(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056007
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】HFO-1234ZE及びHFO-1234YF組成物及び組成物を製造及び使用するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 21/18 20060101AFI20240412BHJP
C09K 5/04 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
C07C21/18
C09K5/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033909
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2021522446の分割
【原出願日】2019-10-25
(31)【優先権主張番号】62/750,991
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ション ペン
(72)【発明者】
【氏名】マリオ ジョセフ ナッパ
(57)【要約】
【課題】過剰量のHFO-1234yfを除去するための精製又は分離工程の必要性を最小化又は排除する、HFO-1234ze及び0超及び約1重量%未満のHFO-1234yfを含む近共沸組成物の提供。
【解決手段】Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、E-1,3,3,3,-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び任意選択的に1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含み、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、0.001~1.0モル%の量で存在する、フルオロプロペン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、E-1,3,3,3,-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び任意選択的に1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含むフルオロプロペン組成物であって、前記2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、0.001~1.0モル%の量で存在する、フルオロプロペン組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年10月26日に出願された出願第62/750991号の利益を主張する。出願第62/750991号の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、テトラフルオロプロペン組成物、並びに組成物を製造及び使用するための方法に関し、特に、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン(HFC-245fa)から調製された1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含む製品を製造及び使用するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フルオロカーボン業界は、過去数十年の間、モントリオール議定書の結果として、段階的に廃止されるオゾン層破壊性のクロロフルオロカーボン(CFC)及びヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替冷媒を見出すことに取り組んできた。多くの用途についての解決策は、冷媒、溶媒、消火剤、発泡剤、及び噴射剤として使用するためのヒドロフルオロカーボン(HFC)化合物を商業化することであった。現時点で最も広く使用されているHFC冷媒、HFC-134a、及びHFC-125等のこれら新規化合物は、オゾン層破壊係数がゼロであるので、モントリオール議定書の結果として段階的に廃止される現在の規制による影響を受けることはない。
【0004】
オゾン層破壊の問題に加えて、これら用途の多くにおける別の環境問題は、地球温暖化である。したがって、低オゾン層破壊規格を満たし、かつ低地球温暖化係数を有する組成物が必要とされている。特定のヒドロフルオロオレフィンが、これら両目標を満たすと考えられる。したがって、これらの組成物を提供する経済的な製造プロセスの必要性も存在する。
【0005】
いずれもゼロオゾン層破壊係数及び低地球温暖化係数を有するHFC-1234ze(CF3CH=CHF)及びHFC-1234yf(CF3CF=CH2)が、潜在的冷媒として認識されている。米国特許第7,862,742号は、HFO-1234ze及びHFO-1234yfを含む組成物を開示している。米国特許第9,302,962号は、HFO-1234zeを製造するための方法を開示している。米国特許第7,862,742号及び同第9,9,302,962号の開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0006】
HFC-245faの触媒的脱フッ化水素処理により、一般に、HFC-1234zeのE異性体及びZ異性体の混合物が製造される。選択した特定の触媒に依存して、Z異性体の量は15~23%の間で変化し得る。また、苛性又は他の強塩基の水溶液を用いた液相での脱フッ化水素処理により、両方の異性体の混合物が製造される。2種類の異性体の比率は温度によって若干変わるが、約13~15%のZ異性体が典型的に形成される。E異性体は冷却用途で最も有用であるので、Z異性体からE異性体を分離した後、Z異性体は、典型的には、別個の工程でE異性体へと異性化されるか、又はフッ化水素を加えることによって245faに変換されるかのいずれかである。これら代替方法はいずれも、コストを増大させる追加工程を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】出願第62/750991号
【特許文献2】米国特許第7,862,742号
【特許文献3】米国特許第9,302,962号
【特許文献4】米国特許第9,9,302,962号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
過剰量のHFO-1234yfを除去するための精製又は分離工程の必要性を最小化又は排除する、HFO-1234ze及びHFO-1234yfの近共沸組成物を生成することができるプロセスに対する必要性がこの技術において存在する。特に、HFO-1234ze及び0超及び約1重量%未満のHFO-1234yfを含む近共沸組成物を製造する経済的なプロセスに対する必要性がこの技術において存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び任意選択的に1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含むフルオロプロペン組成物が記載される。2,3,3,3-テトラフルオロプロペンは、0.001~1.0モル%の量で存在する。
【0010】
加えて、本開示は、式CF3CH=CHFのフルオロプロペンと、式CF3CF=CH2のフルオロプロペンとの混合物を製造する方法を含み、気相の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン及びZ-、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンの混合物を、酸素含有ガスの存在下で、フッ素化アルミナに担持されるフッ素化Cr2O3又はCr/Niからなる群から選択される少なくとも1つの触媒を含む触媒と接触させることを含み、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロパン、E-1,3,3,3,-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び任意選択的に未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む混合物を形成する。一実施形態では、本発明の方法は、過剰量の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を除去する工程を含む、精製又は分離工程を必要とせずに有用な組成物を製造する。
【0011】
更に、本開示は、気相の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとZ-、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンとの混合物を、任意選択的に酸素含有ガスの存在下で、フッ素化アルミナに担持されるフッ素化Cr2O3又はCr/Niからなる群から選択される少なくとも1つの触媒を含む触媒と接触させる方法から形成されるフルオロプロペン組成物を含む。
【0012】
一実施形態では、本発明のプロセスは、HFO-1234ze(E)及びHFO-1234yfを含む近共沸組成物を生成し、共沸組成物は冷媒として有用である。
【0013】
一実施形態は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、0.01~1.0モル%の量で存在する、前述の任意の組み合わせに関する。
【0014】
一実施形態は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、0.1~0.9モル%の量で存在する、前述の任意の組み合わせに関する。
【0015】
一実施形態は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、0.2~0.4モル%の量で存在する、前述の任意の組み合わせに関する。
【0016】
一実施形態は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが、0.3~0.4モル%の量で存在する、前述の任意の組み合わせに関する。
【0017】
一実施形態は、フルオロプロペン組成物が、R-143a、R-152a、TFP(トリフルオロプロピン)、R-1233xf、R-1233zd(E)、又はR-1233zd(Z)のうちの1つ以上を更に任意選択的に含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0018】
一実施形態は、R-143a、R-152a、TFP、R-1233xf、R-1233zd(E)、及びR-1233zd(Z)の量の合計が、総フルオロプロペン組成物に基づいて、0.001モル%~2モル%である、前述の任意の組み合わせに関する。
【0019】
一実施形態は、フルオロプロペン組成物が、総フルオロプロペン組成物に基づいて、0.7モル%~1.15モル%の量のR-1233zd(E)を含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0020】
一実施形態は、フルオロプロペン組成物が、総フルオロプロペン組成物に基づいて、0.05モル%~0.25モル%の量のR-1233zd(Z)を含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0021】
一実施形態は、フルオロプロペン組成物が、総フルオロプロペン組成物に基づいて、0.05モル%~0.25モル%の量のR-143aを含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0022】
一実施形態は、フルオロプロペン組成物が、1224yd、1224zc、1326mxz、113、32、23、トリフルオロプロピン、356mff、1326mxz、HFC-245fa、及びHFC-245cbのうちの1つ以上を任意選択的に含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0023】
一実施形態は、上記の任意の組み合わせに関し、1224yd、1224zc、1326mxz、113、32、23、トリフルオロプロピン、356mff、1326mxz、HFC-245fa、及びHFC-245cbの量の合計が、総フルオロプロペン組成物に基づいて0.001モル%~2モル%である、前述の任意の組み合わせに関連する。
【0024】
一実施形態は、組成物が近共沸性である前述の任意の組み合わせに関する。
【0025】
本発明の別の実施形態は、
気相の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンとの混合物を、酸素含有ガスの存在下で、フッ素化アルミナに担持されるフッ素化Cr2O3又はCr/Niからなる群から選択される少なくとも1つの触媒を含む触媒と接触させ、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、E-1,3,3,3,-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、フッ化水素、及び任意選択的に未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む混合物を形成する工程を含み、
混合物は、0.01%~1.00%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む、式CF3CH=CHFのフルオロプロペンと、式CF3CF=CH2のフルオロプロペンとの混合物を製造する方法に関する。
【0026】
本発明の一実施形態は、当該1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンとの混合物が、少なくとも7重量%のZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0027】
本発明の一実施形態は、当該1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンとの混合物が、少なくとも10重量%のZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0028】
本発明の一実施形態は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの少なくとも94%重量が1,3,3,3-テトラフロプロペンのE異性体に変換される前述の任意の組み合わせに関する。
【0029】
本発明の一実施形態は、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンの少なくとも98%重量が1,3,3,3-テトラフロプロペンのE異性体に変換される前述の任意の組み合わせに関する。
【0030】
本発明の一実施形態は、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又はZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとの混合物を回収する工程と、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、又はZ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンと1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとの混合物を、工程(a)に戻して再利用する工程と、を更に含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0031】
本発明の一実施形態は、工程(a)で生成された当該フッ化水素が分離回収される前述の任意の組み合わせに関する。
【0032】
本発明の一実施形態は、当該酸素含有ガスが酸素又は空気である前述の任意の組み合わせに関する。
【0033】
本発明の一実施形態は、混合物が0.1~0.5モル%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0034】
本発明の一実施形態は、混合物が0.2~0.4モル%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0035】
本発明の一実施形態は、混合物が0.3~0.4モル%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む、前述の任意の組み合わせに関する。
【0036】
本発明の別の実施形態は、前述の方法と、これらの方法によって製造されるフルオロプロペン組成物との任意の組み合わせに関する。
【0037】
本発明の一実施形態は、
物品を提供する工程と、
物品を伝熱媒体と接触させる工程と、を含み、
伝熱媒体が、前述の実施形態の任意の組み合わせのフルオロプロペン組成物を含み、本発明の方法によって生成される近共沸組成物を含む、熱を伝達するプロセスに関する。
【0038】
本開示の一実施形態は、
表面を提供する工程と、
表面を処理組成物と接触させる工程と、を含み、
表面が、その上に堆積された処理可能な材料を含み、処理組成物が、前述の実施形態の任意の組み合わせのフルオロプロペン組成物を含む、表面を処理するプロセスに関する。
【0039】
本発明の一実施形態は、処理組成物が処理可能な材料を実質的に溶解する前述の任意の組み合わせに関する。
【0040】
本発明の一実施形態は、
溶質を提供する工程と、溶質を溶媒と接触させる工程と、を含み、
溶媒が、前述の実施形態のいずれかのフルオロプロペン組成物を含む、組成物を形成するためのプロセスに関する。
【0041】
本発明の別の実施形態は、
蒸発器と、凝縮器と、
圧縮機と、膨張装置と、
伝熱媒体と、を含み、
伝熱媒体が、前述の実施形態の任意の組み合わせのフルオロプロペン組成物を含み、本発明の方法によって生成される近共沸組成物を含む、冷却システムに関する。
【0042】
上述の一般説明及び以下の「発明を実施するための形態」は、単なる例示かつ説明であり、また添付されている請求項で定義されている本発明を制限するものではない。本発明の実施形態は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。本発明の他の特徴及び利点は、例として本発明の原理を例示する添付図面と併せてなされる、好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0043】
式CF3CH=CHFのフルオロプロペンと式CF3CF=CH2のフルオロプロペンとの混合物を製造する方法が記載され、任意選択的に、酸素含有ガスの存在下で気相の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンとZ-、1,3,3,3-テトラフルオロプロペンの混合物をフッ素化物アルミナ上のフッ素化Cr2O3又はCr/Niからなる群から選択される少なくとも1つの触媒を含む触媒と接触させることを含み、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、E-1,3,3,3,-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、及び任意選択的に未反応の1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパンを含む混合物を形成する。
【0044】
脱フッ化水素反応は当該技術分野において周知である。HFC-245faの脱フッ化水素処理については特に研究が行われてきた。気相法及び液相法はいずれも周知である。1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)は、二重結合に対してZ異性体及びE異性体の両方として存在する。気相法及び液相法のいずれにおいても、Z異性体とE異性体の混合物が製造されることが知られているが、E異性体が圧倒的に多くなる。Z異性体の製造における選択性は、温度、及び触媒の選択に依存して、約10%から約23%まで様々であり得る。1atmにおけるE異性体の沸点は約-19℃であり、一方、Z異性体の沸点は約+9℃である。多くの用途では、E異性体が好ましい。通常望ましくないZ異性体の形態での収率損失を最低限に抑えるために、Z異性体をE異性体に異性化するための異性化工程を追加するか、又はHFC-1234ze(Z)をHFC-245faに変換し戻すフッ素化工程を追加することが必要となる。
【0045】
本開示の実施形態による脱フッ素化フッ素化反応は、共沸をもたらし、ほとんどの場合、HFO-1234ze(E)及びHFO-1234yfの近共沸組成物をもたらし得、過剰量のHFO-1234yfを除去するための精製又は分離工程の必要性を最小化又は排除する。共沸組成物とは、単一の物質として挙動する2種以上の物質の定沸点混合物を意味する。共沸組成物の特性を決定する1つの方法は、液体の部分的蒸発又は蒸留によって生成された蒸気が、蒸発又は蒸留させた液体(すなわち、組成変化を伴わない混合蒸留物/還流物)と同じ組成物を有することである。定沸点組成物は、共沸であると特徴付けられるが、その理由は、同一化合物の非共沸混合物と比較して、最高沸点又は最低沸点のいずれかを示すためである。動作中、冷却又は空調システム内で共沸組成物が分留されることはない。更に、冷却又は空調システムからの漏出時に、共沸組成物が分留されることはない。混合物の1つの成分が可燃性である状況では、漏れの間の分留は、システム内又はシステム外のいずれかの可燃性組成物につながる可能性がある。
【0046】
近共沸組成物とは、基本的に単一の物質として挙動する2種以上の化合物の実質的定沸点液体混合物を意味する。近共沸様組成物の特性を決定する1つの方法は、液体の部分的蒸発又は蒸留によって生成させた蒸気が、蒸発又は蒸留させた液体(すなわち、実質的組成変化を伴わない混合蒸留物/還流物)と実質的に同じ組成物を有することである。近共沸様組成物を特徴付ける別の方法は、特定の温度における組成物の泡立ち点蒸気圧及び露点気圧が実質的に同じであることである。特に、本発明の組成物は、蒸発又は煮沸等によって組成物の50重量%を除去した後に、元の組成物と元の組成物の50重量%を除去した後に残存する組成物との間の蒸気圧の差が約10%未満である場合、近共沸組成物である。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、本発明の近共沸組成物は、ASHRAE Standard 34及びASTM E681-09によって決定されるA2Lの可燃性評価を有する。
【0048】
上記に数多くの態様及び実施形態が記述されているが、これらは単に例示であり、限定するものではない。本明細書を読んだ後、当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様及び実施形態が可能であることを理解するであろう。
【0049】
実施形態のうちの任意の1つ以上のその他の特徴及び利点は、以下の「発明を実施するための形態」及び特許請求の範囲により明らかとなるであろう。
【0050】
特定の脱フッ化水素処理は当該技術分野において周知であり、蒸気相で行われることが好ましい。脱フッ化水素反応は、任意の好適な反応槽又は反応器内で行うことができるが、反応槽又は反応器は、好ましくは、ニッケル、並びにハステロイ、モネル、及びインコネルなどのその合金のようなフッ化水素の腐食作用に耐性を有する材料、又はフルオロポリマーでライニングした容器から構成されなければならない。これらは、脱フッ化水素処理触媒を充填した単一の管又は複数の管であってもよい。
【0051】
該プロセスで有用な触媒としては、フッ素化酸化クロムなどのクロム系触媒が挙げられ、該触媒は、担持されていなくてもよく、又は活性炭素、グラファイト、フッ素化グラファイト、又はフッ素化アルミナなどの担体上に担持されていてもよい。クロム触媒は単独で使用されてもよく、又はニッケル、コバルト、マンガン、若しくは亜鉛塩から選択される共触媒の存在下で使用されてもよい。一実施形態では、クロム触媒は、高表面積酸化クロム、又はその製造が欧州特許第486,333号において報告されているフッ素化アルミナの上のクロム/ニッケル(Cr/Ni/AlF3)である。別の実施形態では、触媒はフッ素化ギネー緑触媒(Guignet's green catalyst)である。追加の好適な触媒としては、JM 62-2(Johnson Mattheyから入手可能なクロム触媒)、LV(ケマーズから入手可能なクロム触媒)、JM-62-3(Johnson Mattheyから入手可能なクロム触媒)、及びNewport Chrome(Chemoursから入手可能なクロム触媒)が挙げられるが、これらに限定されない。クロム触媒は、典型的には、触媒を窒素流下である時間にわたって350~400℃に加熱した後、その触媒をHF及び窒素又は空気流下で更にある時間にわたって加熱する手順によって、使用前に活性化させることが好ましい。
【0052】
一実施形態では、本発明において用いられるフッ素化物活性化ギネー緑触媒のギネー緑は、500℃~800℃でホウ酸をアルカリ金属二クロム酸塩と反応(結合)させた後、反応生成物を加水分解することによって生成されるので、ギネー緑は、ホウ素、アルカリ金属、及び水和水を含有している。通常のアルカリ金属二クロム酸塩は、ナトリウム及び/又はカリウム二クロム酸塩である。反応の後には、典型的には、空気中で反応生成物を冷却する工程、この固体を粉砕して粉末を製造する工程、その後の加水分解、濾過、乾燥、ミリング、及びスクリーニング工程が続く。ギネー緑は帯青緑色であるが、主に緑色顔料として知られており、したがって緑色顔料は一般にギネー緑と呼ばれる。触媒として使用する場合もまた、米国特許第3,413,363号に開示されているようにギネー緑と呼ばれる。米国特許第6,034,289号において、Cr2O3触媒は、好ましくはアルファ型であるものとして開示されており、ギネー緑は、組成物:Cr2O379-83%、H2O16-18%、B2O51.5~2.7%(文架橋列2及び3)を有する市販の緑色顔料として開示され、アルファ形式(列3、I.3)に変換することができる。米国特許第7,985,884号は、実施例1に開示されたギネー緑の組成物中、ギネー緑中のアルカリ金属(54.5%のCr、1.43%のB、3,400ppmのNa、及び120ppmのK)が存在することを記載している。
【0053】
触媒の物理的形状は重要ではなく、例えば、ペレット、押出品、粉末、又は顆粒を含むことができる。触媒のフッ素化物活性化は、触媒の最終形状で実施されることが好ましい。
【0054】
一実施形態では、本発明は、HFC-245faと、少なくとも約10重量%のHFO-1234zeのZ異性体との混合物を、酸素含有ガスの存在下で脱フッ化水素反応器に供給することによって、更なるZ異性体の形成を抑制することができるので、脱フッ化水素処理によって変換されたHFC-245faは実質的にE-HFO-1234ze及びHFO-1234yfのみを生成することに関する。供給量が約10%未満では、更なるZ-1234zeの形成はある程度抑制される。Z-1234zeの供給量が約10重量%超では、分離して再利用しなければならない追加物質の存在をもたらすだけである。Z異性体生成物の更なる形成を抑制するために必要であるZ-1234zeの量は、変換率にある程度依存する。70%の245fa変換率では、供給物中に約10~11%のZ異性体が必要である。80%の変換率では、供給物中に約13%のZ異性体が必要である。
【0055】
一実施形態では、反応容器は、200℃~375℃の温度で保持することができる。別の実施形態では、反応は約250℃~350℃の温度で行うことができる。更に別の実施形態では、反応容器は、275℃~325℃の温度で保持することができる。
【0056】
反応圧力は、大気圧より低い圧力、大気圧、又は大気圧より高い圧力とすることができる。一実施形態では、反応は、14psig~約100psigの圧力で実施される。別の実施形態では、反応は、14psig~約60psigの圧力で実施される。別の実施形態では、反応は、40psig~約85psigの圧力で実施される。別の実施形態では、反応は、50psig~約75psigの圧力で実施される。一般的に、大気圧以上に高められた反応器内の圧力は、このプロセスにおける反応物質の接触時間を増加させるように作用する。接触時間が長くなると、プロセスにおける変換度が必然的に増加するので、温度を高くする必要がない。
【0057】
反応器の温度及び接触時間に応じて、反応器の生成混合物は異なる量の未反応HFC-245faを含有することになる。次に、E-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン及びHFO-1234yfを、Z-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、フッ化水素、及び全ての未反応HFC-245faから分離し得、追加のHFC-245faと共に反応器に戻されて再利用される。フッ化水素は、苛性水溶液に反応器排出液を通過させることによってスクラビングで除去されてもよく、又はフッ化水素は蒸留によって除去されてもよい。特に好適な実施形態において、本開示のプロセスから形成される組成物は、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))及び2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)の両方を含み、これらは分離されていない。
【0058】
一実施形態では、反応器供給物は、気化器内で約30℃~約100℃の温度まで予熱される。別の実施形態では、反応器供給物は、気化器内で約30℃~約80℃の温度に予熱される。
【0059】
いくつかの実施形態では、不活性希釈ガスが、ヒドロクロロフルオロプロパンのキャリアガスとして用いられる。一実施形態では、キャリアガスは、窒素、アルゴン、ヘリウム、又は二酸化炭素から選択される。
【0060】
一実施形態では、生成混合物は、0.01%~1.00%のHFO-1234yf、あるいは0.05%~0.95%のHFO-1234yf、あるいは0.10%~0.90%のHFO-1234yf、あるいは0.20%~0.80%のHFO-1234yf、あるいは0.01%~0.20%のHFO-1234yf、あるいは0.10%~0.30%のHFO-1234yf、あるいは0.20%~0.40%のHFO-1234yf、あるいは0.30%~0.50%のHFO-1234yf、あるいは0.30%~0.40%のHFO-1234yf、あるいは0.40%~0.60%のHFC-1234yf、あるいは0.50%~0.70%のHFO-1234yf、あるいは0.60%~0.80%のHFO-1234yf、あるいは0.70%~0.70%のHFO-1234yf、あるいは0.80%~1.00%のHFO-1234yfを含む(モルベース)。
【0061】
いくつかの実施形態において、任意選択的にフルオロプロペン組成物は、R-143a、R-152a、TFP、R-1233xf、R-1233zd(E)、又はR-1233zd(Z)のうちの1つ以上を更に含む。いくつかの実施形態において、総フルオロプロペン組成物に基づいて、R-143a、R-152a、TFP、R-1233xf、R-1233zd(E)、及びR-1233zd(Z)の総量は、0.01モル%~2モル%である。一実施形態において、フルオロプロペン組成物は、総伝熱媒体に基づいて、0.7モル%~1.15モル%の量のR-1233zd(E)を含む。一実施形態において、フルオロプロペン組成物は、総伝熱媒体に基づいて、0.05モル%~0.25モル%の量のR-1233zd(Z)を含む。一実施形態において、フルオロプロペン組成物は、総フルオロプロペン組成物に基づいて、0.05モル%~0.25モル%の量のR-143aを含む。
【0062】
他の実施形態では、フルオロプロペン組成物は、任意選択的に、1224yd、1224zc、1326mxz、113、32、23、トリフルオロプロピン、356mff、1326mxz、HFC-245fa、及びHFC-245cbのうちの1つ以上を含む。
【0063】
特定の一実施形態では、1224yd、1224zc、1326mxz、113、32、23、トリフルオロプロピン、356mff、1326mxz、HFC-245fa及びHFC-245cbの量の合計は、総フルオロプロペン組成物に基づいて、0.001モル%~2モル%である。
【0064】
フルオロプロペン組成物は、様々な用途において有用であり得る。一実施形態において、フルオロプロペン組成物は、冷媒として使用されてもよい。いくつかの実施形態では、フルオロプロペン組成物は、より環境に優しい組成物を提供するために、古い世代の冷媒(例えば、R404A、R502)の代替品として使用され得る。いくつかの実施形態では、フルオロプロペン組成物は、ハイドロフルオロ-オレフィン組成物であってもよい。一実施形態において、フルオロプロペン組成物は、99モル%~99.99モル%の1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)(E)と、0.01モル%~1.0モル%の2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)を含む。別の実施形態では、フルオロプロペン組成物は、HFO-1234ze(Z)を実質的に含まない近共沸組成物である。実質的に含まないとは、フルオロプロペン組成物が、約1000ppm未満、約500ppm未満、典型的には約100ppm未満のHFO-1234ze(Z)を含有することを意味する。
【0065】
一実施形態において、本発明のフルオロプロペン組成物は、他のフルオロケミカルとブレンドすることができる。本発明のこの実施形態は、本発明の近共沸組成物(例えば、HFO-1234ze(E)及びHFO-1234yf)と、HFC-1234ye、HFC-1243zf、HFC-32、HFC-125、HFC-134、HFC-134a、HFC-143a、HFC-152a、HFC-161、HFC-227ea、HFC-236ea、HFC-236fa、HFC-245fa、HFC-365mfc、プロパン、n-ブタン、イソブタン、2-メチルブタン、n-ペンタン、シクロペンタン、ジメチルエーテル、CF3SCF3、CO2、CF3I及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの化合物を含む、冷媒組成物に関連する。
【0066】
いくつかの実施形態において、フルオロプロペン組成物は、冷却システムにおいて使用され得る。冷却システムの一実施形態は、蒸発器、凝縮器、圧縮機、膨張装置、及び伝熱媒体を含む。伝熱媒体は、フルオロプロペン組成物を含む。伝熱媒体は、冷媒又は空調装置での使用に好適な潤滑剤を含む少なくとも1つの潤滑剤を更に含むことができる。これらの潤滑剤の中でも、クロロフルオロカーボン冷媒を利用する圧縮冷媒装置において従来用いられているものである。このような潤滑剤及びその特性は、参照により本明細書に援用される1990 ASHRAE Handbook,Refrigeration Systems and Applications、第8章、表題「Lubricants in Refrigeration Systems」、8.1~8.21頁で論じられている。本発明の潤滑剤は、圧縮冷媒潤滑の分野において「鉱油」として一般的に知られているものを含み得る。鉱油は、パラフィン(すなわち、直鎖状及び分枝状炭素鎖の飽和炭化水素)、ナフテン(すなわち、環状又は環構造飽和炭化水素は、パラフィンであり得る)、並びに芳香族(すなわち、交互二重結合を特徴とする1つ以上の環を含有する不飽和環状炭化水素)を含む。本発明の潤滑剤は、圧縮冷媒潤滑の分野において「合成油」として一般的に知られているものを更に含む。合成油は、アルキルアリール(すなわち、直鎖状及び分枝状アルキルアルキルベンゼン)、合成パラフィン及びナフテン、シリコーン、並びにポリ-アルファ-オレフィンを含む。本発明の代表的な従来の潤滑剤は、市販されているBVM 100 N(BVA Oilsによって販売されているパラフィン系鉱油)、Crompton Co.によって商標名Suniso(登録商標)3GS及びSuniso(登録商標)5GSとして市販されているナフテン系鉱油、商標名Sontex(登録商標)372LTとしてPennzoilから市販されているナフテン系鉱油、商標名Calumet(登録商標)RO-30としてCalumet Lubricantsから市販されているナフテン系鉱油、商標名Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150、及びZerol(登録商標)500としてShrieve Chemicalsから市販されている直鎖状アルキルベンゼン、並びにHAB22としてNippon Oilによって販売されている分枝状アルキルベンゼンである。
【0067】
一実施形態では、潤滑剤成分は、冷媒と共に使用するために設計されており、かつ圧縮冷媒及び空調装置の動作条件下で本発明のフルオロプロペン組成物(例えば、近共沸組成物)と混和できるものを含むことができる。このような潤滑剤及びその特性は、「Synthetic Lubricants and High-Performance Fluids」、R.L.Shubkin、Marcel Dekker編、1993年で論じられている。このような潤滑剤としては、Castrol(登録商標)100(Castrol,United Kingdom)などのポリオールエステル(POE)、Dow(Dow Chemical,Midland,Michigan)製のRL-488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG)、及びポリビニルエーテル(PVE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
本発明の潤滑剤は、所与の圧縮機の要件、及び潤滑剤が曝されるであろう環境を考慮することによって選択される。潤滑剤の量は、冷媒組成物の約1~約50、約1~約20、場合によっては約1~約3%重量の範囲であり得る。具体的な一実施形態では、前述の冷媒組成物は、内燃機関を有する自動車用A/Cシステムで使用するためのPAG潤滑剤と組み合わされる。別の具体的な実施形態では、前述の冷媒組成物は、電気又はハイブリッド電気ドライブトレインを有する自動車用A/Cシステムで使用するためにPOE潤滑剤と組み合わされる。
【0069】
一実施形態では、冷媒組成物は、本発明の近共沸組成物、少なくとも1つの潤滑剤、並びに冷媒及び望ましく空調システムの寿命及び圧縮機の耐久性を改善することができる少なくとも1つの添加剤を含む。本発明の一態様では、前述の冷媒組成物は、酸スカベンジャー、性能向上剤、及び火炎抑制剤からなる群から選択される少なくとも1つの部材を含む。
【0070】
別の実施形態では、フルオロプロペン組成物は、熱を伝達するプロセスに使用されてもよい。プロセスは、物品を提供する工程と、物品をフルオロプロペン組成物を含む伝熱媒体と接触させる工程と、を含み得る。いくつかの実施形態では、物品は、電気機器(例えば、回路基板、コンピュータ、ディスプレイ、半導体チップ、又は変圧器)、熱転写表面(例えば、ヒートシンク)、又は衣類の物品(例えば、ボディスーツ)を含んでもよい。
【0071】
別の実施形態では、フルオロプロペン組成物は、表面を処理するためのプロセスにおいて使用されてもよい。プロセスは、その上に堆積された処理可能な材料を有する表面を提供する工程と、表面にフルオロプロペン組成物を含む処理組成物を接触させる工程とを含み得る。いくつかの実施形態では、処理組成物は、処理可能な材料を実質的に溶解し得る。
【0072】
別の実施形態では、フルオロプロペン組成物は、組成物を形成するためのプロセスにおいて使用されてもよい。このプロセスは、溶質を提供する工程と、溶質をフルオロプロペン組成物を含む溶媒と接触させる工程と、を含む。いくつかの実施形態では、フルオロプロペン組成物は、溶質を実質的に溶解し得る。
【0073】
別の実施形態では、本発明は、発泡体の調製に使用するための、本明細書に記載のフルオロオレフィン含有組成物(例えば、近共沸含有組成物)を含む発泡剤組成物に関する。他の実施形態では、本発明は発泡性組成物、好ましくはポリウレタン及びポリイソシアネート発泡体組成物、並びに発泡体の調製方法を提供する。このような発泡体の実施形態では、本フルオロオレフィン含有組成物のうちの1つ以上は、発泡性組成物に泡膨張剤として含まれ、当該組成物は、好ましくは、発泡体又は気泡構造を形成するために適切な条件下で反応及び発泡することができる1つ以上の追加成分を含む。本明細書に参照により援用される「Polyurethanes Chemistry and Technology」、I、II巻、Saunders and Frisch、1962年、John Wiley and Sons,New York,N.Y.に記載されるような当該技術分野では周知の方法のいずれも、本発明の発泡体の実施形態に従って使用又は適用することができる。
【0074】
本発明は更に、(a)発泡性組成物にフルオロオレフィン含有組成物を添加する工程と、(b)発泡体を形成するのに有効な条件下で発泡性組成物を反応させる工程と、を含む、発泡体を形成する方法に関する。
【0075】
本発明の別の実施形態は、噴霧可能な組成物中の噴射剤として使用するための、本明細書に記載のフルオロオレフィン含有組成物(例えば、HFO-1234ze(E)及びHFO-1234yfの近共沸組成物)の使用に関する。更に、本発明は、本明細書に述べられるフルオロオレフィン含有組成物を含む、噴霧可能な組成物に関する。不活性成分、溶媒及び他の材料と共に噴霧される活性成分が、噴霧可能な組成物中に存在してもよい。好ましくは、噴霧可能な組成物はエアゾールである。噴霧するのに好適な活性物質としては、これらに限定されるものではないが、防臭剤、香料、ヘアスプレー、洗浄剤、及び研磨剤などの化粧品原料、並びに抗喘息薬及び口臭防止薬などの医薬品が挙げられる。
【0076】
本発明は更に、エアゾール製品を製造するためのプロセスであって、本明細書に述べられるフルオロオレフィン含有組成物をエアゾール容器内で有効成分に添加する工程を含み、当該組成物が噴射剤として機能する、プロセスに関する。
【0077】
本明細書で使用するとき、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素に必ずしも限定されるものではなく、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に対して明示的に記載されていない、又はこれらに固有のものではない、他の要素も含む場合がある。更に、明示的にこれに反する記載がない限り、「又は」は、包括的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下、すなわち、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)のいずれか1つにより満たされる。
【0078】
移行句「からなる」は、特定されていない任意の要素、工程、又は成分を除外する。特許請求の範囲における場合には、材料に通常付随する不純物を除き、このような句は、列挙された材料以外の材料を含むことに対して特許請求の範囲を限ることになる。句「からなる」が、序文の直後ではなく特許請求の範囲の本文の文節内で現れるとき、この句は、その文節内に記載する要素のみを限定するものであり、他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。移行句「から本質的になる」は、これらの追加的に含まれる材料、工程、機構、構成成分、又は要素が、特許請求される発明の基本的及び新規の特徴(複数可)、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための作用機序に実質的に影響を及ぼさないことを条件に、文字通り開示されているものに加えて、材料、工程、機構、構成成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用される。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間の意味を持つ。
【0079】
本発明の実施形態の前述の組み合わせでは、近共沸組成物は、HFO-1234ze(E)及びHFO-1234yfを含み、及びそれらから基本的になる又はなる。
【0080】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載された要素及び成分を記述するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0081】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を、本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、好適な方法及び材料を以下に記載する。本明細書において言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及びその他の参照文献は、特定の一節を引用するものでない限り、その全文が参照により本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含め、本明細書が優先される。更に、材料、方法、及び実施例は、単なる例証であり、限定することを意図するものではない。
【実施例0082】
本明細書に記述される概念について以下の実施例で更に説明するが、これは、特許請求の範囲に記載する本発明の範囲を限定するものではない。
【0083】
(実施例1)
実施例1は、Z-HFC-1234zeの存在下でCr2O3の上を通過させる245faの脱フッ化水素処理を示す。
【0084】
インコネル管(外径1.3センチメートル(1/2インチ))に、以下の通りに調製したCr2O3触媒(Johnson Mathey)を10cc(8グラム)充填した。押出し形状の酸化クロムを粉砕し、12/20メッシュの篩にかけた。反応器管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージした。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを20cc/分で60分間送り込んだ。この温度を325℃に300分間上昇させた。次に、窒素流を30cc/分に低下させて、HF流を30cc/分に30分間上昇させた。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させた。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させた。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させた。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージした。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの量を変化させたCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込んだ。反応器内での接触時間は45秒であった。CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させた。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析した。Z-1234ze、245fa、及びE-1234zeに関する量はモル%として表されている。結果を表1にまとめる。
【0085】
【0086】
(実施例2)
実施例2は、Z-HFC-1234zeの存在下でCr2O3の上を通過させる245faの脱フッ化水素処理を示す。
【0087】
インコネル管(外径1.3センチメートル(1/2インチ))に、以下の通りに調製したCr2O3触媒(ギネー緑)を10cc(8グラム)充填した。押出し形状の酸化クロムを粉砕し、12/20メッシュの篩にかけた。反応器管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージした。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを20cc/分で60分間送り込んだ。この温度を325℃に300分間上昇させた。次に、窒素流を30cc/分に低下させて、HF流を30cc/分に30分間上昇させた。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させた。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させた。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させた。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージした。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの量を変化させたCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込んだ。反応器内での接触時間は45秒であった。CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させた。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析した。Z-1234ze、245fa、及びE-1234zeに関する量はモル%として表されている。結果を表2にまとめる。
【0088】
【0089】
(実施例3)
実施例3は、Z-HFC-1234zeの存在下でCr2O3の上を通過させる245faの脱フッ化水素処理を示す。
【0090】
インコネル管(外径1.3センチメートル(1/2インチ))に、以下の通りに調製したCr2O3触媒(Johnson Mathey)を10cc(8グラム)充填した。押出し形状の酸化クロムを粉砕し、12/20メッシュの篩にかけた。反応器管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージした。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを20cc/分で60分間送り込んだ。この温度を325℃に300分間上昇させた。次に、窒素流を30cc/分に低下させて、HF流を30cc/分に30分間上昇させた。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させた。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させた。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させた。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージした。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの量を変化させたCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込んだ。反応器内での接触時間は45秒であった。CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させた。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析した。Z-1234ze、245fa、及びE-1234zeに関する量はモル%として表されている。結果を表3にまとめる。
【0091】
【0092】
(実施例4)
実施例4は、Z-HFC-1234zeの存在下でCr2O3の上を通過させる245faの脱フッ化水素処理を示す。
【0093】
インコネル管(外径1.3センチメートル(1/2インチ))に、以下の通りに調製したCr2O3触媒(Newport Cr)を10cc(8グラム)充填した。押出し形状の酸化クロムを粉砕し、12/20メッシュの篩にかけた。反応器管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージした。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを20cc/分で60分間送り込んだ。この温度を325℃に300分間上昇させた。次に、窒素流を30cc/分に低下させて、HF流を30cc/分に30分間上昇させた。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させた。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させた。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させた。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージした。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの量を変化させたCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込んだ。反応器内での接触時間は45秒であった。CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させた。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析した。Z-1234ze、245fa、及びE-1234zeに関する量はモル%として表されている。結果を表4にまとめる。
【0094】
【0095】
(実施例5)
実施例5は、Z-HFC-1234zeの存在下でフッ素化アルミナに通過させる245faの脱フッ化水素処理を示す。
【0096】
インコネル管(外径1.3センチメートル(1/2インチ))に、10cc(6.1グラム)のAl2O3触媒(Sigma-Aldrichより購入)を充填する。押出し形状のAl2O3を粉砕し、12/20メッシュの篩にかける。反応器管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージする。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを、20cc/分で60分間送り込む。この温度を325℃に300分間上昇させる。次いで窒素流を、30cc/分に低下させて、HF流を、30cc/分に30分間上昇させる。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させる。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させる。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させる。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージする。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの量を変化させたCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込む。反応器内での接触時間は45秒である。
【0097】
CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させる。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析する。Z-1234ze、245fa、及びE-1234zeに関する量はモル%として表されている。結果を表5にまとめる。
【0098】
【0099】
(実施例6)
表6は、Z-HFC-1234ze(モル%)の存在下での、様々な触媒に対する245faの脱水素フッ素化の反応生成物を開示する。
【0100】
【0101】
インコネル管(1/2インチOD)に、10cc(8gm)の触媒を充填した(表6を参照されたい)。反応器管に充填後、触媒層の温度を300℃に上昇させて、窒素(30cc/分)で200分間パージした。次いで窒素流を60cc/分に低下させて、HFを20cc/分で60分間送り込んだ。この温度を325℃に300分間上昇させた。次に、窒素流を30cc/分に低下させて、HF流を30cc/分に30分間上昇させた。次に、窒素流を12cc/分に低下させて、HF流を48cc/分に60分間上昇させた。次に、窒素流を中止して、HF流を48cc/分に30分間上昇させた。次いで、反応器の温度を250℃に30分間低下させた。その後HFを止めて、反応器を30cc/分の窒素でパージした。次に、反応器の温度を300℃で安定にし、窒素流を止めて、CF3CH2CHF2、又はZ-1234zeの10.5-11%のCF3CH2CHF2のいずれかを、1.44mL/時間で送り込んだ。反応器内での接触時間は45秒であった。CF3CH2CHF2を50℃で蒸発させた。反応器排出液の一部を、一連のバルブに通過させて、GCMSにより分析した。Z-1234ze、134a、152b、TFP、1234yf、1233xf、E-1233zd、Z-1233zd及びE+Z-1234zeの量はモル%として表される。結果を表6にまとめる。
【0102】
(実施例7)
表7は、%変化に関して蒸気圧のデルタPを測定することによって、本発明の方法によって生成され得る様々な組成物の近共沸特性を示す。ΔP蒸気圧は、蒸気の50%が除去された50%蒸気漏出後の-25℃における蒸気圧変化である。
【0103】
【0104】
(実施例8)
表8は、冷却能力とエネルギー効率(COP)をHFO-1234ze(E)と比較することにより、本発明の方法によって製造され得る様々な近共沸組成物の冷却性能を示す。データは、以下の条件に基づく。
T_凝縮器=47.0 degC
T_蒸発器=7.0 degC
過冷却=12.0 K
過熱=3.0 K
圧縮機効率=0.7
平均熱交換温度設定点
過熱は冷媒効果に含まれる。
【0105】
冷却負荷=1.0トン
圧縮機変位=0.1(m^3/分)
【0106】
【0107】
実施例8は、本発明の近共沸組成物が冷媒としての使用に有効であり、HFO-1234ze(E)と少なくとも同等の冷媒特性を有することを示す。
【0108】
全般記述において上述された作業又は実施例の全てが必要なわけではなく、特定の作業の一部分は必要でない場合があり、また、1つ以上の更なる作業を上述の作業に加えて実施してもよいことに注意されたい。また更に、作業が記載されている順序は、必ずしも実施される順序ではない。
【0109】
利益、その他の利点、及び問題の解決策が、具体的な実施形態に関連して上記に記述されている。しかしながら、これらの利益、利点、問題の解決策、及び、任意の利益、利点又は解決策を生じる場合がある又はより明らかにする場合があるようないかなる特徴も、特許請求の範囲の一部又は全てにおいて必須、必要、又は不可欠な特徴として解釈されるものではない。
【0110】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において本明細書に記述されている特定の特徴は、単一の実施形態中で組み合わせて提供されてもよいことが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈において記述されている様々な特徴も、別個に提供されてよく、また任意の下位組み合わせで提供されてもよい。更に、範囲で記載した値に対する言及は、その範囲内の各値及び全ての値を含む。
【0111】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明してきたが、当業者には、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変更を行うことができ、その要素の代わりに同等物を使用することができることが理解されるであろう。加えて、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるために、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために企図される最良の形態として開示されている特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる全ての実施形態を含むことが意図される。