(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056109
(43)【公開日】2024-04-22
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 43/20 20180101AFI20240415BHJP
F21S 43/27 20180101ALI20240415BHJP
F21S 43/15 20180101ALI20240415BHJP
F21S 43/14 20180101ALI20240415BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240415BHJP
F21W 103/35 20180101ALN20240415BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240415BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/27
F21S43/15
F21S43/14
F21V5/04 250
F21V5/04 300
F21V5/04 650
F21W103:35
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162841
(22)【出願日】2022-10-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(57)【要約】
【課題】複数の光源を配列したランプにおけるランプ発光面での輝度むらを低減した車両用灯具を提供する。
【解決手段】一方向に配列された複数のLED(光源)32と、各LED32から出射された光を屈折して偏向する格子状のレンズステップ71を有する第2インナーレンズ7を備える。レンズステップ71は、各LED32からの光を所要方向に向けて偏向するメインレンズステップ(専用レンズステップ)72と、隣接する2つのLED32からの光をそれぞれ所要方向に向けて偏向するサブレンズステップ(共用レンズステップ)73を含む。サブレンズステップ73において各LED32の光を合成することにより輝度むらが低減される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方向に配列された複数の光源と、各光源から出射された光を屈折して偏向する格子状のレンズステップを有するインナーレンズを備えており、前記レンズステップは前記光源からの光を所要方向に向けて偏向するメインレンズステップと、前記光源からの光及びこれに隣接する光源からの光をそれぞれ所要方向に向けて偏向するサブレンズステップを含んで構成されることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記メインレンズステップと前記サブレンズステップは前記複数の光源の配列方向に交互に配列されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記メインレンズステップは前記光源から出射される所要の出射角範囲内の光を偏向し、前記サブレンズステップは前記所要の出射角範囲外の光を偏向する請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記メインレンズステップと前記サブレンズステップは前記インナーレンズの長手方向に配列された複数の格子状のステップとして構成され、前記メインレンズステップはコリメートレンズに基づいて形成されたフレネルステップで構成され、前記サブレンズステップは前記光源の配列方向に沿って双方向の光屈折を行うプリズムステップで構成される請求項3に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記インナーレンズは、前記サブレンズステップにおいて内面反射された光が前記メインレンズステップにまで導光される構成である請求項4に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記インナーレンズは、前記光源の光が入射される入光側レンズ部と、当該入光側レンズ部を透過された光が入射される出光側レンズ部を備えており、これら入光側レンズ部と出光側レンズ部は前記所要方向に所要の間隔をおいて対向配置されるとともに連結部により一体に構成されている請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記出光側レンズ部は、前記入光側レンズ部から出射された光を前記格子状のレンズステップによる偏向方向と同じ方向及びこれと交差する方向にそれぞれ偏向するレンズステップを備える請求項6に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記インナーレンズは第2インナーレンズとして構成されており、前記光源と当該第2インナーレンズとの間に、光源から出射された光を前記光源の配列方向と交差する方向に偏向制御する第1インナーレンズを備える請求項6に記載の車両用灯具。
【請求項9】
ランプボディと、このランプボディの開口に取着された透光性のアウターレンズとを備えるランプハウジングを備えており、前記光源と前記第1及び第2のインナーレンズは当該ランプハウジングに内装され、前記第2インナーレンズから出射された光は前記アウターレンズを透過して外部に出射される構成であり、当該アウターレンズに光を発散ないし拡散するレンズステップを備える請求項1ないし8のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両に装備して好適な車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の灯具として、細長い発光面を有する灯具が提供されている。例えば、自動車の車体の後部に配設されているハイマウントストップランプ(以下、HMSLと略称する)は、水平方向に延びる帯状のランプ発光面を有する灯具として構成されている。このような灯具においては、複数個の光源、例えば複数個のLED(発光ダイオード)が灯具の水平方向、すなわち長手方向に所要の間隔で配置された構成がとられている。また、ランプ発光面の長手方向の輝度の均一化を図るために、各光源から出射した光をインナーレンズにより長手方向に偏向制御する構成がとられている。
【0003】
特許文献1の灯具は3つのLEDが長手方向に配置されており、各LEDから発散状態で出射される光をインナーレンズに設けたレンズステップにより略平行な光線束となるようにコリメートする構成された灯具である。この構成により、各LEDから出射された光は、それぞれ対向配置されたレンズステップにより偏向されて平行光線束とされ、インナーレンズから出射される光は長手方向に均一に配光され、アウターレンズの出射面、すなわちランプ発光面から出射される光の輝度の均一化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は光をコリメートする3つのレンズステップが一方向に配列された構成であり、詳細については後述するが、個々のLEDから出射された光のうち、発光主軸から離れた領域に向けて出射された光の一部が隣接するLEDに対応して設けられたレンズステップに入射される。そのため、この光は入射したレンズステップに対して正規の方向から入射されず、このレンズステップにおいてコリメートされずに迷光となって配光に寄与しなくなる。これにより、各LEDの発光主軸を離れた領域、特に隣接するLEDの中間領域においてランプ発光面での輝度が低下され、ランプ発光面における輝度むらが生じる要因になる。
【0006】
本発明の目的は、ランプ発光面における輝度むらを低減した車両用灯具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用灯具は、少なくとも一方向に配列された複数の光源と、各光源から出射された光を屈折して偏向する格子状のレンズステップを有するインナーレンズを備えており、レンズステップは光源からの光を所要方向に向けて偏向するメインレンズステップと、光源からの光及び隣接する光源からの光をそれぞれ所要方向に向けて偏向するサブレンズステップを含んで構成されている。
【0008】
本発明において、メインレンズステップとサブレンズステップは複数の光源の配列方向に交互に配列されることが好ましい。また、メインレンズステップは光源から出射される光の所要の出射角範囲内の光を偏向し、サブレンズステップは所要の出射角範囲外の光を偏向する構成とされることが好ましい。
【0009】
また、本発明においては、インナーレンズは、光源の光が入射される入光側レンズ部と、入光側レンズ部を透過された光が入射される出光側レンズ部を備え、これら入光側レンズ部と出光側レンズ部は所要方向に所要の間隔をおいて対峙されるとともに連結部により一体に構成される構成であることが好ましい。特に、出光側レンズ部は、入光側レンズ部から出射された光を格子状のレンズステップによる偏向方向と同じ方向及びこれと交差する方向にそれぞれ偏向するレンズステップを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サブレンズステップで偏向された光がメインレンズステップで偏向された光と合成されるので、隣接する光源の中間領域における輝度の低下が抑制され、輝度むらが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の灯具(HMSL)を備える自動車の一部の外観図。
【
図6】光学ユニットの一部を省略した拡大鉛直断面図。
【
図8】第2レンズステップの構成を説明するための模式的な平面図であり、(a)はその一部の平面図、(b)はさらにその一部の拡大平面図。
【
図9】第2レンズステップにおける光の偏向作用を説明するための模式図であり、(a)は本実施形態、(b)は参考例。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の車両用灯具として、自動車CARの車体後部に設けられたリアスポイラーRSの下面部に配設されたHMSL1に適用した実施形態の外観図である。同図の下部にこのHMSL1の外観を示しており、自動車CARに装備された状態では、そのランプ発光面1aはリアスポイラーRSの下面に沿って車幅方向に延びる細長い帯状に形成される。このHMSL1は、自動車CARの減速時や停車時に点灯され、ランプ発光面1aが赤色に発光された状態とされる。
【0013】
図2はHMSL1の部分分解斜視図である。なお、以降の説明において、鉛直方向と水平方向は、HMSL1が
図1の自動車CARに装備された状態に基づく方向である。また、HMSL1の長さ方向を長手方向と称し、HMSL1のランプ発光面1aから光を出射する方向を正面方向と称する。
【0014】
HMSL1は水平方向に延びる細長い板状をしたランプボディ21と、このランプボディ21の正面を覆うように装着されたアウターレンズ22とでランプハウジング2が構成されている。このアウターレンズ22は、ハウジング2のアウターカバーとして構成されているが、後述するインナーレンズとの対比からアウターレンズと称されている。このアウターレンズ22は、赤色又は無色の光透過性部材により水平方向に延びる横長の容器状に形成され、その帯状をした正面部22aが前記したHMSL1のランプ発光面1aとして構成されている。
【0015】
ランプハウジング2内には、HMSL1の点灯時に発光する光源を備えた光源ユニット3と、光源で発光された光を偏向制御してアウターレンズから出射させる光学ユニット4が配設されている。この光学ユニット4は第1インナーレンズ5と第2インナーレンズ6で構成されており、これら第1インナーレンズ5と第2インナーレンズ6での光偏向制御により、光源ユニット3から出射された光は発散ないし拡散されてアウターレンズ22から出射され、その正面部22a、すなわちHMSL1のランプ発光面1aでの輝度の均一化が図られる。
【0016】
図3はHMSLの水平断面図であり、
図4はその鉛直断面図である。前記光源ユニット3は、ランプボディ21とほぼ同様に水平方向に延びる細長い帯状の回路基板31を備えており、ランプボディ21の正面側に支持されている。この支持において、回路基板31の一部に設けられた孔33にランプボディ21の正面に立設されたロッド211が挿通されることにより回路基板31の位置決めが行われる。この回路基板31の正面には、光源としての複数個の半導体発光素子32、ここではそれぞれ赤色光を発光する9つの表面実装型のLED(発光ダイオード)が配設されている。
【0017】
各LED32は、その発光面(LED発光面)を正面方向に向けた状態で、すなわち各LED32の発光主軸Ox(LED発光面の発光中心Ocを通る仮想軸)を正面に向けた状態で、回路基板31の長手方向に所要の間隔をおいて直列状態に実装されている。これらのLED32は回路基板31に設けられている図示を省略した回路配線により図外の車両ECU(電子制御ユニット)やランプECU等に接続され、自動車CARの減速時や停車時に給電されて発光されるようになっている。これらECUを使用することなく、いわゆる給電回路を介して給電を行うことも可能である。
【0018】
前記光学ユニット4の第1インナーレンズ5と第2インナーレンズ6は透光性部材によりそれぞれ独立した部材として構成され、前記ランプボディ21に支持されている。第1インナーレンズ5は水平方向に長い帯状をした一つの板状のレンズとして構成されており、光源ユニット3の正面側に配設されている。この第1インナーレンズ5は、一部に設けられた孔53にランプボディ21の正面に立設されたロッド212が挿入されることにより第1インナーレンズ5の位置決めが行われる。このロッド212は回路基板31に設けられた孔34に挿通されており、これにより第1インナーレンズ5は回路基板31に対しても位置決めされる。
【0019】
第2インナーレンズ6は第1インナーレンズ5の正面側に配設されており、ランプボディ21に直接に支持されている。第2インナーレンズ6はLED32の発光主軸Oxに沿った方向に所要の間隙をおいて離間配置された2つの板状をした入光側レンズ部7と出光側レンズ部8を備えている。また、この入光側レンズ部7と出光側レンズ部8はそれぞれの下縁が連結部9により一体に連結され、全体として長手方向に延びる樋状に形成されている。これら入光側レンズ部7と出光側レンズ部8と連結部9は、ここでは透光性樹脂の一体成形により形成されている。
【0020】
前記した光学ユニット4の詳細について説明する。
図5は光学ユニット4の一部を拡大した水平断面図、
図6は光学ユニット4の一部を拡大した鉛直断面図である。第1インナーレンズ5は透光性樹脂で形成されており、長さ方向の9箇所、すなわち前記9つのLED32にそれぞれ対向する部位に、第1レンズステップ51が形成されている。これら第1レンズステップ51を除く他の部位は所要の板厚をした平板部50として形成されている。この第1レンズステップ51は第1インナーレンズ5の長手方向(水平方向)には実質的な屈折力を有せず、幅方向(鉛直方向)にのみ正の屈折力を有するレンズステップとして形成されている。
【0021】
すなわち、第1レンズステップ51の水平断面形状は、LED32に対面される第1インナーレンズ5の光入射面5iに円弧状の凹面部511を有し、反対側の光出射面5oに正面方向に長円形状に突出された凸面部512を有している。凹面部511はLED32の発光中心Ocを中心とする円弧状に形成されている。凸面部512はLED32の発光中心Ocを中心とする円弧面の一部で構成されているが、LED32の発光主軸Oxとその近傍領域となる中央部は幾分凹んだ円弧状の凹面として形成されている。
【0022】
一方、第1レンズステップ51の鉛直断面形状は、第1インナーレンズ5の光入射面5iがコリメートレンズを構成するいわゆるTIR(Total Internal Reflection)レンズのレンズ面(以下、TIR面)513として形成されている。すなわち、LED32の発光主軸Oxを含むその近傍領域は球面ないし非球面の凸状面部とされ、この領域に入射された光をそのまま収束して平行光線束に偏向する。また、周囲領域は円環状をした断面がテーパ状の面部に形成され、この領域に入射された光を一旦内部で反射することにより収束して平行光線束に偏向する。これらの凸状面部とテーパ状面部でTIR面513が形成されている。
【0023】
第2インナーレンズ6は、前記したように入光側レンズ部7と出光側レンズ部8が連結部9を介して一体化されている。
図7は第2インナーレンズ6の一部の外観斜視図であり、入光側レンズ部7と出光側レンズ部8は、平面視では平行に配設されており、側面視では入光側レンズ部7は第1インナーレンズ5と略平行な鉛直方向に向けられ、出光側レンズ部8は上縁部が下縁部よりも幾分肉厚にされ、かつこの上縁部は正面方向に向けて幾分傾斜された構成とされている。
【0024】
この第2インナーレンズ6においては、入光側レンズ部7は第1インナーレンズ5の光出射面5oに対向配設され、第1インナーレンズ5から出射された光が当該入光側レンズ部7に入射されるように構成されている。また、出光側レンズ部8は、入光側レンズ部7を透過して出射された光が入射され、さらにこれを透過された上でアウターレンズ22に向けて出射されるように構成されている。そして、入光側レンズ部7に第2レンズステップ71が形成され、連結部9に第3レンズステップ91が形成され、出光側レンズ部8に第4レンズステップ81と第5レンズステップ82が形成されている。
【0025】
入光側レンズ部7の光入射面7i、すなわち第1インナーレンズ5に向けられた側の面は平坦面として構成されている。一方、反対側の光出射面7oには長手方向のほぼ全域にわたって第2レンズステップ71が形成されている。この第2レンズステップ71は、第2インナーレンズ7の長手方向に沿って略等ピッチ寸法で配設された縦格子状のステップとして構成されている。ここでは第2レンズステップ71は、水平断面が略三角形をして第2インナーレンズ7の光出射面7oから正面方向に突出され、かつ第2インナーレンズ7の長手方向に連続して配列されて縦格子を構成する縦格子状のレンズステップとして構成されている。
【0026】
この第2レンズステップ71は、
図8(a)に一部の拡大図を示すように、長手方向に離間配置された複数の専用レンズステップ72と、これら専用レンズステップ72の長手方向の間に配置された共用レンズステップ73とで構成されている。専用レンズステップ72は
図3に示した9つのLED32にそれぞれ対向する9つの領域、特にLED32の発光中心Ocを基準にして発光光軸Oxを長手方向に挟んだ所定角度θ、換言すればLED32から発散状態に出射される光の出射角度領域よりも幾分狭い角度領域に配置された専用レンズステップ72として構成される。また、共用レンズステップ73はこれら9つの専用レンズステップ72の長手方向の間に配置されている。これら専用レンズステップ72と共用レンズステップ73はそれぞれ本発明におけるメインレンズステップとサブレンズステップである。
【0027】
図8(b)はさらにその一部の拡大図であり、専用レンズステップ72は、LED32から出射された発散光を水平方向に収束して平行光線束に偏向制御するコリメートレンズに基づいて構成された縦格子状のフレネルステップで形成されている。このようなフレネルステップについては既に知られているので詳細な説明は省略するが、コリメートレンズを平凸レンズで構成した場合に、当該レンズの凸面を水平方向に細分し、細分した凸面を水平方向に配列した構成である。また、この実施形態においては、専用レンズステップ72はLED32の発光主軸Oxが通る中央部位のレンズ厚が最も薄くされ、両側の共用レンズステップ73に向けて徐々にレンズ厚が増加される構成がとられている。
【0028】
一方、共用レンズステップ73は、水平断面が水平方向に対称な三角形ステップ、ここでは頂点を正面方向に向けた二等辺三角形をした格子状のプリズムステップで形成されている。この共用レンズステップ73は、2つのLED32、すなわち当該共用レンズステップ73を長手方向に挟む両側に配置されている2つのLED32から出射された光を、いずれも正面方向に偏向制御して偏向を行うことが可能な双方向型のステップ形状に形成されている。また、この共用レンズステップ73が光出射面7oから正面方向に突出されている高さ寸法は、専用レンズステップ72の突出高さ寸法よりも高くされている。
【0029】
一方、第2インナーレンズ6の出光側レンズ部8では、その光入射面8i、すなわち入光側レンズ部7に向けられた面に第4レンズステップ81が形成されている。この第4レンズステップ81は、第2レンズステップ71と略同じピッチ寸法で配列され、水平方向の断面形状が円弧状をした縦格子状の複数の格子状ステップとして構成されている。ここでは、第4レンズステップは複数のシリンドリカルステップが長手方向に沿って並ぶように立面配列された構成とされている。
【0030】
この出光側レンズ部8の光出射面8oには第5レンズステップ82が形成されている。この第5レンズステップ82は長手方向に延びる複数のステップが鉛直方向に配列された横格子状の構成とされている。ここでは、第5レンズステップ82の鉛直方向の断面形状が円弧状とされたシリンドリカルステップとして構成されており、第5レンズステップ82は複数のシリンドリカルステップが鉛直方向に沿って並ぶように立面配列された構成とされている。
【0031】
図7に示したように、入光側レンズ部7と出光側レンズ部8を連結する連結部9の上底面には、入光側レンズ部7に形成されている第2レンズステップ71と、出光側レンズ部8に形成されている第4レンズステップ81の各格子状ステップを正面方向に沿って連結するように延長された格子状の第3レンズステップ91が形成されている。この第3レンズステップ91は、断面形状が円弧形状とされたシリンドリカルステップとして構成されている。すなわち、第3レンズステップ91は複数のシリンドリカルステップが長手方向に沿って並ぶように平面配列された構成とされている。
【0032】
前記ランプハウジング2のアウターレンズ22は、
図4に示すように、ランプ発光面としての正面部22aが幾分下方を向くように傾斜された形状とされている。そして、この正面部22aの光入射面としての内面には、図示は簡略するが、透過する光を水平方向及び鉛直方向に発散させるための、あるいは拡散(散乱)させるための光学ステップ23が形成されている。例えば、当該内面を粗面加工したシボ面として構成されている。あるいは、複数の微小な凸曲面をマトリクス配置したフライアイレンズステップとして構成されてもよい。また、正面部22aの外面は平坦面で構成されているが、適宜のレンズステップが形成されてもよい。
【0033】
以上の構成のHMSL1によれば、自動車の減速時や停車時に各LED32が発光されると、LED32から出射された光は第1インナーレンズ5を透過され、次いで第2インナーレンズ6の入光側レンズ部7と出光側レンズ部8を透過される。さらに、アウターレンズ22の正面部22aを透過され、ランプ正面方向、すなわち自動車の後方に向けて照射される。このとき、LED32の光は第1インナーレンズ5、第2インナーレンズ6及びアウターレンズ22を透過する際にそれぞれ所要の形態で偏向制御されることにより、アウターレンズ22の正面部22a透過される際に所要の輝度分布に制御される。
【0034】
この偏向制御される光の光路を
図5と
図6に概略図示する。LED32から出射された光は、所要の角度領域に向けて発散状態に出射される。このLED32の出射光は、例えば、ランバート特性であり、出射角が大きくなるのに伴って徐々に輝度が低下される配光特性である。この光は第1インナーレンズ5に入射されて第1レンズステップ51により偏向制御される。
【0035】
第1レンズステップ51における水平方向の偏向制御では、
図5に示すように、凹面部511と凸面部512はそれぞれLED32の発光中心Ocを中心とした円弧状であるので、水平方向には実質的な屈折力を有しておらず、殆ど偏向制御されることなく、その発散状態が保たれたまま出射される。なお、発光主軸Oxの近傍領域では凸面部512が幾分凹面に形成されているので、LED32からの光の発散が幾分拡大され、この近傍領域の単位面積当たりの光量が低下され、水平方向の輝度分布が均一化される方向に制御される。
【0036】
第1レンズステップ51における鉛直方向の偏向制御では、
図6に示すように、TIR面513はコリメートレンズとして構成されているので、LED32からの発散光は略平行な光線束となるように偏向されて正面方向に向けて出射される。このTIR面513における光の偏向かつ収束作用については、既に知られているので詳細な説明は省略するが、特に発光主軸Oxから離れた周辺部の光をレンズ内において全反射して収束させるので、この周辺部の輝度を高めることができ、第1インナーレンズ5の鉛直方向の輝度の均一化を高めた偏向制御が行われる。
【0037】
第1インナーレンズ5から出射された光は第2インナーレンズ6の入光側レンズ部7に入射され、第2レンズステップ71により偏向されて出射される。第2レンズステップ71は縦格子の格子状ステップで構成されているので、
図6に示したように、鉛直方向には殆ど偏向されることなく出射される。
【0038】
一方、水平方向の偏向制御では、
図8(a)に示すように、第2レンズステップ71の専用レンズステップ72と共用レンズステップ73においてそれぞれ平行ないしは略平行な光線束となるように偏向され、正面方向に向けて出射される。したがって、入光側レンズ部7の長手方向の略全域にわたって連続された平行な光線束として出射される。
【0039】
この第2レンズステップ71における水平方向の偏向制御について説明する。
図8(a)に示したように、1つのLED(以下、第1LEDと称する)32aから出射され、第1インナーレンズ5を透過して出射された光のうち、第1LED32aの発光主軸Oxを長手方向に挟む所要角度θ内の光は、当該第1LED32aに対向する専用レンズステップ72に入射される。専用レンズステップ72はコリメートレンズを構成するフレネルステップとして構成されているので、入射された光はそれぞれ発光主軸Oxに平行な光に偏向され、専用レンズステップ72から平行光線束として出射される。入射された光は、前記したように第1レンズステップ51により輝度の均一化が進められているので平行光線束の輝度分布の均一化が更に進められる。この光は必ずしも平行光線束でなくてもよく、水平方向に発散、あるいは幾分拡散された状態に偏向制御されてもよい。
【0040】
一方、第1LED32aから出射された光のうち、所要角度θの両外側に出射された光は、それぞれ専用レンズステップ72の両側の共用レンズステップ73に入射される。共用レンズステップ73は所要の頂角を有する二等辺三角形の格子状のプリズムステップで構成されているので、入射された光の殆どは共用レンズステップ73により屈折されて発光光軸Oxに平行な方向に偏向される。
【0041】
このことは、隣接するLED(以下、第2LEDと称する)32bについても同様であり、第2LED32bにおいても所要角度θ内の光は当該LEDに対向配設された専用レンズステップ72により平行光線束として偏向される。また、この所要角度θの両外側の光は専用レンズステップ72の両側の共用レンズステップ73に入射される。すなわち、この光は第1LED32aの専用レンズステップ72の第2LED32b側に配設されている共用レンズステップ73にも入射される。
図8(b)に示したように共用レンズステップ73は長手方向に対称で双方向に屈折可能なプリズムステップとして構成されているので、この第2LED32bからの光についても、その殆どは発光光軸Oxに平行な方向に偏向される。
【0042】
図9(a)はこの実施形態において、第2レンズステップ71から出射される光の輝度分布を示す図である。第1LED32aから出射される光の輝度は、ランバート特性であり、前記したように発光光軸Oxの近傍領域では第1レンズステップ51により幾分均一化され、第2レンズステップ71の専用レンズステップ72において平行光線束に制御される。一方、発光光軸Oxから離れた光は共用レンズステップ73での偏向により平行光線束に制御される。この共用レンズステップ73では、隣接する第3LED32bの光も入射されており、偏向により平行光線束に制御される。したがって、共用レンズステップ73から出射される光は、重畳状態に入射された第1LED32aと第2LED32bの光が同じ方向に向けられた平行光線束として合成(加算)されることになり、同図の実線のように、第1LED32aと第2LED32bの中間領域の輝度が高められ輝度むらが抑制される。
【0043】
また、第2レンズステップ71は、入光側レンズ部7の光出射面に形成されているので、第2レンズステップ71の内面で反射された光の有効活用を図ることもできる。特に、共用レンズステップ73の領域は専用レンズステップ72に比較して第2インナーレンズ7の厚さが大きくされているので、
図8(b)に矢印破線で示すように、専用レンズステップ72において屈折されずに内面反射された光の一部は入光側レンズ部7内を導光され、共用レンズステップ73から所要方向に出射される。これにより、隣接するLED32の中間領域の輝度がさらに高められ、輝度むらが抑制される。
【0044】
因みに、
図9(b)は参考例を示しており、第2レンズステップ71が専用レンズステップ72のみで構成されており、LED32a,32bのそれぞれに対応する専用レンズステップ72が長手方向に配列された構成である。すなわち、実施形態の共用レンズステップが存在しない構成である。この参考例では、隣接する各LED32の各光が隣接された専用レンズステップ72の境界領域に重畳して入射されると、一方のLED32aの光は専用レンズステップ72により正面方向に向けられるが、他方のLED32bの光は正面方向には偏向されることなく迷光として不特定な方向に偏向される。そのため、この光はランプの配光に寄与されることがなく、同図に実線で示すように、隣接するLED32a,32bの中間領域における輝度が低下され、輝度むらを解消することが難しい。
【0045】
以上のように入光側レンズ部7の光出射面7oから出射された光は、出光側レンズ部8との間隙を通過した上で出光側レンズ部8の光入射面8iに入射される。また、この光出射面7oから出射された光の一部は、間隙を通過する際に連結部9の上底面において反射され、出光側レンズ部8の光入射面8iに入射される。連結部9の上底面には水平格子状のシリンドリカルステップからなる第3レンズステップ91が設けられており、出光側レンズ部8の光入射面8iには縦格子状のシリンドリカルステップからなる第4レンズステップ81が設けられているので、出光側レンズ部8に入射された光は第2インナーレンズ6の長手方向に発散ないし拡散された状態となる。
【0046】
このように、出光側レンズ部8に入射された光が第3レンズステップ91及び第4レンズステップ81によって第2インナーレンズ6の長手方向に発散ないし拡散されることにより、長手方向の輝度の均一化が促進される。したがって、第2レンズステップ71が縦格子状に構成されていることが要因となる輝度むら、特にランプ発光面1aに長手方向に沿った周期的な明暗縞が生じることによる縞状の輝度むらは解消される。
【0047】
特に、入光側レンズ部7と出光側レンズ部8との間には、連結部9によって所要長さの間隙が設けられているので、入光側レンズ部7から出射された光はこの間隙を通過する際に光線束が収束あるいは発散される。これにより、入光側レンズ部7を出射されたときの縞状の輝度むらがそのまま出光側レンズ部8に入射されることはなく、このことからも縞状の輝度むらが抑制される。
【0048】
さらに、出光側レンズ部8の光出射面8oには複数のシリンドリカルステップが鉛直方向に並んで立面配列された第5レンズステップ82が形成されている。出光側レンズ部8を透過された光は、この第5レンズステップ82により鉛直方向に発散ないし拡散される。これにより、第1インナーレンズ5の第1ステップ51を構成しているTIR面513における偏向によって鉛直方向に幾分の輝度むらが生じている場合においても、この鉛直方向の輝度むらが解消される。
【0049】
なお、出光側レンズ部8は下端側から上端側に向けて厚みが徐々増加するテーパ状断面形状であるので、出光側レンズ部8から出射される光線は僅かに上方に向けて偏向される。また第2インナーレンズ6の出光側レンズ部8から出射された光は、アウターレンズ22の正面部22aに入射され、ここを透過して外部に向けて出射される。この正面部の内面には詳細な説明は省略したが光を発散ないし拡散する光学ステップ23が形成されているので、出射される光の水平方向及び鉛直方向の輝度むらがさらに抑制される。したがって、HMSL1が自動車のリアスポイラーRSの下面部に水平方向に配設されていても、あるいはアウターレンズ22の正面部22aが幾分下方に向けて配設されていても鉛直方向について所要の配光を確保することができるとともに、当該正面部22aにおける輝度むらが改善される。
【0050】
実施形態では、光源として赤色光を発光するLEDを用いているが、少なくともアウターカバーあるいはインナーレンズが赤色透光性部材で構成されている場合には白色光を発光するLEDで構成されてもよい。また、赤色光を発光するLEDを用いる場合にはアウターカバーとインナーレンズは無色の透光性部材で構成されてもよい。
【0051】
本発明にかかる光源はLEDに限られるものではなく、LEDのように所要の角度範囲に向けて光を発散状態に出射する構成の発光素子や発光体であれば適用できる。また、光源は一方向に配列された構成に限られるものではなく、互いに交差する方向に配列された構成についても本発明が適用できる。
【0052】
本発明において、ランプの長手方向の輝度むらを解消するためには、インナーレンズは少なくとも第2レンズステップを備える構成であればよく、長手方向と交差する方向(鉛直方向)の輝度むらを解消するための第1レンズステップは省略することも可能である。特に、実施形態のように細長いランプ発光面を有する灯具の場合には、長手方向に交差する幅方向の輝度むらは目立たないので、第1インナーレンズを省略してもよい。第1レンズステップを設ける場合には、当該第1レンズステップを第2インナーレンズの入光側レンズ部の光入射面に配設してもよく第1インナーレンズを省略することもできる。
【0053】
本発明における第2インナーレンズの構成は実施形態の構成に限られるものではなく、第2レンズステップにより輝度むらが好適に抑制されるのであれば、出光側レンズ部を省略してもよい。また、連結部や出光側レンズ部に形成される第3ないし第5のレンズステップは異なる形態のものに構成してもよい。例えば、実施形態に記載の構成のレンズステップの上下左右形状や凹凸形状を適宜変更した構成としてもよい。
【0054】
以上の説明は、本発明を車体後部に配設されたHMSLに適用した例であるが、複数の光源をランプの長手方向に沿って配列する構成のランプであれば本発明を同様にして適用することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 車両用灯具(HMSL)
2 ランプハウジング
3 光源ユニット
4 光学ユニット
5 第1インナーレンズ
6 第2インナーレンズ
7 入光側レンズ部
8 出光側レンズ部
9 連結部
21 ランプボディ
22 アウターレンズ
32 光源(LED)
51 第1レンズステップ
71 第2レンズステップ
72 専用レンズステップ(メインレンズステップ)
73 共用レンズステップ(サブレンズステップ)