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特開2024-56042スピーカ取付部材及びスピーカ取付方法
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  • 特開-スピーカ取付部材及びスピーカ取付方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056042
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】スピーカ取付部材及びスピーカ取付方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/02 20060101AFI20240412BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240412BHJP
【FI】
H04R1/02 105Z
H04R1/02 102B
B60R11/02 S
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024034770
(22)【出願日】2024-03-07
(62)【分割の表示】P 2019147553の分割
【原出願日】2019-08-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隼美
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 辰
(72)【発明者】
【氏名】根岸 孝之
(57)【要約】
【課題】スピーカの取り替え時において、その取り付け位置に設けられた取り付け孔とスピーカの端子との干渉を有効に防止することが可能なブラケットBを提供する。
【解決手段】スピーカを中空内部Hに収納した状態で取り付け位置に取り付けられるブラケットBにおいて、取り付け位置に空けられた取り付け孔に嵌め込まれ且つ中空内部Hを形成する嵌め込み部1と、スピーカに備えられた固定枠の形状に対応した位置に設けられた固定孔2と、を備え、ブラケットBを介して取り付けられたスピーカの端子の位置が取り付け孔の内側となるように、固定孔2の位置により決められるスピーカの固定位置の中心O2を嵌め込み部1の中心O1に対して偏心させる位置に固定孔2が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカを内部に収納した状態で取り付け位置に取り付けられるスピーカ取付部材において、
前記取り付け位置に空けられた取り付け孔に嵌め込まれ且つ前記内部を形成する嵌め込み部と、
前記スピーカに備えられた固定枠の形状に対応した位置に設けられた固定孔と、
を備え、
前記スピーカ取付部材を介して前記取り付け位置に取り付けられた前記スピーカの端子の位置が前記取り付け孔の内側となるように、前記固定孔の位置により決められる前記スピーカの固定位置の中心を前記嵌め込み部の中心に対して偏心させる位置に当該固定孔が設けられていることを特徴とするスピーカ取付部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、スピーカ取付部材及びスピーカ取付方法の技術分野に属する。より詳細には、例えば車両ドアの内側等の取り付け位置にスピーカを取り付ける際に用いられるスピーカ取付部材及び当該スピーカの取付方法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の新規購入時に取り付けられているスピーカを、好みの音響特性を有する他のスピーカに取り替えることが行われている。なお以下の説明において、車両の新規購入時に取り付けられているスピーカを、「既存スピーカ」と称する。このような既存スピーカの取り替え時には、新たなスピーカの例えば外枠等の取付部と、そのスピーカが取り付けられる上記車両のドア等の取り付け位置との間に介在して、当該取り付け位置に新たなスピーカを固定するためのスピーカ取付部材が用いられる。このようなスピーカ取付部材は、例えば「ブラケット」と称されることもある。このようなスピーカ取付部材に関する従来技術の一例を示す文献としては、例えば下記特許文献1が挙げられる。
【0003】
下記特許文献1に記載されている技術では、その中空内部にスピーカを収納した状態で当該スピーカを固定し、且つ車両のドアに固定されるブラケットにおいて、スピーカの端子に対応する切り欠きを、上記中空内部を囲む内面の最下部に設けると共に、当該切り欠きの底面の最下部を車室内側の前方から後方に向けて下がるように傾斜させた構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-219792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、上記音響特性の観点からは、振動板の直径がなるべく大きいスピーカ(即ち大口径のスピーカ)に取り替えることが望まれるが、この場合には、振動板の直径が小さいスピーカに比べて端子が外側に位置することとなり、結果的に、当該端子と、スピーカの取り付け位置に設けられた取り付け孔内縁部とが干渉してしまい(即ちぶつかってしまい)、上記大口径のスピーカが取り付けられないという問題点が生じる。この問題点は、特許文献1に記載されているブラケットのように当該ブラケット側に端子に対応する切り欠きが設けられていたとしても、当該端子と取り付け孔の内縁部とが干渉する以上、解決され得ない。
【0006】
そこで本願は、上記の要請及び問題点に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、スピーカの取り付け時(又は取り替え時)において、その取り付け位置に設けられた取り付け孔と当該スピーカの端子との干渉を有効に防止することが可能なスピーカ取付部材及びスピーカ取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、スピーカを内部に収納した状態で取り付け位置に取り付けられるスピーカ取付部材において、前記取り付け位置に空けられた取り付け孔に嵌め込まれ且つ前記内部を形成する嵌め込み部と、前記スピーカに備えられた固定枠の形状に対応した位置に設けられた固定孔と、を備え、前記スピーカ取付部材を介して前記取り付け位置に取り付けられた前記スピーカの端子の位置が前記取り付け孔の内側となるように、前記固定孔の位置により決められる前記スピーカの固定位置の中心を前記嵌め込み部の中心に対して偏心させる位置に当該固定孔が設けられている。
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項10に記載の発明は、取付部材を介して取り付け位置にスピーカを取り付けるスピーカ取付方法において、前記取付部材に前記スピーカを固定するスピーカ固定工程と、前記取付部材を介して前記取り付け位置に取り付けられた前記スピーカの端子の位置が前記取り付け位置に空けられた取り付け孔の内側となるように、当該取り付け孔の中心に対して前記スピーカの中心を偏心させて、当該スピーカが固定された前記取付部材を前記取り付け位置に取り付ける取付工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態のスピーカ取付部材の構成を示す平面図である。
図2】実施例のブラケットの構造を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は右側面図であり、(c)は裏面図であり、(d)は部分拡大斜視図であり、(e)は(a)及び(c)におけるA-A’部断面図である。
図3】実施例のブラケットに対するスピーカフレームの取り付け状態を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は裏面図であり、(c)は裏面の部分拡大図である。
図4】第1変形例のブラケットの構造を示す図であり、(a)は平面図であり、(b)は右側面図であり、(c)は裏面図である。
図5】第2変形例のブラケットの構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本願を実施するための形態について、図1を用いて説明する。なお図1は、実施形態のスピーカ取付部材の構成を示す平面図である。
【0011】
図1に示すように、実施形態のスピーカ取付部材Bは、スピーカを中空内部Hに収納した状態で取り付け位置に取り付けられるスピーカ取付部材である。
【0012】
そして、スピーカ取付部材Bは、上記取り付け位置に空けられた取り付け孔に嵌め込まれ且つ中空内部Hを形成する嵌め込み部1と、上記スピーカに備えられた固定枠の形状に対応した位置に設けられた固定孔2と、を備え、スピーカ取付部材Bを介して上記取り付け位置に取り付けられたスピーカの端子の位置が上記取り付け孔の内側となるように、固定孔2の位置により決められるスピーカの固定位置の中心O2を嵌め込み部1の中心O1に対して偏心させる位置に固定孔2が設けられている。
【0013】
以上説明したように、実施形態のスピーカ取付部材Bの構造によれば、上記取り付け位置に取り付けられるスピーカの端子の位置が上記取り付け孔の内側となるように、スピーカの固定位置の中心O2を嵌め込み部の中心O1に対して偏心させる位置に固定孔2が設けられているので、スピーカの端子と上記取り付け孔との干渉を有効に防止することができる。
【実施例0014】
次に、上述した実施形態に対応する具体的な実施例について、図2及び図3を用いて説明する。なお以下に説明する実施例は、上記既存スピーカの例えば車両ドア内側等の取り付け位置に当該既存スピーカに代えて新たなスピーカを取り付ける際に用いられるブラケットの構造に本願を適用した場合の実施例である。なお以下の説明において、上記新たなスピーカを、単に「新スピーカ」と称する。
【0015】
また、図2は実施例のブラケットの構造を示す図であり、図3は実施例のブラケットに対するスピーカフレームの取り付け状態を示す図である。このとき図2では、実施例のブラケットの左側面図は図2(b)に示す右側面図と略同一であるので、記載を省略している。また、図2及び図3では、図1に示した実施形態のスピーカ取付部材Bにおける各構成部材に対応する実施例の構成部材それぞれについて、当該スピーカ取付部材Bにおける各構成部材と同一の部材番号を用いている。
【0016】
図2に示すように、スピーカ取付部材Bの一例としての実施例のブラケットBは、全体として、固定面10及び胴部11を備えた円環形の枠形状を有している。そして、固定面10の周縁部には、図2において図示しない新スピーカのフレームを固定するための固定孔2A乃至固定孔2Cが、当該フレーム側の固定孔の位置に合うように開口されている。この固定孔2A乃至固定孔2Cを用いてブラケットBに固定される新スピーカの大きさ(例えば、その振動板の直径)は、上記既存スピーカの大きさよりも大きくてもよい。この場合でも、各固定孔2A乃至固定孔2Cは、新スピーカの大きさに合わせて空けられていればよい。
【0017】
一方、ブラケットBの中央には、新スピーカを構成する後述のスピーカフレームや上記振動板及び駆動部等を収納するための中空内部Hが開口されている。当該中空内部Hの図2における下側及び左右側には、実施例の嵌め込み部1が形成されている。この嵌め込み部1は、中空内部Hに新スピーカが収納された状態で、車両ドア内側にある当該新スピーカの取り付け位置に予め空けられている取り付け孔に嵌め込まれる。そして、中空内部Hの周縁に沿ってブラケットBに空けられた固定孔3A乃至固定孔3Cを用いて嵌め込み部1が当該取り付け孔に嵌め込まれた状態で、中空内部Hに新スピーカを収納したブラケットBが、各取り付け位置に固定される。この固定孔3A乃至固定孔3Cが、本願の「取付部材固定孔」の一例に相当する。
【0018】
そして、ブラケットBでは、図2(a)に示すように、その取り付け位置に当該ブラケットBを用いて取り付けられた新スピーカにおける外部接続用の端子の位置が、上記取り付け孔の内側(その内縁部よりも内側)となるように、各固定孔2A乃至固定孔2Cの位置により決められる新スピーカの固定位置の中心O2を嵌め込み部1の中心O1に対して偏心させる位置に、各固定孔2A乃至固定孔2Cが設けられている。より具体的に、実施例の新スピーカでは、それが固定孔2A乃至固定孔2Cを介してブラケットBに取り付けられたとき、新スピーカの中心(概ね、上記中心O2と一致する)から見て図2(a)乃至図2(c)における下方にその端子が位置する。この端子の位置に対応して、ブラケットBにおける上記中心O2の上記中心O1に対する偏心方向は、中心O2に対する上記端子の位置の方向と反対方向(即ち、図2(a)乃至図2(c)における上方)とされている。この偏心により、ブラケットBを用いて上記取り付け位置に取り付けられた新スピーカにおける上記端子の位置は、結果的に上記取り付け孔の内側となる。
【0019】
一方、実施例のブラケットB自体は、絶縁性の例えば樹脂等を用いて、例えば射出成形法により一体的に形成されている。そして、上記嵌め込み部1は、図2(e)にその断面図を示すように、新スピーカの取付時において、上記端子と、上記取り付け孔の内縁(通常は金属製である場合が多い)との間に介在するように、その断面が上記内縁を覆うような折り返し状の形状とされている。即ち、嵌め込み部1は、上記取り付け位置への新スピーカの取り付け時において上記取り付け孔の内縁と新スピーカの端子とを絶縁する絶縁部として機能する。
【0020】
次に、実施例のブラッケットBの形状は、それが取り付けられる車両の右ドア用と、左ドア用とで共通(即ち左右共用)とされている。即ち、対向する取り付け位置にそれぞれ取り付けられるブラッケットBが同一の形状とされている。そして、ブラケットBには、各取り付け位置に取り付けられたときに鉛直方向最下方となる固定面10の位置に、水抜き孔5A及び水抜き孔5Bが設けられている。即ち、各水抜き孔5A及び水抜き孔5Bは、対向する位置にある取り付け孔への取り付け状態にそれぞれ対応した位置に設けられている。実施例のブラケットBの場合、例えば水抜き孔5Aは、右ドアの取り付け位置に固定孔3A乃至固定孔3Cを用いて取り付けられたときに鉛直方向最下方となる固定面10の位置に設けられている。これに対して水抜き孔5Bは、左ドアの取り付け位置に同様に取り付けられたときに鉛直方向最下方となる固定面10の位置に設けられている。
【0021】
そして、各水抜き孔5A及び水抜き孔5Bのそれぞれの形状は、図2(a)、図2(c)及び図2(d)に示すように、ブラケットBの周方向に長辺がある長孔とされており、その内部には、各取り付け位置への取り付け時において、図2(d)に破線矢印で例示するように澱むことなく水がブラケットBの外(図2(a)及び図2(d)において奥方向)に流れ出るような勾配を形成するための傾斜部50が設けられている。
【0022】
更に、ブラケットBの固定面10の一端(図2に例示する場合には下方端)には、新スピーカのスピーカフレームをブラケットBに固定する際の当該固定面10の周方向の位置合わせに用いられるリブ4A及びリブ4Bが設けられている。これらのリブ4A及びリブ4Bについては、後ほど図3を用いて詳説する。
【0023】
次に、ブラケットBに対する新スピーカの取り付け状態について、当該新スピーカの一部であり且つ上記固定孔2A乃至固定孔2Cを用いてブラケットBに固定される上記スピーカフレームとの関係により、図3を用いて説明する。
【0024】
図3にそれぞれ示すように、新スピーカのスピーカフレームFは、ブラケットBの中空内部Hに嵌め込まれるように、固定孔2A乃至固定孔2Cを用いてブラケットBに固定される。そして、新スピーカの端子Tは、スピーカフレームFの中心からみて一の方向(図3に例示する場合は、図3(a)及び図3(b)における下方)に纏めて設けられている。また、特に図3(a)に示すように、スピーカフレームFの周縁部には、実施例のブラケットBを含む複数種類のブラケットに対してスピーカフレームFが取り付け可能となるように、複数の切り欠きが設けられている。そして、固定面10に設けられた上記リブ4A及びリブ4Bは、これら複数の切り欠きのうちの対応する切り欠きの位置がブラケットBの固定孔2A乃至固定孔2Cの位置に正しく合うようにスピーカフレームFをブラケットBに固定するためのガイドとして機能する。図3(a)に例示するように、このリブ4A及びリブ4Bが、スピーカフレームFの対応する位置に設けられた切り欠き内に収まるように位置決めしてスピーカフレームFを固定することで、スピーカフレームFがブラケットBの正しい位置に固定され、間違った位置での新スピーカの取り付けを適切に防止することができる。
【0025】
そして、上記リブ4A及びリブ4Bを用いてスピーカフレームFがブラケットBに正しく固定されると、図3(c)に例示するように、新スピーカの端子Tは、それが複数ある場合でも、全て嵌め込み部1の内側に位置するようになる。これは、上記中心O2が上記中心O1に対して上述したように偏心していることによる。これにより、絶縁性材料により形成されている当該嵌め込み部1が上記取り付け孔の内縁を覆う形状とされていることから、端子Tと、当該内縁との間の絶縁が保たれることになる。
【0026】
次に、特に図2(a)及び図2(e)に示すように、各取り付け位置への取り付け時において下方に位置することとなる固定孔3Cの上部には、当該取り付け時において外部から浸入してきた水をその上面を通過させる水通し部20が設けられている。この水通し部20は、水抜き穴5A又は水抜き孔5Bが鉛直方向最下方となる位置となるように、対向する各取り付け位置にブラケットBが取り付けられた際の、固定孔3Cを構成する窪み内部に水が溜まることを防止するための水通し部である。上記取り付けられた際には、水通し部20の上面が鉛直下方に傾斜することとなり、上記窪み内部に侵入しようとする水は、結果的に当該水通し部20により堰き止められて、鉛直方向最下方の位置にある水抜き孔5A又は水抜き孔5Bまでスムーズに流されることになる。この水通し部20が、本願の「水侵入防止部材」の一例に相当する。なお、図2等で示した水通し部20は凸形状となっているが、固定孔3Cに嵌める固定部材(例えば固定用ビス等)と干渉しなければ、固定面10の内周面に沿った形状としてもよい。
【0027】
上述したように、実施例のブラケットBを用いた新スピーカの取り付け位置への取付方法としては、ブラケットBに新スピーカを固定する工程と、ブラケットBを介して各取り付け位置に取り付けられた新スピーカの端子Tの位置が各取り付け孔の内側となるように、当該取り付け孔の中心(上記中心O1と略一致する)に対して新スピーカの中心(上記中心O2と略一致する)を偏心させて、新スピーカが固定されたブラケットBを各取り付け位置に取り付ける工程と、を含むことになる。
【0028】
以上それぞれ説明したように、実施例のブラケットBの構造によれば、取り付け位置に取り付けられる新スピーカの端子Tの位置が、車両ドア内側に空けられた取り付け孔の内側となるように、新スピーカの固定位置の中心O2を嵌め込み部1の中心O1に対して偏心させる位置に固定孔2A乃至固定孔2Cが設けられているので、新スピーカの端子Tと取り付け孔(の内縁)との干渉を有効に防止することができる。
【0029】
また、上記中心O2の上記中心O1に対する偏心方向が、新スピーカの取り付け時における当該中心O2の位置に対する新スピーカの端子Tの位置の方向と反対の方向であるので(図2(a)参照)、当該端子Tと取り付け孔との干渉を効果的に防止することができる。
【0030】
更に、新スピーカの取り付け時においてその取り付け孔の内縁と端子Tとを絶縁する嵌め込み部1が絶縁性の材料により形成されているので、取り付け孔と端子Tとを効果的に絶縁することができる。
【0031】
更にまた、対向する位置に設けられた二つの取り付け孔への新スピーカの取り付け状態にそれぞれ対応した位置に水抜き孔5A及び水抜き孔5Bがそれぞれ設けられているので、一のブラケットBを兼用しつつ、各取り付け位置において新スピーカ取付後の耐水効果を発揮させることができる。これにより、例えば、水がたまることによるブラケットBの劣化、カビの発生又はスピーカ音質への影響などを好適に防ぐことができる。
【0032】
また、各水抜き孔5A及び水抜き孔5Bがそれぞれ長孔であるので、取り付け位置側の水抜き部との間の位置誤差等を吸収して効率的に耐水効果を発揮させることができる。
【0033】
更に、各取り付け位置への取り付け時において勾配を形成する傾斜部50が各水抜き孔5A及び水抜き孔5Bの内部にそれぞれ設けられているので、水抜き作用による耐水効果をより高めることができる。
【0034】
更にまた、各取り付け位置への取り付け時において固定孔3Cに対する水の浸入を防止する水通し部20が、嵌め込み部1の中心O1と固定孔3Cとの間に形成されているので、取り付け位置への固定後の錆等による耐久性の低下を抑制することができる。
【0035】
また、各固定孔2A乃至固定孔2Cが、大型の新スピーカの固定枠(スピーカフレームF)の形状に対応した位置に設けられている場合は、既存スピーカよりも大型の新スピーカを容易に取り付けることができる。
【0036】
更に、実施例のブラケットBを用いた新スピーカの取り付け方法によれば、各取り付け位置に取り付けられた新スピーカの端子Tの位置が各取り付け孔の内側となるように、取り付け孔の中心(中心O1に略等しい)に対して新スピーカの中心(中心O2に略等しい)を偏心させて、新スピーカが固定されたブラケットBを各取り付け位置に取り付けられるので、端子Tと各取り付け孔との干渉を防止することができる。
[変形例]
【0037】
次に、実施形態に対応する変形例について、図4及び図5を用いて説明する。なお、図4及び図5においては、図2及び図3を用いて説明した実施例のブラケットBと同一の構成部材については、同一の部材番号を付して細部の説明を省略する。
【0038】
(1)第1変形例
初めに、第1変形例について図4を用いて説明する。このとき図4では、第1変形例のブラケットの左側面図は図4(b)に示す右側面図と略同一であるので、記載を省略している。また図4において、実施例のブラケットBと同様の構成部材については、同一の部材番号を付して細部の説明を省略する。
【0039】
上述した実施例に係るブラケットBにおける嵌め込み部1は、中空内部Hの図2における下方及び左右にのみ、形成されている。
【0040】
これに対し、第1変形例のブラケットB1の嵌め込み部1Bは、中空内部Hの周縁部全てに形成されている。その他の構成は、実施例のブラケットBと同一であるので、細部の説明は省略する。
【0041】
(2)第2変形例
次に、第2変形例について図5を用いて説明する。なお図5において、実施例のブラケットBと同様の構成部材については、同一の部材番号を付して細部の説明を省略する。
【0042】
上述した実施例に係るブラケットBでは、新スピーカを固定するための固定孔2A乃至固定孔2Cは、三つ空けられていた。
【0043】
これに対し、第2変形例のブラケットB2では、新スピーカ固定用の固定孔が、固定孔2A乃至固定孔2Dとして略十文字形に四つ空けられている。この場合でも、各固定孔2A乃至固定孔2Dの位置により決められる新スピーカの固定位置の中心O2を嵌め込み部1の中心O1に対して偏心させる位置に、各固定孔2A乃至固定孔2Dが設けられている。より具体的に、第2変型例の新スピーカでも、それが固定孔3A乃至固定孔3Cを介してブラケットB2に取り付けられたとき、新スピーカの中心(概ね、上記中心O2と一致する)から見て図5における下方にその端子Tが位置する。このため、ブラケットB2における上記中心O2の上記中心O1に対する偏心方向は、中心O2に対する上記端子Tの位置の方向と反対方向(即ち、図5における上方)とされている。その他の構成は、実施例のブラケットBと同一であるので、細部の説明は省略する。
【0044】
以上説明したように、第1変形例のブラケットB1及び第2変形例のブラケットB2でも、実施例のブラケットBと同一の作用効果を奏し得る。
【0045】
(3)第3変形例
最後に、第3変形例について説明する。
実施例のブラケットB並びに第1変形例のブラケットB1及び第2変形例のブラケットB2では、取り付け位置における新スピーカの放音方向は、その取り付け位置を含む面に略垂直であった。
【0046】
これに対して、例えば実施例のブラケットBの固定面10を、上記取り付け位置を含む面に対して傾斜させる第3変形例のブラケットの構造とすることができる。この場合、固定面10が本願の「放音方向傾斜部」の一例に相当する。このような第3変形例のブラケットの構造により、取り付け位置における新スピーカの放音方向を、取り付け位置を含む面に対して自由に変更することができる。これにより、例えば、車両のドアにおける取り付け位置と、車室内への放音部(いわゆるバッフル面)の位置とがずれている場合でも、第3変形例のブラケットを用いて新スピーカを取り付ければ、当該放音部の方向に放音方向を合わせて最適化することができ、より高音質の放音が可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1、1B 嵌め込み部
2A、2B、2C、2D、3A、3B、3C 固定孔
B、B1、B2 ブラケット
O1、O2 中心
H 中空内部
F スピーカフレーム
T 端子
図1
図2
図3
図4
図5