(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056157
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20240416BHJP
F02D 23/00 20060101ALI20240416BHJP
F02D 15/02 20060101ALI20240416BHJP
F02D 43/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F02D45/00 345
F02D23/00 N
F02D15/02 C
F02D43/00 301S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162869
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英二
【テーマコード(参考)】
3G092
3G384
【Fターム(参考)】
3G092AA01
3G092AA12
3G092AA18
3G092AC02
3G092DB03
3G092DD06
3G384AA28
3G384DA54
3G384DA55
3G384FA11Z
3G384FA56Z
(57)【要約】
【課題】過給圧の応答遅れによる内燃機関の失火を抑制する。
【解決手段】圧縮自己着火燃焼時の内燃機関は、過給領域にて目標出力を増加させる際に、目標出力を実現する運転点に向けて機関回転数のみを増加させる第1過程と、吸気圧力及び機関回転数を増加させる第2過程と、目標出力を実現する運転点に向けて吸気圧力のみを増加させる第3過程と、を経るように制御されている。第2過程は、機関回転数を目標出力が実現される機関回転数まで増加させる。第3過程は、吸気圧力を目標出力が実現される吸気圧力まで増加させる。つまり、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関は、過給領域にて目標出力を増加させる過渡時に、実吸気圧力に応じて機関回転数の上限値を設定し、この上限値を超えないように機関回転数が制御される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮自己着火燃焼を行う内燃機関の制御方法であって、
ターボ過給機による過給を行う過給領域にて内燃機関の目標出力を増加させる過渡時に、実過給圧に応じて内燃機関の機関回転数の上限値を設定し、上記上限値を超えないように内燃機関の機関回転数を制御する内燃機関の制御方法。
【請求項2】
内燃機関の動力により駆動可能なモータジェネレータを用い、上記上限値を超えないように内燃機関の機関回転数を制御する請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項3】
上記過渡時に、内燃機関の圧縮比を変更可能な圧縮比可変機構を用いて圧縮比を現在の圧縮比から高圧縮比側に所定の高圧縮比補正量分高くなるよう変更する高圧縮比補正を実施し、上記上限値を実圧縮比に応じて補正する請求項2に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項4】
上記高圧縮比補正は、内燃機関の機関回転数が目標出力の機関回転数に到達すると終了する請求項3に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項5】
内燃機関は、上記過渡時において、目標出力を実現する運転点に向けて機関回転数のみが上昇する第1過程と、該第1過程の後に機関回転数と過給圧がともに上昇して機関回転数が目標出力の機関回転数に到達する第2過程と、該第2過程の後に過給圧のみが上昇して過給圧が目標出力の過給圧に到達する第3過程と、を経るよう制御され、
上記高圧縮比補正量は、上記第3過程において失火が発生しないように、過給圧が所定の過給圧上限値を超えないように設定する請求項4に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項6】
上記高圧縮比補正量は、上記第1過程においてノッキングが発生しないように、機関回転数が所定の機関回転数上限値を超えないように設定する請求項5に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項7】
内燃機関は、上記モータジェネレータを駆動する発電専用である請求項5または6に記載の内燃機関の制御方法。
【請求項8】
圧縮自己着火燃焼を行う内燃機関の制御装置であって、
内燃機関を過給するターボ過給機と、
過給領域にて内燃機関の目標出力を増加させる過渡時に、実過給圧に応じて内燃機関の機関回転数の上限値を設定する上限値設定部と、
上記上限値を超えないように内燃機関の機関回転数を制御する制御部と、を有する内燃機関の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、自己着火式内燃機関において、燃焼室温度とエンジン回転数とトルクとから目標過給圧を設定し、この目標過給圧となるように過給手段の回転数を制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1は、過給手段として機械式過給機や電動モータを駆動とする過給機を前提としたものであって、過給手段による過給圧の応答遅れを考慮したものではない。
【0005】
例えば、過給圧に応答遅れが生じるような過給機を備えた圧縮自己着火燃焼を行う内燃機関においては、過給させた状態で内燃機関の目標出力を増加する際に、過給圧の応答遅れが生じて過給圧の上昇よりも先に内燃機関の機関回転数が上昇してしまい、圧縮自己着火燃焼ができずに失火してしまう虞がある。
【0006】
すなわち、過給圧に応答遅れが生じるような過給機を備えた圧縮自己着火燃焼を行う内燃機関においては、過給圧の応答遅れを考慮した制御を行うにあたって更なる改善の予知がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内燃機関は、圧縮自己着火燃焼を行うものであって、ターボ過給機による過給を行う過給領域にて内燃機関の目標出力を増加させる過渡時に、実過給圧に応じて内燃機関の機関回転数の上限値を設定し、上記上限値を超えないように内燃機関の機関回転数を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内燃機関は、過給圧の応答遅れによる失火を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明が適用される車両の駆動システムの概略を模式的に示した説明図。
【
図2】内燃機関のシステム構成を模式的に示した説明図。
【
図3】圧縮自己着火燃焼時における内燃機関の運転領域を模式的に示した説明図。
【
図4】内燃機関の目標出力を増加させる過渡時における機関回転数及び吸気圧力の変化の一例を示す説明図。
【
図5】内燃機関の目標出力を増加させる過渡時における内燃機関の運転状態の変化を示すタイミングチャート。
【
図6】内燃機関の目標出力を増加させる過渡時に内燃機関の圧縮比を増加させた場合における機関回転数及び吸気圧力の変化の一例を示す説明図。
【
図7】内燃機関の目標出力を増加させる過渡時に内燃機関の圧縮比を増加させた内燃機関の運転状態の変化を示すタイミングチャート。
【
図8】モータジェネレータの制御の流れを示すフローチャート。
【
図9】可変圧縮比アクチュエータの制御の流れを示すフローチャート。
【
図10】本発明に係る内燃機関の制御の流れ模式的に示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明が適用される車両1の駆動システムの概略を模式的に示した説明図である。車両1は、駆動輪2を駆動する駆動ユニット3と、駆動輪2を駆動するための電力を発電する発電ユニット4と、を有している。
【0012】
駆動ユニット3は、駆動輪2を回転駆動する第2電動機としての駆動用モータ5と、駆動用モータ5の駆動力を駆動輪2に伝達する第1ギヤトレーン6及びディファレンシャルギヤ7と、を有している。駆動用モータ5には、発電ユニット4で発電された電力等が充電されたバッテリ8から電力が供給される。
【0013】
発電ユニット4は、駆動用モータ5に供給する電力を発電する第1電動機としてのモータジェネレータ9と、モータジェネレータ9を駆動して発電する内燃機関10と、内燃機関10の回転をモータジェネレータ9に伝達する第2ギヤトレーン11と、を有している。
【0014】
車両1は、内燃機関10により駆動されるモータジェネレータ9からの電力及びバッテリ8からの電力により駆動用モータ5を駆動して走行するものであり、内燃機関10を駆動源として直接的には使用しないいわゆるシリーズハイブリッド車両である。すなわち、内燃機関10は、発電専用である。
【0015】
車両1は、例えば、バッテリ8のバッテリ残量(充電量)が少なくなると、バッテリ8を充電するために内燃機関10を駆動してモータジェネレータ9で発電する。
【0016】
駆動用モータ5は、車両1の直接的な駆動源であり、例えばバッテリ8からの交流電力により駆動する。また、駆動用モータ5は、車両1の減速時に発電機として機能する。
【0017】
モータジェネレータ9は、内燃機関10に発生した回転エネルギーを電気エネルギーに変換し、例えばバッテリ8を充電する。また、モータジェネレータ9は、内燃機関10を駆動する電動機としての機能も有しており、内燃機関10のモータリングが可能となっている。モータジェネレータ9は、内燃機関10のスタータモータとして機能させてもよい。なお、モータジェネレータ9で発電した電力は、運転状態に応じて、例えばバッテリ8に充電するのではなく駆動用モータ5に直接供給してもよい。
【0018】
図2は、内燃機関10のシステム構成を模式的に示した説明図である。内燃機関10は、複数のシリンダ12aが設けられたシリンダブロック12と、このシリンダブロック12の上側に固定されるシリンダヘッド13と、シリンダブロック12の下側に固定されるオイルパン14と、を有している。なお、この図では、一つの気筒のシリンダ12aのみを描いており、実際には複数のシリンダ12aが気筒列方向に一列に並んで配置されている。
【0019】
各シリンダ12aにはピストン15が摺動可能に配置されており、各ピストン15の上方には、ペントルーフ型のシリンダヘッド13の下面との間に燃焼室が形成されている。各燃焼室には吸気弁16を介して吸気通路(吸気ポート)17が接続するとともに、排気弁18を介して排気通路(排気ポート)19が接続し、さらに燃焼室内の頂部中央に混合気を火花点火する点火プラグ20が設けられている。
【0020】
また、この内燃機関10には、排気エネルギーにより駆動されて吸気を過給する過給機としてのターボ過給機21が設けられている。このターボ過給機21は、排気通路19に設けられて排気により駆動されるタービン22と、吸気通路17に設けられて吸入空気(吸気)を過給するコンプレッサ23とを有している。タービン22とコンプレッサ23とは、同軸上に配置されている。
【0021】
内燃機関10の過給圧は、運転条件に応じて制御可能となっている。具体的には、過給圧は、バイパス通路24に設けられた排気バイパス弁25の開度を制御することで制御可能となっている。バイパス通路24は、タービン22の上流側から排気の一部をタービン22の下流側へバイパスさせることが可能なものであり、排気通路19に接続されたものである。
【0022】
吸気通路17には、上流側より順に、吸気中の異物を捕集するエアフィルタ26と、吸気量を検出するエアフロメータ27と、コンプレッサ23と、吸気量を調整する電子制御式のスロットル弁28と、過給された空気を冷却する水冷式のインタークーラ29と、吸気ポートへ燃料を噴射する燃料噴射弁30と、が設けられている。
【0023】
排気通路19には、三元触媒等の触媒31a、31bが直列に配置されるとともに、これら触媒31a、31bの下流側に、消音用のマフラー32が設けられている。
【0024】
さらに、内燃機関10の機関圧縮比(以下、単に「圧縮比」とも呼ぶ)を変更可能な可変圧縮比手段として、複リンク式ピストン-クランク機構を利用した可変圧縮比機構(圧縮比可変機構)40が設けられている。この可変圧縮比機構40は、例えば特許第4415464号公報等にも記載されているように公知であるので、簡単に説明すると、クランクシャフト33のクランクピン34に回転可能に装着されるロアリンク41と、このロアリンク41とピストン15とを連結するアッパリンク42と、一端がロアリンク41に連結された制御リンク43と、を有し、この制御リンク43の他端が、制御軸44に偏心して設けられた偏心軸部に回転可能に取り付けられている。従って、モータ等の可変圧縮比アクチュエータ45により制御軸44の回転位置を変更することによって、制御リンク43を介してロアリンク41の姿勢が変化し、これにより、ピストンストローク特性の変化を伴って圧縮比を変更することができる。
【0025】
ECU(エンジンコントロールユニット)50は、各種制御処理を記憶及び実行する機能を有するものであり、各種センサ類から検出もしくは推定される機関運転状態に基づいて、燃料噴射弁30、点火プラグ20、スロットル弁28、排気バイパス弁25、及び可変圧縮比アクチュエータ45等へ制御信号を出力して、燃料噴射量及び燃料噴射時期、点火時期、スロットル開度(吸入空気量)、過給圧、及び圧縮比等を制御する。
【0026】
上記の各種センサ類として、EUC50には、内燃機関10の機関回転数を検出する機関回転数センサ51、機関温度としての冷却水温度を検出する冷却水温度センサ52、燃焼室内の圧力を検出する筒内圧力センサ53、インタークーラ29下流側の吸気圧力を検出する吸気圧センサ54、バッテリ8の充電量を検出するバッテリ充電量センサ55、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルセンサ56、内燃機関10の可変圧縮比機構40により可変制御される内燃機関10の実際の圧縮比の値(実圧縮比)を検出する実圧縮比検出センサ57等からの信号が入力されている。
【0027】
実圧縮比検出センサ57は、例えば、制御軸44の回転角あるいは可変圧縮比アクチュエータ45の出力軸の回転角を検出するロータリ型ポテンショメータやロータリエンコーダなどから構成される。なお、実圧縮比は、可変圧縮比アクチュエータ45を構成する電動モータへの指令信号から該電動モータの回転量を求め、この回転量から制御軸44の回転角を求めることで、センサを用いることなく実圧縮比を検知するようにしてもよい。
【0028】
ECU50は、火花点火燃焼(SI燃焼)と圧縮自己着火燃焼(HCCI燃焼)とを切り換える制御を実施している。
【0029】
また、ECU50は、内燃機関10が圧縮自己着火燃焼時において、ターボ過給機21による過給を行う過給領域(過給運転領域)にて内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に、吸気圧力の応答遅れを考慮して、その時点での吸気圧力(その時点での過給圧)である実吸気圧力(実過給圧)に応じて内燃機関10の機関回転数の上限値を設定し、この上限値を超えないように内燃機関10の機関回転数を制御する。
【0030】
図3は、圧縮自己着火燃焼時における内燃機関10の運転領域Rを模式的に示した説明図である。
図3中に破線で示す特性線Pは、内燃機関10の目標出力に対してECU50が設定する機関回転数(目標回転数)と吸気圧力(目標過給圧)の関係を示している。つまり、ECU50は、内燃機関10の目標出力に対して特性線P上の運転点で内燃機関10を制御する。なお、圧縮自己着火燃焼時における運転領域Rのうち過給無しの運転領域は、三角形で示された運転領域Rのうちの左下の一部のみである。
【0031】
運転領域Rは、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10がノッキングや失火(自己着火しない)をすることなく安定して運転できるような運転領域であり、
図3中の線分r1、r2、r3によって囲まれた領域である。線分r1は、圧縮自己着火燃焼時における内燃機関10のノッキング限界を表している。線分r2は、圧縮自己着火燃焼時における内燃機関10の失火限界を表している。線分r3は、圧縮自己着火燃焼時における内燃機関10の機関回転数の低回転側の限界を示している。圧縮自己着火燃焼時における内燃機関10の機関回転数の高回転側の限界は、線分r1と線分r2との交点における回転数となる。
【0032】
特性線Pは、運転領域R内の設定される所定の線分であり、例えば、線分r3の中点と、線分r1と線分r2との交点を結ぶ線分である。つまり、特性線Pは、運転領域Rの中央の位置するものである。
【0033】
そして、ECU50は、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10の運転領域が過給領域にある場合、内燃機関10の目標出力に対して、特性線P上の吸気圧力と機関回転数をそれぞれ目標吸気圧力(目標過給圧)と目標機関回転数(目標回転数)として設定する。つまり、ECU50は、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10の運転領域が過給領域にある場合、内燃機関10の目標出力に対応する目標運転点として、特性線P上に位置する機関回転数及び吸気圧力を設定する。
【0034】
従って、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10の運転領域が過給領域にある場合、内燃機関10の目標出力に対応する運転点は、両端矢印Y1に示すように機関回転数に応じて吸気圧力の上限と下限が線分r1と線分r2とによって制限され、また両端矢印Y2に示すように吸気圧力に応じて機関回転数の上限と下限が線分r2と線分r3とによって制限される。
【0035】
また、ECU50は、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10の運転領域が過給領域にある場合、内燃機関10の目標出力が増加して運転領域R内の運転点がAからDに変化する過渡時に、
図4に示すように、機関回転数及び吸気圧力(過給圧)を制御する。
【0036】
図4は、内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時における機関回転数及び吸気圧力の変化の一例を示す説明図である。
【0037】
図4における運転点Aは、目標出力が増加する前の運転点である。
図4における運転点Bは、運転点Aから吸気圧力を一定として、運転領域R内で機関回転数を失火限界まで上昇させた運転点である。
図4における運転点Cは、過渡時において運転領域R内で機関回転数が失火限界に沿って目標出力に対応する目標機関回転数となった運転点である。運転点Cにおいては、吸気圧力が目標出力に対応する目標吸気圧力に達していない。
図4における運転点Dは、目標出力に対応する運転点である。
【0038】
圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10は、運転点Aで運転中に目標出力を運転点Dに増加させる過渡時において、
図4中に破線で示す特性線Q1で示すように、運転点がA→B→C→Dの順に変化するよう制御される。
【0039】
換言すると、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10は、過給領域にて目標出力を増加させる際に、目標出力を実現する運転点に向けて機関回転数のみを増加させる第1過程と、吸気圧力(過給圧)及び機関回転数を増加させる第2過程と、目標出力を実現する運転点に向けて吸気圧力(過給圧)のみを増加させる第3過程と、を経るように制御されている。第2過程は、第1過程の直後に実施されるものであり、機関回転数を目標出力が実現される機関回転数まで増加させる。第3過程は、第2過程の直後に実施されるものであり、吸気圧力(過給圧)を目標出力が実現される吸気圧力(過給圧)まで増加させる。
【0040】
つまり、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10は、過給領域にて目標出力を増加させる過渡時に、実吸気圧力(実過給圧)に応じて機関回転数の上限値を設定し、この上限値を超えないように機関回転数が制御される。
【0041】
実吸気圧力(実過給圧)に応じた機関回転数の上限値とは、
図3及び
図4における線分r2上の機関回転数である。
【0042】
内燃機関10は、過給領域にて目標出力を増加させる過渡時において、吸気圧力に応答遅れが生じることになる。
【0043】
そこで、内燃機関10は、過給領域にて目標出力を増加させる過渡時において、吸気圧力の上昇に先行して機関回転数を上昇(増加)させる。そのため、内燃機関10は、過給領域にて目標出力を増加させる過渡時において、最初に運転点Aから吸気圧力を一定として失火限界となる運転点Bまで運転点を変化させる(第1過程)。つまり、運転点Aで運転中に目標出力を運転点Dに増加させる過渡時において、運転点Aから運転点Bに運転点が変化する第1過程では、目標出力を実現する運転点に向けて機関回転数のみが上昇する。
【0044】
次に内燃機関10は、吸気圧力の上昇に伴い失火限界に沿って機関回転数が目標機関回転数となる運転点Cまで運転点を変化させる(第2過程)。つまり、運転点Aで運転中に目標出力を運転点Dに増加させる過渡時において、運転点Bから運転点Cに運転点が変化する第2過程では、機関回転数と吸気圧力がともに上昇して機関回転数が目標出力を実現する目標機関回転数に到達する。
【0045】
その次に内燃機関10は、吸気圧力が目標吸気圧力(目標過給圧)となる運転点Dまで運転点を変化させる(第3過程)。つまり、運転点Aで運転中に目標出力を運転点Dに増加させる過渡時において、運転点Cから運転点Dに運転点が変化する第3過程では、吸気圧力(過給圧)のみが上昇して吸気圧力(過給圧)が目標出力を実現する目標吸気圧力(目標過給圧)に到達する。
【0046】
ここで、特性線Q1のうち運転点Aから運転点Cに至る過程は、その時点での吸気圧力(過給圧)に応じて設定された内燃機関10の機関回転数の上限値によって、内燃機関10の機関回転数が制限された状態となっている。
【0047】
図5は、内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時における内燃機関10の運転状態の変化を示すタイミングチャートである。
【0048】
時刻t1は、内燃機関10の目標出力が増加したタイミングであり、内燃機関10が運転点Aにいるタイミングである。時刻t2は、内燃機関10の運転点が運転点Bに到達したタイミングである。 時刻t3は、内燃機関10の運転点が運転点Cに到達したタイミングである。 時刻t4は、内燃機関10の運転点が運転点Dに到達したタイミングであり、内燃機関10の出力が目標出力に達したタイミングである。
【0049】
時刻t1~時刻t2の期間は、内燃機関10の機関回転数のみが上昇する第1過程に相当する。時刻t2~時刻t3の期間は、内燃機関10の機関回転数と吸気圧力の双方が上昇する第2過程に相当する。時刻t3~時刻t4は、内燃機関10の吸気圧力(過給圧)のみが上昇する第3過程に相当する。
【0050】
このように、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10は、ターボ過給機21による過給を行う過給領域にて内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に、実吸気圧力(実過給圧)に応じて内燃機関10の機関回転数の上限値を設定し、この上限値を超えないように内燃機関10の機関回転数が制御されている。
【0051】
そのため、内燃機関10は、吸気圧力(過給圧)の応答遅れ(ターボ過給機21の応答遅れ)による内燃機関10の失火を抑制することができる。
【0052】
また、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10は、ターボ過給機21による過給を行う過給領域にて内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に、モータジェネレータ9を用いて、内燃機関10の機関回転数が実吸気圧力(実過給圧)に応じて設定された内燃機関10の機関回転数の上限値を超えないように制御している。そのため、内燃機関10は、内燃機関10が搭載される車両1の運転性への影響を抑制しつつ機関回転数を制御することができる。
【0053】
さらに、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10は、ターボ過給機21による過給を行う過給領域にて目標出力を増加させる過渡時に、内燃機関10の圧縮比を高圧縮比側に所定の高圧縮比補正量分高くする高圧縮比補正を実施し、実吸気圧力(実過給圧)と実圧縮比に応じて機関回転数の上限値を設定し、この上限値を超えないように機関回転数を制御してもよい。
【0054】
すなわち、ECU50は、内燃機関10が圧縮自己着火燃焼時において、ターボ過給機21による過給を行う過給領域(過給運転領域)にて内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に、可変圧縮比機構40により圧縮比を増加させるとともに、実吸気圧力(実過給圧)及び実圧縮比に応じて内燃機関10の機関回転数の上限値を設定し、この上限値を超えないように内燃機関10の機関回転数を制御してもよい。
【0055】
図6は、内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に内燃機関10の圧縮比を増加させた場合における機関回転数及び吸気圧力の変化の一例を示す説明図である。
【0056】
圧縮自己着火燃焼時における運転領域R(
図6中の実線で示す三角形の領域)は、内燃機関10の圧縮比を増加させると、
図6中に破線で示す運転領域Rp(
図6中の破線で示す三角形の領域)に示すように、全体として吸気圧力が低くなる側へ平行移動することになる。つまり、内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に、圧縮自己着火燃焼を行う内燃機関10の圧縮比を増加させると、内燃機関10の運転領域Rは、圧縮比の増加にともない吸気圧力が低くなる側へ移動する。
【0057】
運転領域Rpは、運転領域Rのときの圧縮比より所定の高圧縮比補正量分高くなった圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10がノッキングや失火(自己着火しない)をすることなく安定して運転できるような運転領域であり、
図6中の線分r1´、r2´、r3´によって囲まれた領域である。線分r1´は、圧縮自己着火燃焼時における内燃機関10のノッキング限界を表している。線分r2´は、圧縮自己着火燃焼時における内燃機関10の失火限界を表している。線分r3´は、圧縮自己着火燃焼時における内燃機関10の機関回転数の低回転側の限界を示している。圧縮自己着火燃焼時における内燃機関10の機関回転数の高回転側の限界は、線分r1´と線分r2´との交点における回転数となる。線分r1´、r2´、r3´は、それぞれ運転領域Rの線分r1、r2、r3に相当するものである。
【0058】
運転領域Rpは、内燃機関10の圧縮比が高くなるほど(高圧縮比補正量が大きいほど)、運転領域Rからの平行移動量が大きくなる。
【0059】
図6における運転点Aは、目標出力が増加する前の運転点である。
図6における運転点B´は、運転点Aから吸気圧力を一定として、運転領域Rp内で機関回転数を失火限界まで上昇させた運転点である。
図4における運転点C´は、過渡時において運転領域Rp内で機関回転数が失火限界に沿って目標出力に対応する目標機関回転数となった運転点である。運転点C´においては、吸気圧力が目標出力に対応する目標吸気圧力に達していない。
図4における運転点Dは、目標出力に対応する運転点である。
【0060】
圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10は、運転点Aで運転中に目標出力を運転点Dに増加させる過渡時において、圧縮比を増加させると、
図6中に太破線で示す特性線Q2で示すように、運転点がA→B´→C´→Dの順に変化するよう制御される。
【0061】
換言すると、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10は、過給領域にて目標出力を増加させる際に圧縮比を増加させる場合にも、上述した第1過程と、第2過程と、第3過程と、を経るように制御されている。
【0062】
つまり、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10は、過給領域にて目標出力を増加させるとともに圧縮比を増加させる過渡時に、実吸気圧力(実過給圧)と実圧縮比に応じて機関回転数の上限値を設定し、この上限値を超えないように機関回転数が制御される。
【0063】
内燃機関10は、過給領域にて目標出力を増加させるとともに圧縮比を増加させる過渡時において、吸気圧力の上昇に先行して機関回転数を上昇(増加)させる。内燃機関10は、過給領域にて目標出力を増加させるとともに圧縮比を増加させる過渡時において、運転点Aから吸気圧力を一定として運転領域Rpの失火限界となる運転点B´まで運転点を変化させる(第1過程)。つまり、運転点Aで運転中に目標出力を運転点Dに増加させるとともに圧縮比を増加させる過渡時において、運転点Aから運転点B´に運転点が変化する第1過程では、目標出力を実現する運転点に向けて機関回転数のみが上昇する。また、内燃機関10は、圧縮比を増加させることで、運転可能領域が運転領域Rから運転領域Rpに変化することにより、実過給圧及び実圧縮比に応じた機関回転数の上限値が大きくなる(拡大される)。
【0064】
次に内燃機関10は、吸気圧力の上昇に伴い運転領域Rpの失火限界に沿って機関回転数が目標機関回転数となる運転点C´まで運転点を変化させる(第2過程)。つまり、運転点Aで運転中に目標出力を運転点Dに増加させるとともに圧縮比を増加させる過渡時において、運転点B´から運転点C´に運転点が変化する第2過程では、機関回転数と吸気圧力がともに上昇して機関回転数が目標出力を実現する目標機関回転数に到達する。
【0065】
その次に内燃機関10は、吸気圧力が目標吸気圧力(目標過給圧)となる運転点Dまで運転点を変化させる(第3過程)。つまり、運転点Aで運転中に目標出力を運転点Dに増加させるとともに圧縮比を増加させる過渡時において、運転点C´から運転点Dに運転点が変化する第3過程では、吸気圧力(過給圧)のみが上昇して吸気圧力(過給圧)が目標出力を実現する目標吸気圧力(目標過給圧)に到達する。内燃機関10は、運転点Aで運転中に目標出力を運転点Dに増加させるとともに圧縮比を増加させる過渡時において、機関回転数が目標出力を実現する目標回転数に到達すると、高圧縮比補正量分増加させていた圧縮比を元の圧縮比に戻している。
【0066】
ここで、特性線Q2のうち運転点Aから運転点C´に至る過程は、その時点での吸気圧力(過給圧)及び実圧縮比に応じて設定された内燃機関10の機関回転数の上限値によって、内燃機関10の機関回転数が制限された状態となっている。
【0067】
また、高圧縮比側補正量は、第3過程において失火が発生すしないように、吸気圧力(過給圧)が所定の吸気圧上限値(過給圧上限値)を超えないように設定される。つまり、高圧縮比補正量は、第3過程において吸気圧力(過給圧)が常に運転領域Rまたは運転領域Rpの少なくとも一方の領域内に位置するように設定される。さらに言えば、高圧縮比補正量は、内燃機関10の機関回転数が目標出力を実現する目標回転数のときの運転領域Rの失火限界を表す線分r2上の吸気圧力が、内燃機関10の機関回転数が目標出力を実現する目標回転数のときの運転領域Rpのノッキング限界を表す線分r1´上の吸気圧力以下となるように設定される。換言すれば、高圧縮比補正量は、内燃機関10の機関回転数が目標出力を実現する目標回転数のときに、運転領域Rの失火限界を表す線分r2と運転領域Rpのノッキング限界を表す線分r1´との間に、内燃機関10がノッキングや失火をすることなく安定して運転できるような運転領域が形成されるように設定される。
【0068】
そのため、内燃機関10は、過渡時に高くした圧縮比を戻す際に誤って失火してしまうことを抑制できる。
【0069】
また、高圧縮比側補正量は、第1過程においてノッキングが発生しないように、機関回転数が所定の機関回転数上限値を超えないように設定される。つまり、高圧縮比補正量は、第1過程において機関回転数が常に運転領域Rまたは運転領域Rpの少なくとも一方の領域内に位置するように設定される。さらに言えば、高圧縮比補正量は、内燃機関10の吸気圧力(過給圧)が上昇し始める前の吸気圧力(過給圧)のときの運転領域Rの失火限界を表す線分r2上の機関回転数が、内燃機関10の吸気圧力(過給圧)が上昇し始める前の吸気圧力(過給圧)のときの運転領域Rpのノッキング限界を表す線分r1´上の機関回転数以上となるように設定される。換言すれば、高圧縮比補正量は、内燃機関10の吸気圧力(過給圧)が上昇し始める前の吸気圧力(過給圧)のときに、運転領域Rの失火限界を表す線分r2と運転領域Rpのノッキング限界を表す線分r1´との間に、内燃機関10がノッキングや失火をすることなく安定して運転できるような運転領域が形成されるように設定される。
【0070】
そのため、内燃機関10は、過渡時に圧縮比を高くする際に誤ってノッキングしてしまうことを抑制できる。
【0071】
図7は、内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に内燃機関10の圧縮比を増加させた内燃機関10の運転状態の変化を示すタイミングチャートである。
図7中の破線は、内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に圧縮比を増加させない場合の内燃機関10の運転状態の変化を比較のために示したものである。つまり、
図7中の破線は、上述した
図5における内燃機関10の運転状態の変化を示したものである。
【0072】
時刻t1は、内燃機関10の目標出力が増加したタイミングであり、内燃機関10が運転点Aにいるタイミングである。内燃機関10は、時刻t1のタイミングで圧縮比を増加させている。時刻t2´は、内燃機関10の運転点が運転点B´に到達したタイミングである。時刻t3´は、内燃機関10の運転点が運転点C´に到達したタイミングである。内燃機関10は、時刻t3のタイミングで増加させた圧縮比を元に戻している。時刻t4´は、内燃機関10の運転点が運転点Dに到達したタイミングであり、内燃機関10の出力が目標出力に達したタイミングである。
【0073】
時刻t1~時刻t2´の期間は、内燃機関10の機関回転数のみが上昇する第1過程に相当する。時刻t2´~時刻t3´の期間は、内燃機関10の機関回転数と吸気圧力の双方が上昇する第2過程に相当する。時刻t3´~時刻t4´は、内燃機関10の吸気圧力(過給圧)のみが上昇する第3過程に相当する。
【0074】
なお、時刻t2は、過渡時に圧縮比を増加させない場合に、内燃機関10の運転点が運転点Bに到達したタイミングである。時刻t3は、過渡時に圧縮比を増加させない場合に、内燃機関10の運転点が運転点Cに到達したタイミングである。時刻t4は、過渡時に圧縮比を増加させない場合に、内燃機関10の運転点が運転点Dに到達したタイミングである。
【0075】
このように、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10は、ターボ過給機21による過給を行う過給領域にて内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に圧縮比を増加させることによって、吸気圧力(過給圧)の応答遅れを縮小することができる。つまり、
図7に実線で示すように、圧縮比を増加させることで吸気圧力(過給圧)を早期に目標とする吸気圧力(過給圧)まで上昇させることが可能となる。
【0076】
図8は、上述した実施例におけるモータジェネレータ9の制御の流れを示すフローチャートである。模式的に示した説明図である。
【0077】
ステップS1では、吸気圧センサ54、バッテリ充電量センサ55及びアクセルペダルセンサ56のセンサ値(出力信号)を読み込む。
【0078】
ステップS2では、バッテリ充電量センサ55及びアクセルペダルセンサ56からの出力信号に基づいて、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10の運転領域が過給領域にある場合の目標出力を算出する。すなわち、目標出力は、アクセルペダル開度とバッテリ充電量に応じて算出される。
【0079】
ステップS3では、算出された目標出力を実現する機関回転数である第1目標回転数を算出する。第1目標回転数は、例えば、予めECU50内のROM等に目標出力と関連付けされた状態で記憶しておき、算出された目標出力に応じて対応する値を読み出している。
【0080】
ステップS4では、吸気圧センサ54の出力信号に基づいて内燃機関10の機関回転数の上限値を算出する。つまり、ステップS4では、その時点での吸気圧力(過給圧)に応じて設定された機関回転数の上限値を算出する。
【0081】
ステップS5では、第1目標回転数と吸気圧力(過給圧)に応じて設定された機関回転数の上限値を比較する。ステップS5において、第1目標回転数が吸気圧力(過給圧)に応じて設定された機関回転数の上限値よりも大きい場合には、ステップS6へ進む。ステップS5において、第1目標回転数が吸気圧力(過給圧)に応じて設定された機関回転数の上限値以下の場合には、ステップS7へ進む。なお、第1目標回転数は、内燃機関10の圧縮比が高くなるほど高く(大きく)なるよう補正される。
【0082】
ステップS6では、第2目標回転数として吸気圧力(過給圧)に応じて設定された機関回転数の上限値を設定する。
【0083】
ステップS7では、第2目標回転数として第1目標回転数を設定する。
【0084】
ステップS8では、内燃機関10の機関回転数が第2目標回転数となるようにモータジェネレータ9を制御する。
【0085】
図9は、上述した実施例における可変圧縮比アクチュエータ45の制御の流れを示すフローチャートである。模式的に示した説明図である。
【0086】
ステップS11では、吸気圧センサ54、バッテリ充電量センサ55及びアクセルペダルセンサ56のセンサ値(出力信号)を読み込む。
【0087】
ステップS12では、バッテリ充電量センサ55及びアクセルペダルセンサ56からの出力信号に基づいて、圧縮自己着火燃焼時の内燃機関10の運転領域が過給領域にある場合の目標出力を算出する。すなわち、目標出力は、アクセルペダル開度とバッテリ充電量に応じて算出される。
【0088】
ステップS13では、算出された目標出力を実現する圧縮比である目標圧縮比を算出する。目標圧縮比は、例えば、予めECU50内のROM等に目標出力と関連付けされた状態で記憶しておき、算出された目標出力に応じて対応する値を読み出している。
【0089】
ステップS14では、目標出力と現在の内燃機関10の出力を比較する。ステップS14において、目標出力が内燃機関10の現在の出力よりも大きい場合には、ステップS15へ進む。ステップS14において、目標出力が内燃機関10の現在の出力以下の場合には、ステップS16へ進む。ステップS14では、内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時であるか否かを判定している。
【0090】
ステップS15では、ステップS13で算出された目標圧縮比に対して高圧縮比補正を実施する。高圧縮比補正は、目標圧縮比に対して所定の高圧縮比補正量を上乗せする補正である。
【0091】
ステップS16では、内燃機関10の圧縮比が目標圧縮比になるように可変圧縮比アクチュエータ45を制御する。
【0092】
図10は、上述した実施例の内燃機関10の制御の流れ模式的に示した説明図である。
【0093】
ECU50は、目標出力演算部S21、第1目標回転数演算部S22、第2目標回転数演算部S23、第1目標過給圧演算部S24、第2目標過給圧演算部S25、目標圧縮比演算部S26を有している。
【0094】
目標出力演算部S21は、バッテリ充電量センサ55及びアクセルペダルセンサ56からの情報に基づいて、内燃機関10の目標出力を算出する。第1目標回転数演算部S22は、算出された目標出力を実現する第1目標回転数を算出する。第2目標回転数演算部S23は、吸気圧センサ54で検出された現在の吸気圧力(過給圧)から失火限界となる機関回転数の上限値を算出し、第1目標回転数がこの上限値よりも大きい場合は上限値を第2目標回転数として算出し、第1目標回転数がこの上限値以下の場合は第1目標回転数を第2目標回転数として算出する。
【0095】
つまり、第2目標回転数演算部S23は、過給領域にて内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に、実過給圧に応じて内燃機関10の機関回転数の上限値を設定する上限値設定部に相当する。
【0096】
モータジェネレータ9は、内燃機関10の機関回転数が第2目標回転数となるようにECU50によって制御される。つまり、ECU50は、実過給圧に応じて設定された内燃機関10の機関回転数の上限値を超えないように内燃機関10の機関回転数を制御する制御部に相当する。
【0097】
第1目標過給圧演算部S24は、算出された目標出力を実現する第1目標過給圧を算出する。第2目標過給圧演算部S25は、機関回転数センサ51で検出された現在の機関回転数(実回転数)からノッキング限界となる吸気圧力(過給圧)の上限値を算出し、第1目標過給圧がこの上限値よりも大きい場合は上限値を第2目標過給圧として算出し、第1目標過給圧がこの上限値以下の場合は第1目標過給圧を第2目標過給圧として算出する。
【0098】
つまり、第2目標過給圧演算部S25は、過給領域にて内燃機関10の目標出力を増加させる過渡時に、実回転数に応じて内燃機関10の吸気圧力(過給圧)の上限値を設定する第2上限値設定部に相当する。
【0099】
ターボ過給機21は、内燃機関10の吸気圧力(過給圧)が第2目標過給圧となるようにECU50によって制御される。つまり、ECU50は、実回転数に応じて設定された内燃機関10の吸気圧力(過給圧)の上限値を超えないようターボ過給機21を制御する第2制御部に相当する。
【0100】
目標圧縮比演算部S26は、算出された目標出力を実現する目標圧縮比を算出する。
【0101】
可変圧縮比アクチュエータ45は、内燃機関10の圧縮比が目標圧縮比となるようにECU50によって制御される。
【0102】
以上、本発明の具体的な実施例を説明してきたが、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0103】
上述した実施例は、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置に関するものである。
【符号の説明】
【0104】
1…車両
9…モータジェネレータ
10…内燃機関
21…ターボ過給機
30…燃料噴射弁
40…可変圧縮比機構
45…可変圧縮比機構アクチュエータ
50…ECU
51…機関回転数センサ
52…冷却水温度センサ
53…筒内圧力センサ
54…吸気圧センサ
55…バッテリ充電量センサ
56…アクセルペダルセンサ
57…実圧縮比検出センサ