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特開2024-56022リチウムイオン二次電池用の改善された多層微多孔性セパレータおよび関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056022
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用の改善された多層微多孔性セパレータおよび関連方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/417 20210101AFI20240412BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240412BHJP
   H01M 50/406 20210101ALI20240412BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240412BHJP
   H01M 50/491 20210101ALI20240412BHJP
   H01M 50/497 20210101ALI20240412BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20240412BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/403 B
H01M50/406
H01M50/489
H01M50/491
H01M50/497
H01M50/457
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034361
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2022167933の分割
【原出願日】2015-11-24
(31)【優先権主張番号】62/084,655
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】598064680
【氏名又は名称】セルガード エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シャオミン
(72)【発明者】
【氏名】シー,リイ
(72)【発明者】
【氏名】パウルス,ウィリアム ジョン
(57)【要約】
【課題】リチウムイオン二次電池用の改善された多層積層微多孔性電池セパレータ、およ
び/またはこのセパレータの製造方法または使用方法が提供される。
【解決手段】好ましい本発明のドライプロセスセパレータは、リチウムイオン電池の改善
されたサイクル性能および充電性能のために改善された突刺強度および低電気抵抗を有す
る12μm~30μmの範囲の厚さの三層積層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロ
ピレン微多孔膜である。さらに、好ましい本発明のセパレータのまたは膜の低電気抵抗お
よび高気孔率は、高出力用途用リチウム電池の優れた充電レート性能を与える。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規または改善されたセパレータ、膜またはベースフィルムであって、ドライ延伸プロセスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜を含み、前記ドライ延伸プロセスによりポリオレフィン樹脂、ミックスまたはブレンドが押出成形されて前記膜が形成され、前記樹脂が約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、
前記セパレータが、約12μm以上の厚さ、約35%~約65%の範囲の気孔率、および約1.5オーム-cm以下の電気抵抗(ER)値を有し、および、
必要に応じて、前記セパレータが、多層もしくは三層セパレータまたはベースフィルムであり、ドライ延伸プロセスにより作製され、積層形成プロセスにより作製され、少なくとも280gfの突刺強度(PS)および少なくとも12μmの厚さを有し、少なくとも330gfの突刺強度(PS)および少なくとも14μmの厚さを有し、少なくとも350gfの突刺強度(PS)および少なくとも16μmの厚さを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、37%を超える気孔率を有し、少なくとも39%の気孔率を有し、約35%~65%の範囲の気孔率を有し、約39%~53%の範囲の気孔率を有し、1.5オーム-cm以下のERを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、ドライプロセスにより製造された少なくとも2種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、ドライプロセスにより製造された少なくとも3種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、少なくとも1種のポリエチレン膜を含み、および/または少なくとも2種のポリプロピレン膜を含む、新規または改善されたセパレータ、膜またはベースフィルム。
【請求項2】
多層セパレータ、膜またはベースフィルムである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
三層セパレータ、膜またはベースフィルムである、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項4】
ドライ延伸プロセスにより作製される、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
積層形成プロセスにより作製される、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
少なくとも330gfの突刺強度(PS)を有し、少なくとも14μmの厚さを有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
少なくとも350gfの突刺強度(PS)を有し、少なくとも16μmの厚さを有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項8】
少なくとも35%、37%を超える、または少なくとも39%の気孔率を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項9】
約35%~65%の範囲、または約39%~53%の範囲の気孔率を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
1.5オーム-cm以下のERを有し、少なくとも35%の気孔率を有する、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項11】
ドライ延伸プロセスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜であって、前記ドライ延伸プロセスによりポリプロピレン樹脂が押出成形されて前記膜が形成され、前記樹脂が約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有する微多孔膜を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項12】
新規または改善された多層セパレータ、膜またはベースフィルムであって、
ドライ延伸プロセスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜であって、前記ドライ延伸プロセスによりポリオレフィン樹脂、ミックスまたはブレンドが押出成形されて前記膜が形成され、前記樹脂が約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有する微多孔膜を有し、ならびに
前記セパレータが、約14μm以上の厚さ、約35%~約65%の範囲の気孔率、および約1.5オーム-cm以下の電気抵抗(ER)値を有し、および、
必要に応じて、前記セパレータが、三層セパレータまたはベースフィルムであり、ドライ延伸プロセスにより作製され、積層形成プロセスにより作製され、少なくとも330gfの突刺強度(PS)および少なくとも14μmの厚さを有し、少なくとも350gfの突刺強度(PS)および少なくとも16μmの厚さを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、37%を超える気孔率を有し、少なくとも39%の気孔率を有し、約35%~65%の範囲の気孔率を有し、約39%~53%の範囲の気孔率を有し、1.5オーム-cm以下のERを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、ドライプロセスにより製造された少なくとも2種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、ドライプロセスにより製造された少なくとも3種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、少なくとも1種のポリエチレン膜を含み、および/または少なくとも2種のポリプロピレン膜を含む、新規または改善されたセパレータ、膜またはベースフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、同時係属中の2014年11月26日出願された米国特許仮出願第62/0
84,655号の優先権および利益を主張する。この出願は参照により全体が本明細書に
組み込まれる。
【0002】
少なくとも選択実施形態では、本発明または本出願は、新規のまたは改善された電池用
セパレータ、ベースフィルムまたは膜、および/またはこのようなセパレータ、フィルム
または膜の製造方法および/または使用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態で
は、本発明または本出願は、リチウムイオン二次電池用の新規のまたは改善された単層ま
たは多層の共押出または積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのようなセパレ
ータの製造方法および/または使用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態では、
本発明は、リチウムイオン二次電池用の新規のまたは改善された多層積層微多孔性電池セ
パレータ、および/またはこのセパレータの製造方法および/または使用方法に関する。
好ましい可能性のある本発明のドライプロセスセパレータは、リチウムイオン電池の改善
されたサイクル性能および充電性能のために改善された突刺強度および低電気抵抗を有す
る12μm~30μmの範囲の厚さの三層積層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロ
ピレン(PP/PE/PP)微多孔膜である。さらに、好ましい本発明のセパレータまた
は膜の低電気抵抗および高気孔率は、高出力用途用リチウム電池の優れた充電レート性能
を与える。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン二次電池用の微多孔性セパレータ膜の機械的強度を高めるための種々の
方法が存在する。ドライプロセス微多孔性電池セパレータ膜の機械的強度を向上させる1
つのこのような方法は、米国特許第6,602,593号で考察されている。この方法は
、インフレート法実施中の、少なくとも1.5のブローアップ比(BUR)の使用に基づ
いている。当業者には知られているように、ブローアップ比法は、環状ダイからのインフ
レートフィルムの半径方向伸長を伴う。1.5以上のブローアップ比を使って、押出成形
膜の横方向(TD)での結晶構造配向レベルの増加が達成された。
【0004】
米国特許第8,795,565号は、制御された縦方向(MD)緩和プロセスステップ
によるドライプロセス前駆体膜のMDおよびTDの両方の延伸を伴う2軸延伸技術につい
て記載している。2軸延伸膜は、縦方向(MD)およびTD方向に改善された機械的強度
を有し、リチウムイオン電池の電池セパレータ膜として使用される場合、優れた強度性能
が予測され得る。
【0005】
米国特許第8,486,556号は、混合貫通強度試験方法で定義される強度が向上し
た多層電池セパレータを開示している。この強度は、セパレータ膜を通して短絡を形成す
るのに必要な力の尺度である。PP/PE/PP三層構造の多層セパレータ膜のポリプロ
ピレン層で測定して、1.2グラム/10分以下のメルトフローインデックスを有する高
分子量ポリプロピレン樹脂を使って、21~24.5μmの範囲の厚さ、35%~37%
の範囲の気孔率、18~19秒のASTMガーレイ(JISガーレイ=450~475秒
と同じ)、および2.1~2.3オーム-cmの範囲の電気抵抗(ER)(用語のイオ
ン抵抗、IRに同じ)を有する多層セパレータを製造した。
【0006】
同様に、通常2軸延伸され、ほぼ均等のMDおよびTD強度特性を有し得るウエットプ
ロセス微多孔性電池セパレータも知られている。ウエットプロセスを使って製造された微
多孔性膜の例は、米国特許第5,051,183号、同第6,096,213号、同第6
,153,133号、および同第6,666,969号のものであってよい。
【0007】
ウエットプロセス電池セパレータ膜は、通常、500,000を超える分子量、より好
ましくは1,000,000を超える分子量を有する極めて高分子量のポリマー樹脂を使
って製造され、溶融押出を可能とするために可塑剤(単一または複数)の使用が必要とな
る。さらに、可塑剤(単一または複数)として知られる成分は、典型的には油であるが、
極めて高分子量の樹脂で溶融押出をするためには使用する必要がある。可塑剤は、製造プ
ロセスの一部として、溶媒を使って抽出する必要がある。製造プロセスの抽出ステップ由
来の油可塑剤混入溶媒は、抽出溶媒および油を使用可能な純度品質にするために、再生す
る必要がある。これは追加の高価なエネルギーコストとなる。したがって、ウエットプロ
セスは、無溶媒で「環境に優しい」、影響の少ない、安価なドライプロセス法に比べて、
場合によっては環境上の課題のあるプロセスであり、高価な溶媒取り扱いおよび廃棄問題
を有する。
【0008】
BURインフレートフィルム法、ドライプロセス膜のTD延伸およびウエットプロセス
2軸延伸多孔膜の既知の方法は、さらに、低電気抵抗(ER)、2オーム-cm未満の
ER範囲のみでなく、1.3オーム-cm以下の遥かに低くより好ましいER範囲にお
いても、優れた強度性能特性を達成する必要がある。
【0009】
したがって、リチウムイオン電池において優れたサイクル性能および安全性を有する微
多孔性電池セパレータまたは膜を製造するドライプロセスで、無溶媒かつ環境上影響が低
いプロセスに対する必要性が存在する。高出力用途、例えば、電動駆動車(EDV)産業
の電池製造者は、好ましくは14~30μmの範囲の厚さ、微多孔を有し、最適高エネル
ギー性能のための高い充電レート(Cレート)を有する微多孔性電池セパレータを要望ま
たは要求している。さらに、これらのEDVおよびハイブリッド電気自動車(HEV)電
池システムの要件に適合するドライプロセス微多孔性電池セパレータまたは膜に対する必
要性がある。
【発明の概要】
【0010】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明は、上記必要性に対処
し、および/または新規のまたは改善された電池用セパレータ、ベースフィルムまたは膜
、および/またはこのようなセパレータ、フィルムまたは膜の製造方法および/または使
用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態、態様または対象物においては、本発明
または本出願は、リチウムイオン二次電池用の新規のまたは改善された単層または多層の
共押出または積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのようなセパレータの製造
方法および/または使用方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態では、本発明は、
リチウム電池、二次または充電式リチウム電池、リチウムイオン二次電池用の新規のまた
は改善された多層積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのセパレータの製造方
法および/または使用方法に関する。好ましい可能性のある本発明のドライプロセスセパ
レータは、リチウム電池の改善されたサイクル性能および充電性能のために改善された突
刺強度および低電気抵抗を有する14μm~30μmの範囲の厚さの三層積層ポリプロピ
レン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)微多孔膜である。さらに、好
ましい本発明のセパレータのまたは膜の低電気抵抗および高気孔率は、高出力用途(例え
ば、EDVまたはHEV)用リチウム電池の優れた充電レート(Cレート)性能を与える
【0011】
新規微多孔性電池セパレータはリチウムイオン蓄電池での使用のために開発された。好
ましい可能性のある本発明のセパレータ膜、セパレータ、ベースフィルムまたは膜は、ポ
リプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)三層構造を含むドラ
イプロセス多層積層微多孔性電池セパレータまたは膜である。多層PP/PE/PPは、
内側のPE層から提供される熱シャットダウン機能を含む。さらに、外側PP層は、サイ
クル性能およびトリクル充電性能の改善のための優れた酸化抵抗を提供する。好ましいポ
リプロピレン層は、押出成形により、可塑剤の使用を必要とせずに、高レベルの結晶質ラ
メラ配向を有する内部微細構造を備えた前駆体膜を生成する、高分子量で低メルトフロー
インデックスポリプロピレン樹脂または高分子量、低メルトフローインデックスポリプロ
ピレン樹脂のブレンドを使って製造される。PP層の前駆体膜中のこの高レベルの結晶質
ラメラ配向は、本発明のセパレータ多孔膜の改善された機械的強度性能において重要な役
割を果たし得る。さらに、ラメラ構造中の結晶化度は、微多孔性セパレータ膜の製造プロ
セスの延伸ステップ中の微細孔の形成において重要な役割を果たし得て、PP/PE/P
Pセパレータまたは膜における多孔質層の全体微細構造を構成する細孔径および気孔率パ
ーセントに対し大きな影響を与える。
【0012】
本発明の多層セパレータ、ベースフィルム(その他の層によりコートまたは積層される
ように構成されている)または膜は、ドライ延伸プロセス(CELGARD(登録商標)
ドライプロセス)により調製でき、このプロセスは、一般に、PPおよびPE非多孔性前
駆体を別々に押出成形すること、非多孔性前駆体をPP/PE/PP積層構造に一緒に接
合して接合非多孔性PP/PE/PP前駆体を形成すること、および延伸して微多孔性多
層膜を形成することを含み、細孔形成は、非多孔性、半結晶性の押出成形されたポリマー
前駆体を縦(MD)方向に延伸することによりもたらされる。
【0013】
低ER、高気孔率、低ガーレイおよび高突刺強度を備えた好ましい本発明の膜は、高出
力最終用途で使用するためのリチウムまたはリチウムイオン蓄電池において改善されたサ
イクル寿命性能および/またはより高水準の安全性を有する。
【0014】
インフレート押出前駆体フィルムの半径方向への伸長により達成された横方向(TD)
の向上した結晶構造配向が、機械的強度、特にTD引張強度およびTD伸びを改善し、延
伸微多孔膜の縦方向(MD)での剥離の減少が生じることが明らかになった。
【0015】
約12~30μmの範囲の好ましい厚さを有する代表的な本発明の多層膜は、38%以
上の高気孔率、1.5オーム-cm以下の低電気抵抗および320秒/100cc以下
の低JISガーレイに起因して、先行技術電池セパレータ膜に比べて、高充電レート性能
を有する。電池セパレータのERおよび高気孔率は、電解質の高レベルのイオン導電率に
繋がり、および/またはリチウムイオン二次電池の長いサイクル寿命を促進する。
【0016】
低ERおよび高気孔率を達成するために、本発明の多層セパレータ膜は、高分子量、低
メルトフローインデックスポリプロピレンポリマー樹脂を使用して製造されるのが好まし
い。この樹脂は、溶媒および抽出ステップを使用しないでドライプロセスを使って溶融押
出された場合、前駆体膜中に高レベルの結晶質ラメラ含量をもたらす。この高レベルの結
晶質ラメラを有する前駆体膜が延伸されて細孔が形成されると、得られた微多孔膜は、突
刺強度の増加、低ERおよび高気孔率を示す。セパレータは、電池の寿命全体を通して、
過酷なセルアセンブリおよび充放電サイクルに耐える大きな機械的強度を有する必要があ
る。本発明のセパレータは、14μmの厚さでの330gfから30μmの厚さでの54
9gfまでの範囲の突刺強度を有するのが好ましい。本発明のドライプロセス微多孔性電
池セパレータ膜は、リチウムイオン二次電池の電池サイクル寿命および安全性能の観点か
ら、ドライプロセスとウエットプロセス電池セパレータ微多孔性膜との間で等しいかまた
はより良好なセパレータ性能特性を有するのが好ましい。
【0017】
ドライプロセスでは、延伸ステップでの細孔形成方式は、縦方向延伸を含み、これは、
積層結晶質ラメラプレートを引き離し、ポリマーフィブリルを伸長させ、長方形の細孔を
形成する。前駆体膜の非多孔性PP層のラメラ構造中の結晶化度の量は、ドライプロセス
延伸微多孔膜の内部多孔質微細構造の形成に重要な因子であり得る。X.M.Zhang
、らの“Oriented Structure and Anisotropy Pr
operties of Polymer Blown Films HDPE,LLD
PE and LDPE”,POLYMER 45(2004)217-229中、およ
びS.Tabatabaei、らの“Microporous Membranes O
btained from PP/HDPE Multilayer Films by
Stretching”,JMS 345(2009)148-159中で、結晶相の
構造が、フィルムの機械的性質に強く影響を与えることが言及されている。本発明のより
高い結晶質ラメラ含量の前駆体膜が延伸されて細孔が形成されると、得られた微多孔膜は
、突刺強度の増加、低ERならびに高レベルの気孔率を示す。これらの因子のそれぞれが
、リチウムイオン二次電池の電池サイクル寿命および安全性の観点から、セパレータ膜の
高レベル性能に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】均一で秩序化積層ラメラ構造を示すエッチングしたPP膜の表面SEM顕微鏡写真である。
図2】PPおよびHDPE膜の応力-歪みプロットである。
図3】CE6微多孔性フィルムの表面の20,000x倍率のSEM顕微鏡写真である。
図4】CE5微多孔性フィルムの表面の20,000x倍率のSEM顕微鏡写真である。
図5】ポリプロピレン中の鎖折りたたみおよび折りたたみ中の分子レベルポリマー構造の模式図である(“The Theory of Birefringence”,Cambridge Polymer Group,2004,CPGAN # 014,www.campoly.com、を参照されたい)。
図6】本発明実施Ex.2の膜の表面のSEM顕微鏡写真である。
図7】Ex.2の膜の断面のSEM顕微鏡写真である。
図8】Ex.3の膜の表面のSEM顕微鏡写真である。
図9】Ex.4の膜の表面のSEM顕微鏡写真である。
図10】Ex.5の膜の表面のSEM顕微鏡写真である。
図11】Ex.5の膜の断面のSEM写真である。
図12】本発明実施例Ex.2、3、4および5の膜の表面SEM顕微鏡写真を並べて比較した図である。
図13】CE1のSEM表面顕微鏡写真である。
図14】電気抵抗vs厚さのプロットである。
図15】突刺強度vs厚さのプロットである。
図16】%気孔率vs厚さのプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
代表的新規または改善された微多孔性電池セパレータは、リチウムイオン蓄電池などの
リチウム電池での使用のために開発された。好ましい可能性のある本発明のセパレータ膜
は、押出成形により(後で抽出する必要のある可塑剤を必要とすることなく)、高レベル
の結晶質ラメラ配向を有する内部微細構造を備えた前駆体膜を生成する、高分子量で低メ
ルトフローインデックスポリプロピレン樹脂または高分子量および低メルトフローインデ
ックスポリプロピレン樹脂のブレンド(少なくとも外層のために)を使って製造されたド
ライプロセスPP/PE/PP多層微多孔性電池セパレータ膜である。さらに、内部微細
構造は、高レベルの均一性の結晶質ラメラ構造を有し、これは、ドライプロセスの延伸ス
テップでの微細孔形成に影響を与える。
【0020】
図1は、エッチングしたPP非多孔性膜のSEM顕微鏡写真である。この膜は、MDま
たはTD延伸をまだ受けていない、均一で秩序化積層結晶質ラメラ構造を有する。エッチ
ングプロセスは、全ての非晶質部分を除去し、結晶質ラメラ構造のより良好な可視化を可
能とするために行われた。膜中の細孔形成のよく知られた方式は、既知で、X.M.Zh
ang、らの“Oriented Structure and Anisotropy
Properties of Polymer Blown Films HDPE,
LLDPE and LDPE”,POLYMER 45(2004)217-229、
およびS.Tabatabaei、らの“Microporous Membranes
Obtained from PP/HDPE Multilayer Films
by Stretching”,JMS 345(2009)148-159、で発表さ
れている。図2は、典型的な応力/歪みプロットで、非多孔性膜の印加応力に対する応答
を示し、応力の初期印加による積層結晶質ラメラプレートの引き離しが示されている。こ
のラメラプレートの初期分離に続けて、ポリマー鎖のラメラ積層からのさらなる引抜きに
より、フィブリルとして知られる伸ばされたポリマー鎖構造が形成される。図2は、印加
応力に伴いポリマーフィブリルがさらに伸長し、微細構造中に多孔質領域が生成されるこ
とを示す。
【0021】
図3および4は、SEM顕微鏡写真で、微多孔性セパレータ膜CE6およびCE5の表
面の微小スケールでの外観を示す。結晶質ラメラおよびフィブリル構造を、20,000
x倍率で明瞭に見ることができる。CE6およびCE5膜の結晶質ラメラ領域の比較では
、CE5よりCE6の方がより肉厚の結晶質ラメラ領域を有することが示される。
【0022】
図5は、ポリプロピレン結晶質ラメラ中の鎖折りたたみ、ならびにラメラ構造内の分子
レベルポリプロピレンポリマー鎖の図を示す(“The Theory of Bire
fringence”,Cambridge Polymer Group,2004,
CPGAN # 014,www.campoly.com、を参照されたい)。メルト
フローインデックス(mfiまたはMFI)(2.16kgの荷重下、230℃での10
分間のポリプロピレンポリマー流出質量を秤量することにより測定される)は、ポリマー
樹脂の固有の性質であり、メルトフロー押出プロセスで使用され、樹脂の分子量に関係す
る。高分子量PPは、より低いmfi値を有する。
【0023】
表1は、CE6およびCE5微多孔性膜のメルトフローインデックス値、ならびに示し
たmfi値を有する樹脂から得られた微多孔膜の細孔径のリストである。
【表1】
【0024】
CE6およびCE5は、異なる分子量およびメルトフローインデックス(mfi)のポ
リプロピレン樹脂を使って製造される。これらの特性は、ドライプロセスの前駆体膜の溶
融押出中に形成される結晶質ラメラ領域の発生に重要な因子であり得る。
【0025】
CE6ポリプロピレン樹脂は、5.0g/10分のmfiを有し、この値は、CE5の
製造に使用した樹脂の3xを超える高いメルトフローインデックス(mfi)であり、m
fiの変化が、多孔質セパレータ膜の微細構造中の結晶質ラメラ領域の発生およびこれら
の結晶質ラメラ領域の均一性に大きな影響を与える可能性があることを示す。
【0026】
実施例
表2は、12種の本発明実施例Ex.1~Ex.12(および4種の比較例CE1~C
E4)のセパレータ性能特性を記載している。本発明実施例の厚さは、14μm~30μ
mの範囲であり、これは、EDV用途のための好ましい目標厚さの範囲である。
【表2】
【0027】
本発明のセパレータ膜は、高分子量ポリプロピレン樹脂を使って製造される。このより
高い結晶質樹脂が溶融押出される場合、得られた非多孔性前駆体膜は、高レベルの結晶質
ラメラ配向を有する。高分子量非多孔性前駆体膜のアニーリングおよび延伸により、より
高い多孔度およびより低いERで、改善された突刺強度を有する微多孔性膜が製造される
図6に示される本発明実施例Ex.2のPP表面のSEM顕微鏡写真は、より肉厚のラ
メラ領域によりわかるように、図3(CE6)および図4(CE5)に比べて、より高い
レベルの結晶質ラメラ含量を示す。より厚いラメラは、機械的に強度のより高い微多孔膜
を生成し得る。
【0028】
Ex.3、Ex.4およびEx.5のSEM顕微鏡写真は、図8、9および10に示さ
れている。本明細書で記載の本発明実施例は、PE層を含む熱シャットダウン微多孔性膜
である。図11は、断面のSEM顕微鏡写真で、本発明実施のEx.2の三層PP/PE
/PP構成を示し、この場合のそれぞれPPおよびPE層の厚さは、マイクロメートル単
位で標識されている。約135℃で熱シャットダウンを可能とする内側のPE層は通常、
外側のPP層より大きい細孔を有する。図12は、本発明実施例Ex.2、Ex.3、E
x.4およびEx.5の表面のSEM顕微鏡写真を並べて比較したもので、膜の内部微細
構造中のより高い含量の結晶質を示している。本発明実施例のより高いレベルの結晶質ラ
メラおよび結晶質ラメラの均一性が、図12のSEM顕微鏡写真により示されている。図
13は、比較例1の表面のSEM顕微鏡写真で、均一結晶質ラメラがより少ない。
【0029】
本発明の非多孔性前駆体膜中の結晶質ラメラの量および均一性は、微多孔性セパレータ
膜の細孔径および%気孔率と共に、電気抵抗、ガーレイ、および突刺強度などのセパレー
タ性能特性に重要な役割を果たし得る。本発明の膜Ex.1~Ex.12は、12~30
μmの範囲の厚さに対し、0.9~1.4の範囲の電気抵抗(ER)値を有し、EDV用
途のための高性能微多孔膜を提供する。好ましい本発明の微多孔性膜は、先行技術電池セ
パレータ膜に比べて、低ERおよび低ガーレイを有する。この特性は、EDVおよびその
他の高出力用途向けリチウム電池の優れたハイレート特性の達成に重要である。
【0030】
図14は、本発明の膜Ex.1~Ex.12の膜厚(μm)の関数としてのERのオーム
-cm単位のプロットである。本発明実施例は、比較例CE1、2、3および4より有
意に低いERを有する。さらに、本発明実施例の厚さが12から30μmに増加しても、
ERは1.5オーム-cm以下にとどまる。低ERセパレータ膜は、リチウムイオン電
池の充放電の間の改善されたレベルのリチウムイオン導電率を与え、電池の全体性能をさ
らに向上させる。
【0031】
図15は、本発明のセパレータ膜Ex.1~Ex.12の膜厚の関数としての突刺強度
のプロットである。本発明の膜は、比較例CE1~CE4より高い突刺強度を有する。1
2μmの厚さに過ぎないEx.7が、16μm厚さのCE4より高い突刺強度を有する。
本発明の膜は、電池アセンブリの過酷な巻き上げプロセスに対し、よりよく耐える可能性
があり、このことは、電池サイクル中のデンドライト貫通に対する保護のための機械的強
度の改善に繋がる。12μm~30μmの厚さの範囲を通して、図15に示す本発明の膜
は、より高い突刺強度の観点で、比較技術より性能が優れている。
【0032】
図16は、本発明の膜Ex.1~Ex.12の厚さの関数としての%気孔率のプロット
である。本発明の膜は、比較例CE1~CE4と比べて、12~30μmの厚さの範囲を
通して、より高い気孔率パーセントを有し、電解質導電率および電解質保持の観点から、
リチウムイオン電池においてより良好な性能を発揮するであろう。
【0033】
より高い突刺強度,高気孔率パーセントおよび低ERは、特に高出力用途のリチウムイ
オン電池において、より良好なサイクル寿命および/または安全性能に寄与する。
【0034】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、本明
細書で示されまたは記載されている改善されたセパレータ、膜またはベースフィルムに関
し、および/またはセパレータは多層セパレータ、膜またはベースフィルムであり、セパ
レータは三層セパレータ、膜またはベースフィルムであり、セパレータはドライ延伸プロ
セスにより作製され、セパレータは積層形成プロセスにより作製され、セパレータは少な
くとも330gfの突刺強度(PS)および少なくとも14μmの厚さを有し、セパレー
タは少なくとも280gfの突刺強度(PS)および少なくとも12μmの厚さを有し、
セパレータは少なくとも350gfの突刺強度(PS)および少なくとも16μmの厚さ
を有し、セパレータは少なくとも35%の気孔率を有し、セパレータは37%を超える気
孔率を有し、セパレータは少なくとも39%の気孔率を有し、セパレータは約35%~6
5%の範囲の気孔率を有し、セパレータは約39%~53%の範囲の気孔率を有し、セパ
レータは電気自動車に使われるような動力電池に特に好適であり、セパレータは1.5オ
ーム-cm以下のER、少なくとも35%の気孔率を有し、高Cレート充放電に適合し
、セパレータはドライプロセスにより製造された少なくとも1種のポリオレフィン微多孔
膜を含み、このドライプロセスによりポリプロピレン樹脂が押出成形されて、前記膜が形
成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を
有する、改善されたセパレータ、膜またはベースフィルムに関する。
【0035】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、改善
された多層セパレータ、膜またはベースフィルムであって、
ドライ延伸プロセスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜を含み、該ドライ延伸
プロセスでは、ポリオレフィン樹脂、ミックスまたはブレンドが押出成形されて前記膜が
形成され、前記樹脂が約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を
有し、
前記セパレータが、約14μm以上の厚さ、約35%~約65%の気孔率、および約1
.5オーム-cm以下の電気抵抗(ER)値を有し、および
必要に応じて、セパレータが、三層セパレータまたはベースフィルムであり、ドライ延
伸プロセスにより作製され、積層形成プロセスにより作製され、少なくとも280gfの
突刺強度(PS)および少なくとも12μmの厚さを有し、少なくとも330gfの突刺
強度(PS)および少なくとも14μmの厚さを有し、少なくとも350gfの突刺強度
(PS)および少なくとも16μmの厚さを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、3
7%を超える気孔率を有し、少なくとも39%の気孔率を有し、約35%~65%の範囲
の気孔率を有し、約39%~53%の範囲の気孔率を有し、電気自動車に使われるような
動力電池に特に好適であり、1.5オーム-cm以下のERを有し、少なくとも35%
の気孔率を有し、および高Cレート充放電に適合し、ドライプロセスにより製造された少
なくとも2種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスによりポリプロピレ
ン樹脂が押出成形されて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメル
トフローインデックス(MFI)を有し、ドライプロセスにより製造された少なくとも3
種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスによりポリプロピレン樹脂が押
し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフローイ
ンデックス(MFI)を有し、少なくとも1種のポリエチレン膜を含み、少なくとも2種
のポリプロピレン膜を含み、および/または同一厚さの以前のセパレータに優る改善され
た突刺強度を有する、などの多層セパレータ、膜またはベースフィルムに関する。
【0036】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、以前
の同一厚さの多層セパレータに優る改善された突刺強度を有する本明細書で示し記載した
多層セパレータに関する。
【0037】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、以前
の同じ厚さの三層セパレータに優る改善された突刺強度を有する本明細書で示し記載した
三層セパレータに関する。
【0038】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、新規
のまたは改善された電池用セパレータ、ベースフィルムまたは膜、および/またはこのよ
うなセパレータ、フィルムまたは膜の製造方法および/または使用方法に関する。少なく
とも特定の選択実施形態、態様または対象物においては、本発明または本出願は、リチウ
ムイオン二次電池用の新規のまたは改善された単層または多層の共押出または積層微多孔
性電池セパレータ、および/またはこのようなセパレータの製造方法および/または使用
方法に関する。少なくとも特定の選択実施形態では、本発明は、リチウムイオン二次電池
用の新規のまたは改善された多層積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのセパ
レータの製造方法および/または使用方法に関する。好ましい可能性のある本発明のドラ
イプロセスセパレータは、リチウムイオン電池の改善されたサイクル性能および充電性能
のために改善された突刺強度および低電気抵抗を有する14μm~30μmの範囲の厚さ
の三層積層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)微多孔
膜である。さらに、好ましい本発明のセパレータのまたは膜の低電気抵抗および高気孔率
は、高出力用途用リチウム電池の優れた充電レート性能を与える。
【0039】
リチウムイオン二次電池用の改善された多層積層微多孔性電池セパレータ、および/ま
たはこのセパレータの製造方法または使用方法が提供される。好ましい本発明のドライプ
ロセスセパレータは、リチウムイオン電池の改善されたサイクル性能および充電性能のた
めに改善された突刺強度および低電気抵抗を有する14μm~30μmの範囲の厚さの三
層積層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン微多孔膜である。さらに、好まし
い本発明のセパレータのまたは膜の低電気抵抗および高気孔率は、高出力用途用リチウム
電池の優れた充電レート性能を与える。
【0040】
試験方法
厚さ
厚さは、試験手順ASTMD374に従い、Emveco Microgage 21
0-A精密マイクロメーター厚さ試験機を使用して測定される。厚みの値は、マイクロメ
ートル、μmの単位で報告される。
【0041】
突刺強度
試験試料は最初に73.4℃、相対湿度50%で最短でも20分間、事前処理される。
Instron Model 4442を使用して試験試料の突刺強度が測定される。1
.25”x40”の連続的試験片の対角方向に端から端まで30点の測定を行い、平均し
た。ニードルは0.5mm半径である。下降速度は、25mm/分である。フィルムは、
試験試料を所定位置に確実に保持するためにOリングを利用したクランプ装置にしっかり
固定して保持される。この固定領域の直径は25mmである。ニードルにより孔が開いた
フィルムの変位(mm単位)が試験フィルムから生じた抵抗力(グラム力単位)に対して
記録される。最大の抵抗力がグラム力(gf)単位の突刺強度である。この試験方法によ
り荷重対変位プロットが生成される。
【0042】
細孔径
細孔径は、Porous Materials,Inc.(PMI)から入手可能なA
quaporeを用いて測定される。孔径は、μm単位で表される。
【0043】
気孔率
微多孔性フィルム試料の気孔率は、ASTM法D-2873を使って測定され、微多孔
膜中の空隙パーセントとして定義される。
【0044】
TDおよびMD引張り強度
MDおよびTDに沿った引張強さは、ASTM-882法に従って、Instron
Model 4201を使用して測定される。
【0045】
メルトフローインデックス(mfi)
ポリマー樹脂のメルトフローインデックスは、ASTM DS1238を使って測定さ
れる。ポリエチレンのMFI測定に対しては、温度=190℃、荷重=2.16kg。ポ
リプロピレンに対しては、温度=230℃、荷重=2.16kg。MFIは、g/10分
として測定される。
【0046】
電気抵抗(ER)(イオン抵抗、IRとしても知られる)
電気抵抗は、電解質を満たしたセパレータのオーム-cm単位の抵抗値として定義さ
れる。電気抵抗の単位は、オーム-cmである。セパレータの抵抗は、完成材料からセ
パレータの小片を切り出し、それらを二つのブロッキング電極の間に置くことによって特
性解析される。セパレータを、3:7の容積比率のEC/EMC溶媒中に1.0MのLi
PF塩を含む電池電解液で飽和させる。セパレータのオーム(Ω)単位の抵抗値、Rが
、4プローブACインピーダンス法により測定される。電極/セパレータ界面での測定誤
差を減らすために、さらにセパレータ層を追加して複数測定をする必要がある。複数層の
測定値に基づいて、電解質で飽和したセパレータの電気(イオン)抵抗、R(Ω)は、
式R=pl/Aにより計算される。式中、pはセパレータのイオン抵抗率(単位、
Ω-cm)であり、Aは電極面積(単位、cm)、lは、セパレータの厚み(単位、c
m)である。p/Aの比率は、複数層(Δδ)によるセパレータの抵抗値の変動(ΔR
)に対して計算した勾配であって、勾配=p/A=ΔR/Δδで与えられる。
【0047】
少なくとも選択実施形態、態様または対象物において、リチウムイオン二次電池用の新
規または改善された多層積層微多孔性電池セパレータ、および/またはこのセパレータの
製造方法および/または使用方法が提供される。好ましい本発明のドライプロセスセパレ
ータは、リチウムイオン電池の改善されたサイクル性能およびトリクル充電性能または充
電性能のために改善された突刺強度および低電気抵抗を有する14μm~30μmの範囲
の厚さの三層積層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン微多孔膜である。さら
に、好ましい本発明のセパレータのまたは膜の低電気抵抗および高気孔率は、高出力のE
DVまたはHEV用途用のリチウム電池の優れた充電レート性能を与える。
【0048】
本発明は、本発明の精神および本質的な属性から外れることなくその他の形態において
実施することも可能であり、従って、本発明の範囲を示すものとしては、上述の明細書よ
りも、添付の請求項を参照するべきである。さらに、本明細書で適切に開示される本発明
は、本明細書で具体的に開示されていないいずれかの要素がなくても実施し得る。
【0049】
本発明は、以下のとおりである。
[1]
新規または改善されたセパレータ、膜またはベースフィルムであって、ドライ延伸プロ
セスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜を含み、前記ドライ延伸プロセスにより
ポリオレフィン樹脂、ミックスまたはブレンドが押出成形されて前記膜が形成され、前記
樹脂が約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、
前記セパレータが、約12μm以上の厚さ、約35%~約65%の範囲の気孔率、およ
び約1.5オーム-cm以下の電気抵抗(ER)値を有し、および、
必要に応じて、前記セパレータが、多層もしくは三層セパレータまたはベースフィルム
であり、ドライ延伸プロセスにより作製され、積層形成プロセスにより作製され、少なく
とも280gfの突刺強度(PS)および少なくとも12μmの厚さを有し、少なくとも
330gfの突刺強度(PS)および少なくとも14μmの厚さを有し、少なくとも35
0gfの突刺強度(PS)および少なくとも16μmの厚さを有し、少なくとも35%の
気孔率を有し、37%を超える気孔率を有し、少なくとも39%の気孔率を有し、約35
%~65%の範囲の気孔率を有し、約39%~53%の範囲の気孔率を有し、電気自動車
に使われるような動力電池に特に好適であり、1.5オーム-cm以下のERを有し、
少なくとも35%の気孔率を有し、および高Cレート充放電に適合し、ドライプロセスに
より製造された少なくとも2種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスで
はポリプロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/1
0分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有し、ドライプロセスにより製造され
た少なくとも3種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプロピ
レン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメ
ルトフローインデックス(MFI)を有し、少なくとも1種のポリエチレン膜を含み、少
なくとも2種のポリプロピレン膜を含み、および/または同一厚さの以前のセパレータに
優る改善された突刺強度を有し、およびこれらの組み合わせを有し、これらの内の少なく
とも1つを有する新規または改善されたセパレータ、膜またはベースフィルム。
[2]
多層セパレータ、膜またはベースフィルムである、[1]に記載のセパレータ。
[3]
三層セパレータ、膜またはベースフィルムである、[1]に記載のセパレータ。
[4]
ドライ延伸プロセスにより作製される、[1]に記載のセパレータ。
[5]
積層形成プロセスにより作製される、[1]に記載のセパレータ。
[6]
少なくとも330gfの突刺強度(PS)を有し、少なくとも14μmの厚さを有する
、[1]に記載のセパレータ。
[7]
少なくとも350gfの突刺強度(PS)を有し、少なくとも16μmの厚さを有する
、[1]に記載のセパレータ。
[8]
少なくとも35%の気孔率を有する、[1]に記載のセパレータ。
[9]
37%を超える気孔率を有する、[1]に記載のセパレータ。
[10]
少なくとも39%の気孔率を有する、[1]に記載のセパレータ。
[11]
約35%~65%の範囲の気孔率を有する、[1]に記載のセパレータ。
[12]
約39%~53%の範囲の気孔率を有する、[1]に記載のセパレータ。
[13]
電気自動車に使われるなどの、特に動力電池に好適している、[1]に記載のセパレー
タ。
[14]
1.5オーム-cm以下のERを有し、少なくとも35%の気孔率を有し、および高
Cレート充放電に適している、[1]に記載のセパレータ。
[15]
ドライ延伸プロセスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜であって、前記ドライ
延伸プロセスによりポリプロピレン樹脂が押出成形されて前記膜が形成され、前記樹脂が
約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI)を有する微多孔膜を含む
、[1]に記載のセパレータ。
[16]
新規または改善された多層セパレータ、膜またはベースフィルムであって、
ドライ延伸プロセスにより製造された少なくとも1種の微多孔膜であって、前記ドライ
延伸プロセスによりポリオレフィン樹脂、ミックスまたはブレンドが押出成形されて前記
膜が形成され、前記樹脂が約0.8g/10分以下のメルトフローインデックス(MFI
)を有する微多孔膜を有し、ならびに
前記セパレータが、約14μm以上の厚さ、約35%~約65%の範囲の気孔率、およ
び約1.5オーム-cm以下の電気抵抗(ER)値を有し、および、
必要に応じて、前記セパレータが、三層セパレータまたはベースフィルムであり、ドラ
イ延伸プロセスにより作製され、積層形成プロセスにより作製され、少なくとも330g
fの突刺強度(PS)および少なくとも14μmの厚さを有し、少なくとも350gfの
突刺強度(PS)および少なくとも16μmの厚さを有し、少なくとも35%の気孔率を
有し、37%を超える気孔率を有し、少なくとも39%の気孔率を有し、約35%~65
%の範囲の気孔率を有し、約39%~53%の範囲の気孔率を有し、電気自動車に使われ
るような動力電池に特に好適であり、1.5オーム-cm以下のERを有し、少なくと
も35%の気孔率を有し、および高Cレート充放電に適合し、ドライプロセスにより製造
された少なくとも2種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプ
ロピレン樹脂が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下
のメルトフローインデックス(MFI)を有し、ドライプロセスにより製造された少なく
とも3種のポリオレフィン微多孔膜を含み、このドライプロセスではポリプロピレン樹脂
が押し出しされて前記膜が形成され、前記樹脂は、約0.8g/10分以下のメルトフロ
ーインデックス(MFI)を有し、少なくとも1種のポリエチレン膜を含み、少なくとも
2種のポリプロピレン膜を含み、および/または同一厚さの以前のセパレータに優る改善
された突刺強度を有する、新規または改善されたセパレータ、膜またはベースフィルム。
[17]
以前の同じ厚さの多層セパレータに優る改善された突刺強度を有する、[16]に記載
のセパレータ。
[18]
以前の同じ厚さの三層セパレータに優る改善された突刺強度を有する三層セパレータで
ある、[16]に記載のセパレータ。
【0050】
本出願は、以下の発明を含み得る。
[1]
第1の外層、第2の外層、及び内側層が積層されてなる、ポリプロピレン(PP)/ポ
リエチレン(PE)/ポリプロピレン(PP)構成の微多孔性セパレータを有するリチウ
ムイオン二次電池セパレータであって、
前記微多孔性セパレータは、前記第1の外層、前記第2の外層、及び前記内側層の積層
体である非多孔性セパレータ前駆体をドライ延伸により形成されてなるセパレータであり

前記微多孔性セパレータは、厚さが少なくとも17μmであり、気孔率41%以上及び
電気抵抗(ER)値1.5オームcm以下であり、
前記微多孔性セパレータは、少なくとも350gfの突刺強度(PS)を示し、
前記微多孔性セパレータの前記内側層は、前記微多孔性セパレータの前記第1及び前記
第2の外層よりも大きな細孔を有し、
前記第1の外層は、0.8グラム/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有
するポリプロピレン(PP)を含み、可塑剤を含まず、
前記第2の外層は、0.8グラム/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有
するポリプロピレン(PP)を含み、可塑剤を含まず、
前記内側層は、第1と第2の外層との間に配置され、ポリエチレン(PE)を含み、
前記リチウムイオン二次電池セパレータは、マイクロメートル単位で12~16のラメ
ラを有する、
ことを特徴とするリチウムイオン二次電池セパレータ。
[2]
前記リチウムイオン二次電池セパレータは、少なくとも290秒/100ccのJIS
ガーレイを示す、[1]に記載のリチウムイオン二次電池セパレータ。
[3]
[1]に記載のリチウムイオン二次電池セパレータを含む動力電池。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16