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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056139
(43)【公開日】2024-04-22
(54)【発明の名称】D型フリップフロップ
(51)【国際特許分類】
   H03K 3/012 20060101AFI20240415BHJP
   H03K 3/013 20060101ALI20240415BHJP
   H03K 3/3562 20060101ALI20240415BHJP
   H03K 3/037 20060101ALI20240415BHJP
【FI】
H03K3/012
H03K3/013
H03K3/3562 625
H03K3/037 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174874
(22)【出願日】2023-10-09
(31)【優先権主張番号】P 2022162846
(32)【優先日】2022-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023019542
(32)【優先日】2023-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】722011168
【氏名又は名称】近藤 利夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 利夫
【テーマコード(参考)】
5J300
【Fターム(参考)】
5J300AA03
5J300AA04
5J300AA06
5J300CC03
5J300DD02
5J300DD07
5J300HH01
5J300JJ04
5J300JJ08
5J300KK02
5J300KK06
5J300QA03
5J300QA04
5J300RA03
5J300SB01
5J300TB02
5J300TB03
5J300UA03
(57)【要約】
【課題】低消費電力化に効く低クロック信号負荷と従来回路を凌ぐ高速性を両立するスタティックD型フリップフロップを実現する。
【解決手段】共にPチャネルでノード2において直列接続されるクロックドFET16とクロックドでないFET15、15aを介して電源と、NチャネルでクロックドでないFET11,11aを介してグランドと、それぞれ接続されるノード1,1aにゲート端子を接続するNチャネルのFET12,12aと19,19aの併用駆動により、NチャネルのクロックドFETのパストランジスタ14,14aを介した交差結合インバータ対50への書き込みを高速化する。加えて、ノード1,1aが、クロック信号立ち上がり時にローレベルならば、そのローレベルをNチャネルのフィードバックFET13,13aとクロックドFET18によりクロック信号のハイレベルの期間中保ちリーク電流増を抑える。
【選択図】図12

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号の論理レベルに応じてラッチ、透過のいずれかの状態を取る前段、後段の2段のラッチからなるD型フリップフロップにおいて、該前段のラッチのうちに、ラッチ状態において論理レベルの一方のみを永続的に保持する半ラッチノードと該半ラッチノードにゲート端子を接続する後段のラッチ駆動用のFETを備えるラッチが含まれることと、該後段駆動FETを備えるラッチが該後段駆動FETを前記永続的に保持される論理レベルでオフするFETのみで構成する後段駆動がラッチ状態で永続しない非永続駆動ラッチであることと、前記後段のラッチが交差結合インバータ対と該インバータ対の交差結合ノードへの前記非永続駆動ラッチからの駆動を介するクロックドFETであるパストランジスタを備えることを特徴とするD型フリップフロップ。
【請求項2】
前記非永続駆動ラッチが、前記後段駆動FETのうちの1個であるソース接地の後段駆動FETのドレイン端子に自身のゲート端子を前記半ラッチノードに自身のドレイン端子をそれぞれ接続するチャネル極性が該ソース接地後段駆動FETと同一のフィードバックFETを備えることと、前記パストランジスタが前記交差結合ノードの対の一方に自身の入出力端子対の一方を接続する第1のパストランジスタと該交差結合ノード対のもう一方に自身の入出力端子対の一方を接続する第2のパストランジスタとからなることを特徴とする請求項1記載のD型フリップフロップ。
【請求項3】
前記非永続駆動ラッチが前記半ラッチノードを駆動する電流の流れる経路を形成するFETとして第1のクロックドFETとクロックドでないFETを備えることと、該クロックドでないFETが、前記第1のクロックドFETとはチャネル極性が同一である第1同一チャネルのFETとチャネル極性が逆である第1逆チャネルのFETとからなることと、前記駆動電流経路形成FETからなる回路が、前記第1のクロックドFETのドレイン端子と前記クロックドでない第1逆チャネルのFETのドレイン端子とを接続する第1のノードと、前記第1のクロックドFETのソース端子と前記クロックドでない第1同一チャネルのFETのドレイン端子を接続する第2のノードを、前記半ラッチノードとする構成を取っていることを特徴とする請求項2記載のD型フリップフロップ。
【請求項4】
前記前段のラッチとして前記非永続駆動ラッチを二つ備えることと、該二つのうちの一方の非永続駆動ラッチの前記ソース接地後段駆動FETのドレイン端子と前記二つのうちのもう一方の非永続駆動ラッチの前記ソース接地後段駆動FETのドレイン端子に、前記第1のパストランジスタの入出力端子対のもう一方と前記第2のパストランジスタの入出力端子対のもう一方を、それぞれ接続することを特徴とする請求項3記載のD型フリップフロップ。
【請求項5】
前記一方の非永続駆動ラッチの第1のノードにゲート端子を前記もう一方の非永続駆動ラッチの第2のノードにドレイン端子をそれぞれ接続する第1逆チャネルのソース接地FETと、前記もう一方の非永続駆動ラッチの第1のノードにゲート端子を前記一方の非永続駆動ラッチの第2のノードにドレイン端子をそれぞれ接続する第1逆チャネルのソース接地FETを備えることを特徴とする請求項4記載のD型フリップフロップ。
【請求項6】
前記一方の非永続駆動ラッチの第2のノードにゲート端子を前記もう一方の非永続駆動ラッチの第1のノードにドレイン端子をそれぞれ接続する第1同一チャネルのソース接地FETと、前記もう一方の非永続駆動ラッチの第2のノードにゲート端子を前記一方の非永続駆動ラッチの第1のノードにドレイン端子をそれぞれ接続する第1同一チャネルのソース接地FETを備えることを特徴とする請求項5記載のD型フリップフロップ。
【請求項7】
前記第1のノードにゲート端子の接続される前記ソース接地後段駆動FETのドレイン端子が前記第1のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に接続されることと、前記第1のノードにゲート端子の接続される前記後段駆動FETのうちの1個であるドレイン接地の後段駆動FETのソース端子が前記第2のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に接続されることを特徴とする請求項3記載のD型フリップフロップ。
【請求項8】
前記前段のラッチとして非永続駆動ラッチを二つ備えることと、該二つの非永続駆動ラッチが半ラッチノードを駆動する電流の流れる経路を形成するFETとして第1のクロックドFETとクロックドでないFETを備えることと、該クロックドでないFETが、チャネル極性が前記第1のクロックドFETと同一である第1同一チャネルのFETと逆である第1逆チャネルのFETを備えることと、前記駆動電流経路形成FETからなる回路が、前記クロックドでない第1同一チャネルのFETのドレイン端子と前記クロックドでない第1逆チャネルのソース接地FETのドレイン端子を接続するノードを前記半ラッチノードとする構成を取っていることと、前記二つのうちの一方の非永続駆動ラッチの前記ソース接地後段駆動FETのドレイン端子と前記二つのうちのもう一方の非永続駆動ラッチの前記ソース接地後段駆動FETのドレイン端子を、前記第1と第2のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に、それぞれ接続することを特徴とする請求項2記載のD型フリップフロップ。
【請求項9】
前記一方の非永続駆動ラッチの前記ソース接地後段駆動FETのドレイン端子に自身のゲート端子を、前記もう一方の非永続駆動ラッチの前記ソース接地後段駆動FETのドレイン端子に自身のドレイン端子を、それぞれ接続する第1同一チャネルのソース接地FETと、前記もう一方の非永続駆動ラッチの前記ソース接地後段駆動FETのドレイン端子に自身のゲート端子を、前記一方の非永続駆動ラッチの前記ソース接地後段駆動FETのドレイン端子に自身のドレイン端子を、それぞれ接続する第1同一チャネルのソース接地FETを備えることを特徴とする請求項8記載のD型フリップフロップ。
【請求項10】
前記第1のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に前記もう一方の非永続駆動ラッチの後段駆動FETのうちの1個であるドレイン接地FETのソース端子を接続することと、前記第2のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に前記一方の非永続駆動ラッチの前記後段駆動FETのうちの1個であるドレイン接地FETのソース端子を接続することを特徴とする請求項8記載のD型フリップフロップ。
【請求項11】
前記第1のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に前記もう一方の非永続駆動ラッチの後段駆動FETのうちの1個であるドレイン接地FETのソース端子を接続することと、前記第2のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に前記一方の非永続駆動ラッチの前記後段駆動FETのうちの1個であるドレイン接地FETのソース端子を接続することを特徴とする請求項9記載のD型フリップフロップ。
【請求項12】
前記第1のクロックドFETがソース接地FETであることと、該クロックドFETのドレイン端子に前記二つの非永続駆動ラッチの各々の前記半ラッチノードにドレイン端子を接続するクロックドでない第1同一チャネルのFETのソース端子が接続されることを特徴とする請求項11記載のD型フリップフロップ。
【請求項13】
互いに直列接続される2個の第1同一チャネルのFETを備えることと、該2個のFETの直列接続に用いない方のドレイン端子とソース端子を前記第1のクロックドFETのドレイン端子とソース端子にそれぞれ接続することと、前記2個のFETの各々のゲート端子を、前記二つのうちの一方の非永続駆動ラッチの前記ソース接地後段駆動FETのドレイン端子と、もう一方の非永続駆動ラッチの前記ソース接地後段駆動FETが前記パストランジスタを介して駆動する交差結合ノードに、それぞれ接続することを特徴とする請求項13記載のD型フリップフロップ。
【請求項14】
前記二つの非永続駆動ラッチの各々の前記フィードバックFETのソース端子と自身のドレイン端子を接続するソース接地で第1同一チャネルの第2のクロックドFETを備えることを特徴とする請求項4~6または8~13のいずれか一項に記載のD型フリップフロップ。
【請求項15】
前記第1のクロックドFETと直列接続されるクロックドでない第1同一チャネルのFETのゲート端子に入力される信号の反転を自身のゲート端子に入力すると共に、該クロックドでない第1同一チャネルのFETのドレイン端子とソース端子に自身のソース端子とドレイン端子をそれぞれ接続する第1逆チャネルのFETを前記非永続駆動ラッチが備えることを特徴とする請求項14記載のD型フリップフロップ。
【請求項16】
前記パストランジスタのゲート端子へ入力するクロック信号より位相の遅れた遅延クロック信号を前記非永続駆動ラッチ内のクロックドFETのゲート端子へ入力することを特徴とする請求項14記載のD型フリップフロップ。
【請求項17】
前記パストランジスタのゲート端子へ入力するクロック信号より位相の遅れた遅延クロック信号を前記非永続駆動ラッチ内のクロックドFETのゲート端子へ入力することを特徴とする請求項3または7のいずれか一項に記載のD型フリップフロップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMOS LSIの低消費電力化に寄与する低クロック信号負荷のスタティックD型フリップフロップ(以降DFFと記す)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DFFは、使用頻度の高い基本的な論理回路の一つで、回路単体の消費電力が大きいことから、CMOS LSIの論理部における電力消費のかなりの割合を占める。このため、DFF内部での電力消費の割合の大きいクロック信号負荷を抑えたACFF、TCFF、LLFF[非特許文献1参照]、LRFF[非特許文献2参照]等の低クロック信号負荷のDFFが提案されてきた。
【0003】
例えば図1に示すLRFFは、透過型スタティックラッチの代わりに、ローレベルの保持しかできないノード(以降半ラッチノードと記す)を備える半ラッチ機能付インバータ(段落0007で説明するクロックドCMOSインバータ相当)を用いることで、クロック信号入力のゲート端子数が4の低クロック信号負荷とわずか19個の電界効果トランジスタ(FET)による構成を両立している。しかし、速度性能では、これまで主流のインバータとパストランジスタからなるトランスミッションゲートフリップフロップ(以後TGFFと略記する)より劣る弱点がある。これは、パストランジスタ14とインバータ24の電源(Vdd)側からの駆動を、最悪条件ではオフに切り替わる途中のPチャネルFET161,31を含むことになる3個直列のPチャネルFETに頼っているからである。
【0004】
ここで、透過型スタティックラッチとは、その状態へ切り替わる時の入力を保持して出力し続けるラッチ状態と、自身への入力をそのまま通過させて出力し続ける透過状態とが、クロック信号の論理レベルに応じて切り替わる回路であり、スタティックDラッチとも呼ばれている。また、Vdd側からの駆動で、オフに切り替わる途中のPチャネルFET161,31に頼らざるを得ないのは、ラッチ状態でローレベルしか保持しない1段目の半ラッチ機能付インバータの出力ノードにゲート端子を接続するPチャネルの後段のラッチ駆動用FET(以降、後段駆動FETと記す)151がラッチ状態の途中でオンしても、貫通電流が生じないようにするためである。Pチャネルの後段駆動FET151がラッチ状態の途中でオンし得るのは、1段目の半ラッチ機能付インバータの出力が、ハイレベルを保持できないために、D信号入力がローレベルからハイレベルに切り替わり次第、ローレベル側へ落ちてしまうからである。さらに、直列とは一般にチャネル極性同一のFETが互いのドレインとソースを向かい合わせて連なることであるけれども、以降では、チャネル極性が同一のFET間であれば、1個のFETのドレインと複数個のFETのソースが向かい合う場合も、あるいは、1個のFETのソースと複数個のFETのドレインが向かい合う場合も、同じ直列と記す。なお、連結と記す場合は、直列接続だけでなく、チャネル極性が互いに逆のFETをそれらのドレイン同士で接続する場合も含める。
【0005】
このLRFF以外の低クロック信号負荷のDFFも、個別に理由は異なるものの、速度性能がTGFFより劣る、LSSD型スキャンフリップフロップの回路が複雑化し構成FETの少なさが損なわれる等の問題があった。このような状況の中、これらの問題を唯一解決していたと言えるのが、True Single-Phase Clock型(以降TSPCと略記する)のスプリットアウトプット構成を採る前段のラッチの対と、交差結合インバータ対とその交差結合ノード対の片方に自身の入出力端子対の一方をそれぞれ接続するクロックドFETのパストランジスタの対からなる後段のラッチを連結する2段構成のDFFである[非特許文献3参照]。ここで、クロックドFETとはゲート端子への入力がクロック信号のFETである。
【0006】
図2はその2段構成DFFの一形態の回路図であり、1,1aは半ラッチノードの第1のノード、2,2aは半ラッチノードの第2のノード、3,4は前段のラッチの出力ノード、5と5aは交差結合インバータ対50の交差結合ノード対、11,11aはNチャネルのソース接地FET、12,12aはNチャネルのソース接地の後段駆動FET、14,14aはパストランジスタとして動作するNチャネルのクロックドFET、15,15aはPチャネルのソース接地FET、16,16aはPチャネルのクロックドFET、20,20aはPチャネルのソース接地後段駆動FETである。また、25,26はインバータで、互いに交差結合されて、記憶回路の交差結合インバータ対50を構成している。27はD端子41の入力信号(D信号)反転用のインバータ、28はQB端子42への出力のためのバッファ用インバータである。さらに、51,51aは、それぞれが11,15,16および11a,15a,16aからなる最も単純なクロックドCMOS論理回路のクロックドCMOSインバータであり、クロックドFET16,16aのゲート端子にはクロック(CLK)端子40からのクロック信号が入力されている。
【0007】
ここで対象としているクロックドCMOS論理回路は、出力ノードの駆動電流経路の途中に入れるクロックドFETを1個に限る半ラッチ機能付き論理回路である。51,51aの構成から明らかなように、具体的には、クロックドFET がPチャネルなら、そのクロックドPチャネルFETとそれに直列接続されるゲート端子への入力がクロック信号でない(クロックドでない)PチャネルFETとでVdd側の駆動電流経路を、クロックドでないNチャネルFETでグランド(GND)側の駆動電流経路を、半ラッチノード(1,1a)に対してそれぞれ形成する論理回路である。あるいは、クロックドでないPチャネルFETでVdd側の駆動電流経路を、連結されているクロックドPチャネルFETとクロックドでないNチャネルFETでGND側の駆動電流経路を、半ラッチノード(2,2a)に対してそれぞれ形成する論理回路である。一方、クロックドFET がNチャネルなら、そのクロックドNチャネルFETとそれに直列接続されるクロックドでないNチャネルFETとでGND側の駆動電流経路を、クロックドでないPチャネルFETでVdd側の駆動電流経路を、それぞれ半ラッチノードに対して形成する論理回路である。あるいは、クロックドでないNチャネルFETでGND側の駆動電流経路を、連結されているクロックドNチャネルFETとクロックドでないPチャネルFETでVdd側の駆動電流経路を、もう1個の半ラッチノードに対して形成する論理回路である。このクロックドCMOS論理回路の中で、クロックドCMOSインバータが、最も単純と言えるのは、クロックドでないFETが1個ずつのPチャネルFETとNチャネルFETで構成されるからである。
【0008】
図2に示されるように、このDFFは、後段駆動FET対の12,20と 12a,20aのそれぞれが、後段ラッチのパストランジスタのクロックドFET14,14aを介して交差結合ノード5,5aを駆動することで、交差結合インバータ対への書き込みを行う動作構成を採っている。この構成により、保持されているD信号あるいはD信号の反転が、ホールド期間中に後段ラッチに転送される(書き込まれる)マスタースレイブ型のDFFとして動作する。ここで、ホールド期間とはクロック信号がローレベルからハイレベルに立ち上がる(前段のラッチが透過状態で後段のラッチがラッチ状態のDFF状態[以降、透過ラッチ状態と記す]から前段のラッチがラッチ状態で後段のラッチが透過状態のDFF状態[以降、ラッチ透過状態あるいは前段のラッチに関する記述の場合は単にラッチ状態と記す]に切り替わる)時点からD信号入力のホールド時間が経過するまでの期間である。また、後段駆動FET対の12,20と 12a,20a は、それぞれTSPCスプリットアウトプット構成の aの付かない番号の要素からなるD信号入力用の前段のラッチ(以降、a無し前段ラッチと記す)と aの付く番号の要素からなるD信号反転入力用前段のラッチ(以降、a付き前段ラッチと記す)の出力ドライバーである。
【0009】
クロック信号がローレベルの時にD信号とそれがインバータ27により反転された信号がa無し、a付き前段ラッチにそれぞれ入力されると、クロックドCMOSインバータの第1,第2のノード1a,2aにD信号が、1,2にその反転がそれぞれ現れる。クロックドCMOSインバータ51,51aは、第1のクロックドFETがオンしていると単なるインバータとして動作するからである。クロック信号がローレベルからハイレベルに立ち上がり第1のクロックドFET16,16aがオフして、このDFFがラッチ透過状態に移る時、第1のノード1,1aは、その時点の論理レベルがローレベルならばそのローレベルを保持し続けるものの、ハイレベルならば保持し続けることはできずD信号入力が切り替わり次第ローレベルに下がってしまう。同様に、第2のノード2,2aは、その時点の論理レベルがハイレベルならばそのハイレベルを保持し続けるものの、ローレベルならば保持し続けることはできずD信号入力が切り替わり次第ハイレベルに上がってしまう。これは、第1,第2のノード1,1a,2,2aのいずれもが論理レベルの片側しか保持できない半ラッチノードであることによる。このため後段駆動FET対の12,20と12a,20aは、ラッチ透過状態に移った後のD信号入力が維持されている間のみ、それぞれハイレベル、ローレベルを互いに相補的に出力する。そして、この出力が、ラッチ透過状態でオンする第1、第2のパストランジスタのNチャネルFET14,14aを介して、交差結合インバータ対を書き込み駆動する。換言すれば、ラッチ透過状態に移る直前のD信号入力あるいはその反転入力がそのまま維持されている間は、それらの反転された信号が第1,第2のノード1,1a,2,2aで保持されて、交差結合インバータ対に書き込まれることになる。このホールド期間に限られる非永続の書き込み駆動のおかげで、D信号入力のホールド時間を書き込み完了まで延ばさざるを得なくはなる。しかし、書き込み時間は極わずかなので、ホールド時間の延びがこのDFFの利点を損なうことはない。また、ホールド時間が過ぎてD信号が切り替わった後に、書き込まれたデータが壊されることもない。D信号入力が切り替わると後段駆動FET12,12a,20,20aのいずれもがオフするために、後段ラッチに対する駆動能力が失われるからである。
【0010】
ここで、後段駆動FET12,12a,20,20aのいずれもがオフしてしまうのは、第1,第2のノード1,2,1a,2aがこれらをオンさせる論理レベルを保持せずに、オフさせる論理レベルしか保持し続けられないからである。換言すれば、後段駆動FET12,12a,20,20aに、第1,第2のノード1,2,1a,2aで保持し続けられる論理レベルでオンするチャネル極性のFETが含まれないからである。しかし、第1,第2のノード1,2,1a,2aでのソース接地の後段駆動FETをオフさせる論理レベルの保持は、ハイインピーダンスとなる第1,第2のノード1,2,1a,2aの寄生容量に蓄積された電荷によるダイナミックなものであるため、永続が保証されるわけではない(ダイナミックな半ラッチノード)。このため、前段ラッチのラッチ状態の期間が延びると、このオフさせている論理レベルがリーク電流やノイズによってオンさせる側の論理レベル側に移行してしまい、Pチャネル,NチャネルのFETのどちらか一方がオフでなければならないCMOS回路の基本要件を満たさなくなり得る。その結果として、リーク電流が過大化したり貫通電流が流れ出したりするばかりか、場合によっては書き込んだ内容の破壊にまで至る。
【0011】
従って、この交差結合インバータ対の前段のラッチをTSPCスプリットアウトプットラッチ構成とするDFFは、クロック信号のハイレベルの期間におけるリーク電流増が無視できる範囲でしか、換言すればクロック信号のハイレベルの期間を短時間に制限可能なセミスタティックDFFとしてしか利用できない。セミスタティックは、スタティックに比べ設計に制約がかかるだけでなく、良品選別テストの障害になる、寄生容量によりクロックの半周期保持されるハイインピーダンスノードの電位がノイズに振られてリーク電流増や誤動作を来たし易い等の問題がある。このため、トップレベルの低クロック信号負荷と高速動作を両立しているにも関わらず利用は広がっていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】A. Khorami, M. Sachdev, and M. Sharifkhani,“A contention-free, static, single-phase flip-flop for low data activity applications,”in 2019 32nd IEEE International System-on-Chip Conference (SOCC), pp.11-16, 2019.
【非特許文献2】J. Lin, M. Sheu, Y. Hwang, C. Wong and M. Tsai, “Low-Power 19-Transistor True Single-Phase Clocking Flip-Flop Design Based on Logic Structure Reduction Schemes,” in IEEE Transactions on Very Large Scale Integration (VLSI) Systems, vol. 25, no. 11, pp.3033-3044, 2017.
【非特許文献3】中林智之,佐々木敬泰,大野和彦,近藤利夫,“Split-output Latchを用いたSemi-static TSPC DFFの提案と評価”,電子情報通信学会技術報告,Vol.VLD2010-125, 2010.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
以上より、本発明が解決しようとする課題は、低消費電力化に効く低クロック信号負荷、TGFF並みの高速性、十分なノイズ耐性の3つを両立するスタティックDFFを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
論理レベルの一方のみの保持永続とその保持が永続しない論理レベル側限定の後段駆動(非永続駆動)を併せ持たせることで、書き込み駆動できない方の論理レベルがラッチ状態の間に書き込み駆動できる側に移行しないようにして、ホールド期間中に非永続駆動で書き込んだ内容が、上書きで壊されることが起こらないようにする。また、これによりホールド期間以降のリーク電流増と貫通電流発生も併せて防止する。
【0015】
従来のマスタースレイブ型DFFのようにラッチ状態で後段に対する書き込み駆動能力が永続する完全な透過型スタティックラッチで前段のラッチを構成することはしない。低クロック信号負荷と高速動作の両立が困難になるからである。
【0016】
また、ノイズ耐性の要求に応じて、ノイズによる後段駆動能力低下を生じ難くしたり、半ラッチノードが永続保持できない側の論理レベルの保持中にノイズに敏感なハイインピーダンスになるのを遅らせたり、ハイインピーダンスにならなくしたりする。
【0017】
以上の考え方をベースとした以下の16の手段を採ることを、本発明の最も主要な特徴とする。
【0018】
(1)前段、後段の2段のラッチを連結する構成とし、前段のラッチの少なくとも一つは、ラッチ状態での保持を論理レベルの一方のみ永続するスタティックな半ラッチノードと、その永続する一方の論理レベルでオンするFETを含まない(その永続する一方の論理レベルでオフ、永続しないもう一方の論理レベルでオンするFETのみの)1個以上の後段駆動FETで構成することで、後段ラッチに対する書き込み駆動がラッチ状態で永続しない非永続駆動ラッチとする。後段のラッチは、交差結合インバータ対とその交差結合ノード対の片方に自身の入出力端子対の一方を接続するクロックドFETのパストランジスタとで構成する。
【0019】
(2)スタティックな半ラッチノードは、後段駆動FETのうちのソース接地FETである第1の後段駆動FETのドレイン端子に自身のゲート端子を、半ラッチノードに自身のドレイン端子を、それぞれ接続するチャネル極性がソース接地後段駆動FETと同一のフィードバックFETを付加することにより、ダイナミックな半ラッチノードをスタティック化することで実現する。
【0020】
(3)交差結合インバータ対に対する書き込み駆動を、交差結合インバータ対の交差結合ノード対のそれぞれに入出力端子対の一方を接続する第1,第2の2個のパストランジスタを介して行う。
【0021】
(4)第1のクロックドFETとそのFETとはチャネル極性が同一(以降、第1同一チャネルと略記する)であるクロックドでないFETとチャネル極性が逆(以降、第1逆チャネルと略記する)であるクロックドでないFETとで駆動される2個の半ラッチノード、具体的にはこの駆動回路内の第1のクロックドFETとクロックドでない第1逆チャネルのFETのドレイン端子同士を接続する第1のノードと、第1のクロックドFETのソース端子とクロックドでない第1同一チャネルのFETのドレイン端子を接続する第2のノードに、ソース接地の第1と第2の後段駆動FETのゲート端子をそれぞれ接続するスプリットアウトプット構成を非永続駆動ラッチの一つの構成とする。
【0022】
(5)二つ設けるうちの一方の非永続駆動ラッチのソース接地の第1あるいは第2の後段駆動FETのドレイン端子ともう一方の非永続駆動ラッチのソース接地の第1あるいは第2の後段駆動FETのドレイン端子とを、第1のパストランジスタの入出力端子対のもう一方と第2のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に、それぞれ接続する。
【0023】
(6)二つ設けるうちの一方のスプリットアウトプット構成の非永続駆動ラッチの第1のノードともう一方のスプリットアウトプット構成の非永続駆動ラッチの第2のノードに、第1逆チャネルのソース接地FETのゲート端子とドレイン端子をそれぞれ接続する。併せて、二つ設けるうちのもう一方のスプリットアウトプット構成の非永続駆動ラッチの第1のノードと一方のスプリットアウトプット構成の非永続駆動ラッチの第2のノードに、第1逆チャネルのもう1個のソース接地FETのゲート端子とドレイン端子をそれぞれ接続する。
【0024】
(7)二つ設けるうちの一方のスプリットアウトプット構成の非永続駆動ラッチの第1のノードともう一方のスプリットアウトプット構成の非永続駆動ラッチの第2のノードに第1同一チャネルのソース接地FETのドレイン端子とゲート端子を接続する。併せて、 二つ設けるうちのもう一方のスプリットアウトプット構成の非永続駆動ラッチの第1のノードと一方のスプリットアウトプット構成の非永続駆動ラッチの第2のノードに第1同一チャネルのもう1個のソース接地FETのドレイン端子とゲート端子を接続する。
【0025】
(8)スプリットアウトプット構成の非永続駆動ラッチ単独で後段ラッチを書き込み駆動する構成において、第1のノードにゲート端子を接続するソース接地の第1の後段駆動FETのドレイン端子を第1のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に接続すると共に、第1のノードにゲート端子を接続する後段駆動FETのうちの1個であるドレイン接地の第3の後段駆動FETのソース端子を第2のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に接続する。
【0026】
(9)第1のクロックドFETとクロックドでない第1同チャネルのFETとクロックドでない第1逆チャネルのFETとで駆動される1個の半ラッチノード、具体的にはこの駆動回路内の互いにチャネル極性の異なるクロックドでないFETのドレイン端子同士を接続する第1のノードに、第1の後段駆動FETを接続するノーマルアウトプット構成を非永続駆動ラッチのもう一つの構成とする。
【0027】
(10)二つ設けるうちの一方のノーマルアウトプット構成の非永続駆動ラッチのソース接地の第1の後段駆動FETのドレイン端子ともう一方のノーマルアウトプット構成の非永続駆動ラッチのソース接地の第1の後段駆動FETのドレイン端子に、第1同一チャネルのソース接地FETのゲート端子とドレイン端子を、併せて第1同一チャネルのもう一個のソース接地FETのドレイン端子とゲート端子を、それぞれ接続する。
【0028】
(11)二つ設けるノーマルアウトプット構成の非永続駆動ラッチの各々の第1のノードにドレイン端子を接続するクロックドでない第1同一チャネルのFETのソース端子を共にソース接地の第1のクロックドFETのドレイン端子に接続する。
【0029】
(12)二つ設けるうちの一方のノーマルアウトプット構成の非永続駆動ラッチのドレイン接地の第3の後段駆動FETのソース端子を第2のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に接続すると共に、もう一方のノーマルアウトプット構成の非永続駆動ラッチのドレイン接地の第3の後段駆動FETのソース端子を第1のパストランジスタの入出力端子対のもう一方に接続する。
【0030】
(13)第1同一チャネルの直列接続された2個のFETを、直列接続に用いない方のドレイン端子とソース端子が相手のドレイン端子とソース端子にそれぞれ接続されるようにして、二つ設けるノーマルアウトプット構成の非永続駆動ラッチ間で共用する第1のクロックドFETに並列接続する。ここで、直列接続された2個のFETのゲート端子は、二つ設けるうちの一方のノーマルアウトプット構成の非永続駆動ラッチのソース接地の第1の後段駆動FETのドレイン端子と、もう一方のノーマルアウトプット構成の非永続駆動ラッチのソース接地の第1の後段駆動FETがパストランジスタを介して駆動する交差結合ノードにそれぞれ接続する。
【0031】
(14)二つ設ける非永続駆動ラッチの各々のフィードバックFETのソース端子に自身のドレイン端子を接続するチャネル極性がフィードバックFETと同一でソース接地の第2のクロックドFETを付加する。
【0032】
(15)第1のクロックドFETと直列接続されるクロックドでない第1同一チャネルのFETのドレイン端子とソース端子に、そのFETのゲート端子に入力される信号の反転が自身のゲート端子に入力される第1逆チャネルのFETのソース端子とドレイン端子を接続する
【0033】
(16)交差結合インバータ対に対する書き込み駆動を介するパストランジスタのゲート端子へ入力するクロック信号より位相の遅れた遅延クロック信号を非永続後段駆動ラッチ内のクロックドFETのゲート端子へ入力する。
【発明の効果】
【0034】
本発明のDFFは、前段のラッチがクロック信号負荷を最小限にできる半ラッチノードベースの構成ながら、第1のクロックドFETがオフするラッチ透過状態が続いても、リーク電流が増えたり書き込んだ内容が壊されたりすることのない完全なスタティックDFFとして動作する利点がある。段落0018(1)の手段により、ラッチ透過状態に切り替わる時にオフした後段駆動FETがオン側に浮遊することがなくなるからである。また、永続的に保持できない論理レベルがホールド期間後にもう一方の論理レベルに切り替わっても後段駆動FETがオンして後段のラッチの内容を壊すことがないからである。
【0035】
また、ダイナミックな半ラッチノードをスタティックな半ラッチノードとする段落0019(2)の手段により、すなわち図2で用いられているスプリットアウトプット構成の非永続駆動ラッチにおいて、第1と第2の後段駆動FETのそれぞれをフィードバック付きソース接地FETに置き換えることにより、半ラッチノードがスタティックの非永続駆動ラッチが実現される。この非永続駆動ラッチでは、ラッチ透過状態への切り替わり時に半ラッチノードの第1、第2のノードがハイレベル、ローレベルのいずれでも、それぞれのノードにゲート端子が接続される第1、第2の後段駆動FETのいずれかがオンして後段の駆動が可能になる。これにより前段のラッチを一つの非永続駆動ラッチで構成可能となり、その分、構成FET数を低減できる利点がある。
【0036】
さらに、図2に示したセミスタティックDFFと同様に非永続駆動ラッチを二重化する構成を採る場合では、段落0028(11)の手段と段落0031(14)の手段により、第1および第2のクロックドFETがそれぞれ1個にまとめられる結果、電力消費の主因であるクロック信号の負荷となるゲート端子数を最大で2減らせる。
【0037】
加えて、後段駆動FETをソース接地の第1およびドレイン接地の第3の後段駆動FETで構成する段落0025(8)の手段により、非永続駆動ラッチを二重化しない構成において、非永続駆動ラッチの出力ノードにゲート端子を接続するとサブスレッショルドリーク電流の生じる第1同一チャネルのソース接地FETで第2のパストランジスタの入出力端子対のもう一方を駆動する必要がなくなる利点がある。これは、第1のノードにゲート端子を接続するドレイン接地の第3の後段駆動FETで第2のパストランジスタの入出力端子対のもう一方を駆動するようにしているからである。
【0038】
もう一つ加えて、TGFFに劣らない入出力間の遅延を実現できる利点がある。段落0021(4),段落0028(11)の手段により、Vdd側からの半ラッチノードの駆動電流経路を形成するPチャネルFETの直列段数が3から2に減らせるだけでなく、後段駆動FETがパストランジスタ経由で交差結合インバータ対を書き込み駆動する段落0018(1)と段落0020(3)の手段、非永続駆動ラッチを二重化する段落0022(5)の手段、ソース接地の第1の後段駆動FETが駆動しない方のパストランジスタの入出力端子をドレイン接地の第3の後段駆動FETで駆動する段落0025(8)あるいは0029(12)の手段、第1のクロックドFETと直列接続されるクロックドでない第1同一チャネルのFETにドレイン接地で第1逆チャネルのFETを並列接続する段落0032(15)の手段等により、速度決定要因の入力から出力までの伝搬信号の反転回数が実効的に低減されるからである。
【0039】
さらにもう一つ加えて、段落0023(6)、段落0024(7)、段落0026(9)、段落0027(10)、段落0030(13)、段落0033(16)等の手段により、半ラッチノードがラッチ状態でノイズに敏感なハイインピーダンスになり得る回路を用いながら、十分なノイズ耐性が確保される利点がある。以下、これらの手段による五つのノイズ耐性改善内容を示す。
【0040】
一つ目は、段落0023(6)、段落0024(7)の手段によって、ノイズにより書き込み駆動が乱され難くできる。半ラッチノードがホールド期間中も駆動されるようになりハイインピーダンスにならなくなることで、静電誘導ノイズを受け難くなるからである。
【0041】
二つ目は、0026(9)の手段により、次段駆動に関わる半ラッチノードを正方向の静電誘導ノイズの影響を受けない第1のノードのみにできることで、正方向の静電誘導ノイズに対する耐性が十分に確保されるようになる。これにより、ノイズに最も敏感なタイミングのホールド期間の前半に現れるクロック信号の立ち上がりエッジ起因の正方向の静電誘導ノイズの影響を受けなくなる。クロック信号の立ち下がりエッジ起因の負方向の静電誘導ノイズがホールド期間中にDFFセル内で発せられることはないので、結局、セル内の主要なノイズの一つであるクロック信号起因のノイズにより、動作が乱されることはなくなる。また、クロック信号以外のノイズについても、DFFセル内のレイアウトを適切に行った上で、クロックスキューを適切に抑え、ノイズに敏感なホールド期間の前半にセル外ノイズが生じないようにすることができれば、この手段だけでもノイズによる動作不良は防げる。
【0042】
三つ目は、段落0027(10)の手段によって、書き込み駆動がノイズにより乱され難くなる。非永続駆動ラッチの半ラッチノードの論理レベルが不足気味になっても後段駆動FETの駆動能力が落ち難くなることで、ホールド期間中のノイズの影響を受け難くなるからである。
【0043】
四つ目は、段落0030(13)の手段により、ホールド期間中の半ラッチノードのハイインピーダンス移行が抑えられ、ノイズの影響を受け難くなる。交差結合インバータ対の書き変え進行中に第1のクロックドFETに並列接続するFET対が両方ともオンすることで、ラッチ状態に切り替わった後のホールド期間中にVdd側からの半ラッチノード駆動が止まるのを抑えられるからである。
【0044】
五つ目は、段落0033(16)の手段によって、ホールド期間中の後段ラッチへの書き込みに対するノイズの影響を抑えられる。これは、非永続駆動ラッチに遅延クロック信号が配られることで、ラッチ状態への切替りが遅れ、第1あるいは第2のノードがノイズに敏感なホールド期間の中盤までハイインピーダンスになるのを抑えられるからである。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1はLRFFの回路図である。
図2図2は前段のラッチがTSPCスプリットアウトプットラッチ構成のDFFの回路図である。
図3図3は第1の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例1)
図4図4は第2の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例2)
図5図5は第3の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例3)
図6図6は第4の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例4)
図7図7は第5の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例5)
図8図8は第6の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例6)
図9図9は第7の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例7)
図10図10は第8の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例8)
図11図11は第9の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例9)
図12図12は第10の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例10)
図13図13は第11の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例11)
図14図14は第12の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例12)
図15図15は第13の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例13)
図16図15は第13の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例14)
図17図15は第13の実施の形態に関わるDFF構成例の回路図である。(実施例15)
図18図16は第14の実施の形態に関わるスキャンフリップフロップ構成例の回路図である。(実施例16)
【発明を実施するための形態】
【0046】
クロック信号負荷を最小限にできる半ラッチ機能付きCMOS論理回路の特長を活かす回路構成を見出し、低消費電力、高速動作の両立が可能な低クロック信号負荷のスタティックDFFを実現した。
【実施例0047】
図3は、本発明の第1の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例1)の回路図であって、1,1aは半ラッチノードの第1のノード、2,2aは半ラッチノードの第2のノード、3,4は非永続駆動ラッチ出力ノード、5と5aは交差結合インバータ対50の交差結合ノード対、11,11aはクロックドでない第1逆チャネルのNチャネルのソース接地FET、12,12aはNチャネルでソース接地の第1の後段駆動FET、13,13aはNチャネルのフィードバックFET、14は第1のパストランジスタのNチャネルクロックドFET、14aは第2のパストランジスタのNチャネルクロックドFET、FET15,15aはクロックドでない第1同一チャネルのPチャネルのソース接地FET、16,16aはPチャネルの第1のクロックドFET、18,18aはNチャネルの第2のクロックドFET、20,20aはPチャネルでソース接地の第2の後段駆動FET、22,22aは第2のノード2,2aに自身のドレイン端子を接続するPチャネルのフィードバックFET である。この図1では、主要なノードを分かりやすいように斜めの接続線も使って一点に集中させるようにしているが、複数の点に分かれていても互いが実線で結ばれていればそれらは合せて一個のノードである。
【0048】
25,26はインバータであり、それぞれが交差結合ノード5,5aで互いに交差結合されて交差結合インバータ対50を構成している。27はD信号反転用インバータ、28はQB信号出力のためのインバータ、40はクロック(CLK)端子、41はD端子、42はQB端子、51,51aは、第2のノード2,2aでPチャネルの第1のクロックドFET16,16aとクロックドでないPチャネルのFET15,15aが直列接続されて第1のノード1に対するVdd側の駆動電流経路を形成する構成のクロックドCMOSインバータである。13,18で構成される52と13a,18aで構成される52a は、第1のノード1,1aに対するフィードバック回路である。
【0049】
本実施例は、クロック信号がローレベルからハイレベルに立ち上がって非永続駆動ラッチがラッチ状態に後段ラッチが透過状態にそれぞれ切り替わった(ラッチ透過状態に切り替わった)後に、第1のノード1,1aと第2のノード2,2aに保持されているD信号あるいはD信号の反転が後段ラッチに書き込まれるマスタースレイブ型のDFFとして動作する。ホールド期間が終了して入力のD信号が切り替わると第1のノード1,1aと第2のノード2,2aにゲート端子を接続するソース接地の第1,第2の後段駆動FET12,12a,20,20aは、いずれも自身のオンをホールド時間以降まで維持するとは限らないため、交差結合インバータ対への書き込みがホールド期間中に完了される必要のある点は図2のセミスタティックDFFと同じである。
【0050】
図2のセミスタティックDFFとの違いは、後段駆動FETがホールド期間中にオフしたなら、そのオフがホールド時間以降も永続するように、フィードバック回路52,52aとフィードバックFET22,22aを追加している点である。これにより、ローレベル・ハイレベルの保持が寄生容量に蓄積された電荷に頼らずに済むようになるので、非永続駆動ラッチにおいてラッチ状態の期間が延びても、ホールド期間中に後段駆動FETをオフさせていた論理レベルがオンさせる論理レベル側に浮遊することはない。従って、図2の従来例のようにリーク電流過大化、貫通電流発生、書き込んだ内容の破壊に至るようなことはラッチ状態の期間が延びたとしても起こらない。
【0051】
この追加したフィードバック回路とフィードバックFETにより、非永続駆動ラッチがラッチ状態に入ると、第1,第2のノード1,2あるいは1a,2aがローレベルならばそのローレベルを第1のノード1あるいは1aが、第1,第2のノード1,2あるいは1a,2aがハイレベルならばそのハイレベルを第2のノード2あるいは2aが、それぞれ永続的に保持するスタティックな半ラッチノードとなる。以下の2段落0052,0053で、この保持動作を具体的に説明する。ただし、a無し側とa付き側で非永続駆動ラッチ自体の保持動作に違いはないので、a無し側のみを説明する。
【0052】
第1のノード1におけるローレベルの永続的保持は、ラッチ状態でオンする第2のクロックドFET18とそれに直列接続されるフィードバックFET13からなる経路が、ラッチ状態へ切り替わると同時に、第1,第2のノード1,2のローレベルで導通することから始まる。ソース接地の後段駆動FET12,20が少なくともホールド期間中はインバータとして動作することにより、フィードバックFET13のゲート端子の接続される非永続駆動ラッチ出力ノード3がハイレベルになるからである。そして、この非永続駆動ラッチ出力ノード3のハイレベルは、ラッチ状態の間持続する。なぜなら、非永続駆動ラッチ出力ノード3がハイレベルになると、第2の後段駆動FET20がオフしても、その前のホールド期間中に交差結合インバータ対50へ書き込まれた交差結合ノード5のハイレベルがオン状態のパストランジスタ14を介して戻って来るからである。この非永続駆動ラッチ出力ノード3のハイレベルの持続により、フィードバックFET13は、ラッチ状態の間、オンが持続して第1の後段駆動FET12のゲート端子すなわち第1のノード1の電位をソース端子側すなわちGND側に引き込み続ける結果、ラッチ状態での第1のノード1のローレベルが維持される。
【0053】
第2のノード2のハイレベルの永続的保持も、ローレベルの場合と同様であり、ラッチ状態に入る時点で第1,第2のノード1,2がハイレベルならばフィードバックFET22がオンしていることから始まる。ソース接地の後段駆動FET12,20が少なくともD信号入力のホールド期間中はインバータとして動作することで、フィードバックFET22のゲート端子の接続される非永続駆動ラッチ出力ノード3がローレベルになるからである。そして、このローレベルは、交差結合インバータ対50へ書込まれることで、ラッチ状態の間持続する。非永続駆動ラッチ出力ノード3がローレベルになると、第1の後段駆動FET12がオフしても、ホールド期間中に交差結合インバータ対50へ書き込まれた交差結合ノード5のローレベルがオン状態のパストランジスタ14を介して戻るからである。この非永続駆動ラッチ出力ノード3のローレベルの持続により、フィードバックFET22は、ラッチ状態の間、オンが持続して第2の後段駆動FET20のゲート端子すなわち第2のノード2の電位をソース端子側すなわちVdd側に引き込み続ける結果、ラッチ状態での第2のノード2のハイレベルが維持される。
【0054】
以上説明したように、クロック信号がローレベルからハイレベルに立ち上がり非永続駆動ラッチがラッチ状態に入る時、第1,第2のノードの1,2がローレベルで1a,2aがハイレベルであれば第1のノード1のローレベルと第2のノード2aのハイレベルが、第1,第2のノードの1,2がハイレベルで1a,2aがローレベルであれば第2のノード2のハイレベルと第1のノード1aのローレベルが、それぞれ保たれる。結局、非永続駆動ラッチのラッチ状態で、第1,第2のノードの(1,2a)か(1a,2)のいずれか一方の組の(ローレベル,ハイレベル)が永続することで、第1,第2の後段駆動FET(12,20a)か(12a,20)のいずれか一方の組のオフが永続することとなり、リーク電流増大や貫通電流発生が抑えられ完全なスタティック動作が実現される。
【0055】
なお、本実施例では簡単のためにa無し側のクロックドCMOS論理回路をクロックドCMOSインバータとする構成を採っているが、他のクロックドCMOS論理回路を用いることもできる。ただし、非永続駆動ラッチ出力ノード3,4の出力が相補的となるように第1,第2のノードの1,2と1a,2aのa無し側とa付き側の論理レベルが互いに反転されている必要がある。例えば、a無し側のクロックドCMOS論理回路をD1、D2信号が入力されるクロックドCMOS NANDとする場合は、a付き側のクロックドCMOS論理回路はクロックドCMOSインバータとして、それにD1、D2信号入力のNANDゲートの出力が入力されるようにする必要がある。
【実施例0056】
図4は本発明の第2の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例2)の回路図である。実施例1との違いは、第2のクロックドFET18,18aを18一つにまとめ、そのドレイン端子にフィードバックFET13,13aのソース端子を接続することで、a無し側とa付き側の両非永続駆動ラッチ間で共用するようにして、クロック信号負荷となるゲート端子を一つ減らしている点である。これにより、ソース接地FET18,18aの互いのソース端子が繋がってしまうものの、それがフィードバック回路の動作に影響することはない。一方がオンする場合にはもう一方が必ずオフして第1のノード1,1a間の導通経路とはならないからである。この第2の実施例は、クロック信号負荷となるゲート端子が一つ減るので、その分、第1の実施例より低電力化される利点がある。
【実施例0057】
図5は本発明の第3の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例3)の回路図である。実施例2との違いは、ゲート端子にD信号の反転が入力される第1のクロックドFETと直列接続されたPチャネルFET15aのドレイン端子とソース端子に、D信号(PチャネルFET15aのゲート端子へ入力される信号の反転信号)がゲート端子に入力されるNチャネルFET38aのソース端子とドレイン端子を、それぞれ接続している点である。このNチャネルFET38aの並列接続により、D信号入力のセットアップ時間が効果的に短縮される。a付き側の第1,第2のノード1a、2aの引き上げに対するインバータ1段分の遅れが、直接ゲート端子に遅れのないD信号が入力されるNチャネルFET38aのドレイン接地動作によって補償されるからである。この並列接続は、a無し側のPチャネルFET15に対しても行えるが、NチャネルFETのゲート端子にインバータ1段分遅れたD信号の反転を入力せざるを得ないため、セットアップ時間が短縮されるとは限らない。
【実施例0058】
図6は本発明の第4の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例4)の回路図である。実施例3との違いは、a無し非永続駆動ラッチの第1のノード1にゲート端子を、a付き非永続駆動ラッチの第2のノード2aにドレイン端子を、それぞれ接続する第1逆チャネルのNチャネル型でソース接地FET71を付加していることと、a付き非永続駆動ラッチの第1のノード1aにゲート端子を、a無し非永続駆動ラッチの第2のノード2にドレイン端子を、それぞれ接続する第1逆チャネルのNチャネル型でソース接地のFET71aを付加していることである。これらの付加により、第2のノード2,2aがホールド期間中にハイインピーダンスになることをなくせる。ラッチ状態に切り替わる時点までにドレイン端子の接続される第2のノード2,2aがローレベルになっているなら、ゲート端子の接続される第1のノード1a,1はその逆のハイレベルになっているので、FET71a,71がオンして第2のノード2,2aをローレベル側に引き込むからである。ホールド期間中にハイインピーダンスにならなくなることで、第2のノード2,2aはノイズ耐性が大きく向上するだけでなく、ローレベルが十分に下がるようになるため、第2の後段駆動FET 20,20aの駆動能力が上がり書き込み速度が向上する利点も得られる。
【実施例0059】
図7は本発明の第4の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例5)の回路図である。実施例4との違いは、a無し非永続駆動ラッチの第2のノード2にゲート端子を、a付き非永続駆動ラッチの第1のノード1aにドレイン端子を、それぞれ接続する第1同一チャネルのPチャネル型でソース接地のFET72を付加していることと、a付き非永続駆動ラッチの第2のノード2aにゲート端子を、a無し非永続駆動ラッチの第1のノード1にドレイン端子を、それぞれ接続する第1同一チャネルのPチャネル型でソース接地のFET72aを付加していることである。これらの付加により、第1のノード1,1aがホールド期間中にハイインピーダンスになることをなくせる。ラッチ状態に切り替わる時点までに第1のノード1,1aがハイレベルになっているなら、ゲート端子の接続先の第2のノード2a,2はその逆のローレベルになっているので、FET72a,72がオンして第1のノード1,1aをハイレベル側に引き上げるからである。ホールド期間中にハイインピーダンスにならなくなることで、第1のノード1,1aはノイズ耐性が向上する。
【実施例0060】
図8は本発明の第6の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例6)の回路図である。実施例1との違いは、
(1)非永続駆動ラッチ出力ノード4のVdd側への引き上げを、第1のノード1にゲート端子を非永続駆動ラッチ出力ノード4にソース端子をそれぞれ接続する第1逆チャネルのNチャネルでドレイン接地の第3の後段駆動FET19で行う、
(2)非永続駆動ラッチ出力ノード4のGND側への引き下げを、非永続駆動ラッチ出力ノード3にゲート端子を非永続駆動ラッチ出力ノード4にドレイン端子をそれぞれ接続するNチャネルでソース接地の第4の後段駆動FET21で行う、
の2点により、a付き側の非永続駆動ラッチ無しで交差結合インバータ対への書き込みができるようにしている点である。
【0061】
この実施例6は、実施例1に比べ、DFFの構成FET数が8も減る利点がある。非永続駆動ラッチを一つで済ませられるのに加え、ラッチ透過状態において、非永続駆動ラッチ出力ノード3を完全なハイレベルに持ち上げるプルアップ手段をなくすことができるからである。このプルアップ手段をなくせるのは、非永続駆動ラッチ出力ノード4のVdd側への引き上げ駆動にドレイン接地の第3の後段駆動FET19を用いることで、非永続駆動ラッチ出力ノード3のハイレベルが不十分になっても、それによってサブスレッシュホールドリーク電流の生じるソース接地のPチャネルFETのゲート端子を接続しなくとも済むようになることによる。
【実施例0062】
図9は本発明の第7の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例7)の回路図である。実施例6との違いは、フィードバック回路52の第2のクロックドFET18をダイオード接続のPチャネルFET17に入れ替えてフィードバック回路521とするのと併せて、PチャネルのフィードバックFET22のソース端子とVddとの間にダイオード接続のPチャネルFET23を挿入してフィードバック回路53を形成している点である。これらにより、クロック信号負荷がゲート端子1つ分減るのに加え、第2のノード2をGND側に引き込むFET11,16に対する負荷のフィードバック回路分がFinFETのようにチャネル幅を小さくできない場合でも十分に低減できるようになる。前者の利点は、第2のクロックドFETをインピーダンスの大きいダイオード接続のPチャネルFET17に入れ替えたことによる。また、後者の利点も、インピーダンスの大きいダイオード接続のPチャネルFET23を挿入したことによる。
【実施例0063】
図10は本発明の第8の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例8)の回路図である。実施例6との違いは、2段のインバータ29,30からなる遅延回路54で遅らせた遅延クロック信号を非永続駆動ラッチ内の第1、第2のクロックドFETのゲート端子に配っている点である。このクロック信号の遅延配信により非永続駆動ラッチがラッチ状態に入る前に、後段ラッチが透過状態に入って交差結合インバータ対への書き込みが始まる。これにより、第1,第2のノード1,2のノイズ耐性を大幅に高めることができる。後段ラッチが透過状態に入っても、非永続駆動ラッチの透過状態が遅延時間分継続し、ノード1,2がFET11,15によって駆動され続ける結果、交差結合インバータ対への書き込みが終盤に至るまで、第1,第2のノード1,2がノイズに敏感なハイインピーダンスにならなくなるからである。
【実施例0064】
図11は本発明の第9の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例9)の回路図である。実施例2との違いは、非永続駆動ラッチをLRFFで用いられているノーマルアウトプット構成のものに入れ替えると共に、第2のノードにゲート端子を接続していたPチャネルの第2の後段駆動FET20,20aの代わりに、二つの非永続駆動ラッチのうちの一方ともう一方の後段駆動FETのドレイン端子に各々のゲート端子を、もう一方と一方の後段駆動FETのドレイン端子に各々のドレイン端子を、それぞれ接続するPチャネルFET73,73aを備えている点である。このPチャネルFETはゲート端子を半ラッチノードに直接接続するのではないため応答が1段分遅れはするものの、ラッチ出力のハイレベルをVddまで引き上げられるようにする。これにより、半ラッチノードの駆動とローレベル永続のためのフィードバックとの衝突を防ぐPチャネルFET31、31aのオフが完全になり、フィードバックFET13,13aとの間でリーク電流の生じることがなくなる。このLRFFの非永続駆動ラッチでは、ラッチ時にPチャネルFET31、31aのうちの半ラッチノードのローレベル保持と衝突しない方がオンすることで、ラッチ状態で半ラッチノード1,1aに対するVdd側からの駆動が切れないようにする。これにより、ホールド期間中に半ラッチノードがハイインピーダンスになるのを抑える。しかし、この抑止を十分なノイズ耐性が得られるまで効かすには、D信号のゲート端子への到達によりPチャネルFET31、31aのオン,オフが切り替わり半ラッチノードへの給電パスが確立されるまで、セットアップ時間を延ばす必要がある。このため、セットアップ時間は、交差結合インバータ対の書き込みに必要な値よりかなり大きくなってしまう。
【実施例0065】
図12は本発明の第10の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例10)の回路図である。実施例2との違いは、ゲート端子が第2のノード2,2aに接続されるPチャネルの第2の後段駆動FET20,20aを、ゲート端子が第1のノード1,1aに接続されるNチャネルでドレイン接地の第3の後段駆動FET19a,19に入れ替えている点と、第1のクロックドFET16,16aを、クロックドでないFET11,15とFET11a,15aのドレイン端子間から、クロックドでないPチャネルFET15,15aのソース端子とVddとの間に入れ替えている点の2点である。前者の入れ替えは、第2のノード2,2aをスタティックな半ラッチノードとすることを不要とし、その結果としてフィードバックFET22,22aが必要なくなる。これにより、DFFの構成トランジスタ数が2減るノーマルアウトプット構成となる。FinFETのようにチャネル幅が小さくならずフィードバック回路がなくなる分の負荷軽減効果が小さくない場合には、有意に高速化される。また、ハイインピーダンスでローレベルを保持するノードがなくなるので、ホールド期間中のセル内の主要なノイズであるクロック信号立ち上がり起因の正方向の静電誘導ノイズに影響されることがなくなり、その分セルレイアウトが容易になる利点がある。一方、後者の入れ替えは、第2のノード2,2aへのゲート端子の接続がなくなることによって可能になる。直列接続されるチャネル極性が同一のFET間の入れ替えなので、ゲート端子の接続される第1のノード1,1aの出力に影響しないからである。当然ながら、この実施例では後者の入れ替えは行わなくとも良い。第1のクロックドFETを非永続駆動ラッチごとに個別に設ける構成では、DFFとしての動作に影響しないからである。
【実施例0066】
図13は本発明の第11の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例11)の回路図である。実施例10との違いは、第1のクロックドFET16,16aを16にまとめ、それをa無し側とa付き側の両非永続駆動ラッチ間で共用するようにして、クロック信号負荷となるゲート端子を1つ減らしている点である。これにより、クロックドでない第1同一チャネルのPチャネルのFET15,15aのソース端子が共に第1のクロックドFETのドレイン端子に接続されることで互いのソース端子が繋がってしまうものの、ラッチ動作には影響しない。FET15,15aのゲート端子への入力が互いに反転した信号であるためにオンオフが逆になり、第1のノード1,1a間の導通経路とはならないからである。この第11の実施例には、クロック信号負荷となるゲート端子が1つ減る分、第10の実施例より低電力化される利点がある。
【実施例0067】
図14は本発明の第12の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例12)の回路図である。実施例11との違いは、半ラッチノード1,1aにゲート端子を接続するNチャネルのドレイン接地の第3の後段駆動FET19,19aを、自身のゲート端子とドレイン端子をソース接地の第1の後段駆動FETの12,12aのドレイン端子にそれぞれ接続する第1同一チャネルのPチャネルのソース接地FET73と、自身のゲート端子とドレイン端子をソース接地の第1の後段駆動FETの12a,12のドレイン端子にそれぞれ接続する第1同一チャネルのPチャネルのソース接地FET73aに入れ替えている点である。NチャネルFET2個がPチャネルFET2個に変わることで、構成FETのNチャネル、Pチャネルのアンバランスが改善される結果、DFFセルのレイアウト面積が低減される利点がある。
【実施例0068】
図15は本発明の第13の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例13)の回路図である。実施例11との違いは、ゲート端子にD信号の反転が入力される第1のクロックドFET16に直列接続されたPチャネルFET15aのドレイン端子とソース端子に、ゲート端子にD信号(PチャネルFET15aのゲート端子へ入力される信号の反転信号)が入力される第1逆チャネルのNチャネルFET38aのソース端子とドレイン端子をそれぞれ接続する並列接続を行っているのと、ソース接地の第1の後段駆動FETの12,12aのドレイン端子に自身のゲート端子を、12a,12のドレイン端子に自身のドレイン端子をそれぞれ接続するPチャネルのソース接地FET73,73aを追加している点である。前者のPチャネルFET15aへの並列接続は、接続するNチャネルFET38aがドレイン接地動作とはなるものの、ゲート端子への入力がソース接地のPチャネルFETよりインバータ1段分先行することでa付き側の第1のノード1aの引き上げを速め、DFFとしての動作速度を向上させる。後者のPチャネルのソース接地FET73,73aの追加は、非永続駆動ラッチの書き込み能力を高め、半ラッチノードに対する静電誘導ノイズ起因の書き込み不良を起こり難くする。
【実施例0069】
図16は本発明の第14の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例14)の回路図である。実施例13との違いは、第1同一チャネルのPチャネルで互いに直列接続されたFET対74,75を、第1のクロックドFET16に並列接続している点である。この直列接続されたPチャネルFET対74,75は、ゲート端子がa付き非永続駆動ラッチ出力ノード4と交差結合ノード5(a無し非永続駆動ラッチ出力ノード3が第1のパストランジスタ14を介して接続されるノード)にそれぞれ接続している。接続先の交差結合ノード5の電圧レベルは、ラッチ透過状態へ切り替わってa付き非永続駆動ラッチからのローレベル出力による交差結合インバータ対の書き変えが始まると、それまで保持していたローレベルから次第に上昇して、ハイレベルに達する。しかし、書き込みが中盤を過ぎてローレベル側を抜け出すまでは、PチャネルFET75はオンのままとなる。PチャネルFET74も、そのゲート端子に対するa付き非永続駆動ラッチからのローレベル入力が維持されるので、ホールド期間中はオンしている。以上より、ラッチ透過状態に入って第1のクロックドFETがオフしても、直列接続されたFET対74,75は書き込みが中盤を過ぎるまで共にオンしたままとなり、半ラッチノードの第1のノード1aに対するFET15a,38aによるプルアップが継続することになる。その結果として、第1のノード1aが書き込み進行中の大半でハイインピーダンスになることがなくなり、後段駆動FET12a,19aの駆動能力が向上してDFFの出力遅延時間が低減されると共にノイズ耐性が大幅に向上する。なお、交差結合ノード5aがローレベルになっていて、a付き非永続駆動ラッチからのローレベル出力では書き変えが生じない場合、FET75のゲート端子への入力がハイレベルとなっているので、直列接続されたFET対74,75が共にオンすることはない。また、本実施例ではゲート端子を非永続駆動ラッチ出力ノード4と交差結合ノード5に接続する直列接続のFET対74,75のみを第1のクロックドFET16に並列接続しているが、ゲート端子を非永続駆動ラッチ出力ノード3と交差結合ノード5aに接続する直列接続のPチャネルFET対を第1のクロックドFET16にさらに並列接続して、書き込み進行中に第1のノード1もハイインピーダンスにならなくすることもできる。
【実施例0070】
図17は本発明の第15の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例15)の回路図である。実施例11との違いは、2段のインバータ29,30からなる遅延回路54で遅らせた遅延クロック信号を非永続駆動ラッチ内の第1、第2のクロックドFET16,18のゲート端子に配っている点である。このクロック信号の遅延配信により非永続駆動ラッチがラッチ状態に入る前に、後段ラッチが透過状態に入って交差結合インバータ対への書き込みが始まる。これにより、交差結合インバータ対書き込み中の第1のノード1,1aのノイズ耐性が高まる。後段ラッチが透過状態に入っても、非永続駆動ラッチの透過状態が遅延時間分継続し、その間、Vdd側の駆動電流経路途中の第1のクロックドFET16,16aがオフしなくなることで、交差結合インバータ対への書き込みが終盤に至るまで、第1のノード1,1aがノイズに敏感なハイインピーダンスにならなくなるからである。
【0071】
図18は本発明の第16の実施の形態に関わるDFF構成例(実施例16)の回路図である。実施例13との違いは、LSSD型のスキャンフリップフロップと一体化している点で、交差結合インバータ対50を、それへの書き込みがクロック信号(CLKB)で制御されるNチャネルFET62,63を介しても行えるようにして、LSSD型スキャンFFの後段ラッチとしても機能するようにしている。D-QB経路が本発明のDFFで構成されるので、わずか16FETの追加でキャプチャモード動作と高速・低消費電力のノーマルモード動作が両立される。ここで、ノーマルモードはCLKB をローレベルとすることで、キャプチャモードはCLKをローレベルとしてCLKAとCLKBに適切なパルスを加えることで、それぞれ実現される。
【0072】
以上の実施例1~16の回路は、構成FETのそれぞれのチャネル極性を全て逆(第1同一チャネルをPチャネルからNチャネルに、第1逆チャネルをNチャネルからPチャネル)にした上でVddとGNDの給電を入れ替える構成も可能である。ただし、この全て逆にする構成ではDFFのトリガーエッジがクロック信号の立ち上がりではなく立ち下がりとなる。
【0073】
また、実施例1~5および実施例9~16では、a付き側の非永続駆動ラッチのクロックドCMOSインバータの入力端子(FET11a,15aのゲート端子)を、インバータ27の出力に接続するようにしているが、この代わりにa無し側の非永続駆動ラッチの第1のノード1に接続することもできる。セットアップ時間が若干増加するものの、インバータ27を省ける分、構成FET数が2減る利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0074】
TGFFを代替えする低消費電力のDFFとして広く利用されることが見込める。セル面積が若干増加する可能性はあるものの、平均的な使用条件であるデータ活性化率10%程度かそれ以下の条件では、TGFF比1/3程度の電力遅延積と十分なノイズ耐性が両立されるからである。
【符号の説明】
【0075】
1,1a 第1のノード
2,2a 第2のノード
3 第3のノード
4 第4のノード
5,5a 交差結合ノード
11,11a,13,13a,33,36 ,71,71a,110,111 ソース接地のNチャネルFET
12,12a Nチャネルでソース接地の第1の後段駆動FET
20,20a Pチャネルでソース接地の第2の後段駆動FET
21 Nチャネルでソース接地の第4の後段駆動FET
15,15a,22,31,32,34,35,37,72,72a,73,73a,74,75,150,151 ソース接地のPチャネルFET
17,17a,23 ダイオード接続のPチャネルFET
19,19a Nチャネルでドレイン接地の第3の後段駆動FET
38a ドレイン接地のNチャネルFET
14 第1のパストランジスタのNチャネルFET
14a 第2のパストランジスタのNチャネルFET
16,16a,161 Pチャネルの第1のクロックドFET
18,18a Nチャネルの第2のクロックドFET
37 パストランジスタのPチャネルFET
24~30,65~70 インバータ
60~63 パストランジスタのNチャネルFET
40 クロック(CLK)端子
41 D端子
42 QB端子
43 スキャン入力(IB)端子
44 スキャンクロックA(CLKA)端子
45 スキャンクロックB(CLKB)端子
50 交差結合インバータ対
51,51a クロックドCMOSインバータ
52,52a,521,53 フィードバック回路
54 遅延クロック信号生成回路

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図18