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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056084
(43)【公開日】2024-04-19
(54)【発明の名称】タイヤ試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/02 20060101AFI20240412BHJP
【FI】
G01M17/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036433
(22)【出願日】2024-03-11
(62)【分割の表示】P 2019194640の分割
【原出願日】2019-10-25
(71)【出願人】
【識別番号】391046414
【氏名又は名称】国際計測器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】宮下 博至
(72)【発明者】
【氏名】村内 一宏
(72)【発明者】
【氏名】鴇田 修一
(72)【発明者】
【氏名】大石 尚徳
(57)【要約】
【課題】試験中に路面を移動させずに、試験タイヤを保持したキャリッジを路面に沿って走行させることにより、タイヤの台上試験を様々な路面状態で行うことを可能とする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置は、路面と、試験タイヤが装着された試験タイヤを回転可能に保持し、試験タイヤを路面に接地させた状態で路面に沿って走行可能なキャリッジと、キャリッジの走行方向への移動を案内するガイド機構と、を備えている。ガイド機構は、キャリッジの走行方向に延びるレールと、キャリッジに固定され、レール上を走行可能なランナーと、を備えている。ランナーは、レール上を転動可能なローラーと、ローラーを回転可能に支持する軸受と、を備え、軸受は、円軌道上を転動する転動体を備えたころがり軸受である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と、
試験タイヤが装着された試験輪を回転可能に保持し、前記試験タイヤを前記路面に接地させた状態で前記路面に沿って走行可能なキャリッジと、
前記キャリッジの走行方向への移動を案内するガイド機構と、
を備え、
前記ガイド機構が、
前記キャリッジの走行方向に延びるレールと、
前記キャリッジに固定され、前記レール上を走行可能なランナーと、を備え、
前記ランナーが、
前記レール上を転動可能なローラーと、
前記ローラーを回転可能に支持する軸受と、を備え、
前記軸受が、円軌道上を転動する転動体を備えたころがり軸受である、
タイヤ試験装置。
【請求項2】
前記ランナーが、複数の前記ローラーを備え、
前記複数のローラーが、
前記レールの頭部上面を転動可能な第1のローラーと、
前記レールの頭部下面を転動可能な第2のローラー及び前記レールの頭部側面を転動可能な第3のローラーの少なくとも一方と、を含む、
請求項1に記載のタイヤ試験装置。
【請求項3】
前記複数のローラーが、複数の組に組分けされ、
前記ローラーの前記複数の組が、
前記キャリッジの走行方向に並べられ、
それぞれ、前記第1のローラーと、前記第2のローラー及び前記第3のローラーの少なくとも一方と、を含む、
請求項2に記載のタイヤ試験装置。
【請求項4】
前記ランナーが、
前記キャリッジに取り付けられたフレームと、
前記フレームに支持された複数のロッドと、を備え、
前記軸受が、
前記ロッドと嵌合した内輪と、
前記ローラーの内周面と嵌合した外輪と、を備えた、
請求項2又は請求項3に記載のタイヤ試験装置。
【請求項5】
互いに前記レールが平行に並べられた、第1のガイド機構及び第2のガイド機構を含む、複数の前記ガイド機構を備え、
前記第1のガイド機構及び前記第2のガイド機構のそれぞれの前記第2のローラー及び前記第3のローラーの少なくとも一方が、前記第1のガイド機構及び前記第2のガイド機構の前記レール間に配置された、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項6】
互いに前記レールが平行に並べられた、第1のガイド機構及び第2のガイド機構を含む、複数の前記ガイド機構を備え、
前記第1のガイド機構及び前記第2のガイド機構の前記レールが、前記第1のガイド機構の前記第2のローラー及び前記第3のローラーの少なくとも一方と、前記第2のガイド機構の前記第2のローラー及び前記第3のローラーの少なくとも一方との間に配置された、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの性能は、路面の状態により影響を受けるため、様々な状態の路面に対して評価を行う必要がある。タイヤの性能を評価する試験には、試験タイヤを例えば専用試験車のホイールリムに装着して実際の路面上を走行させて行う路上試験や室内に設置された試験装置を使用して行う室内試験(台上試験)がある。
【0003】
特許文献1には、タイヤの台上試験に使用される試験装置の例が記載されている。特許文献1に記載の試験装置は、外周面に模擬路面が設けられた回転ドラムを備え、試験タイヤを模擬路面に接地させた状態で、試験タイヤとドラムを回転させて試験を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-72215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
台上試験は、路上試験と比較して、試験精度が高く、試験効率も良い。しかしながら、従来の台上試験用の試験装置は、試験時に模擬路面を高速で走行させるため、雨雪や砂利等で覆われた路面状態で試験を行うことが困難であった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、様々な路面状態の台上試験が可能なタイヤ試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、路面と、試験タイヤが装着された試験輪を回転可能に保持し、試験タイヤを路面に接地させた状態で路面に沿って走行可能なキャリッジと、キャリッジの走行方向への移動を案内するガイド機構と、を備え、ガイド機構が、キャリッジの走行方向に延びるレールと、キャリッジに固定され、レール上を走行可能なランナーと、を備え、ランナーが、レール上を転動可能なローラーと、ローラーを回転可能に支持する軸受と、を備え、軸受が、円軌道上を転動する転動体を備えたころがり軸受である、タイヤ試験装置が提供される。
【0008】
上記のタイヤ試験装置において、ランナーが、複数のローラーを備え、複数のローラーが、レールの頭部上面を転動可能な第1のローラーと、レールの頭部下面を転動可能な第2のローラー及びレールの頭部側面を転動可能な第3のローラーの少なくとも一方と、を含む、構成としてもよい。
【0009】
上記のタイヤ試験装置において、複数のローラーが、複数の組に組分けされ、ローラーの複数の組が、キャリッジの走行方向に並べられ、それぞれ、第1のローラーと、第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方と、を含む構成としてもよい。
【0010】
上記のタイヤ試験装置において、ランナーが、キャリッジに取り付けられたフレームと、フレームに支持された複数のロッドと、を備え、軸受が、ロッドと嵌合した内輪と、ローラーの内周面と嵌合した外輪と、を備えた構成としてもよい。
【0011】
上記のタイヤ試験装置において、互いにレールが平行に並べられた、第1のガイド機構及び第2のガイド機構を含む、複数のガイド機構を備え、第1のガイド機構及び第2のガイド機構のそれぞれの第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方が、第1のガイド機構及び第2のガイド機構のレール間に配置された構成としてもよい。
【0012】
上記のタイヤ試験装置において、互いにレールが平行に並べられた、第1のガイド機構及び第2のガイド機構を含む、複数のガイド機構を備え、第1のガイド機構及び第2のガイド機構のレールが、第1のガイド機構の第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方と、第2のガイド機構の第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方との間に配置された構成としてもよい。
【0013】
上記のタイヤ試験装置において、路面を有する路面部を備え、路面部の少なくとも一部が交換可能な路面ユニットで構成された構成としてもよい。
【0014】
上記のタイヤ試験装置において、路面部が、基盤と、基盤上に設けられ、その表面に路面が形成された舗装部と、を備え、舗装部の少なくとも一部が、少なくとも一つの路面ユニットで構成された構成としてもよい。
【0015】
上記のタイヤ試験装置において、路面部が、基盤と、基盤上に設けられ、その表面に路面が形成された舗装部と、を有する本体部を備え、本体部の少なくとも一部が、少なくとも一つの路面ユニットで構成された構成としてもよい。
【0016】
上記のタイヤ試験装置において、路面部が、基盤と共に槽を形成する枠部を備えた構成としてもよい。
【0017】
上記のタイヤ試験装置において、路面が、実際の道路の路面とは異なる材料により形成された模擬路面である構成としてもよい。
【0018】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪及びキャリッジを駆動する駆動システムを備えた構成としてもよい。
【0019】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、キャリッジを路面に対して所定の速度で駆動するキャリッジ駆動手段を備えた構成としてもよい。
【0020】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備えた構成としてもよい。試験輪駆動手段が、試験輪を所定の速度に対応する回転数で駆動する構成としてもよい。
【0021】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、キャリッジ及び試験輪の駆動に使用される動力を発生する第1の動力発生手段を備えた構成としてもよい。
【0022】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、第1の動力発生手段が発生した動力をキャリッジ駆動手段及び試験輪駆動手段に分配する動力分配手段を備えた構成としてもよい。
【0023】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、第1の動力発生手段が発生した動力を伝達する第1の巻掛け伝動機構を備えた構成としてもよい。
【0024】
上記のタイヤ試験装置において、第1の巻掛け伝動機構が、第1の動力発生手段の出力軸と結合した駆動プーリーと、キャリッジに保持され、試験輪と連結した従動プーリーと、駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡された第1の巻掛け媒介節と、を備え、第1の巻掛け媒介節が、キャリッジの走行方向に張られて互いに逆向きに駆動される第1の部分及び第2の部分を有し、第1の部分において従動プーリーを通り、第2の部分においてキャリッジに固定された構成としてもよい。
【0025】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、第1の巻掛け伝動機構と連結して、第1の巻掛け伝動機構によって伝達された動力の少なくとも一部を駆動輪に伝達する二次動力伝達部を備えた構成としてもよい。
【0026】
上記のタイヤ試験装置において、従動プーリーが、二次動力伝達部の入力軸と結合した構成としてもよい。
【0027】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、一対の第1の動力発生手段を備え、第1の巻掛け伝動機構が、一対の第1の動力発生手段の出力軸とそれぞれ結合した一対の駆動プーリーを備え、第1の巻掛け媒介節が、ループを形成し、一対の駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡された構成としてもよい。
【0028】
上記のタイヤ試験装置において、第1の巻掛け媒介節が、鋼線の心線を有する歯付ベルトである構成としてもよい。
【0029】
上記のタイヤ試験装置において、第1の巻掛け媒介節が、カーボン心線を有する歯付ベルトである構成としてもよい。
【0030】
上記のタイヤ試験装置において、レールが取り付けられたベースを備えた構成としてもよい。
【0031】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪駆動手段が、試験輪を回転駆動する動力を発生する第2の動力発生手段を備えた構成としてもよい。
【0032】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪駆動手段が、第1の動力発生手段及び第2の動力発生手段が発生した動力を結合する動力結合手段を備えた構成としてもよい。
【0033】
上記のタイヤ試験装置において、第1の動力発生手段が、ベース上に設置された第1のモーターを備え、第2の動力発生手段が、キャリッジ上に設置された第2のモーターを備えた構成としてもよい。
【0034】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪駆動手段が、キャリッジの速度に対応する回転数の回転運動を供給する回転運動供給手段と、回転運動供給手段から供給された回転運動の位相を変化させて、試験輪に所定のトルクを与えるトルク付与手段と、を備えた構成としてもよい。
【0035】
上記のタイヤ試験装置において、回転運動供給手段が、ベース上に設置された第1のモーターを備え、トルク付与手段が、キャリッジ上に設置された第2のモーターを備えた構成としてもよい。
【0036】
上記のタイヤ試験装置において、トルク付与手段が、第1のモーターが発生した動力と第2のモーターが発生した動力とを結合する動力結合手段を備えた構成としてもよい。
【0037】
上記のタイヤ試験装置において、トルク付与手段が、第2のモーターが取り付けられ、第1のモーターが発生した動力により回転駆動される回転フレームと、第2のモーターによって駆動されるシャフトと、を備え、シャフトと回転フレームとが同心に配置された構成としてもよい。
【0038】
上記のタイヤ試験装置において、トルク付与手段が、回転フレームを回転可能に支持する一対の軸受部を備え、回転フレームが、筒状であり、第2のモーターを収容するモーター収容部と、モーター収容部を挟んで軸方向両側に設けられた、モーター収容部よりも小径の一対の軸部と、を有し、一対の軸部において、一対の軸受部により、回転可能に支持され、軸部の一方が円筒状であり、その中空部をシャフトが貫通し、軸部の内周にシャフトを回転可能に支持する軸受が設けられた構成としてもよい。
【0039】
上記のタイヤ試験装置において、二次動力伝達部が、トルク付与手段によって駆動される第2のシャフトと、第2のシャフトを回転可能に支持する軸受と、第2のシャフトとスピンドルとを連結するスライド式等速ジョイントと、を備えた構成としてもよい。
【0040】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪駆動手段が、回転運動供給手段から供給された動力を伝達する一次動力伝達部と、キャリッジ上に設置され、一次動力伝達部と連結して、一次動力伝達部によって伝達された動力を試験輪に伝達する二次動力伝達部と、を備え、一次動力伝達部が第1の巻掛け伝動機構を備え、第1の巻掛け伝動機構が、キャリッジが走行可能な領域を挟んで配置された一対の固定プーリーと、キャリッジに保持された可動プーリーと、一対の固定プーリー及び可動プーリーに掛け渡された第1の巻掛け媒介節と、を備え、固定プーリーの少なくとも一つが回転運動供給手段の出力軸と結合した駆動プーリーであり、可動プーリーが、従動プーリーであり、二次動力伝達部の入力軸と結合した構成としてもよい。
【0041】
上記のタイヤ試験装置において、二次動力伝達部が第2の巻掛け伝動機構を備え、第2の巻掛け伝動機構が、第1の巻掛け伝動機構の可動プーリーと結合した駆動プーリーと、トルク付与手段の回転フレームと結合した従動プーリーと、第2の巻掛け伝動機構の駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡された第2の巻掛け媒介節と、を備えた構成としてもよい。
【0042】
上記のタイヤ試験装置において、二次動力伝達部が、回転可能に支持されたスピンドルを備え、スピンドルが、その先端部に試験輪を同軸に着脱可能に構成され、試験輪に加わる力を検出可能な力センサーを備えた構成としてもよい。
【0043】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジが、メインフレームと、メインフレームに対して、路面に垂直な垂直線の回りに旋回可能な旋回フレームと、メインフレームに対して、路面に垂直な垂直方向にスライド可能なスライドフレームと、を備え、スピンドルが、旋回フレーム及びスライドフレームを介してメインフレームに支持された構成としてもよい。
【0044】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジが、旋回フレームの垂直線回りの旋回を案内する曲線ガイドウェイと、スライドフレームの垂直方向への移動を案内するリニアガイドウェイと、を備えた構成としてもよい。
【0045】
上記のタイヤ試験装置において、スライドフレームが、スピンドルを、スピンドルの中心線及び垂直線の両方と垂直な水平軸の周りに回転可能に支持する構成としてもよい。
【0046】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジが、スライドフレームを垂直方向に移動させて、試験輪に加わる荷重を調整可能な荷重調整部を備えた構成としてもよい。
【0047】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジが、旋回フレームを垂直線の周りに旋回移動させて、路面に対する試験輪のスリップ角を調整可能なスリップ角調整部を備えた構成としてもよい。
【0048】
上記のタイヤ試験装置において、スピンドルを水平軸の周りに回転移動させて、路面に対する試験輪のキャンバーを調整可能なキャンバー調整部を備えた構成としてもよい。
【0049】
上記のタイヤ試験装置において、路面部の上面に、試験輪のタイヤ踏面が受ける荷重分布を検出する荷重検出部が設けられた構成としてもよい。
【0050】
上記のタイヤ試験装置において、荷重検出部が、キャリッジの走行方向及び試験輪の軸方向に格子点状に配列された複数の荷重検出モジュールを備えた構成としてもよい。
【0051】
上記のタイヤ試験装置において、荷重検出モジュールが、それぞれ3分力センサーを備えた構成としてもよい。
【0052】
上記のタイヤ試験装置において、荷重検出部による検出結果に基づいて荷重分布を計測する計測手段を備え、計測手段が、3分力センサーの検出結果に基づいて、タイヤ踏面が受ける半径方向力、接線力及び横力を計算する構成としてもよい。
【0053】
上記のタイヤ試験装置において、検出された荷重分布を記憶する記憶手段を備えた構成としてもよい。
【0054】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジの走行方向における試験輪の走行位置を取得する手段を備え、記憶手段が、検出された荷重分布と、荷重分布が検出された時の試験輪の走行位置とを対応付けて記憶する構成としてもよい。
【0055】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪の回転位置を取得する手段を備え、記憶手段が、検出された荷重分布と、荷重分布が検出された時の試験輪の回転位置とを対応付けて記憶する構成としてもよい。
【0056】
上記のタイヤ試験装置において、記憶手段が、同じタイミングで検出された荷重分布と試験輪に加わる力とを対応付けて記憶する構成としてもよい。
【0057】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪の走行位置を基準とする荷重検出モジュールの相対位置を計算する手段を備え、相対位置についての荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
【0058】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジを走行させながら荷重分布の検出を複数回行い、複数回の荷重分布の検出結果を相対位置毎に平均することによって、荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
【0059】
上記のタイヤ試験装置において、回帰分析により荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
【0060】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジの1方向の走行によって荷重検出部による1セットの測定が行われ、荷重検出部による複数セットの測定の結果に基づいて荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
【0061】
上記のタイヤ試験装置において、荷重検出部の位置を試験輪の軸方向に変更可能な手段を備えた構成としてもよい。
【0062】
上記のタイヤ試験装置において、荷重検出部の位置を走行方向に変更可能な手段を備えた構成としてもよい。
【発明の効果】
【0063】
本発明の一実施形態によれば、試験中に路面を移動させずに、試験タイヤを保持したキャリッジを路面に沿って走行させる構成にすることにより、タイヤの台上試験を様々な路面状態で行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の平面図である。
図4】キャリッジ及びその周辺の構造を示した図である。
図5】キャリッジ及びその周辺の構造を示した図である。
図6】キャリッジ及びその周辺の構造を示した図である。
図7】3つのガイド機構の配置を示す図である。
図8】ガイド機構のランナー付近を拡大した側面図である。
図9】ガイド機構の断面図(図7におけるA-A矢視図)である。
図10】別のガイド機構の断面図(図7におけるB-B矢視図)である。
図11】従動部の概略構造を示す平面図である。
図12】トルク付与装置の側断面図である。
図13】スピンドル及びその周辺の構造を示した図である。
図14】路面部の横断面図である。
図15】路面部の変形例の横断面図である。
図16】路面部の荷重検出部付近の平面図である。
図17】路面部の荷重検出部付近の側面図である。
図18】荷重検出部の正面図である。
図19】荷重検出部の側面図である。
図20】荷重検出部の平面図である。
図21】荷重検出部の可動部を取り外した状態を示す平面図である。
図22図18における領域Eの拡大図である。
図23】タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する手順を表すフローチャート。
図24】荷重プロファイル計算の手順を表すフローチャートである。
図25】荷重検出モジュール及び試験輪の回転軸の配置関係を示す平面図である。
図26】荷重プロファイルの表示例である。
図27】制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する事項には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。また、各図において、符号が共通する事項が複数表示される場合は、必ずしもそれらの複数の表示の全てに符号を付さず、それらの複数の表示の一部について符号の付与を適宜省略する。
【0066】
図1~3は、順に、本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置1の正面図、左側面図及び平面図である。また、図4~6は、順に、後述するキャリッジ20及びその周辺の構造を示した正面図、左側面図及び平面図である。なお、図4~6においては、説明の便宜上、構成の一部を省略し又は断面で示している。
【0067】
図2及び図5において、右から左に向かう方向をX軸方向、紙面に垂直に裏から表に向かう方向をY軸方向、下から上に向かう方向をZ軸方向と定義する。X軸方向及びY軸方向は互いに直交する水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。また、前後、上下、左右の各方向を、キャリッジ20の走行方向(X軸正方向)を向いたときの各方向として定義する。すなわち、X軸正方向を前、X軸負方向を後ろ、Y軸正方向を左、Y軸負方向を右、Z軸正方向を上、Z軸負方向を下という。
【0068】
タイヤ試験装置1は、X軸方向に細長い軌道部10及び路面部60と、軌道部10上をX軸方向に走行可能なキャリッジ20を備えている。図3に示されるように、軌道部10の左部分には、軌道部10のX軸方向における略全長に渡って延びる細長いスペースSp1が設けられている。このスペースSp1に路面部60が収容されている。路面部60の上面には、キャリッジ20に装着された試験タイヤTが接地する路面63aが設けられている。本実施形態においては、試験条件に応じて路面部60を交換できるように、軌道部10と路面部60とが分離している。なお、軌道部10のベースフレーム11(以下「ベース11」と略記する。)と路面部60のフレーム61とを一体化してもよい。
【0069】
図2に示されるように、キャリッジ20には、試験輪W(試験タイヤTが装着されたホイールリムWr)が取り付けられる。試験の際は、試験輪Wが路面63aに接地した状態でキャリッジ20が走行し、試験タイヤTが路面63a上を転動する。
【0070】
図3及び図4に示されるように、軌道部10は、キャリッジ20のX軸方向への移動を案内する複数(本実施形態では三つ)のガイド機構13A、13B及び13Cと、キャリッジ20を駆動する機械的動力を発生する一つ以上の駆動部14(図3)を備えている。駆動部14は、キャリッジ20及び試験輪Wの駆動に使用される動力を発生する第1の動力発生手段としての役割を有している。本実施形態では、二対の駆動部14(左側の一対の駆動部14LA及び14LBと右側の一対の駆動部14RA及び14RB)が、軌道部10のベース11上の四隅付近に設置されている。駆動部14LA及び14RAは軌道部10の後端部に配置され、駆動部14LB及び14RBは軌道部10の前端部に配置されている。
【0071】
図6に示されるように、各駆動部14は、サーボモーター141と、サーボモーター141の出力の回転数を減速するオプションの減速機142を備えている。後述するように、右側の駆動部14RA及び14RBは、キャリッジ20を駆動して走行させるキャリッジ駆動手段としての役割と、キャリッジ20の走行速度に対応する回転数の回転運動を試験輪Wに供給する回転運動供給手段としての役割を兼ね備えている。左側の駆動部14LA及び14LBは、キャリッジ駆動手段としての役割を有している。
【0072】
本実施形態では、サーボモーター141には、回転部の慣性モーメントが0.01kg・m以下(より好適には、0.008kg・m以下)、定格出力が3kW乃至60kW(より実用的には、7kW乃至37kW)の超低慣性高出力型のACサーボモーターが使用される。
【0073】
また、タイヤ試験装置1は、左右に各一組のベルト機構50(50L、50R)を備えている。ベルト機構50は、駆動部14が発生する動力をキャリッジ20に伝達して、キャリッジ20をX軸方向に駆動する。各ベルト機構50は、歯付ベルト51と、一対の駆動プーリー52(52A、52B)を備えている。駆動プーリー52は、歯付ベルト51と噛み合う歯付プーリーである。
【0074】
歯付ベルト51は、鋼線の心線を有している。なお、歯付ベルト51には、例えば炭素繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などの所謂スーパー繊維から形成された心線を有するものを使用してもよい。カーボン心線などの軽量かつ高強度の心線を使用することにより、比較的に出力の低いモーターを使用してキャリッジ20を高い加速度で駆動する(あるいは、試験輪Wに高い駆動力/制動力を与える)ことが可能になり、タイヤ試験装置1の小型化が可能になる。また、同じ出力のモーターを使用する場合、所謂スーパー繊維から形成された心線を有する軽量の歯付ベルト51を使用することにより、タイヤ試験装置1の高性能化が可能になる。
【0075】
右側のベルト機構50Rは、キャリッジ20を駆動して走行させるキャリッジ駆動手段としての役割と、回転運動供給手段(駆動部14RA、14RB)から供給された動力を後述する二次動力伝達部に伝達する一次動力伝達部としての役割を兼ね備えている。左側のベルト機構50Lは、キャリッジ駆動手段としての役割を有している。
【0076】
なお、以下の説明において、左右に一対が設けられた構成については、原則として左側の構成について説明し、右側の構成については、角括弧で囲って併記し、重複する説明を省略する。
【0077】
左側[右側]のベルト機構50L[50R]の歯付ベルト51は、一対の駆動プーリー52(52A、52B)と、後述する左側[右側]の従動部22L[22R]の3個の従動プーリー225(225A、225B、225C)に巻き掛けられている。一対の駆動プーリー52A、52Bは、左側[右側]の一対の駆動部14LA、14LB[14RA、14RB]の出力軸にそれぞれ結合している。
【0078】
また、図5に示されるように、各歯付ベルト51の両端部は、それぞれベルトクランプ54(54A、54B)によりキャリッジ20のメインフレーム21に固定され、各歯付ベルト51はキャリッジ20を介してループを形成している。ベルト機構50の一対の駆動プーリー52A、52B(図2)は、キャリッジ20が走行可能な領域を間に挟んで配置され、ベース11上に保持された(すなわち、重心位置がベース11に対して固定された)固定プーリーである。従動プーリー225(図5)は、キャリッジ20に保持され、キャリッジ20と共にX軸方向に移動可能な可動プーリーである。
【0079】
本実施形態では、一対の駆動部14LA、14LB[14RA、14RB]は同位相で駆動される。駆動プーリー52と従動プーリー225の有効径(すなわち、ピッチ円直径)又は歯数は、いずれも同一である。また、左側の駆動部14LA、14LBと右側の駆動部14RA、14RBは、左右逆向きに設置されていて、互いに逆位相で駆動される。駆動部14LA及び14LB[14RA及び14RB]により歯付ベルト51L[51R]を駆動すると、キャリッジ20は、歯付ベルト51L[51R]に引っ張られて、X軸方向に駆動される。
【0080】
次に、ガイド機構13(13A、13B、13C)について説明する。
図7は、3つのガイド機構13A、13B、13Cの配置を示す図である。
図8は、ガイド機構13Aのランナー132A付近を拡大した側面図である。
図9は、ガイド機構13Aの横断面図(図7におけるA-A矢視図)である。
【0081】
なお、ガイド機構13Cは、ガイド機構13Aと左右対称に(すなわち、Z軸及びX軸と平行な平面に対して対称に)構成されたものであるため、両者を代表してガイド機構13Aについて詳細に説明し、ガイド機構13Cについては重複する説明を省略する。
【0082】
各ガイド機構13A、13B及び13Cは、X軸方向に延びる軌道を形成する1本のレール131と、レール131上を走行可能な一つ以上(本実施形態では一つ)のキャリッジ(以下「ランナー」という。)132A、132B又は132Cを備えている。
【0083】
レール131は、軌道部10のベース11の上面に敷設されている。二つのガイド機構13A及び13Bのレール131は、スペースSp1(図3)の左右両端に沿って配置され、残りのガイド機構13Cのレール131は、ベース11の右端に沿って配置され、それぞれベース11に取り付けられている。また、各ランナー132A、132B及び132Cは、キャリッジ20のメインフレーム21の下面に取り付けられている。
【0084】
図8及び図9に示されるように、ガイド機構13Aのランナー132Aは、キャリッジ20のメインフレーム21の下面に取り付けられたX軸方向に長いフレーム133と複数組(本実施形態では20組)のローラー組立品135a、135b及び135cを備えている。本実施形態のガイド機構13Aにおいては、三つのローラー組立品135a、135b及び135cによって一組のユニットが構成される。
【0085】
ローラー組立品135a、135b及び135cの複数の組は、レール131の長さ方向に所定の間隔で並べられ、フレーム133に保持されている。なお、ローラー組立品135b及び135cは、ローラー組立品135aと同じ構成を有している(但し、ローラー組立品135cはローラー組立品135aとは大きさが異なる。)ため、これらを代表してローラー組立品135aについて説明し、ローラー組立品135b及び135cについての重複する説明は省略する。
【0086】
図9に示されるように、フレーム133には、各ローラー組立品135a、135b及び135cを支持するロッド134a、134b及び134cが、それぞれ複数取り付けられている。
【0087】
ローラー組立品135aは、レール131上を転動するローラー136aと、ローラー136aを回転可能に支持する一対の軸受137aを備えている。軸受137aは、ボールやころ等の転動体を有するころがり軸受であり、本実施形態では玉軸受が使用されている。ローラー136aの外周面136apには、回転軸方向にも(すなわち、図9に示される回転軸を含む縦断面においても)曲率が与えられている。ローラー136aの外周面136apは、例えば、ローラー136aの中心点136agを中心とする球面に形成されている。
【0088】
ローラー組立品135aの軸受137aは、例えば単列のラジアル軸受である。軸受137aは、ロッド134aと嵌合した内輪137a1と、ローラー136aの内周面と嵌合した外輪137a3と、内輪137a1と外輪137a3との間に介在する複数の転動体であるボール137a2を備えている。ボール137a2は、内輪137a1の外周面及び外輪137a3の内周面にそれぞれ形成された円環状溝の対によって定まる円軌道上を転動する。
【0089】
レール131は、頭部131hと、頭部131hよりも幅の広い底部131fと、頭部131hと底部131fとを連結する幅の狭い腹部131wを有する平底レールである。本実施形態のレール131は、例えば日本工業規格JIS E 1120:2007に準拠する熱処理レール(例えば、熱処理レール 50N-HH340)に追加工が施されたものである。熱処理レールは、頭部に熱処理を施して、耐摩耗性を向上させた鉄道用レールである。
【0090】
ローラー組立品135aは、外周面136apがレール131の頭部上面131aに接触して、レール131の長さ方向(すなわち、X軸方向)に転動するように配置されている。ローラー組立品135bは、外周面136bpがレール131の頭部下面131bの一方に接触して、レール131の長さ方向に転動するように配置されている。また、ローラー組立品135cは、外周面136cpがレール131の頭部側面131cの一方に接触して、レール131の長さ方向に転動するように配置されている。
【0091】
レール131は、頭部上面131a、左右の頭部下面131b及び左右の頭部側面131cが、少なくとも各ローラー組立品135a、135b又は135cと接触する箇所において、面精度を高める追加工(例えば、研削加工や研磨加工等)が施されている。
【0092】
上述したように、キャリッジ20の左右両端部にそれぞれ取り付けられたガイド機構13Aとガイド機構13Cとは、左右対称に構成されている。すなわち、ガイド機構13Cは、ガイド機構13Aと同一のものを左右逆向きに(すなわち、鉛直軸周りに180度回転させて)配置したものである。
【0093】
図10は、ガイド機構13Bの横断面図(図7におけるB-B矢視図)である。ガイド機構13Bのランナー132Bは、上述したガイド機構13Aのランナー132Aからローラー組立品135c及びロッド134cを省き、左右逆向きに配置したものである。
【0094】
なお、ランナー132A及びランナー132Cの少なくとも一方からローラー組立品135c及びロッド134cを省いても良い。但し、キャリッジ20を左右方向に位置決めするために、各ランナー132A、132B、132Cのうちの少なくとも二つ(但し、互いに左右逆向きに配置されたもの。)について、ローラー組立品135b及びローラー組立品135cの少なくとも一方が設けられる。また、ランナー132Bにローラー組立品135c及びロッド134cを設けても良い。
【0095】
本実施形態では、ランナー132B(図10)がランナー132A(図9)と左右逆向きに配置されているが、ランナー132Bをランナー132Aと左右同じ向きに配置してもよい。同様に、ランナー132Cとランナー132Aを左右同じ向きに配置してもよい。但し、ランナー132A、ランナー132B及びランナー132Cのいずれか二つが左右逆向きに配置(すなわち、レール131に対してローラー組立品135bが左右逆側に配置)される。
【0096】
ガイド機構13のレール131は、複数の短いレールを接続することにより、長尺にすることができる。その場合、図7に示されるように、レール131の継目131jは、レール131の長さ方向(X軸方向)に対して垂直ではなく、平面視において斜めに(すなわち、ZX平面に対して角度θだけ傾けて)形成してもよい。継目131jを斜めに形成することにより、温度変化によりレール131の伸縮が生じても、継目131jでのスライドによりレール131のひずみが解放されるため、レール131の湾曲が防止される。
【0097】
斜めの継目131jを形成する場合、継目131jよりも前方において頭部側面131cが継目131jと鈍角を成す側(すなわち、ガイド機構13Aにおいては左側であり、ガイド機構13B及び13Cにおいては右側)にローラー組立品135b及び135c(図9)が配置される。ローラー組立品135b及び135cをこのように配置することにより、レール131の継目131jにずれが生じても、ローラー組立品135b及び135cが継目131jの鋭角な端部と衝突して、大きな衝撃や損傷が発生することが防止される。
【0098】
なお、本実施形態では、レール131の継目131jにおいて、接続される二つのレールの端面同士が単に突き合わせられているのみで接合されていないが、溶接又は鑞付け等により継目131jにおいてレールを接合してもよい。また、継目131jにおいて、接続する二つのレールの端面同士を接触させてもよく、また端面間に所定の隙間を設けて非接触に突き合わせてもよい。
【0099】
なお、本実施形態のガイド機構13A、13B及び13Cに代えて、玉循環リニア軸受等のリニア軸受(所謂リニアガイドウェイ)を使用することもできる。玉循環リニア軸受は、平行な二つの直線軌道の隣接する端同士をそれぞれ半円軌道で連結した長円形の軌道を有している。このような直線軌道を有するリニア軸受を高速で(例えば、10km/h以上の速度で)走行させると、転動体が直線軌道から曲線軌道に移行する際に、転動体に急激に向心力が作用する(すなわち、転動体及び曲線軌道の転動面に衝撃荷重が加わる)ため、転動体及び転動面に永久変形が生じて、性能が劣化する。そのため、キャリッジ20を10km/h以上の速度で走行させると、リニア軸受の寿命が短くなる又は破損するという問題がある。
【0100】
本実施形態のガイド機構13A、13B及び13Cにおいて使用される軸受137a~cは、転動体が常に一定の曲率の円軌道上を走行するため、転動体に作用する向心力の急激な変動(すなわち衝撃荷重)が発生しない。そのため、例えば60km/hを超える早い周速でローラー136a~cを回転させても、軸受137a~cの寿命の低下や破損は発生しない。従って、転動体の軌道の曲率が一定である円軌道を有するころがり軸受を使用してガイド機構13A~Cを構成することにより、キャリッジ20の高速走行(例えば10km/h以上の速度での走行)が可能になる。本実施形態のタイヤ試験装置1は、上述したガイド機構13A、13B及び13Cを採用したことにより、85km/hを超える速度でのキャリッジ20の走行が可能になっている。
【0101】
図6に示されるように、キャリッジ20は、メインフレーム21と、ベルト機構50L及び50Rにそれぞれ接続された左右一対の従動部22L及び22Rと、試験タイヤTが装着された試験輪Wを回転可能に保持するスピンドル部28(図4)と、路面63aに対する試験輪Wのアライメント及び荷重を調整可能なアライメント部40と、スピンドル部28のスピンドル280(図13)を回転駆動するスピンドル駆動機構20Dを備えている。なお、スピンドル280は、試験輪Wが取り付けられる車軸である。
【0102】
図11は、右側の従動部22Rの概略構造を示す平面図である。従動部22Rは、フレーム221、4組の軸受222、4本のシャフト223(223A、223B、223C、223D)、一対のギヤ224及び3個の従動プーリー225(225A、225B、225C)を備えている。フレーム221にはY軸方向に延びる四つの貫通穴が開けられている。シャフト223A~Dは、それぞれ各貫通穴に嵌め込まれた1組の軸受222によって回転可能に支持されている。なお、本実施形態では、シャフト223A~Dがそれぞれ一対の軸受222によって支持されているが、一つ又は三つ以上の複数の軸受222によって各シャフト223A~Dを支持する構成としてもよい。
【0103】
X軸方向中央上段のシャフト223Bには互いに噛み合う一対のギヤ224の一方が結合し、X軸方向中央下段のシャフト223Dには一対のギヤ224の他方が結合している。一対のギヤ224を介して、上段のシャフト223Bの回転が下段のシャフト223Dに伝達される。
【0104】
フレーム221の一面(走行方向に向かって右側の側面)から突き出たシャフト223A~Cの一端部には、従動プーリー225A~Cがそれぞれ取り付けられている。従動プーリー225A~Cは、それぞれベルト機構50Rの歯付ベルト51と噛み合う歯付プーリーである。シャフト223Dの一端部は、フレーム221の他面(走行方向に向かって左側の側面)から突き出ている。シャフト223Dの一端部には、後述するベルト機構23の駆動プーリー231が取り付けられている。すなわち、右側の従動部22R(具体的には、従動プーリー225B、シャフト223B、一対のギヤ224及びシャフト223D)を介して、右側のベルト機構50Rとベルト機構23とが連結されている。
【0105】
図5において矢印で示されるように、ベルト機構50の歯付ベルト51は、駆動プーリー52A、52Bによって折り返されることにより、上側の部分51aと下側の部分51bとに分かれている。上側の部分51aと下側の部分51bは、それぞれキャリッジ20の走行方向に張られて、互いに逆向きに駆動される。具体的には、キャリッジ20に固定された歯付ベルト51の下側の部分51bが、キャリッジ20と共にキャリッジの走行方向に駆動され、上側の部分51aがキャリッジ20及び下側の部分51bと逆向きに駆動される。また、キャリッジ20に取り付けられた従動プーリー225は、キャリッジ20と逆向きに走行する歯付ベルト51の上側の部分51aに巻き掛けられて、上側の部分51aによって駆動される。
【0106】
ベルト機構50から右側の従動部22Rに与えられた動力は、図6に示されるベルト機構23、トルク付与装置30、ベルト機構24、スライド式等速ジョイント25及びスピンドル部28から構成された二次動力伝達部により試験輪Wに伝達され、試験輪Wの駆動に使用される。上記のように構成されたベルト機構50及び従動部22Rにより、歯付ベルト51によるキャリッジ20と試験輪Wの両方の駆動が可能になっている。
【0107】
なお、左側の従動部22Lも上述した右側の従動部22Rと同様に構成されているが、右側の従動部22Rとは左右対称に構成されている。また、左側の従動部22Lは、ベルト機構50Rによって伝達される動力の一部を取り出してキャリッジ20に設けられた二次動力伝達部に伝達するための構成(具体的には、シャフト223D、シャフト223Dを支持する一組の軸受222及び一対のギヤ224)を備えていない点において、右側の従動部22Rと異なっている。なお、左側の従動部22Lは必須の構成要素ではないが、左側の従動部22Lを設けることにより、キャリッジ20が左右のベルト機構50L、50Rから受ける力が釣り合い、キャリッジ20の走行が安定化する。
【0108】
上記のように、本実施形態では、共通の動力伝達装置(すなわち、ベルト機構50R)によって伝達された動力を使用してキャリッジ20及び試験輪Wを駆動する構成が採用されている。この構成により、キャリッジ20の走行速度によらず、常にキャリッジ20の走行速度に対応した周速(回転数)で試験輪Wを回転駆動させることが可能になっている。また、本実施形態では、トルク付与装置30の作動量(つまりは、消費電力)を減らすために、トルク付与装置30が作動していないときには、キャリッジ20の走行速度と略同じ周速で試験輪Wが回転駆動されるように構成されている。
【0109】
図6に示されるように、スピンドル駆動機構20Dは、ベルト機構23、トルク付与装置30、ベルト機構24及びスライド式等速ジョイント25を備えている。右側のベルト機構50Rから右側の従動部22R(図11)の従動プーリー225B、シャフト223B、一対のギヤ224及びシャフト223Dを介してベルト機構23に伝達された動力は、トルク付与装置30、ベルト機構24及びスライド式等速ジョイント25を介して、スピンドル部28(図4)に伝達され、スピンドル部28に取り付けられた試験輪Wを回転駆動する。すなわち、右側の駆動部14RA、14RBが発生した動力は、一部がキャリッジ20の駆動に使用され、別の一部が試験輪Wの回転駆動に使用される。すなわち、右側のベルト機構50Rは、キャリッジ20を駆動する手段(キャリッジ駆動手段)の一部を構成すると共に、試験輪Wを駆動する手段(試験輪駆動手段)の一部も構成する。また、右側のベルト機構50Rは、右側の従動部22Rと共に、駆動部14RA、14RBが発生した動力をキャリッジ20の駆動に使用する動力と試験輪Wの駆動に使用する動力とに分配する手段(動力分配手段)として機能する。
【0110】
図12は、トルク付与装置30の側断面図である。トルク付与装置30は、試験輪Wに加えるトルクを発生して、このトルクをベルト機構23によって伝達された回転運動に重ねて出力する。言い換えれば、トルク付与装置30は、ベルト機構23により伝達された回転運動の位相を変化させることにより、試験輪Wにトルクを付与する(すなわち、路面63aと試験輪Wとの間に駆動力又は制動力を与える)ことができる。
【0111】
トルク付与装置30は、試験輪Wを回転駆動する動力を発生する第2の動力発生手段として機能すると共に、駆動部14(動力発生手段)のサーボモーター141(第1のモーター)が発生した動力とトルク付与装置30の後述するサーボモーター32(第2のモーター)が発生した動力とを結合する動力結合手段としても機能する。
【0112】
スピンドル駆動機構20Dにトルク付与装置30を組み込むことにより、回転数を制御するための動力源(駆動部14RA、14RB)とトルクを制御するための動力源(後述するサーボモーター32)とで役割を分担することが可能になる。そして、これにより、より小容量の動力源を使用することが可能になると共に、試験輪Wに加わる回転数及びトルクをより高い精度で制御することが可能になる。また、トルク付与装置30をキャリッジ20に組み込むことにより、ベルト機構50Rに加わる負荷が低減するため、ベルト機構50Rの小型化(例えば、使用する歯付ベルトの本数の削減)や、より耐荷重の低い部材の使用が可能になる。
【0113】
トルク付与装置30は、ハウジング31と、ハウジング31内に設置されたサーボモーター32、オプションの減速機33及びシャフト34と、ハウジング31を回転可能に支持する二つの軸受部35及び36と、スリップリング部37と、スリップリング部37を支持する支柱38と、ハウジング31の回転数を検出するロータリーエンコーダー39を備えている。
【0114】
本実施形態においては、サーボモーター32には、回転部の慣性モーメントが0.01kg・m以下(より好適には、0.008kg・m以下)、定格出力が3kW乃至60kW(より実用的には、7kW乃至37kW)の超低慣性高出力型のACサーボモーターが使用されている。
【0115】
ハウジング31は、直径が大きな略円筒状のモーター収容部311及びキャップ部312と、モーター収容部311よりも直径が小さな略円筒状の一対の軸部313及び314を有している。モーター収容部311の一端部(図12における左端部)には、軸部313が同軸に(すなわち、中心線を共有するように)結合している。また、モーター収容部311の他端部(図12における右端部)には、キャップ部312を介して、軸部314が同軸に結合している。軸部313は軸受部36により回転可能に支持され、軸部314は軸受部35により回転可能に支持されている。
【0116】
軸部314の先端部にはフランジ314aが形成されていて、このフランジ314aにベルト機構23の従動プーリー232が同軸に結合している。また、ベルト機構23の歯付ベルト233が、従動プーリー232と駆動プーリー231(図11)とに巻き掛けられている。ベルト機構23によってハウジング31が回転駆動される。
【0117】
軸部314の内周には軸受315が設けられている。シャフト34は、軸部314の中空部に通され、軸受315によって回転可能に支持されている。シャフト34は、軸部314及び従動プーリー232を貫通している。シャフト34の一端部は、キャップ部312内に突出している。また、従動プーリー232の孔232aを貫通したシャフト34の他端部には、ベルト機構24の駆動プーリー241が同軸に結合している。駆動プーリー241には、歯付ベルト243が巻き掛けられている。
【0118】
モーター収容部311の中空部にはサーボモーター32が収容されている。サーボモーター32は、軸321がモーター収容部311(すなわち、ハウジング31の回転軸)と同軸に配置され、モーターケース320(すなわちステーター)が複数のスタッドボルト323によりモーター収容部311に固定されている。サーボモーター32のフランジ322は、連結筒324を介して、減速機33のギヤケース331と結合している。また、減速機33のギヤケース331は、キャップ部312の内フランジ312aに固定されている。
【0119】
サーボモーター32の軸321は、減速機33の入力軸332と接続されている。また、減速機33の出力軸333にはシャフト34が接続されている。サーボモーター32から出力されるトルクは、減速機33によって増幅されて、シャフト34に伝達される。シャフト34からベルト機構24に出力される回転は、ベルト機構23によって駆動されるハウジング31の回転に、サーボモーター32及び減速機33によって作り出されるトルクを重ね合わせたものとなる。すなわち、ハウジング31の軸部314はトルク付与装置30の入力軸であり、シャフト34はトルク付与装置30の出力軸である。トルク付与装置30は、入力軸に伝達された回転運動に、トルク付与装置30が発生したトルクを重ねて、出力軸から出力する。
【0120】
スリップリング部37は、複数対のスリップリング37aとブラシ37b、支持フレーム37c及び連結管37dを備えている。複数のスリップリング37aは、互いに離隔して、連結管37dの外周に嵌め込まれて固定されている。
【0121】
連結管37dは、ハウジング31の軸部313と同軸に結合している。また、対応するスリップリング37aの外周面と接触するブラシ37bは、支柱38に取り付けられた支持フレーム37cによって支持されている。サーボモーター32のケーブル325は、軸部313の中空部を通され、スリップリング37aに接続されている。また、ブラシ37bはサーボアンプ32a(図27)に接続されている。すなわち、サーボモーター32とサーボアンプ32aとは、スリップリング部37を介して接続されている。
【0122】
図4及び図6に示されるように、ベルト機構24の歯付ベルト243が巻き掛けられた従動プーリー242は、軸受部262により回転可能に支持されたシャフト261の一端部と同軸に結合している。シャフト261の他端部はスライド式等速ジョイント25の一端に接続されている。また、スライド式等速ジョイント25の他端部は、シャフト263(図13)を介してスピンドル280(図13)と連結している。スライド式等速ジョイント25は、作動角(すなわち、入力軸と出力軸とのなす角度)によらず、回転変動無くスムーズに回転を伝達可能に構成されている。また、スライド式等速ジョイント25は、軸方向の長さ(伝達距離)も可変である。
【0123】
スピンドル部28は、その角度及び位置が可変に、アライメント部40によって支持されている。スピンドル280(図13)と軸受部262に保持されたシャフト261とをスライド式等速ジョイント25を介して連結することにより、スピンドル280の角度や位置が変化しても、この変化にスライド式等速ジョイント25が柔軟に追従する。そのため、スピンドル280やシャフト261、263(図13)に大きなひずみが加わらず、回転が速度を変えずにスピンドル280へスムーズに伝達される。
【0124】
図5に示されるように、アライメント部40は、一対の旋回フレーム41、一対の曲線ガイドウェイ42(以下「曲線ガイド」と略記する。)、スライドフレーム44及び二対のリニアガイド43を備えている。
【0125】
各旋回フレーム41は、曲線ガイド42を介して、キャリッジ20のメインフレーム21上に載置されている。曲線ガイド42は、メインフレーム21の上面に取り付けられた円弧状のレール421と、レール421上を走行可能な複数(本実施形態では二つ)のキャリッジ422(以下「ランナー422」という。)を備えている。ランナー422は、旋回フレーム41の底面に取り付けられている。一対の曲線ガイド42及び一対の旋回フレーム41は、それぞれ試験輪Wの中心Cを通る鉛直線Vを挟んで、前後に対向して配置されている。また、各曲線ガイド42の曲率中心は、鉛直線V上にある。すなわち、各旋回フレーム41は、曲線ガイド42により、鉛直線Vを中心に旋回可能に支持されている。
【0126】
図4に示されるように、スライドフレーム44は、上から順に、柱部441、連結部442及びフォーク443を有している。柱部441(すなわち、スライドフレーム44の上部)は、その中心線が鉛直線Vと一致するように縦に配置されている。柱部441は、一対の旋回フレーム41の間に配置され、各旋回フレーム41とそれぞれ二対のリニアガイド43を介して上下にスライド可能に連結されている。リニアガイド43は、柱部441の旋回フレーム41と対向する側面441aに取り付けられたレール431と、レール431上を走行可能な複数(本実施形態では二つ)のキャリッジ432(以下「ランナー432」という。)を備えている。ランナー432は、旋回フレーム41の柱部441と対向する側面41aに取り付けられている。
【0127】
フォーク443(すなわち、スライドフレーム44の下部)は、試験輪Wと接触しないように、鉛直線Vから右側(回転軸Ay方向)に後退している。連結部442は、Y軸方向に延び、柱部441の下端部とフォーク443の上端部とを連結している。したがって、スライドフレーム44は、X軸方向から見て、略クランク状に形成されている。
【0128】
図5に示されるように、フォーク443の下部は、前後に分岐している。フォーク443の二つに分岐した下端部には、それぞれ軸受443aが互いに同軸に設けられている。
【0129】
図13は、スピンドル部28及びその周辺を示した図である。スピンドル部28は、スピンドル280の中心軸(回転軸Ay)を左右に向けて、フォーク443の下端部に設けられた一対の軸受443a(図5)の間に配置されている。そして、スピンドル部28は、一対の軸受443aにより、前後に延びる回転軸Cxの周りに回転可能に支持されている。なお、スピンドル280の回転軸Ayやスピンドルケース284の回転軸Cxの方向は、それぞれスピンドル280のアライメントによって変化し、Y軸方向やX軸方向とは必ずしも一致しない。
【0130】
スピンドル部28は、スピンドル280と、スピンドル280を回転可能に支持するスピンドルケース284を備えている。スピンドル280は、試験輪Wが取り付けられ、試験輪Wと一体に回転する車軸である。スピンドル280は、胴部281、6分力センサー282及びハブ283を備えている。胴部281は、円柱状の軸である。6分力センサー282は、胴部281の先端部に同軸に取り付けられた略円柱状の部材であり、6分力(直交3軸方向の力及び各軸回りのトルク)を検出可能な圧電式の力センサーである。また、ハブ283は、試験輪Wを取り付けるための部材であり、6分力センサー282の先端に同軸に取り付けられている。胴部281、6分力センサー282及びハブ283は、一体に結合して、スピンドル280を形成している。6分力センサー282には、ハブ283を介して試験輪Wが一体に取り付けられるため、6分力センサー282の検出結果から試験輪Wに加わる力を計算することができる。また、6分力センサー282は試験輪Wの中心付近に配置されているため、6分力センサー282の検出結果を試験輪Wに加わる6分力の近似値として使用することもできる。
【0131】
スピンドルケース284は、スピンドル280を収容して回転可能に保持する略円筒状の部材である。スピンドルケース284の内周には、軸受285及び一対の軸受286が取り付けられている。スピンドル280は、軸受285及び軸受286によって、回転可能に支持されている。
【0132】
スピンドルケース284の前後の側面には、フォーク443の一対の軸受443a(図5)とそれぞれ回転可能に嵌合する一対の旋回軸287が取り付けられている。すなわち、スピンドル部28は、一対の軸受443aによって、回転軸Cxを中心に回転可能に支持されている。
【0133】
図4に示されるように、アライメント部40は、荷重調整部45、スリップ角調整部46及びキャンバー調整部47を備えている。荷重調整部45は、試験輪Wに加わる荷重を調整するユニットである。スリップ角調整部46は、アライメント部40(直接には旋回フレーム41)を鉛直線Vの周りに回転移動させて、試験輪Wのスリップ角を調整するユニットである。キャンバー調整部47は、スピンドル部28を回転軸Cx(図13)の周りに回転移動させて、試験輪Wのキャンバー角を調整するユニットである。
【0134】
荷重調整部45は、サーボモーター451、運動変換器452及びブラケット453を備えている。また、上述したリニアガイド43も荷重調整部45を構成する要素の一つである。サーボモーター451は、キャリッジ20のメインフレーム21に取り付けられている。運動変換器452は、サーボモーター451の回転運動を、鉛直に立てられた可動子452aの上下の直線運動に変換する装置である。運動変換器452には、例えば、ラックアンドピニオン機構、かさ歯車等の交差軸と送りねじとを組み合わせた機構又はウォームギヤやねじ歯車等の食い違い軸と送りねじとを組み合わせた機構等が使用される。ブラケット453は、運動変換器452の可動子452aの直下に配置され、座面453aを上に向けて、スライドフレーム44の柱部441の側面に取り付けられている。
【0135】
サーボモーター451を駆動して運動変換器452の可動子452aを降下させると、可動子452aの下端部がブラケット453の座面453aに当たる。さらにサーボモーター451を駆動すると、可動子452aによってブラケット453を介してスライドフレーム44が鉛直下向きに押される。これにより、アライメント部40に保持された試験輪Wが路面63aに押し付けられて、試験タイヤTと路面63aとの間に、可動子452aの高さ(すなわち、Z軸方向における位置)に応じた荷重が加えられる。試験輪Wに加わる荷重は、スピンドル部28の6分力センサー282(図13)によって検出される。そして、荷重の検出結果が荷重の設定値と一致するようにサーボモーター451の駆動が制御される。
【0136】
図6に示されるように、荷重調整部45の一部は、一対の旋回フレーム41とスライドフレーム44の柱部441とで囲まれたスペースSp2内に配置されている。この構成により、スペースが有効に利用され、キャリッジの小型化が実現されている。
【0137】
図4に示されるように、スリップ角調整部46は、キャリッジ20のメインフレーム21に取り付けられたサーボモーター461と、減速機462と、減速機462の出力軸に結合した駆動歯車463と、駆動歯車463と噛み合う従動歯車464を備えている。駆動歯車463には、例えば平歯車や扇形歯車が使用される。また、従動歯車464は例えば扇形歯車である。なお、スリップ角調整部46のギヤ機構(駆動歯車463、従動歯車464)には、ウォームギヤ、傘歯車又はねじ歯車等を使用してもよい。サーボモーター461、減速機462及び駆動歯車463は、キャリッジ20のメインフレーム21に取り付けられている。また、従動歯車464は、その回転軸が鉛直線Vと一致するように、スライドフレーム44の柱部441の側面に取り付けられている。
【0138】
サーボモーター461の回転は、減速機462により減速されて、駆動歯車463を介して従動歯車464に伝達される。そして、従動歯車464及びスライドフレーム44が、鉛直線Vを中心に回転する。これにより、スピンドル部28を介してスライドフレーム44に支持された試験輪Wも鉛直線Vを中心に回転し、試験輪Wのスリップ角が変化する。
【0139】
図6に示されるように、スリップ角調整部46の一部は、一対の旋回フレーム41とスライドフレーム44の柱部441とで囲まれたスペースSp3内に配置されている。この構成により、スペースが有効に利用され、キャリッジの小型化が実現されている。なお、荷重調整部45が配置されたスペースSp2とスリップ角調整部46が配置されたスペースSp3とは、それぞれ柱部441の左右反対側に設けられた空間である。荷重調整部45とスリップ角調整部46とを異なる空間に設置することにより、組み立てやメンテナンスの効率が向上する。
【0140】
図13に示されるように、キャンバー調整部47は、連結部442の右端部に取り付けられた上部アーム471と、上部アーム471により回転可能に支持されたジョイント472と、ジョイント472が取り付けられた全ねじボルト475(以下「スタッド475」という。)と、スタッド475の一端部に取り付けられたロッドエンド476と、ピン477によりロッドエンド476と回転可能に連結した下部アーム478を備えている。下部アーム478は、その末端部がスピンドルケース284に固定されている。なお、上部アーム471はスライドフレーム44のフォーク443に取り付けてもよい。
【0141】
上部アーム471は、回転軸Ayと平行(すなわち、鉛直線Vから遠ざかる方向)に延びる平板であり、スピンドルケース284の回転軸Cxと垂直に配置されている。上部アーム471の先端部には、回転軸Cxと平行な旋回軸471aが設けられている。
【0142】
ジョイント472は、スタッド475が挿入される貫通穴が形成された略直方体状の部材である。ジョイント472には、上部アーム471の旋回軸471aと回転可能に嵌合する軸受473が設けられている。すなわち、ジョイント472は、スピンドルケース284の回転軸Cxと平行な旋回軸471aを中心に回転可能に支持されている。ジョイント472は、スタッド475に嵌められた一対のナット474で挟み込まれて、スタッド475に固定されている。
【0143】
下部アーム478の先端部は、ピン477により、ロッドエンド476の下端部と連結されている。ロッドエンド476と下部アーム478とを連結するピン477も、スピンドルケース284の回転軸Cxと平行な旋回軸である。すなわち、スライドフレーム44及び上部アーム471(第1リンク)と、スタッド475及びロッドエンド476(第2リンク)と、下部アーム478及びスピンドルケース284(第3リンク)とは、回転軸Cxと平行な三つの旋回軸[旋回軸471a(第1ジョイント)、ピン477(第2ジョイント)及び旋回軸287(第3ジョイント)]を介して、各旋回軸を中心に回転可能に環状に連結され、リンク機構を構成している。
【0144】
スタッド475上のナット474の位置を変えることにより、二つのジョイント(旋回軸471a及びピン477)を結ぶ可変長リンク47Lの長さが変わる。このとき、下部アーム478及びスピンドルケース284が旋回軸287(回転軸Cx)を中心に回転して、スピンドル280及び試験輪Wの回転軸Ayの路面63aに対する傾きが変わる。したがって、スタッド475上のナット474の位置を変えて可変長リンク47Lを伸縮させることにより、キャンバーを調整することができる。可変長リンク47Lを伸ばすとマイナス側にキャンバーが変わり、可変長リンク47Lを縮めるとプラス側にキャンバーが変わる。
【0145】
タイヤ試験装置1は、スピンドル280の回転を減速可能なブレーキシステム27(以下「ブレーキ27」と略記する。)を備えている。ブレーキ27は、後述するアタッチメント273を介してスピンドル280に取り付けられたディスクローター271と、下部アーム478に取り付けられたキャリパー272と、キャリパー272に油圧を供給する油圧供給装置276(図27)を備えている。
【0146】
油圧供給装置276は、後述する制御部72からの指令に基づいて所定圧の油圧を発生して、キャリパー272に油圧を供給する。油圧供給装置276は、サーボモーター276bと、サーボモーター276bが出力する回転運動を直線運動に変換する運動変換器276cと、運動変換器276cが出力する直線運動によって駆動されるブレーキマスターシリンダー276dと、制御部72からの指令に基づいてサーボモーター276bに供給される駆動電流を生成するサーボアンプ276aを備えている。
【0147】
スピンドル280は、アタッチメント273、ディスクローター271及びシャフト263を介して、スピンドル駆動機構20D(図6)のスライド式等速ジョイント25に連結されている。
【0148】
下部アーム478は、その中間部分が上方(すなわち、スピンドル280から離れる方向)に後退したクランク状に形成されている。下部アーム478のスピンドル280から離れた中間部分にブレーキ27のキャリパー272がアタッチメント275を介して取り付けられている。
【0149】
アタッチメント273及びシャフト263は、ディスクローター271の形状に合わせて製作された交換可能な小部材である。また、アタッチメント275は、キャリパー272の形状に合わせて製作された、比較的に交換が容易で安価な小部品である。アタッチメント273、275及びシャフト263を使用することにより、ブレーキ27(ディスクローター271、キャリパー272)の種類を変更する際に、比較的に交換コストが高いスピンドル280やスライド式等速ジョイント25を交換する必要がなくなるため、より低コストでブレーキ27の種類を変更することが可能になる。
【0150】
図14は、路面部60の横断面図である。路面部60は、フレーム61と、フレーム61に支持された本体部60aを備えている。本体部60aは、基盤62と、基盤62上に保持された舗装部63を備えている。基盤62の上面には、路面部60の延長方向(すなわち、キャリッジ20の走行方向であるX軸方向)に延びる凹部621が形成されている。舗装部63は、例えば、後述する模擬舗装材料を凹部621に充填して硬化させることにより形成されている。舗装部63の上面には、試験輪Wが接地する路面63aが形成されている。
【0151】
本実施形態では、本体部60aが、路面ユニット(路面63aの少なくとも一部を含む交換可能な構造体)である本体部ユニット600aから構成されていて、フレーム61上に着脱可能に取り付けられている。なお、路面ユニットは、本実施形態のように本体部60aをユニット化した形態(「本体部ユニット」という。)に限らず、舗装部63のみをユニット化した形態(「舗装部ユニット」という。)やフレーム61まで含めた路面部60全体をユニット化した形態(「路面部ユニット」という。)とすることもできる。
【0152】
本実施形態の本体部60aは、本体部60aを路面部60の延長方向において分割した複数の本体部ユニット600aから構成されていて、本体部ユニット600aの単位で交換可能になっている。なお、本体部60aの全体を単一の交換可能な路面ユニットとして形成してもよい。
【0153】
本実施形態のように、路面部60を本体部ユニット600a等の路面ユニットから構成することにより、路面ユニットを交換することによって、路面63aの少なくとも一部を交換することが可能になる。
【0154】
例えば、路面部60の延長方向(X軸方向)における中央部の本体部ユニット600aのみを交換して、中央部のみにおいて舗装部63の種類(例えば材質、構造、表面形状等)を変更することができる。また、本体部ユニット600a毎に舗装部63の種類を変えて、例えば、路面部60の延長方向において路面63aの摩擦係数が変化するようにしてもよい。
【0155】
基盤62の下面には、フレーム61の上面に設けられた凸部612と嵌合する凹部622が設けられている。凸部612と凹部622が嵌合するように本体部ユニット600aをフレーム61の上に載置して、両者をボルトやカムレバー等の固定手段(不図示)により固定することにより、本体部ユニット600aがフレーム61上に着脱可能に取り付けられている。
【0156】
また、本実施形態では、フレーム61も、フレーム61を路面部60の延長方向において分割した複数のフレームユニット610から形成されていて、フレームユニット610の単位で交換可能になっている。
【0157】
また、本実施形態では、フレームユニット610と本体部ユニット600aとは同じ長さに形成されていて、フレームユニット610に本体部ユニット600aを取り付けた路面部ユニット600の単位で交換することもできる。
【0158】
また、本実施形態では舗装部63は基盤62と一体に形成されているが、舗装部63を基盤62に対して着脱可能な構成としてもよい。例えば、舗装部63を路面部60の延長方向において分割した複数の舗装部ユニット630から舗装部63を構成し、舗装部ユニット630の単位で舗装部63を交換可能な構成としてもよい。この場合、舗装部ユニット630と基盤ユニット620とを同じ長さに形成し、基盤ユニット620に舗装部ユニット630を取り付けた複合ユニット(言い換えれば、舗装部63を着脱可能にした本体部ユニット600a)の単位で交換可能にしてもよい。また、フレームユニット610、基盤ユニット620及び舗装部ユニット630を組み立てて路面部ユニット600を製作し、路面部ユニット600の単位で交換可能にしてもよい。
【0159】
また、上述したように、本実施形態では、複数の路面部ユニット600が連結して路面部60を形成している。この構成により、路面部ユニット600の追加又は削除により、路面部60の延長又は短縮が可能となる。また、複数の路面ユニットを同一構造とすることにより、路面部60を効率的に製造することが可能になる。
【0160】
また、本実施形態では、路面部60と同様に、軌道部10も、延長方向において複数の軌道部ユニット100に分割されている。軌道部ユニット100の追加又は削除により、軌道部10の延長又は短縮も可能である。軌道部ユニット100は、路面部ユニット600と同じ長さに形成されている。そのため、軌道部10と路面部60の長さを揃えることができる。また、軌道部ユニット100と路面部ユニット600を一体化した複合ユニットの単位で、路面部60及び軌道部10の延長、短縮又は一部交換が可能な構成としてもよい。
【0161】
本実施形態の路面部60では、舗装部63として、アスファルト舗装道路を模擬した(すなわち、タイヤの摩耗量等のタイヤに与える影響が実際のアスファルト舗装道路と同程度になる)模擬舗装が形成されている。模擬舗装は、例えば炭化ケイ素やアルミナ等の耐摩耗性に優れたセラミックスを粉砕した(必要に応じて、更に研磨やエッチング等の加工を施した)骨材に、例えばウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の結合剤(バインダー)を添加した模擬舗装材料を成形して硬化させることによって形成される。このような模擬舗装材料を使用することにより、耐久性に優れ、路面状態が安定した(すなわち試験タイヤTの摩耗量等が安定した)模擬路面が得られる。タイヤの摩耗量は、例えば骨材の粒度や結合剤の添加量等により調整することができる。
【0162】
本実施形態の模擬舗装は単層構造であるが、例えば異なる材料から形成された複数の層が厚さ方向に積層した模擬舗装を使用してもよい。また、例えば骨材の種類や粒度、バインダーの種類や配合量等を調整して、敷石舗装、レンガ舗装又はコンクリート舗装等を模擬した模擬舗装を使用してもよい。
【0163】
また、実際の路面よりもタイヤに与えるダメージが大きく(又は小さく)なるように路面63aを形成してもよい。実際の路面よりもタイヤに与える影響が大きい路面63aを使用することにより、タイヤの加速劣化試験が可能になる。
【0164】
また、舗装部63を実際の舗装材料(例えばアスファルト舗装の表層に使用されるアスファルト混合物)から形成してもよい。また、路面を形成する最表層だけでなく、下層構造まで実際の舗装を再現又は模造した舗装部63を使用してもよい。
【0165】
本実施形態のタイヤ試験装置1は、試験中に路面63aが移動しないため、タイヤの性能に影響を与える異物(例えば、水、雪、泥水、土、砂、砂利、油又はこれらを模擬したもの等)を路面63a上に撒いた状態で試験を行うことができる。例えば、路面63a上に水を撒いた状態で試験を行うことにより、ウェット制動試験を行うことができる。
【0166】
ここで、路面部60の一変形例について説明する。図15は、路面部60の変形例である路面部60Aの横断面図である。路面部60Aは、基盤62に取り付けられた枠部67を備えている。枠部67は、コーキング等により基盤62と水密に接合され、基盤62や舗装部63と共に槽68を形成する。槽68には、タイヤの性能に影響を与える異物(例えば水、砂利、土、落ち葉等)が路面63aを覆うように入れられる。槽68を使用することにより、路面63a上に異物を厚く堆積させることが可能になる。なお、本変形例の枠部67は基盤62の上面に取り付けられているが、基盤62の側面に枠部67を取り付けても良い。また、舗装部63の上面に枠部67を取り付けてもよい。
【0167】
また、路面部60Aは、路面63aの温度を調整可能な温度調整手段64を備えている。本変形例の温度調整手段64は、基盤62に埋め込まれた流路64aと、路面63aの温度を検出する温度センサー64bと、温度調整装置64cを有している(図27)。温度センサー64bは、例えば熱電対やサーミスタ等を使用した接触式の温度センサーや赤外線センサー等の非接触式の温度センサーである。温度調整装置64cは、制御部72に接続され、制御部72からの指令に基づいて路面63aの温度を設定温度に調整する。具体的には、温度調整装置64cは、温度センサー64bの検出結果に基づいて熱媒(例えばオイルや不凍液を含有した水)の温度を調整して、この熱媒を流路64aに送出する。温度調整装置により温度が調整された熱媒を流路64aに流すことにより、路面63aを所定の温度に調整することができる。また、路面63aの温度を安定化させると共に熱の利用効率を高めるために、基盤62の表面は断熱材69によって被覆されている。
【0168】
温度調整手段64は、路面63aの温度を低温(例えば-40℃)から高温(例えば80℃)までの広い範囲で調整することができる。槽68に水を溜めて、路面63aの設定温度を氷点下に設定することにより、凍結路面を形成することができる。すなわち、本変形例の路面部60Aを使用することにより、氷上制動試験を行うことができる。また、槽68に雪を入れた状態で、雪上制動試験を行うことができる。
【0169】
流路64aは、路面63aと平行に基盤62内を等間隔で蛇行するように形成されている。また、基盤62は、延長方向に複数の区画(基盤ユニット620)に区分され、各区画に個別の流路64aが設けられている。この構成により、路面63a全体をより均一な温度に調整することが可能になる。
【0170】
次に、荷重検出部165について説明する。荷重検出部165は、タイヤ踏面に加わる荷重分布を検出可能な構成部分である。
【0171】
図16及び図17は、それぞれ路面部60の荷重検出部165及びその周辺を示した平面図及び左側面図である。また、図18-20は、順に、荷重検出部165の正面図、左側面図及び平面図である。
【0172】
図16及び図17に示されるように、路面部60の本体部60aの上面には、Y軸方向に細長い凹部60pが形成されている。荷重検出部165は、凹部60p内に収容され、凹部60pの底面に固定されている。
【0173】
図18-20に示されるように、荷重検出部165は、固定フレーム1658、可動フレーム1659、一対のリニアガイド1654、センサーアレイユニット1650、移動ユニット1655及びセンサー位置検出部1656を備えている。なお、図18において、リニアガイド1654及び後述する固定フレーム1658のレール支持部1658bの図示が省略されている。可動フレーム1659は、一対のリニアガイド1654によって、Y軸方向(すなわち、路面部60の幅方向)に移動可能に支持されている。センサーアレイユニット1650は、可動フレーム1659の上面に取り付けられている。センサーアレイユニット1650の詳細は後述する。
【0174】
図21は、荷重検出部165の可動部(すなわち、可動フレーム1659及びセンサーアレイユニット1650)を取り外した状態を示した平面図である。
【0175】
図19及び図21に示されるように、固定フレーム1658は、略矩形のベースプレート1658aと、ベースプレート1658aの上面に固定された一対のレール支持部1658bを備えている。一対のレール支持部1658bは、長さ方向をY軸方向に向けて、X軸方向に間隔を空けて並べられている。
【0176】
リニアガイド1654は、Y軸方向に延びるレール1654aと、レール1654a上を走行可能な複数(本実施形態では三つ)のキャリッジ1654b(以下「ランナー1654b」という。)を備えている。レール1654aは、レール支持部1658bの上面に取り付けられている。また、ランナー1654bは、可動フレーム1659の下面に取り付けられている。リニアガイド1654によって、可動フレーム1659のY軸方向の移動が案内される。
【0177】
移動ユニット1655は、一対のレール支持部1658b及びリニアガイド1654の間に配置されている。移動ユニット1655は、サーボモーター1655mとボールねじ機構1655bを備えている。ボールねじ機構1655bは、ボールねじ1655ba、ナット1655bb、軸受部1655bc及び軸受部1655bdを備えている。
【0178】
ボールねじ1655baは、一対の軸受部1655bc及び1655bdによって両端部において回転可能に支持されている。また、ボールねじ1655baの一端は、サーボモーター1655mの軸に接続されている。ボールねじ1655baと噛み合うナット1655bbは、可動フレーム1659の下面に取り付けられている。サーボモーター1655mによってボールねじ1655baを回転させると、ナット1655bbと共に可動フレーム1659及びセンサーアレイユニット1650がY軸方向に移動する。すなわち、サーボモーター1655mの回転駆動により、センサーアレイユニット1650のY軸方向における位置を変更することができる。
【0179】
図21に示されるように、センサー位置検出部1656は、可動アーム1656a、複数(本実施形態では三つ)の近接センサー1656c及びセンサー取付部1656bを備えている。可動アーム1656aは、末端部が可動フレーム1659に固定されていて、可動フレーム1659と共にY軸方向に移動可能である。センサー取付部1656bは、固定フレーム1658に取り付けられている。
【0180】
複数の近接センサー1656cは、検出面1656cfをX軸正方向に向けて、Y軸方向に間隔を空けて(例えば等間隔に)並べられ、センサー取付部1656bに取り付けられている。
【0181】
可動アーム1656aの先端部には、近接センサー1656cに近接する近接部1656apが形成されている。本実施形態では、可動アーム1656aの先端部をクランク状に折り曲げることにより、近接部1656apが形成されている。近接部1656apは、複数の近接センサー1656cの検出面1656cfと同じ高さに配置されている。また、複数の近接センサー1656cの検出面1656cfは、近接部1656apのY軸方向における可動範囲内に間隔を空けて配置されている。
【0182】
図22は、図18において二点鎖線で囲まれた領域Eを拡大した図である。図18及び図22に示されるように、センサーアレイユニット1650は、フレーム1650aと複数(本実施形態では150個)の荷重検出モジュール1650mを備えている。フレーム1650aの上面の中央部には、Y軸方向に長い凹部1650apが形成されている。複数の荷重検出モジュール1650mは、凹部1650ap内に収容され、凹部1650apの底面に固定されている。
【0183】
複数の荷重検出モジュール1650mは、X軸方向及びY軸方向の2方向に格子点状に等間隔に(例えば、略隙間なく)並べられている。本実施形態では、150個の荷重検出モジュール1650mが、X軸方向に5列、Y軸方向に30列に並べられている。
【0184】
荷重検出モジュール1650mは、3分力センサー1651と、舗装部1652と、ボルト1653を備えている。3分力センサー1651は、中心軸がZ軸方向を向いた円柱状の圧電素子である。舗装部1652は、例えば舗装部63と同じ模擬舗装材料又は舗装材料から形成された、X軸方向及びY軸方向の長さが等しい直方体状の部材である。なお、3分力センサー1651及び舗装部1652の形状は、これらの形状に限定されない。例えば、3分力センサー1651の形状は直方体状でもよく、舗装部1652の形状は円柱状でもよい。
【0185】
円柱状の3分力センサー1651の中央には、Z軸方向に貫通する孔1651bが形成されている。また、舗装部1652の中央には、Z軸方向に延びるボルト穴1652bが形成されている。3分力センサー1651の孔1651bに通されて舗装部1652のボルト穴1652bに捻じ込まれたボルト1653によって、荷重検出モジュール1650mは、一体化され、フレーム1650aに固定されている。舗装部1652の上面は、同じ高さで水平に配置されて、路面1652aを形成する。荷重検出モジュール1650mが配列されたX軸及びY軸方向の領域が、センサーアレイユニット1650の検出領域となる。なお、センサーアレイユニット1650の検出領域の幅(すなわち、Y軸方向における長さ)Ly(図20)は、試験タイヤTのトレッド幅よりも十分に広く、試験タイヤTのタイヤ踏面全幅が路面1652aに接地できるようになっている。
【0186】
3分力センサー1651により、各荷重検出モジュール1650mの路面1652aに加わる(すなわち、タイヤ踏面に加わる)以下の3種類の力f、f及びfが検出される。
a)半径方向力f
b)接線力f
c)横力f
【0187】
荷重検出部165を使用することにより、試験タイヤTのタイヤ踏面から路面が受ける力(すなわち、タイヤ踏面に加わる力)の分布及びその時間変化を検出することができる。
【0188】
図27は、タイヤ試験装置1の制御システム1aの概略構成を示すブロック図である。制御システム1aは、装置全体の動作を制御する制御部72、各種計測を行う計測部74及び外部との入出力を行うインターフェース部76を備えている。
【0189】
制御部72には、各駆動部14のサーボモーター141、トルク付与装置30のサーボモーター32、荷重調整部45のサーボモーター451、スリップ角調整部46のサーボモーター461、移動ユニット1655のサーボモーター1655m及び油圧供給装置276のサーボモーター276bが、サーボアンプ141a、32a、451a、461a、1655a及び276aをそれぞれ介して接続されている。
【0190】
制御部72と各サーボアンプ141a、276a、32a、451a及び461aとは、光ファイバによって通信可能に接続され、制御部72と各サーボアンプとの間で高速のフィードバック制御が可能になっている。これにより、より高精度(時間軸において高分解能かつ高確度)の同期制御が可能になっている。
【0191】
また、制御部72には、温度調整装置64cが接続されている。
【0192】
計測部74には、スピンドル部28の6分力センサー282、荷重検出部165の3分力センサー1651及びセンサー位置検出部1656の近接センサー1656cが、プリアンプ282a、1651a及び1656caをそれぞれ介して接続されている。6分力センサー282、3分力センサー1651及び近接センサー1656cからの信号は、プリアンプ282a、1651a及び1656caによってそれぞれ増幅されたのち、計測部74においてデジタル信号に変換され、これにより計測データが生成される。計測データは制御部72に入力される。なお、図27において、3分力センサー1651、プリアンプ1651a、近接センサー1656c及びプリアンプ1656caは、それぞれ一つのみが図示されている。
【0193】
各サーボモーター141、32、451、461、1655m及び276bに内蔵されたロータリーエンコーダーREが検出した位相情報は、各サーボアンプ141a、32a、451a、461a、1655a及び276aをそれぞれ介して、制御部72に入力される。
【0194】
インターフェース部76は、例えば、ユーザーとの間で入出力を行うためのユーザーインターフェース、LAN(Local Area Network)等の各種ネットワークと接続するためのネットワークインターフェース、外部機器と接続するためのUSB(Universal Serial Bus)やGPIB(General Purpose Interface Bus)等の各種通信インターフェースの一つ以上を備えている。また、ユーザーインターフェースは、例えば、各種操作スイッチ、表示器、LCD(liquid crystal display)等の各種ディスプレイ装置、マウスやタッチパッド等の各種ポインティングデバイス、タッチスクリーン、ビデオカメラ、プリンタ、スキャナ、ブザー、スピーカ、マイクロフォン、メモリーカードリーダライタ等の各種入出力装置の一つ以上を含む。
【0195】
制御部72は、インターフェース部76を介して入力された速度の設定データに基づいて、各駆動部14のサーボモーター141の駆動を同期制御することにより、キャリッジ20を所定の速度で走行させることができる。なお、本実施形態では、4つの駆動部14の全てを同位相で駆動する(より正確には、左側の駆動部14LA及び14LBと右側の駆動部14RA及び14RBとは逆位相[逆回転]で駆動される)。
【0196】
また、制御部72は、インターフェース部76を介して取得した試験タイヤTに与えるべき前後力(制動力又は駆動力)の設定データに基づいてトルク付与装置30のサーボモーター32の駆動を制御することにより、試験タイヤTに所定の前後力を与えることができる。また、制御部72は、前後力の設定データに替えてトルクの設定データ(又は加速度の設定データ)に基づいてトルク付与装置30を制御することにより、試験輪Wに所定のトルクを与えることもできる。
【0197】
制御部72は、キャリッジ20を所定の走行速度で走行させる(同時に、試験タイヤTを走行速度と略同じ周速で回転させる)駆動部14の制御と、試験タイヤTに前後力(又はトルク)を与えるためのトルク付与装置30の制御とを、同期信号に基づいて、同期して行うことができる。
【0198】
トルク付与装置30に発生させるトルクの波形としては、正弦波、正弦半波(ハーフサイン波)、鋸歯状波(のこぎり波)、三角波、台形波等の基本波形の他、路上試験において計測された前後力(又はトルク)波形、シミュレーション計算によって得られた前後力(又はトルク)波形又はその他の任意の合成波形(例えば、ファンクションジェネレータ等により生成された波形)を使用することができる。
【0199】
キャリッジ20の走行速度(又は試験輪Wの回転数)の制御についても、同様に、基本波形の他、路上試験において計測された車輪の回転数の波形、シミュレーション計算によって得られた速度変化の波形、又はその他の任意の合成波形(例えば、ファンクションジェネレータ等により生成された波形)を使用することができる。
【0200】
次に、移動ユニット1655により、センサーアレイユニット1650のY軸方向における位置を変更する手順について説明する。センサーアレイユニット1650は、図21に示される初期状態において、可動アーム1656aの近接部1656apが中央の近接センサー1656cの検出面1656cfと対向する位置に配置される。例えばタッチスクリーンに対するユーザー操作により、センサーアレイユニット1650を左(Y軸正方向)に移動するよう指示が出されると、制御部72は、センサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動するよう、サーボアンプ1655aに反時計回転の指令を送信する。反時計回転の指令を受け取ったサーボアンプ1655aは、サーボモーター1655mに反時計回転させる駆動電流を供給する。そして、サーボモーター1655mが駆動電流によって反時計回りに駆動されると、サーボモーター1655mの軸と共にボールねじ1655baが反時計回転し、ナット1655bb及び可動フレーム1659と共にセンサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動する。
【0201】
センサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動すると、可動アーム1656aの近接部1656apが中央の近接センサー1656cの検出面1656cfから離れて、中央の近接センサー1656cが近接を検出しなくなる。やがて、可動アーム1656aの近接部1656apが左(Y軸正方向側)の近接センサー1656cの検出面1656cfと対向する位置に到達する。このとき、左の近接センサー1656cは、近接を検出し、近接の検出を示す近接信号を出力する。プリアンプ1656caを介して近接信号を受け取った計測部74は、センサーアレイユニット1650が左側の定位置に到達したことを制御部72に通知する。計測部74からの通知を受けた制御部72は、サーボアンプ1655aに駆動停止の指令を送信する。駆動停止の指令を受け取ったサーボアンプ1655aは、サーボモーター1655mへの駆動電流の供給を中止する。これにより、サーボモーター1655mの軸とボールねじ1655baの回転が停止し、ナット1655bb及びセンサーアレイユニット1650も停止して、センサーアレイユニット1650の移動が完了する。
【0202】
移動ユニット1655を搭載することにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のY軸方向における長さLy(図20)を短くして、荷重分布の計測に必要な荷重検出モジュール1650mの数を減らすことが可能になり、センサーアレイユニット1650の製造及び保守に必要なコストの削減が可能になる。
【0203】
次に、荷重検出部165を使用して、タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する方法について説明する。図23は、タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する方法の手順を表すフローチャートである。
【0204】
タイヤ試験装置1の電源スイッチがONにされると、制御部72は、まず初期化処理S1を行う。図2に示されるように、初期状態において、キャリッジ20は、その可動範囲のX軸負方向における末端付近に設定された初期位置(初期走行位置)PX0に配置される。また、スライドフレーム44(図4)は、その可動範囲の例えば上端付近に設定された初期位置PZ0に配置される。初期位置PZ0において、試験輪Wは路面63aから浮上し、試験輪Wの着脱やアライメント調整が可能になる。また、スリップ角調整部46及びキャンバー調整部47により、それぞれスリップ角及びキャンバーが設定された値に調整される。
【0205】
試験輪Wが路面63aから浮上した状態で、トルク付与装置30のサーボモーター32が駆動され、試験輪Wの回転位置θが初期回転位置θW0に移動して、初期化処理S1が完了する。なお、トルク付与装置30自体(すなわちハウジング31)の回転位置θは、キャリッジ20の走行位置Pによって決まる。トルク付与装置30は、初期状態においては、常に初期回転位置θH0に配置される。
【0206】
初期化処理S1の完了後、例えばタッチスクリーンに対するユーザー操作により試験開始の指示が与えられると(S2:YES)、カウンタである測定セット数kが1にリセットされ(S3)、試験輪Wは、荷重調整部45によって、降下されて路面63aに接地し、設定された荷重が与えられる(S4)。
【0207】
次に、1回目の測定セットS5が行われる。測定セットS5では、各駆動部14のサーボモーター141が駆動され、キャリッジ20が設定された走行速度で走行すると共に、試験輪Wがキャリッジ20の走行速度と略同じ周速で回転する。また、トルク付与装置30のサーボモーター32が駆動され、試験輪Wに設定されたトルクが与えられる。
【0208】
測定セットS5において、所定の時間間隔(例えば5ミリ秒間隔)で、荷重検出部165の3分力センサー1651及びスピンドル部28の6分力センサー282によって、路面1652a及び試験輪Wに加わる力がそれぞれ検出される。なお、3分力センサー1651及び6分力センサー282による検出の時間間隔は、試験条件(例えば、キャリッジ20の走行速度や必要な試験精度)に応じて適宜設定される。
【0209】
また、測定セットS5において、キャリッジ20の走行位置P及び試験輪Wの回転位置θが、所定の時間間隔(例えば、3分力センサー1651による検出と同じ時間間隔)で計算される。キャリッジ20の走行位置Pは、駆動部14のサーボモーター141に内蔵されたロータリーエンコーダーRE(図27)の検出結果、減速機142の減速比及びベルト機構50の駆動プーリー52のピッチ円直径から計算される。なお、本実施形態の説明において、キャリッジ20の走行位置Pは、キャリッジ20の走行方向(X軸方向)における試験輪Wの回転軸Ayの位置として定義される。
【0210】
試験輪Wの回転位置θは、トルク付与装置30のロータリーエンコーダー39及びサーボモーター32に内蔵されたロータリーエンコーダーREの検出結果に基づいて計算される。具体的には、試験輪Wの回転位置θは、サーボモーター32のロータリーエンコーダーREによって検出されるサーボモーター32の軸321の回転位置θ(但し、初期状態における初期回転位置θM0を0[rad]とする。)に減速機33の減速比を乗じたもの(すなわち、ハウジング31に対するシャフト34の回転位置θ)をロータリーエンコーダー39によって検出されるトルク付与装置30のハウジング31の回転位置θに加算することによって計算される。
【0211】
なお、トルク付与装置30からの出力の回転位置θ(例えば、スピンドル280やシャフト261、263の回転位置)を検出するロータリーエンコーダー等の検出手段を設けて、この検出手段によって試験輪Wの回転位置θを直接検出する構成としてもよい。
【0212】
3分力センサー1651及び6分力センサー282の検出結果は、同じタイミングで検出された駆動部14のサーボモーター141に内蔵されたロータリーエンコーダーREの検出結果(すなわち、キャリッジ20の走行位置P)及び試験輪Wの回転位置θの検出結果と対応付けられて、制御部72の記憶装置721(又は、例えばLANを介して制御部72に接続されたサーバー77等の制御部72によってアクセス可能な記憶手段)に保存される。なお、3分力センサー1651による検出結果については、試験輪Wがセンサーアレイユニット1650を通過する期間及びその前後の所定の期間のみを記録する構成としてもよい。これにより、保存されるデータ量を削減することができる。
【0213】
キャリッジ20が走行区間の終端に到達して停止すると、荷重調整部45によって、試験輪Wが路面63aから浮上する高さ(例えば、初期状態と同じ高さ)まで上げられる(S6)。そして、駆動部14が駆動され、キャリッジ20が初期位置PX0へ移動する(S7)。
【0214】
測定セット数kが規定回数nに達するまで、上記の処理S4からS9が繰り返される(S8)。測定セット数kが規定回数nに達していなければ(S8:NO)、トルク付与装置30のサーボモーター32が駆動され、試験輪Wの回転位置θが回転位置θW0+k*Δθに移動し(S9)、カウンタkがインクリメントされる(S12)。すなわち、測定セット数kが一つ増える度に、初期位置PX0における試験輪Wの回転位置θが角度幅Δθずつ変更される。
【0215】
角度幅Δθは、例えば、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLx(図19)に対応する試験輪Wの中心角θC1(すなわち、試験輪Wが距離Lxを転動する際の回転角θC1)以下の値に設定される。例えば、角度幅Δθは、荷重検出モジュール1650mの配置間隔δ(図19)に対応する試験輪Wの中心角θC2と同じ値又は中心角θC2よりもわずかに小さな値に設定される。
【0216】
また、角度幅Δθを、例えば、2πを規定回数nで割った値に設定してもよい。この場合、n回の測定セットにより、試験輪Wの全周が隈無く測定される。
【0217】
規定回数nの測定セットが完了すると(S8:YES)、次に荷重プロファイル計算S10が行われる。
【0218】
図24は、荷重プロファイル計算S10の手順を表すフローチャートである。荷重プロファイル計算S10は、n回の測定セットS5によって取得された測定結果に基づいて、荷重プロファイルデータを計算する処理である。
【0219】
荷重プロファイルデータは、タイヤに加わる3種類の力(すなわち、半径方向力f、接線力f及び横力f)の値が、路面上の平面座標と対応づけられたデータである。
【0220】
荷重プロファイル計算S10においては、まず、各荷重検出モジュール1650mの座標の計算(S101)が行われる。なお、本実施形態においては、荷重検出モジュール1650mの上面中央の点の座標が、荷重検出モジュール1650mの座標として定義される。
【0221】
図25は、荷重検出モジュール1650m及び試験輪Wの回転軸Ayの位置関係を示す図である。上述したように、本実施形態では、150個の荷重検出モジュール1650mが、X軸方向に5列、Y軸方向に30列に並べられている。以下の説明において、荷重検出モジュール1650mのX軸方向における列の番号をp、Y軸方向における列の番号をqとし、荷重検出モジュール1650mの配置が正の整数の対[p,q](以下「番地[p,q]」という。)によって表される。
【0222】
また、荷重プロファイル計算S10においては、(x,y)座標系が使用される。(x,y)座標系は、番地[3,1]に配置された荷重検出モジュール1650mの上面中央を原点とする、(X,Y)座標系と平行な2次元の直交座標系である。すなわち、xy平面は、路面部60の路面63a、1652aが配置された平面である。また、本実施形態においては、(x,y)座標系の原点(すなわち、番地[3,1]の荷重検出モジュール1650mの位置)がセンサーアレイユニット1650の位置として定義される。また、以下の説明において、固定点を原点とする座標を絶対座標、可動点を原点とする座標を相対座標という。荷重プロファイル計算S10においては、各荷重検出モジュール1650mの絶対座標が計算される。
【0223】
本実施形態においては、荷重検出モジュール1650mは、x軸方向及びy軸方向において、それぞれ等間隔δで並べられている。従って、番地[p,q]のxy座標は、次式によって計算される。

x = (p-3)*δ
y = (q-1)*δ
【0224】
次に、試験輪Wの回転軸Ayのx座標(以下「座標xAy」という。)が計算される(S102)。座標xAyは、次式によって計算される。

Ay = P - S
但し、
: 試験輪Wの走行位置P(回転軸Ay)のX座標
: (x,y)座標系の原点のX座標
【0225】
すなわち、手順S102において、試験輪Wの回転軸Ayの座標が、XY座標系からxy座標系に変換される。
【0226】
次に、試験輪Wの走行位置P(回転軸Ay)を基準とする、荷重検出モジュール1650mの相対位置(相対座標)が計算される(S103)。荷重検出モジュール1650mの相対座標(x,y)は、次式によって計算される。本実施形態では、回転軸Ayに対する相対座標の荷重プロファイルデータが取得される。

= x - xAy
= y
【0227】
次に、全ての測定結果(すなわち、各荷重検出モジュール1650mによって測定された半径方向力f、接線力f及び横力f)を相対座標(x,y)毎に平均することによって、3種類の力f、f及びfの荷重プロファイルデータが算出される(S104)。処理S104においては、回帰分析(例えば、最小二乗法等の曲面フィッティング)によって得られる近似曲面として荷重プロファイルデータを計算してもよい。
【0228】
処理S104において、試験輪Wの回転位置θを考慮して(すなわち、回転位置θ毎に)、荷重プロファイルデータを計算してもよい。また、この場合、更に試験タイヤTのトレッドパターンの回転軸Ay周りの対称性を含めて荷重プロファイルデータを計算してもよい。具体的には、トレッドパターンの周方向の周期において同位相となる回転位置θ毎に荷重プロファイルデータを計算してもよい。
【0229】
また、本実施形態では、n回の測定セットにより、試験輪Wの1周分のみについて測定が行われるが、更に測定セットを増やして、複数周分について測定を行ってもよい。また、本実施形態では、初期位置PX0における試験輪Wの回転位置θを、荷重検出モジュール1650mの配置間隔δに対応する試験輪Wの中心角θC2ずつ変更しながら複数回の測定セットが行われるため、荷重プロファイルデータのx軸方向における分解能は荷重検出モジュール1650mの配置間隔δ程度となる。更に小さな角度(例えば、中心角θC2の1/10)ずつ回転位置θを変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、x軸方向における実質的な分解能を荷重検出モジュール1650mの配置間隔δよりも細かくすることができる。例えば、中心角θC2の1/m(但し、mは自然数。)ずつ回転位置θを変更しながら測定セットを繰り返した場合、x軸方向における実質的な分解能をδ/m程度まで小さくすることができる。
【0230】
本実施形態では、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLx(図19)が、タイヤ踏面のX軸方向における長さよりも短い。従って、試験輪Wをセンサーアレイユニット1650の上に一度転動させただけでは、タイヤ踏面の全体の荷重分布を取得することができない。
【0231】
そこで、本実施形態では、センサーアレイユニット1650上を転動する際の試験輪Wの回転位置θをずらしながら、タイヤ踏面の荷重分布を複数回に分けて計測する方法が採用される。これにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さを短くして、荷重分布の計測に必要な荷重検出モジュール1650mの数を減らすことが可能になり、センサーアレイユニット1650の製造及び保守に必要なコストの削減が可能になっている。
【0232】
また、移動ユニット1655により、センサーアレイユニット1650のY軸位置を所定間隔ずつ変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、y軸方向における実質的な分解能を小さくすることができる。この場合、移動ユニット1655のサーボモーター1655mには、位置制御が可能なモーター(例えば、サーボモーターやステッピングモーター等)が使用される。例えば、センサーアレイユニット1650のY軸位置を1mmずつ変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、y軸方向における実質的な分解能を1mm程度まで小さくすることができる。
【0233】
次に、計算された荷重プロファイルデータに基づいて作成される荷重プロファイル画像が、インターフェース部76のディスプレイ装置に表示され、タイヤ踏面に加わる荷重分布が視覚化される(S11)。図26は、荷重プロファイル画像の表示例である。図26(a)は接線力f図26(b)は横力f図26(c)は半径方向力fの荷重プロファイル画像である。図26に示される荷重プロファイル画像は、各位置(x,y)における力の値を明度に変換したものである。なお、荷重プロファイル画像の形態は本実施形態のものに限定されず、例えば3次元CG画像等の別の形態としてもよい。
【0234】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、様々な変形が可能である。例えば本明細書中に例示的に明示された実施形態等の構成及び/又は本明細書中の記載から当業者に自明な実施形態等の構成を適宜組み合わせた構成も本願の実施形態に含まれる。
【0235】
タイヤ試験装置1は、上記の実施形態では二つのベルト機構50を備えているが、一つ又は三つ以上のベルト機構50を備えていてもよい。
【0236】
ベルト機構50は、上記の実施形態では一対の駆動部14が発生した動力によって駆動されるが、一つ又は三つ以上の駆動部14によって駆動される構成としてもよい。
【0237】
上記の実施形態では、各ベルト機構50、23、24に歯付ベルト及び歯付プーリーが使用されているが、ベルト機構の一つ以上について歯付ベルトに替えて平ベルトやVベルトを使用してもよい。また、ベルト機構に替えて、チェーン伝動機構やワイヤ伝動機構等の他の種類の巻掛け伝動機構や、ボールねじ機構、歯車伝動機構又は油圧機構等の他の種類の動力伝達機構を使用してもよい。
【0238】
上記の実施形態では、キャリッジ20を駆動する動力と、試験輪W(スピンドル280)を駆動する動力が、共通の駆動部14によって供給され、共通のベルト機構50によって伝達されるが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、キャリッジ20を駆動する動力と試験輪Wを駆動する動力を、個別の駆動部によって生成し、個別の動力伝達手段(例えば個別のベルト機構)によって伝達する構成としてもよい。この場合、キャリッジ20の走行速度と試験輪Wの周速を合わせるため、キャリッジ駆動用の駆動部と試験輪駆動用の駆動部の駆動を同期制御する必要がある。
【0239】
上記の実施形態では、キャリッジ20を駆動する機構(キャリッジ駆動手段)と試験輪Wを駆動する機構(試験輪駆動手段)の一部(駆動部14及びベルト機構50)を共通化することにより、シンプルな駆動システム及び制御システムが実現されている。キャリッジ駆動手段と試験輪駆動手段の共通化(特に駆動部14の共通化)は、トルク付与装置30を導入して、試験輪Wの速度制御とトルク制御の動力源を分離することにより、駆動部14が担う付加が低減したことで可能になっている。
【0240】
上記の実施形態では、右側の駆動部14RA及び14RBがキャリッジ駆動手段と回転運動供給手段を兼ねて、左側の駆動部14LA及び14LBがキャリッジ駆動手段として機能する構成が採用されているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、左側の駆動部14LA及び14LBがキャリッジ駆動手段と回転運動供給手段を兼ねて、右側の駆動部14RA及び14RBがキャリッジ駆動手段として機能する構成としてもよい。また、左側の駆動部14LA及び14LBと右側の駆動部14RA及び14RBの両方がキャリッジ駆動手段と回転運動供給手段を兼ねる構成としてもよい。この構成は、例えば、左右の従動部22R及び22Lの合計2本のシャフト223Bを連結する(言い換えれば、左右の従動部22R及び22Lを連結する一本の長いシャフト223Bに置き換える)ことで実現される。
【0241】
上記の第3変形例では、測定セット毎に初期位置PZ0における試験輪Wの回転位置θを変更することにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLxよりも長いタイヤ踏面の荷重プロファイルの測定を可能にしている。しかし、センサーアレイユニット1650のX軸方向における位置を変更可能な手段を設けることにより、測定セット毎に初期位置PZ0における試験輪Wの回転位置θを変更せずに、長さLxよりも長いタイヤ踏面の荷重プロファイルの測定が可能になる。センサーアレイユニット1650のX軸方向における位置を変更可能な手段は、例えば、移動ユニット1655と同様に、位置制御可能なモーターと送りねじ機構(例えば、ボールねじ機構)によって構成することができる。
【0242】
上記の実施形態では、軌道部10のガイド機構13において、一対の単列の軸受137a等によりロッド134a等が支持されているが、本発明はこの構成に限定されず、例えば一つ以上の複列又は単列の軸受によってロッドが支持されてもよい。
【0243】
上記の実施形態では、軌道部10のガイド機構13において、熱処理レールが使用されているが、本発明はこの構成に限定されず、例えば普通レール(JIS E 1101:2001)や軽レール(JIS E 1103:1993)を使用してもよい。また、平底レールに限らず、双頭レール、牛頭レール、橋形レール等の他の形状のレールを使用してもよい。
【0244】
上記の実施形態では、駆動部14にサーボモーター141(ACサーボモーター)が使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。ACサーボモーターの代わりに、速度制御又は位置制御が可能な別の種類のモーター(例えば、DCサーボモーターや、インバーター回路とACモーター又はブラシレスモーターとを組み合わせた所謂インバーターモーター等)を使用してもよい。
【0245】
上記の実施形態では、トルク付与装置30、荷重調整部45及びスリップ角調整部46に、それぞれACサーボモーターであるサーボモーター32、451及び461が使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。ACサーボモーターの代わりに、位置制御が可能な別の種類のモーター(例えば、DCサーボモーターやステッピングモーター等)を使用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2024-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と、
試験タイヤが装着された試験輪を回転可能に保持し、前記試験タイヤを前記路面に接地させた状態で前記路面に沿って走行可能なキャリッジと、
前記キャリッジの走行方向への移動を案内するガイド機構と、
を備え、
前記ガイド機構が、
前記キャリッジの走行方向に延びるレールと、
前記キャリッジに取り付けられた、前記レール上を走行可能なランナーと、を備え、
前記ランナーが、
前記レール上を転動可能な複数のローラーと、
前記ローラーを回転可能に支持する複数の軸受と、を備え、
前記軸受が、円軌道上を転動する転動体を備えたころがり軸受であり、
前記複数のローラーが、
前記レールの頭部上面を転動可能な複数の第1のローラーを含み
前記複数の第1のローラーが、前記キャリッジの略全長に亘って連続的に配置された、
タイヤ試験装置。
【請求項2】
前記複数のローラーが、前記レールの頭部下面を転動可能な第2のローラー及び前記レールの頭部側面を転動可能な第3のローラーの少なくとも一方を含む、
請求項1に記載のタイヤ試験装置。
【請求項3】
前記複数のローラーが、複数の組に組分けされ、
前記ローラーの前記複数の組が、
前記キャリッジの走行方向に並べられ、
それぞれ、前記第1のローラーと、前記第2のローラー及び前記第3のローラーの少なくとも一方と、を含む、
請求項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項4】
前記ランナーが、
前記キャリッジに取り付けられたフレームと、
前記フレームに支持された複数のロッドと、を備え、
前記軸受が、
前記ロッドと嵌合した内輪と、
前記ローラーの内周面と嵌合した外輪と、
前記内輪の外周面と前記外輪の内周面との間に介在する複数の前記転動体と、
を備えた、
請求項2又は請求項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項5】
互いに前記レールが平行に並べられた、第1のガイド機構及び第2のガイド機構を含む、複数の前記ガイド機構を備え、
前記第1のガイド機構及び前記第2のガイド機構のそれぞれの前記第2のローラー及び前記第3のローラーの少なくとも一方が、前記第1のガイド機構及び前記第2のガイド機構の前記レール間に配置された、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項6】
互いに前記レールが平行に並べられた、第1のガイド機構及び第2のガイド機構を含む、複数の前記ガイド機構を備え、
前記第1のガイド機構及び前記第2のガイド機構の前記レールが、前記第1のガイド機構の前記第2のローラー及び前記第3のローラーの少なくとも一方と、前記第2のガイド機構の前記第2のローラー及び前記第3のローラーの少なくとも一方との間に配置された、
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項7】
前記ランナーの全長が、前記キャリッジのメインフレームの下面の走行方向における長さと略同じである、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【請求項8】
前記レールが鉄道用レールである、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載のタイヤ試験装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの性能は、路面の状態により影響を受けるため、様々な状態の路面に対して評価を行う必要がある。タイヤの性能を評価する試験には、試験タイヤを例えば専用試験車のホイールリムに装着して実際の路面上を走行させて行う路上試験や室内に設置された試験装置を使用して行う室内試験(台上試験)がある。
【0003】
特許文献1には、タイヤの台上試験に使用される試験装置の例が記載されている。特許文献1に記載の試験装置は、外周面に模擬路面が設けられた回転ドラムを備え、試験タイヤを模擬路面に接地させた状態で、試験タイヤとドラムを回転させて試験を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-72215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
台上試験は、路上試験と比較して、試験精度が高く、試験効率も良い。しかしながら、従来の台上試験用の試験装置は、試験時に模擬路面を高速で走行させるため、雨雪や砂利等で覆われた路面状態で試験を行うことが困難であった。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、様々な路面状態の台上試験が可能なタイヤ試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、路面と、試験タイヤが装着された試験輪を回転可能に保持し、試験タイヤを路面に接地させた状態で路面に沿って走行可能なキャリッジと、キャリッジの走行方向への移動を案内するガイド機構と、を備え、ガイド機構が、キャリッジの走行方向に延びるレールと、キャリッジに取り付けられた、レール上を走行可能なランナーと、を備え、ランナーが、レール上を転動可能な複数のローラーと、ローラーを回転可能に支持する複数の軸受と、を備え、軸受が、円軌道上を転動する転動体を備えたころがり軸受であり、複数のローラーが、レールの頭部上面を転動可能な複数の第1のローラーを含み、複数の第1のローラーが、キャリッジの略全長に亘って連続的に配置された、タイヤ試験装置が提供される。
【0008】
上記のタイヤ試験装置において、複数のローラーが、レールの頭部下面を転動可能な第2のローラー及びレールの頭部側面を転動可能な第3のローラーの少なくとも一方を含む構成としてもよい。
【0009】
上記のタイヤ試験装置において、複数のローラーが、複数の組に組分けされ、ローラーの複数の組が、キャリッジの走行方向に並べられ、それぞれ、第1のローラーと、第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方と、を含む構成としてもよい。
【0010】
上記のタイヤ試験装置において、ランナーが、キャリッジに取り付けられたフレームと、フレームに支持された複数のロッドと、を備え、軸受が、ロッドと嵌合した内輪と、ローラーの内周面と嵌合した外輪と、内輪の外周面と外輪の内周面との間に介在する複数の転動体と、を備えた構成としてもよい。
【0011】
上記のタイヤ試験装置において、互いに前記レールが平行に並べられた、第1のガイド機構及び第2のガイド機構を含む、複数のガイド機構を備え、第1のガイド機構及び第2のガイド機構のそれぞれの第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方が、第1のガイド機構及び第2のガイド機構のレール間に配置された構成としてもよい。
【0012】
上記のタイヤ試験装置において、互いに前記レールが平行に並べられた、第1のガイド機構及び第2のガイド機構を含む、複数のガイド機構を備え、第1のガイド機構及び第2のガイド機構のレールが、第1のガイド機構の第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方と、第2のガイド機構の第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方との間に配置された構成としてもよい。
【0013】
上記のタイヤ試験装置において、ランナーの全長が、キャリッジのメインフレームの下面の走行方向における長さと略同じである構成としてもよい。
【0014】
上記のタイヤ試験装置において、前記レールが鉄道用レールである構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態によれば、試験中に路面を移動させずに、試験タイヤを保持したキャリッジを路面に沿って走行させる構成にすることにより、タイヤの台上試験を様々な路面状態で行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の正面図である。
図2】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の側面図である。
図3】本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置の平面図である。
図4】キャリッジ及びその周辺の構造を示した図である。
図5】キャリッジ及びその周辺の構造を示した図である。
図6】キャリッジ及びその周辺の構造を示した図である。
図7】3つのガイド機構の配置を示す図である。
図8】ガイド機構のランナー付近を拡大した側面図である。
図9】ガイド機構の断面図(図7におけるA-A矢視図)である。
図10】別のガイド機構の断面図(図7におけるB-B矢視図)である。
図11】従動部の概略構造を示す平面図である。
図12】トルク付与装置の側断面図である。
図13】スピンドル及びその周辺の構造を示した図である。
図14】路面部の横断面図である。
図15】路面部の変形例の横断面図である。
図16】路面部の荷重検出部付近の平面図である。
図17】路面部の荷重検出部付近の側面図である。
図18】荷重検出部の正面図である。
図19】荷重検出部の側面図である。
図20】荷重検出部の平面図である。
図21】荷重検出部の可動部を取り外した状態を示す平面図である。
図22図18における領域Eの拡大図である。
図23】タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する手順を表すフローチャート。
図24】荷重プロファイル計算の手順を表すフローチャートである。
図25】荷重検出モジュール及び試験輪の回転軸の配置関係を示す平面図である。
図26】荷重プロファイルの表示例である。
図27】制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する事項には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。また、各図において、符号が共通する事項が複数表示される場合は、必ずしもそれらの複数の表示の全てに符号を付さず、それらの複数の表示の一部について符号の付与を適宜省略する。
【0018】
図1~3は、順に、本発明の一実施形態に係るタイヤ試験装置1の正面図、左側面図及び平面図である。また、図4~6は、順に、後述するキャリッジ20及びその周辺の構造を示した正面図、左側面図及び平面図である。なお、図4~6においては、説明の便宜上、構成の一部を省略し又は断面で示している。
【0019】
図2及び図5において、右から左に向かう方向をX軸方向、紙面に垂直に裏から表に向かう方向をY軸方向、下から上に向かう方向をZ軸方向と定義する。X軸方向及びY軸方向は互いに直交する水平方向であり、Z軸方向は鉛直方向である。また、前後、上下、左右の各方向を、キャリッジ20の走行方向(X軸正方向)を向いたときの各方向として定義する。すなわち、X軸正方向を前、X軸負方向を後ろ、Y軸正方向を左、Y軸負方向を右、Z軸正方向を上、Z軸負方向を下という。
【0020】
タイヤ試験装置1は、X軸方向に細長い軌道部10及び路面部60と、軌道部10上をX軸方向に走行可能なキャリッジ20を備えている。図3に示されるように、軌道部10の左部分には、軌道部10のX軸方向における略全長に渡って延びる細長いスペースSp1が設けられている。このスペースSp1に路面部60が収容されている。路面部60の上面には、キャリッジ20に装着された試験タイヤTが接地する路面63aが設けられている。本実施形態においては、試験条件に応じて路面部60を交換できるように、軌道部10と路面部60とが分離している。なお、軌道部10のベースフレーム11(以下「ベース11」と略記する。)と路面部60のフレーム61とを一体化してもよい。
【0021】
図2に示されるように、キャリッジ20には、試験輪W(試験タイヤTが装着されたホイールリムWr)が取り付けられる。試験の際は、試験輪Wが路面63aに接地した状態でキャリッジ20が走行し、試験タイヤTが路面63a上を転動する。
【0022】
図3及び図4に示されるように、軌道部10は、キャリッジ20のX軸方向への移動を案内する複数(本実施形態では三つ)のガイド機構13A、13B及び13Cと、キャリッジ20を駆動する機械的動力を発生する一つ以上の駆動部14(図3)を備えている。駆動部14は、キャリッジ20及び試験輪Wの駆動に使用される動力を発生する第1の動力発生手段としての役割を有している。本実施形態では、二対の駆動部14(左側の一対の駆動部14LA及び14LBと右側の一対の駆動部14RA及び14RB)が、軌道部10のベース11上の四隅付近に設置されている。駆動部14LA及び14RAは軌道部10の後端部に配置され、駆動部14LB及び14RBは軌道部10の前端部に配置されている。
【0023】
図6に示されるように、各駆動部14は、サーボモーター141と、サーボモーター141の出力の回転数を減速するオプションの減速機142を備えている。後述するように、右側の駆動部14RA及び14RBは、キャリッジ20を駆動して走行させるキャリッジ駆動手段としての役割と、キャリッジ20の走行速度に対応する回転数の回転運動を試験輪Wに供給する回転運動供給手段としての役割を兼ね備えている。左側の駆動部14LA及び14LBは、キャリッジ駆動手段としての役割を有している。
【0024】
本実施形態では、サーボモーター141には、回転部の慣性モーメントが0.01kg・m以下(より好適には、0.008kg・m以下)、定格出力が3kW乃至60kW(より実用的には、7kW乃至37kW)の超低慣性高出力型のACサーボモーターが使用される。
【0025】
また、タイヤ試験装置1は、左右に各一組のベルト機構50(50L、50R)を備えている。ベルト機構50は、駆動部14が発生する動力をキャリッジ20に伝達して、キャリッジ20をX軸方向に駆動する。各ベルト機構50は、歯付ベルト51と、一対の駆動プーリー52(52A、52B)を備えている。駆動プーリー52は、歯付ベルト51と噛み合う歯付プーリーである。
【0026】
歯付ベルト51は、鋼線の心線を有している。なお、歯付ベルト51には、例えば炭素繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維などの所謂スーパー繊維から形成された心線を有するものを使用してもよい。カーボン心線などの軽量かつ高強度の心線を使用することにより、比較的に出力の低いモーターを使用してキャリッジ20を高い加速度で駆動する(あるいは、試験輪Wに高い駆動力/制動力を与える)ことが可能になり、タイヤ試験装置1の小型化が可能になる。また、同じ出力のモーターを使用する場合、所謂スーパー繊維から形成された心線を有する軽量の歯付ベルト51を使用することにより、タイヤ試験装置1の高性能化が可能になる。
【0027】
右側のベルト機構50Rは、キャリッジ20を駆動して走行させるキャリッジ駆動手段としての役割と、回転運動供給手段(駆動部14RA、14RB)から供給された動力を後述する二次動力伝達部に伝達する一次動力伝達部としての役割を兼ね備えている。左側のベルト機構50Lは、キャリッジ駆動手段としての役割を有している。
【0028】
なお、以下の説明において、左右に一対が設けられた構成については、原則として左側の構成について説明し、右側の構成については、角括弧で囲って併記し、重複する説明を省略する。
【0029】
左側[右側]のベルト機構50L[50R]の歯付ベルト51は、一対の駆動プーリー52(52A、52B)と、後述する左側[右側]の従動部22L[22R]の3個の従動プーリー225(225A、225B、225C)に巻き掛けられている。一対の駆動プーリー52A、52Bは、左側[右側]の一対の駆動部14LA、14LB[14RA、14RB]の出力軸にそれぞれ結合している。
【0030】
また、図5に示されるように、各歯付ベルト51の両端部は、それぞれベルトクランプ54(54A、54B)によりキャリッジ20のメインフレーム21に固定され、各歯付ベルト51はキャリッジ20を介してループを形成している。ベルト機構50の一対の駆動プーリー52A、52B(図2)は、キャリッジ20が走行可能な領域を間に挟んで配置され、ベース11上に保持された(すなわち、重心位置がベース11に対して固定された)固定プーリーである。従動プーリー225(図5)は、キャリッジ20に保持され、キャリッジ20と共にX軸方向に移動可能な可動プーリーである。
【0031】
本実施形態では、一対の駆動部14LA、14LB[14RA、14RB]は同位相で駆動される。駆動プーリー52と従動プーリー225の有効径(すなわち、ピッチ円直径)又は歯数は、いずれも同一である。また、左側の駆動部14LA、14LBと右側の駆動部14RA、14RBは、左右逆向きに設置されていて、互いに逆位相で駆動される。駆動部14LA及び14LB[14RA及び14RB]により歯付ベルト51L[51R]を駆動すると、キャリッジ20は、歯付ベルト51L[51R]に引っ張られて、X軸方向に駆動される。
【0032】
次に、ガイド機構13(13A、13B、13C)について説明する。
図7は、3つのガイド機構13A、13B、13Cの配置を示す図である。
図8は、ガイド機構13Aのランナー132A付近を拡大した側面図である。
図9は、ガイド機構13Aの横断面図(図7におけるA-A矢視図)である。
【0033】
なお、ガイド機構13Cは、ガイド機構13Aと左右対称に(すなわち、Z軸及びX軸と平行な平面に対して対称に)構成されたものであるため、両者を代表してガイド機構13Aについて詳細に説明し、ガイド機構13Cについては重複する説明を省略する。
【0034】
各ガイド機構13A、13B及び13Cは、X軸方向に延びる軌道を形成する1本のレール131と、レール131上を走行可能な一つ以上(本実施形態では一つ)のキャリッジ(以下「ランナー」という。)132A、132B又は132Cを備えている。
【0035】
レール131は、軌道部10のベース11の上面に敷設されている。二つのガイド機構13A及び13Bのレール131は、スペースSp1(図3)の左右両端に沿って配置され、残りのガイド機構13Cのレール131は、ベース11の右端に沿って配置され、それぞれベース11に取り付けられている。また、各ランナー132A、132B及び132Cは、キャリッジ20のメインフレーム21の下面に取り付けられている。
【0036】
図8及び図9に示されるように、ガイド機構13Aのランナー132Aは、キャリッジ20のメインフレーム21の下面に取り付けられたX軸方向に長いフレーム133と複数組(本実施形態では20組)のローラー組立品135a、135b及び135cを備えている。本実施形態のガイド機構13Aにおいては、三つのローラー組立品135a、135b及び135cによって一組のユニットが構成される。
【0037】
ローラー組立品135a、135b及び135cの複数の組は、レール131の長さ方向に所定の間隔で並べられ、フレーム133に保持されている。なお、ローラー組立品135b及び135cは、ローラー組立品135aと同じ構成を有している(但し、ローラー組立品135cはローラー組立品135aとは大きさが異なる。)ため、これらを代表してローラー組立品135aについて説明し、ローラー組立品135b及び135cについての重複する説明は省略する。
【0038】
図9に示されるように、フレーム133には、各ローラー組立品135a、135b及び135cを支持するロッド134a、134b及び134cが、それぞれ複数取り付けられている。
【0039】
ローラー組立品135aは、レール131上を転動するローラー136aと、ローラー136aを回転可能に支持する一対の軸受137aを備えている。軸受137aは、ボールやころ等の転動体を有するころがり軸受であり、本実施形態では玉軸受が使用されている。ローラー136aの外周面136apには、回転軸方向にも(すなわち、図9に示される回転軸を含む縦断面においても)曲率が与えられている。ローラー136aの外周面136apは、例えば、ローラー136aの中心点136agを中心とする球面に形成されている。
【0040】
ローラー組立品135aの軸受137aは、例えば単列のラジアル軸受である。軸受137aは、ロッド134aと嵌合した内輪137a1と、ローラー136aの内周面と嵌合した外輪137a3と、内輪137a1と外輪137a3との間に介在する複数の転動体であるボール137a2を備えている。ボール137a2は、内輪137a1の外周面及び外輪137a3の内周面にそれぞれ形成された円環状溝の対によって定まる円軌道上を転動する。
【0041】
レール131は、頭部131hと、頭部131hよりも幅の広い底部131fと、頭部131hと底部131fとを連結する幅の狭い腹部131wを有する平底レールである。本実施形態のレール131は、例えば日本工業規格JIS E 1120:2007に準拠する熱処理レール(例えば、熱処理レール 50N-HH340)に追加工が施されたものである。熱処理レールは、頭部に熱処理を施して、耐摩耗性を向上させた鉄道用レールである。
【0042】
ローラー組立品135aは、外周面136apがレール131の頭部上面131aに接触して、レール131の長さ方向(すなわち、X軸方向)に転動するように配置されている。ローラー組立品135bは、外周面136bpがレール131の頭部下面131bの一方に接触して、レール131の長さ方向に転動するように配置されている。また、ローラー組立品135cは、外周面136cpがレール131の頭部側面131cの一方に接触して、レール131の長さ方向に転動するように配置されている。
【0043】
レール131は、頭部上面131a、左右の頭部下面131b及び左右の頭部側面131cが、少なくとも各ローラー組立品135a、135b又は135cと接触する箇所において、面精度を高める追加工(例えば、研削加工や研磨加工等)が施されている。
【0044】
上述したように、キャリッジ20の左右両端部にそれぞれ取り付けられたガイド機構13Aとガイド機構13Cとは、左右対称に構成されている。すなわち、ガイド機構13Cは、ガイド機構13Aと同一のものを左右逆向きに(すなわち、鉛直軸周りに180度回転させて)配置したものである。
【0045】
図10は、ガイド機構13Bの横断面図(図7におけるB-B矢視図)である。ガイド機構13Bのランナー132Bは、上述したガイド機構13Aのランナー132Aからローラー組立品135c及びロッド134cを省き、左右逆向きに配置したものである。
【0046】
なお、ランナー132A及びランナー132Cの少なくとも一方からローラー組立品135c及びロッド134cを省いても良い。但し、キャリッジ20を左右方向に位置決めするために、各ランナー132A、132B、132Cのうちの少なくとも二つ(但し、互いに左右逆向きに配置されたもの。)について、ローラー組立品135b及びローラー組立品135cの少なくとも一方が設けられる。また、ランナー132Bにローラー組立品135c及びロッド134cを設けても良い。
【0047】
本実施形態では、ランナー132B(図10)がランナー132A(図9)と左右逆向きに配置されているが、ランナー132Bをランナー132Aと左右同じ向きに配置してもよい。同様に、ランナー132Cとランナー132Aを左右同じ向きに配置してもよい。但し、ランナー132A、ランナー132B及びランナー132Cのいずれか二つが左右逆向きに配置(すなわち、レール131に対してローラー組立品135bが左右逆側に配置)される。
【0048】
ガイド機構13のレール131は、複数の短いレールを接続することにより、長尺にすることができる。その場合、図7に示されるように、レール131の継目131jは、レール131の長さ方向(X軸方向)に対して垂直ではなく、平面視において斜めに(すなわち、ZX平面に対して角度θだけ傾けて)形成してもよい。継目131jを斜めに形成することにより、温度変化によりレール131の伸縮が生じても、継目131jでのスライドによりレール131のひずみが解放されるため、レール131の湾曲が防止される。
【0049】
斜めの継目131jを形成する場合、継目131jよりも前方において頭部側面131cが継目131jと鈍角を成す側(すなわち、ガイド機構13Aにおいては左側であり、ガイド機構13B及び13Cにおいては右側)にローラー組立品135b及び135c(図9)が配置される。ローラー組立品135b及び135cをこのように配置することにより、レール131の継目131jにずれが生じても、ローラー組立品135b及び135cが継目131jの鋭角な端部と衝突して、大きな衝撃や損傷が発生することが防止される。
【0050】
なお、本実施形態では、レール131の継目131jにおいて、接続される二つのレールの端面同士が単に突き合わせられているのみで接合されていないが、溶接又は鑞付け等により継目131jにおいてレールを接合してもよい。また、継目131jにおいて、接続する二つのレールの端面同士を接触させてもよく、また端面間に所定の隙間を設けて非接触に突き合わせてもよい。
【0051】
なお、本実施形態のガイド機構13A、13B及び13Cに代えて、玉循環リニア軸受等のリニア軸受(所謂リニアガイドウェイ)を使用することもできる。玉循環リニア軸受は、平行な二つの直線軌道の隣接する端同士をそれぞれ半円軌道で連結した長円形の軌道を有している。このような直線軌道を有するリニア軸受を高速で(例えば、10km/h以上の速度で)走行させると、転動体が直線軌道から曲線軌道に移行する際に、転動体に急激に向心力が作用する(すなわち、転動体及び曲線軌道の転動面に衝撃荷重が加わる)ため、転動体及び転動面に永久変形が生じて、性能が劣化する。そのため、キャリッジ20を10km/h以上の速度で走行させると、リニア軸受の寿命が短くなる又は破損するという問題がある。
【0052】
本実施形態のガイド機構13A、13B及び13Cにおいて使用される軸受137a~cは、転動体が常に一定の曲率の円軌道上を走行するため、転動体に作用する向心力の急激な変動(すなわち衝撃荷重)が発生しない。そのため、例えば60km/hを超える早い周速でローラー136a~cを回転させても、軸受137a~cの寿命の低下や破損は発生しない。従って、転動体の軌道の曲率が一定である円軌道を有するころがり軸受を使用してガイド機構13A~Cを構成することにより、キャリッジ20の高速走行(例えば10km/h以上の速度での走行)が可能になる。本実施形態のタイヤ試験装置1は、上述したガイド機構13A、13B及び13Cを採用したことにより、85km/hを超える速度でのキャリッジ20の走行が可能になっている。
【0053】
図6に示されるように、キャリッジ20は、メインフレーム21と、ベルト機構50L及び50Rにそれぞれ接続された左右一対の従動部22L及び22Rと、試験タイヤTが装着された試験輪Wを回転可能に保持するスピンドル部28(図4)と、路面63aに対する試験輪Wのアライメント及び荷重を調整可能なアライメント部40と、スピンドル部28のスピンドル280(図13)を回転駆動するスピンドル駆動機構20Dを備えている。なお、スピンドル280は、試験輪Wが取り付けられる車軸である。
【0054】
図11は、右側の従動部22Rの概略構造を示す平面図である。従動部22Rは、フレーム221、4組の軸受222、4本のシャフト223(223A、223B、223C、223D)、一対のギヤ224及び3個の従動プーリー225(225A、225B、225C)を備えている。フレーム221にはY軸方向に延びる四つの貫通穴が開けられている。シャフト223A~Dは、それぞれ各貫通穴に嵌め込まれた1組の軸受222によって回転可能に支持されている。なお、本実施形態では、シャフト223A~Dがそれぞれ一対の軸受222によって支持されているが、一つ又は三つ以上の複数の軸受222によって各シャフト223A~Dを支持する構成としてもよい。
【0055】
X軸方向中央上段のシャフト223Bには互いに噛み合う一対のギヤ224の一方が結合し、X軸方向中央下段のシャフト223Dには一対のギヤ224の他方が結合している。一対のギヤ224を介して、上段のシャフト223Bの回転が下段のシャフト223Dに伝達される。
【0056】
フレーム221の一面(走行方向に向かって右側の側面)から突き出たシャフト223A~Cの一端部には、従動プーリー225A~Cがそれぞれ取り付けられている。従動プーリー225A~Cは、それぞれベルト機構50Rの歯付ベルト51と噛み合う歯付プーリーである。シャフト223Dの一端部は、フレーム221の他面(走行方向に向かって左側の側面)から突き出ている。シャフト223Dの一端部には、後述するベルト機構23の駆動プーリー231が取り付けられている。すなわち、右側の従動部22R(具体的には、従動プーリー225B、シャフト223B、一対のギヤ224及びシャフト223D)を介して、右側のベルト機構50Rとベルト機構23とが連結されている。
【0057】
図5において矢印で示されるように、ベルト機構50の歯付ベルト51は、駆動プーリー52A、52Bによって折り返されることにより、上側の部分51aと下側の部分51bとに分かれている。上側の部分51aと下側の部分51bは、それぞれキャリッジ20の走行方向に張られて、互いに逆向きに駆動される。具体的には、キャリッジ20に固定された歯付ベルト51の下側の部分51bが、キャリッジ20と共にキャリッジの走行方向に駆動され、上側の部分51aがキャリッジ20及び下側の部分51bと逆向きに駆動される。また、キャリッジ20に取り付けられた従動プーリー225は、キャリッジ20と逆向きに走行する歯付ベルト51の上側の部分51aに巻き掛けられて、上側の部分51aによって駆動される。
【0058】
ベルト機構50から右側の従動部22Rに与えられた動力は、図6に示されるベルト機構23、トルク付与装置30、ベルト機構24、スライド式等速ジョイント25及びスピンドル部28から構成された二次動力伝達部により試験輪Wに伝達され、試験輪Wの駆動に使用される。上記のように構成されたベルト機構50及び従動部22Rにより、歯付ベルト51によるキャリッジ20と試験輪Wの両方の駆動が可能になっている。
【0059】
なお、左側の従動部22Lも上述した右側の従動部22Rと同様に構成されているが、右側の従動部22Rとは左右対称に構成されている。また、左側の従動部22Lは、ベルト機構50Rによって伝達される動力の一部を取り出してキャリッジ20に設けられた二次動力伝達部に伝達するための構成(具体的には、シャフト223D、シャフト223Dを支持する一組の軸受222及び一対のギヤ224)を備えていない点において、右側の従動部22Rと異なっている。なお、左側の従動部22Lは必須の構成要素ではないが、左側の従動部22Lを設けることにより、キャリッジ20が左右のベルト機構50L、50Rから受ける力が釣り合い、キャリッジ20の走行が安定化する。
【0060】
上記のように、本実施形態では、共通の動力伝達装置(すなわち、ベルト機構50R)によって伝達された動力を使用してキャリッジ20及び試験輪Wを駆動する構成が採用されている。この構成により、キャリッジ20の走行速度によらず、常にキャリッジ20の走行速度に対応した周速(回転数)で試験輪Wを回転駆動させることが可能になっている。また、本実施形態では、トルク付与装置30の作動量(つまりは、消費電力)を減らすために、トルク付与装置30が作動していないときには、キャリッジ20の走行速度と略同じ周速で試験輪Wが回転駆動されるように構成されている。
【0061】
図6に示されるように、スピンドル駆動機構20Dは、ベルト機構23、トルク付与装置30、ベルト機構24及びスライド式等速ジョイント25を備えている。右側のベルト機構50Rから右側の従動部22R(図11)の従動プーリー225B、シャフト223B、一対のギヤ224及びシャフト223Dを介してベルト機構23に伝達された動力は、トルク付与装置30、ベルト機構24及びスライド式等速ジョイント25を介して、スピンドル部28(図4)に伝達され、スピンドル部28に取り付けられた試験輪Wを回転駆動する。すなわち、右側の駆動部14RA、14RBが発生した動力は、一部がキャリッジ20の駆動に使用され、別の一部が試験輪Wの回転駆動に使用される。すなわち、右側のベルト機構50Rは、キャリッジ20を駆動する手段(キャリッジ駆動手段)の一部を構成すると共に、試験輪Wを駆動する手段(試験輪駆動手段)の一部も構成する。また、右側のベルト機構50Rは、右側の従動部22Rと共に、駆動部14RA、14RBが発生した動力をキャリッジ20の駆動に使用する動力と試験輪Wの駆動に使用する動力とに分配する手段(動力分配手段)として機能する。
【0062】
図12は、トルク付与装置30の側断面図である。トルク付与装置30は、試験輪Wに加えるトルクを発生して、このトルクをベルト機構23によって伝達された回転運動に重ねて出力する。言い換えれば、トルク付与装置30は、ベルト機構23により伝達された回転運動の位相を変化させることにより、試験輪Wにトルクを付与する(すなわち、路面63aと試験輪Wとの間に駆動力又は制動力を与える)ことができる。
【0063】
トルク付与装置30は、試験輪Wを回転駆動する動力を発生する第2の動力発生手段として機能すると共に、駆動部14(動力発生手段)のサーボモーター141(第1のモーター)が発生した動力とトルク付与装置30の後述するサーボモーター32(第2のモーター)が発生した動力とを結合する動力結合手段としても機能する。
【0064】
スピンドル駆動機構20Dにトルク付与装置30を組み込むことにより、回転数を制御するための動力源(駆動部14RA、14RB)とトルクを制御するための動力源(後述するサーボモーター32)とで役割を分担することが可能になる。そして、これにより、より小容量の動力源を使用することが可能になると共に、試験輪Wに加わる回転数及びトルクをより高い精度で制御することが可能になる。また、トルク付与装置30をキャリッジ20に組み込むことにより、ベルト機構50Rに加わる負荷が低減するため、ベルト機構50Rの小型化(例えば、使用する歯付ベルトの本数の削減)や、より耐荷重の低い部材の使用が可能になる。
【0065】
トルク付与装置30は、ハウジング31と、ハウジング31内に設置されたサーボモーター32、オプションの減速機33及びシャフト34と、ハウジング31を回転可能に支持する二つの軸受部35及び36と、スリップリング部37と、スリップリング部37を支持する支柱38と、ハウジング31の回転数を検出するロータリーエンコーダー39を備えている。
【0066】
本実施形態においては、サーボモーター32には、回転部の慣性モーメントが0.01kg・m以下(より好適には、0.008kg・m以下)、定格出力が3kW乃至60kW(より実用的には、7kW乃至37kW)の超低慣性高出力型のACサーボモーターが使用されている。
【0067】
ハウジング31は、直径が大きな略円筒状のモーター収容部311及びキャップ部312と、モーター収容部311よりも直径が小さな略円筒状の一対の軸部313及び314を有している。モーター収容部311の一端部(図12における左端部)には、軸部313が同軸に(すなわち、中心線を共有するように)結合している。また、モーター収容部311の他端部(図12における右端部)には、キャップ部312を介して、軸部314が同軸に結合している。軸部313は軸受部36により回転可能に支持され、軸部314は軸受部35により回転可能に支持されている。
【0068】
軸部314の先端部にはフランジ314aが形成されていて、このフランジ314aにベルト機構23の従動プーリー232が同軸に結合している。また、ベルト機構23の歯付ベルト233が、従動プーリー232と駆動プーリー231(図11)とに巻き掛けられている。ベルト機構23によってハウジング31が回転駆動される。
【0069】
軸部314の内周には軸受315が設けられている。シャフト34は、軸部314の中空部に通され、軸受315によって回転可能に支持されている。シャフト34は、軸部314及び従動プーリー232を貫通している。シャフト34の一端部は、キャップ部312内に突出している。また、従動プーリー232の孔232aを貫通したシャフト34の他端部には、ベルト機構24の駆動プーリー241が同軸に結合している。駆動プーリー241には、歯付ベルト243が巻き掛けられている。
【0070】
モーター収容部311の中空部にはサーボモーター32が収容されている。サーボモーター32は、軸321がモーター収容部311(すなわち、ハウジング31の回転軸)と同軸に配置され、モーターケース320(すなわちステーター)が複数のスタッドボルト323によりモーター収容部311に固定されている。サーボモーター32のフランジ322は、連結筒324を介して、減速機33のギヤケース331と結合している。また、減速機33のギヤケース331は、キャップ部312の内フランジ312aに固定されている。
【0071】
サーボモーター32の軸321は、減速機33の入力軸332と接続されている。また、減速機33の出力軸333にはシャフト34が接続されている。サーボモーター32から出力されるトルクは、減速機33によって増幅されて、シャフト34に伝達される。シャフト34からベルト機構24に出力される回転は、ベルト機構23によって駆動されるハウジング31の回転に、サーボモーター32及び減速機33によって作り出されるトルクを重ね合わせたものとなる。すなわち、ハウジング31の軸部314はトルク付与装置30の入力軸であり、シャフト34はトルク付与装置30の出力軸である。トルク付与装置30は、入力軸に伝達された回転運動に、トルク付与装置30が発生したトルクを重ねて、出力軸から出力する。
【0072】
スリップリング部37は、複数対のスリップリング37aとブラシ37b、支持フレーム37c及び連結管37dを備えている。複数のスリップリング37aは、互いに離隔して、連結管37dの外周に嵌め込まれて固定されている。
【0073】
連結管37dは、ハウジング31の軸部313と同軸に結合している。また、対応するスリップリング37aの外周面と接触するブラシ37bは、支柱38に取り付けられた支持フレーム37cによって支持されている。サーボモーター32のケーブル325は、軸部313の中空部を通され、スリップリング37aに接続されている。また、ブラシ37bはサーボアンプ32a(図27)に接続されている。すなわち、サーボモーター32とサーボアンプ32aとは、スリップリング部37を介して接続されている。
【0074】
図4及び図6に示されるように、ベルト機構24の歯付ベルト243が巻き掛けられた従動プーリー242は、軸受部262により回転可能に支持されたシャフト261の一端部と同軸に結合している。シャフト261の他端部はスライド式等速ジョイント25の一端に接続されている。また、スライド式等速ジョイント25の他端部は、シャフト263(図13)を介してスピンドル280(図13)と連結している。スライド式等速ジョイント25は、作動角(すなわち、入力軸と出力軸とのなす角度)によらず、回転変動無くスムーズに回転を伝達可能に構成されている。また、スライド式等速ジョイント25は、軸方向の長さ(伝達距離)も可変である。
【0075】
スピンドル部28は、その角度及び位置が可変に、アライメント部40によって支持されている。スピンドル280(図13)と軸受部262に保持されたシャフト261とをスライド式等速ジョイント25を介して連結することにより、スピンドル280の角度や位置が変化しても、この変化にスライド式等速ジョイント25が柔軟に追従する。そのため、スピンドル280やシャフト261、263(図13)に大きなひずみが加わらず、回転が速度を変えずにスピンドル280へスムーズに伝達される。
【0076】
図5に示されるように、アライメント部40は、一対の旋回フレーム41、一対の曲線ガイドウェイ42(以下「曲線ガイド」と略記する。)、スライドフレーム44及び二対のリニアガイド43を備えている。
【0077】
各旋回フレーム41は、曲線ガイド42を介して、キャリッジ20のメインフレーム21上に載置されている。曲線ガイド42は、メインフレーム21の上面に取り付けられた円弧状のレール421と、レール421上を走行可能な複数(本実施形態では二つ)のキャリッジ422(以下「ランナー422」という。)を備えている。ランナー422は、旋回フレーム41の底面に取り付けられている。一対の曲線ガイド42及び一対の旋回フレーム41は、それぞれ試験輪Wの中心Cを通る鉛直線Vを挟んで、前後に対向して配置されている。また、各曲線ガイド42の曲率中心は、鉛直線V上にある。すなわち、各旋回フレーム41は、曲線ガイド42により、鉛直線Vを中心に旋回可能に支持されている。
【0078】
図4に示されるように、スライドフレーム44は、上から順に、柱部441、連結部442及びフォーク443を有している。柱部441(すなわち、スライドフレーム44の上部)は、その中心線が鉛直線Vと一致するように縦に配置されている。柱部441は、一対の旋回フレーム41の間に配置され、各旋回フレーム41とそれぞれ二対のリニアガイド43を介して上下にスライド可能に連結されている。リニアガイド43は、柱部441の旋回フレーム41と対向する側面441aに取り付けられたレール431と、レール431上を走行可能な複数(本実施形態では二つ)のキャリッジ432(以下「ランナー432」という。)を備えている。ランナー432は、旋回フレーム41の柱部441と対向する側面41aに取り付けられている。
【0079】
フォーク443(すなわち、スライドフレーム44の下部)は、試験輪Wと接触しないように、鉛直線Vから右側(回転軸Ay方向)に後退している。連結部442は、Y軸方向に延び、柱部441の下端部とフォーク443の上端部とを連結している。したがって、スライドフレーム44は、X軸方向から見て、略クランク状に形成されている。
【0080】
図5に示されるように、フォーク443の下部は、前後に分岐している。フォーク443の二つに分岐した下端部には、それぞれ軸受443aが互いに同軸に設けられている。
【0081】
図13は、スピンドル部28及びその周辺を示した図である。スピンドル部28は、スピンドル280の中心軸(回転軸Ay)を左右に向けて、フォーク443の下端部に設けられた一対の軸受443a(図5)の間に配置されている。そして、スピンドル部28は、一対の軸受443aにより、前後に延びる回転軸Cxの周りに回転可能に支持されている。なお、スピンドル280の回転軸Ayやスピンドルケース284の回転軸Cxの方向は、それぞれスピンドル280のアライメントによって変化し、Y軸方向やX軸方向とは必ずしも一致しない。
【0082】
スピンドル部28は、スピンドル280と、スピンドル280を回転可能に支持するスピンドルケース284を備えている。スピンドル280は、試験輪Wが取り付けられ、試験輪Wと一体に回転する車軸である。スピンドル280は、胴部281、6分力センサー282及びハブ283を備えている。胴部281は、円柱状の軸である。6分力センサー282は、胴部281の先端部に同軸に取り付けられた略円柱状の部材であり、6分力(直交3軸方向の力及び各軸回りのトルク)を検出可能な圧電式の力センサーである。また、ハブ283は、試験輪Wを取り付けるための部材であり、6分力センサー282の先端に同軸に取り付けられている。胴部281、6分力センサー282及びハブ283は、一体に結合して、スピンドル280を形成している。6分力センサー282には、ハブ283を介して試験輪Wが一体に取り付けられるため、6分力センサー282の検出結果から試験輪Wに加わる力を計算することができる。また、6分力センサー282は試験輪Wの中心付近に配置されているため、6分力センサー282の検出結果を試験輪Wに加わる6分力の近似値として使用することもできる。
【0083】
スピンドルケース284は、スピンドル280を収容して回転可能に保持する略円筒状の部材である。スピンドルケース284の内周には、軸受285及び一対の軸受286が取り付けられている。スピンドル280は、軸受285及び軸受286によって、回転可能に支持されている。
【0084】
スピンドルケース284の前後の側面には、フォーク443の一対の軸受443a(図5)とそれぞれ回転可能に嵌合する一対の旋回軸287が取り付けられている。すなわち、スピンドル部28は、一対の軸受443aによって、回転軸Cxを中心に回転可能に支持されている。
【0085】
図4に示されるように、アライメント部40は、荷重調整部45、スリップ角調整部46及びキャンバー調整部47を備えている。荷重調整部45は、試験輪Wに加わる荷重を調整するユニットである。スリップ角調整部46は、アライメント部40(直接には旋回フレーム41)を鉛直線Vの周りに回転移動させて、試験輪Wのスリップ角を調整するユニットである。キャンバー調整部47は、スピンドル部28を回転軸Cx(図13)の周りに回転移動させて、試験輪Wのキャンバー角を調整するユニットである。
【0086】
荷重調整部45は、サーボモーター451、運動変換器452及びブラケット453を備えている。また、上述したリニアガイド43も荷重調整部45を構成する要素の一つである。サーボモーター451は、キャリッジ20のメインフレーム21に取り付けられている。運動変換器452は、サーボモーター451の回転運動を、鉛直に立てられた可動子452aの上下の直線運動に変換する装置である。運動変換器452には、例えば、ラックアンドピニオン機構、かさ歯車等の交差軸と送りねじとを組み合わせた機構又はウォームギヤやねじ歯車等の食い違い軸と送りねじとを組み合わせた機構等が使用される。ブラケット453は、運動変換器452の可動子452aの直下に配置され、座面453aを上に向けて、スライドフレーム44の柱部441の側面に取り付けられている。
【0087】
サーボモーター451を駆動して運動変換器452の可動子452aを降下させると、可動子452aの下端部がブラケット453の座面453aに当たる。さらにサーボモーター451を駆動すると、可動子452aによってブラケット453を介してスライドフレーム44が鉛直下向きに押される。これにより、アライメント部40に保持された試験輪Wが路面63aに押し付けられて、試験タイヤTと路面63aとの間に、可動子452aの高さ(すなわち、Z軸方向における位置)に応じた荷重が加えられる。試験輪Wに加わる荷重は、スピンドル部28の6分力センサー282(図13)によって検出される。そして、荷重の検出結果が荷重の設定値と一致するようにサーボモーター451の駆動が制御される。
【0088】
図6に示されるように、荷重調整部45の一部は、一対の旋回フレーム41とスライドフレーム44の柱部441とで囲まれたスペースSp2内に配置されている。この構成により、スペースが有効に利用され、キャリッジの小型化が実現されている。
【0089】
図4に示されるように、スリップ角調整部46は、キャリッジ20のメインフレーム21に取り付けられたサーボモーター461と、減速機462と、減速機462の出力軸に結合した駆動歯車463と、駆動歯車463と噛み合う従動歯車464を備えている。駆動歯車463には、例えば平歯車や扇形歯車が使用される。また、従動歯車464は例えば扇形歯車である。なお、スリップ角調整部46のギヤ機構(駆動歯車463、従動歯車464)には、ウォームギヤ、傘歯車又はねじ歯車等を使用してもよい。サーボモーター461、減速機462及び駆動歯車463は、キャリッジ20のメインフレーム21に取り付けられている。また、従動歯車464は、その回転軸が鉛直線Vと一致するように、スライドフレーム44の柱部441の側面に取り付けられている。
【0090】
サーボモーター461の回転は、減速機462により減速されて、駆動歯車463を介して従動歯車464に伝達される。そして、従動歯車464及びスライドフレーム44が、鉛直線Vを中心に回転する。これにより、スピンドル部28を介してスライドフレーム44に支持された試験輪Wも鉛直線Vを中心に回転し、試験輪Wのスリップ角が変化する。
【0091】
図6に示されるように、スリップ角調整部46の一部は、一対の旋回フレーム41とスライドフレーム44の柱部441とで囲まれたスペースSp3内に配置されている。この構成により、スペースが有効に利用され、キャリッジの小型化が実現されている。なお、荷重調整部45が配置されたスペースSp2とスリップ角調整部46が配置されたスペースSp3とは、それぞれ柱部441の左右反対側に設けられた空間である。荷重調整部45とスリップ角調整部46とを異なる空間に設置することにより、組み立てやメンテナンスの効率が向上する。
【0092】
図13に示されるように、キャンバー調整部47は、連結部442の右端部に取り付けられた上部アーム471と、上部アーム471により回転可能に支持されたジョイント472と、ジョイント472が取り付けられた全ねじボルト475(以下「スタッド475」という。)と、スタッド475の一端部に取り付けられたロッドエンド476と、ピン477によりロッドエンド476と回転可能に連結した下部アーム478を備えている。下部アーム478は、その末端部がスピンドルケース284に固定されている。なお、上部アーム471はスライドフレーム44のフォーク443に取り付けてもよい。
【0093】
上部アーム471は、回転軸Ayと平行(すなわち、鉛直線Vから遠ざかる方向)に延びる平板であり、スピンドルケース284の回転軸Cxと垂直に配置されている。上部アーム471の先端部には、回転軸Cxと平行な旋回軸471aが設けられている。
【0094】
ジョイント472は、スタッド475が挿入される貫通穴が形成された略直方体状の部材である。ジョイント472には、上部アーム471の旋回軸471aと回転可能に嵌合する軸受473が設けられている。すなわち、ジョイント472は、スピンドルケース284の回転軸Cxと平行な旋回軸471aを中心に回転可能に支持されている。ジョイント472は、スタッド475に嵌められた一対のナット474で挟み込まれて、スタッド475に固定されている。
【0095】
下部アーム478の先端部は、ピン477により、ロッドエンド476の下端部と連結されている。ロッドエンド476と下部アーム478とを連結するピン477も、スピンドルケース284の回転軸Cxと平行な旋回軸である。すなわち、スライドフレーム44及び上部アーム471(第1リンク)と、スタッド475及びロッドエンド476(第2リンク)と、下部アーム478及びスピンドルケース284(第3リンク)とは、回転軸Cxと平行な三つの旋回軸[旋回軸471a(第1ジョイント)、ピン477(第2ジョイント)及び旋回軸287(第3ジョイント)]を介して、各旋回軸を中心に回転可能に環状に連結され、リンク機構を構成している。
【0096】
スタッド475上のナット474の位置を変えることにより、二つのジョイント(旋回軸471a及びピン477)を結ぶ可変長リンク47Lの長さが変わる。このとき、下部アーム478及びスピンドルケース284が旋回軸287(回転軸Cx)を中心に回転して、スピンドル280及び試験輪Wの回転軸Ayの路面63aに対する傾きが変わる。したがって、スタッド475上のナット474の位置を変えて可変長リンク47Lを伸縮させることにより、キャンバーを調整することができる。可変長リンク47Lを伸ばすとマイナス側にキャンバーが変わり、可変長リンク47Lを縮めるとプラス側にキャンバーが変わる。
【0097】
タイヤ試験装置1は、スピンドル280の回転を減速可能なブレーキシステム27(以下「ブレーキ27」と略記する。)を備えている。ブレーキ27は、後述するアタッチメント273を介してスピンドル280に取り付けられたディスクローター271と、下部アーム478に取り付けられたキャリパー272と、キャリパー272に油圧を供給する油圧供給装置276(図27)を備えている。
【0098】
油圧供給装置276は、後述する制御部72からの指令に基づいて所定圧の油圧を発生して、キャリパー272に油圧を供給する。油圧供給装置276は、サーボモーター276bと、サーボモーター276bが出力する回転運動を直線運動に変換する運動変換器276cと、運動変換器276cが出力する直線運動によって駆動されるブレーキマスターシリンダー276dと、制御部72からの指令に基づいてサーボモーター276bに供給される駆動電流を生成するサーボアンプ276aを備えている。
【0099】
スピンドル280は、アタッチメント273、ディスクローター271及びシャフト263を介して、スピンドル駆動機構20D(図6)のスライド式等速ジョイント25に連結されている。
【0100】
下部アーム478は、その中間部分が上方(すなわち、スピンドル280から離れる方向)に後退したクランク状に形成されている。下部アーム478のスピンドル280から離れた中間部分にブレーキ27のキャリパー272がアタッチメント275を介して取り付けられている。
【0101】
アタッチメント273及びシャフト263は、ディスクローター271の形状に合わせて製作された交換可能な小部材である。また、アタッチメント275は、キャリパー272の形状に合わせて製作された、比較的に交換が容易で安価な小部品である。アタッチメント273、275及びシャフト263を使用することにより、ブレーキ27(ディスクローター271、キャリパー272)の種類を変更する際に、比較的に交換コストが高いスピンドル280やスライド式等速ジョイント25を交換する必要がなくなるため、より低コストでブレーキ27の種類を変更することが可能になる。
【0102】
図14は、路面部60の横断面図である。路面部60は、フレーム61と、フレーム61に支持された本体部60aを備えている。本体部60aは、基盤62と、基盤62上に保持された舗装部63を備えている。基盤62の上面には、路面部60の延長方向(すなわち、キャリッジ20の走行方向であるX軸方向)に延びる凹部621が形成されている。舗装部63は、例えば、後述する模擬舗装材料を凹部621に充填して硬化させることにより形成されている。舗装部63の上面には、試験輪Wが接地する路面63aが形成されている。
【0103】
本実施形態では、本体部60aが、路面ユニット(路面63aの少なくとも一部を含む交換可能な構造体)である本体部ユニット600aから構成されていて、フレーム61上に着脱可能に取り付けられている。なお、路面ユニットは、本実施形態のように本体部60aをユニット化した形態(「本体部ユニット」という。)に限らず、舗装部63のみをユニット化した形態(「舗装部ユニット」という。)やフレーム61まで含めた路面部60全体をユニット化した形態(「路面部ユニット」という。)とすることもできる。
【0104】
本実施形態の本体部60aは、本体部60aを路面部60の延長方向において分割した複数の本体部ユニット600aから構成されていて、本体部ユニット600aの単位で交換可能になっている。なお、本体部60aの全体を単一の交換可能な路面ユニットとして形成してもよい。
【0105】
本実施形態のように、路面部60を本体部ユニット600a等の路面ユニットから構成することにより、路面ユニットを交換することによって、路面63aの少なくとも一部を交換することが可能になる。
【0106】
例えば、路面部60の延長方向(X軸方向)における中央部の本体部ユニット600aのみを交換して、中央部のみにおいて舗装部63の種類(例えば材質、構造、表面形状等)を変更することができる。また、本体部ユニット600a毎に舗装部63の種類を変えて、例えば、路面部60の延長方向において路面63aの摩擦係数が変化するようにしてもよい。
【0107】
基盤62の下面には、フレーム61の上面に設けられた凸部612と嵌合する凹部622が設けられている。凸部612と凹部622が嵌合するように本体部ユニット600aをフレーム61の上に載置して、両者をボルトやカムレバー等の固定手段(不図示)により固定することにより、本体部ユニット600aがフレーム61上に着脱可能に取り付けられている。
【0108】
また、本実施形態では、フレーム61も、フレーム61を路面部60の延長方向において分割した複数のフレームユニット610から形成されていて、フレームユニット610の単位で交換可能になっている。
【0109】
また、本実施形態では、フレームユニット610と本体部ユニット600aとは同じ長さに形成されていて、フレームユニット610に本体部ユニット600aを取り付けた路面部ユニット600の単位で交換することもできる。
【0110】
また、本実施形態では舗装部63は基盤62と一体に形成されているが、舗装部63を基盤62に対して着脱可能な構成としてもよい。例えば、舗装部63を路面部60の延長方向において分割した複数の舗装部ユニット630から舗装部63を構成し、舗装部ユニット630の単位で舗装部63を交換可能な構成としてもよい。この場合、舗装部ユニット630と基盤ユニット620とを同じ長さに形成し、基盤ユニット620に舗装部ユニット630を取り付けた複合ユニット(言い換えれば、舗装部63を着脱可能にした本体部ユニット600a)の単位で交換可能にしてもよい。また、フレームユニット610、基盤ユニット620及び舗装部ユニット630を組み立てて路面部ユニット600を製作し、路面部ユニット600の単位で交換可能にしてもよい。
【0111】
また、上述したように、本実施形態では、複数の路面部ユニット600が連結して路面部60を形成している。この構成により、路面部ユニット600の追加又は削除により、路面部60の延長又は短縮が可能となる。また、複数の路面ユニットを同一構造とすることにより、路面部60を効率的に製造することが可能になる。
【0112】
また、本実施形態では、路面部60と同様に、軌道部10も、延長方向において複数の軌道部ユニット100に分割されている。軌道部ユニット100の追加又は削除により、軌道部10の延長又は短縮も可能である。軌道部ユニット100は、路面部ユニット600と同じ長さに形成されている。そのため、軌道部10と路面部60の長さを揃えることができる。また、軌道部ユニット100と路面部ユニット600を一体化した複合ユニットの単位で、路面部60及び軌道部10の延長、短縮又は一部交換が可能な構成としてもよい。
【0113】
本実施形態の路面部60では、舗装部63として、アスファルト舗装道路を模擬した(すなわち、タイヤの摩耗量等のタイヤに与える影響が実際のアスファルト舗装道路と同程度になる)模擬舗装が形成されている。模擬舗装は、例えば炭化ケイ素やアルミナ等の耐摩耗性に優れたセラミックスを粉砕した(必要に応じて、更に研磨やエッチング等の加工を施した)骨材に、例えばウレタン樹脂やエポキシ樹脂等の結合剤(バインダー)を添加した模擬舗装材料を成形して硬化させることによって形成される。このような模擬舗装材料を使用することにより、耐久性に優れ、路面状態が安定した(すなわち試験タイヤTの摩耗量等が安定した)模擬路面が得られる。タイヤの摩耗量は、例えば骨材の粒度や結合剤の添加量等により調整することができる。
【0114】
本実施形態の模擬舗装は単層構造であるが、例えば異なる材料から形成された複数の層が厚さ方向に積層した模擬舗装を使用してもよい。また、例えば骨材の種類や粒度、バインダーの種類や配合量等を調整して、敷石舗装、レンガ舗装又はコンクリート舗装等を模擬した模擬舗装を使用してもよい。
【0115】
また、実際の路面よりもタイヤに与えるダメージが大きく(又は小さく)なるように路面63aを形成してもよい。実際の路面よりもタイヤに与える影響が大きい路面63aを使用することにより、タイヤの加速劣化試験が可能になる。
【0116】
また、舗装部63を実際の舗装材料(例えばアスファルト舗装の表層に使用されるアスファルト混合物)から形成してもよい。また、路面を形成する最表層だけでなく、下層構造まで実際の舗装を再現又は模造した舗装部63を使用してもよい。
【0117】
本実施形態のタイヤ試験装置1は、試験中に路面63aが移動しないため、タイヤの性能に影響を与える異物(例えば、水、雪、泥水、土、砂、砂利、油又はこれらを模擬したもの等)を路面63a上に撒いた状態で試験を行うことができる。例えば、路面63a上に水を撒いた状態で試験を行うことにより、ウェット制動試験を行うことができる。
【0118】
ここで、路面部60の一変形例について説明する。図15は、路面部60の変形例である路面部60Aの横断面図である。路面部60Aは、基盤62に取り付けられた枠部67を備えている。枠部67は、コーキング等により基盤62と水密に接合され、基盤62や舗装部63と共に槽68を形成する。槽68には、タイヤの性能に影響を与える異物(例えば水、砂利、土、落ち葉等)が路面63aを覆うように入れられる。槽68を使用することにより、路面63a上に異物を厚く堆積させることが可能になる。なお、本変形例の枠部67は基盤62の上面に取り付けられているが、基盤62の側面に枠部67を取り付けても良い。また、舗装部63の上面に枠部67を取り付けてもよい。
【0119】
また、路面部60Aは、路面63aの温度を調整可能な温度調整手段64を備えている。本変形例の温度調整手段64は、基盤62に埋め込まれた流路64aと、路面63aの温度を検出する温度センサー64bと、温度調整装置64cを有している(図27)。温度センサー64bは、例えば熱電対やサーミスタ等を使用した接触式の温度センサーや赤外線センサー等の非接触式の温度センサーである。温度調整装置64cは、制御部72に接続され、制御部72からの指令に基づいて路面63aの温度を設定温度に調整する。具体的には、温度調整装置64cは、温度センサー64bの検出結果に基づいて熱媒(例えばオイルや不凍液を含有した水)の温度を調整して、この熱媒を流路64aに送出する。温度調整装置により温度が調整された熱媒を流路64aに流すことにより、路面63aを所定の温度に調整することができる。また、路面63aの温度を安定化させると共に熱の利用効率を高めるために、基盤62の表面は断熱材69によって被覆されている。
【0120】
温度調整手段64は、路面63aの温度を低温(例えば-40℃)から高温(例えば80℃)までの広い範囲で調整することができる。槽68に水を溜めて、路面63aの設定温度を氷点下に設定することにより、凍結路面を形成することができる。すなわち、本変形例の路面部60Aを使用することにより、氷上制動試験を行うことができる。また、槽68に雪を入れた状態で、雪上制動試験を行うことができる。
【0121】
流路64aは、路面63aと平行に基盤62内を等間隔で蛇行するように形成されている。また、基盤62は、延長方向に複数の区画(基盤ユニット620)に区分され、各区画に個別の流路64aが設けられている。この構成により、路面63a全体をより均一な温度に調整することが可能になる。
【0122】
次に、荷重検出部165について説明する。荷重検出部165は、タイヤ踏面に加わる荷重分布を検出可能な構成部分である。
【0123】
図16及び図17は、それぞれ路面部60の荷重検出部165及びその周辺を示した平面図及び左側面図である。また、図18-20は、順に、荷重検出部165の正面図、左側面図及び平面図である。
【0124】
図16及び図17に示されるように、路面部60の本体部60aの上面には、Y軸方向に細長い凹部60pが形成されている。荷重検出部165は、凹部60p内に収容され、凹部60pの底面に固定されている。
【0125】
図18-20に示されるように、荷重検出部165は、固定フレーム1658、可動フレーム1659、一対のリニアガイド1654、センサーアレイユニット1650、移動ユニット1655及びセンサー位置検出部1656を備えている。なお、図18において、リニアガイド1654及び後述する固定フレーム1658のレール支持部1658bの図示が省略されている。可動フレーム1659は、一対のリニアガイド1654によって、Y軸方向(すなわち、路面部60の幅方向)に移動可能に支持されている。センサーアレイユニット1650は、可動フレーム1659の上面に取り付けられている。センサーアレイユニット1650の詳細は後述する。
【0126】
図21は、荷重検出部165の可動部(すなわち、可動フレーム1659及びセンサーアレイユニット1650)を取り外した状態を示した平面図である。
【0127】
図19及び図21に示されるように、固定フレーム1658は、略矩形のベースプレート1658aと、ベースプレート1658aの上面に固定された一対のレール支持部1658bを備えている。一対のレール支持部1658bは、長さ方向をY軸方向に向けて、X軸方向に間隔を空けて並べられている。
【0128】
リニアガイド1654は、Y軸方向に延びるレール1654aと、レール1654a上を走行可能な複数(本実施形態では三つ)のキャリッジ1654b(以下「ランナー1654b」という。)を備えている。レール1654aは、レール支持部1658bの上面に取り付けられている。また、ランナー1654bは、可動フレーム1659の下面に取り付けられている。リニアガイド1654によって、可動フレーム1659のY軸方向の移動が案内される。
【0129】
移動ユニット1655は、一対のレール支持部1658b及びリニアガイド1654の間に配置されている。移動ユニット1655は、サーボモーター1655mとボールねじ機構1655bを備えている。ボールねじ機構1655bは、ボールねじ1655ba、ナット1655bb、軸受部1655bc及び軸受部1655bdを備えている。
【0130】
ボールねじ1655baは、一対の軸受部1655bc及び1655bdによって両端部において回転可能に支持されている。また、ボールねじ1655baの一端は、サーボモーター1655mの軸に接続されている。ボールねじ1655baと噛み合うナット1655bbは、可動フレーム1659の下面に取り付けられている。サーボモーター1655mによってボールねじ1655baを回転させると、ナット1655bbと共に可動フレーム1659及びセンサーアレイユニット1650がY軸方向に移動する。すなわち、サーボモーター1655mの回転駆動により、センサーアレイユニット1650のY軸方向における位置を変更することができる。
【0131】
図21に示されるように、センサー位置検出部1656は、可動アーム1656a、複数(本実施形態では三つ)の近接センサー1656c及びセンサー取付部1656bを備えている。可動アーム1656aは、末端部が可動フレーム1659に固定されていて、可動フレーム1659と共にY軸方向に移動可能である。センサー取付部1656bは、固定フレーム1658に取り付けられている。
【0132】
複数の近接センサー1656cは、検出面1656cfをX軸正方向に向けて、Y軸方向に間隔を空けて(例えば等間隔に)並べられ、センサー取付部1656bに取り付けられている。
【0133】
可動アーム1656aの先端部には、近接センサー1656cに近接する近接部1656apが形成されている。本実施形態では、可動アーム1656aの先端部をクランク状に折り曲げることにより、近接部1656apが形成されている。近接部1656apは、複数の近接センサー1656cの検出面1656cfと同じ高さに配置されている。また、複数の近接センサー1656cの検出面1656cfは、近接部1656apのY軸方向における可動範囲内に間隔を空けて配置されている。
【0134】
図22は、図18において二点鎖線で囲まれた領域Eを拡大した図である。図18及び図22に示されるように、センサーアレイユニット1650は、フレーム1650aと複数(本実施形態では150個)の荷重検出モジュール1650mを備えている。フレーム1650aの上面の中央部には、Y軸方向に長い凹部1650apが形成されている。複数の荷重検出モジュール1650mは、凹部1650ap内に収容され、凹部1650apの底面に固定されている。
【0135】
複数の荷重検出モジュール1650mは、X軸方向及びY軸方向の2方向に格子点状に等間隔に(例えば、略隙間なく)並べられている。本実施形態では、150個の荷重検出モジュール1650mが、X軸方向に5列、Y軸方向に30列に並べられている。
【0136】
荷重検出モジュール1650mは、3分力センサー1651と、舗装部1652と、ボルト1653を備えている。3分力センサー1651は、中心軸がZ軸方向を向いた円柱状の圧電素子である。舗装部1652は、例えば舗装部63と同じ模擬舗装材料又は舗装材料から形成された、X軸方向及びY軸方向の長さが等しい直方体状の部材である。なお、3分力センサー1651及び舗装部1652の形状は、これらの形状に限定されない。例えば、3分力センサー1651の形状は直方体状でもよく、舗装部1652の形状は円柱状でもよい。
【0137】
円柱状の3分力センサー1651の中央には、Z軸方向に貫通する孔1651bが形成されている。また、舗装部1652の中央には、Z軸方向に延びるボルト穴1652bが形成されている。3分力センサー1651の孔1651bに通されて舗装部1652のボルト穴1652bに捻じ込まれたボルト1653によって、荷重検出モジュール1650mは、一体化され、フレーム1650aに固定されている。舗装部1652の上面は、同じ高さで水平に配置されて、路面1652aを形成する。荷重検出モジュール1650mが配列されたX軸及びY軸方向の領域が、センサーアレイユニット1650の検出領域となる。なお、センサーアレイユニット1650の検出領域の幅(すなわち、Y軸方向における長さ)Ly(図20)は、試験タイヤTのトレッド幅よりも十分に広く、試験タイヤTのタイヤ踏面全幅が路面1652aに接地できるようになっている。
【0138】
3分力センサー1651により、各荷重検出モジュール1650mの路面1652aに加わる(すなわち、タイヤ踏面に加わる)以下の3種類の力f、f及びfが検出される。
a)半径方向力f
b)接線力f
c)横力f
【0139】
荷重検出部165を使用することにより、試験タイヤTのタイヤ踏面から路面が受ける力(すなわち、タイヤ踏面に加わる力)の分布及びその時間変化を検出することができる。
【0140】
図27は、タイヤ試験装置1の制御システム1aの概略構成を示すブロック図である。制御システム1aは、装置全体の動作を制御する制御部72、各種計測を行う計測部74及び外部との入出力を行うインターフェース部76を備えている。
【0141】
制御部72には、各駆動部14のサーボモーター141、トルク付与装置30のサーボモーター32、荷重調整部45のサーボモーター451、スリップ角調整部46のサーボモーター461、移動ユニット1655のサーボモーター1655m及び油圧供給装置276のサーボモーター276bが、サーボアンプ141a、32a、451a、461a、1655a及び276aをそれぞれ介して接続されている。
【0142】
制御部72と各サーボアンプ141a、276a、32a、451a及び461aとは、光ファイバによって通信可能に接続され、制御部72と各サーボアンプとの間で高速のフィードバック制御が可能になっている。これにより、より高精度(時間軸において高分解能かつ高確度)の同期制御が可能になっている。
【0143】
また、制御部72には、温度調整装置64cが接続されている。
【0144】
計測部74には、スピンドル部28の6分力センサー282、荷重検出部165の3分力センサー1651及びセンサー位置検出部1656の近接センサー1656cが、プリアンプ282a、1651a及び1656caをそれぞれ介して接続されている。6分力センサー282、3分力センサー1651及び近接センサー1656cからの信号は、プリアンプ282a、1651a及び1656caによってそれぞれ増幅されたのち、計測部74においてデジタル信号に変換され、これにより計測データが生成される。計測データは制御部72に入力される。なお、図27において、3分力センサー1651、プリアンプ1651a、近接センサー1656c及びプリアンプ1656caは、それぞれ一つのみが図示されている。
【0145】
各サーボモーター141、32、451、461、1655m及び276bに内蔵されたロータリーエンコーダーREが検出した位相情報は、各サーボアンプ141a、32a、451a、461a、1655a及び276aをそれぞれ介して、制御部72に入力される。
【0146】
インターフェース部76は、例えば、ユーザーとの間で入出力を行うためのユーザーインターフェース、LAN(Local Area Network)等の各種ネットワークと接続するためのネットワークインターフェース、外部機器と接続するためのUSB(Universal Serial Bus)やGPIB(General Purpose Interface Bus)等の各種通信インターフェースの一つ以上を備えている。また、ユーザーインターフェースは、例えば、各種操作スイッチ、表示器、LCD(liquid crystal display)等の各種ディスプレイ装置、マウスやタッチパッド等の各種ポインティングデバイス、タッチスクリーン、ビデオカメラ、プリンタ、スキャナ、ブザー、スピーカ、マイクロフォン、メモリーカードリーダライタ等の各種入出力装置の一つ以上を含む。
【0147】
制御部72は、インターフェース部76を介して入力された速度の設定データに基づいて、各駆動部14のサーボモーター141の駆動を同期制御することにより、キャリッジ20を所定の速度で走行させることができる。なお、本実施形態では、4つの駆動部14の全てを同位相で駆動する(より正確には、左側の駆動部14LA及び14LBと右側の駆動部14RA及び14RBとは逆位相[逆回転]で駆動される)。
【0148】
また、制御部72は、インターフェース部76を介して取得した試験タイヤTに与えるべき前後力(制動力又は駆動力)の設定データに基づいてトルク付与装置30のサーボモーター32の駆動を制御することにより、試験タイヤTに所定の前後力を与えることができる。また、制御部72は、前後力の設定データに替えてトルクの設定データ(又は加速度の設定データ)に基づいてトルク付与装置30を制御することにより、試験輪Wに所定のトルクを与えることもできる。
【0149】
制御部72は、キャリッジ20を所定の走行速度で走行させる(同時に、試験タイヤTを走行速度と略同じ周速で回転させる)駆動部14の制御と、試験タイヤTに前後力(又はトルク)を与えるためのトルク付与装置30の制御とを、同期信号に基づいて、同期して行うことができる。
【0150】
トルク付与装置30に発生させるトルクの波形としては、正弦波、正弦半波(ハーフサイン波)、鋸歯状波(のこぎり波)、三角波、台形波等の基本波形の他、路上試験において計測された前後力(又はトルク)波形、シミュレーション計算によって得られた前後力(又はトルク)波形又はその他の任意の合成波形(例えば、ファンクションジェネレータ等により生成された波形)を使用することができる。
【0151】
キャリッジ20の走行速度(又は試験輪Wの回転数)の制御についても、同様に、基本波形の他、路上試験において計測された車輪の回転数の波形、シミュレーション計算によって得られた速度変化の波形、又はその他の任意の合成波形(例えば、ファンクションジェネレータ等により生成された波形)を使用することができる。
【0152】
次に、移動ユニット1655により、センサーアレイユニット1650のY軸方向における位置を変更する手順について説明する。センサーアレイユニット1650は、図21に示される初期状態において、可動アーム1656aの近接部1656apが中央の近接センサー1656cの検出面1656cfと対向する位置に配置される。例えばタッチスクリーンに対するユーザー操作により、センサーアレイユニット1650を左(Y軸正方向)に移動するよう指示が出されると、制御部72は、センサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動するよう、サーボアンプ1655aに反時計回転の指令を送信する。反時計回転の指令を受け取ったサーボアンプ1655aは、サーボモーター1655mに反時計回転させる駆動電流を供給する。そして、サーボモーター1655mが駆動電流によって反時計回りに駆動されると、サーボモーター1655mの軸と共にボールねじ1655baが反時計回転し、ナット1655bb及び可動フレーム1659と共にセンサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動する。
【0153】
センサーアレイユニット1650がY軸正方向に移動すると、可動アーム1656aの近接部1656apが中央の近接センサー1656cの検出面1656cfから離れて、中央の近接センサー1656cが近接を検出しなくなる。やがて、可動アーム1656aの近接部1656apが左(Y軸正方向側)の近接センサー1656cの検出面1656cfと対向する位置に到達する。このとき、左の近接センサー1656cは、近接を検出し、近接の検出を示す近接信号を出力する。プリアンプ1656caを介して近接信号を受け取った計測部74は、センサーアレイユニット1650が左側の定位置に到達したことを制御部72に通知する。計測部74からの通知を受けた制御部72は、サーボアンプ1655aに駆動停止の指令を送信する。駆動停止の指令を受け取ったサーボアンプ1655aは、サーボモーター1655mへの駆動電流の供給を中止する。これにより、サーボモーター1655mの軸とボールねじ1655baの回転が停止し、ナット1655bb及びセンサーアレイユニット1650も停止して、センサーアレイユニット1650の移動が完了する。
【0154】
移動ユニット1655を搭載することにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のY軸方向における長さLy(図20)を短くして、荷重分布の計測に必要な荷重検出モジュール1650mの数を減らすことが可能になり、センサーアレイユニット1650の製造及び保守に必要なコストの削減が可能になる。
【0155】
次に、荷重検出部165を使用して、タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する方法について説明する。図23は、タイヤ踏面に加わる荷重分布を取得する方法の手順を表すフローチャートである。
【0156】
タイヤ試験装置1の電源スイッチがONにされると、制御部72は、まず初期化処理S1を行う。図2に示されるように、初期状態において、キャリッジ20は、その可動範囲のX軸負方向における末端付近に設定された初期位置(初期走行位置)PX0に配置される。また、スライドフレーム44(図4)は、その可動範囲の例えば上端付近に設定された初期位置PZ0に配置される。初期位置PZ0において、試験輪Wは路面63aから浮上し、試験輪Wの着脱やアライメント調整が可能になる。また、スリップ角調整部46及びキャンバー調整部47により、それぞれスリップ角及びキャンバーが設定された値に調整される。
【0157】
試験輪Wが路面63aから浮上した状態で、トルク付与装置30のサーボモーター32が駆動され、試験輪Wの回転位置θが初期回転位置θW0に移動して、初期化処理S1が完了する。なお、トルク付与装置30自体(すなわちハウジング31)の回転位置θは、キャリッジ20の走行位置Pによって決まる。トルク付与装置30は、初期状態においては、常に初期回転位置θH0に配置される。
【0158】
初期化処理S1の完了後、例えばタッチスクリーンに対するユーザー操作により試験開始の指示が与えられると(S2:YES)、カウンタである測定セット数kが1にリセットされ(S3)、試験輪Wは、荷重調整部45によって、降下されて路面63aに接地し、設定された荷重が与えられる(S4)。
【0159】
次に、1回目の測定セットS5が行われる。測定セットS5では、各駆動部14のサーボモーター141が駆動され、キャリッジ20が設定された走行速度で走行すると共に、試験輪Wがキャリッジ20の走行速度と略同じ周速で回転する。また、トルク付与装置30のサーボモーター32が駆動され、試験輪Wに設定されたトルクが与えられる。
【0160】
測定セットS5において、所定の時間間隔(例えば5ミリ秒間隔)で、荷重検出部165の3分力センサー1651及びスピンドル部28の6分力センサー282によって、路面1652a及び試験輪Wに加わる力がそれぞれ検出される。なお、3分力センサー1651及び6分力センサー282による検出の時間間隔は、試験条件(例えば、キャリッジ20の走行速度や必要な試験精度)に応じて適宜設定される。
【0161】
また、測定セットS5において、キャリッジ20の走行位置P及び試験輪Wの回転位置θが、所定の時間間隔(例えば、3分力センサー1651による検出と同じ時間間隔)で計算される。キャリッジ20の走行位置Pは、駆動部14のサーボモーター141に内蔵されたロータリーエンコーダーRE(図27)の検出結果、減速機142の減速比及びベルト機構50の駆動プーリー52のピッチ円直径から計算される。なお、本実施形態の説明において、キャリッジ20の走行位置Pは、キャリッジ20の走行方向(X軸方向)における試験輪Wの回転軸Ayの位置として定義される。
【0162】
試験輪Wの回転位置θは、トルク付与装置30のロータリーエンコーダー39及びサーボモーター32に内蔵されたロータリーエンコーダーREの検出結果に基づいて計算される。具体的には、試験輪Wの回転位置θは、サーボモーター32のロータリーエンコーダーREによって検出されるサーボモーター32の軸321の回転位置θ(但し、初期状態における初期回転位置θM0を0[rad]とする。)に減速機33の減速比を乗じたもの(すなわち、ハウジング31に対するシャフト34の回転位置θ)をロータリーエンコーダー39によって検出されるトルク付与装置30のハウジング31の回転位置θに加算することによって計算される。
【0163】
なお、トルク付与装置30からの出力の回転位置θ(例えば、スピンドル280やシャフト261、263の回転位置)を検出するロータリーエンコーダー等の検出手段を設けて、この検出手段によって試験輪Wの回転位置θを直接検出する構成としてもよい。
【0164】
3分力センサー1651及び6分力センサー282の検出結果は、同じタイミングで検出された駆動部14のサーボモーター141に内蔵されたロータリーエンコーダーREの検出結果(すなわち、キャリッジ20の走行位置P)及び試験輪Wの回転位置θの検出結果と対応付けられて、制御部72の記憶装置721(又は、例えばLANを介して制御部72に接続されたサーバー77等の制御部72によってアクセス可能な記憶手段)に保存される。なお、3分力センサー1651による検出結果については、試験輪Wがセンサーアレイユニット1650を通過する期間及びその前後の所定の期間のみを記録する構成としてもよい。これにより、保存されるデータ量を削減することができる。
【0165】
キャリッジ20が走行区間の終端に到達して停止すると、荷重調整部45によって、試験輪Wが路面63aから浮上する高さ(例えば、初期状態と同じ高さ)まで上げられる(S6)。そして、駆動部14が駆動され、キャリッジ20が初期位置PX0へ移動する(S7)。
【0166】
測定セット数kが規定回数nに達するまで、上記の処理S4からS9が繰り返される(S8)。測定セット数kが規定回数nに達していなければ(S8:NO)、トルク付与装置30のサーボモーター32が駆動され、試験輪Wの回転位置θが回転位置θW0+k*Δθに移動し(S9)、カウンタkがインクリメントされる(S12)。すなわち、測定セット数kが一つ増える度に、初期位置PX0における試験輪Wの回転位置θが角度幅Δθずつ変更される。
【0167】
角度幅Δθは、例えば、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLx(図19)に対応する試験輪Wの中心角θC1(すなわち、試験輪Wが距離Lxを転動する際の回転角θC1)以下の値に設定される。例えば、角度幅Δθは、荷重検出モジュール1650mの配置間隔δ(図19)に対応する試験輪Wの中心角θC2と同じ値又は中心角θC2よりもわずかに小さな値に設定される。
【0168】
また、角度幅Δθを、例えば、2πを規定回数nで割った値に設定してもよい。この場合、n回の測定セットにより、試験輪Wの全周が隈無く測定される。
【0169】
規定回数nの測定セットが完了すると(S8:YES)、次に荷重プロファイル計算S10が行われる。
【0170】
図24は、荷重プロファイル計算S10の手順を表すフローチャートである。荷重プロファイル計算S10は、n回の測定セットS5によって取得された測定結果に基づいて、荷重プロファイルデータを計算する処理である。
【0171】
荷重プロファイルデータは、タイヤに加わる3種類の力(すなわち、半径方向力f、接線力f及び横力f)の値が、路面上の平面座標と対応づけられたデータである。
【0172】
荷重プロファイル計算S10においては、まず、各荷重検出モジュール1650mの座標の計算(S101)が行われる。なお、本実施形態においては、荷重検出モジュール1650mの上面中央の点の座標が、荷重検出モジュール1650mの座標として定義される。
【0173】
図25は、荷重検出モジュール1650m及び試験輪Wの回転軸Ayの位置関係を示す図である。上述したように、本実施形態では、150個の荷重検出モジュール1650mが、X軸方向に5列、Y軸方向に30列に並べられている。以下の説明において、荷重検出モジュール1650mのX軸方向における列の番号をp、Y軸方向における列の番号をqとし、荷重検出モジュール1650mの配置が正の整数の対[p,q](以下「番地[p,q]」という。)によって表される。
【0174】
また、荷重プロファイル計算S10においては、(x,y)座標系が使用される。(x,y)座標系は、番地[3,1]に配置された荷重検出モジュール1650mの上面中央を原点とする、(X,Y)座標系と平行な2次元の直交座標系である。すなわち、xy平面は、路面部60の路面63a、1652aが配置された平面である。また、本実施形態においては、(x,y)座標系の原点(すなわち、番地[3,1]の荷重検出モジュール1650mの位置)がセンサーアレイユニット1650の位置として定義される。また、以下の説明において、固定点を原点とする座標を絶対座標、可動点を原点とする座標を相対座標という。荷重プロファイル計算S10においては、各荷重検出モジュール1650mの絶対座標が計算される。
【0175】
本実施形態においては、荷重検出モジュール1650mは、x軸方向及びy軸方向において、それぞれ等間隔δで並べられている。従って、番地[p,q]のxy座標は、次式によって計算される。

x = (p-3)*δ
y = (q-1)*δ
【0176】
次に、試験輪Wの回転軸Ayのx座標(以下「座標xAy」という。)が計算される(S102)。座標xAyは、次式によって計算される。

Ay = P - S
但し、
: 試験輪Wの走行位置P(回転軸Ay)のX座標
: (x,y)座標系の原点のX座標
【0177】
すなわち、手順S102において、試験輪Wの回転軸Ayの座標が、XY座標系からxy座標系に変換される。
【0178】
次に、試験輪Wの走行位置P(回転軸Ay)を基準とする、荷重検出モジュール1650mの相対位置(相対座標)が計算される(S103)。荷重検出モジュール1650mの相対座標(x,y)は、次式によって計算される。本実施形態では、回転軸Ayに対する相対座標の荷重プロファイルデータが取得される。

= x - xAy
= y
【0179】
次に、全ての測定結果(すなわち、各荷重検出モジュール1650mによって測定された半径方向力f、接線力f及び横力f)を相対座標(x,y)毎に平均することによって、3種類の力f、f及びfの荷重プロファイルデータが算出される(S104)。処理S104においては、回帰分析(例えば、最小二乗法等の曲面フィッティング)によって得られる近似曲面として荷重プロファイルデータを計算してもよい。
【0180】
処理S104において、試験輪Wの回転位置θを考慮して(すなわち、回転位置θ毎に)、荷重プロファイルデータを計算してもよい。また、この場合、更に試験タイヤTのトレッドパターンの回転軸Ay周りの対称性を含めて荷重プロファイルデータを計算してもよい。具体的には、トレッドパターンの周方向の周期において同位相となる回転位置θ毎に荷重プロファイルデータを計算してもよい。
【0181】
また、本実施形態では、n回の測定セットにより、試験輪Wの1周分のみについて測定が行われるが、更に測定セットを増やして、複数周分について測定を行ってもよい。また、本実施形態では、初期位置PX0における試験輪Wの回転位置θを、荷重検出モジュール1650mの配置間隔δに対応する試験輪Wの中心角θC2ずつ変更しながら複数回の測定セットが行われるため、荷重プロファイルデータのx軸方向における分解能は荷重検出モジュール1650mの配置間隔δ程度となる。更に小さな角度(例えば、中心角θC2の1/10)ずつ回転位置θを変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、x軸方向における実質的な分解能を荷重検出モジュール1650mの配置間隔δよりも細かくすることができる。例えば、中心角θC2の1/m(但し、mは自然数。)ずつ回転位置θを変更しながら測定セットを繰り返した場合、x軸方向における実質的な分解能をδ/m程度まで小さくすることができる。
【0182】
本実施形態では、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLx(図19)が、タイヤ踏面のX軸方向における長さよりも短い。従って、試験輪Wをセンサーアレイユニット1650の上に一度転動させただけでは、タイヤ踏面の全体の荷重分布を取得することができない。
【0183】
そこで、本実施形態では、センサーアレイユニット1650上を転動する際の試験輪Wの回転位置θをずらしながら、タイヤ踏面の荷重分布を複数回に分けて計測する方法が採用される。これにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さを短くして、荷重分布の計測に必要な荷重検出モジュール1650mの数を減らすことが可能になり、センサーアレイユニット1650の製造及び保守に必要なコストの削減が可能になっている。
【0184】
また、移動ユニット1655により、センサーアレイユニット1650のY軸位置を所定間隔ずつ変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、y軸方向における実質的な分解能を小さくすることができる。この場合、移動ユニット1655のサーボモーター1655mには、位置制御が可能なモーター(例えば、サーボモーターやステッピングモーター等)が使用される。例えば、センサーアレイユニット1650のY軸位置を1mmずつ変更しながら測定セットを繰り返し行うことにより、y軸方向における実質的な分解能を1mm程度まで小さくすることができる。
【0185】
次に、計算された荷重プロファイルデータに基づいて作成される荷重プロファイル画像が、インターフェース部76のディスプレイ装置に表示され、タイヤ踏面に加わる荷重分布が視覚化される(S11)。図26は、荷重プロファイル画像の表示例である。図26(a)は接線力f図26(b)は横力f図26(c)は半径方向力fの荷重プロファイル画像である。図26に示される荷重プロファイル画像は、各位置(x,y)における力の値を明度に変換したものである。なお、荷重プロファイル画像の形態は本実施形態のものに限定されず、例えば3次元CG画像等の別の形態としてもよい。
【0186】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、様々な変形が可能である。例えば本明細書中に例示的に明示された実施形態等の構成及び/又は本明細書中の記載から当業者に自明な実施形態等の構成を適宜組み合わせた構成も本願の実施形態に含まれる。
【0187】
タイヤ試験装置1は、上記の実施形態では二つのベルト機構50を備えているが、一つ又は三つ以上のベルト機構50を備えていてもよい。
【0188】
ベルト機構50は、上記の実施形態では一対の駆動部14が発生した動力によって駆動されるが、一つ又は三つ以上の駆動部14によって駆動される構成としてもよい。
【0189】
上記の実施形態では、各ベルト機構50、23、24に歯付ベルト及び歯付プーリーが使用されているが、ベルト機構の一つ以上について歯付ベルトに替えて平ベルトやVベルトを使用してもよい。また、ベルト機構に替えて、チェーン伝動機構やワイヤ伝動機構等の他の種類の巻掛け伝動機構や、ボールねじ機構、歯車伝動機構又は油圧機構等の他の種類の動力伝達機構を使用してもよい。
【0190】
上記の実施形態では、キャリッジ20を駆動する動力と、試験輪W(スピンドル280)を駆動する動力が、共通の駆動部14によって供給され、共通のベルト機構50によって伝達されるが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、キャリッジ20を駆動する動力と試験輪Wを駆動する動力を、個別の駆動部によって生成し、個別の動力伝達手段(例えば個別のベルト機構)によって伝達する構成としてもよい。この場合、キャリッジ20の走行速度と試験輪Wの周速を合わせるため、キャリッジ駆動用の駆動部と試験輪駆動用の駆動部の駆動を同期制御する必要がある。
【0191】
上記の実施形態では、キャリッジ20を駆動する機構(キャリッジ駆動手段)と試験輪Wを駆動する機構(試験輪駆動手段)の一部(駆動部14及びベルト機構50)を共通化することにより、シンプルな駆動システム及び制御システムが実現されている。キャリッジ駆動手段と試験輪駆動手段の共通化(特に駆動部14の共通化)は、トルク付与装置30を導入して、試験輪Wの速度制御とトルク制御の動力源を分離することにより、駆動部14が担う付加が低減したことで可能になっている。
【0192】
上記の実施形態では、右側の駆動部14RA及び14RBがキャリッジ駆動手段と回転運動供給手段を兼ねて、左側の駆動部14LA及び14LBがキャリッジ駆動手段として機能する構成が採用されているが、本発明はこの構成に限定されるものではない。例えば、左側の駆動部14LA及び14LBがキャリッジ駆動手段と回転運動供給手段を兼ねて、右側の駆動部14RA及び14RBがキャリッジ駆動手段として機能する構成としてもよい。また、左側の駆動部14LA及び14LBと右側の駆動部14RA及び14RBの両方がキャリッジ駆動手段と回転運動供給手段を兼ねる構成としてもよい。この構成は、例えば、左右の従動部22R及び22Lの合計2本のシャフト223Bを連結する(言い換えれば、左右の従動部22R及び22Lを連結する一本の長いシャフト223Bに置き換える)ことで実現される。
【0193】
上記の第3変形例では、測定セット毎に初期位置PZ0における試験輪Wの回転位置θを変更することにより、センサーアレイユニット1650の検出領域のX軸方向における長さLxよりも長いタイヤ踏面の荷重プロファイルの測定を可能にしている。しかし、センサーアレイユニット1650のX軸方向における位置を変更可能な手段を設けることにより、測定セット毎に初期位置PZ0における試験輪Wの回転位置θを変更せずに、長さLxよりも長いタイヤ踏面の荷重プロファイルの測定が可能になる。センサーアレイユニット1650のX軸方向における位置を変更可能な手段は、例えば、移動ユニット1655と同様に、位置制御可能なモーターと送りねじ機構(例えば、ボールねじ機構)によって構成することができる。
【0194】
上記の実施形態では、軌道部10のガイド機構13において、一対の単列の軸受137a等によりロッド134a等が支持されているが、本発明はこの構成に限定されず、例えば一つ以上の複列又は単列の軸受によってロッドが支持されてもよい。
【0195】
上記の実施形態では、軌道部10のガイド機構13において、熱処理レールが使用されているが、本発明はこの構成に限定されず、例えば普通レール(JIS E 1101:2001)や軽レール(JIS E 1103:1993)を使用してもよい。また、平底レールに限らず、双頭レール、牛頭レール、橋形レール等の他の形状のレールを使用してもよい。
【0196】
上記の実施形態では、駆動部14にサーボモーター141(ACサーボモーター)が使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。ACサーボモーターの代わりに、速度制御又は位置制御が可能な別の種類のモーター(例えば、DCサーボモーターや、インバーター回路とACモーター又はブラシレスモーターとを組み合わせた所謂インバーターモーター等)を使用してもよい。
【0197】
上記の実施形態では、トルク付与装置30、荷重調整部45及びスリップ角調整部46に、それぞれACサーボモーターであるサーボモーター32、451及び461が使用されているが、本発明はこの構成に限定されない。ACサーボモーターの代わりに、位置制御が可能な別の種類のモーター(例えば、DCサーボモーターやステッピングモーター等)を使用してもよい。
【0198】
<概括>
以下、上述した本発明の実施形態を概括する。
【0199】
本発明の一実施形態によれば、路面と、試験タイヤが装着された試験輪を回転可能に保持し、試験タイヤを路面に接地させた状態で路面に沿って走行可能なキャリッジと、キャリッジの走行方向への移動を案内するガイド機構と、を備え、ガイド機構が、キャリッジの走行方向に延びるレールと、キャリッジに固定され、レール上を走行可能なランナーと、を備え、ランナーが、レール上を転動可能なローラーと、ローラーを回転可能に支持する軸受と、を備え、軸受が、円軌道上を転動する転動体を備えたころがり軸受である、タイヤ試験装置が提供される。
【0200】
上記のタイヤ試験装置において、ランナーが、複数のローラーを備え、複数のローラーが、レールの頭部上面を転動可能な第1のローラーと、レールの頭部下面を転動可能な第2のローラー及びレールの頭部側面を転動可能な第3のローラーの少なくとも一方と、を含む、構成としてもよい。
【0201】
上記のタイヤ試験装置において、複数のローラーが、複数の組に組分けされ、ローラーの複数の組が、キャリッジの走行方向に並べられ、それぞれ、第1のローラーと、第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方と、を含む構成としてもよい。
【0202】
上記のタイヤ試験装置において、ランナーが、キャリッジに取り付けられたフレームと、フレームに支持された複数のロッドと、を備え、軸受が、ロッドと嵌合した内輪と、ローラーの内周面と嵌合した外輪と、を備えた構成としてもよい。
【0203】
上記のタイヤ試験装置において、互いにレールが平行に並べられた、第1のガイド機構及び第2のガイド機構を含む、複数のガイド機構を備え、第1のガイド機構及び第2のガイド機構のそれぞれの第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方が、第1のガイド機構及び第2のガイド機構のレール間に配置された構成としてもよい。
【0204】
上記のタイヤ試験装置において、互いにレールが平行に並べられた、第1のガイド機構及び第2のガイド機構を含む、複数のガイド機構を備え、第1のガイド機構及び第2のガイド機構のレールが、第1のガイド機構の第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方と、第2のガイド機構の第2のローラー及び第3のローラーの少なくとも一方との間に配置された構成としてもよい。
【0205】
上記のタイヤ試験装置において、路面を有する路面部を備え、路面部の少なくとも一部が交換可能な路面ユニットで構成された構成としてもよい。
【0206】
上記のタイヤ試験装置において、路面部が、基盤と、基盤上に設けられ、その表面に路面が形成された舗装部と、を備え、舗装部の少なくとも一部が、少なくとも一つの路面ユニットで構成された構成としてもよい。
【0207】
上記のタイヤ試験装置において、路面部が、基盤と、基盤上に設けられ、その表面に路面が形成された舗装部と、を有する本体部を備え、本体部の少なくとも一部が、少なくとも一つの路面ユニットで構成された構成としてもよい。
【0208】
上記のタイヤ試験装置において、路面部が、基盤と共に槽を形成する枠部を備えた構成としてもよい。
【0209】
上記のタイヤ試験装置において、路面が、実際の道路の路面とは異なる材料により形成された模擬路面である構成としてもよい。
【0210】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪及びキャリッジを駆動する駆動システムを備えた構成としてもよい。
【0211】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、キャリッジを路面に対して所定の速度で駆動するキャリッジ駆動手段を備えた構成としてもよい。
【0212】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、試験輪を駆動する試験輪駆動手段を備えた構成としてもよい。試験輪駆動手段が、試験輪を所定の速度に対応する回転数で駆動する構成としてもよい。
【0213】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、キャリッジ及び試験輪の駆動に使用される動力を発生する第1の動力発生手段を備えた構成としてもよい。
【0214】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、第1の動力発生手段が発生した動力をキャリッジ駆動手段及び試験輪駆動手段に分配する動力分配手段を備えた構成としてもよい。
【0215】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、第1の動力発生手段が発生した動力を伝達する第1の巻掛け伝動機構を備えた構成としてもよい。
【0216】
上記のタイヤ試験装置において、第1の巻掛け伝動機構が、第1の動力発生手段の出力軸と結合した駆動プーリーと、キャリッジに保持され、試験輪と連結した従動プーリーと、駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡された第1の巻掛け媒介節と、を備え、第1の巻掛け媒介節が、キャリッジの走行方向に張られて互いに逆向きに駆動される第1の部分及び第2の部分を有し、第1の部分において従動プーリーを通り、第2の部分においてキャリッジに固定された構成としてもよい。
【0217】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、第1の巻掛け伝動機構と連結して、第1の巻掛け伝動機構によって伝達された動力の少なくとも一部を駆動輪に伝達する二次動力伝達部を備えた構成としてもよい。
【0218】
上記のタイヤ試験装置において、従動プーリーが、二次動力伝達部の入力軸と結合した構成としてもよい。
【0219】
上記のタイヤ試験装置において、駆動システムが、一対の第1の動力発生手段を備え、第1の巻掛け伝動機構が、一対の第1の動力発生手段の出力軸とそれぞれ結合した一対の駆動プーリーを備え、第1の巻掛け媒介節が、ループを形成し、一対の駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡された構成としてもよい。
【0220】
上記のタイヤ試験装置において、第1の巻掛け媒介節が、鋼線の心線を有する歯付ベルトである構成としてもよい。
【0221】
上記のタイヤ試験装置において、第1の巻掛け媒介節が、カーボン心線を有する歯付ベルトである構成としてもよい。
【0222】
上記のタイヤ試験装置において、レールが取り付けられたベースを備えた構成としてもよい。
【0223】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪駆動手段が、試験輪を回転駆動する動力を発生する第2の動力発生手段を備えた構成としてもよい。
【0224】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪駆動手段が、第1の動力発生手段及び第2の動力発生手段が発生した動力を結合する動力結合手段を備えた構成としてもよい。
【0225】
上記のタイヤ試験装置において、第1の動力発生手段が、ベース上に設置された第1のモーターを備え、第2の動力発生手段が、キャリッジ上に設置された第2のモーターを備えた構成としてもよい。
【0226】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪駆動手段が、キャリッジの速度に対応する回転数の回転運動を供給する回転運動供給手段と、回転運動供給手段から供給された回転運動の位相を変化させて、試験輪に所定のトルクを与えるトルク付与手段と、を備えた構成としてもよい。
【0227】
上記のタイヤ試験装置において、回転運動供給手段が、ベース上に設置された第1のモーターを備え、トルク付与手段が、キャリッジ上に設置された第2のモーターを備えた構成としてもよい。
【0228】
上記のタイヤ試験装置において、トルク付与手段が、第1のモーターが発生した動力と第2のモーターが発生した動力とを結合する動力結合手段を備えた構成としてもよい。
【0229】
上記のタイヤ試験装置において、トルク付与手段が、第2のモーターが取り付けられ、第1のモーターが発生した動力により回転駆動される回転フレームと、第2のモーターによって駆動されるシャフトと、を備え、シャフトと回転フレームとが同心に配置された構成としてもよい。
【0230】
上記のタイヤ試験装置において、トルク付与手段が、回転フレームを回転可能に支持する一対の軸受部を備え、回転フレームが、筒状であり、第2のモーターを収容するモーター収容部と、モーター収容部を挟んで軸方向両側に設けられた、モーター収容部よりも小径の一対の軸部と、を有し、一対の軸部において、一対の軸受部により、回転可能に支持され、軸部の一方が円筒状であり、その中空部をシャフトが貫通し、軸部の内周にシャフトを回転可能に支持する軸受が設けられた構成としてもよい。
【0231】
上記のタイヤ試験装置において、二次動力伝達部が、トルク付与手段によって駆動される第2のシャフトと、第2のシャフトを回転可能に支持する軸受と、第2のシャフトとスピンドルとを連結するスライド式等速ジョイントと、を備えた構成としてもよい。
【0232】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪駆動手段が、回転運動供給手段から供給された動力を伝達する一次動力伝達部と、キャリッジ上に設置され、一次動力伝達部と連結して、一次動力伝達部によって伝達された動力を試験輪に伝達する二次動力伝達部と、を備え、一次動力伝達部が第1の巻掛け伝動機構を備え、第1の巻掛け伝動機構が、キャリッジが走行可能な領域を挟んで配置された一対の固定プーリーと、キャリッジに保持された可動プーリーと、一対の固定プーリー及び可動プーリーに掛け渡された第1の巻掛け媒介節と、を備え、固定プーリーの少なくとも一つが回転運動供給手段の出力軸と結合した駆動プーリーであり、可動プーリーが、従動プーリーであり、二次動力伝達部の入力軸と結合した構成としてもよい。
【0233】
上記のタイヤ試験装置において、二次動力伝達部が第2の巻掛け伝動機構を備え、第2の巻掛け伝動機構が、第1の巻掛け伝動機構の可動プーリーと結合した駆動プーリーと、トルク付与手段の回転フレームと結合した従動プーリーと、第2の巻掛け伝動機構の駆動プーリー及び従動プーリーに掛け渡された第2の巻掛け媒介節と、を備えた構成としてもよい。
【0234】
上記のタイヤ試験装置において、二次動力伝達部が、回転可能に支持されたスピンドルを備え、スピンドルが、その先端部に試験輪を同軸に着脱可能に構成され、試験輪に加わる力を検出可能な力センサーを備えた構成としてもよい。
【0235】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジが、メインフレームと、メインフレームに対して、路面に垂直な垂直線の回りに旋回可能な旋回フレームと、メインフレームに対して、路面に垂直な垂直方向にスライド可能なスライドフレームと、を備え、スピンドルが、旋回フレーム及びスライドフレームを介してメインフレームに支持された構成としてもよい。
【0236】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジが、旋回フレームの垂直線回りの旋回を案内する曲線ガイドウェイと、スライドフレームの垂直方向への移動を案内するリニアガイドウェイと、を備えた構成としてもよい。
【0237】
上記のタイヤ試験装置において、スライドフレームが、スピンドルを、スピンドルの中心線及び垂直線の両方と垂直な水平軸の周りに回転可能に支持する構成としてもよい。
【0238】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジが、スライドフレームを垂直方向に移動させて、試験輪に加わる荷重を調整可能な荷重調整部を備えた構成としてもよい。
【0239】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジが、旋回フレームを垂直線の周りに旋回移動させて、路面に対する試験輪のスリップ角を調整可能なスリップ角調整部を備えた構成としてもよい。
【0240】
上記のタイヤ試験装置において、スピンドルを水平軸の周りに回転移動させて、路面に対する試験輪のキャンバーを調整可能なキャンバー調整部を備えた構成としてもよい。
【0241】
上記のタイヤ試験装置において、路面部の上面に、試験輪のタイヤ踏面が受ける荷重分布を検出する荷重検出部が設けられた構成としてもよい。
【0242】
上記のタイヤ試験装置において、荷重検出部が、キャリッジの走行方向及び試験輪の軸方向に格子点状に配列された複数の荷重検出モジュールを備えた構成としてもよい。
【0243】
上記のタイヤ試験装置において、荷重検出モジュールが、それぞれ3分力センサーを備えた構成としてもよい。
【0244】
上記のタイヤ試験装置において、荷重検出部による検出結果に基づいて荷重分布を計測する計測手段を備え、計測手段が、3分力センサーの検出結果に基づいて、タイヤ踏面が受ける半径方向力、接線力及び横力を計算する構成としてもよい。
【0245】
上記のタイヤ試験装置において、検出された荷重分布を記憶する記憶手段を備えた構成としてもよい。
【0246】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジの走行方向における試験輪の走行位置を取得する手段を備え、記憶手段が、検出された荷重分布と、荷重分布が検出された時の試験輪の走行位置とを対応付けて記憶する構成としてもよい。
【0247】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪の回転位置を取得する手段を備え、記憶手段が、検出された荷重分布と、荷重分布が検出された時の試験輪の回転位置とを対応付けて記憶する構成としてもよい。
【0248】
上記のタイヤ試験装置において、記憶手段が、同じタイミングで検出された荷重分布と試験輪に加わる力とを対応付けて記憶する構成としてもよい。
【0249】
上記のタイヤ試験装置において、試験輪の走行位置を基準とする荷重検出モジュールの相対位置を計算する手段を備え、相対位置についての荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
【0250】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジを走行させながら荷重分布の検出を複数回行い、複数回の荷重分布の検出結果を相対位置毎に平均することによって、荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
【0251】
上記のタイヤ試験装置において、回帰分析により荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
【0252】
上記のタイヤ試験装置において、キャリッジの1方向の走行によって荷重検出部による1セットの測定が行われ、荷重検出部による複数セットの測定の結果に基づいて荷重分布の計測値が計算される構成としてもよい。
【0253】
上記のタイヤ試験装置において、荷重検出部の位置を試験輪の軸方向に変更可能な手段を備えた構成としてもよい。
【0254】
上記のタイヤ試験装置において、荷重検出部の位置を走行方向に変更可能な手段を備えた構成としてもよい。