(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056160
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】配線基板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20240416BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H05K3/46 T
H05K1/03 610Z
H05K3/46 B
H05K3/46 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162878
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】児玉 博明
【テーマコード(参考)】
5E316
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA32
5E316AA43
5E316CC04
5E316CC08
5E316CC32
5E316DD23
5E316DD24
5E316EE01
5E316FF13
5E316FF14
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH33
(57)【要約】
【課題】磁性樹脂を有する配線基板に電解メッキ層を安定して形成することが可能な技術を開示する。
【解決手段】本開示の配線基板は、磁性樹脂を一部に含み、磁性樹脂の切削面及び研磨面の何れか一方又は両方を含む加工面が第1金属の電解メッキ層で覆われている。この配線基板の製造方法は、電解メッキ層の形成に使用されるシード層で加工面が覆われるシード層形成工程を有する。シード層形成工程は、磁性樹脂の加工面に露出する磁性粒体が、第1金属又は第1金属と異なる別の第2金属に置換される置換メッキ工程と、置換メッキ工程で磁性粒体から置換された金属と同じ金属の化学メッキ層がシード層として形成せれる化学メッキ工程と、を含むか又は、磁性樹脂の加工面に露出する磁性粒体が、第1金属又は第2金属に置換されてなる置換メッキ層がシード層として形成される置換メッキ工程を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性樹脂を一部に含み、前記磁性樹脂の切削面及び研磨面の何れか一方又は両方を含む加工面が第1金属の電解メッキ層で覆われている配線基板の製造方法であって、
前記電解メッキ層の形成に使用されるシード層で前記加工面が覆われるシード層形成工程を有し、
前記シード層形成工程は、
前記磁性樹脂の前記加工面に露出する磁性粒体が、前記第1金属又は前記第1金属と異なる別の第2金属に置換される置換メッキ工程と、
前記置換メッキ工程で前記磁性粒体から置換された金属と同じ金属の化学メッキ層が前記シード層として形成される化学メッキ工程と、を含むか又は、
前記磁性樹脂の前記加工面に露出する磁性粒体が、前記第1金属又は前記第1金属と異なる別の第2金属に置換されてなる置換メッキ層が前記シード層として形成される置換メッキ工程を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板の製造方法であって、
前記シード層形成工程は、前記置換メッキ工程と前記化学メッキ工程とを含み、
前記置換メッキ工程による置換メッキ層及び前記化学メッキ層及び前記電解メッキ層は、何れも銅メッキ層である。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板の製造方法であって、
前記磁性粒体は、酸化鉄、ニッケル、コバルト又はスズの何れか若しくはそれらのうちの何れかを含む合金である。
【請求項4】
請求項3に記載の配線基板の製造方法であって、
前記磁性粒体は、ニッケル又はニッケル合金である。
【請求項5】
請求項1から4の何れか1の請求項に記載の配線基板の製造方法であって、
前記磁性樹脂で満たされている複数の本体孔を有するコア基板が用意され、前記磁性樹脂を貫通するスルーホールが加工される穿孔工程と、
前記スルーホールの内面を含む前記磁性樹脂の加工面の前記磁性粒体が、前記第1金属又は前記第2金属に置換される前記置換メッキ工程と、
前記置換メッキ工程による置換メッキ層に覆われている部分が前記電解メッキ層にて覆われる電解メッキ工程と、
前記コア基板の表裏の両側に、ビルドアップ層が形成されるビルドアップ工程と、を含む。
【請求項6】
磁性樹脂を一部に含み、前記磁性樹脂の切削面及び研磨面の何れか一方又は両方を含む加工面が第1金属の電解メッキ層で覆われている配線基板であって、
前記磁性樹脂に含まれる磁性粒体は、ニッケル、コバルト又はスズの何れか若しくはそれらのうちの何れかを含む合金である。
【請求項7】
請求項6に記載の配線基板であって、
前記第1金属は、銅であり、
前記磁性粒体は、ニッケル又はニッケル合金である。
【請求項8】
請求項6に記載の配線基板であって、
前記加工面は、前記第1金属の粒体で覆われている。
【請求項9】
請求項6から8の何れか1の請求項に記載の配線基板であって、
コア基板と、前記コア基板の表裏のそれぞれに絶縁層と導電層とが交互に積層されるビルドアップ層とを有し、
前記コア基板は、非磁性樹脂であるコア基板本体と、前記コア基板本体をその板厚方向に貫通する本体孔と、前記本体孔に埋設されている前記磁性樹脂とを有し、
前記加工面は、前記磁性樹脂に形成されるスルーホールの内面である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁性粒体が含まれている磁性樹脂を有する配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の配線基板として、例えば、磁性樹脂と、磁性粒体を含んでいない一般的な樹脂との両方が電解メッキ層で覆われるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-178004号公報(段落[0014]及び
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の配線基板では、一般的な樹脂に比べ、磁性樹脂上に電解メッキ層が形成され難いことが問題になっている。そこで、本件では、磁性樹脂を有する配線基板に電解メッキ層を安定して形成することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の配線基板の製造方法は、磁性樹脂を一部に含み、前記磁性樹脂の切削面及び研磨面の何れか一方又は両方を含む加工面が第1金属の電解メッキ層で覆われている配線基板の製造方法であって、前記電解メッキ層の形成に使用されるシード層で前記加工面が覆われるシード層形成工程を有し、前記シード層形成工程は、前記磁性樹脂の前記加工面に露出する磁性粒体が、前記第1金属又は前記第1金属と異なる別の第2金属に置換される置換メッキ工程と、前記置換メッキ工程で前記磁性粒体から置換された金属と同じ金属の化学メッキ層が前記シード層として形成される化学メッキ工程と、を含むか又は、前記磁性樹脂の前記加工面に露出する磁性粒体が、前記第1金属又は前記第1金属と異なる別の第2金属に置換されてなる置換メッキ層が前記シード層として形成される置換メッキ工程を含む。
【0006】
本開示の配線基板の製造方法では、磁性粒体が露出する磁性樹脂の加工面には化学メッキが形成され難いことに鑑み、シード層形成工程において、磁性樹脂の加工面に露出する磁性粒体が、電解メッキと同じ第1金属又はそれとは異なる第2金属に置換される置換メッキ工程が行われる。そして、置換メッキ層の上に化学メッキ層がシード層として形成されるか、置換メッキ層自体がシード層になる。これにより、磁性粒体が露出する磁性樹脂の加工面にもシード層が安定して形成され、電解メッキも安定して形成される。即ち、本開示の配線基板の製造方法によれば、磁性樹脂を有する配線基板に電解メッキを安定して形成することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図9を参照して本開示の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の配線基板10は、コア基板11と、その表裏の両面に積層される第1と第2のビルドアップ層12A,12Bとを有する。
【0009】
第1と第2のビルドアップ層12A,12Bは、絶縁層15と導電層20とが交互に積層され、絶縁層15にビア導体21が形成されている。また、第1と第2のビルドアップ層12A,12Bの上には、導電層20に含まれる複数のパッド18に対応して複数の開口部17Hを有するソルダーレジスト層17が積層されている。それら複数のパッド18上には、複数の半田バンプ19が備えられている。
【0010】
コア基板11は、例えば、絶縁層11Kと、その表裏の両面に積層される導電層13とを備える。絶縁層11Kは、例えば、複数のプリプレグが積層される構造をなし、導電層13は、絶縁層11Kに積層される銅箔11Dに電解メッキ層が積層される構造をなしている。
【0011】
コア基板11には、複数の本体孔11Hが設けられている。本体孔11Hは、例えば、断面円形をなし、磁性を有する磁性樹脂41が充填されて磁性樹脂スリーブ40が形成されている。そして、各磁性樹脂スリーブ40には、中心部にスルーホール31Hが形成され、その内面がスルーホール導体31で覆われている。また、スルーホール導体31の内側には、樹脂31Jが充填されて樹脂ポール31Pが形成されている。
【0012】
本実施形態では、コア基板11に、複数のスルーホール導体31を一部に含むインダクタ34が形成されている。具体的には、前述の複数のスルーホール導体31は、間隔をあけて一列に並んでいて、それら複数のスルーホール導体31が直列接続されるように隣り合うスルーホール導体31を接続する中継配線33がコア基板11の表裏で交互に並べて設けられている。そして、これら複数のスルーホール導体31、及び、複数の中継配線33によりコア基板11を表裏で縫うように延びる矩形波状のインダクタ34が形成されている。
【0013】
中継配線33は、
図4に示されるように、スルーホール導体31内側の樹脂ポール31Pの端面を覆う位置に、例えば、円形の中継ベース部33A(所謂、ランド)を有し、中継ベース部33A同士の間が連絡部33Bで連絡されている。本実施形態では、連絡部33Bの幅が中継ベース部33Aの直径より小さくなっているが、例えば、連絡部33Bの幅が中継ベース部33Aの直径と同じになっていて、中継ベース部33Aと連絡部33Bとの境目が分からない構成であってもよい。また、本実施形態では、中継ベース部33Aは、磁性樹脂スリーブ40より一回り小さな円形になっていて、第1のスルーホール導体31上の中継ベース部33Aは磁性樹脂スリーブ40上に収まっている。
【0014】
なお、
図1では、積層方向から見てインダクタ34が直線状に延びる例が示されているが、インダクタ34は、例えば、積層方向から見て波形状であってもよいし、円環状であってもよいし、渦巻状であってもよい。
【0015】
図1に示されるように、コア基板11には、磁性樹脂スリーブ40ではない部分にも複数のスルーホール32Hが形成され、各スルーホール32Hにスルーホール導体32が形成され、それらの内部に樹脂32Jが充填されて樹脂ポール32Pが形成されている。そして、一部のスルーホール導体32が、インダクタ34の延長線上に配置されて中継配線33を介してインダクタ34に接続されている。
【0016】
本開示の「コア基板本体」としての絶縁層11Kと、スルーホール導体31,32の内側の樹脂ポール31P,32Pの樹脂31J,32Jは、何れも磁性を有しない樹脂になっている。以下、適宜、「非磁性樹脂」と呼ぶ。
【0017】
図2に示されるように、スルーホール導体31,32は、第2化学メッキ層52Aと、その第2化学メッキ層52Aをシード層とする第2電解メッキ層52Bとから構成されている。また、スルーホール導体31,32と接続する中継配線33を含む導電層13は、絶縁層11K側から、銅箔11D、第1化学メッキ層51A、第1電解メッキ層51B、第2化学メッキ層52A、第2電解メッキ層52B、第3化学メッキ層53A、第3電解メッキ層53Bの7層で構成されている。なお、磁性樹脂スリーブ40は、絶縁層11Kと、その表裏の両面の銅箔11Dを貫通し、磁性樹脂スリーブ40上の導電層13(具体的には、スルーホール導体31上の中継ベース部33Aと、それに接続する連絡部33Bの一部)は、銅箔11Dを有さない6層で、磁性樹脂スリーブ40が設けられていない部分の導電層13の厚みより薄くなっている。
【0018】
なお、導電層13のうち、第1化学メッキ層51A及び第1電解メッキ層51Bは、インダクタ34及び磁性樹脂スリーブ40による電磁波を外部に漏らさない又は外部からの電磁波の影響を受けないようにするためのシールドメッキになっている。また、第3化学メッキ層53A及び第3電解メッキ層53Bはスルーホール導体31,32のうち樹脂ポール31P,32P上を覆う蓋メッキになっている。
【0019】
ところで、スルーホール31Hの内面は、例えば、ドリルによって研削された研削面である加工面40Bになっていて、
図3の加工面40Bの拡大断面図に示されるように、スルーホール31Hの内面には、研磨又は切削によって表面に磁性粒体42が露出している。本実施形態では、このスルーホール31Hに露出する磁性粒体42の表面が、スルーホール導体31の第2電解メッキ層52Bと同じ金属の粒体で置き換えられ、加工面40上に置換メッキ層54が形成されている。これにより、スルーホール導体31では、置換メッキ層54を含む加工面40B上に第2化学メッキ層52Aが安定して形成され、第2電解メッキ層52Bが安定して形成される。
【0020】
本実施形態では、置換メッキ層54、第2化学メッキ層52A及び第2電解メッキ層52Bは、例えば、何れも銅メッキになっていて、これらを合わせた金属層の厚みは、従来の磁性樹脂上に形成される化学メッキ層及び電解メッキ層を合わせた金属層より厚くなっている。なお、スルーホール導体31の置換メッキ層54、第2化学メッキ層52A及び第2電解メッキ層52Bを合わせた金属層の厚さは、非磁性樹脂に形成されるスルーホール導体32の第2化学メッキ層52A及び第2電解メッキ層52Bを合わせた金属層の厚さより僅かに薄いか、略同じになっている。
【0021】
なお、置換メッキ層54、第2化学メッキ層52A及び第2電解メッキ層52Bの金属は、銅以外に、例えば、銀、金等が挙げられる。また、本実施形態では、置換メッキ層54、第2化学メッキ層52A及び第2電解メッキ層52Bの金属が何れも銅であったが、互いに異なる金属であっていてもよい。
【0022】
磁性樹脂41に含まれる磁性粒体42は、コストの観点から、一般的に酸化鉄が用いられているが、本実施形態では、磁性粒体42として、従来、用いられていなかったニッケル又はニッケル合金が用いられている。これにより、加工面40Bから露出する磁性粒体42を第2電解メッキ層52Bの金属である銅に置き換え易く、置換メッキ層54を形成し易くすることができ、第2電解メッキ層52Bを安定して形成することができる。
【0023】
なお、磁性粒体42は、ニッケル又はニッケル合金に限らず、例えば、コバルト、又は、スズの何れか、若しくは、これらのうちの何れかを含む合金であってもよいが、置換メッキの容易性の観点からニッケル又はニッケル合金が好ましい。また、磁性粒体42は、上述した複数の材料を混合してもよく、例えば、置換メッキ適性は劣るが強磁性である材料(例えば酸化鉄)と、置換メッキ適性に優れる材料(例えば、ニッケル)とを混合して用いてもよい。磁性樹脂41の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が用いられている。
【0024】
本開示の配線基板10は、以下のように製造される。
(1)絶縁層11Kの両面に銅箔11Dが積層されている銅張積層板11Sが用意される。
図5(A)に示されるように、銅張積層板11Sに、例えば、ドリル加工等によって複数の本体孔11Hが形成され、バリ取り研磨される。
【0025】
(2)
図5(B)に示されるように、本体孔11Hに磁性樹脂41のペーストが真空印刷により充填される。そして、磁性樹脂41の表裏の両端面が銅張積層板11Sと面一になるように研磨される。これにより、両端面に研磨面である加工面40Aを有する磁性樹脂スリーブ40が形成される。
【0026】
(3)次いで、化学メッキ工程及び電解メッキ工程が行われ、磁性樹脂スリーブ40を含む銅張積層板11Sの表裏の両面に、シールドメッキとなる第1化学メッキ層51A及び第1電解メッキ層51Bが形成される。
【0027】
(4)スルーホール31H,32Hの形成にあたり、まず、スルーホール32Hを形成する穿孔工程が行われる。
図6(A)に示されるように、第1電解メッキ層51Bが積層された銅張積層板11Sに、例えば、ドリル加工等によってスルーホール32Hが形成され、デスミア処理される。このデスミア処理では、スミアが溶液(例えば、過マンガン酸カリウム)を用いて除去される。
【0028】
(5)次いで、磁性樹脂スリーブ40にスルーホール31Hを形成する穿孔工程が行われる。本実施形態では、例えば、ドリル加工等による切削加工によりスルーホール31Hが形成される(
図6(B)参照)。そして、デスミア処理される。このデスミア処理では、スミアが中圧水洗又は高圧水洗により除去される。これにより、磁性樹脂スリーブ40のスルーホール31Hの内面が切削により形成された研削面である加工面40Bになる。
【0029】
(6)置換メッキ工程が行われる(
図6(C)参照)。本実施形態では、置換メッキの溶液として、例えば、硫酸銅溶液が用いられ、その溶液に上記(5)の工程を終えた銅張積層板11Sが所定時間、浸漬される。すると、
図3に示されるように、スルーホール31Hの加工面40Bから露出する磁性粒体42(本実施形態では、ニッケル)が溶解し、その電子を溶液中の銅イオンが受け取り、磁性粒体42の表面に銅メッキからなる置換メッキ層54が形成される。このとき、非磁性樹脂上のスルーホール32Hでは、置換メッキの反応が起こらず、置換メッキ層は形成されない。また、第1電解メッキ層51B上についても、置換メッキ層は形成されない。
【0030】
ここで、磁性樹脂41に含まれる磁性粒体42は、60重量%以上であることが好ましく、含有量が多い方が加工面40Bに露出する磁性粒体42が多くなり、置換メッキ層54が略全体に形成される。また、磁性粒体42の粒体の大きさは均一でない方が好ましいが、均一であってもよい。
【0031】
(7)次いで、化学メッキ工程(詳細には、還元メッキ工程)が行われる。すると、磁性樹脂41上のスルーホール31Hでは、置換メッキ層54と同じ金属からなる第2化学メッキ層52Aが置換メッキ層54上(詳細には、加工面40Bのうち、磁性粒体42表面の銅に置き換えられた部分上と、磁性粒体42が露出していない部分上)に銅が析出し、それら銅の粒子により加工面40B全体に第2化学メッキ層52Aが形成される。一方、非磁性樹脂上のスルーホール32Hでは、内面に直接、第2化学メッキ層52Aが形成される。また、第1電解メッキ層51上でも第2化学メッキ層52Aが形成される。
【0032】
(8)第2化学メッキ層52Aをシード層として電解メッキ工程が行われ、第2化学メッキ層52A上に第2電解メッキ層52Bが形成される。これにより、複数のスルーホール導体31,32が形成される(
図7(A)参照)。
【0033】
なお、本実施形態では、化学メッキ工程で用いられる溶液は、例えば、硫酸銅、ホルムアルデヒド、及び、錯化剤としてのエチレンアミン四酢酸(EDTA)等を含むメッキ溶液であり、電解メッキ工程で用いられる溶液は、例えば、硫酸銅を主成分とするメッキ溶液であるが、これに限るものではない。
【0034】
なお、本実施形態では、本開示の「シード層形成工程」に、上述した置換メッキ工程及び化学メッキ工程が含まれているが、置換メッキ工程のみであってもよい。具体的には、磁性樹脂41に含まれる磁性粒体42の重量%を比較的高くして、置換メッキ層54を加工面40Bの略全体に形成させることで、置換メッキ層54自体をシード層として第2電解メッキ層52Bを形成してもよい。
【0035】
(9)
図7(B)に示されるように、スルーホール導体31,32内に樹脂31J,32Jが充填され、樹脂31J,32Jの両端面がそれぞれ第1電解メッキ層51Bと面一になるように研磨される。これにより、樹脂ポール31P,32Pが形成される。
【0036】
(10)次いで、化学メッキ工程及び電解メッキ工程が行われる。すると、
図7(C)に示されるように、第2電解メッキ層52B上と、樹脂ポール31P,32Pの露出面上(端面上)とに、第3化学メッキ層53A及び第3電解メッキ層53Bが形成される。
【0037】
(11)次いで、
図8(A)に示されるように、第3電解メッキ層53B上に所定パターンのエッチングレジスト60が形成される。
【0038】
(12)エッチングレジスト60から露出する銅箔11D、第1~第3の化学メッキ層51A~53A及び第1~第3の電解メッキ層51B~53Bが除去され、次いでエッチングレジスト60が除去される。これにより、
図8(B)に示されるように、表裏の両面に中継配線33を含む導電層13が形成され、コア基板11が得られる。
【0039】
(13)次いで、SAP法(Semi-Additive Process)により、絶縁層15と導電層20が交互に積層され、コア基板11の表裏の両面に第1と第2のビルドアップ層12A,12Bが形成される。なお、本工程が、本開示の「ビルドアップ工程」に相当する。
【0040】
(14)
図9(A)に示されるように、2層目の導電層20上に、ソルダーレジスト層17が積層される。次いで、
図9(B)に示されるように、ソルダーレジスト層17の所定箇所に、例えば、レーザ加工やフォトリソグラフィ処理等により、開口17Hが形成される。そして、2層目の導電層20のうち開口17Hによりソルダーレジスト層17から露出した部分にパッド18が形成される。なお、同図では、第1ビルドアップ層12A側のみが示されている。
【0041】
(15)第1と第2のビルドアップ層12A,12Bのパッド18上に、半田バンプ19が形成される(
図1参照)。以上で配線基板10が完成する。
【0042】
本実施形態の配線基板10の構造及びその製造方法に関する説明は以上である。次に配線基板10の作用効果について説明する。本実施形態の配線基板10の製造方法では、磁性粒体42が露出する磁性樹脂スリーブ40の加工面40Bには化学メッキ層が形成され難いことに鑑み、シード層を形成する工程において、磁性樹脂スリーブ40の加工面40Bに露出する磁性粒体42が、第2電解メッキ層52Bと同じ金属(本実施形態では、銅)に置換されて置換メッキ層54が形成される置換メッキ工程が行われる。そして、その置換メッキ層54の上に第2化学メッキ層52Aがシード層として形成される。これにより、磁性粒体42が露出する磁性樹脂スリーブ40の加工面40Bにもシード層が安定して形成され、第2電解メッキ層52Bが安定して形成される。即ち、本実施形態の配線基板10の製造方法によれば、磁性樹脂41を有する配線基板10に電解メッキ層を安定して形成することが可能になる。
【0043】
また、本実施形態では、加工面40B上の置換メッキ層54、第2化学メッキ層52A及び第2電解メッキ層52Bが、何れも銅メッキ層となっているので、それらを合わせた銅メッキ層を厚くすることができる。
【0044】
さらに、本実施形態の配線基板10では、磁性樹脂41に含まれる磁性粒体42を、従来にはないニッケル又はニッケル合金になっているので、置換メッキを容易に行うことができる。これによっても、磁性樹脂41を有する配線基板10に電解メッキ層を安定して形成することが可能になる。
【0045】
ここで、磁性樹脂41により構成される磁性樹脂スリーブ40は、コア基板11に設けられ、その磁性樹脂スリーブ40に加工面40Bを有するスルーホール31Hが形成されてスルーホール導体31が形成される。本実施形態では、上述の通り、スルーホール31Hの内面に第2電解メッキ層52Bが安定して形成されるので、コア基板11の表裏に形成される第1と第2のビルドアップ層12A,12Bの間の導通が安定する。
【0046】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態では、磁性樹脂スリーブ40の加工面40A,40Bのうち研削面である加工面40B上にのみ置換メッキ層が形成されているが、磁性樹脂スリーブ40の両端面の研磨面である加工面40A上にのみ置換メッキ層が形成される構成であってもよい。また、磁性樹脂スリーブ40の加工面40A,40Bの両方に置換メッキ層が形成されていてもよい。その場合、加工面40A上に形成される置換メッキ層と、加工面40B上に形成される置換メッキ層とは異なる工程で形成されてもよいし、例えば、上記(3)の工程をなくし、上記(6)の工程で、加工面40A,40B上に置換メッキ層を形成してもよい。
【0047】
(2)上記実施形態では、磁性樹脂41で構成される磁性樹脂スリーブ40がコア基板11に設けられている例を説明しているが、磁性樹脂スリーブは、例えば、第1と第2のビルドアップ層12A,12Bの絶縁層15の一部に設けられ、その内側をビアホールとしてビア導体が形成されていてもよい。
【0048】
(3)磁性樹脂スリーブ40の加工面40Bから露出する磁性粒体42として酸化鉄を用い、その酸化鉄が露出する加工面40Bに第2電解メッキ層52Bと同じ金属である置換メッキ層54を形成してもよい。
【0049】
(4)上記実施形態では、導電層13に銅箔11Dを有していたが、銅箔11Dを有しない構成であってもよい。
【0050】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0051】
10 配線基板
11 コア基板
11H 本体孔
11K 絶縁層(コア基板本体)
12A,12B ビルドアップ層
31 スルーホール導体
31H スルーホール
40 磁性樹脂スリーブ
40B 加工面
41 磁性樹脂
42 磁性粒体
52A 第2化学メッキ層
52B 第2電解メッキ層
54 置換メッキ層