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特開2024-5613静翼、及びこれを備えているガスタービン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005613
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】静翼、及びこれを備えているガスタービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20240110BHJP
   F02C 7/18 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
F01D9/02 102
F02C7/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105877
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 咲生
(72)【発明者】
【氏名】宮久 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】鳥井 俊介
(72)【発明者】
【氏名】水上 聡
【テーマコード(参考)】
3G202
【Fターム(参考)】
3G202GA08
3G202GB01
3G202JJ04
3G202JJ19
(57)【要約】
【課題】効率的に冷却可能な静翼を提供する。
【解決手段】静翼は、翼体と、複数の翼空気通路と、複数の後端空気通路と、を有する。前記複数の翼空気通路は、翼体の前縁の側から後縁の側に向かって並ぶ。前記複数の後端空気通路は、前記複数の翼空気通路のうち、最も前記後縁の側の後側翼空気通路から前記後縁に向かって延び、前記後縁で開口している後縁開口を有する。前記翼高さ方向に延びる前記後縁中で前記翼高さ第一側の端を含み前記翼高さ第二側の端を含まない領域を第一側領域とし、前記後縁中で前記第一側領域から前記翼高さ第二側に離れ且つ前記翼高さ第二側の端を含む領域を第二側領域とし、前記複数の後端空気通路における前記後縁開口の、前記翼高さ方向における前記後縁の単位長さ当たりの開口面積を開口率とした場合、複数の後端空気通路における後縁開口の開口率は、前記第二側領域よりも前記第一側領域の方が高い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンが備える静翼において、
断面の形状が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を有する翼高さ方向に延びる翼体と、
前記翼体の、前記翼高さ方向における翼高さ第一側と翼高さ第二側とのうちの前記翼高さ第一側に設けられ、タービンケーシングに取り付け可能に構成されている外側シュラウドと、
前記翼体内を前記翼高さ方向に延びている複数の翼空気通路と、
前記翼高さ方向に並んでいる複数の後端空気通路と、
を有し、
前記翼体は、翼高さ方向に延びる前縁及び後縁を有し、
前記複数の翼空気通路は、前記前縁の側から前記後縁の側に向かって並び、
前記複数の翼空気通路のうち、最も前記前縁の側の翼空気通路である前側翼空気通路は、前記前側翼空気通路の前記翼高さ第一側の端に、冷却空気が流入可能な入口開口を有し、
前記複数の翼空気通路は、通路が前記翼高さ方向にうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、前記複数の翼空気通路のうち、互に隣り合う翼空気通路が、前記翼高さ第一側の端と前記翼高さ第二側の端とのうち、一方の端で互いに連通し、
前記複数の後端空気通路は、前記複数の翼空気通路のうち、最も前記後縁の側の翼空気通路である後側翼空気通路から前記後縁に向かって延び、前記後縁で開口している後縁開口を有し、
前記翼高さ方向に延びる前記後縁中で前記翼高さ第一側の端を含み前記翼高さ第二側の端を含まない領域を第一側領域とし、前記後縁中で前記第一側領域から前記翼高さ第二側に離れ且つ前記翼高さ第二側の端を含む領域を第二側領域とし、前記複数の後端空気通路における前記後縁開口の、前記翼高さ方向における前記後縁の単位長さ当たりの開口面積を開口率とした場合、
複数の後端空気通路における後縁開口の開口率は、前記第二側領域よりも前記第一側領域の方が高い、
静翼。
【請求項2】
請求項1に記載の静翼において、
複数の前記後縁開口の数は、前記第二側領域よりも第一側領域の方が多い、
静翼。
【請求項3】
請求項1に記載の静翼において、
前記後縁中で、前記翼高さ方向における前記第一側領域と前記第二側領域との間の中間領域の前記開口率は、前記第二側領域の前記開口率より高く、前記第一側領域の前記開口率より低い、
静翼。
【請求項4】
請求項3に記載の静翼において、
前記第一側領域の前記開口率は、前記中間領域の前記開口率の三倍以上高い、
静翼。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の静翼において、
前記第二側領域の開口率は、0である、
静翼。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の静翼において、
前記第一側領域は、前記後縁中で、前記後縁の前記翼高さ第一側の端から前記翼高さ第二側に前記後縁における前記翼高さ方向の長さの25%以内の領域であり、
前記第二側領域は、前記後縁中で、前記後縁の前記翼高さ第二側の端から前記翼高さ第一側に前記後縁における前記翼高さ方向の長さの25%以内の領域である、
静翼。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか一項に記載の静翼において、
前記複数の翼空気通路の数は、偶数個である、
静翼。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載の静翼において、
前記複数の翼空気通路の数は、2個である、
静翼。
【請求項9】
軸線を中心として回転可能なタービンロータと、
前記タービンロータの外周側を覆うタービンケーシングと、
前記軸線が延びる軸線方向に並び、前記タービンケーシングの内周側に取り付けられている複数の静翼列と、
を備え、
前記複数の静翼列は、いずれも、前記軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を有し、
前記複数の静翼列のうち、前記軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうちで最も前記軸線下流側の静翼列である最終段の静翼列が有する複数の前記静翼のそれぞれは、請求項1から4のいずれか一項に記載の静翼であり、
前記翼高さ方向が前記軸線に対する径方向になり、前記翼高さ第一側が前記径方向における径方向内側と径方向外側とのうちの前記径方向外側になり、前記前縁に対する前記後縁が存在する側が前記軸線下流側になるよう、前記最終段の静翼列が有する複数の前記静翼のそれぞれは、前記タービンケーシングに取り付けられている、
ガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静翼、及びこれを備えているガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機と、圧縮空気中で燃料を燃焼させて燃焼ガスを生成する燃焼器と、燃焼ガスで駆動するタービンと、を備える。タービンは、軸線を中心として回転するタービンロータと、このロータを覆うタービンケーシングと、複数の静翼列と、を備える。タービンロータは、軸線を中心とするロータ軸と、ロータ軸に取り付けられている複数の動翼列と、を有する。複数の動翼列は、軸線が延びる軸線方向に並んでいる。各動翼列は、いずれも、軸線に対する周方向に並ぶ複数の動翼を有する。複数の静翼列は、軸線方向に並んで、タービンケーシングの内周側に取り付けられている。複数の静翼列のそれぞれは、複数の動翼列のうちのいずれか一の動翼列の軸線上流側Dauに配置されている。各静翼列は、いずれも、軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を有する。
【0003】
静翼は、軸線に対する径方向に垂直な断面が翼形を成し径方向に延びている翼体と、翼体の径方向内側に設けられている内側シュラウドと、翼体の径方向外側に設けられている外側シュラウドと、を有する。静翼の翼体は、燃焼ガスが通る燃焼ガス流路内に配置される。内側シュラウドは、燃焼ガス流路の径方向内側の縁を画定する。外側シュラウドは、燃焼ガス流路の径方向外側の縁を画定する。
【0004】
ガスタービンの静翼は、高温の燃焼ガスに晒される。このため、静翼は、一般的に、空気等で冷却される。
【0005】
例えば、以下の特許文献1に記載の静翼の翼体には、冷却空気が流通可能な複数の翼空気通路及び複数の後縁空気通路が形成されている。複数の翼空気通路は、いずれも、径方向に延びている。複数の翼空気通路は、翼体の前縁の側から後縁の側に向かって並んでいる。複数の翼空気通路のうちで最も前縁の側の翼空気通路である前側翼空気通路は、この前側翼空気通路の径方向外側の端が入口開口を成している。複数の翼空気通路のうちで前側翼空気通路に対して後縁側に隣接する翼空気通路である後冷却通路は、互いの径方向内側の部分で前側翼空気通路と連通している。複数の後縁空気通路は、径方向に並んでいる。複数の後縁空気通路は、いずれも、後側翼空気通路から後縁に向かって延び、後縁で開口している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-319852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガスタービンの静翼に関しては、この静翼を冷却して、静翼の耐久性を向上させつつも、この静翼を冷却するための空気の使用量を抑えることが望まれている。
【0008】
そこで、本開示は、冷却空気で効果的に冷却されて耐久性の向上が図られつつも、冷却空気の使用量を抑えることができる静翼、及びこの静翼を備えているガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための発明に係る一態様の静翼は、
ガスタービンが備える静翼において、断面の形状が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を有する翼高さ方向に延びる翼体と、前記翼体の、前記翼高さ方向における翼高さ第一側と翼高さ第二側とのうちの前記翼高さ第一側に設けられ、タービンケーシングに取り付け可能に構成されている外側シュラウドと、前記翼体内を前記翼高さ方向に延びている複数の翼空気通路と、前記翼高さ方向に並んでいる複数の後端空気通路と、を有する。前記翼体は、翼高さ方向に延びる前縁及び後縁を有する。前記複数の翼空気通路は、前記前縁の側から前記後縁の側に向かって並ぶ。前記複数の翼空気通路のうち、最も前記前縁の側の翼空気通路である前側翼空気通路は、前記前側翼空気通路の前記翼高さ第一側の端に、冷却空気が流入可能な入口開口を有する。前記複数の翼空気通路は、通路が前記翼高さ方向にうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、前記複数の翼空気通路のうち、互に隣り合う翼空気通路が、前記翼高さ第一側の端と前記翼高さ第二側の端とのうち、一方の端で互いに連通している。前記複数の後端空気通路は、前記複数の翼空気通路のうち、最も前記後縁の側の翼空気通路である後側翼空気通路から前記後縁に向かって延び、前記後縁で開口している後縁開口を有する。前記翼高さ方向に延びる前記後縁中で前記翼高さ第一側の端を含み前記翼高さ第二側の端を含まない領域を第一側領域とする。前記後縁中で前記第一側領域から前記翼高さ第二側に離れ且つ前記翼高さ第二側の端を含む領域を第二側領域とする。前記複数の後端空気通路における前記後縁開口の、前記翼高さ方向における前記後縁の単位長さ当たりの開口面積を開口率とする。この場合、複数の後端空気通路における後縁開口の開口率は、前記第二側領域よりも前記第一側領域の方が高い。
【0010】
近年、ガスタービンの性能を向上させるため、翼体の翼高さを高くする、言い換えると、翼体の径方向の長さを長くする方法が検討されている。翼体の径方向の長さを長くすると翼体が燃焼ガスから受ける力が増加すると共に、翼体の径方向外側の端を中心として、翼体の径方向内側の端が軸線下流側に回ろうとするモーメントが増加する。このようにモーメントが増加すると、翼体の後縁周りであって径方向外側の部分の強度を高める必要がある。一方で、モーメントが増加しても、翼体の径方向内側の部分は、静翼の自由端の側であるため、この部分の強度を高める必要はない。
【0011】
そこで、本態様では、第二側領域の開口率を低くして、冷却空気の使用量を抑える一方で、第一側領域の開口率を高くして、第一側領域の冷却性能を高めて、第一側領域周りの強度の低下を抑えている。よって、本態様では、静翼を効果的に冷却して、静翼の耐久性の向上を図りつつも冷却空気の使用量を抑えることができる。
【0012】
前記目的を達成するための発明に係る一態様のガスタービンは、
軸線を中心として回転可能なタービンロータと、前記タービンロータの外周側を覆うタービンケーシングと、前記軸線が延びる軸線方向に並び、前記タービンケーシングの内周側に取り付けられている複数の静翼列と、を備える。前記複数の静翼列は、いずれも、前記軸線に対する周方向に並ぶ複数の静翼を有する。前記複数の静翼列のうち、前記軸線方向における軸線上流側と軸線下流側とのうちで最も前記軸線下流側の静翼列である最終段の静翼列が有する複数の前記静翼のそれぞれは、前記一態様における静翼である。前記翼高さ方向が前記軸線に対する径方向になり、前記翼高さ第一側が前記径方向における径方向内側と径方向外側とのうちの前記径方向外側になり、前記前縁に対する前記後縁が存在する側が前記軸線下流側になるよう、前記最終段の静翼列が有する複数の前記静翼のそれぞれは、前記タービンケーシングに取り付けられている。
【発明の効果】
【0013】
本開示の一態様によれば、静翼を冷却空気で効果的に冷却して、静翼の耐久性の向上を図りつつも、冷却空気の使用量を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの模式的な断面図である。
図2】本開示に係る一実施形態におけるガスタービンの要部断面図である。
図3】本開示に係る一実施形態における静翼の断面図である。
図4図3におけるIV-IV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各種実施形態及びその変形例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
「ガスタービンの実施形態」
ガスタービンの実施形態について、図1及び図2を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態におけるガスタービン1は、外気Aを圧縮して圧縮空気Acomを生成する圧縮機10と、燃料供給源からの燃料Fを圧縮空気Acom中で燃焼させて燃焼ガスGを生成する燃焼器20と、燃焼ガスGにより駆動するタービン30と、を備える。
【0018】
圧縮機10は、軸線Arを中心として回転する圧縮機ロータ11と、圧縮機ロータ11を覆う圧縮機ケーシング15と、複数の静翼列18と、を有する。タービン30は、軸線Arを中心として回転するタービンロータ31と、タービンロータ31を覆うタービンケーシング35と、複数の静翼列38と、を有する。なお、以下では、軸線Arが延びる方向を軸線方向Da、この軸線Arを中心とした周方向を単に周方向Dcとし、軸線Arに対して垂直な方向を径方向Drとする。また、軸線方向Daの一方側を軸線上流側Dau、その反対側を軸線下流側Dadとする。また、径方向Drで軸線Arに近づく側を径方向内側Dri、その反対側を径方向外側Droとする。
【0019】
圧縮機10は、タービン30に対して軸線上流側Dauに配置されている。
【0020】
圧縮機ロータ11とタービンロータ31とは、同一軸線Ar上に位置し、互いに接続されてガスタービンロータ2を成す。このガスタービンロータ2には、例えば、発電機GENのロータが接続されている。ガスタービン1は、さらに、中間ケーシング6を備える。この中間ケーシング6は、軸線方向Daで、圧縮機ケーシング15とタービンケーシング35との間に配置されている。圧縮機ケーシング15と中間ケーシング6とタービンケーシング35とは、互いに接続されてガスタービンケーシング5を成す。
【0021】
圧縮機ロータ11は、図1及び図2に示すように、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸12と、このロータ軸12に取り付けられている複数の動翼列13と、を有する。複数の動翼列13は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列13は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列13の各軸線下流側Dadには、複数の静翼列18のうちのいずれか一の静翼列18が配置されている。各静翼列18は、圧縮機ケーシング15の内側に設けられている。各静翼列18は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0022】
タービンロータ31は、軸線Arを中心として軸線方向Daに延びるロータ軸32と、このロータ軸32に取り付けられている複数の動翼列33と、を有する。複数の動翼列33は、軸線方向Daに並んでいる。各動翼列33は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の動翼で構成されている。複数の動翼列33の各軸線上流側Dauには、複数の静翼列38のうちのいずれか一の静翼列38が配置されている。各静翼列38は、タービンケーシング35の内側に設けられている。各静翼列38は、いずれも、周方向Dcに並んでいる複数の静翼で構成されている。
【0023】
ロータ軸32の外周側とタービンケーシング35の内周側との間であって、軸線方向Daで動翼列33及び静翼列38が配置されている環状の空間は、燃焼器20からの燃焼ガスGが流れる燃焼ガス流路39を成す。
【0024】
タービンケーシング35は、図2に示すように、タービンケーシング本体36と、複数の分割環37と、を有する。分割環37は、動翼列33の径方向外側Droに位置して、動翼列33と径方向Drで対向する。この分割環37は、動翼列33が存在する軸線方向Daの位置における、燃焼ガス流路39の径方向外側Droの縁を確定する。タービンケーシング本体36は、タービンロータ31の外周を囲むように軸線Arを中心として筒状を成す。このタービンケーシング本体36の内周側の部分に、複数の静翼列38及び複数の分割環37が取り付けられている。
【0025】
燃焼器20は、中間ケーシング6に取り付けられている。燃焼器20は、燃料Fが内部で燃焼する尾筒(又は燃焼筒)22と、この尾筒22内に燃料を噴射する複数のバーナ21と、を有する。
【0026】
図1に示すように、圧縮機10は、外気Aを圧縮して圧縮空気Acomを生成する。この圧縮空気Acomは、燃焼器20内に流入する。燃焼器20には、燃料Fが供給される。燃焼器20のバーナ21は、燃料Fと共に圧縮空気Acomを尾筒22内に噴射する。尾筒22内では、圧縮空気Acom中で燃料Fが燃焼して、高温高圧の燃焼ガスGが生成される。この燃焼ガスGは、尾筒22からタービン30内の燃焼ガス流路39に送られる。燃焼ガスGは、燃焼ガス流路39を軸線下流側Dadへ流れる過程で、タービンロータ31を回転させる。このタービンロータ31の回転で、ガスタービンロータ2に接続されている発電機GENのロータが回転する。この結果、発電機GENは発電する。
【0027】
以下、複数の静翼列38のうち、最も軸線下流側Dadの静翼列38を構成する静翼について説明する。
【0028】
「静翼の実施形態」
以下、図3及び図4を参照して、静翼の実施形態について説明する。
【0029】
図3に示すように、本実施形態の静翼40は、翼体41と、外側シュラウド45oと、内側シュラウド45iと、シール装置49と、を有する。翼体41は、その断面の形状が翼形を成し、断面に対して垂直な方向成分を有する翼高さ方向Dhに延びている。外側シュラウド45oは、翼体41における翼高さ方向Dhの一方側である翼高さ第一側Dh1の端に設けられている。内側シュラウド45iは、翼体41における翼高さ方向Dhの他方側である翼高さ第二側Dh2の端に設けられている。翼体41と、内側シュラウド45iと、外側シュラウド45oとは、鋳物等で一体形成されている。シール装置49は、内側シュラウド45iの翼高さ第二側Dh2に設けられている。
【0030】
静翼40がタービンケーシング35に取り付けられた状態(図2参照)では、翼高さ方向Dhが径方向Drになる。また、翼高さ方向Dhの一方側である翼高さ第一側Dh1は、径方向外側Droになり、翼高さ方向Dhの他方側である翼高さ第二側Dh2は、径方向外側Driになる。このため、内側シュラウド45iは、翼体41の径方向内側Driに設けられ、外側シュラウド45oは、翼体41の径方向外側Droに設けられることになる。そこで、本実施形態では、翼高さ方向Dhを径方向Dr、翼高さ第一側Dh1を径方向内側Dri、翼高さ第二側Dh2を径方向外側Droという場合がある。
【0031】
シール装置49は、径方向Drにおける静翼40とロータ軸32との間をシールする。外側シュラウド45oは、分割環37と共に、環状の燃焼ガス流路39の径方向外側Droの縁の一部を画定する。また、内側シュラウド45iは、環状の燃焼ガス流路39の径方向内側Driの縁の一部を画定する。
【0032】
外側シュラウド45oは、外側シュラウド本体46oと、フック部48oと、を有する。外側シュラウド本体46oは、翼高さ方向Dhである径方向Drに垂直な方向の方向成分を含む方向に広がる板状の部材である。この外側シュラウド本体46oは、ガスパス面47opと、反ガスパス面47ooと、を有する。ガスパス面47opは、翼高さ第二側Dh2である径方向内側Driを向き、反ガスパス面47ooは、翼高さ第一側Dh1である径方向外側Droを向く面である。この反ガスパス面47ooは、ガスパス面47opと背合わせの関係である。フック部48oは、外側シュラウド本体46oの反ガスパス面47ooに設けられている。このフック部48oは、タービンケーシング本体36に取り付け可能に構成されている。
【0033】
内側シュラウド45iは、内側シュラウド本体46iと、シール取付部48iと、を有する。内側シュラウド本体46iは、翼高さ方向Dhである径方向Drに垂直な方向の方向成分を含む方向に広がる板状の部材である。この内側シュラウド本体46iは、ガスパス面47ipと、反ガスパス面47ioと、を有する。ガスパス面47ipは、翼高さ第一側Dh1である径方向外側Droを向き、燃焼ガスGが接する面である。反ガスパス面47ioは、翼高さ第二側Dh2である径方向内側Driを向く面である。この反ガスパス面47ioは、ガスパス面47ipと背合わせの関係である。シール取付部48iは、内側シュラウド本体46iの反ガスパス面47ioに設けられている。このシール取付部48iは、シール装置49を保持可能に構成されている。
【0034】
翼体41の外面である翼面は、図4に示すように、前縁42fと、後縁42bと、凸状の面である負圧面43nと、凹状の面である正圧面43pと、を有する。前縁42f及び後縁42bは、負圧面43nと正圧面43pとのつながり部分に存在する。前縁42f、後縁42b、負圧面43n及び正圧面43pは、いずれも、翼高さ方向Dhである径方向Drに延びている。静翼40がタービンケーシング35に取り付けられた状態で、前縁42fは、後縁42bに対して軸線上流側Dauに位置する。
【0035】
翼体41は、燃焼ガスGが通る燃焼ガス流路39内に配置されている。この翼体41は、翼体41内で翼高さ方向Dhに延びる複数の翼空気通路50と、翼体41内で翼高さ方向Dhに並んでいる複数の後端空気通路55と、を有する。
【0036】
翼体41内に形成されている複数の翼空気通路50は、翼体41のキャンバーラインCLに沿って並んでいる。ここで、複数の翼空気通路50のうち、最も軸線上流側Dauの翼空気通路50、言い換えると、最も前縁42fの側の翼空気通路50を前側翼空気通路51とし、最も軸線下流側Dadの翼空気通路50を後側翼空気通路52とする。複数の翼空気通路50は、翼高さ方向Dhに通路がうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、複数の翼空気通路50のうちで互に隣り合う翼空気通路50が、翼高さ第一側Dh1と翼高さ第二側Dh2とのうち、一方の端で互いに連通している。本実施形態の静翼40は、翼空気通路50を偶数である2個有する。よって、本実施形態では、前側翼空気通路51と後側翼空気通路52とが互いに隣り合っている。
【0037】
前側翼空気通路51は、外側シュラウド45oの反ガスパス面47ooで開口する入口開口51oを有する。前側翼空気通路51は、この入口開口51oから翼高さ第二側Dh2に向かって延びている。タービンケーシング本体36には、冷却空気Acoolが流通可能なケーシング空気通路36pが形成されている。タービンケーシング本体36のケーシング空気通路36pから流出した冷却空気Acoolは、前側翼空気通路51の入口開口51oからこの前側翼空気通路51内に流入する。冷却空気Acoolは、この前側翼空気通路51内を流れる過程で、翼体41中で前側翼空気通路51周りを対流冷却する。前側翼空気通路51と後側翼空気通路52とは、互いの翼高さ第二側Dh2の端で互いに連通している。よって、前側翼空気通路51を通った冷却空気Acoolは、後側翼空気通路52の翼高さ第二側Dh2の端から後側翼空気通路52内に流入し、この後側翼空気通路52内を翼高さ第一側Dh1に流れる。冷却空気Acoolは、この後側翼空気通路52内を流れる過程で、翼体41中で後側翼空気通路52周りを対流冷却する。
【0038】
複数の後端空気通路55は、後側翼空気通路52から後縁42bに向かって延びている。複数の後端空気通路55は、後縁42bで開口している後縁開口55oを有する。後側翼空気通路52内を流れている冷却空気Acoolは、複数の後端空気通路55に流入する。冷却空気Acoolは、この後端空気通路55を流れる過程で、翼体41中で後端空気通路55周りを対流冷却する。後端空気通路55を通った冷却空気Acoolは、後縁開口55oから燃焼ガス流路39内に噴出される。
【0039】
ここで、後縁42b中で、後縁42bの翼高さ第一側Dh1の端から翼高さ第二側Dh2に後縁42bにおける翼高さ方向Dhの長さの25%以内の領域を第一側領域R1とする。後縁42b中で、後縁42bの翼高さ第二側Dh2の端から翼高さ第一側Dh1に後縁42bにおける翼高さ方向Dhの長さの25%以内の領域を第二側領域R2とする。さらに、後縁42b中で、翼高さ方向Dhにおける第一側領域R1と第二側領域R2との間の領域を中間領域RMとする。また、複数の後端空気通路55における後縁開口55oの、翼高さ方向Dhにおける後縁42bの単位長さ当たりの開口面積を開口率とする。
【0040】
本実施形態における後縁開口55oの開口率は、第二側領域R2よりも第一側領域R1の方が高い。本実施形態における複数の後端空気通路55毎の後縁開口55oの開口面積は、互に同じである。このため、本実施形態では、後縁開口55oの数が、第二側領域R2より第一側領域R1の方が多い。具体的に、第二側領域R2の後縁開口55oの数は0、言い換えると、第二側領域R2の開口率は0である。一方で、中間領域RM及び第一側領域R1には、複数の後縁開口55oが形成されている。第一側領域R1の後縁開口55oの数は、中間領域RMの後縁開口55oの数の三倍以上、言い換えると、第一側領域R1の後縁開口55oの開口率は、中間領域RMの後縁開口55oの開口率の三倍以上である。
【0041】
近年、ガスタービンの性能を向上させるため、翼体41の翼高さを高くする、言い換えると、翼体41の径方向Drの長さを長くする方法が検討されている。翼体41の径方向Drの長さを長くすると翼体41が燃焼ガスGから受ける力が増加すると共に、翼体41の径方向外側Droの端を中心として、翼体41の径方向内側Driの端が軸線下流側Dadに回ろうとするモーメントが増加する。このようにモーメントが増加すると、翼体41の後縁42b周りであって径方向外側Droの部分の強度を高める必要がある。一方で、モーメントが増加しても、翼体41の径方向内側Driの部分は、静翼40の自由端の側であるため、この部分の強度を高める必要はない。
【0042】
そこで、本実施形態では、第二側領域R2の開口率を低くして、冷却空気Acoolの使用量を抑える一方で、第一側領域R1の開口率を高くして、第一側領域R1の冷却性能を高めて、第一側領域R1周りの強度の低下を抑えている。よって、本実施形態では、静翼40を効果的に冷却して、静翼40の耐久性の向上を図りつつも冷却空気Acoolの使用量を抑えることができる。特に、本実施形態では、第二側領域R2の開口率を0にして、冷却空気Acoolの使用量を抑え、第一側領域R1の開口率を中間領域RMの開口率の三倍以上にして、第一側領域R1の冷却性能を高めているので、静翼40を極めて効果的に冷却することができる。
【0043】
ここで、開口率を高める方法としては、後縁開口55oの開口面積を大きくする方法と、後縁開口55oの数を多くする方法とがある。本実施形態のように、第一側領域R1における複数の後縁開口55oの数を多くして、この第一側領域R1における複数の後縁開口55oのピッチを狭くすると、後縁開口55oの開口面積を大きくする方法よりも、第一側領域R1周りを均等に冷却することができる。
【0044】
本実施形態のように、複数の翼空気通路50の数が偶数個の場合、最も後縁42bの側の翼空気通路50である後側翼空気通路52内では、冷却空気Acoolが翼高さ第一側Dh1に流れる。このため、後側翼空気通路52内では、翼高さ第二側Dh2の部分を流れる冷却空気Acoolの温度よりも翼高さ第一側Dh1の部分を流れる冷却空気Acoolの温度が高くなる。温度の高い冷却空気Acoolで第一側領域R1周りを冷却する場合には、温度の低い冷却空気Acoolで第一側領域R1周りを冷却する場合よりも、後縁開口55oの開口率を多くする必要がある。よって、この観点から、複数の翼空気通路50が特に偶数個の場合には、複数の後端空気通路55における後縁開口55oの開口率を、第二側領域R2よりも第一側領域R1の方を高くすべきである。
【0045】
「静翼の変形例」
以上の実施形態の静翼40は、複数の静翼列38のうち、最も軸線下流側Dadの静翼列38を構成する静翼40である。しかしながら、本開示に係る静翼は、複数の静翼列38のうち、最も軸線下流側Dadの静翼列38を除く静翼列38を構成する静翼であってもよい。例えば、本開示に係る静翼は、複数の静翼列38のうち、最も軸線下流側Dadの静翼列38より一列だけ軸線上流側Dauの静翼列38を構成する静翼であってもよい。
【0046】
以上の実施形態の静翼40は、偶数である2個の翼空気通路50を有する。しかしながら、本開示に係る静翼は、3以上の翼空気通路50を有してもよい。但し、翼空気通路50の数は、偶数個であることが好ましい。
【0047】
以上の実施形態では、第二側領域R2の開口率が0である。しかしながら、第二側領域R2の開口率より第一側領域R1の開口率が高ければ、第二側領域R2の開口率が0でなくてもよい。
【0048】
以上の実施形態では、開口率を高めるため、後縁開口55oの数を増やしている。しかしながら、開口率を高めるために、後縁開口55oの開口面積を大きくしてもよい。但し、前述したように、開口率を高める場合には、前述したように、均一冷却の観点から、後縁開口55oの数を増やすことが好ましい。
【0049】
以上の実施形態では、後縁42b中で、後縁42bの翼高さ第一側Dh1の端から翼高さ第二側Dh2に後縁42bにおける翼高さ方向Dhの長さの25%以内の領域を第一側領域R1にしている。また、以上の実施形態では、後縁42b中で、後縁42bの翼高さ第二側Dh2の端から翼高さ第一側Dh1に後縁42bにおける翼高さ方向Dhの長さの25%以内の領域を第二側領域R2にしている。しかしながら、25%という値は、静翼40の周りの燃焼ガスGの温度や静翼40に流入する冷却空気Acoolの温度、さらに、静翼40が有する翼空気通路50の数や、この静翼40で構成される静翼列38の位置に応じて、15%から40%の範囲内で適宜変更してもよい。例えば、後縁42b中で、後縁42bの翼高さ第一側Dh1の端から翼高さ第二側Dh2に後縁42bにおける翼高さ方向Dhの長さの30%以内の領域を第一側領域R1にし、後縁42b中で、後縁42bの翼高さ第二側Dh2の端から翼高さ第一側Dh1に後縁42bにおける翼高さ方向Dhの長さの20%以内の領域を第二側領域R2にしてもよい。
【0050】
本開示は、以上で説明した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容及びその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲において、種々の追加、変更、置き換え、部分的削除等が可能である。
【0051】
「付記」
以上の実施形態及び変形例における静翼は、例えば、以下のように把握される。
【0052】
(1)第一態様における静翼は、
ガスタービンが備える静翼40において、断面の形状が翼形を成し、前記断面に対して垂直な方向成分を有する翼高さ方向Dhに延びる翼体41と、前記翼体41の、前記翼高さ方向Dhにおける翼高さ第一側Dh1と翼高さ第二側Dh2とのうちの前記翼高さ第一側Dh1に設けられ、タービンケーシング35に取り付け可能に構成されている外側シュラウド45oと、前記翼体41内を前記翼高さ方向Dhに延びている複数の翼空気通路50と、前記翼高さ方向Dhに並んでいる複数の後端空気通路55と、を有する。前記翼体41は、翼高さ方向Dhに延びる前縁42f及び後縁42bを有する。前記複数の翼空気通路50は、前記前縁42fの側から前記後縁42bの側に向かって並ぶ。前記複数の翼空気通路50のうち、最も前記前縁42fの側の翼空気通路50である前側翼空気通路51は、前記前側翼空気通路51の前記翼高さ第一側Dh1の端に、冷却空気Acoolが流入可能な入口開口51oを有する。前記複数の翼空気通路50は、通路が前記翼高さ方向Dhにうねっている一つのサーペンタイン通路を構成するよう、前記複数の翼空気通路50のうち、互に隣り合う翼空気通路50が、前記翼高さ第一側Dh1の端と前記翼高さ第二側Dh2の端とのうち、一方の端で互いに連通している。前記複数の後端空気通路55は、前記複数の翼空気通路50のうち、最も前記後縁42bの側の翼空気通路50である後側翼空気通路52から前記後縁42bに向かって延び、前記後縁42bで開口している後縁開口55oを有する。前記翼高さ方向Dhに延びる前記後縁42b中で前記翼高さ第一側Dh1の端を含み前記翼高さ第二側Dh2の端を含まない領域を第一側領域R1とする。前記後縁42b中で前記第一側領域R1から前記翼高さ第二側Dh2に離れ且つ前記翼高さ第二側Dh2の端を含む領域を第二側領域R2とする。前記複数の後端空気通路55における前記後縁開口55oの、前記翼高さ方向Dhにおける前記後縁42bの単位長さ当たりの開口面積を開口率とする。この場合、複数の後端空気通路55における後縁開口55oの開口率は、前記第二側領域R2よりも前記第一側領域R1の方が高い。
【0053】
近年、ガスタービンの性能を向上させるため、翼体41の翼高さを高くする、言い換えると、翼体41の径方向Drの長さを長くする方法が検討されている。翼体41の径方向Drの長さを長くすると翼体41が燃焼ガスGから受ける力が増加すると共に、翼体41の径方向外側Droの端を中心として、翼体41の径方向内側Driの端が軸線下流側Dadに回ろうとするモーメントが増加する。このようにモーメントが増加すると、翼体41の後縁42b周りであって径方向外側Droの部分の強度を高める必要がある。一方で、モーメントが増加しても、翼体41の径方向内側Driの部分は、静翼40の自由端の側であるため、この部分の強度を高める必要はない。
【0054】
そこで、本態様では、第二側領域R2の開口率を低くして、冷却空気Acoolの使用量を抑える一方で、第一側領域R1の開口率を高くして、第一側領域R1の冷却性能を高めて、第一側領域R1周りの強度の低下を抑えている。よって、本態様では、静翼40を効果的に冷却して、静翼40の耐久性の向上を図りつつも冷却空気Acoolの使用量を抑えることができる。
【0055】
(2)第二態様における静翼は、
前記第一態様における静翼40において、複数の前記後縁開口55oの数は、前記第二側領域R2よりも第一側領域R1の方が多い。
【0056】
開口率を高める方法としては、後縁開口55oの開口面積を大きくする方法と、後縁開口55oの数を多くする方法とがある。本態様のように、第一側領域R1における複数の後縁開口55oの数を多くして、この第一側領域R1における複数の後縁開口55oのピッチを狭くすると、後縁開口55oの開口面積を大きくする方法よりも、第一側領域R1周りを均等に冷却することができる。
【0057】
(3)第三態様における静翼は、
前記第一態様又は前記第二態様における静翼40において、前記後縁42b中で、前記翼高さ方向Dhにおける前記第一側領域R1と前記第二側領域R2との間の中間領域RMの前記開口率は、前記第二側領域R2の前記開口率より高く、前記第一側領域R1の前記開口率より低い。
【0058】
(4)第四態様における静翼は、
前記第三態様における静翼40において、前記第一側領域R1の前記開口率は、前記中間領域RMの前記開口率の三倍以上高い。
【0059】
本態様では、翼体41中で第一側領域R1周りの冷却性能を高めることができる。
【0060】
(5)第五態様における静翼は、
前記第一態様から前記第四態様のうちのいずれか一態様における静翼40において、前記第二側領域R2の開口率は、0である、
静翼40。
【0061】
本態様では、冷却空気Acoolの使用量を抑えることができる。
【0062】
(6)第六態様における静翼は、
前記第一態様から前記第五態様のうちのいずれか一態様における静翼40において、前記第一側領域R1は、前記後縁42b中で、前記後縁42bの前記翼高さ第一側Dh1の端から前記翼高さ第二側Dh2に前記後縁42bにおける前記翼高さ方向Dhの長さの25%以内の領域である。前記第二側領域R2は、前記後縁42b中で、前記後縁42bの前記翼高さ第二側Dh2の端から前記翼高さ第一側Dh1に前記後縁42bにおける前記翼高さ方向Dhの長さの25%以内の領域である。
【0063】
(7)第七態様における静翼は、
前記第一態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様における静翼40において、前記複数の翼空気通路50の数は、偶数個である。
【0064】
複数の翼空気通路50のうち、最も前縁42fの側の翼空気通路50である前側翼空気通路51の入口開口51oから前側翼空気通路51内に流入した冷却空気Acoolは、この前側翼空気通路51内を翼高さ第二側Dh2に流れる。複数の翼空気通路50の数が偶数個の場合、最も後縁42bの側の翼空気通路50である後側翼空気通路52内では、冷却空気Acoolが翼高さ第一側Dh1に流れる。このため、後側翼空気通路52内では、翼高さ第二側Dh2の部分を流れる冷却空気Acoolの温度よりも翼高さ第一側Dh1の部分を流れる冷却空気Acoolの温度が高くなる。温度の高い冷却空気Acoolで第一側領域R1周りを冷却する場合には、温度の低い冷却空気Acoolで第一側領域R1周りを冷却する場合よりも、後縁開口55oの開口率を多くする必要がある。よって、この観点から、複数の翼空気通路50が特に偶数個の場合には、複数の後端空気通路55における後縁開口55oの開口率を、第二側領域R2よりも第一側領域R1の方を高くすべきである。
【0065】
(8)第八態様における静翼は、
前記第一態様から前記第六態様のうちのいずれか一態様における静翼40において、前記複数の翼空気通路50の数は、2個である。
【0066】
以上の実施形態におけるガスタービンは、例えば、以下のように把握される。
(9)第九態様におけるガスタービンは、
軸線Arを中心として回転可能なタービンロータ31と、前記タービンロータ31の外周側を覆うタービンケーシング35と、前記軸線Arが延びる軸線方向Daに並び、前記タービンケーシング35の内周側に取り付けられている複数の静翼列38と、を備える。前記複数の静翼列38は、いずれも、前記軸線Daに対する周方向Dcに並ぶ複数の静翼40を有する。前記複数の静翼列38のうち、前記軸線方向Daにおける軸線上流側Dauと軸線下流側Dadとのうちで最も前記軸線下流側Dadの静翼列38である最終段の静翼列38が有する複数の前記静翼40のそれぞれは、前記第一態様から前記第八態様のうちのいずれか一態様における静翼40である。前記翼高さ方向Dhが前記軸線Daに対する径方向Drになり、前記翼高さ第一側Dh1が前記径方向Drにおける径方向内側Driと径方向外側Droとのうちの前記径方向外側Droになり、前記前縁42fに対する前記後縁42bが存在する側が前記軸線下流側Dadになるよう、前記最終段の静翼列38が有する複数の前記静翼40のそれぞれは、前記タービンケーシング35に取り付けられている。
【符号の説明】
【0067】
1:ガスタービン
2:ガスタービンロータ
5:ガスタービンケーシング
6:中間ケーシング
10:圧縮機
11:圧縮機ロータ
12:ロータ軸
13:動翼列
15:圧縮機ケーシング
18:静翼列
20:燃焼器
21:バーナ
22:尾筒(又は燃焼筒)
30:タービン
31:タービンロータ
32:ロータ軸
33:動翼列
35:タービンケーシング
36:タービンケーシング本体
36p:ケーシング空気通路
37:分割環
38:静翼列
39:燃焼ガス流路
40:静翼
41:翼体
42f:前縁
42b:後縁
43n:負圧面
43p:正圧面
45o:外側シュラウド
46o:外側シュラウド本体
47op:ガスパス面
47oo:反ガスパス面
48o:フック部
45i:内側シュラウド
46i:内側シュラウド本体
47ip:ガスパス面
47io:反ガスパス面
48i:シール取付部
49:シール装置
50:翼空気通路
51:前側翼空気通路
51o:入口開口
52:後側翼空気通路
55:後端空気通路
55o:後縁開口
A:外気
Acom:圧縮空気
Acool:冷却空気
G:燃焼ガス
F:燃料
CL:キャンバーライン
Ar:軸線
Da:軸線方向
Dau:軸線上流側
Dad:軸線下流側
Dc:周方向
Dr:径方向
Dri:径方向内側
Dro:径方向外側
Dh:翼高さ方向
Dh1:翼高さ第一側
Dh2:翼高さ第二側
R1:第一側領域
R2:第二側領域
RM:中間領域
図1
図2
図3
図4