(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024055999
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】回路基板の製造方法及び回路基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/20 20060101AFI20240412BHJP
H01L 23/13 20060101ALI20240412BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240412BHJP
H05K 3/38 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H05K3/20 Z
H01L23/12 C
H05K1/03 610D
H05K3/38 E
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024033575
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2023548296の分割
【原出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2022055083
(32)【優先日】2022-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100154391
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康義
(72)【発明者】
【氏名】宮田 建治
(72)【発明者】
【氏名】岩切 翔二
(72)【発明者】
【氏名】井之上 紗緒梨
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 良太
(57)【要約】
【課題】高温及び低温の熱サイクルに晒されてもクラックが発生しにくい回路基板及びその回路基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の回路基板1は、第1のセラミックス及び第1の樹脂を含む第1のセラミックス-樹脂複合材層10と、第1のセラミックス-樹脂複合材層10の上に設けられた金属パターン20と、第2のセラミックス及び第2の樹脂を含み、第1のセラミックス-樹脂複合材層10の上に設けられた第2のセラミックス-樹脂複合材層30とを含む回路基板1であり、第2のセラミックス-樹脂複合材層30は、金属パターン20の側面21における第1のセラミックス-樹脂複合材層側の端部211を少なくとも被覆する。本発明の回路基板の製造方法は、第1のセラミックスと第1の樹脂組成物の半硬化物とを含む第1の半硬化物複合体シートの上に、金属パターンを形成する金属パターン形成工程、及び金属パターンの少なくとも一部を加圧する加圧工程を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のセラミックス及び第1の樹脂を含む第1のセラミックス-樹脂複合材層と、
前記第1のセラミックス-樹脂複合材層の上に設けられた金属パターンと、
第2のセラミックス及び第2の樹脂を含み、前記第1のセラミックス-樹脂複合材層の上に設けられ、前記金属パターンと嵌合した第2のセラミックス-樹脂複合材層とを含む回路基板であって、
前記第2のセラミックス-樹脂複合材層は、前記金属パターンの側面における前記第1のセラミックス-樹脂複合材層側の端部を少なくとも被覆し、
前記第2のセラミックス-樹脂複合材層は、前記第1のセラミックス-樹脂複合材層の上に積層されたセラミックス-樹脂複合材層であり、
前記第2のセラミックスが多孔質セラミックスである回路基板。
【請求項2】
前記第2のセラミックス-樹脂複合材層は、前記金属パターンの側面の全部を被覆する請求項1に記載の回路基板。
【請求項3】
前記第1のセラミックスが多孔質セラミックスである請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項4】
前記第1のセラミックスがフィラーである請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項5】
前記第1のセラミックス及び前記第2のセラミックスは、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のセラミックスを含む請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項6】
前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂が熱硬化性樹脂である請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項7】
前記金属パターンが金属箔を切断加工して得られた金属箔切断加工品である請求項1又は2に記載の回路基板。
【請求項8】
前記切断加工がせん断加工であり、
前記金属パターンにおける前記第1のセラミックス-樹脂複合材層側の面が、前記金属パターンにおける切断面にダレが生じた側の面である請求項7に記載の回路基板。
【請求項9】
前記第1のセラミックス-樹脂複合材層の前記金属パターン側の面とは反対側の面に設けられたメタルベース板をさらに含む請求項1又は2に記載の回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回路基板の製造方法及びその製造方法により得られる回路基板に関し、特に、パワーモジュールに使用される回路基板の製造方法及びその製造方法により得られる回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道などの電動化輸送機器、モーターを利用するエアコンなどの家電製品、産業機器において電力変換デバイスが欠かせない。電力変換デバイスの中で、変換効率が高いデバイスとして、パワー半導体素子が挙げられる。パワー半導体素子は、電力変換回路において電気制御スイッチとして、オン及びオフの状態維持及びオン及びオフ間の状態遷移を行う。パワー半導体素子は、オフ状態では、電源や負荷からの電流の流通を阻止し、オン状態では電源や負荷からの電流の流通を許容する。このようなパワー半導体素子を搭載する基板には、優れた放熱性及び絶縁性を確保するため、例えば、メタルベース基板が用いられる。メタルベース基板は、例えば、無機フィラー含有エポキシ樹脂を用いてメタルベース板の片面に金属箔を貼り合わせた積層板である(例えば、特許文献1参照)。メタルベース基板は、優れた放熱性を有し、セラミック基板に比べて製造コストが低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パワーモジュールの想定される使用時の最低温度は寒冷地での外気温に相当し、-40℃から-50℃程度と想定される。一方、パワーモジュールの想定される使用時の最高温度は、半導体素子の高出力化に伴い上昇する傾向にあり、特にワイドギャップ半導体であるSiC素子を用いた場合には、250℃程度の高温動作も想定される。このため、パワーモジュールでは低温及び高温の過酷な熱サイクルが繰り返されることが想定される。パワーモジュールに使用される回路基板では、配線と基板との間の熱膨張率の差が大きいため、低温及び高温の過酷な熱サイクルが繰り返されると、熱応力により回路基板にクラックが発生するおそれがある。特許文献1に記載のメタルベース板は、そのような熱応力に耐えることができる強度を有しているものの、パワーモジュールのさらなる高性能化に伴い、低温及び高温の熱サイクルにおいて、さらにクラックが発生しにくい回路基板が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、高温及び低温の熱サイクルに晒されてもクラックが発生しにくい回路基板及びその回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を進めたところ、金属パターンの端部をセラミックス-樹脂複合材層で被覆することにより、熱サイクル試験によるクラックの発生を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、以下を要旨とする。
[1]第1のセラミックス及び第1の樹脂を含む第1のセラミックス-樹脂複合材層と、前記第1のセラミックス-樹脂複合材層の上に設けられた金属パターンと、第2のセラミックス及び第2の樹脂を含み、前記第1のセラミックス-樹脂複合材層の上に設けられた第2のセラミックス-樹脂複合材層とを含む回路基板であって、前記第2のセラミックス-樹脂複合材層は、前記金属パターンの側面における前記第1のセラミックス-樹脂複合材層側の端部を少なくとも被覆する回路基板。
[2]前記第2のセラミックス-樹脂複合材層は、前記第1のセラミックス-樹脂複合材層の上に積層されたセラミックス-樹脂複合材層である上記[1]に記載の回路基板。
[3]前記第2のセラミックス-樹脂複合材層は、前記金属パターンの側面の全部を被覆する上記[1]又は[2]に記載の回路基板。
[4]前記第1のセラミックス及び前記第2のセラミックスのうちの少なくとも一方のセラミックスが多孔質セラミックスである上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の回路基板。
[5]前記第1のセラミックス及び前記第2のセラミックスのうちの少なくとも一方のセラミックスがフィラーである上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の回路基板。
[6]前記第1のセラミックス及び前記第2のセラミックスは、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のセラミックスを含む上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の回路基板。
[7]前記第1の樹脂及び前記第2の樹脂が熱硬化性樹脂である上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の回路基板。
[8]前記金属パターンが金属箔を切断加工して得られた金属箔切断加工品である上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の回路基板。
[9]前記切断加工がせん断加工であり、前記金属パターンにおける前記第1のセラミックス-樹脂複合材層側の面が、前記金属パターンにおける切断面にダレが生じた側の面である上記[8]に記載の回路基板。
[10]前記第1のセラミックス-樹脂複合材層の前記金属パターン側の面とは反対側の面に設けられたメタルベース板をさらに含む上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の回路基板。
[11]第1のセラミックスと第1の樹脂組成物の半硬化物とを含む第1の半硬化物複合体シートの上に、金属パターンを形成する金属パターン形成工程、及び前記金属パターンの少なくとも一部を加圧する加圧工程を含む回路基板の製造方法。
[12]第2のセラミックスと第2の樹脂組成物の半硬化物とを含む第2の半硬化物複合体シートを前記第1の半硬化物複合体シートの上に配置する第2の半硬化物複合体シート配置工程をさらに含み、前記第2の半硬化物複合体シートは前記金属パターンに嵌合する開口部を有し、前記加圧工程は、前記第1の半硬化物複合体シートの上に形成した前記金属パターンの少なくとも一部とともに、前記第1の半硬化物複合体シートの上に配置した前記第2の半硬化物複合体シートを加圧し、前記第2の半硬化物複合体シート配置工程は、前記第1の半硬化物複合体シートの上に形成した前記金属パターンに、前記第2の半硬化物複合体シートの前記開口部を嵌合して、前記第2の半硬化物複合体シートを前記第1の半硬化物複合体シートの上に配置するか、又は前記金属パターン形成工程は、前記第1の半硬化物複合体シートの上に配置した前記第2の半硬化物複合シートの開口部に嵌合する金属パターンを前記第1の半硬化物複合体シートの上に形成する上記[11]に記載の回路基板の製造方法。
[13]前記加圧工程で加圧される部分の前記金属パターンの厚さが前記第2の半硬化物複合体シートの厚さに略等しい上記[12]に記載の回路基板の製造方法。
[14]前記第1のセラミックス及び前記第2のセラミックスのうちの少なくとも一方のセラミックスが多孔質セラミックスである上記[11]~[13]のいずれか1つに記載の回路基板の製造方法。
[15]前記第1のセラミックス及び前記第2のセラミックスのうちの少なくとも一方のセラミックスがフィラーである上記[11]~[13]のいずれか1つに記載の回路基板の製造方法。
[16]前記第1のセラミックス及び前記第2のセラミックスは、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、及び窒化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種のセラミックスを含む上記[11]~[15]のいずれか1つに記載の回路基板の製造方法。
[17]前記金属パターンが金属箔を切断加工して得られた金属箔切断加工品である上記[11]~[16]のいずれか1つに記載の回路基板の製造方法。
[18]前記切断加工がせん断加工であり、前記金属パターン形成工程で前記第1の半硬化物複合体シートの上に形成した前記金属パターンにおける前記第1の半硬化物複合体シート側の面が、前記金属パターンにおける切断面にダレが生じた側の面である上記[17]に記載の回路基板の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高温及び低温の熱サイクルに晒されてもクラックが発生しにくい回路基板及びその回路基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1(a)は、本発明の一実施形態の回路基板の斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)のA-A断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態の回路基板の分解図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態の回路基板の変形例の断面図である
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態の回路基板の変形例の断面図である
【
図5】
図5は、本発明の一実施形態の回路基板の変形例の断面図である
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態の回路基板の変形例の断面図である
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態の回路基板の変形例の分解図である
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態の回路基板の変形例の斜視図である
【
図9】
図9(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の回路基板の製造方法を説明するための図である。
【
図10】
図10(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の回路基板の製造方法の変形例を説明するための図である。
【
図11】
図11(a)~(c)は、本発明の一実施形態の回路基板の製造方法の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[回路基板]
図を参照して、本発明の一実施形態の回路基板を説明する。
図1(a)は、本発明の一実施形態の回路基板の斜視図であり、
図1(b)は
図1(a)のA-A断面図である。
図2は、本発明の一実施形態の回路基板の分解図である。
【0010】
本発明の一実施形態の回路基板1は、第1のセラミックス及び第1の樹脂を含む第1のセラミックス-樹脂複合材層10と、第1のセラミックス-樹脂複合材層10の上に設けられた金属パターン20と、第2のセラミックス及び第2の樹脂を含み、第1のセラミックス-樹脂複合材層10の上に設けられた第2のセラミックス-樹脂複合材層30とを含み、第2のセラミックス-樹脂複合材層30は、金属パターン20の側面21における第1のセラミックス-樹脂複合材層側の端部211を少なくとも被覆する。また、本発明の一実施形態の回路基板1は、第1のセラミックス-樹脂複合材層10の金属パターン側の面11とは反対側の面12に設けられたメタルベース板40をさらに含む。なお、金属パターン20の側面21における第1のセラミックス-樹脂複合材層側の端部211は、金属パターンの側面の第1のセラミックス-樹脂複合材層側の部分であればよい。
【0011】
(第1のセラミックス-樹脂複合材層)
第1のセラミックス-樹脂複合材層10は、第1のセラミックス及び第1の樹脂を含む。第1のセラミックス-樹脂複合材層10は、セラミックス及び樹脂を含むものであれば特に限定されない。第1のセラミックスは、例えば多孔質セラミックスであり、第1の樹脂は、例えば多孔質セラミックスの空隙を充填する熱硬化性組成物の硬化物である。すなわち、第1のセラミックス-樹脂複合材層10は、例えば、多孔質セラミックスと多孔質セラミックスの空隙を充填する熱硬化性組成物の硬化物とを含む層である。この場合、例えば、含浸法により、多孔質セラミックスの空隙を熱硬化性組成物で充填することができる。
【0012】
<多孔質セラミックス>
多孔質セラミックスは、複数の微細な孔(以下、「細孔」ともいう)が形成された構造を有する。多孔質セラミックスにおける細孔は、少なくとも一部が互いに連結して連続孔を形成していてもよい。
【0013】
多孔質セラミックスは、好ましくは無機化合物の焼結体で形成されている。無機化合物の焼結体は、絶縁物の焼結体であってもよい。絶縁物の焼結体における絶縁物は、好ましくは、炭化物、窒化物、ダイヤモンド、黒鉛等の非酸化物及び酸化アルミニウム、ジルコニア等の酸化物などを含有し、より好ましくは窒化物及び酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の無機化合物を含有する。炭化物は、炭化ケイ素等であってよい。窒化物は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の窒化物であってもよい。これらの無機化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの無機化合物の中で、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムが好ましく、窒化ホウ素がより好ましい。多孔質セラミックスは、好ましくは窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種の無機化合物を含有する絶縁体の焼結体で形成されてよく、より好ましくは窒化ホウ素を含有する絶縁物の焼結体で形成されていてよく、さらに好ましくは、窒化ホウ素焼結体で形成されてよい。多孔質セラミックスが窒化ホウ素焼結体で形成されている場合、窒化ホウ素焼結体は、窒化ホウ素の一次粒子同士が焼結されてなるものであってよい。窒化ホウ素は、アモルファス状の窒化ホウ素及び六方晶状の窒化ホウ素のいずれも用いることができる。また、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ砂などの含ホウ素化合物及び尿素、メラミンなどの含窒素化合物の混合物を焼成したり、六方晶炭窒化ホウ素(h-B4CN4)を焼成したりすることによっても窒化ホウ素焼結体を得ることができる。
【0014】
多孔質セラミックスを形成する無機化合物の熱伝導率は、例えば、30W/(m・K)以上、50W/(m・K)以上、又は60W/(m・K)以上であってよい。多孔質セラミックスが熱伝導性に優れる無機化合物で形成されていると、得られる半硬化物複合体シートの熱抵抗を低下させることができる。無機化合物の熱伝導率は、無機化合物を長さ10mm×幅10mm×厚さ2mmに形成した試料について、レーザーフラッシュ法により測定される。なお、熱伝導率の上限は特に限定されないが、例えば200W/(m・K)以下であってよく、100W/(m・K)以下であってよい。
【0015】
多孔質セラミックス中の細孔のメディアン孔径は、例えば0.5μm以上であってよく、細孔内に熱硬化性組成物を好適に充填できる観点から、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.8μm以上、さらに好ましくは1μm以上である。細孔のメディアン孔径は、半硬化物複合体シートの絶縁性が向上する観点から、好ましくは、4μm以下、3μm以下、2.5μm以下、2μm以下、又は1.5μm以下である。
【0016】
多孔質セラミックス中の細孔のメディアン孔径は、水銀ポロシメーターを用いて測定される細孔径分布(横軸:細孔径、縦軸:累積細孔容積)において、累積細孔容積が全細孔容積の50%に達する細孔径として定義される。水銀ポロシメーターとしては、島津製作所社製の水銀ポロシメーターを用いることができ、0.03気圧から4000気圧まで圧力を増やしながら加圧して測定する。
【0017】
多孔質セラミックスに占める細孔の割合(気孔率)は、多孔質体の全体積を基準として、熱硬化性組成物の充填による半硬化物複合体の強度向上が好適に図られる観点から、好ましくは10体積%以上、20体積%以上、又は30体積%以上であり、半硬化物複合体の絶縁性及び熱伝導率を向上させる観点から、好ましくは70体積%以下、より好ましくは60体積%以下、さらに好ましくは50体積%以下である。当該割合(気孔率)は、多孔質セラミックスの見掛け体積及び質量から求められるかさ密度D1(g/cm3)と多孔質セラミックスを構成する材料の理論密度D2(例えば窒化ホウ素の場合は2.28g/cm3)とから、下記式:
気孔率(体積%)=[1-(D1/D2)]×100
に従って算出される。
【0018】
第1のセラミックス-樹脂複合材層10中の多孔質セラミックスの割合は、第1のセラミックス-樹脂複合材層10の絶縁性及び熱伝導率を向上させる観点から、好ましくは30体積%以上、より好ましくは40体積%以上、さらに好ましくは50体積%以上である。第1のセラミックス-樹脂複合材層10中の多孔質セラミックスの割合は、例えば、90体積%以下、80体積%以下、70体積%以下、又は60体積%以下であってよい。
【0019】
多孔質セラミックスは原料の焼結等によって作製してもよいし、市販品を用いてもよい。多孔質セラミックスが無機化合物の焼結体である場合には、無機化合物を含む粉末を焼結させることにより、多孔質セラミックスを得ることができる。
【0020】
無機化合物の焼結体は、無機化合物の粉末を含むスラリーを噴霧乾燥機等で球状化処理し、さらに成形した後に焼結し、多孔質体である焼結体を調製してもよい。成形には、金型プレス成形法を用いてもよく、冷間等方加圧(cold isostatic pressing:CIP)法を用いてもよい。
【0021】
焼結の際には、焼結助剤を用いてもよい。焼結助剤は、例えば、酸化イットリウム等の希土類元素の酸化物、酸化カルシウム及び酸化マグネシウム等のアルカリ土類元素の酸化物、炭酸リチウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、酸化アルミニウム、並びにホウ酸等であってよい。焼結助剤を配合する場合は、焼結助剤の添加量は、例えば、無機化合物及び焼結助剤の合計100質量部に対して、0.01質量部以上、又は0.1質量部以上であってよい。焼結助剤の添加量は、無機化合物及び焼結助剤の合計100質量部に対して、20質量部以下、15質量部以下、又は10質量部以下であってよい。焼結助剤の添加量を上記範囲内とすることで、多孔質セラッミクスのメディアン孔径を上述の範囲に調整することが容易となる。
【0022】
無機化合物の焼結温度は、例えば、1600℃以上又は1700℃以上であってよい。窒化物の焼結温度は、例えば、2200℃以下、又は2000℃以下であってよい。無機化合物の焼結時間は、例えば、1時間以上であってよく、30時間以下であってよい。焼結時の雰囲気は、例えば、窒素、ヘリウム、及びアルゴン等の不活性ガス雰囲気下であってよい。
【0023】
焼結には、例えば、バッチ式炉及び連続式炉等を用いることができる。バッチ式炉としては、例えば、マッフル炉、管状炉、及び雰囲気炉等を挙げることができる。連続式炉としては、例えば、ロータリーキルン、スクリューコンベア炉、トンネル炉、ベルト炉、プッシャー炉、及び琴形連続炉等を挙げることができる。
【0024】
<熱硬化性組成物>
熱硬化性組成物は、熱硬化性を有する化合物を含む組成物である。熱硬化性を有する化合物には、例えば、フェノール化合物、ユリア化合物、メラミン化合物、不飽和ポリエステル化合物、エポキシ化合物、シアネート化合物、ポリウレタン化合物、ジアリルフタレート化合物、シリコーン化合物等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの化合物の中でエポキシ化合物及びシアネート化合物が好ましく、熱硬化性組成物はエポキシ化合物及びシアネート化合物の両方を含むことが好ましい。
【0025】
エポキシ化合物は、半硬化物として所望の粘度を有する化合物、又は多孔質セラミックスに含浸させる際に含浸に適する粘度を有する化合物であれば適用できる。エポキシ化合物としては、1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等が挙げられる。このうち、1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレンは、例えば、HP-4032D、(DIC株式会社製、商品名)として商業的に入手可能である。その他、エポキシ化合物の市販品として、EP-4000L、EP4088L、EP3950(以上、株式会社ADEKA製、商品名)、EXA-850CRP(DIC株式会社、商品名)、jER807、jER152、YX8000、YX8800(以上、三菱ケミカル株式会社製、商品名)が用いられる。エポキシ化合物としては、ビニル基を有する化合物も使用できる。ビニル基を有するエポキシ化合物としては、例えばTEPIC-FL、TEPIC-VL(以上、日産化学株式会社製、商品名)、MA-DGIC、DA-MGIC(以上、四国化成工業株式会社製、商品名)等が商業的に入手可能である。
【0026】
エポキシ化合物の含有量は、熱硬化性組成物全量基準で、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。
【0027】
シアネート化合物としては、ジメチルメチレンビス(1,4-フェニレン)ビスシアナート、ビス(4-シアネートフェニル)メタン等が挙げられる。ジメチルメチレンビス(1,4-フェニレン)ビスシアナートは、例えば、TA-CN(商品名、三菱ガス化学株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0028】
シアネート化合物の含有量は、熱硬化性組成物全量基準で、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、好ましくは51質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下である。
【0029】
回路基板を製造するとき、熱硬化性組成物を所望の粘度の半硬化状態(詳細は後述)で保持することから、熱硬化性組成物に含まれるシアネート化合物のシアナト基に対する、エポキシ化合物のエポキシ基の当量比(エポキシ基当量/シアナト基当量)が、1以上である。当該当量比は、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは2.5以上であり、また、熱硬化性組成を含浸させやすくする観点、及び熱硬化性組成物の硬化物の耐熱性を優れたものとする観点から、好ましくは、6以下、5.5以下、5以下、4.5以下、4以下、3.5以下、又は3以下である。
【0030】
熱硬化性組成物は、エポキシ化合物及びシアネート化合物を除く、熱硬化性を有する他の化合物をさらに含有してもよい。
【0031】
熱硬化性組成物は、回路基板を製造するとき所望の粘度の半硬化状態をより一層保持しやすくする観点から、エポキシ化合物及びシアネート化合物とは別に硬化剤をさらに含有してもよい。一実施形態において、熱硬化性組成物は、エポキシ化合物の硬化剤を含有する。エポキシ化合物の硬化剤は、エポキシ化合物と架橋構造を形成する化合物である。
【0032】
エポキシ化合物の硬化剤は、好ましくは、ベンゾオキサジン化合物、エステル化合物、及びフェノール化合物からなる群より選択される少なくとも一種を含有する。
【0033】
ベンゾオキサジン化合物としては、ビスフェノールF型ベンゾオキサジン化合物等が挙げられる。ビスフェノールF型ベンゾオキサジン化合物は、例えば、F-a型ベンゾオキサジン(商品名、四国化成工業株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0034】
エステル化合物としては、フタル酸ジフェニル、フタル酸ベンジル2-エチルヘキシル等が挙げられる。エステル化合物は、活性エステル化合物であってもよい。活性エステル化合物とは、構造中にエステル結合を1つ以上有し、かつ、エステル結合の両側に芳香族環が結合している化合物をいう。
【0035】
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、トリフェノールメタン型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(フェニレン骨格、ビフェニレン骨格等を有するもの)、ナフトールアラルキル樹脂、アリルフェノール樹脂等が挙げられる。これらは、単独で用いられてよく、二種以上を混合して用いられてもよい。フェノール化合物は、例えば、TD2131、VH4150(商品名、DIC株式会社製)、MEHC-7851M、MEHC-7500、MEH8005、MEH8000H(商品名、明和化成株式会社製)として商業的に入手可能である。
【0036】
熱硬化性組成物がエポキシ化合物の硬化剤を含有する場合、硬化剤の含有量は、熱硬化性組成物全量基準で、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。
【0037】
熱硬化性組成物は、上述した化合物以外に、硬化促進剤をさらに含有してもよい。硬化促進剤は、硬化反応の触媒として機能する成分(触媒型硬化剤)が含まれる。熱硬化性組成物が硬化促進剤を含有することにより、後述する、エポキシ化合物とシアネート化合物との反応、エポキシ化合物の自己重合反応、及び/又はエポキシ化合物とエポキシ化合物の硬化剤との反応を進めやすくすることができ、半硬化物を所望の粘度の半硬化状態で維持しやすくすることもできる。このような成分としては、有機金属塩、リン化合物、イミダゾール誘導体、アミン化合物、又はカチオン重合開始剤等が挙げられる。硬化剤は、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられてよい。
【0038】
有機金属塩としては、ビス(2,4-ペンタンジオナト)亜鉛(II)、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、アセチルアセトン鉄、オクチル酸ニッケル、オクチル酸マンガン等の有機金属塩類などが挙げられる。
【0039】
リン化合物としては、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-クロロフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン、テトラフェニルホスホニウムジシアナミド、テトラフェニルホスホニウムテトラ(4-メチルフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0040】
イミダゾール誘導体としては、1-(1-シアノメチル)-2-エチル-4-メチル-1H-イミダゾール、2-エチルー4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4,5-トリフェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0041】
アミン化合物としては、ジシアンジアミド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリ-n-オクチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、ベンジルジメチルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、4-ジメチルアミノピリジン等が挙げられる。
【0042】
カチオン重合開始剤としては、ベンジルスルホニウム塩、ベンジルアンモニウム塩、ベンジルピリジニウム塩、ベンジルホスホニウム塩、ヒドラジニウム塩、カルボン酸エステル化合物、スルホン酸エステル化合物、アミンイミド、五塩化アンチモン-塩化アセチル錯体、ジアリールヨードニウム塩-ジベンジルオキシ銅等があげられる。
【0043】
上述した硬化促進剤の含有量は、エポキシ化合物、シアネート化合物、及び場合によりエポキシ化合物の硬化剤の合計100質量部に対して、0.001質量部以上、0.01質量部以上、又は0.05質量部以上であってよく、1質量部以下、0.8質量部以下、0.5質量部以下、0.3質量部以下、又は0.1質量部以下であってよい。この含有量の範囲とすることにより、硬化性樹脂組成物を所望の粘度の半硬化状態で維持しやすくすることができる。
【0044】
<熱硬化性組成物の多孔質セラミックスの空隙への充填>
例えば、以下の含浸工程により、多孔質セラミックスの空隙を熱硬化性組成物で充填することができる。
先ず、含浸装置内に熱硬化性組成物を含む溶液を用意し、当該溶液に多孔質セラミックスを浸漬させることや大気雰囲気下で多孔質セラミックスに熱硬化性組成物を含む溶液を塗工することで、多孔質セラミックスの細孔に熱硬化性組成物を含浸させる。
【0045】
含浸工程は、大気雰囲気下や減圧条件下及び加圧条件下のいずれで行ってもよく、減圧条件下での含浸と、加圧条件下での含浸とを組み合わせて行ってもよい。減圧条件下で含浸工程を実施する場合における含浸装置内の圧力は、例えば、1000Pa以下、500Pa以下、100Pa以下、50Pa以下、又は20Pa以下であってよい。加圧条件下で含浸工程を実施する場合における含浸装置内の圧力は、例えば、1MPa以上、3MPa以上、10MPa以上、又は30MPa以上であってよい。
【0046】
多孔質セラミックスへ熱硬化性組成物を含浸させる際には、熱硬化性組成物を含む溶液を加熱してもよい。溶液を加熱することによって、溶液の粘度が調整され、熱硬化性組成物の多孔質セラミックスへの含浸が促進される。
【0047】
含浸工程では、熱硬化性組成物を含む溶液に多孔質セラミックスを浸漬または塗工した状態で所定の時間だけ保持する。当該所定の時間(浸漬時間)は、特に制限されず、例えば、5分以上、30分以上、1時間以上、5時間以上、10時間以上、100時間以上、又は150時間以上であってよい。上限は特に限定されないが、250時間以下であってよく、200時間以下であってよい。
【0048】
<熱硬化性組成物の硬化>
熱硬化性組成物の硬化については、後述の回路基板の製造方法で説明する。
【0049】
(金属パターン)
第1のセラミックス-樹脂複合材層10の上に設けられた金属パターン20は、特に限定されないが、例えば、金属箔を切断加工して得られた金属箔切断加工品である。金属パターン20を構成する材料には、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、スズ、金、銀、モリブデン、チタニウム、ステンレスなどが挙げられる。これらの金属は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの金属の中で、電気伝導率の観点及びコストの観点から、銅及びアルミニウムが好ましく、銅がより好ましい。
【0050】
上述したように、金属パターン20は、例えば、金属箔を切断加工して得られた金属箔切断加工品である。金属パターン20を得るための金属箔の切断加工法は、金属箔を切断することができれば、特に限定されない。金属パターン20を得るための金属箔の切断加工法には、例えば、切削加工法、砥粒加工法、ウォータージェット加工法、溶断加工法、レーザー加工法、電子ビーム加工法、放電加工法などの除去切断加工法、せん断加工法、ナイフ刃切断加工法などの破壊切断加工法などが挙げられる。これらの切断加工法の中で、切断効率の観点から破壊切断加工法が好ましく、切断輪郭及び切断面性状の制御の観点から、せん断加工法がより好ましい。
【0051】
回路基板1の表面に形成される金属パターン20のジュール熱発生を抑制する観点から、金属パターン20の厚さは、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.5mm以上であり、さらに好ましくは1mm以上である。また、パワーモジュールの小型化の観点から、金属パターン20の厚さは、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは4mm以下であり、さらに好ましくは3mm以下である。
【0052】
(第2のセラミックス-樹脂複合材層)
第2のセラミックス-樹脂複合材層30は、第2のセラミックス及び第2の樹脂を含む。第2のセラミックス-樹脂複合材層30は、セラミックス及び樹脂を含むものであれば特に限定されない。例えば、上述の第1のセラミックス-樹脂複合材層の項目で説明した、第1のセラミックスとして用いた多孔質セラミックを第2のセラミックスとして使用することができる。また、上述の第1のセラミックス-樹脂複合材層の項目で説明した、第1の樹脂として用いた熱硬化性組成物の硬化物を第2の樹脂として使用することができる。なお、第2のセラミックスは第1のセラミックスと同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、第2の樹脂は第1の樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。しかし、第1のセラミックス-樹脂複合材層及び第2のセラミックス-樹脂複合材層の間の接合の観点から、第2の樹脂は第1の樹脂と同じものであることが好ましい。
【0053】
第2のセラミックス-樹脂複合材層30は、第1のセラミックス-樹脂複合材層10の上に積層されたセラミックス-樹脂複合材層である。第2のセラミックス-樹脂複合材層30は、
図2に示すように、金属パターン20と嵌合する開口部31を有する。そして、第2のセラミックス-樹脂複合材層30は、開口部31が金属パターン20と嵌合して第1のセラミックス-樹脂複合材層10の上に配置されることにより(
図1(a)参照)、金属パターン20の側面21における第1のセラミックス-樹脂複合材層側の端部211を被覆する。これにより、高温及び低温の熱サイクルに晒されても回路基板にクラックが発生することを抑制することができる。
【0054】
第2のセラミックス-樹脂複合材層30の開口部31は、通常の切断加工法により形成することができる。切断加工法には、例えば、切削加工法、砥粒加工法、ウォータージェット加工法、溶断加工法、レーザー加工法、電子ビーム加工法、放電加工法などの除去切断加工法、せん断加工法、ナイフ刃切断加工法などの破壊切断加工法などが挙げられる。第2のセラミックス-樹脂複合材層30の原材料であるセラミックス-樹脂複合材を半硬化の状態で加工するので、これらの切断加工法の中で、除去切断加工法が好ましく、レーザー加工法がより好ましい。
【0055】
図1(b)に示すように、第2のセラミックス-樹脂複合材層30の厚さは金属パターン20の厚さと同じであることが好ましい。これにより、第2のセラミックス-樹脂複合材層30は、金属パターン20の側面21の全部を被覆することができる。そして、金属パターン20に伝導した熱を金属パターン20の主面のみならず、側面21からも効率的の放熱することができる。また、金属パターン20間の耐電圧性を改善することができ、金属パターン20間の距離を短くすることができる。
【0056】
<メタルベース板>
第1のセラミックス-樹脂複合材層10の金属パターン側の面とは反対側の面にメタルベース板40を設けることにより、回路基板1の強度及び放熱性が改善される。メタルベース板40を構成する材料には、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、スズ、金、銀、モリブデン、チタニウム、ステンレスなどが挙げられる。これらの金属は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの金属の中で、熱伝導率の観点及びコストの観点から、銅及びアルミニウムが好ましい。またメタルベース板は、板状の形状に限定されず、フィンまたはピン状に加工されていても良い。
【0057】
回路基板1の強度改善の観点から、メタルベース板40の厚さは、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは1mm以上であり、さらに好ましくは3mm以上である。また、パワーモジュールの小型化の観点から、メタルベース板40の厚さは、好ましくは50mm以下であり、より好ましくは30mm以下であり、さらに好ましくは15mm以下である。
【0058】
(回路基板の変形例)
本発明の一実施形態の回路基板は、以下のように変形することができる。
【0059】
<変形例1>
本発明の一実施形態の回路基板における第1のセラミックス-樹脂複合材層の第1のセラミックスは多孔質セラミックスであった。しかし、第1のセラミックス-樹脂複合材層がセラミックス及び樹脂の複合材で構成される限り、第1のセラミックスは多孔質セラミックスに限定されない。例えば、第1のセラミックスはフィラーであってもよい。
【0060】
第1のセラミックスとして使用されるフィラーには、例えば、無定形粒状フィラー、球状フィラー、針状フィラー、板状フィラー等が挙げられる。これらのフィラーは1種を単独で、または、2種以上を組み合わせて使用することができる。第1のセラミックス-樹脂複合材層における第1のセラミックスの充填率を高くできるという観点から、これらのフィラーの中で球状フィラーが好ましい。
【0061】
第1のセラミックスとしてのフィラーを構成するセラミックスには、例えば、炭化物、窒化物、ダイヤモンド、黒鉛等の非酸化物及び酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の酸化物などが挙げられる。炭化物は、炭化ケイ素等であってよい。窒化物は、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種の窒化物であってもよい。これらのセラミックスは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのセラミックスの中で、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及び酸化アルミニウムが好ましく、窒化ホウ素がより好ましく、六方晶窒化ホウ素一次粒子が凝集してなる凝集窒化ホウ素粒子がさらに好ましい。
【0062】
第1のセラミックスとしてのフィラーの平均粒子径は、好ましくは10~100μmであり、より好ましくは15~90μmであり、さらに好ましくは20~80μmである。なお、フィラーの平均粒子径の測定にはベックマンコールター製レーザー回折散乱法粒度分布測定装置、(LS-13 320)を用いることができる。例えば、測定処理の前にホモジナイザーをかけずに測定したフィラーの平均粒子径を、フィラーの平均粒子径として採用することができる。また、得られた平均粒子径は体積統計値による平均粒子径である。また、第1のセラミックス-樹脂複合材層100体積%中のフィラーの含有量は、30~85体積%が好ましく、40~80体積%がより好ましい。
【0063】
<変形例2>
本発明の一実施形態の回路基板における第2のセラミックス-樹脂複合材層の第2のセラミックスは多孔質セラミックスであった。しかし、第2のセラミックス-樹脂複合材層がセラミックス及び樹脂の複合材で構成される限り、第2のセラミックスは多孔質セラミックスに限定されない。例えば、第2のセラミックスはフィラーであってもよい。この場合、第2のセラミックスとしてのフィラーは、上述の第1のセラミックスとして好適なフィラーと同様のものを使用することができる。なお、第2のセラミックスとしてのフィラーは、第1のセラミックスとしてのフィラーと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0064】
第2のセラミックスとしてのフィラーの平均粒子径は、上述の第1のセラミックスとして好適なフィラーの平均粒子径と同様である、なお、第2のセラミックスとしてのフィラーの平均粒径は、第1のセラミックスとしてのフィラーの平均粒子径と同じであってもよいし、異なっていてもよい。第2のセラミックス-樹脂複合材層における第2のセラミックスとしてのフィラーの含有量は、上述の第1のセラミックス-樹脂複合材層における第1のセラミックスとしてのフィラーの含有量と同様である、なお、第2のセラミックス-樹脂複合材層における第2のセラミックスとしてのフィラーの含有量は、第1のセラミックス-樹脂複合材層における第1のセラミックスとしてのフィラーの含有量と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0065】
第1のセラミックス及び第2のセラミックスの両方がフィラーであってもよいし、第1のセラミックス及び第2のセラミックスの一方のセラミックスがフィラーであり、他方のセラミックスが多孔質セラミックスであってもよいし、第1のセラミックス及び第2のセラミックスの両方が多孔質セラミックスであってもよい。また、第1のセラミックス及び第2のセラミックスの両方がフィラーである場合、第1のセラミックスとしてのフィラーは第2のセラミックスとしてのフィラーと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
<変形例3>
本発明の一実施形態の回路基板における第2のセラミックス-樹脂複合材層は、第1のセラミックス-樹脂複合材層の上に積層されたセラミックス-樹脂複合材層であった。しかし、第2のセラミックス-樹脂複合材層は、金属パターンの側面における第1のセラミックス-樹脂複合材層側の端部を少なくとも被覆する限り、第1のセラミックス-樹脂複合材層の上に積層されたセラミックス-樹脂複合材層に限定されない。例えば、
図3に示す回路基板1Aのように、第2のセラミックス-樹脂複合材層30Aは、ディスペンサーを使用して第2のセラミックスを含む樹脂組成物を金属パターン20の側面21の端部211に塗布することにより形成したものであってもよい。また、
図4に示す回路基板1Bのように、第2のセラミックス-樹脂複合材層30Bは、セラミックス-樹脂複合材のシートに金属パターン20をめり込ませることにより形成したものであってもよい。この場合、
図4に示すように、セラミックス-樹脂複合材のシートの中で、金属パターン20がめり込んでいる深さまでの領域が第2のセラミックス-樹脂複合材層30Bとなり、それよりも深い領域が第1のセラミックス-樹脂複合材層10Bとなる。セラミックス-樹脂複合材のシートに金属パターン20をめり込ませる場合、金属パターン20をめり込ませる好ましい深さは、金属パターンの厚さにより変わる。この場合、金属パターンの厚さ(μm)に対する金属パターン20をめり込ませる深さ(μm)の比(めり込み深さ(μm)/金属パターンの厚さ(μm))は、好ましくは0.01~1であり、より好ましくは0.1~1である。
【0067】
<変形例4>
本発明の一実施形態の回路基板における第2のセラミックス-樹脂複合材層は、金属パターンの側面の全面を被覆していた。しかし、第2のセラミックス-樹脂複合材層は、金属パターンの側面における第1のセラミックス-樹脂複合材層側の端部を少なくとも被覆していれば、金属パターンの側面の全面を被覆しなくてもよい。例えば、
図3に示す回路基板1A及び
図4に示す回路基板1Bのように、第2のセラミックス-樹脂複合材層30A、30Bは、金属パターン20の側面21の一部を被覆してもよい。
【0068】
<変形例5>
金属パターンがせん断加工して得られたものである場合、
図5に示す回路基板1Cのように、金属パターン20Cにおける第1のセラミックス-樹脂複合材層側の面22が、金属パターン20Cにおける切断面にダレ212が生じた側の面22であることが好ましい。これにより、第1のセラミックス-樹脂複合材層10の金属パターン20Cの端近傍における、金属パターン20C及び第1のセラミックス-樹脂複合材層10の熱膨張率の差による応力の集中を緩和することができ、第1のセラミックス-樹脂複合材層10におけるクラックの発生をさらに抑制することができる。また、セラミックス-樹脂複合材のシートに金属パターン20をめり込ませることが容易になる。
【0069】
<変形例6>
本発明の一実施形態の回路基板における金属パターンは、金属箔を切断加工して得られた金属箔切断加工品であった。しかし、本発明の回路基板における金属パターンは、金属箔を切断加工して得られた金属箔切断加工品に限定されず、公知の方法を適用して得ることができる。例えば、スクリーン印刷法又は写真現像法により、銅箔上にエッチングレジストを形成し、銅箔の表面の所定位置をマスクする。その状態で、銅箔の一部を、塩化第二鉄エッチング液、塩化第二銅エッチング液、過酸化水素/硫酸エッチング液、アルカリエッチング液等で腐食溶解した後、エッチングレジストを剥離する。これにより、第1のセラミックス-樹脂複合材層の上に金属パターンが形成される。例えば、
図6に示す回路基板1Dのように、金属パターン20Dは、めっきをエッチングすることにより形成されたものであってもよい。
【0070】
<変形例7>
本発明の一実施形態の回路基板における第2のセラミックス-樹脂複合材層は1つの層から構成されていた。しかし、第2のセラミックス-樹脂複合材層は複数の単位層から構成されてもよい。例えば、
図7に示す回路基板1Eに示すように、第2のセラミックス-樹脂複合材層30Eが5層の単位層30e1~30e5から構成されてもよい。
【0071】
本発明の一実施形態の回路基板における金属パターンはメタルベース板を含んでいた。しかし、第1のセラミックス-樹脂複合材層が十分な強度を有する場合、
図8に示すように、回路基板1Fはメタルベース板を含まなくてもよい。
【0072】
本発明の一実施形態の回路基板は、本発明の回路基板の一例に過ぎないので、本発明の一実施形態の回路基板は本発明の回路基板を限定しない。
【0073】
[回路基板の製造方法]
図9を参照して、本発明の一実施形態の回路基板の製造方法を説明する。
図9は、本発明の一実施形態の回路基板の製造方法を説明するための図である。
【0074】
本発明の一実施形態の回路基板の製造方法は、第1のセラミックスと第1の樹脂組成物の半硬化物とを含む第1の半硬化物複合体シート50の上に、金属パターン20を形成する工程(A)、第1の半硬化物複合体シート50の上に形成した金属パターン20に、第2の半硬化物複合体シート60の開口部を嵌合して、第2の半硬化物複合体シート60を第1の半硬化物複合体シート50の上に配置する工程(B)、並びに金属パターン20及び第2の半硬化物複合体シート60を加圧する工程(C)を含む。
【0075】
(工程(A))
工程(A)では、
図9(a)に示すように、第1のセラミックスと第1の樹脂組成物の半硬化物とを含む第1の半硬化物複合体シート50の上に、金属パターン20を形成する。
【0076】
<第1の半硬化物複合シート>
第1の半硬化物複合シート50は、第1のセラミックスと第1の樹脂組成物の半硬化物とを含む半硬化物複合体で構成されたシートである。なお、第1のセラミックスは、上述の回路基板の説明で、既に説明しているので、第1のセラミックスの説明は省略する。また、第1の樹脂組成物は、上述の回路基板の説明の中で説明した熱硬化性組成物と同じであるので、第1の樹脂組成物の説明も省略する。なお、以下では、第1の樹脂組成物を熱硬化性組成物とも記載する。
【0077】
工程(A)で使用する半硬化物は、上述した熱硬化性組成物の半硬化物である。熱硬化性組成物の半硬化物(単に「半硬化物」ともいう。)は、熱硬化性組成物の硬化反応が一部進行した状態の硬化物をいう。一実施形態において、半硬化物は、エポキシ化合物とシアネート化合物との反応物(硬化物)と、未硬化のエポキシ化合物とを含有する。半硬化物には、未硬化のシアネート化合物が一部含まれていてもよく、エポキシ化合物の硬化物(例えば、エポキシ化合物が自己重合反応によって硬化した硬化物)が一部含まれていてもよい。
【0078】
半硬化物複合体に半硬化物が含まれていることは、以下の方法で測定される半硬化物複合体の接着強度を測定することにより確認することができる。まず、後述する方法により半硬化物複合体をシート状に成形し、このシートを2枚の銅板間に配置し、200℃及び10MPaの条件下で5分間加熱及び加圧して、さらに200℃及び大気圧の条件下で2時間加熱して積層体を得る。次に、JIS K 6854-1:1999「接着剤-はく離接着強さ試験方法」に従って、90°はく離試験を行い、凝集破壊部分の面積を測定する。その結果、凝集破壊部分の面積が30面積%以上であれば、半硬化物複合体に半硬化物が含まれているということができる。
【0079】
<第1の半硬化物複合シートの製造方法>
次に、第1の半硬化物複合体シートの製造方法を説明する。例えば、第1の半硬化物複合体シートの製造方法は、エポキシ化合物及びシアネート化合物を含有する熱硬化性組成物を第1のセラミックス(多孔質セラミックス)に含浸させる工程(含浸工程)と、熱硬化性組成物を含浸させた多孔質セラミックスを、シアネート化合物が反応する温度T1で加熱する工程(半硬化工程)と、熱硬化性組成物を含浸させた多孔質セラミックスをスライスする工程(シート化工程)とを備える。ただし、多孔質セラミックスをスライスする工程を経ることなく、予めシート化された多孔質セラミックスに熱硬化性組成物を含浸させてもよい。
【0080】
<含浸工程>
含浸工程については、上述の回路基板の説明で、既に説明しているので、含浸工程の説明は省略する。
【0081】
<半硬化工程>
半硬化工程では、熱硬化性組成物が含浸された多孔質セラミックスを、シアネート化合物が反応する温度T1で加熱する。これにより、熱硬化性組成物中に含まれるシアネート化合物が反応して、半硬化物が得られる。このとき、シアネート化合物同士が反応してよく、シアネート化合物とエポキシ化合物の一部とが反応してもよい。一方、熱硬化性組成物においては、上述したように、シアネート化合物のシアナト基に対する、エポキシ化合物のエポキシ基の当量比が1以上である。すなわち、半硬化物においては、エポキシ化合物がエポキシ当量としてシアネート化合物よりも過剰に含まれており、これらのエポキシ化合物が未硬化の状態で残存している。その結果、熱硬化性組成物の半硬化物が得られる。
【0082】
温度T1は、多孔質セラミックスに半硬化物を十分に含浸させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは90℃以上である。温度T1は、時間に対する粘度変化を小さくする観点から、好ましくは180℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。なお、温度T1は、熱硬化性組成物を含浸させた多孔質セラミックスを加熱する際の雰囲気温度を指す。
【0083】
半硬化工程における加熱時間は、1時間以上、3時間以上、又は5時間以上であってよく、12時間以下、10時間以下、又は8時間以下であってよい。
【0084】
上述の第1の半硬化物複合体シートでは、一部の化合物(主にエポキシ化合物)が未硬化で含まれているため、熱硬化性組成物が完全硬化した硬化物よりも被着体への接着性に優れる。また、この第1の半硬化物複合体シートでは、未硬化の化合物が硬化する温度(詳細は後述する)で加熱しない限り、未硬化の状態が長期間保持されるため、被着体への接着性に優れる所望の粘度を容易に保持することができる。これにより、ハンドリング性に優れた第1の半硬化物複合体シートを得ることができる。
【0085】
<シート化工程>
シート化工程では、例えば、ワイヤーソーを使用して、熱硬化性組成物を含浸させた多孔質セラミックスをスライスする。これにより、所望の厚さを有する第1の半硬化物複合体シートを得ることができる。なお、熱硬化性組成物を含浸させる前の多孔質セラミックスをスライスして、シート状の多孔質セラミックスを作製し、シート状の多孔質セラミックスに熱硬化性組成物を含浸することにより、第1の半硬化物複合体シートを得てもよい。また、多孔質セラミックスを作製する段階でシート状に成型、焼結し、シート状の多孔質セラミックスに熱硬化性組成物を含浸することにより、第1の半硬化物複合体シートを得てもよい。
【0086】
<金属パターン>
金属パターンは、上述の回路基板の説明で、既に説明しているので、金属パターンの説明は省略する。金属パターンを第1の半硬化物複合体シート60の上に配置することで、第1の半硬化物複合体シート60の上に、金属パターン20を形成することができる。
【0087】
(工程(B))
工程(B)では、
図9(b)に示すように、第1の半硬化物複合体シート50の上に形成した金属パターン20に、第2の半硬化物複合体シート60の開口部を嵌合して、第2の半硬化物複合体シート60を第1の半硬化物複合体シート50の上に配置する。なお、第2の半硬化物複合体シート60は第2のセラミックスと第2の樹脂組成物の半硬化物とを含む。そして、第2の半硬化物複合体シート60は金属パターン20に嵌合する開口部を有する。
【0088】
<第2の半硬化物複合体シート>
第2の半硬化物複合シート60は、第2のセラミックスと第2の樹脂組成物の半硬化物とを含む。なお、第2のセラミックスは、上述の回路基板の説明で、既に説明しているので、第2のセラミックスの説明は省略する。また、第2の樹脂組成物は、上述の回路基板の説明の中で説明した熱硬化性組成物と同じであるので、第2の樹脂組成物の説明も省略する。さらに、第2の半硬化物複合シートの製造方法は、上述の第1の半硬化物複合シートの製造方法と同様であるので、第2の樹脂組成物の説明も省略する。また、第2の半硬化物複合体シート60の開口部は、上述の回路基板の説明で説明した第2のセラミックス-樹脂複合材層の開口部と同様であるので、第2の半硬化物複合体シート60の開口部の説明も省略する。
【0089】
(工程(C))
工程(C)では、金属パターン20及び第2の半硬化物複合体シート60を加圧する。
【0090】
工程(C)で加圧される部分の金属パターン20の厚さが第2の半硬化物複合体シート60の厚さに略等しいことが好ましい。具体的には、金属パターン20の厚さ及び第2の半硬化物複合体シートの厚さの間の差の絶対値は、好ましくは0.25mm以下である。金属パターン20の厚さ及び第2の半硬化物複合体シートの厚さの間の差の絶対値が0.25mm以下であると、金属パターン20及び第2の半硬化物複合体シート60を均一に加圧することができる。このような観点から、金属パターン20の厚さ及び第2の半硬化物複合体シート60の厚さの間の差の絶対値は、好ましくは0.25mm以下であり、より好ましくは0.10mm以下であり、さらに好ましくは0mmである。
【0091】
工程(C)における加圧の圧力は、好ましくは3~25MPaであり、より好ましくは5~25MPaであり、加圧時間は、好ましくは3分~3時間であり、より好ましくは5分~1時間である。特に圧力を10~20MPaにすることで接着性が極めて高く、絶縁性も高い回路基板を製造できる。
【0092】
工程(C)では、金属パターン20及び第2の半硬化物複合体シート60を加圧しながら加熱してもよい。また、工程(C)の後に金属パターン20及び第2の半硬化物複合体シート60を加熱してもよい。これらの場合の加熱温度は、好ましくは160~250℃であり、より好ましくは180~200℃である。これにより、第1の半硬化物複合体シート50及び第2の半硬化物複合体シート60をさらに完全に硬化させることができる。
【0093】
(回路基板の製造方法の変形例)
<変形例1>
本発明の一実施形態の回路基板の製造方法は、第1の半硬化物複合体シートの上に金属パターンを形成する工程、第1の半硬化物複合体シートの上に形成した金属パターンに、第2の半硬化物複合体シートの開口部を嵌合して、第2の半硬化物複合体シートを第1の半硬化物複合体シートの上に配置する工程、並びに金属パターン及び第2の半硬化物複合体シートを加圧する工程を含んでいた。しかし、
図4に示す回路基板1Bは、第2の半硬化物複合体シートを第1の半硬化物複合体シートの上に配置する工程がなくても、製造することができる。したがって、本発明の回路基板の製造方法は、第1の半硬化物複合体シートの上に金属パターンを形成する工程、及び金属パターンの少なくとも一部を加圧する工程を含んでいればよい。
【0094】
<変形例2>
本発明の一実施形態の回路基板の製造方法は、第1の半硬化物複合体シートの上に金属パターンを形成する工程、第1の半硬化物複合体シートの上に形成した金属パターンに、第2の半硬化物複合体シートの開口部を嵌合して、第2の半硬化物複合体シートを第1の半硬化物複合体シートの上に配置する工程、並びに金属パターン及び第2の半硬化物複合体シートを加圧する工程を含んでいた。しかし、
図10(a)に示すように、金属パターン形成工程の前に第2の半硬化物複合体シート60を第1の半硬化物複合体シート50の上に配置し、金属パターン形成工程では、
図10(b)に示すように、第1の半硬化物複合体シート50の上に配置した第2の半硬化物複合シート60の開口部に嵌合する金属パターン20を第1の半硬化物複合体シート50の上に形成するようにしてもよい。
【0095】
また、
図11(a)に示すように、金属パターン形成工程の前に単位シート60e1を第1の半硬化物複合体シート50の上に配置し、金属パターン形成工程では、
図11(b)に示すように、第1の半硬化物複合体シート50の上に配置した単位シート60e1の開口部に嵌合する金属パターン20を第1の半硬化物複合体シート50の上に形成し、さらに、
図11(c)に示すように、第1の半硬化物複合体シート50の上に形成した金属パターン20に、単位シート60e2~e5の開口部を嵌合して、単位シート60e2~e5を単位シート60e1の上に配置してもよい。
【0096】
本発明の一実施形態の回路基板の製造方法は、本発明の回路基板の製造方法の一例に過ぎないので、本発明の一実施形態の回路基板の製造方法は本発明の回路基板の製造方法を限定しない。
【実施例0097】
以下、本発明について、実施例により、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
(実施例1)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
(1)窒化ホウ素多孔体の作製
容器に、アモルファス窒化ホウ素粉末(デンカ株式会社製、酸素含有量:1.5%、窒化ホウ素純度97.6%、平均粒径:6.0μm)が40.0質量%、六方晶窒化ホウ素粉末(デンカ株式会社製、酸素含有量:0.3%、窒化ホウ素純度:99.0%、平均粒径:30.0μm)が60.0質量%となるようにそれぞれ測り取り、焼結助剤(ホウ酸、炭酸カルシウム)を加えた後に有機バインダー、水を加え混合後、乾燥造粒し窒化物の混合粉末を調整した。
【0099】
上記混合粉末を金型に充填し、5MPaの圧力でプレス成形し、成形体を得た。次に、冷間等方加圧(CIP)装置(株式会社神戸製鋼所製、商品名:ADW800)を用いて、上記成形体を20~100MPaの圧力をかけて圧縮した。圧縮された成形体を、バッチ式高周波炉(富士電波工業株式会社製、商品名:FTH-300-1H)を用いて2000℃で10時間保持して焼結させることによって、窒化ホウ素多孔体を作製した。なお、焼成は、炉内に窒素を標準状態で流量を10L/分となるように流しながら、炉内を窒素雰囲気下に調整して行った。得られた窒化ホウ素多孔体の細孔のメディアン孔径は3.5μmであった。また、得られた窒化ホウ素多孔体の気孔率は45.0体積%であった。
【0100】
(2)熱硬化性組成物の作製
熱硬化性組成物の作製には、下記の原料を使用した。
エポキシ化合物:商品名「HP-4032D」、DIC株式会社製
シアネート化合物:商品名「TA-CN」、三菱ガス化学株式会社製
ベンゾオキサジン化合物:商品名「F-a型ベンゾオキサジン」、四国化成工業株式会社製
金属系硬化促進剤:ビス(2,4-ペンタンジオナト)亜鉛(II)、東京化成工業株式会社製
【0101】
66質量部のエポキシ化合物、23質量部のシアネート化合物、及び、11質量部のベンゾオキサジン化合物又はエステル化合物を容器に投入した。さらに、エポキシ化合物、シアネート化合物及びベンゾオキサジン化合物の合計100質量部に対して0.01質量部の金属系硬化促進剤を容器に投入した。そして、容器に投入したこれらの原料を、80℃程度に加熱した状態で混合し、熱硬化性組成物を作製した。
【0102】
(3)多孔体の空隙への熱硬化性組成物の充填
窒化ホウ素多孔体に、熱硬化性組成物を以下の方法で含浸させた。まず、真空加温含浸装置(商品名「G-555AT-R」、株式会社協真エンジニアリング製)に、窒化ホウ素多孔体と、容器に入れた上記熱硬化性組成物とを入れた。次に、100℃の脱気温度及び15Paの脱気圧力の条件下で、装置内を10分間脱気した。脱気後、同条件に維持したまま、窒化ホウ素多孔体を上記熱硬化性組成物に40分間浸漬し、熱硬化性組成物を窒化ホウ素多孔体に含浸させた。
【0103】
その後、窒化ホウ素多孔体及び熱硬化性組成物を入れた容器を取出し、加圧加温含浸装置(商品名「HP-4030AA-H45」、株式会社協真エンジニアリング製)に入れ、130℃の含浸温度及び3.5MPaの含浸圧力の条件下で、120分間保持することで、熱硬化性組成物を窒化ホウ素多孔体にさらに含浸させた。その後、熱硬化性組成物を含浸させた窒化ホウ素多孔体を装置から取出し、120℃の加熱温度及び大気圧の条件下で、熱硬化性組成物を含浸させた窒化ホウ素多孔体を所定時間加熱したところ、熱硬化性組成物は半硬化し、空隙が熱硬化性組成物の半硬化物により充填された窒化ホウ素多孔体を作製した。
【0104】
(4)窒化ホウ素多孔体のスライス
ワイヤーソーを用いて、得られた窒化ホウ素多孔体をスライスして、50mm×50mm×厚み0.4mmの第1の半硬化物複合体シートを作製した。
【0105】
<第2の半硬化物複合体シートの作製>
また、第1の半硬化物複合体シートの一部について、レーザー加工機(三菱電機株式会社製、商品名「ML605GTW4-UVF20」)を使用して、
図2に示す開口部を第1の半硬化物複合体シートに形成して、第2の半硬化物複合体シートを作製した。
【0106】
<第1の半硬化物複合体シート及び第2の半硬化物複合体シート以外の部材>
第1の半硬化物複合体シート及び第2の半硬化物複合体シート以外に、回路基板を作製するために以下の部材を用意した。
金属パターン1:銅箔(白銅株式会社製、商品名「無酸素銅切板 JIS H3100 C1020P」、厚さ:2.0mm)をせん断加工(打ち抜き加工)したもの(
図2の金属パターン20参照)。
メタルベース板:銅箔(白銅株式会社製、商品名「無酸素銅切板 JIS H3100 C1020P」、厚さ:2.0mm)を50mm×50mmの大きさに切り出したもの。
それぞれ用意した銅箔は、せん断加工や切り出し前に片面のみを粗化処理(メック株式会社、UT粗化処理)して使用する。
【0107】
<回路基板の作製>
メタルベース板の粗化面側の上に第1の半硬化物複合体シートを配置し、金属パターン1の切断面のダレ側、および粗化側が第1の半硬化物複合体シート側になるように第1の半硬化物複合体シートの上に金属パターン1を配置し、金属パターンを開口部に嵌合させて第1の半硬化物複合体シートの上に5枚の第2の半硬化物複合体シートを配置して積層体を作製した。得られた積層体を180℃の加熱温度で加熱しながら、15MPaの圧力及び1時間の加圧時間で加圧した。その後、積層体を、1MPaの圧力で加圧しながら、150℃の加熱温度で6時間、180℃の加熱温度で4時間、200℃の加熱温度で4時間、及び250℃の加熱温度で4時間、加熱して回路基板を得た。
【0108】
(実施例2)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例1で使用したものと同じ第1の半硬化物複合体シートを使用した。
【0109】
<第2の半硬化物複合体シートの作製>
塊状窒化ホウ素粒子(平均粒子径:40μm)50体積部と、エポキシ樹脂(DIC社製、製品名:HP4032)41.5体積部と、硬化剤(DIC社製、製品名:VH4150)5.1体積部と、2種の硬化促進剤(硬化触媒)(北興化学工業株式会社製、製品名:TPP)0.3体積部及び(四国化成工業株式会社製、製品名:2PHZ-PW)0.5体積部と、カップリング剤(東レ・ダウコーニング株式会社製、製品名:Z6040)1.6体積部と、湿潤分散剤(ビックケミージャパン株式会社製、製品名:DIS-111)0.3体積部と、表面調整剤(ビックケミージャパン社製、製品名:BYK-300)0.4体積部と、これらの各成分の合計100質量部に対して、揮発成分である溶媒(東京化成工業社製、製品名:ジアセトンアルコール)6.5質量部とを、遊星式撹拌機(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR-250」)を用いて、公転速度2000rpm、自転速度800rpmで×2分間)の条件で混練して第1の組成物を得た。
【0110】
次に、常法の条件で、第1の組成物を脱気した。脱気後の第1の組成物を、遊星式撹拌機(株式会社シンキー製、商品名「あわとり練太郎AR-250」)を用いて、公転速度2000rpm、自転速度800rpmで×2分間)の条件で、再度混練して第2の組成物を得た。
【0111】
続いて、フィルムアプリケーターを用いて、得られた第2の組成物を厚さ100μmのシート状に成形した後、熱風乾燥機を用いて、60℃で30分間及び100℃で70分間の条件で、エポキシ樹脂を半硬化させた。これにより第2の半硬化物複合体シートを得た。その後、レーザー加工により所定の開口部を形成した。示差走査熱量計を用いて、得られた第2の半硬化物複合体シートを25~300℃で測定したところ、発熱ピークが観察され、第2の半硬化物複合体シート中のエポキシ樹脂が半硬化した状態であることが確認された。
【0112】
<第1の半硬化物複合体シート及び第2の半硬化物複合体シート以外の部材>
実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0113】
<回路基板の作製>
実施例1と同様にして回路基板を作製した。
【0114】
(実施例3)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例2で使用した第2の半硬化物複合体シートの開口部を形成する前のものを第1の半硬化物複合体シートとして使用した。
【0115】
<第2の半硬化物複合体シートの作製>
実施例2で使用したものと同じ第2の半硬化物複合体シートを使用した。
【0116】
<第1の半硬化物複合体シート及び第2の半硬化物複合体シート以外の部材>
実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0117】
<回路基板の作製>
実施例1と同様にして回路基板を作製した。
【0118】
(実施例4)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例2で使用した第2の半硬化物複合体シートの開口部を形成する前のものを第1の半硬化物複合体シートとして使用した。
【0119】
<第1の半硬化物複合体シート以外の部材>
実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0120】
<回路基板の作製>
第2の半硬化物複合体シートを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製した。なお、金属パターン1の切断面のダレ側が第1の半硬化物複合体シート側になるように第1の半硬化物複合体シートの上に金属パターン1を配置したので、金属パターン1は、第1の半硬化物複合体シートにめり込んでいた。したがって、金属パターン1の側面における第1の半硬化物複合体シート側の端部は、第1の半硬化物複合体シートにより被覆されていた。
【0121】
(比較例1)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例2で使用した第2の半硬化物複合体シートの開口部を形成する前のものを第1の半硬化物複合体シートとして使用した。
【0122】
<第1の半硬化物複合体シート以外の部材>
実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0123】
<回路基板の作製>
金属パターン1の切断面のダレ側が第1の半硬化物複合体シート側の反対側になるように第1の半硬化物複合体シートの上に金属パターン1を配置した点、及び第2の半硬化物複合体シートを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして回路基板を作製した。なお、金属パターン1の切断面のダレ側の反対側が第1の半硬化物複合体シート側になるように第1の半硬化物複合体シートの上に金属パターン1を配置したので、金属パターン1は、第1の半硬化物複合体シートにめり込んでいなかった。したがって、金属パターン1の側面における第1の半硬化物複合体シート側の端部は、第1の半硬化物複合体シートにより被覆されていなかった。
【0124】
(比較例2)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例2で使用した第2の半硬化物複合体シートの開口部を形成する前のものを第1の半硬化物複合体シートとして使用した。
【0125】
<第1の半硬化物複合体シートを用いた銅箔張り基板の作製>
粗化側が第1の半硬化物複合体シート側になるように第1の半硬化物複合体シートの上に銅箔(白銅株式会社製、商品名「無酸素銅切板 JIS H3100 C1020P」、厚さ:0.8mm)を配置し、さらに、メタルベース板を配置して、銅箔/第1の半硬化物複合体シート/メタルベース板の層構造を有する積層体を作製した。得られた積層体を180℃の加熱温度で加熱しながら、15MPaの圧力及び1時間の加圧時間で加圧した後、更に1MPaの圧力で加圧しながら、150℃の加熱温度で6時間、180℃の加熱温度で4時間、200℃の加熱温度で4時間、及び250℃の加熱温度で4時間、加熱して第1の半硬化物複合体シートを硬化させ、銅箔張り基板を得た。
【0126】
<第1の半硬化物複合体シート以外の部材>
金属パターン1を用意しなかった以外は実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0127】
<回路基板の作製>
得られた銅箔張り基板の銅箔上に、スクリーン印刷法によりエッチングレジストを形成し、銅箔の表面の所定位置をマスクした。その状態で、銅箔の一部を、塩化第二銅エッチング液で腐食溶解した後、エッチングレジストを剥離した。これにより、金属パターンの形状が実施例1と同様である0.8mm厚の銅の金属パターンを第1の半硬化物複合体シートの硬化物上に形成した。金属パターンはエッチングにより形成したので、金属パターンは、第1の半硬化物複合体シートの硬化物にめり込んでいなかった。したがって、金属パターンの側面における第1の半硬化物複合体シートの硬化物側の端部は、第1の半硬化物複合体シートの硬化物により被覆されていなかった。
【0128】
(実施例5)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例1で使用した第1の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0129】
<第2の半硬化物複合体シートの作製>
実施例1で使用した第2の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0130】
<第1の半硬化物複合体シートを用いた銅箔張り基板の作製>
比較例2と同様にして、0.8mm厚の銅箔、第1の半硬化物複合体シート及びメタルベース板を積層し、硬化した銅箔張り基板を作製した。
【0131】
<第1の半硬化物複合体シート及び第2の半硬化物複合体シート以外の部材>
金属パターン1を用意しなかった以外は実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0132】
<回路基板の作製>
比較例2と同様にして、銅箔張り基板に金属パターンを形成し、金属パターンを開口部に嵌合させて銅箔張り基板の上に2枚の第2の半硬化物複合体シートを配置して積層体を作製した。得られた積層体を180℃の加熱温度で加熱しながら、15MPaの圧力及び1時間の加圧時間で加圧した。その後、積層体を、1MPaの圧力で加圧しながら、150℃の加熱温度で6時間、180℃の加熱温度で4時間、200℃の加熱温度で4時間、及び250℃の加熱温度で4時間、加熱して回路基板を得た。
【0133】
(実施例6)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例1で使用した第1の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0134】
<第2の半硬化物複合体シートの作製>
実施例1で使用した第2の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0135】
<第1の半硬化物複合体シートを用いた銅箔張り基板の作製>
粗化側が第1の半硬化物複合体シート側になるように第1の半硬化物複合体シートの上に銅箔(白銅株式会社製、商品名「無酸素銅切板 JIS H3100 C1020P」、厚さ:2.0mm)を配置し、さらに、メタルベース板を配置して、銅箔/第1の半硬化物複合体シート/メタルベース板の層構造を有する積層体を作製した。得られた積層体を180℃の加熱温度で加熱しながら、15MPaの圧力及び1時間の加圧時間で加圧した後、更に1MPaの圧力で加圧しながら、150℃の加熱温度で6時間、180℃の加熱温度で4時間、200℃の加熱温度で4時間、及び250℃の加熱温度で4時間、加熱して第1の半硬化物複合体シートを硬化させ、銅箔張り基板を得た。
【0136】
<第1の半硬化物複合体シート及び第2の半硬化物複合体シート以外の部材>
金属パターン1を用意しなかった以外は実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0137】
<回路基板の作製>
得られた銅箔張り基板の銅箔上に、スクリーン印刷法によりエッチングレジストを形成し、銅箔の表面の所定位置をマスクした。その状態で、銅箔の一部を、塩化第二銅エッチング液で腐食溶解した後、エッチングレジストを剥離した。これにより、金属パターンの形状が実施例1と同様である2.0mm厚の銅の金属パターンを第1の半硬化物複合体シートの硬化物上に形成した。
次に、金属パターンを開口部に嵌合させて銅箔張り基板の上に5枚の第2の半硬化物複合体シートを配置して積層体を作製した。得られた積層体を180℃の加熱温度で加熱しながら、15MPaの圧力及び1時間の加圧時間で加圧した。その後、積層体を、1MPaの圧力で加圧しながら、150℃の加熱温度で6時間、180℃の加熱温度で4時間、200℃の加熱温度で4時間、及び250℃の加熱温度で4時間、加熱して回路基板を得た。
【0138】
(実施例7)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例1で使用した第1の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0139】
<第2の半硬化物複合体シートの作製>
実施例2で使用した第2の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0140】
<第1の半硬化物複合体シートを用いた銅箔張り基板>
比較例2と同様にして、0.8mm厚の銅箔、第1の半硬化物複合体シート及びメタルベース板を積層し、硬化した銅箔張り基板を作製した。
【0141】
<第1の半硬化物複合体シート及び第2の半硬化物複合体シート以外の部材>
金属パターン1を用意しなかった以外は実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0142】
<回路基板の作製>
実施例5と同様にして回路基板を得た。
【0143】
(実施例8)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例1で使用した第1の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0144】
<第2の半硬化物複合体シートの作製>
実施例2で使用した第2の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0145】
<第1の半硬化物複合体シートを用いた銅箔張り基板の作製>
実施例6と同様にして、2.0mm厚の銅箔、第1の半硬化物複合体シート及びメタルベース板を積層し、硬化した銅箔張り基板を作製した。
【0146】
<第1の半硬化物複合体シート及び第2の半硬化物複合体シート以外の部材>
金属パターン1を用意しなかった以外は実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0147】
<回路基板の作製>
実施例6と同様にして回路基板を得た。
【0148】
(実施例9)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例3で使用した第1の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0149】
<第2の半硬化物複合体シートの作製>
実施例2で使用した第2の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0150】
<第1の半硬化物複合体シートを用いた銅箔張り基板の作製>
比較例2と同様にして、0.8mm厚の銅箔、第1の半硬化物複合体シート及びメタルベース板を積層し、硬化した銅箔張り基板を作製した。
【0151】
<第1の半硬化物複合体シート及び第2の半硬化物複合体シート以外の部材>
金属パターン1を用意しなかった以外は実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0152】
<回路基板の作製>
実施例6と同様にして回路基板を得た。
【0153】
(実施例10)
<第1の半硬化物複合体シートの作製>
実施例3で使用した第1の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0154】
<第2の半硬化物複合体シートの作製>
実施例2で使用した第2の半硬化物複合体シートと同じものを使用した。
【0155】
<第1の半硬化物複合体シートを用いた銅箔張り基板の作製>
実施例6と同様にして、2.0mm厚の銅箔、第1の半硬化物複合体シート及びメタルベース板を積層し、硬化した銅箔張り基板を作製した。
【0156】
<第1の半硬化物複合体シート及び第2の半硬化物複合体シート以外の部材>
金属パターン1を用意しなかった以外は実施例1で使用したものと同じ部材を用意した。
【0157】
<回路基板の作製>
実施例6と同様にして回路基板を得た。
【0158】
[評価方法]
作製した回路基板について、以下の評価を行った。
(金属パターン間の絶縁耐圧)
大気中、かつ室温で交流電圧を回路基板の金属パターン間(回路間幅:1.0mm)に印加し、JIS C2110-1:商用周波数交流電圧印加による試験に基づき、耐圧試験器(菊水電子工業株式会社製、商品名「TOS-8700」)を用いて測定した。試験電圧の昇圧方式は20秒段階昇圧試験に基づき実施した。
【0159】
(金属パターン-メタルベース板間の絶縁耐圧)
回路基板を絶縁油中に浸漬し、室温で交流電圧を回路基板における金属パターンとメタルベースとの間に印加し、JIS C2110-1:商用周波数交流電圧印加による試験に基づき、耐圧試験器(菊水電子工業株式会社製、商品名「TOS-8700」)を用いて測定した。試験電圧の昇圧方式は20秒段階昇圧試験に基づき実施した。
【0160】
(熱抵抗値)
回路基板の金属パターン上にTO-220型トランジスターを半田付けした。そして水冷した放熱フィン上に放熱グリースを介して回路基板を固定した。トランジスターに通電し、トランジスターを発熱させ、トランジスター表面の温度とメタルベース板の温度との温度差を測定し、熱抵抗値を測定した。放熱グリースの熱抵抗値を用いて測定した熱抵抗値を補正して、回路基板の熱抵抗値を算出した。
【0161】
(熱衝撃試験によるクラックの有無)
260℃に設定された半田浴に回路基板を2分間浮かべた後、木片上で冷却する熱衝撃処理を行った。処理後の回路基板を絶縁油中に浸漬し、室温で交流電圧を金属パターンとメタルベース板との間に印加し、絶縁破壊する電圧を測定した。また、走査型電子顕微鏡を使用して、熱衝撃処理後の回路基板の断面観察を行い、第1の半硬化物複合体シートが硬化してなる第1のセラミックス-樹脂複合材層と金属パターンとの間の界面部におけるクラックの有無を調べた。
【0162】
以上の評価の評価結果を表1及び表2に示す。
【表1】
【0163】
【0164】
実施例1~10及び比較例1~2の評価結果から、セラミックス-樹脂複合材層により金属パターンの側面の端部を被覆することによって回路基板のクラックの発生を抑制できることがわかった。