(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056023
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】モータコアの製造装置及びモータコアの製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 15/12 20060101AFI20240412BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H02K15/12 E
H02K15/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034370
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2023553135の分割
【原出願日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】P 2022060560
(32)【優先日】2022-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵
(72)【発明者】
【氏名】古谷 拓実
(72)【発明者】
【氏名】木下 淳
(72)【発明者】
【氏名】川崎 明日香
(57)【要約】
【課題】樹脂組成物のロスを抑えることが可能な、モータコアの製造装置及びモータコアの製造方法を提供すること。
【解決手段】本開示のモータコアの製造装置は、樹脂充填部含むモータコアを保持する金型と、前記金型に形成されその一端部が前記樹脂充填部に連通する樹脂組成物充填路に連通するチャンバと、前記チャンバに搬送された樹脂組成物を前記樹脂組成物充填路に向けて搬送するプランジャと、前記金型内、あるいは前記金型内及び前記チャンバの周囲に配設された第1の加熱器と、予め計測された量の前記樹脂組成物を前記チャンバに投入するために、前記チャンバへ向けて前記樹脂組成物を混練しつつ搬送する押出機と、を含むものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂充填部を含むモータコアを保持する金型と、
前記金型に形成されその一端部が前記樹脂充填部に連通する樹脂組成物充填路に連通するチャンバと、
前記チャンバに搬送された樹脂組成物を前記樹脂組成物充填路に向けて搬送するプランジャと、
前記金型内、又は前記金型内及び前記チャンバの周囲に配設された第1の加熱器と、
予め計測された量の前記樹脂組成物を前記チャンバに投入するために、前記チャンバへ向けて前記樹脂組成物を混練しつつ搬送する押出機と、を備える、
モータコアの製造装置。
【請求項2】
前記押出機は、前記樹脂組成物を搬送する押出搬送路と、前記押出搬送路の周囲に配設されて前記押出搬送路内を搬送される前記樹脂組成物を加熱する第2の加熱器と、を備える、
請求項1に記載のモータコアの製造装置。
【請求項3】
前記第2の加熱器は、前記押出搬送路内を搬送される前記樹脂組成物を70~100℃に加熱する、
請求項2に記載のモータコアの製造装置。
【請求項4】
前記押出機は、前記樹脂組成物を搬送する押出搬送路内に配設されて、前記樹脂組成物を混練しつつ搬送するスクリューを備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のモータの製造装置。
【請求項5】
前記金型は、前記モータコアの上部を支持する上型と、前記モータコアの下部を支持する下型とを備え、前記下型は、前記樹脂組成物充填路が形成された複数のステージと、前記複数のステージのうちの一のステージを前記上型に対向する位置に配設させる移送ユニットと、を備える、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のモータコアの製造装置。
【請求項6】
モータコアの樹脂充填部に充填する樹脂組成物充填量を計測する工程と、
樹脂組成物充填路が形成された金型内に、前記樹脂組成物充填路と前記樹脂充填部とが連通するように前記モータコアを保持する工程と、
樹脂組成物を搬送可能な押出機を用いて、計測された前記樹脂組成物充填量の前記樹脂組成物を前記樹脂組成物充填路に連通するチャンバへ向けて搬送する工程と、
前記チャンバ内を移動可能なプランジャを動作させて、前記チャンバ内の軟化された前記樹脂組成物を前記樹脂充填部内へ充填する工程と、
前記樹脂充填部内に充填された前記軟化された樹脂組成物を硬化させる工程と、を備える、
モータコアの製造方法。
【請求項7】
前記モータコアは、ロータコアで構成され、前記樹脂充填部は、内部に永久磁石が挿入可能な、前記ロータコアの軸心方向に沿って形成された1乃至複数のスロット部で構成され、
前記ロータコアの前記スロット部内に前記永久磁石を挿入する工程をさらに備える、
請求項6に記載のモータコアの製造方法。
【請求項8】
前記押出機内を搬送される前記樹脂組成物を加熱する工程をさらに備える、
請求項6又は請求項7に記載のモータコアの製造方法。
【請求項9】
前記金型及び前記モータコアの少なくとも一方を予熱する工程をさらに備える、
請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載のモータコアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータコアの製造装置及びモータコアの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機には、モータコア、例えばロータコアに永久磁石を取り付けたものがある。このように、モータコアに永久磁石を取り付ける場合には、モータコアに設けられたスロット内に永久磁石を挿入した後、周囲に樹脂組成物を充填し硬化させる方法が知られている(例えば特開2013-009453号公報参照)。
【0003】
特開2013-009453号公報には、ロータコアのスロット内に樹脂組成物を充填する際、事前に成型された所定の大きさの樹脂タブレットをポットに投入し、ポット内で加熱することで充填前に軟化・溶融させているものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2013-009453号公報に記載された装置においては、スロット内に充填される樹脂が不足しないように、製品の寸法公差等をも考慮して規定の充填量よりも多めに樹脂を用意しておくのが通常であるが、当該寸法公差が小さい場合には樹脂のムダが多くなってしまう。また、モータコアは様々な形状が採用されており、それにより磁石が挿入されるスロット形状も様々な形状を取り得るため、異なる車種でスロット形状が同じ形状になることはほとんどない。したがって、各モータコアに最適なサイズの樹脂タブレットを準備しようとすれば、保管スペースの確保等が必要となり管理コストが高くなる。また多種の樹脂タブレットの管理が煩雑になる等の問題もある。
【0005】
本開示は、上述した課題に鑑み、樹脂組成物のロスを抑えることが可能な、モータコアの製造装置及びモータコアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の第1の態様に係るモータコアの製造装置は、樹脂充填部を含むモータコアを保持する金型と、前記金型に形成されその一端部が前記樹脂充填部に連通する樹脂組成物充填路に連通するチャンバと、前記チャンバに搬送された樹脂組成物を前記樹脂組成物充填路に向けて搬送するプランジャと、前記金型内、又は前記金型内及び前記チャンバの周囲に配設された第1の加熱器と、予め計測された量の前記樹脂組成物を前記チャンバに投入するために、前記チャンバへ向けて前記樹脂組成物を混練しつつ搬送する押出機と、を含むものである。
【0007】
上記のようなモータコアの製造装置においては、チャンバに投入する樹脂組成物として事前に成型されたタブレット状のものを用いないため、樹脂組成物のロスを抑制することができ、また、供給量の制御を容易に変更することができる。
【0008】
本開示の第2の態様に係るモータコアの製造装置は、上記本開示の第1の態様に係るモータコアの製造装置において、前記押出機は、前記樹脂組成物を搬送する押出搬送路と、前記押出搬送路の周囲に配設されて前記押出搬送路内を搬送される前記の樹脂組成物を加熱する第2の加熱器と、を含む。
【0009】
上記のようなモータコアの製造装置においては、チャンバに投入する前の樹脂組成物、具体的には粉状あるいはペースト状の樹脂組成物を加熱することで、チャンバ内で軟化するために要する時間を短縮あるいは省略でき、生産効率を向上させることができる。また、チャンバ内の樹脂組成物の均一な加熱が可能となる。
【0010】
本開示の第3の態様に係るモータコアの製造装置は、上記本開示の第2の態様に係るモータコアの製造装置において、前記第2の加熱器は、前記押出搬送路内を搬送される前記樹脂組成物を70~100℃に加熱する。
【0011】
上記のようなモータコアの製造装置においては、樹脂組成物を押出機を用いてチャンバへ向けて搬送する構造を採用しているため、従来は樹脂組成物の軟化に起因する搬送性能の低下によって実施が困難であった高温での予熱が可能となる。
【0012】
本開示の第4の態様に係るモータコアの製造装置は、上記本開示の第1乃至第3の態様のいずれかに係るモータコアの製造装置において、前記押出機は、前記樹脂組成物を搬送する押出搬送路内に配設されて、前記樹脂組成物を混練しつつ搬送するスクリューを含む。
【0013】
上記のようなモータコアの製造装置においては、樹脂組成物をスクリューを用いて搬送するため、チャンバ内に投入する樹脂組成物の量を比較的簡単に調整することができる。また、押出機に供給される樹脂組成物、例えば粉状の樹脂組成物をスクリューで混練することでペースト状とすることにより、その搬送が容易になる。
【0014】
本開示の第5の態様に係るモータコアの製造装置は、上記本開示の第1乃至第4の態様のいずれかに係るモータコアの製造装置において、前記金型は、前記モータコアの上部を支持する上型と、前記モータコアの下部を支持する下型とを備え、前記下型は、前記樹脂組成物充填路が形成された複数のステージと、前記複数のステージのうちの一のステージを前記上型に対向する位置に配設させる移送ユニットと、を含む。
【0015】
上記のようなモータコアの製造装置においては、ステージを交換しながらモータコアの製造を行うことができるため、生産効率を向上することができる。
【0016】
本開示の第6の態様に係るモータコアの製造方法は、モータコアの樹脂充填部に充填する樹脂組成物充填量を計測する工程と、樹脂組成物充填路が形成された金型内に、前記樹脂組成物充填路と前記樹脂充填部とが連通するように前記モータコアを保持する工程と、樹脂組成物を搬送可能な押出機を用いて、計測された前記樹脂組成物充填量の前記樹脂組成物を前記樹脂組成物充填路に連通するチャンバへ向けて搬送する工程と、前記チャンバ内を移動可能なプランジャを動作させて、前記チャンバ内の軟化された前記樹脂組成物を前記樹脂充填部内へ充填する工程と、前記樹脂充填部内に充填された前記軟化された樹脂組成物を硬化させる工程と、を含むものである。
【0017】
上記のようなモータコアの製造方法においては、チャンバに投入する樹脂組成物として事前に成型されたタブレット状のものを用いないため、樹脂組成物のロスを抑制することができ、また、チャンバへの供給量を容易に変更することができる。
【0018】
本開示の第7の態様に係るモータコアの製造方法は、上記本開示の第6の態様に係るモータコアの製造方法において、前記モータコアは、ロータコアで構成され、前記樹脂充填部は、内部に永久磁石が挿入可能な、前記ロータコアの軸心方向に沿って形成された1乃至複数のスロット部で構成され、前記ロータコアの前記スロット部内に前記永久磁石を挿入する工程をさらに含む。
【0019】
上記のようなモータコアの製造方法においては、ロータコアへの永久磁石の取り付けを歩留まりよく実施することができる。
【0020】
本開示の第8の態様に係るモータコアの製造方法は、上記本開示の第6又は第7の態様に係るモータコアの製造方法において、前記押出機内を搬送される前記樹脂組成物を加熱する工程をさらに含む。
【0021】
上記のようなモータコアの製造方法においては、チャンバに投入する前の樹脂組成物を予熱することで、チャンバ内で軟化するために要する時間を短縮あるいは省略でき、生産効率を向上させることができる。また、押出機内で加熱を行うため、均一な予熱が可能となる。
【0022】
本開示の第9の態様に係るモータコアの製造方法は、上記本開示の第6乃至第8の態様のいずれかに係るモータコアの製造方法において、前記金型及び前記モータコアの少なくとも一方を予熱する工程をさらに含む。
【0023】
上記のようなモータコアの製造方法においては、樹脂組成物が充填あるいは通過する金型及びロータコアを予熱することで、樹脂組成物の硬化を短時間で行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本開示のモータコアの製造装置及びモータコアの製造方法によれば、樹脂組成物のロスを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係るモータコアの製造装置の一例を示した概略説明図である。
【
図2】ロータコア及び永久磁石を計測している状態の一例を示した概略説明図である。
【
図3A】
図1に示すモータコアの製造装置の全体構造の一例を示した概略平面図である。
【
図3B】モータコアの製造装置の全体構造の変形例を示した概略平面図である。
【
図4】本開示の第1の実施の形態に係るモータコアの製造方法の一例を示したフローチャートである。
【
図5A】
図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図5B】
図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図6A】
図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図6B】
図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図7A】
図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図7B】
図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
【
図8A】
図1に示す押出機の一変形例を示した概略拡大図である。
【
図8B】
図1に示す押出機の一変形例を示した概略拡大図である。
【
図9】本開示の第2の実施の形態に係るモータコアの製造装置の一例を示した概略平面図である。
【
図10】
図9のA-A線で切断した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
この出願は、日本国で2022年3月31日に出願された特願2022-060560号に基づいており、その内容は本出願の内容としてその一部を形成する。
また、本開示は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本願のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実例は、本開示の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、本開示の精神と範囲内で、当業者にとって明らかであるからである。
出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、開示された改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【0027】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。また、図中の互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。さらに、一の図面中に互いに同一又は相当する部材が複数個含まれている場合には、図を見易くするために、そのうちのいくつかにのみ符号を付している場合がある。
【0028】
(第1の実施の形態)
<モータコアの製造装置>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係るモータコアの製造装置の一例を示した概略説明図である。本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、モータコア、例えばインナーロータ型のロータコア2に永久磁石3を取り付けるための装置であってよい。そして永久磁石3の取り付けを、樹脂組成物Pを用いた樹脂モールドによって実現するものであってよい。なお、本実施の形態においては、モータコアとしてロータコア2を例示し、モータコアが有する樹脂充填部としてロータコア2のスロット部4(より厳密には充填空間6)を例示しているが、本開示はこれに限定されない。具体的には、当該モータコアの製造装置1を、例えばモータコアとしてのステータコアのコイルが巻き回された部分等を樹脂モールドするため、またかしめのない積層コアの軸方向に設けられた貫通孔等に樹脂を充填して積層コアを一体に固定するために利用することもできる。また、以下の説明においては、その理解を容易にするために、
図1(あるいは
図3)中に示したX方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を高さ方向(あるいは上下方向)として説明を行うことがある。
【0029】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置1で用いられる樹脂組成物Pは、主にエポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂あるいはシアネート樹脂といった熱硬化性樹脂を含むものであってよい。また、この樹脂組成物Pには、熱硬化性樹脂に加えて、硬化剤や充填剤等が添加されていてよい。
【0030】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、
図1に示すように、少なくとも、製造装置本体10と、ロータコア2を保持するための金型20と、樹脂組成物Pを収容可能なチャンバ30と、チャンバ30内の樹脂組成物Pを搬送するプランジャ35と、金型20及びチャンバ30を加熱可能な第1の加熱器40と、予め計測された量の樹脂組成物Pをチャンバ30に搬入するための押出機50とを含むものである。
【0031】
製造装置本体10は、基台11と、基台11の表面に複数本(例えば4本)立設された支柱12と、この支柱12の先端部分に支持された天板13とを含むものであってよい。天板13は、その下側の面に後述する金型20の上型21が固定されていてよく、図示しないアクチュエータを用いて、支柱12及びこの上型21と共に上下方向に昇降可能であってよい。
【0032】
金型20は、ロータコア2を保持するための部材である。具体的には、この金型20は、ロータコア2の上部、詳しくはその上面に当接して支持する上型21と、ロータコア2の下部、詳しくは下面に当接して支持する下型22とを含んでいてよい。このうち、下型22は、下型本体23と、下型本体23上に設けられてロータコア2が載置されるステージ24とを含んでいてよい。ロータコア2は、ロボットアーム80(
図3A参照)等により、ステージ24上に載置及びステージ24上から搬送され得る。
【0033】
加えて、ステージ24の内部には、ステージ24上に載置されたロータコア2の適所に樹脂組成物Pを供給するための樹脂組成物充填路25が設けられていてよい。樹脂組成物充填路25の経路構造は、ステージ24上に載置されるロータコア2の構造に合わせて変更するとよい。このステージ24は、異なる樹脂組成物充填路25の構造を有するものを予め複数個準備しておき、金型20内に保持されるロータコア2の寸法やスロット部4の位置等に合わせて適宜変更して使用するとよい。また、下型22は、樹脂組成物充填路25のクリーニング等を行うために、ステージ24を昇降させるリフタ26をさらに含んでいてよい。なお、本実施例では下型22に樹脂組成物充填路25を設け、下側から樹脂組成物Pを充填する態様を例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、上型21に樹脂組成物充填路を設け、上側から樹脂組成物Pを充填する態様としてもよい。
【0034】
また、上型21は、上述した通り天板13と共に上下方向に移動可能であってよく、この上型21がステージ24上にロータコア2が載置された際に下降し、所定の押圧力でロータコア2の上面を押圧することで、ロータコア2を上型21と下型22の間に挟むように保持することができる。上型21及びステージ24のロータコア2に当接する面は、後述する樹脂組成物Pの充填時に樹脂組成物Pがロータコア2外に漏れだすことがないよう、換言すれば、ロータコア2を挟んだ際にその接触面が密閉状態となるよう、その形状や素材等が調整されているとよい。また、本実施の形態においては、上述の通り上型21を天板13と共に上下に移動させる構造を採用しているが、上型21と下型22の上下方向位置を相対的に変更可能な構造であれば、他の構造を採用することができる。具体的には、例えば上型21を上下方向に移動させることに代えて、下型22を上下方向に移動させる、あるいは上型21と下型22の両方を移動させる構造を採用してもよい。
【0035】
本実施の形態においては、ロータコア2のスロット部4として、前後及び左右方向に実質的に隙間を有しない直方体形状のものを例示している。そのため、上型21及び下型22は、略平坦な当接面を有するものを採用しているが、上型21及び下型22の当接面の形状は保持するロータコア2の形状に合わせて適宜変更することができる。例えば、本実施の形態に係るモータコアの製造装置1をインナーロータ型のステータコアの樹脂モールドに用いる場合には、上型21及び下型22として、ステータコアの中央に形成される空間に挿入される突起を含むものを採用するとよい。
【0036】
図2は、ロータコア及び永久磁石を計測している状態の一例を示した概略説明図である。上述した金型20に保持されるロータコア2は、
図1及び
図2に示すように、薄い電磁鋼板が複数枚積層されて構成された略円筒状の磁性体で構成することができる。ロータコア2の軸心部分には、モータとして組み立てられた際に回転軸を構成するシャフトが挿入される貫通穴5が設けられていてよい。また、この貫通穴5を包囲するように、ロータコア2の軸心方向に沿って延びる1乃至複数(
図2においては4個)のスロット部4が設けられていてよい。このスロット部4は、後述する永久磁石3が挿入可能な、例えば
図2に示すような直方体状の貫通穴で構成することができるが、その具体的形状は特に限定されない。
【0037】
ロータコア2のスロット部4は、その内部に永久磁石3が挿入され固定されるものであってよい。永久磁石3は、例えばスロット部4よりも僅かに小さな直方体で構成することができる。また、この永久磁石3は、着磁されているか否かを問わない。スロット部4に永久磁石3を挿入すると、永久磁石3の外周面とスロット部4の内周面との間に、少なくとも部分的にギャップが形成される。このギャップが、後述する樹脂組成物Pの充填空間6として機能し得る。この複数の充填空間6は、ロータコア2がステージ24上に載置されたとき、それぞれの一部が樹脂組成物充填路25の端部に連通し得るものである。
【0038】
チャンバ30は、充填空間6に充填される所定量の樹脂組成物Pが投入される空間を形成しているものであってよい。このチャンバ30は、基台11上に設けられた支持台31の内部に、上下方向に延在するように形成されていてよい。チャンバ30の上端部は、支持台31上に配設された下型22に含まれるステージ24の樹脂組成物充填路25に連通していてよい。
【0039】
プランジャ35は、チャンバ30内に搬送された樹脂組成物Pを樹脂組成物充填路25に向けて搬送するための部材であってよい。本実施の形態に係るプランジャ35は、チャンバ30の下面を形成しているものであってよく、図示しないアクチュエータに接続されてチャンバ30内を上下方向に移動自在となっていてよい。
【0040】
第1の加熱器40は、周知のヒータ等で構成され、製造装置1の適所を加熱するものであってよい。本実施の形態に係る第1の加熱器40は、金型20内、具体的には上型21及び下型本体23内に配設された金型ヒータ41と、チャンバ30の外周囲に近接するように、支持台31内のチャンバ30の周囲に配設されたチャンバヒータ42とを含むことができる。金型ヒータ41及びチャンバヒータ42としては、周知のヒータ、例えば赤外線ヒータやシーズヒータを採用することができる。
【0041】
押出機(「エクストルーダ」と呼ばれることもある)50は、一端がチャンバ30に連通し、予め計測された量の樹脂組成物Pをチャンバ30に向けて混練しつつ搬送するためのものであってよい。この押出機50は、一方向、例えば左右方向に延在しその内部を樹脂組成物Pが搬送される押出搬送路の一例としてのバレル51と、バレル51の内部に配設されバレル51内に供給された樹脂組成物P、例えば粉状の樹脂組成物P1を混練しつつチャンバ30へ向けて搬送するスクリュー52と、を少なくとも含んでいてよい。なお、本実施の形態においては、左右方向に延在した押出機50を例示したが、押出機50の延在方向はこれに限定されず、例えばチャンバ30から斜め上方に延在していても、(例えば後述する
図9及び
図10に示すもののように)チャンバ30と並ぶように上下方向に延在していてもよい。押出機50とチャンバ30が並んで配設されている場合には、押出機50とチャンバ30との間に樹脂組成物Pを搬送するためのスペースを確保しておくと良い。また、本開示では、バレル51に供給される樹脂組成物Pとして粉状の樹脂組成物P1が供給される場合を例示しているが、粉状のものには限定されず、他の形状、例えばその少なくとも一部がペースト状もしくはペレット状であってもよい。さらに、本開示における粉状の樹脂組成物P1とは、粒状、あるいは顆粒状といった、比較的小さな粒子(比較的大きな樹脂ブロックを粉砕・破砕して得られる小片のような粒子をも含む)で形成された樹脂組成物P1を指すものとする。
【0042】
バレル51は、樹脂組成物Pを混練しつつ搬送するための搬送路であってよい。バレル51の一端部には粉状の樹脂組成物P1が供給される供給口53が形成され、他端部にはチャンバ30に連結した搬出口54が形成されていてよい。供給口53には樹脂組成物供給路57を介して樹脂組成物供給源58が連結していてよい。また、搬出口54には例えばスライド式あるいは回転式のシャッター56が設けられていてよい。シャッター56は、搬出口54を開閉することに加えて、搬出口54から搬出された樹脂組成物Pを切断するカッターの機能を有していてもよい。あるいは、押出機50は、シャッター56とは別に搬出口54に沿って樹脂組成物Pを切断可能なカッターを有していてもよい。
【0043】
スクリュー52は、その一端に接続されたモータ59によって回転される、外周面に螺旋状のフィンが形成された長尺の部材で構成することができる。このスクリュー52は、供給口53から供給された粉状の樹脂組成物P1を、混練しつつ搬出口54に向かって搬送するよう、バレル51内にその延在方向に沿って配設されていてよい。また、スクリュー52に対して粉状の樹脂組成物P1を連続的に供給すれば、搬送中の樹脂組成物Pを加圧することもできる。したがって、バレル51内を搬送される粉状の樹脂組成物P1は、その搬送の過程で、スクリュー52によって混練され且つ加圧されることでペースト状の樹脂組成物P2へ徐々に変化していくものであってよい。なお、ここでいうペースト状とは、粉状であった樹脂組成物Pが一体化して塊を形成し、ペーストあるいは粘土状となった状態を指すものとする。
【0044】
スクリュー52に接続されたモータ59は、その回転数によって樹脂組成物Pの搬送量を調整することができる。これに関連して、本実施の形態における押出機50からチャンバ30に搬入されるペースト状の樹脂組成物P2(なお、ここでいうペースト状の樹脂組成物P2は、ペースト状の樹脂組成物P2と粉状の樹脂組成物P1の混合物であってもよい)の量は、モータ59の回転数を制御することにより、精度よく調整することが可能である。
【0045】
押出機50は、バレル51内を搬送される粉状の樹脂組成物P1あるいはペースト状の樹脂組成物P2の温度、あるいはバレル51内の室温を検出する温度センサをさらに含んでいてもよい。そして、当該温度センサの検出結果と、予め計測された樹脂組成物の充填量とに基づいてモータ59の回転数を制御すれば、ペースト状の樹脂組成物P2のチャンバ30への投入量をより精度よく調整することができる。なお、本実施の形態に係る押出機50は、スクリュー52が2本並列に配置された、いわゆる二軸型のエクストルーダとしたものを例示しているが、スクリュー52の本数は1本であっても3本以上であってもよい。
【0046】
また、バレル51の内部には、スクリュー52によってバレル51内を搬送される粉状の樹脂組成物P1あるいはペースト状の樹脂組成物P2を加熱するための、第2の加熱器の一例としてのバレルヒータ55が配設されていると好ましい。このバレルヒータ55は、金型ヒータ41等と同様に周知のヒータで構成することができ、例えばバレル51内の搬送路の実質的に全長を包囲するように配設されていてよい。このバレルヒータ55には、特に媒体温調方式のヒータを用いるとよい。本実施の形態においては、このバレルヒータ55を動作させて粉状の樹脂組成物P1あるいはペースト状の樹脂組成物P2を加熱(予熱)することで、チャンバ30内でペースト状の樹脂組成物P2を軟化・溶融させるために必要な加熱時間を大幅に短縮することができる。
【0047】
本実施の形態に係るバレルヒータ55は、バレル51内を搬送される粉状の樹脂組成物P1あるいはペースト状の樹脂組成物P2を、70~100℃、より好ましくは90~100℃に予熱することができる。ところで、例えば従来の事前に成型された樹脂タブレットを70℃以上に加熱すると、少なくとも一部が軟化してしまい、ロボットアーム等を用いた把持・運搬が困難となる。さらに、上述の加熱温度が90℃以上となれば樹脂タブレットの軟化がさらに進行し、ロボットアームを用いた把持・運搬は実質的に不可能となる。したがって、従来の製造装置では、チャンバに投入する前の樹脂組成物(つまり樹脂タブレット)は、低温(例えば40℃~60℃程度)でしか予熱することができない。これに対し、本実施の形態に係るモータコアの製造装置1においては、押出機50を用いてペースト状の樹脂組成物P2をチャンバ30あるいはチャンバ30に隣接する位置まで搬入するため、ペースト状の樹脂組成物P2が部分的に軟化していたとしてもその搬送には支障が生じない。これにより、バレル51内での加熱温度を70~100℃と高く設定することができる。このように加熱温度を70~100℃とすれば、チャンバ30に搬入された後の加熱時間を大幅に短縮することができる。
【0048】
さらには、バレルヒータ55による加熱温度をさらに高温、例えば100℃以上とすることで、バレル51内でペースト状の樹脂組成物P2を軟化させて液状の樹脂組成物(軟化された樹脂組成物の一例)P3とし、この液状の樹脂組成物P3をチャンバ30内に搬入することもできる。この場合にはチャンバ30に搬入された後の加熱時間を実質的になくすることができ、チャンバヒータ42を省略することもできる。なお、バレルヒータ55は、全体を均一な温度設定としてもよいが、不均一な温度設定とすることもできる。具体的には、例えば瞬時に樹脂組成物Pを軟化させる、また樹脂組成物Pの連続投入によって温度が下がりやすい供給口53側での温度低下を抑制することを目的として、押出機50の上流側を相対的に高温にすることができる。あるいは、押出機50内での樹脂組成物Pの過度な反応を抑制することを目的として、押出機50の下流側あるいは待機スペース51Aを相対的に高温にすることもできる。
【0049】
バレル51の搬出口54と、スクリュー52の先端(自由端)との間には、スクリュー52のない所定の大きさの待機スペース51Aが形成されていてもよい。この待機スペース51Aは、スクリュー52の回転により混練・搬送されたペースト状の樹脂組成物P2を一時的に貯留するためのスペースであってよい。また、この待機スペース51Aには、ベルトコンベアやスクレーパといった図示しない周知の搬送手段が設けられていてよい。この搬送手段は、シャッター56の開放に連動して動作させることで、待機スペース51A内に一時的に貯留された特定の量のペースト状の樹脂組成物P2をチャンバ30内に即座に搬入することができる。なお、待機スペース51Aを設けることなく、スクリュー52により搬送されたペースト状の樹脂組成物P2をそのままチャンバ30内に搬入する構造としてもよい。この場合には、チャンバ30内に特定の量のペースト状の樹脂組成物P2が搬入されるまで、シャッター56の開状態を維持するものとする。
【0050】
また、本実施の形態においては、バレル51の搬出口54をチャンバに連結すると共にこの搬出口54に隣接して待機スペース51Aを設け、図示しない搬送手段を動作させることで、ペースト状の樹脂組成物P2を、押出機50から直接チャンバ30へ搬入する構造のものを例示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、バレル51の搬出口54とチャンバ30との間に図示しない搬送機構を設け、当該搬送機構を動作させることでペースト状の樹脂組成物P2をチャンバ30内に搬入するようにしてもよい。同様に、バレル51の搬出口54とシャッター56あるいはチャンバ30との間に、混練されたペースト状の樹脂組成物P2から空気を抜くための機構を付加的に設けてもよい。当該機構は、例えばペースト状の樹脂組成物P2を圧縮したり、減圧室を設けたりすることでペースト状の樹脂組成物P2から空気を抜くものであってよい。
【0051】
ここで、押出機50から直接あるいは間接的にチャンバ30内に搬入される樹脂組成物Pが、事前に成型されたタブレット状に成形されたものではなく、ペースト状の樹脂組成物P2であることは、特に留意すべき事項である。本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、押出機50を用いることでペースト状の樹脂組成物P2をチャンバ30に投入(搬入)することを可能とし、且つチャンバ30に投入される樹脂組成物Pの量をモータ59の回転数制御等によって自在に調整することを可能としている。なお、押出機50からチャンバ30内に搬入されるペースト状の樹脂組成物P2は、所定の形状に仮成形されたものであってもよい。当該仮成形の方法としては、例えば待機スペース51Aにペースト状の樹脂組成物P2を連続的に搬送することにより、ペースト状の樹脂組成物P2をシャッター56に押し付けて密度を上昇させて仮成形する方法がある。また、前述したペースト状の樹脂組成物P2の押し付け動作を、スクリュー52自体を搬送方向に沿って一時的に移動させることで実現してもよい。あるいは、押出機50とチャンバ30とを直結させずに、押出機50から樹脂組成物を一旦取り出し、治具等により樹脂組成物を任意の形状に仮成形してからチャンバへ搬送してもよい。
【0052】
図3は、モータコアの製造装置の全体構造の一例を示した概略平面図であって、
図3Aは
図1に示すモータコアの製造装置を示したものであり、
図3Bはモータコアの製造装置の変形例を示したものである。上述したモータ59等の各構成要素を制御するために、本実施の形態に係る製造装置1は、
図1及び
図3Aに示すように、制御装置60をさらに含むことができる。この制御装置60は、例えば
図1中に点線で示すように、各構成要素に有線又は無線通信を介して通信可能に接続されていてよい。この制御装置60は、シーケンサ(Programmable Logic Controller、PLC)や周知のコンピュータを用いて実現することができる。
【0053】
また、本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、
図3Aに示すように、樹脂組成物Pの充填が完了した後の金型20等を清掃するためのクリーニングユニット70や、ステージ24上にロータコア2を載置する、あるいは樹脂モールドがなされたロータコア2を搬出するためのロボットアーム80をさらに含んでいてよい。
【0054】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、上述した一連の構成を備えることにより、事前に成型されたタブレット状の樹脂組成物に代えて、粉状あるいはペースト状の樹脂組成物Pを用いた樹脂モールドを実施することができる。その際、樹脂組成物Pのチャンバ30への搬送量(すなわちチャンバ30内への投入量)はモータ59の回転数を制御すること等により自在に調整することができるため、樹脂組成物Pのロスを抑制することができる。したがって、モータコアへの樹脂組成物の充填量(樹脂組成物充填量)に合わせて樹脂タブレットを選定するといった必要がなくなる。
【0055】
また、本実施の形態に係るモータコアの製造装置1によれば、金型20及びロータコア2の予熱のみならず、チャンバ30に投入する前の粉状の樹脂組成物P1あるいはペースト状の樹脂組成物P2をも高温で予熱することができる。そのため、チャンバ30内での樹脂組成物Pの加熱時間を短縮あるいは省略することができ、単位時間当たりに製造できるロータコア2の数を増加させることができる。
【0056】
オプションとして、上述した本実施の形態に係るモータコアの製造装置1に、押出機50とは別の混練機(「ニーダー」と呼ばれることがある)を設けてもよい。当該混練機は、押出機50の上流に、あるいは押出機50とチャンバ30との間に設けることができる。このような混練機を更に採用することにより、樹脂組成物Pの混練をより確実に実施できる。また、押出機50での混練を少なくでき押出機50を小型化することができる。さらに混練機を押出機50とチャンバ30との間に設けた場合には、樹脂組成物Pに含まれる気体の脱泡を促進させることもできる。
【0057】
なお、上述した本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、
図3Aに示すように、単一のステージ24を用いてロータコア2の樹脂モールドを実行するものであるが、単位時間当たりのロータコア2の生産効率を向上させるために、複数のステージを用いた装置とすることもできる。以下には、本実施の形態の変形例として、複数のステージを含むモータコアの製造装置1Aについて簡単に説明する。なお、本変形例に係るモータコアの製造装置1Aは、ステージを複数(具体的には3個)有している点以外は上述したモータコアの製造装置1と同様であるため、モータコアの製造装置1と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、モータコアの製造装置1とは異なる構成部分を中心に説明を行うものとする。
【0058】
本変形例に係るモータコアの製造装置1Aは、
図3Bに示すように、下型22が3つのステージ24A~24Cを有しており、且つこの3つのステージ24A~24Cのうちの一のステージ(
図3Bにおいてはステージ24B)を上型21に対向する位置に配設させることが可能な、移送ユニットの一例としてのターンテーブル27を含むことができる。ターンテーブル27は、制御装置60からの制御信号等に基づいて、一方向(例えば
図3Bにおける時計方向)に回転させることができる略円盤状の部材であってよい。このターンテーブル27を回転させて上型21に対向させるステージを順次変更することで、ステージ上のロータコア2の交換に要する時間を短縮でき、短時間で連続した樹脂モールドを実施することができる。
【0059】
加えて、一のステージが上型21に対向したときの回転方向下流側に位置する他の一のステージ(
図3Bにおいてはステージ24C)に隣接するようにクリーニングユニット70を配置すれば、他の一のステージの清掃中に他のステージに載置されたロータコア2の樹脂モールドを並行して実行することもできる。なお、本変形例においては、ターンテーブル27上に3つのステージ24A~24Cを配設した場合を例示したが、ターンテーブル27上に配設されるステージの数は3つに限定されない。また、本変形例では移送ユニットとして円盤状のターンテーブル27を例示したが、例えば周知のベルトコンベア等他の構造の移送ユニットを採用することもできる。
【0060】
<モータコアの製造方法>
次に、本実施の形態に係るモータコアの製造方法について説明する。以下の説明においては、上述したモータコアの製造装置1を用いてロータコア2の樹脂モールドを行う場合を例示するが、本開示のモータコアの製造方法は、当該製造装置1以外の装置であっても実施可能である。なお、以下に示すモータコアの製造方法は、主にモータコアの製造装置1の制御装置60によって実現することができる。したがって、本実施の形態に係るモータコアの製造方法は、制御装置60を構成するコンピュータのプロセッサに所定の動作を実行させるプログラムの態様で、あるいは当該プログラムを格納した非揮発性のコンピュータ読取可能媒体の態様で提供され得る。また、以下に示す効果等の説明は、本実施の形態に係る製造装置1の効果の説明を兼ねている。
【0061】
図4は、本開示の第1の実施の形態に係るモータコアの製造方法の一例を示したフローチャートである。また、
図5乃至
図7は、
図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。以下には、主に
図4乃至
図7を参酌して説明を行う。また、
図5乃至
図7は、図を見やすくするために、各動作に関連のあるものを中心に符号を付し、動作に関連の低い部材の符号は省略されている場合がある。
【0062】
本実施の形態に係るモータコアの製造方法は、初めにロータコア2の充填空間6への樹脂組成物Pの充填量(樹脂組成物充填量)を計測する(工程S1)。この充填量の計測に際しては、例えば
図2に示すように、ロータコア2のスロット部4の体積とスロット部4に挿入される永久磁石3の体積とを計測手段、例えばカメラC1、C2を用いて測定し、その差分を算出することで計測することができる。計測された樹脂充填量は、制御装置60に送られ、チャンバ30への樹脂組成物Pの投入量、具体的にはモータ59の回転数制御等に利用され得る。なお、スロット部4及び永久磁石3の体積を測定する手段は、上述したカメラC1、C2に限定されず、カメラC1、C2以外の非接触式の計測手段や接触式の計測手段(ノギス等)を適宜利用することができる。また、本実施の形態においては、スロット部4に挿入される永久磁石3が予め特定されている場合を例示したが、これに代えて、カメラC2で計測したスロット部4の大きさにあわせて適切な大きさの永久磁石3を選択してもよい。この場合は、スロット部4と永久磁石3間のクリアランス(すなわち充填空間6)を各スロット部4で略同等にすることができ、各スロット部4に充填される樹脂量を均一にすることができる。
【0063】
上述した工程S1では、スロット部4の体積と永久磁石3の体積とをカメラC1、C2を用いて計測することで、チャンバ30に投入される樹脂組成物の充填量を決定するものを例示したが、当該充填量は他の方法によって決定されてもよい。具体的には、例えば量産開始前に試作工程を実行し、当該試作工程での樹脂の充填量や余剰樹脂の量等から充填量を決定してもよい。あるいは、量産中に実際の樹脂充填量や余剰樹脂等を量産に支障のない頻度で確認し、充填量をフィードバック制御することで好適な充填量を維持するようにしてもよい。また、上述した種々の充填量の決定手法は、単独であるいは組み合わせて実行することができる。
【0064】
充填量の計測が完了すると、次にロータコア2のスロット部4内に永久磁石3を挿入する(工程S2)。そして、金型20及びロータコア2の予熱を行う(工程S3)。金型20の予熱は、金型ヒータ41を動作させることで実現できる。このとき、金型20と共にチャンバ30の予熱も行っておくとよい。チャンバ30の予熱はチャンバヒータ42を動作させることで実現できる。また、ロータコア2の予熱は、図示しない周知の加熱手段を用いて行うことができる。ロータコア2の予熱は、
図5Aに示すように、ステージ24上に載置される前に金型20とは別個に行われてもよいし、ステージ24上に載置された状態で予熱することにより、金型20の予熱と同時に行われてもよい。金型20及びロータコア2の予熱温度は100~180℃程度とするとよい。なお、当該予熱は金型20及びロータコア2のいずれか一方のみに対して行ってもよい。
【0065】
金型20及びロータコア2の予熱が完了すると、ステージ24上にロータコア2を載置し、上型21を下方向に移動させることで、金型20内にロータコア2を保持する(工程S4)。このとき、上型21は所定の圧力でロータコア2の上面を押圧するように調整されており、それによって上型21とロータコア2の上面、及び下型22とロータコア2の下面をそれぞれ密着させるとよい。なお、ロータコア2の充填空間6への樹脂組成物Pの充填量の計測の一部を、このロータコア2の保持の際に実施することができる。具体的には、スロット部4の上下方向の高さを、上型21を上下方向に移動させる際に用いた図示しないアクチュエータの制御信号から特定し、充填量の計測に利用することができる。
【0066】
次に、押出機50を用いて粉状の樹脂組成物P1の混練、搬送及び加熱を行う(工程S5)。当該工程は、先ず、樹脂組成物供給源58からバレル51の供給口53へ粉状の樹脂組成物P1を(例えば継続的に)供給し、モータ59を駆動してスクリュー52を回転させることで、供給口53に供給された粉状の樹脂組成物P1を混練しつつ搬出口54へ搬送する。そして、この搬送動作に並行して、バレルヒータ55を駆動させ、スクリュー52によって搬送されている粉状の樹脂組成物P1、あるいは混練等によって変化したペースト状の樹脂組成物P2の予熱を行う。バレルヒータ55による予熱温度は、70~100℃の範囲で調整されていてよい。予熱される樹脂組成物Pは、スクリュー52によって撹拌されつつ予熱されるため、均一に加熱される。上述した混練、搬送及び加熱により、粒状の樹脂組成物P1は大部分がペースト状の樹脂組成物P2に変化していてよい。
【0067】
また、工程S5においては、モータ59の回転数が制御装置60によって制御されることで、工程S1で計測された樹脂組成物Pの充填量に合致した量の粉状の樹脂組成物P1を、ペースト状の樹脂組成物P2に変化させつつ待機スペース51Aまで搬送するように制御されていてよい(
図5B参照)。ただし、ここでいう樹脂組成物Pの充填量に合致した量とは、充填空間6の体積のみならず、樹脂組成物充填路25の容積等、充填空間6に樹脂組成物Pを満たすために必要な量を指すものとする。なお、チャンバ30へ投入されるペースト状の樹脂組成物P2の量の調整は、上述したモータ59の回転数に基づいて行う方法に限定されず、モータコアの製造装置1を各種構成を制御することで実施できる。例えば、樹脂組成物供給源58から供給する粉状の樹脂組成物P1の量を、工程S1で計測された樹脂組成物の充填量に合うように調整することで、チャンバ30へ搬入するペースト状の樹脂組成物P2の量を調整してもよい。また、待機スペース51Aに図示しないセンサ、例えば重量センサを設けることで、待機スペース51Aに貯留されたペースト状の樹脂組成物P2の量を計測し、予め計測された樹脂組成物の充填量と比較することで、チャンバ30へ搬入するペースト状の樹脂組成物P2の量を調整してもよい。上述した調整方法以外の調整方法の例は後述する。
【0068】
上述した押出機50内での混練、搬送及び加熱の動作が完了すると、
図6Aに示すように、シャッター56を開放し、待機スペース51Aに一時的に貯留されたペースト状の樹脂組成物P2を図示しない搬送手段を用いてチャンバ30へ搬入する(工程S6)。待機スペース51Aに一時的に貯留されたペースト状の樹脂組成物P2は、上述した通り計測された樹脂組成物の充填量に合致した量に調整がされている。加えて、この待機スペース51Aに一時的に貯留されたペースト状の樹脂組成物P2は、バレルヒータ55による加熱によって70~100℃まで予熱されている。ペースト状の樹脂組成物P2は、上述の予熱等によってペースト状に変化しており、全体が一体となった塊状となり得るが、チャンバ30への搬入を支障なく実行することができる。
【0069】
チャンバ30内にペースト状の樹脂組成物P2が投入されると、次にシャッター56を閉塞し、チャンバヒータ42を動作させてペースト状の樹脂組成物P2を加熱し軟化させる(工程S7)。チャンバヒータ42は、例えばチャンバ30内のペースト状の樹脂組成物P2を100~180℃程度まで加熱するよう制御され得る。当該加熱により、ペースト状の樹脂組成物P2は軟化され溶融されて、流動性の高い液状の樹脂組成物P3に変化する。ここで、本実施の形態に係るモータコアの製造方法においては、工程S5においてペースト状の樹脂組成物P2が既に70~100℃まで予熱されているため、チャンバ30内における軟化に要する時間は従来よりも短縮されている。
【0070】
ペースト状の樹脂組成物P2が液状の樹脂組成物P3に変化すると、次に、
図6Bに示すように、プランジャ35を上昇させて、液状の樹脂組成物P3をロータコア2の充填空間6へ向けて押し上げることで、樹脂組成物Pの充填(あるいは封入)を行う(工程S8)。プランジャ35に押し上げられた液状の樹脂組成物P3は、チャンバ30から樹脂組成物充填路25を通過し、充填空間6に流入する。なお、工程S8における充填空間6への液状の樹脂組成物P3の充填を円滑に実行するために、例えば上型21の適所に充填空間6内の空気を抜くための空気穴(図示省略)を設けてもよい。
【0071】
充填空間6への液状の樹脂組成物P3の充填が完了すると、金型ヒータ41を動作させて充填空間6内の液状の樹脂組成物P3を硬化させる(工程S9)。液状の樹脂組成物P3を硬化する際は、例えば100~180℃で数分程度加熱するとよい。液状の樹脂組成物P3が当該加熱によって硬化した樹脂組成物P4に変化することで、永久磁石3はロータコア2のスロット部4内に樹脂モールドにより固定される。なお、この工程S9における加熱時間は、樹脂組成物Pの具体的な組成等に合わせて適宜調整され得る。
【0072】
上述した一連の樹脂モールドの工程が完了すると、
図7Aに示すように、上型21を上昇させ、樹脂モールドされたロータコア2を、ロボットアーム80を用いて搬出する(工程S10)。搬出されたロータコア2は、例えばシャフトの取り付け等のために別の装置へ移送され得る。そして、このロータコア2の搬出が完了すると、製造装置1のクリーニングを行う(工程S11)。製造装置1のクリーニングは、クリーニングユニット70(
図3A参照)によって実施されるものであってよい。クリーニングユニット70には、ブラシ等のクリーニング用の部材を備えていてよく、樹脂組成物Pの移動経路や金型20の表面をクリーニングすることができる。
【0073】
例えば、ステージ24の樹脂組成物充填路25をクリーニングする場合は、以下の通り動作させればよい。すなわち、先ずリフタ26を動作させてステージ24を下型本体23から分離することで、樹脂組成物充填路25を閉塞している硬化した樹脂組成物P4を樹脂組成物充填路25から取り除き、且つこの硬化した樹脂組成物P4を、プランジャ35をさらに上昇させることで下型本体23からも分離させる。そして、分離された硬化した樹脂組成物P4を図示しないロボットアーム等で把持して除去し、ステージ24及び下型本体23の表面や、樹脂組成物充填路25内をブラシ等で清掃する。一連のクリーニングが完了すると、
図5Aに示す状態に戻って次のロータコア2の搬入まで待機状態とする。
【0074】
なお、上述した一連の工程の順序は、その機能を維持し得る範囲において変更することができる。例えば、押出機50による粉状の樹脂組成物P1あるいはペースト状の樹脂組成物P2の搬送及び予熱は、樹脂組成物Pの充填量が計測できた後であれば開始することができる。また、金型20、ロータコア2及び粉状の樹脂組成物P1等の予熱は、省略することもできる。
【0075】
以上説明した通り、本実施の形態に係るモータコアの製造方法によれば、チャンバ30に投入する樹脂組成物Pとして事前に成型されたタブレット状のものを採用しておらず、且つ押出機50を用いて必要な量の樹脂組成物Pを安定的にチャンバ30に投入することができるため、樹脂組成物Pのロスを抑制することができる。したがって、モータコアへの樹脂の充填量に合わせて樹脂タブレットを選定するといった必要がなくなる。
【0076】
また、本実施の形態に係るモータコアの製造方法によれば、金型20及びロータコア2の予熱のみならず、チャンバ30に投入する前の粉状の樹脂組成物P1あるいはペースト状の樹脂組成物P2をも高温で予熱することができる。そのため、チャンバ30内での樹脂組成物Pの加熱時間を短縮あるいは省略することができ、単位時間当たりに製造できるロータコア2の数を増加させることができる。
【0077】
上述した本実施の形態に係るモータコアの製造装置1及びモータコアの製造方法における、チャンバ30に投入される樹脂組成物Pの量の調整方法の他の一例について以下に説明する。
【0078】
図8は、
図1に示す押出機の一変形例を示したものであって、
図8Aは樹脂組成物充填量が多い場合における押出機の先端部分を拡大して示した概略拡大図であり、
図8Bは樹脂組成物充填量が少ない場合における押出機の先端部分を拡大して示した概略拡大図である。本開示のモータコアの製造装置において、チャンバ30に投入される樹脂組成物Pは、
図8に示した構成を含む押出機50Aを用いて調整されてよい。本変形例に係る押出機50Aは、
図8に示すように、スクリュー52Aが、図示しないスライド機構によって樹脂組成物Pの搬送方向に沿って移動可能となっていてよい。なお、
図8A及び
図8Bに示す押出機50Aは、その構成を簡略化するために、スクリュー52Aを1本のみ含むものが例示されている。
【0079】
上述したスライド機構を含む押出機50Aを用いた樹脂組成物Pの充填量の調整は、スクリュー52Aの位置を調整することで実施することができる。具体的には、例えば樹脂組成物充填量が比較的多い場合には、
図8Aに示すように、先ず、スクリュー52Aをスライド移動させて、スクリュー52Aの先端と搬出口54との間に形成される待機スペース51Aのサイズを、所望の樹脂組成物充填量に合わせて調整する。次に、スクリュー52Aを回転させて樹脂組成物Pを混練しつつ搬送することで、待機スペース51A内に樹脂組成物Pを搬入する。このとき、樹脂組成物Pを連続的に待機スペース51Aに搬入することで、樹脂組成物Pはシャッター56とスクリュー52Aとの間で圧縮され、待機スペース51A内は樹脂組成物Pで満たされ得る。
【0080】
スクリュー52Aの回転によって待機スペース51Aへの樹脂組成物Pが完了すると、シャッター56を開き、スライド機構を動作させてスクリュー52Aを樹脂組成物Pと共に搬送方向に移動させる。そして、スクリュー52Aの先端が搬送方向における搬出口54と同一の位置に到達すると、スライド機構を停止させ、
図8Aに示す切断線CLに沿って樹脂組成物Pを切断する。分離された樹脂組成物Pは、チャンバ30内に投入することができる。
【0081】
また、樹脂組成物充填量が比較的少ない場合には、
図8Bに示すように、スライド機構を動作させ、スクリュー52Aの先端を
図8Aの場合に比してより搬送方向下流側まで移動させることで、待機スペース51Aを比較的小さく調整する。この調整動作の後は上述した樹脂組成物充填量が多い場合の動作と同様の動作を実行すれば比較的少ない量の樹脂組成物をチャンバ30へ投入することができる。
【0082】
以上の調整方法によれば、スクリュー52Aをスライド移動させて待機スペース51Aのサイズを調整することで、チャンバ30内に投入する樹脂組成物Pの量を調整することができる。なお、樹脂組成物充填量の調整方法は、上述した変形例以外にも想定できる。例えば、上述した変形例では、チャンバ30内に投入したい樹脂組成物の量に合わせて待機スペース51Aのサイズを調整しているが、これに代えて、搬出口54から樹脂組成物Pを搬出する際の、スライド機構によるスクリュー52Aの移動量を調整することによって、チャンバ30内に投入したい樹脂組成物の量の調整を実施することもできる。
【0083】
具体的には、チャンバ30内に投入する樹脂組成物の量が多い場合には、シャッター56を空けてスクリュー52Aと共に樹脂組成物Pを搬出する際、スクリュー52Aの先端を搬送方向における搬出口54と同一の位置まで移動させる。一方、チャンバ30内に投入する樹脂組成物の量が少ない場合には、スクリュー52Aの先端が搬送方向における搬出口54の位置よりも上流の所定位置まで移動させる。このように、樹脂組成物Pを搬出する際のスクリュー52のスライド移動量に基づいて、チャンバ30内に投入する樹脂組成物Pの量を調整してもよい。
【0084】
あるいは、図示は省略するが、待機スペース内に搬入される樹脂組成物をスクリューの回転力を利用して圧縮することで、チャンバ内に投入する樹脂組成物Pの量を実質的に調整することもできる。すなわち、チャンバ内に投入する樹脂組成物の量が多い場合には、スクリューを回転させて待機スペース内に樹脂組成物を搬出する量を相対的に増やすことで、待機スペース内に搬入された樹脂組成物をスクリューの回転力を利用して圧縮させて高密度の樹脂組成物とし、チャンバ内に投入する樹脂組成物の量が少ない場合には、スクリューを回転させて待機スペース内に樹脂組成物を搬出する量を相対的に減らすことで、待機スペース内に搬入された樹脂組成物へのスクリューの回転力を利用した圧縮作用を小さくして、低密度の樹脂組成物とするものであってよい。なお、この場合は、スクリューに作用する反力を計測することで、待機スペース内の樹脂組成物の密度を推定することができる。
【0085】
(第2の実施の形態)
上述した第1の実施の形態に係るモータコアの製造装置1では、押出機50が左右方向に延在しているものを例示したが、押出機の延在方向はこれに限定されない。そこで以下には、本開示の第2の実施の形態として、上下方向に延在する押出機150を含むモータコアの製造装置100について簡単に説明する。
【0086】
図9は、本開示の第2の実施の形態に係るモータコアの製造装置の一例を示した概略平面図である。また、
図10は、
図9のA-A線で切断した概略断面図である。本実施の形態に係るモータコアの製造装置100は、
図9及び
図10に示すように、主に、ロータコアを保持可能な金型120と、金型120に形成されその一端部がロータコア2のスロット部4に連通する樹脂組成物充填路125に連通するチャンバ130と、チャンバ130内の樹脂組成物Pを樹脂組成物充填路125に向けて搬送するプランジャ135と、金型120内又は金型120内とチャンバ130の周囲に配設された加熱器(図示省略)と、樹脂組成物Pをチャンバ130に投入するために、樹脂組成物Pを混練しつつ搬送する押出機150と、を含むものであってよい。なお、本実施の形態に係るモータコアの製造装置100の各種構成のうち、第1の実施の形態に係るモータコアの製造装置1と同様のものについては、第1の実施の形態において説明した内容を流用するものとし、以下にはその説明を省略する。
【0087】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置100のチャンバ130は、
図9に示すように、ターンテーブル131に複数個、例えば周方向に等間隔に4個形成されていてよい。ターンテーブル131は、所定の肉厚を有する円盤状の部材で構成することができ、その中心部が回転支柱132に回転自在に支持されることにより、任意のタイミングで回転させることが可能なものとすることができる。
【0088】
このターンテーブル131上には複数の作業エリアE1~E4が設けられていてよい。具体的には、チャンバ130に樹脂組成物Pを投入すると共に下型122上にロータコア2を設置するための第1の作業エリアE1と、ロータコア2のスロット部4内に樹脂組成物Pを注入して硬化させる第2の作業エリアE2と、樹脂組成物Pの注入及び硬化が完了した後のロータコア2を搬出し、下型122等のクリーニングを行う第3の作業エリアE3と、下型122及びチャンバ130の温度調整等を行う第4の作業エリアE4と、が設けられていてよい。なお、各作業エリアにおける作業内容や作業エリアの数については上述のものに限定されず、適宜変更することができる。
【0089】
金型120は、ロータコア2を保持するための部材であって、複数個のチャンバ130の上部にそれぞれ配設された下型122と、後述する装置本体110の天板113に取り付けられた上型121とを含んでいてよい。下型122には、チャンバ130とスロット部4とをつなぐ樹脂組成物充填路125が形成されていてよい。
【0090】
プランジャ135は、チャンバ130内を上下方向に移動可能なものであって、複数個のチャンバ130のそれぞれに設置されていてよい。プランジャ135を上下方向に動作させることが可能なアクチュエータ(図示省略)は、第2の作業エリアE2の下部に配設されていればよい。
【0091】
加熱器は、第1の実施の形態において説明した第1の加熱器40と同様のものであってよい。例えば、加熱器は天板113やターンテーブル131に設置されていてよい。
【0092】
押出機150は、上下方向に延在する部材で構成することができる。この押出機150は、その内部を樹脂組成物Pが搬送されるバレル151と、バレル151の内部に配設されバレル151内に供給された樹脂組成物P(具体的には粉状の樹脂組成物P1)を混練しつつ下方向へ搬送するスクリュー152と、を含むものであってよい。
【0093】
バレル151は、上下方向に延在する筒状の部材で構成することができ、樹脂組成物Pの搬送路を構成することができるものであってよい。バレル151の上方の端部には粉状の樹脂組成物P1が供給される供給口153が形成され、他端部には搬出口154が形成されていてよい。供給口153には樹脂組成物供給路157が連結していてよい。また、搬出口154には、例えば搬出口154を開閉すると共に樹脂組成物Pを切断するカッターとしても機能するシャッター156が設けられていてよい。また、図示は省略するが、バレル151の内部には樹脂組成物Pを予熱するためのバレルヒータが配設されていてもよい。
【0094】
スクリュー152は、モータ159によって回転される、外周面に螺旋状のフィンが形成された長尺の部材であってよい。このスクリュー152は、バレル151内にその延在方向に沿って配設される。また、本実施の形態に係るスクリュー152は、バレル151内に1本のみ配置され、且つ、
図8A及び
図8Bで説明したもののように、図示しないスライド機構によってスクリュー152自体が上下方向にスライド移動可能なものであってよい。
【0095】
押出機150の搬出口154の下方には、押出機150から搬送された樹脂組成物Pを第1の作業エリアE1のチャンバ130内に移送するための移送機構190が設けられていてよい。移送機構190は、長尺なブロック体で構成された移送機構本体191と、移送機構本体191の中間部を回転自在に支持する回転支柱192と、移送機構本体191の長手方向の両端部付近に形成され移送機構本体191を上下方向に貫通する収容部193と、収容部193の下端部を開閉自在に閉塞する底蓋194と、を含んでいてよい。
【0096】
上述した構成を含む移送機構190は、一方の収容部193を押出機150の搬出口154の下方に位置決めした状態で待機させることで、押出機150から搬出された樹脂組成物Pを収容部193内に受け取ることができる。なお、収容部193内に一時的に収容される樹脂組成物Pは、押出機150内でシャッター156に押し付けられて加圧された後、シャッター156の開閉動作によって所定のサイズに切断されることでブロック状に仮成形されたペースト状の樹脂組成物P2であってよい。
【0097】
一方の収容部193にペースト状の樹脂組成物P2が収容されると、移送機構本体191を回転させ、当該ペースト状の樹脂組成物P2が収容された収容部193を第1の作業エリアE1のチャンバ130上に移動させる。そして、底蓋194を開くことで、ペースト状の樹脂組成物P2をチャンバ130内に投入することができる。ここで、前述したペースト状の樹脂組成物P2をチャンバ130内に投入する際、
図9に示すように、他方の収容部193は押出機150の搬出口154の下方に位置決めされるとよい。このような構成とすると、押出機150からのペースト状の樹脂組成物P2の搬出動作を連続的に実行することができる。
【0098】
また、本実施の形態に係るモータコアの製造装置100は、第2の作業エリアE2に対応する位置に、上型121を上下方向に移動させることが可能な装置本体110が設けられていてもよい。装置本体110は、上下方向に延びる支柱112と、支柱112の上端部から水平方向に延びる支持板114と、支持板114に上下動可能に取り付けられた天板113と、天板113を上下方向に移動させるためのモータ115とを含んでいてよい。
【0099】
さらに、本実施の形態に係るモータコアの製造装置100は、第1の作業エリアE1及び第3の作業エリアE3の近傍に、ロータコア2を搬入及び搬出するためのロボットアーム181、182がそれぞれ設けられていてよい。さらにまた、第3の作業エリアE3には、ロボットアーム182によりロータコア2が搬出された後の下型122等を清掃するクリーニングユニット170が設けられていてもよい。
【0100】
また、本実施の形態に係るモータコアの製造装置100は、上述した一連の構成要素を制御するための制御装置160を含んでいてよい。この制御装置160は上述した制御装置60と同様に、周知のコンピュータで構成することができる。
【0101】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置100を用いてモータコアを製造する場合には、樹脂組成物Pの移送及びロータコア2の作業エリア間の移動を追加で実行する点を除き、第1の実施の形態において述べたモータコアの製造方法と同様のプロセスで実行することができる。したがって、ここでは詳細な説明は省略する。
【0102】
以上説明した通り、本実施の形態に係るモータコアの製造装置100によっても、粉状あるいはペースト状の樹脂組成物Pを用いた樹脂モールドを実施することができる。また、樹脂組成物Pのチャンバ130(換言すると、移送機構190の収容部193)への投入量は装置を制御することにより自在に調整することができるため、樹脂組成物Pのロスを抑制することができる。
【0103】
なお、上述した本実施の形態では、チャンバ130を回転する円盤状のターンテーブル131に複数個設けたものを例示したが、ターンテーブル131に代えて直線状の搬送路を採用してもよい。また、本実施の形態では、1つの押出機150に対してターンテーブル131と移送機構190とを1つずつ設けたものを例示したが、ターンテーブル131と移送機構190とを並べて2つ配置し、1つの押出機150から搬出されるペースト状の樹脂組成物P2を複数の移送機構190で順次移送するような構成とすれば、さらに効率よくモータコアの製造が可能となる。
【0104】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。また、本開示において、各構成要素は、矛盾が生じない限りは1つのみ存在しても2つ以上存在してもよい。
【0105】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願及び特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込むのと、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ限度で、ここで参照して組み込む。
【0106】
本開示の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」及び「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「~を含むが限らない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例又は例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本開示をよりよく説明することだけを意図し、本開示の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本開示の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
【0107】
本明細書中では、本開示を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本開示の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本開示が実施されることを予定している。したがって本開示は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正及び均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本開示に包含される。