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特開2024-560ロータヨーク、リラクタ成形方法、及びリラクタ成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000560
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ロータヨーク、リラクタ成形方法、及びリラクタ成形装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/22 20060101AFI20231226BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H02K1/22 A
H02K15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099273
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】新島 明
(72)【発明者】
【氏名】堀内 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】今村 裕輔
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA09
5H601BB16
5H601CC02
5H601CC15
5H601DD02
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD23
5H601DD42
5H601DD48
5H601EE03
5H601EE17
5H601EE18
5H601FF02
5H601FF04
5H601GA02
5H601GA37
5H601GA38
5H615AA01
5H615BB02
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP06
5H615SS03
(57)【要約】
【課題】リラクタ成形作業の作業効率を向上させる。
【解決手段】本開示は、アウタロータ型の発電機のロータヨーク10であって、ヨーク底板部11と、周方向に互いに離間した位置に配置されて径方向の外側へ突出する複数のリラクタ14を有し、ヨーク底板部11の外周縁から起立する円筒状のヨーク側壁部12と、を備え、ヨーク側壁部12のうち複数のリラクタ14が配置される位置の径方向の内側には、複数のリラクタ14に対応して径方向の外側へ凹む複数の凹部16が形成され、複数のリラクタ14は、二以上のリラクタを一組とするリラクタ群15を有し、リラクタ群15に対応する凹部16の周方向の一側面16b及び他側面16cは、リラクタ群15の周方向の中央位置Pを通る第1径方向線L1に対して双方の面が平行な平行状態、又は平行状態に対して少なくとも一方の面が径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態に形成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタロータ型の回転電機のロータヨークであって、
ヨーク底板部と、
周方向に互いに離間した位置に配置されて径方向の外側へ突出する複数のリラクタを有し、前記ヨーク底板部の外周縁から起立する円筒状のヨーク側壁部と、を備え、
前記ヨーク側壁部のうち前記複数のリラクタが配置される位置の径方向の内側には、前記複数のリラクタに対応して径方向の外側へ凹む複数の凹部が形成され、
前記複数のリラクタは、二以上のリラクタを一組とするリラクタ群を有し、
前記リラクタ群に対応する凹部の周方向の一側面及び他側面は、前記リラクタ群の周方向の中央位置を通る第1径方向線に対して双方の面が平行な平行状態、又は前記平行状態に対して少なくとも一方の面が径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態に形成される
ことを特徴とするロータヨーク。
【請求項2】
前記リラクタ群に対応する凹部は、前記ヨーク側壁部の軸方向から視た状態で、前記第1径方向線を中心として線対称に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載のロータヨーク。
【請求項3】
前記複数の凹部は、前記ヨーク側壁部の軸方向から視た状態で、各凹部の周方向の中央位置を通る第2径方向線を中心として非線対称に形成される凹部を含む
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロータヨーク。
【請求項4】
前記リラクタ群は、複数設けられ、
前記複数のリラクタ群は、前記ヨーク側壁部に周方向に並んで配置される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロータヨーク。
【請求項5】
前記リラクタ群は、前記第1径方向線よりも周方向の一側に配置される一以上の一側リラクタと、前記第1径方向線よりも周方向の他側に配置される一以上の他側リラクタとを有し、
前記リラクタ群の前記一側リラクタと前記他側リラクタとの間には、前記リラクタ群に含まれない他のリラクタが配置される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロータヨーク。
【請求項6】
前記リラクタ群は、複数設けられ、
前記複数のリラクタは、前記複数のリラクタ群の前記一側リラクタが互いに周方向に隣接する第1隣接群と、前記複数のリラクタ群の前記他側リラクタが互いに周方向に隣接する第2隣接群とを有し、
前記第1隣接群と前記第2隣接群とは、周方向に交互に配置される
ことを特徴とする請求項5に記載のロータヨーク。
【請求項7】
前記リラクタ群は、周方向の中央に配置される中央リラクタと、前記中央リラクタよりも周方向の一側に配置される一以上の一側リラクタと、前記中央リラクタよりも周方向の他側に配置される一以上の他側リラクタとを有し、
前記一側リラクタ及び前記他側リラクタに対応する凹部は、前記ヨーク側壁部の軸方向から視た状態で、各凹部の周方向の中央位置を通る第2径方向線を中心として非線対称に形成され、
前記中央リラクタに対応する凹部は、前記軸方向から視た状態で、前記第2径方向線を中心として線対称に形成される
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロータヨーク。
【請求項8】
アウタロータ型の回転電機のロータヨークの円筒状のヨーク側壁部に、周方向に互いに離間して径方向の外側へ突出する複数のリラクタを成形するリラクタ成形方法であって、
前記複数のリラクタのうち二以上のリラクタを一組とするリラクタ群に対応するダイと、前記リラクタ群に対応するパンチとの間に、前記ヨーク側壁部を配置した状態で、前記リラクタ群の周方向の中央位置を通る径方向に沿って前記パンチと前記ダイとを近接させるように相対移動させて、前記リラクタ群を径方向の外側へ押し出す押出し工程を含む
ことを特徴とするリラクタ成形方法。
【請求項9】
前記ヨーク側壁部のうち前記リラクタが成形されていない領域を前記ダイと前記パンチとの間に配置するように、前記ダイ及び前記パンチと前記ロータヨークとを周方向に相対回転させる移動工程を含み、
前記押出し工程の後、未成形リラクタの数が前記リラクタ群を構成するリラクタ数よりも小さくなるまで、前記移動工程、前記押出し工程の順に繰り返し行う
ことを特徴とする請求項8に記載のリラクタ成形方法。
【請求項10】
前記押出し工程の後、前記未成形リラクタの数が前記リラクタ群を構成するリラクタ数よりも小さい場合、前記ヨーク側壁部のうち既に成形したいずれかのリラクタと前記リラクタが成形されていない領域とに前記ダイ及び前記パンチが跨るように、前記ダイ及び前記パンチと前記ロータヨークとを周方向に相対回転させた後、前記リラクタ群の周方向の中央位置を通る径方向に沿って前記パンチと前記ダイとを近接させるように相対移動させて、前記未成形リラクタを径方向の外側へ押し出す端数処理工程を含む
ことを特徴とする請求項9に記載のリラクタ成形方法。
【請求項11】
アウタロータ型の回転電機のロータヨークの円筒状のヨーク側壁部に、周方向に互いに離間して径方向の外側へ突出する複数のリラクタを成形するリラクタ成形装置であって、
前記複数のリラクタの二以上のリラクタを一組とするリラクタ群に対応するダイと、
前記ダイに対向する位置に配置され、前記リラクタ群に対応するパンチと、
前記リラクタ群の周方向の中央位置を通る径方向に沿って、前記パンチと前記ダイとを近接させるように相対移動可能な駆動部と、を備える
ことを特徴とするリラクタ成形装置。
【請求項12】
前記パンチの先端部のうち周方向の一側面及び他側面は、前記リラクタ群の周方向の中央位置を通る径方向線に対して双方の面が平行な平行状態、又は前記平行状態に対して少なくとも一方の面が径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態に形成される
ことを特徴とする請求項11に記載のリラクタ成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロータヨーク、リラクタ成形方法、及びリラクタ成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転電機である磁石発電機が開示されている。磁石発電機は、自動二輪車に用いられるアウターロータ型の発電機であって、エンジンのクランクシャフトの先端に固定された回転子と、エンジンのケースに固定される固定子とを備えている。回転子は、有底筒状のロータヨークを有している。ロータヨークの周壁の外周壁側には、エンジンの点火時期などを検出するための複数のリラクタ(凸部)が周方向に等間隔で一体形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-17057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の回転電機の回転子ように、複数のリラクタ(凸部)を有するロータヨークでは、一般に、リラクタをロータヨークの径方向の内側から外側へプレス成形によって押し出して成形する。ロータヨークにリラクタを成形する際に、リラクタを1つずつプレス成形すると手間と時間が掛かってしまい作業効率が悪いので、複数のリラクタを同時にプレス成形することが考えられる。しかし、ロータヨークの中心から径方向の外側への各リラクタの押し出し方向は互いに異なり、またロータヨークの内径部は限られたスペースであるので、ロータヨークの中心側からの押し出し方向(角度)が異なる複数のパンチをロータヨークの内径部に挿入することが難しく、複数のリラクタを同時にプレス成形することが難しい。例えば、ロータヨークの中心に対して正反対に位置する2つのリラクタを同時に押し出すためのパンチは、互いに干渉しやすいので、ロータヨークの内径部に設けることが難しい。
【0005】
そこで、本開示は、リラクタ成形作業の作業効率を向上させることが可能なロータヨーク、リラクタ成形方法、及びリラクタ成形装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様は、アウタロータ型の回転電機のロータヨークであって、ヨーク底板部と、周方向に互いに離間した位置に配置されて径方向の外側へ突出する複数のリラクタを有し、前記ヨーク底板部の外周縁から起立する円筒状のヨーク側壁部と、を備え、前記ヨーク側壁部のうち前記複数のリラクタが配置される位置の径方向の内側には、前記複数のリラクタに対応して径方向の外側へ凹む複数の凹部が形成され、前記複数のリラクタは、二以上のリラクタを一組とするリラクタ群を有し、前記リラクタ群に対応する凹部の周方向の一側面及び他側面は、前記リラクタ群の周方向の中央位置を通る第1径方向線に対して双方の面が平行な平行状態、又は前記平行状態に対して少なくとも一方の面が径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態に形成される。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様のロータヨークであって、前記リラクタ群に対応する凹部は、前記ヨーク側壁部の軸方向から視た状態で、前記第1径方向線を中心として線対称に形成される。
【0008】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様のロータヨークであって、前記複数の凹部は、前記ヨーク側壁部の軸方向から視た状態で、各凹部の周方向の中央位置を通る第2径方向線を中心として非線対称に形成される凹部を含む。
【0009】
本発明の第4の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様のロータヨークであって、前記リラクタ群は、複数設けられ、前記複数のリラクタ群は、前記ヨーク側壁部に周方向に並んで配置される。
【0010】
本発明の第5の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様のロータヨークであって、前記リラクタ群は、前記第1径方向線よりも周方向の一側に配置される一以上の一側リラクタと、前記第1径方向線よりも周方向の他側に配置される一以上の他側リラクタとを有し、前記リラクタ群の前記一側リラクタと前記他側リラクタとの間には、前記リラクタ群に含まれない他のリラクタが配置される。
【0011】
本発明の第6の態様は、上記第5の態様のロータヨークであって、前記リラクタ群は、複数設けられ、前記複数のリラクタは、前記複数のリラクタ群の前記一側リラクタが互いに周方向に隣接する第1隣接群と、前記複数のリラクタ群の前記他側リラクタが互いに周方向に隣接する第2隣接群とを有し、前記第1隣接群と前記第2隣接群とは、周方向に交互に配置される。
【0012】
本発明の第7の態様は、上記第1の態様又は上記第2の態様のロータヨークであって、前記リラクタ群は、周方向の中央に配置される中央リラクタと、前記中央リラクタよりも周方向の一側に配置される一以上の一側リラクタと、前記中央リラクタよりも周方向の他側に配置される一以上の他側リラクタとを有し、前記一側リラクタ及び前記他側リラクタに対応する凹部は、前記ヨーク側壁部の軸方向から視た状態で、各凹部の周方向の中央位置を通る第2径方向線を中心として非線対称に形成され、前記中央リラクタに対応する凹部は、前記軸方向から視た状態で、前記第2径方向線を中心として線対称に形成される。
【0013】
本発明の第8の態様は、アウタロータ型の回転電機のロータヨークの円筒状のヨーク側壁部に、周方向に互いに離間して径方向の外側へ突出する複数のリラクタを成形するリラクタ成形方法であって、前記複数のリラクタのうち二以上のリラクタを一組とするリラクタ群に対応するダイと、前記リラクタ群に対応するパンチとの間に、前記ヨーク側壁部を配置した状態で、前記リラクタ群の周方向の中央位置を通る径方向に沿って前記パンチと前記ダイとを近接させるように相対移動させて、前記リラクタ群を径方向の外側へ押し出す押出し工程を含む。
【0014】
本発明の第9の態様は、上記第8の態様のリラクタ成形方法であって、前記ヨーク側壁部のうち前記リラクタが成形されていない領域を前記ダイと前記パンチとの間に配置するように、前記ダイ及び前記パンチと前記ロータヨークとを周方向に相対回転させる移動工程を含み、前記押出し工程の後、未成形リラクタの数が前記リラクタ群を構成するリラクタ数よりも小さくなるまで、前記移動工程、前記押出し工程の順に繰り返し行う。
【0015】
本発明の第10の態様は、上記第9の態様のリラクタ成形方法であって、前記押出し工程の後、前記未成形リラクタの数が前記リラクタ群を構成するリラクタ数よりも小さい場合、前記ヨーク側壁部のうち既に成形したいずれかのリラクタと前記リラクタが成形されていない領域とに前記ダイ及び前記パンチが跨るように、前記ダイ及び前記パンチと前記ロータヨークとを周方向に相対回転させた後、前記リラクタ群の周方向の中央位置を通る径方向に沿って前記パンチと前記ダイとを近接させるように相対移動させて、前記未成形リラクタを径方向の外側へ押し出す端数処理工程を含む。
【0016】
本発明の第11の態様は、アウタロータ型の回転電機のロータヨークの円筒状のヨーク側壁部に、周方向に互いに離間して径方向の外側へ突出する複数のリラクタを成形するリラクタ成形装置であって、前記複数のリラクタの二以上のリラクタを一組とするリラクタ群に対応するダイと、前記ダイに対向する位置に配置され、前記リラクタ群に対応するパンチと、前記リラクタ群の周方向の中央位置を通る径方向に沿って、前記パンチと前記ダイとを近接させるように相対移動可能な駆動部と、を備える。
【0017】
本発明の第12の態様は、上記第11の態様のリラクタ成形装置であって、前記パンチの先端部のうち周方向の一側面及び他側面は、前記リラクタ群の周方向の中央位置を通る径方向線に対して双方の面が平行な平行状態、又は前記平行状態に対して少なくとも一方の面が径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態に形成される。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、リラクタ成形作業の作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係るロータヨークを備える発電機の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るロータヨークの外側からの斜視図である。
図3】ロータヨークの外側からの平面図である。
図4】ロータヨークの内側からの斜視図である。
図5】ロータヨークの要部の断面図である。
図6】ロータヨークのリラクタ群の一の変形例を示すロータヨークの外側からの平面図である。
図7図6のリラクタ群の断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るロータヨークの外側からの平面図である。
図9】ロータヨークの要部の断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係るリラクタ成形装置の外観図であって、(a)は側面から視た状態を、(b)は(a)のb-b断面をそれぞれ示す。
図11】ダイ及びパンチでリラクタ群を成形している状態を示す説明図である。
図12図11のXII部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るロータヨーク10を備える発電機1の断面図である。なお、各図のCLは、回転子3の回転軸(軸心)を示す。
【0022】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係るロータヨーク10は、例えば、アウターロータ型の発電機(回転電機)1に使用される。発電機1は、磁石式発電機であって、例えば自動二輪車のACG(交流発電機)として使用される。発電機1は、エンジン(図示省略)のクランクシャフト2の先端に固定されてクランクシャフト2と共に回転する回転子3と、車体側(例えばエンジンケース4側)へ固定される固定子5とを備える。なお、以下の説明において、回転子3の回転軸CLに沿う方向を軸方向といい、回転軸CLと直行する方向を径方向といい、回転軸CLを中心とした回転子3の回転方向に沿う方向を周方向という。
【0023】
回転子3は、有底筒状のロータヨーク10と、ロータヨーク10の内周面に固定される永久磁石6とを有する。永久磁石6は、異なる磁極が周方向に交互に並ぶようにロータヨーク10の周方向に複数設けられる。固定子5は、永久磁石6との間に隙間を設けた状態で永久磁石6の径方向の内側に配置される。固定子5に対して回転子3が回転することにより、固定子5のコイル5aに電流が発生する。これにより、発電機1は、バッテリへの充電や電装部品への電源の供給を行う。
【0024】
図2は、本発明の第1実施形態に係るロータヨーク10の外側からの斜視図である。図3は、ロータヨーク10の外側からの平面図である。図4は、ロータヨーク10の内側からの斜視図である。図5は、ロータヨーク10の要部の拡大図である。
【0025】
図2図5に示すように、本実施形態に係るロータヨーク10は、円盤状のヨーク底板部11と、ヨーク底板部11の外周縁から起立する円筒状のヨーク側壁部12とを一体的に備える。
【0026】
ヨーク底板部11は、回転子3の回転軸CLを中心とした円盤状に形成される。ヨーク底板部11の中心部には、クランクシャフト2を固定するための開口13が形成される。
【0027】
ヨーク側壁部12は、回転子3の回転軸CLを中心とした円筒状に形成される。ヨーク側壁部12は、パルサコイル7(図1参照)によってエンジンの点火タイミングを検出するための複数(本実施形態では22個)のリラクタ14を有する。複数のリラクタ14は、ヨーク側壁部12の周方向に互いに離間した位置(本実施形態では等間隔(等角度間隔))に配置されて径方向の外側へ突出する。本実施形態では、隣接するリラクタ14間の中心角度θ1は、15度に設定される。また、本実施形態では、2箇所連続でリラクタ14を設けない領域Xが存在する。この領域Xは、リラクタ14間の間隔が他の箇所とは異なり、1箇所だけ広い領域Xである。なお、パルサコイル7は、ロータヨーク10のヨーク側壁部12に径方向の外側から対向する位置に配置される。
【0028】
各リラクタ14は、ヨーク側壁部12の一部の領域を径方向の内側から外側へ押し出すプレス成形によって形成される。すなわち、ヨーク側壁部12のうち複数のリラクタ14が配置される位置の径方向の内側には、各リラクタ14に対応して径方向の外側へ凹む複数の凹部16が形成される。複数の凹部16については後述する。本実施形態では、複数のリラクタ14は、互いに同一形状に形成される。各リラクタ14は、径方向の外側の上面14aと、周方向の両側の端面14b,14cと、軸方向の両側の端面14d,14eとを有し、軸方向から視た状態で径方向の外側へ先細りする左右対称の台形状となっている。各リラクタ14の上面14aは、周方向及び軸方向に延びる辺を有する矩形状となっている。各リラクタ14の周方向の両側の端面14b,14c間の角度θ2は、15度に設定される。すなわち、本実施形態では、各リラクタ14の周方向の両側の端面14b,14c間の角度θ2は、隣接するリラクタ14間の中心角度θ1と同じ角度に設定される。なお、本発明においてリラクタ14の形状が同一形状であるとは、リラクタ14を突出している側から視た状態の形状が同一であることを意味し、裏側(凹んでいる側)から視た状態の形状(凹部16の形状)が同一であるか否かは問わない。また、本実施形態では、リラクタ14の形状を、軸方向から視た状態で台形状としたが、これに限定されるものではない。例えば、リラクタ14の形状は、軸方向から視た状態で、周方向の両側の端面14b,14cとヨーク側壁部12の外周面との角部に局面を有する形状であってもよい。
【0029】
図3及び図5に示すように、複数のリラクタ14は、互いに隣接する二以上のリラクタ14を一組とするリラクタ群15を有する。リラクタ群15は、リラクタ14をプレス成形する際に、1度のプレスによって成形される複数のリラクタ14を一組とするリラクタ群15である。本実施形態では、複数のリラクタ14は、互いに隣接する2つのリラクタ14を一組とする複数(11組)のリラクタ群15を有する。複数のリラクタ群15は、ヨーク側壁部12に周方向に並んで配置される。リラクタ群15の中心角度(周方向の一側の端部に位置するリラクタ14と他側の端部に位置するリラクタ14との間の中心角度)は、180度よりも小さい。本実施形態では、リラクタ群15は、隣接する2つのリラクタ14によって構成されるので、リラクタ群15の中心角度θ1は、2つのリラクタ14間の中心角度θ1となり、15度である。なお、ヨーク側壁部12のうちリラクタ14を設けない領域Xを跨ぐように隣接する2つのリラクタ14は、同じ組のリラクタ群15を構成しない。
【0030】
各リラクタ群15は、リラクタ群15の周方向の中央位置P(以下、単に「中央位置P」という。)を通る径方向の線(図5に示す一点鎖線L1。以下、「第1径方向線L1」という。)よりも周方向の一側(例えば図5における左側)に配置される一以上のリラクタ(一側リラクタ)14Aと、第1径方向線L1よりも周方向の他側(例えば図5における右側)に配置される一以上のリラクタ(他側リラクタ)14Bとを有する。本実施形態では、リラクタ群15は、2つのリラクタ14によって構成されるので、各リラクタ群15は、1つのリラクタ14Aと1つのリラクタ14Bとを有する。リラクタ群15の周方向の一側の端部に位置するリラクタ14Aの一端面14b、及びリラクタ群15の周方向の他側の端部に位置するリラクタ14Bの他端面14cとは、第1径方向線L1に対して、軸方向から視た状態(図5に示す状態)で平行に設けられる。図5の二点鎖線L2は、リラクタ14Aの一端面14bの延長線L2を、二点鎖線L3は、リラクタ14Bの他端面14cの延長線L3をそれぞれ示す。
【0031】
なお、リラクタ群15の中央位置Pは、軸方向から視た状態で周方向の一側の端部に位置するリラクタ14Aの一端面14bと、周方向の他側の端部に位置するリラクタ14Bの他端面14cとの間の周方向の中央の位置を意味する。また、本実施形態では、リラクタ14Aの一端面14b及びリラクタ14Bの他端面14cを、第1径方向線L1に対して平行に設けたが、これに限定されるものではなく、第1径方向線L1に対して径方向内側へ向かうほど近接する状態でなければよい。例えば、リラクタ14Aの一端面14b及びリラクタ14Bの他端面14cを、第1径方向線L1に対して径方向内側へ向かうほど離間するように傾斜させてもよい。ただし、パルサコイル7のパルス信号を明確にするという観点から、リラクタ14の上面14aと両端面14b,14cとのエッジ部の角度を小さくするために、本実施形態のように、リラクタ14Aの一端面14b及びリラクタ14Bの他端面14cを、第1径方向線L1に対して平行に設ける方が好ましい。
【0032】
図5に示すように、複数の凹部16は、複数のリラクタ14を径方向の内側から外側へ押し出すプレス成形の際に形成される凹部であって、各リラクタ14に対応して設けられる。凹部16は、径方向の外側の底面16aと、周方向の両側の端面16b,16cと、軸方向の両側の端面(図示省略)とを有する。なお、図5の二点鎖線L4は、凹部16の一側面16bの延長線L4を、二点鎖線L5は、凹部16の他側面16cの延長線L5をそれぞれ示す。
【0033】
リラクタ群15の径方向の内側には、リラクタ群15に含まれるリラクタ14に対応する凹部16(リラクタ群15に対応する凹部16)が設けられる。本実施形態では、リラクタ群15の径方向の内側には、リラクタ群15に含まれるリラクタ14A及びリラクタ14Bに対応する凹部16A及び凹部16Bが設けられる。本実施形態では、リラクタ群15に対応する凹部16の周方向の一側面16b及び他側面16cの双方の面が、第1径方向線L1に対して平行な状態(以下、「平行状態」という。)に形成される。リラクタ群15に対応する凹部16A,16Bは、軸方向から視た状態(図5に示す状態)で、第1径方向線L1を中心として線対称となっている。また、リラクタ群15に対応する凹部16A,16Bのそれぞれは、軸方向から視た状態で、各凹部16の周方向の中央位置を通る径方向の線(図5に示す一点鎖線L6。以下、「第2径方向線L6」という。)を中心として非線対称に形成される。すなわち、ヨーク側壁部12に設けられる複数の凹部16は、ヨーク側壁部12の軸方向から視た状態で、各凹部16の第2径方向線L6を中心として非線対称に形成される凹部(凹部16A,16B)を含む。なお、本実施形態では、リラクタ群15に対応する凹部16の周方向の一側面16b及び他側面16cの双方の面を、上記平行状態としたが、これに限定されるものではなく、一側面16b及び他側面16cの少なくとも一方の面が上記平行状態に対して径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態であってもよい。
【0034】
上記のように構成されたロータヨーク10では、リラクタ群15に対応する凹部16の周方向の一側面16b及び他側面16cの双方の面が、上記平行状態(第1径方向線L1に対して平行な状態)に形成される。または、一側面16b及び他側面16cの少なくとも一方の面が上記平行状態に対して径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態に形成される。このため、リラクタ14をプレス成形する場合、リラクタ群15を1度のプレスによって成形した後、ヨーク側壁部12の径方向の内側のパンチ(リラクタ14を押し出すパンチ)を、中央位置Pを通る径方向(第1径方向線L1)に沿って容易に抜く(外す)ことができる。
【0035】
このように、複数のリラクタ14に対応する各パンチを、同一方向(第1径方向線L1)に沿ってダイに対して相対移動させることができるので、各パンチをそれぞれ異なる方向(角度)に移動させる場合とは異なり、各パンチを移動させる機構を共通化することができ、パンチ側(ヨーク側壁部12の径方向の内側)の構造を簡略化することができる。これにより、限られたスペースであるロータヨーク10の内径部に、複数のリラクタ14に対応するパンチを配置することができ、複数のリラクタ14(リラクタ群15)を1度のプレスで成形することができる。
【0036】
したがって、本実施形態によれば、二以上のリラクタ14を含むリラクタ群15を1度のプレスによって成形することができるので、全てのリラクタ14を1つずつ成形する場合とは異なり、リラクタ成形作業の作業効率を向上させることができる。
【0037】
また、リラクタ群15のリラクタ14Aの一端面14b及びリラクタ14Bの他端面14cは、第1径方向線L1に対して、平行又は径方向内側へ向かうほど離間するように設けられる。このため、リラクタ14をプレス成形する場合、リラクタ群15を1度のプレスによって成形した後、ヨーク側壁部12の径方向の外側のダイ(型)を第1径方向線L1に沿って容易に抜く(外す)ことができる。
【0038】
また、リラクタ群15を、中央位置Pを通る径方向の一方側(図5の上側)へ押し出すことができるので、例えば、ロータヨーク10の中心に対して正反対に位置する2つのリラクタ14を同時に押し出す場合とは異なり、ロータヨーク10の変形を抑えることができる。
【0039】
また、リラクタ14は、軸方向から視た状態で径方向の外側へ先細りする台形状となっており、リラクタ14の根元側(径方向の内側)が拡がっている。このため、プレス成形時に各リラクタ14の両端面14b,14cの根元側のヨーク側壁部12の材料の切れを抑えることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、複数のリラクタ群15を設けたが、これに限定されるものではなく、少なくとも1つのリラクタ群15を設けていればよい。少なくとも1つのリラクタ群15を設けることによって、全てのリラクタ14を1つずつ成形する場合とは異なり、リラクタ成形作業の作業効率を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態では、リラクタ群15のリラクタ14Aの一端面14b及びリラクタ14Bの他端面14cを、第1径方向線L1に対して、平行又は径方向内側へ向かうほど離間するように設けることによって、ダイ(型)を第1径方向線L1に沿って外すことが可能な構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、リラクタ群15の各リラクタ14A,14Bに対応する2つのダイ(型)を設け、各ダイを各リラクタ14A,14Bの第2径方向線L6に沿って移動可能とする場合には、リラクタ14の一端面14b及び他端面14cは、各ダイを抜くことが可能な形状であればよい。
【0042】
また、本実施形態では、リラクタ群15を、互いに隣接する2つのリラクタ14(リラクタ14A,14B)を一組とするリラクタ群15としたが、リラクタ群15を構成するリラクタ14の数(リラクタ数)は、これに限定されるものではない。後述するように、リラクタ群15を、互いに隣接する3つのリラクタ14を一組とするリラクタ群15としてもよいし、或いは互いに隣接する4つ以上のリラクタ14を一組とするリラクタ群15としてもよい。
【0043】
図6は、ロータヨーク10のリラクタ群15の一の変形例を示すロータヨーク10の外側からの平面図である。図7は、図6のリラクタ群15の断面図である。
【0044】
例えば、図6及び図7に示すように、リラクタ群15を、互いに隣接する奇数個(例えば3つ)のリラクタ14を一組とするリラクタ群15としてもよい。リラクタ群15は、周方向の中央に配置されるリラクタ(中央リラクタ)14Cと、リラクタ14Cよりも周方向の一側に配置される一以上のリラクタ(一側リラクタ)14Aと、リラクタ14Cよりも周方向の他側に配置される一以上のリラクタ(他側リラクタ)14Bとを有する。この場合であっても、リラクタ群15に対応する凹部16A,16B,16Cの周方向の一側面16b及び他側面16cは、リラクタ群15の第1径方向線L1に対して双方の面が平行な平行状態、又は上記平行状態に対して少なくとも一方の面が径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態に形成される。また、リラクタ群15に対応する凹部16A,16B,16Cは、ヨーク側壁部12の軸方向から視た状態(図7に示す状態)で、第1径方向線L1を中心として線対称に形成される。また、複数の凹部16は、ヨーク側壁部12の軸方向から視た状態で、各凹部16の第2径方向線L6を中心として非線対称に形成される凹部(凹部16A,16B)を含む。この場合、周方向の中央に位置するリラクタ14Cの凹部16Cは、第2径方向線L6を中心として線対称に形成される。なお、リラクタ14Cよりも周方向の一側に配置されるリラクタ(一側リラクタ)14A、及び他側に配置されるリラクタ(他側リラクタ)14Bを、複数設けてもよい。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のロータヨーク101は、リラクタ群15が互いに隣接しないリラクタ14を含む点で相違する。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図8は、本発明の第2実施形態に係るロータヨーク101の外側からの平面図である。図9は、ロータヨーク101の要部の断面図である。
【0047】
図8及び図9に示すように、ロータヨーク101の複数のリラクタ14は、n(1以上の整数)個のリラクタ14を挟むように配置された複数のリラクタ14を一組とするリラクタ群15を有する。本実施形態では、1個(n=1)のリラクタ14を挟むように配置された2つのリラクタ14A,14Bを一組とする複数のリラクタ群15が設けられる。
【0048】
リラクタ群15は、当該リラクタ群15の周方向の中央位置Pを通る第1径方向線L1よりも周方向の一側に配置される一以上のリラクタ(一側リラクタ)14Aと、第1径方向線L1よりも周方向の他側に配置される一以上のリラクタ(他側リラクタ)14Bとを有する。リラクタ14Aとリラクタ14Bとの間には、当該リラクタ群15には含まれない他のリラクタ14A’(他のリラクタ群15’に含まれるリラクタ14A’)が配置される。第1径方向線L1よりも周方向の一側に配置されるリラクタ14A及び他側に配置されるリラクタ14Bに含まれるリラクタ14の数は、その間に配置されるリラクタ14の数(n)以下に設定される。
【0049】
リラクタ群15に対応する凹部16(凹部16A,16B)の周方向の一側面16b及び他側面16cの双方の面は、第1径方向線L1に対して平行状態に形成される。リラクタ群15に対応する凹部16A,16Bは、軸方向から視た状態(図9に示す状態)で、第1径方向線L1を中心として線対称となっている。また、リラクタ群15に対応する凹部16A,16Bのそれぞれは、軸方向から視た状態で、第2径方向線L6を中心として非線対称に形成される。すなわち、ヨーク側壁部12に設けられる複数の凹部16は、ヨーク側壁部12の軸方向から視た状態で、各凹部16の第2径方向線L6を中心として非線対称に形成される凹部(凹部16A,16B)を含む。なお、本実施形態では、リラクタ群15に対応する凹部16の周方向の一側面16b及び他側面16cの双方の面を、上記平行状態としたが、これに限定されるものではなく、一側面16b及び他側面16cの少なくとも一方の面が上記平行状態に対して径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態であってもよい。
【0050】
リラクタ群15のリラクタ14Aとリラクタ14Bとの間のリラクタ14A’は、上記リラクタ群15とは異なる他のリラクタ群15’に含まれる。他のリラクタ群15’に対応する凹部16A’,16B’は、当該リラクタ群15’の周方向の中央位置P’を通る第1径方向線L1’を基準として、上記リラクタ群15に対応する凹部16と同様の構成を有する。
【0051】
図8に示すように、ヨーク側壁部12に設けられる複数のリラクタ14は、複数のリラクタ群15,15’の周方向の一側のリラクタ14A,14Aが互いに周方向に隣接する第1隣接群17Aと、周方向の他側のリラクタ14B,14B’が互いに周方向に隣接する第2隣接群17Bとを有する。第1隣接群17Aと第2隣接群17Bとは、周方向に交互に配置される。第1隣接群17Aには、n+1組のリラクタ群15のリラクタ14Aが含まれ、また、第2隣接群17Bには、n+1組のリラクタ群15のリラクタ14Bが含まれる。本実施形態では、第1隣接群17Aには、2組(n+1組)のリラクタ群15のリラクタ14Aが含まれ、また、第2隣接群17Bには、2組(n+1組)のリラクタ群15のリラクタ14Bが含まれる。
【0052】
なお、本実施形態では、両側で2つ(片側1つ)のリラクタ14A,14Bを一組とするリラクタ群15としたが、これに限定されるものではなく、片側複数のリラクタ14A,14Bを一組とするリラクタ群15としてもよい。
【0053】
次に、本発明の一実施形態に係るリラクタ成形装置20について、図面に基づいて説明する。
【0054】
図10は、本発明の一実施形態に係るリラクタ成形装置の外観図であって、(a)は側面から視た状態を、(b)は(a)のb-b断面をそれぞれ示す。図11は、ダイ及びパンチでリラクタ群を成形している状態を示す説明図である。図12は、図11のXII部分の拡大図である。
【0055】
本実施形態に係るリラクタ成形装置20は、プレス成形装置であって、アウタロータ型の発電機1のロータヨーク10の円筒状のヨーク側壁部12に、周方向に互いに離間して径方向の外側へ突出する複数のリラクタ14を成形する。本実施形態のリラクタ成形装置20は、周方向に等間隔で互いに離間する同一形状の複数のリラクタ14をヨーク側壁部12に成形する。
【0056】
図10に示すように、本実施形態に係るリラクタ成形装置20は、二以上のリラクタ14によって構成されるリラクタ群15を、1度の押出し工程でヨーク側壁部12に成形する。リラクタ成形装置20は、一組のリラクタ群15の型となるダイ(型)21と、一組のリラクタ群15を押し出すパンチ22と、ダイ21とパンチ22とを近接させるように相対移動可能な駆動部23とを備える。これらの他にも、リラクタ成形装置20は、上側のベースとなる上ダイセット24と、下側のベースとなる下ダイセット25と、上ダイセット24と下ダイセット25とを所定方向(本実施形態では上下方向)に相対移動可能に支持する複数のガイドポスト26と、ダイ21の下方に配置されてプレス時にヨーク側壁部12を押さえる押さえ部材27とを備える。なお、以下のリラクタ成形装置20の説明において、軸方向、径方向、及び有方向は、リラクタ成形装置20にロータヨーク10をセットした状態(以下、「セット状態」という。)のロータヨーク10の軸方向、径方向、及び有方向に対応する。
【0057】
押さえ部材27の上面は、ロータヨーク10のヨーク側壁部12に径方向の内側から当接可能な円弧状に形成される。ロータヨーク10は、リラクタ14を成形する際に、ヨーク側壁部12の内周面を押さえ部材27の円弧状の上面に当接させる状態で、リラクタ成形装置20にセットされる(図10(b)参照)。
【0058】
図10図12に示すように、本実施形態のダイ21は、セット状態のロータヨーク10のヨーク側壁部12の径方向の外側(上方)に配置され、上ダイセット24に支持される。ダイ21は、リラクタ成形装置20の駆動時にヨーク側壁部12の外周面に面接触するように形成された円弧状の下面28と、下面28から上方へ凹む複数の凹型部29とを有する。
【0059】
ダイ21の下面28は、周方向の中央が上方へ膨出するように円弧状に形成される。軸方向から視た状態で、ダイ21の円弧状の下面28のうちの周方向の中央の最上端の部分(図11に示すリラクタ群15の中央位置Pと略同位置)とセット状態のロータヨーク10の中心(回転軸CL)とを通る仮想線(図11に示す一点鎖線L1)は、鉛直方向に延びる。当該仮想線は、リラクタ群15の周方向の中央位置Pを通る第1径方向線L1と一致する。
【0060】
複数の凹型部29は、軸方向から視た状態で、ダイ21の円弧状の下面28のうち、上記最上端の部分(周方向の中央部分)を中心として左右に対称的に設けられる。凹型部29は、一組のリラクタ群15を構成するリラクタ14と同じ数設けられる。すなわち、複数の凹型部29は、一組のリラクタ群15に対応するように設けられる。本実施形態では、一組のリラクタ群15が2つのリラクタ14(リラクタ14A及びリラクタ14B)によって構成されるので、ダイ21には、2つの凹型部29(凹型部29A及び凹型部29B)が設けられる。2つの凹型部29間の中心角度は、リラクタ14A及びリラクタ14B間の中心角度θ1と同じ15度である。
【0061】
ダイ21の各凹型部29は、底面29aと、周方向の両側の端面29b,29cと、軸方向の両側の端面(図示省略)とを有し、リラクタ14の形状と対応するように、軸方向から視た状態で径方向の外側へ先細りする左右対称の台形状となっている。本実施形態では、凹型部29の底面29aは、凹型部29の径方向の外側(本実施形態では上側)に配置されるスプリングパッド30(図10(b)参照)の下面によって構成される。各凹型部29の周方向の両側の端面29b,29c間の角度は、リラクタ14の周方向の両側の端面14b,14c間の角度θ2と同じ15度に設定される。すなわち、本実施形態では、各凹型部29の周方向の両側の端面29b,29c間の角度は、隣接する2つの凹型部29間の中心角度と同じ角度に設定される。なお、図11及び図12では、分かり易くするために、スプリングパッド30の図示を省略している。
【0062】
ダイ21の複数の凹型部29のうち周方向の一側の端部に位置する凹型部29の上記一側の一端面29bと、周方向の他側の端部に位置する凹型部29の上記他側の他端面29cとは、互いに平行に設けられる。本実施形態では、周方向の一側(例えば図11における左側)の凹型部29Aの一端面29bと、周方向の他側(例えば図11における右側)の凹型部29Bの他端面29cとが、鉛直方向に沿って互いに平行に設けられる。すなわち、凹型部29Aの一端面29b及び凹型部29Bの他端面29cは、上記仮想線(図11及び図12に示す一点鎖線L1)に対して、軸方向から視た状態で平行に設けられる。
【0063】
パンチ22は、ロータヨーク10のヨーク側壁部12からリラクタ14を押し出す機能を有し、ダイ21に対して鉛直方向に沿って相対移動可能に下ダイセット25に支持される。パンチ22は、一組のリラクタ群15を構成するリラクタ14と同じ数設けられる。すなわち、パンチ22は、一組のリラクタ群15に対応するように設けられる。本実施形態の各パンチ22は、上下方向に直線状に延びる棒状に形成される。各パンチ22は、互いに相対移動しない状態で下ダイセット25に支持される。パンチ22の先端面(本実施形態では上端面)は、矩形状に形成され、ダイ21の複数の凹型部29に下方から対向する位置に配置される。セット状態では、パンチ22は、ロータヨーク10のヨーク側壁部12の径方向の内側に位置する。なお、パンチ22は、別々に形成された複数のパンチ22を一体化したものであってもよいし、或いは1つの部材で成形されたものであってもよい。
【0064】
パンチ22の先端部(上端部)の周方向の一側面22a及び他側面22bは、リラクタ群15の第1径方向線L1に対して双方の面が平行な平行状態、又は上記平行状態に対して少なくとも一方の面が径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態に形成される。本実施形態では、パンチ22の先端部の周方向の一側面22a及び他側面22bの双方が、リラクタ群15の第1径方向線L1に対して平行状態に形成される。なお、図12の二点鎖線L4は、パンチ22の先端部の一側面22aの延長線L4を、二点鎖線L5は、パンチ22の先端部の他側面22bの延長線L5をそれぞれ示す。
【0065】
駆動部23は、図11に白抜き矢印で示すように、リラクタ群15の第1径方向線L1に沿って、パンチ22とダイ21とを相対移動させる。駆動部23は、パンチ22とダイ21とを、離間させた状態と近接させた状態とに切り替えるように、相対移動させることができる。駆動部23は、第1径方向線L1に沿ってパンチ22を移動させるパンチ移動機構23aを有する。パンチ移動機構23aは、セット状態のロータヨーク10のヨーク側壁部12の径方向の内側に配置される。駆動部23は、例えば、電動モータ等の回転運動を直線運動に変換してパンチ22とダイ21とを相対移動させてもよいし、或いは油圧等によってパンチ22とダイ21とを相対移動させてもよい。なお、パンチ22とダイ21との相対移動は、いずれか一方を固定した状態で他方を移動させてもよいし、或いは、双方を移動させてもよい。
【0066】
上記のように構成されたリラクタ成形装置20では、駆動部23は、リラクタ群15の周方向の中央位置Pを通る第1径方向線L1に沿って、パンチ22とダイ21とを相対移動させる。このように、複数のリラクタ14を成形する各パンチ22を同一の方向(第1径方向線L1)に沿ってダイ21に対して相対移動させるので、各パンチ22を異なる方向に移動させる場合とは異なり、各パンチ22を移動させる機構(パンチ移動機構23a)を共通化して構造を簡略化することができる。これにより、限られたスペースであるロータヨーク10の内径部に、複数のリラクタ14を成形するパンチ22を配置することができ、リラクタ群15を1度のプレスによって成形することができる。
【0067】
また、パンチ22の先端部(上端部)の周方向の一側面22a及び他側面22bは、リラクタ群15の第1径方向線L1に対して双方の面が平行な平行状態、又は上記平行状態に対して少なくとも一方の面が径方向の内側へ向かうほど他方の面から離間する状態に形成される。このため、リラクタ14をプレス成形する場合、リラクタ群15を1度のプレスによって成形した後、パンチ22を第1径方向線L1に沿って容易に抜く(外す)ことができる。
【0068】
また、ダイ21の複数の凹型部29のうち周方向の一側の端部に位置する凹型部29の上記一側の一端面29bと、周方向の他側の端部に位置する凹型部29の上記他側の他端面29cとは、第1径方向線L1に対して、軸方向から視た状態で、平行又は径方向内側へ向かうほど離間するように設けられる。このため、リラクタ14をプレス成形する場合、リラクタ群15を1度のプレスによって成形した後、ダイ21を第1径方向線L1に沿って容易に抜く(外す)ことができる。
【0069】
このように、本実施形態によれば、二以上のリラクタ14を含むリラクタ群15を1度のプレスによって成形することができるので、リラクタ14を1つずつ成形する場合とは異なり、リラクタ成形作業の作業効率を向上させることができる。
【0070】
また、リラクタ群15を第1径方向線L1の一方側(図11の上側)へ押し出すことができるので、例えば、ロータヨーク10の中心に対して正反対に位置する2つのリラクタ14を同時に押し出す場合とは異なり、ロータヨーク10の変形を抑えることができる。
【0071】
なお、本実施形態では、ダイ21を、リラクタ群15に対応する複数の凹型部29を有するダイ21としたが、これに限定されるものではなく、リラクタ群15を構成する個々のリラクタ14に対応する複数のダイ21を設けてもよい。
【0072】
次に、本発明の一実施形態に係るリラクタ成形方法について説明する。
【0073】
本実施形態に係るリラクタ成形方法は、アウタロータ型の発電機1のロータヨーク10の円筒状のヨーク側壁部12に、周方向に互いに離間して径方向の外側へ突出する複数のリラクタ14を成形する方法である。本実施形態では、上記実施形態に係るリラクタ成形装置20を用いて、ロータヨーク10のヨーク側壁部12に複数のリラクタ14を成形する場合について説明する。なお、ロータヨーク10のヨーク側壁部12に複数のリラクタ14を成形する際には、予め、複数のリラクタ14を有さない状態のロータヨーク10を成形しておく。
【0074】
先ず、ロータヨーク10のヨーク側壁部12を、複数のリラクタ14のうち互いに隣接する二以上のリラクタ14を一組とするリラクタ群15に対応するダイ21と、リラクタ群15に対応するパンチ22との間に配置する(準備工程)。具体的には、パンチ22とダイ21とを互いに離間させた状態のリラクタ成形装置20にロータヨーク10をセットする。
【0075】
次に、ヨーク側壁部12をダイ21とパンチ22との間に配置した状態で、リラクタ群15の第1径方向線L1に沿ってパンチ22とダイ21とを近接させるように相対移動させて、リラクタ群15を径方向の外側へ押し出す(押出し工程)。具体的には、リラクタ成形装置20の駆動部23を作動し、パンチ22とダイ21とを第1径方向線L1に沿って近接させる。ダイ21がヨーク側壁部12の外周面に当接し、パンチ22がヨーク側壁部12の内周面に当接した状態から、パンチ22とダイ21とが更に近接すると、パンチ22は、ヨーク側壁部12の径方向の内側から外側へ第1径方向線L1に沿ってリラクタ群15を押し出す。これにより、二以上のリラクタ14を含むリラクタ群15を一度のプレスによって(同一の工程で)成形することができる。なお、リラクタ群15を第1径方向線L1に沿って押し出すとは、ヨーク側壁部12の所定の位置に対して第1径方向線L1に沿って荷重を掛けてリラクタ群15を押し出すことを意味する。
【0076】
また、上記押出し工程の後、所定の条件を満たす場合に、ヨーク側壁部12のうちリラクタ14が成形されていない領域(次にリラクタ14を成形する領域)をダイ21とパンチ22との間に配置するように、ダイ21及びパンチ22とロータヨーク10とを周方向に相対回転させてもよい。(移動工程)。例えば、ロータヨーク10をダイ21及びパンチ22に対して回転させてもよい。
【0077】
上記所定の条件は、未成形リラクタ14の数がリラクタ群15を構成するリラクタ14の数以上であるという条件であってもよい。そして、上記押出し工程の後、未成形リラクタ14の数が、リラクタ群15を構成するリラクタ14の数よりも小さくなるまで、上記移動工程、上記押出し工程の順に繰り返し行ってもよい。なお、未成形リラクタ14とは、ヨーク側壁部12に成形する複数のリラクタ14の数(成形予定のリラクタ14の数。本実施形態では、22個。)のうち未だ成形していないリラクタ14を意味する。
【0078】
また、上記押出し工程の後、上記所定の条件を満たさない場合、残りの未成形リラクタ14を個々に1つずつ単独で成形してもよい。例えば、ロータヨーク10をリラクタ成形装置20から取り外して、他の装置を用いて残りの未成形リラクタ14を個々に1つずつ単独で成形してもよい。上記所定の条件を満たさない場合とは、未成形リラクタ14の数が、リラクタ群15を構成するリラクタ14の数よりも小さい場合である。
【0079】
或いは、上記押出し工程の後、上記所定の条件を満たさない場合、ヨーク側壁部12のうち既に成形したいずれかのリラクタ14と、リラクタ14が成形されていない領域とにダイ21及びパンチ22が跨るように、ダイ21及びパンチ22とロータヨーク10とを周方向に相対回転させてもよい。そして、その後、リラクタ群15の第1径方向線L1に沿ってパンチ22とダイ21とを近接させるように相対移動させて、未成形リラクタ14を径方向の外側へ押し出してもよい(端数処理工程)。このとき、既に成形されていたリラクタ14(ダイ21及びパンチ22が跨るように配置されたリラクタ14)は、再度押し出されることとなる。
【0080】
上記リラクタ成形方法では、ヨーク側壁部12をダイ21とパンチ22との間に配置した状態で、リラクタ群15の第1径方向線L1に沿ってパンチ22とダイ21とを近接させるように相対移動させて、リラクタ群15を径方向の外側へ押し出す(押出し工程)。このように、リラクタ群15を同一の方向(第1径方向線L1)に沿ってヨーク側壁部12の径方向の内側から押し出すので、リラクタ群15を異なる方向(各リラクタ14を突出させる方向)に沿って押し出す場合とは異なり、各パンチ22を移動させる機構を共通化して構造を簡略化することができる。これにより、限られたスペースであるロータヨーク10の内径部に各パンチ22を配置することができ、リラクタ群15を1度のプレスによって成形することができる。
【0081】
このように、本実施形態によれば、限られたスペースであるロータヨーク10の内径部に複数のパンチ22を配置して、二以上のリラクタ14を含むリラクタ群15を1度のプレスによって成形することができるので、リラクタ14を1つずつ成形する場合とは異なり、リラクタ成形作業の作業効率を向上させることができる。
【0082】
また、押出し工程の後、未成形リラクタ14の数が、リラクタ群15を構成するリラクタ14の数よりも小さくなるまで、上記移動工程、上記押出し工程の順に繰り返し行うことによって、ヨーク側壁部12に設ける複数のリラクタ14を効率よく成形することができる。
【0083】
また、押出し工程の後、未成形リラクタ14の数が、リラクタ群15を構成するリラクタ14の数よりも小さい場合に、上記端数処理工程を行うことによって、ヨーク側壁部12に設ける複数のリラクタ14を、1つのリラクタ成形装置20で最後まで成形することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、上記実施形態に係るリラクタ成形装置20を用いて複数のリラクタ14を成形したが、これに限定されるものではなく、上記第1工程と上記第2工程とを含んでいれば、他の構成の装置を用いて複数のリラクタ14を成形してもよい。
【0085】
また、複数のリラクタ群15を成形する順番は、特に限定されるものではなく、例えば、ヨーク側壁部12の周方向の一側から他側へ順番に成形してもよいし、或いは、ヨーク側壁部12の周方向の中間部分が最後に残るような順番で成形してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、アウターロータ型の回転電機を発電機1としたが、これに限定されるものではなく、アウターロータ型の回転電機は、例えばモータであってもよい。
【0087】
以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0088】
1:発電機(回転電機)
10:ロータヨーク
11:ヨーク底板部
12:ヨーク側壁部
14:リラクタ
14A:リラクタ(一側リラクタ)
14B:リラクタ(他側リラクタ)
14C:リラクタ(中央リラクタ)
15:リラクタ群
16:凹部
16b:凹部の一側面
16c:凹部の他側面
17A:第1隣接群
17B:第2隣接群
20:リラクタ成形装置
21:ダイ
22:パンチ
22a:パンチの先端部の一側面
22b:パンチの先端部の他側面
23:駆動部
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