.00001~20質量%の範囲で含有させることができるが、0.0005~10質量%含有させることが好ましく、服用感の観点から0.001~5質量%含有させることがより好ましく、0.01~2質量%含有させることがさらに好ましい。
上記漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方に対するメントールの含有割合(メントール/漢方エキスおよび生薬エキス)は、質量比で、通常、0.00001~10の割合で含有させることができるが、0.0001~1の割合で含有させることが好ましく、服用感の観点から0.0005~0.1の割合で含有させることがより好ましい。なお、内服組成物に漢方エキスと生薬エキスとが含有される場合には、上記メントールの含有割合(メントール/漢方エキスおよび生薬エキス)は、漢方エキスと生薬エキスの総量に対するものとする。
【0020】
本実施の形態に係る内服組成物において、内服組成物とは、経口投与される組成物全てを含む趣旨であり、例えば、食品、食品添加物、飼料、飼料添加物、ペットフード、医薬品、医薬部外品、サプリメント、機能性食品、美容食品等があげられる。剤形としては、固形製剤、液剤があげられる。固形製剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル、丸剤、チュアブル剤、ゼリー剤、用時溶解剤(ドライシロップなど液体に溶かして服用する形態)等があげられる。
【0021】
本実施の形態に係る内服組成物には、漢方エキス、生薬エキス、テルペン類以外の成分を任意成分として含有していてもよい。このような任意成分としては、例えば、添加剤、薬効成分、生薬成分等があげられる。
【0022】
上記添加剤としては、例えば、安定化剤、安定剤、界面活性剤、滑沢化剤、滑沢剤、可溶(化)剤、緩衝剤、甘味剤、基剤、吸着剤、矯味剤、結合剤、懸濁(化)剤、硬化剤、抗酸化剤、光沢化剤、香料、コーティング剤、剤皮、湿潤剤、湿潤調整剤、充填剤、消泡剤、清涼(化)剤、咀嚼剤、静電防止剤、着香剤・香料、着色剤、糖衣剤、等張化剤、軟化剤、乳化剤、粘着剤、粘着増強剤、粘調(化)剤、発泡剤、pH調整剤、pH調節剤、賦形剤、分散剤、崩壊剤、崩壊補助剤、芳香剤、防湿剤、防腐剤、保存剤、溶解剤、溶解補助剤、溶剤、流動化剤があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0023】
上記添加剤の具体例としては、例えば、精製白糖、ブドウ糖、トレハロース、乳糖、マルトース、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、グラニュトール、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、カンゾウ抽出物、ステビア抽出物、ラカンカ抽出物、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、コムギデンプン、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、塩化ナトリウム、結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒプロメロースフタル酸エステル、セルロースアセテートフタレート、デキストリン、アルファー化デンプン、アラビアゴム、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、クロスポビドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、カゼイン、カゼインナトリウム、カルボキシビニルポリマー、酒石酸、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコーン油、寒天、セラック、グリセリン、芳香性精油類、水溶性食用色素、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄、褐色酸化鉄、黒酸化鉄、二酸化チタン、レーキ色素、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸、シクロデキストリン、ポリソルベート80、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン、サラシミツロウ、中鎖脂肪酸トリグリセリド、アスコルビン酸、トコフェロール、チオ硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、植物由来香料(オレンジやレモン等の果実系香料やコーヒー系香料、茶系香料)、チョコレート系香料、ヨーグルト系香料、ミルク系香料、ハッカ油、レモン油、ペパーミント油、スペアミント油、スパイス油等の植物精油等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0024】
上記薬効成分としては、例えば、漢方エキスの処方および生薬エキスを構成しない生薬成分、鎮痛成分、抗ヒスタミン成分、鎮咳成分、気管支拡張成分、去痰成分、粘膜保護成分、制酸成分、健胃成分、整腸成分、止瀉成分、交感神経興奮成分、副交感神経遮断成分や、カフェイン類、ビタミン類、消炎酵素類等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0025】
上記漢方エキスの処方および生薬エキスを構成しない生薬成分としては、生薬そのもの(原生薬)はもちろん、原生薬を粉状にした生薬末、生薬や生薬末から水、エタノール等の有機溶媒またはその混合物を用いて抽出した、抽出液由来のもの全般を意味し、抽出液そのもの、抽出液を濃縮した軟エキス、抽出液または軟エキスを乾燥させた乾燥エキス等の、いずれの形態をも含む趣旨である。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0026】
本実施の形態に係る内服組成物は、漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方、テルペン類、および必要であればその他の材料を、慣用の方法で混合することによって得ることができる。すなわち、まず、上記漢方エキスおよび生薬エキスの少なくとも一方(以下「漢方エキス等」とすることがある)とテルペン類とを混合し、この混合物にその他の材料を混ぜ合わせるようにしてもよいし、上記漢方エキス等、テルペン類を含む全ての材料を一度に混ぜ合わせるようにしてもよい。また、混ぜ合わせられたこれらの材料を、乾燥、整粒等を行い内服組成物としてもよい。
【0027】
本実施の形態に係る内服組成物によれば、吸湿抑制に優れるため、吸湿による変色や変質が生じにくく、内服組成物の品質を長期にわたって担保することができる。さらに、漢方エキス等を含有する内服組成物は水等にて服用するもの、予め水等に懸濁して服用するものや、水なしで服用するもの、液剤として提供されるもの等、様々な剤形のものがあるが、なかには、水や唾液との接触にて泡が発生し、服用感が悪くなるものもある。しかし、本実施の形態に係る内服組成物は、泡の発生が抑制されるため、顆粒、散剤、液剤等の剤形の内服組成物においても、口中に含んだときの服用感が向上し、幅広い層のユーザーに提供することが可能になっている。さらに、水等に接する場合における、内服組成物の粒子が細粒化し、薬効成分等の吸収速度向上や、吸収率が高くなること等が期待できる。そして、漢方エキス等を有するものであれば、漢方エキス等に起因する効果が期待できる。
【実施例0028】
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下に示す成分組成は、特に記載がない限り、すべて質量基準で示している。実施例および比較例に使用した漢方エキス及び生薬エキスの詳細は以下のとおりである。
・桂枝五物湯エキス、甘露飲エキス、竹葉石膏湯エキス、抑肝散エキス、六君子湯エキスおよび辛夷エキスについては、段落[0011]に記載の常法に従い製造した。
・響声破笛丸エキスはジェイピーエス製薬社製(響声破笛丸エキス顆粒G)を用いた。
・半夏瀉心湯エキスは東洋薬行社製(〔東洋〕半夏瀉心湯エキス細粒)を用いた。
・半夏厚朴湯エキスは東洋薬行社製(〔東洋〕半夏厚朴湯エキス細粒)を用いた。
・排膿散及湯エキスはツムラ社製(ツムラ排膿散及湯エキス顆粒(医療用))を用いた。
【0029】
<吸湿抑制率>
[実施例1~17]
そして、各漢方エキス(乾燥)または生薬エキス(乾燥)10gに対し、乳鉢を用いてすり潰して粉状にしたl-メントールを、下記の表1~4に示す分量を添加し、混合して内服組成物を得た。
これらの内服組成物をそれぞれシャーレに取り、下記の条件1,2下において、実験開始直後と、実験開始4日後のそれぞれの質量を測定した。
また、これらとは別に、l-メントールのみまたは漢方エキス(乾燥)または生薬エキス(乾燥)のみ10gをシャーレに取って同様に条件1,2下に置き、同様にそれぞれの質量を測定した。
これらの測定結果を下記の式(1)に当てはめ、各内服組成物の吸湿抑制率(%)を算出した。算出した結果を下記の表1~4に併せて示す。
条件1:25℃,75%RH
条件2:60℃,成り行き湿度
【0030】
・吸湿抑制率(%)={(B-A)-[(F-E)/10]×[l-メントール添加量(g)]}/(D-C)×100・・・(1)
ただし、A~Fは以下のとおりとする。
A:実験開始直後の内服組成物の質量(g)
B:4日経過後の内服組成物の質量(g)
C:実験開始直後の漢方(または生薬)エキスの質量(g)
D:4日経過後の漢方(または生薬)エキスの質量(g)
E:実験開始直後のl-メントールの質量(g)
F:4日経過後のl-メントールの質量(g)
なお、用いた漢方エキスおよび生薬エキスのうち、一部には、その製剤化および品質保証等を目的として、各種の添加剤が配合されていたものもあった。そこで、添加剤による影響を排除するため、漢方エキス等に配合されていた、トウモロコシデンプン、乳糖、還元麦芽糖水あめの3品について、上記漢方エキス等と同様にこれら自体の吸湿抑制率をそれぞれ算出した。その結果、いずれの添加剤においても吸湿はほとんどみられなかったことから、上記漢方エキス等における各種の添加剤の吸湿への影響を考慮する必要がない(添加剤による影響はほとんどない)ことを確認した。
【0031】
(1-1)桂枝五物湯エキス
条件1:l-メントール添加量(エキス質量に対する質量%)
0.3質量%、1質量%、3質量%、5質量%、10質量%
【0032】
【表1】
【0033】
(1-2)桂枝五物湯エキス
条件2:l-メントール添加量(エキス質量に対する質量%)
0.3質量%、0.7質量%、1質量%、3質量%、5質量%、10質量%
【0034】
【表2】
【0035】
(2)響声破笛丸エキス、半夏厚朴湯エキス、排膿散及湯エキス、辛夷エキス
条件1:l-メントール添加量5質量%(エキス質量に対する質量%)
【0036】
【表3】
【0037】
(3)竹葉石膏湯エキス、抑肝散エキス
条件1:l-メントール添加量0.3質量%(エキス質量に対する質量%)
【0038】
【表4】
【0039】
上記表1~4の結果より、漢方エキスまたは生薬エキスとl-メントールとを有することで、漢方エキスまたは生薬エキス量あたりの水分吸収量が抑制されることが示された。また、l-メントールの添加量の増加に従い抑制される水分吸収量も増加し、実施例1~17は、いずれも優れた吸湿抑制率(%)を示すことがわかった。
【0040】
<消泡率(%)>
[実施例18~41、比較例1~9]
各漢方エキス(乾燥)または生薬エキス(乾燥)5gと、表5~13に示す量のl-メントールとを有する内服組成物を、それぞれ超純水50mLに添加し、スターラーで5分間撹拌し懸濁させた。
得られた懸濁液および発生した泡について、容器の外側から懸濁液層の厚みaと泡層の厚みbを測定した。懸濁液層の厚みaと泡層の厚みbとを合わせたものを全体の厚みとし、まず、全体の厚み(a+b)に対する泡層の厚みbを下記の式(2)に当てはめ、泡層の割合cを算出した。ついで、算出した泡層の割合cを下記の式(3)にあてはめ、各内服組成物の消泡率(%)を算出した。算出した結果を下記の表5~13に併せて示す。
・泡層の割合c=[b/(a+b)]・・・(2)
・消泡率(%)=[1-{各実施例の泡層の割合c/比較例の泡層の割合c}]×100・・・(3)
なお、漢方エキスおよび生薬エキス等に配合されていた添加剤(トウモロコシデンプン、乳糖、還元麦芽糖水あめ)について、上記漢方エキス等と同様にこれら自体の消泡率(%)をそれぞれ算出した。その結果、いずれの添加剤においてもl-メントールの添加量による変化はみられかったことから、上記漢方エキス等における各種の添加剤の消泡作用の影響を考慮する必要がない(添加剤による影響はほとんどない)ことが確認された。
【0041】
(1)桂枝五物湯エキス
l-メントール添加量:0.015g、0.25g、5g
【0042】
【表5】
【0043】
(2)甘露飲エキス
l-メントール添加量:0.015g、0.25g、5g
【表6】
【0044】
(3)響声破笛丸エキス
l-メントール添加量:0.015g、0.25g、5g
【表7】
【0045】
(4)半夏厚朴湯エキス
l-メントール添加量:0.015g、0.25g、5g
【表8】
【0046】
(5)排膿散及湯エキス
l-メントール添加量:0.015g、0.25g、5g
【表9】
【0047】
(6)竹葉石膏湯エキス
l-メントール添加量:0.25g、5g
【0048】
【表10】
【0049】
(7)抑肝散エキス
l-メントール添加量:0.25g、5g
【0050】
【表11】
【0051】
(8)六君子湯エキス
l-メントール添加量:0.015g、5g
【0052】
【表12】
【0053】
(9)辛夷エキス
l-メントール添加量:0.015g、0.25g、5g
【0054】
【表13】
【0055】
上記表5~13の結果より、実施例18~41はいずれも泡の発生が抑制されることが示された。
【0056】
<膜透過効果>
[実施例42~46、比較例10~13]
各漢方エキス(乾燥)または生薬エキス(乾燥)5gを、超純水50mLに添加し、スターラーで5分間撹拌し懸濁させた。
この懸濁液をそれぞれ、下記の表14~17に示す量のl-メントールに接触させて内服組成物とし、この内服組成物をろ紙(90mm、ADVANTEC No.1)を用いて吸引ろ過し、懸濁液の全量がろ過されるまでの時間(sec)を測定した。測定した結果を下記の表14~17に併せて示す。
【0057】
(1)桂枝五物湯エキス
l-メントール添加量:0.25g、5g
【0058】
【表14】
【0059】
(2)甘露飲エキス
l-メントール添加量:5g
【0060】
【表15】
【0061】
(3)六君子湯エキス
l-メントール添加量:5g
【0062】
【表16】
【0063】
(4)辛夷エキス
l-メントール添加量:5g
【0064】
【表17】
【0065】
上記表14~17の結果より、実施例42~46は、いずれもろ過に掛かる時間が少なくなる傾向が示され、膜透過に優れるようになることがわかった。漢方エキスまたは生薬エキスとl-メントールとを併用することにより、集合状態にあった漢方エキスまたは生薬エキス由来の粒子が分離して小型化したか、あるいは粒子そのものが細粒化した可能性がある。
一般に、粒子が細かいほど体内への吸収スピードが速くなり、吸収率が高くなる傾向がみられる。各実施例においてもその傾向がみられたのではないかと推測される。
【0066】
[製剤例]
下記の表18~25に示す材料を用いて、本発明の内服組成物(製剤例1~33)を調製した。なお、製剤例1~33の材料は、いずれも日本薬局方の収載品を用いた。また、表中、錠剤(素錠)とはコーティングされていない錠剤を意味し、錠剤(フィルム)とはフィルムコーティングされた錠剤を意味している。
【0067】
【表18】
【0068】
【表19】
【0069】
【表20】
【0070】
【表21】
【0071】
【表22】
【0072】
【表23】
【0073】
【表24】
【0074】
【表25】
【0075】
上記表18~25に示す製剤例1~33について、実施例と同様の方法により、吸湿抑制率、消泡率(%)、膜透過効果の3項目について評価を行った。その結果、製剤例1~33のすべてにおいて、実施例と同様の傾向がみられた。なお、製剤の形状がゼリーであるもの(製剤例6,15)については、吸湿抑制率の評価を行っていない。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、経時的劣化が効果的に防止され、長期にわたって優れた薬効が安定に保たれる内服組成物である。