(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056162
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 47/20 20060101AFI20240416BHJP
C10B 53/08 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C10B47/20
C10B53/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162880
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】横森 玲
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成人
(72)【発明者】
【氏名】廣池 承一郎
【テーマコード(参考)】
4H012
【Fターム(参考)】
4H012KA06
(57)【要約】
【課題】フェロコークス等の高炉用原料の品質及び生産性を高めることが可能な高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法を提供する。
【解決手段】乾留炉1に装入された成型物を乾留して高炉用原料を製造する高炉用原料製造装置であって、乾留炉1に連通するように乾留炉1の側壁部80に接続され、乾留炉1の内部に装入される成型物のうちの粉体を回収するダクト90と、側壁部80に対して下端部を中心として回動可能に設けられた蓋部92と、を有しており、下端部を中心として回動して乾留炉1の内部側に向かって開くことによって乾留炉1とダクトを連通する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾留炉に装入された成型物を乾留して高炉用原料を製造する高炉用原料製造装置であって、
前記乾留炉の内部と連通可能に前記乾留炉の側壁部に接続され、前記乾留炉に装入される前記成型物のうちの粉体を回収するダクトと、
前記側壁部に対して下端部を中心として回動可能に設けられた蓋部と、を有しており、
前記蓋部は、前記下端部を中心として回動して前記乾留炉の内部側に向かって開くことにより前記乾留炉と前記ダクトを連通する
高炉用原料製造装置。
【請求項2】
前記乾留炉の側壁部における前記蓋部よりも上側であって、かつ、前記乾留炉の上下方向から見て前記蓋部の少なくとも一部と互いに重なり合う位置に設けられ、前記成型物を前記乾留炉に装入する装入シュートを更に有しており、
前記蓋部は前記ダクトを開放した状態で、前記装入シュートから前記乾留炉に装入される前記成型物のうちの粉体を受け止めると共に前記ダクトに向かって流動させるように構成されている
請求項1に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項3】
前記ダクトは、前記粉体を通す篩を有しており、前記篩を介して前記粉体を回収するように構成されている
請求項1に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項4】
前記ダクトは、前記粉体を通す篩を有しており、前記篩を介して前記粉体を回収するように構成されている
請求項2に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項5】
前記篩の外周縁部の一部分は前記蓋部の上端部に連結され、かつ、
前記篩の中心を挟んで前記外周縁部の一部分とは反対側に位置する前記篩の外周縁部の他の部分は、前記ダクトの内壁面のうちの上側の内壁面に前記ダクトの長手方向に沿って移動可能に連結されている
請求項3に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項6】
前記篩の外周縁部の一部分は前記蓋部の上端部に連結され、かつ、
前記篩の中心を挟んで前記外周縁部の一部分とは反対側に位置する前記篩の外周縁部の他の部分は、前記ダクトの内壁面のうちの上側の内壁面に前記ダクトの長手方向に沿って移動可能に連結されている
請求項4に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項7】
前記ダクトを閉じた状態からの前記蓋部の開き角度は60°以下である
請求項1に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項8】
前記蓋部を開いた状態において、前記篩と水平面との成す角度が30°以上である
請求項3に記載の高炉用原料製造装置。
【請求項9】
前記蓋部を開いた状態において、前記蓋部の上端部と前記装入シュートの開口部における下端部との前記乾留炉の高さ方向での距離d、及び、
水平方向での前記蓋部の上端部と前記蓋部の下端部との距離w2が、前記乾留炉の奥行方向の内寸W1に対してそれぞれ下記式を満たす
請求項2に記載の高炉用原料製造装置。
0.2≦d/W1≦0.5
0.35≦w2/W1≦0.55
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の高炉用原料製造装置を用いて高炉用原料を製造する高炉用原料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型コークス、特にフェロコークス等の高炉において使用される高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点から、鉄鋼業界においてCO2ガスの発生量の低減が求められている。このため、化石燃料の使用量の削減が急務となっている。鉄鋼業においては、高炉内で鉄鉱石を炭素(石炭をコークス炉で乾留して製造したコークス)で還元することにより、溶銑を製造している。そして、コークス原単位の低減のため、フェロコークスを高炉用原料として用いる技術の開発が行われている。フェロコークスは、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した後、乾留処理を施すことでコークス中に微細な金属鉄粒子を分散させたものであり、金属鉄の触媒作用によりコークスの反応性を高めた成型コークスである。
【0003】
フェロコークスの乾留方法として、竪型の乾留炉を用いる方法が提案されている。特許文献1には、上部に乾留ゾーン、下部に冷却ゾーンを有する竪型乾留炉が開示されている。竪型乾留炉におけるフェロコークスの製造方法は、装入装置を用いて炭素含有物質と鉄含有物質とからなる成型物を竪型乾留炉に装入する装入工程と、乾留ゾーンにおいて加熱ガスを吹き込むと共に成型物を乾留しフェロコークスを製造する乾留工程と、冷却ゾーンにおいて冷却ガスを吹き込むことでフェロコークスを冷却する冷却工程と、竪型乾留炉の炉頂部の排出口から炉内ガスを排出する炉内ガス排出工程と、冷却ゾーン下部からフェロコークスを排出するフェロコークス排出工程とを有している。
【0004】
乾留工程では、乾留ゾーンの中間部分の低温ガス吹き込み羽口から低温ガスを、乾留ゾーンの下部の高温ガス吹き込み羽口から高温ガスを、それぞれ炉内に吹き込むことで成型物を加熱する。冷却工程では、冷却ゾーンの下部の冷却ガス吹き込み羽口から冷却ガスを吹き込むことで、フェロコークスの冷却を行う。
【0005】
ここで、フェロコークスの生産量を増加させるためには、竪型乾留炉の容積を大きくする必要がある。一般的に、装入物は、斜めに傾いた装入シュートを用いて斜め方向を装入方向として装入されるが、加熱ガスおよび冷却ガスは、竪型乾留炉の奥行方向(装入物の装入方向の水平成分に平行)に噴射されるため、ガスを炉内中央部まで浸透させるには奥行方向の内寸を一定以下に抑える必要がある。よって、竪型乾留炉は奥行方向に比べて炉幅方向(乾留炉横断面において奥行方向と直交する方向)を長い内寸として構成し、大きな容積を確保している。
【0006】
また、特許文献2には、材料の均一装入(搬送)方法として、搬送路の幅方向中央部から出口側へ向かって放射状に下る傾斜面を有する分散誘導部を設けることで、材料を放射状に分散させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-57970号公報
【特許文献2】特開2011-162271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
成型物は、シュートを介して乾留炉に供給される。この際、成型物は、シュートの壁面と衝突する等によって砕け、その一部が粉体となる。すなわち、成型物は、粒状物と、当該粒状物よりも体積が小さい粉体と、を含んでいる。
【0009】
粉体は、粒状物同士の隙間を通って沈降する。したがって、成型物は、粒状物層(上層)と粉体層(下層)の2層に分離した状態で乾留炉に供給される。したがって、粒状物は、シュートから乾留炉に供給される際に粉体よりも遠くに堆積され粉体は、シュート側に堆積される。
【0010】
乾留炉に成型物が供給されると、安息角に応じた堆積物の斜面が形成される。したがって、粉体は、堆積物の斜面に到達すると、その斜面を伝ってシュートの開口側に移動して静止する。特に粉体が堆積物の斜面の上方に到達すると、その斜面が急峻となるため、粉体がよりシュートの開口側に移動する傾向がある。これに対して粒状物は、粉体よりも遠くに移動するため、その多くは堆積物の頂点の近傍に到達する。すなわち、粒状物は、堆積物の斜面に一様に供給される。
【0011】
このように、成型物の粒状物と、粉体と、は乾留炉において偏った位置に堆積される傾向がある。したがって、粉体が偏った位置に堆積すると、当該領域の通気性が他の領域よりも悪化する。粉体が偏った位置に堆積された領域では、通気性の悪化により加熱ガスの供給量が減少し、当該領域に供給された成型物に乾留不良等の不具合が発生する可能性がある。
【0012】
成型物を乾留炉に供給する際に特許文献2に記載の分散誘導部を用いたとしても、このような粉体が偏った位置に堆積されることを抑制することができない。このため、上記の問題の改善が望まれている。
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、フェロコークス等の高炉用原料の品質及び生産性を高めることが可能な高炉用原料製造装置及び高炉用原料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、上記の目的を達成するために、
[1]乾留炉に装入された成型物を乾留して高炉用原料を製造する高炉用原料製造装置であって、前記乾留炉の内部と連通可能に前記乾留炉の側壁部に接続され、前記乾留炉に装入される前記成型物のうちの粉体を回収するダクトと、前記側壁部に対して下端部を中心として回動可能に設けられた蓋部と、を有しており、前記蓋部は、前記下端部を中心として回動して前記乾留炉の内部側に向かって開くことにより前記乾留炉と前記ダクトを連通する高炉用原料製造装置。
[2]前記乾留炉の側壁部における前記蓋部よりも上側であって、かつ、前記乾留炉の上下方向から見て前記蓋部の少なくとも一部と互いに重なり合う位置に設けられ、前記成型物を前記乾留炉に装入する装入シュートを更に有しており、前記蓋部は前記ダクトを開放した状態で、前記装入シュートから前記乾留炉に装入される前記成型物のうちの粉体を受け止めると共に前記ダクトに向かって流動させるように構成されている[1]に記載の高炉用原料製造装置。
[3]前記ダクトは、前記粉体を通す篩を有しており、前記篩を介して前記粉体を回収するように構成されている上記の[1]に記載の高炉用原料製造装置。
[4]前記ダクトは、前記粉体を通す篩を有しており、前記篩を介して前記粉体を回収するように構成されている上記の[2]に記載の高炉用原料製造装置。
[5]前記篩の外周縁部の一部分は前記蓋部の上端部に連結され、かつ、前記篩の中心を挟んで前記外周縁部の一部分とは反対側に位置する前記篩の外周縁部の他の部分は、前記ダクトの内壁面のうちの上側の内壁面に前記ダクトの長手方向に沿って移動可能に連結されている上記の[3]に記載の高炉用原料製造装置。
[6]前記篩の外周縁部の一部分は前記蓋部の上端部に連結され、かつ、前記篩の中心を挟んで前記外周縁部の一部分とは反対側に位置する前記篩の外周縁部の他の部分は、前記ダクトの内壁面のうちの上側の内壁面に前記ダクトの長手方向に沿って移動可能に連結されている上記の[4]に記載の高炉用原料製造装置。
[7]前記ダクトを閉じた状態からの前記蓋部の開き角度は60°以下である上記の[1]に記載の高炉用原料製造装置。
[8]前記蓋部を開いた状態において、前記篩と水平面との成す角度が30°以上である上記の[3]に記載の高炉用原料製造装置。
[9]前記蓋部を開いた状態において、前記蓋部の上端部と前記装入シュートの開口部における下端部との前記乾留炉の高さ方向での距離d、及び、水平方向での前記蓋部の上端部と前記蓋部の下端部との距離w2が、前記乾留炉の奥行方向の内寸W1に対してそれぞれ下記式を満たす上記の[2]に記載の高炉用原料製造装置。
0.2≦d/W≦0.5、
0.35≦w/W≦0.55
[10]上記の[1]ないし[9]のいずれかに記載の高炉用原料製造装置を用いて高炉用原料を製造する高炉用原料製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、乾留炉内に装入される成型物のうちの粉体を回収できるので、粉体が偏った位置に堆積することを抑制できる。これにより、粉体の偏析による通気性の悪化による乾留不良が抑制され、高炉用原料の品質及び生産性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】従来の竪型乾留炉の一例を示す側面模式図である。
【
図2】本願発明の高炉用原料製造装置としての乾留炉の炉頂部を示す側断面図である。
【
図3】
図2に示す蓋部が閉じた状態を示す図である。
【
図5】ダクトに粉体を回収している状態を説明するための図である。
【
図6】実施例1における蓋部と粉体除去率との関係を示す図である。
【
図7】実施例2における蓋部と粉体除去率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、石炭に鉄鉱石を一定量混合して塊成化した成型コークスの一種であるフェロコークスを製造する場合を例に、本発明の実施形態を通じて本発明を説明する。ここで、各図面は模式的なものであって、現実のものとは異なる場合がある。また、以下の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであり、構成を下記のものに特定するものでない。すなわち、本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0018】
図1を参照して、従来の高炉用原料製造装置としての竪型乾留炉100の構成について説明する。
図1は、竪型乾留炉100の側面模式図を示す。以下の説明において「装入物」は、フェロコークスを製造するための「炭素含有物質と鉄含有物質とを含有する成型物」に限らず、「炭素含有物質を含む成型物」も含んでよい。即ち、少なくとも炭素含有物質を含む成型物であればよい。「装入物」は、「成型物」と、「成型物」に付着又は分離した「粉体」とが含まれる。また、「高炉用原料」は、フェロコークスを含む「コークス」を意味する。
【0019】
竪型乾留炉100は、装入シュート10と、装入ゲート20と、拡散部30と、乾留炉本体70とを有する。先ず、炭素含有物質(石炭)と鉄含有物質(鉄鉱石)とを含有する成型物を含む装入物は、乾留炉本体の上方に設けられた装入シュート10に供給される。装入物は、装入ゲート20の閉鎖(図中の一点鎖線を参照)により、一旦、装入シュート10の内部(装入シュート10の途中)に蓄積される。装入物は、装入ゲート20の開放(図中にて実線で表示)により、乾留炉本体70に向けて装入シュート10の内部を通過する。装入物は、装入シュート10の拡散部30を通過することで、装入シュート10の内部に拡がるように分散される。装入物は、装入シュート10の内部を通過した後、乾留炉本体70の内部に堆積する。装入物は、乾留炉本体70の内部において、安息角に応じた山形を形成する。
【0020】
ここで、先述した通り、乾留炉本体70に装入される装入物は、乾留炉本体70に到達するまでに、装入シュート10の内部において、成型物層(上層)と粉体層(下層)との2層に分離した状態となる。よって、
図1に示す通り、乾留炉本体70に装入される装入物は、成型物層40及び粉体層50に分離して乾留炉本体70の内部に落下する。このため、乾留炉本体70の内部に堆積した装入物60は、成型物と粉体とが偏在した状態となる。この偏在により、従来の竪型乾留炉100においては、乾留炉本体70の内部のガス流れが不均一となり、成型物の乾留不良等の問題が生じていた。
【0021】
図2は、本願発明の高炉用原料製造装置としての乾留炉1の炉頂部を示す側断面図である。
図2に示すように、乾留炉1の奥行方向Sで互いに対向する乾留炉1の炉頂部の側壁部80,81のうち、一方の側壁部80を厚さ方向に貫通して開口部が形成され、その開口部に装入シュート10が接続されている。側壁部80における装入シュート10の下側であって、かつ、乾留炉1の内部に堆積した成型物DM(以下、堆積物と記す。)の頂部DMtopよりも上側の側壁部80には、ダクト90が接続されている。ダクト90は装入シュート10から乾留炉1の内部に装入される成型物に含まれる粉体を回収するものであり、側壁部80を厚さ方向に貫通して形成された開口部91に接続されている。ダクト90の開口部91は、粉体を効率よく回収するために、乾留炉1の上下方向から見て、ダクト90の開口部91の少なくとも一部と装入シュート10とが乾留炉1の図示しない幅方向で互いに重なり合う位置に設けられることが好ましい。成型物に含まれる粉体については後述する。
【0022】
ダクト90は、
図2に示す例では、開口部91から下側に向かって傾斜して延びており、ダクト90の傾斜角度は粉体の安息角よりも大きい角度に設定されている。そのため、ダクト90に装入あるいは回収された粉体は自重によってダクト90に沿って下方に滑り落ちるようになっている。
【0023】
ダクト90の開口部91の形状は一例として、円形や矩形であってよい。本実施形態においては、矩形である。ダクト90の断面形状は一例として、円形や矩形であってよい。ダクト90の開口部91の内寸あるいは内接円の直径、及び、ダクト90の内寸あるいは内接円の直径は、粉体の粒径よりも大きく、成型物の粒径程度に設定されることが好ましく、成型物の粒径の1.5倍程度に設定されることがより好ましい。ダクト90や開口部91の各サイズは、それらの内部を粉体が移動できるサイズに設定されていればよい。
【0024】
ダクト90における乾留炉1側の内壁面のうち、上側の内壁面は、
図2に示すように、上方に向かって凸となった曲面状(以下、曲面と記す。)をしている。その曲面に、前記曲面に沿って延びる図示しないレールが設けられている。当該レールに後述する篩がレールに沿って移動可能に連結されている。
【0025】
上述したダクト90の開口部91には、乾留炉1の内部へダクト90を連通し、また、乾留炉1とダクト90との連通を遮断する蓋部92が設けられている。
図2には、蓋部92を開いてダクト90と乾留炉1とが連通した状態を示してあり、
図3には、蓋部92を閉じてダクト90と乾留炉1との連通を遮断した状態を示してある。蓋部92は、開口部91を開閉できればよく、その形状は限定されないが、例えば、平板状に形成されていてよい。本実施形態においては、蓋部92はダクト90の開口部91の外形とほぼ同形状の矩形をしている。蓋部92は、ダクト90を覆う大きさに形成されていても、あるいは、ダクト90の開口部91に嵌り合う形状に形成されていてもよい。
【0026】
蓋部92は、側壁部80において蓋部92の下端部を中心として回動可能で、かつ、
図2に示すように、乾留炉1の内部側に向かって開くようになっている。
【0027】
図4は、蓋部92の開く角度を説明するための図である。開き角度θ1は、蓋部92の下端部を中心として乾留炉1の内部側に向かって蓋部92を回動させた場合における側壁部80と蓋部92との成す角度の最大の角度であり、当該開き角度の最大値は予め設定されている。開き角度θ1は後述する式(1)および式(2)を満たすように設定される。蓋部92の開き角度がθ1となった場合には、図示しないストッパーによって蓋部92のそれ以上の回動を阻止するように構成されていてよい。なお、側壁部80に蓋部92の下端部を回動可能に連通する手段は限定されないが、一例としてヒンジを挙げることができる。
【0028】
蓋部92の下端部を中心として蓋部92を回動させることによって、乾留炉1の内部に対してダクト90を開閉させるアクチュエータと、当該アクチュエータの動作を制御する制御装置(それぞれ図示せず)とが設けられている。アクチュエータは限定されないが、例えば、油圧ピストンタイプのアクチュエータであってよく、図示しない油圧源からの油圧により、蓋部92を予め定めた角度回動させるように構成されていてよい。あるいは、図示しないモータの出力するトルクによって蓋部92を予め定めた角度回動させるように構成されていてよい。制御装置は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、入力されるデータや予め記憶されているデータなどに基づいて演算を行い、その演算結果を制御指令信号として出力するように構成されている。制御装置は、予め設定されたタイミングや、入力される信号をトリガーとして油圧ピストンタイプのアクチュエータやモータの動作を制御するように構成されていてよい。なお、制御装置に代えて、オペレータによって油圧ピストンタイプのアクチュエータやモータの動作を制御してもよい。
【0029】
図5は、ダクトに粉体を回収している状態を説明するための図である。蓋部92は、乾留炉1の内部に装入シュート10から装入された成型物のうち、主として成型物に含まれる粉体を受け止めてダクト90に案内する。上述したように、成型物は、成型物層(上層)と粉体層(下層)の2層に分離した状態で乾留炉1に供給されるので、
図5に示すように、蓋部92の上端部の位置が、装入シュート10から装入される粉体と成型物との境界部分となるように、蓋部92のサイズと蓋部92の開き角度θ1とが設定される。このように、蓋部92のサイズと蓋部92の開き角度θ1とを設定することで、成型物に含まれる粉体を受け止めてダクト90に案内して回収できる。なお、乾留炉1内の上述した境界部分の位置は、実験によって予め求め、求めた境界部分の位置に基づいて、蓋部92のサイズと蓋部92の開き角度θ1とを設定することができる。また、蓋部92は受け止めた粉体をダクト90に案内するものであるので、平板形状に代えて樋形状でもよい。
【0030】
蓋部92による成型物のうちの粉体の除去は、主として蓋部92と粉体との接触面積に依存する。そのため、蓋部92を開いた状態つまり蓋部92の開き角度が設定された最大の角度θ1となっている場合における、蓋部92の上端部の位置は、装入シュート10から装入される成型物の層にやや干渉する位置に設定されることが好ましい。具体的には、
図5に示すように、開いた状態の蓋部92の上端部と装入シュート10の開口部の下端部との間の、乾留炉1の高さ方向での距離d(mm)、及び、開いた状態の蓋部92の上端部と蓋部92の下端部との間の水平方向での距離w2(mm)は、乾留炉1の奥行方向Sの内寸W1(mm)に対してそれぞれ下記式(1)、(2)を満たすことが好ましい。
0.2≦d/W1≦0.5 ・・・(1)
0.35≦w2/W1≦0.55 ・・・(2)
【0031】
式(1)及び式(2)の関係を満たすように、蓋部92のサイズや蓋部92の開き角度θ1などを設定することによって、装入シュート10から装入される成型物の層に、開いた状態における蓋部92の上端部をやや干渉させることができ、装入シュート10から装入される粉体のほぼ全量を蓋部92によって受け止めて回収できる。一方、上述したように蓋部92のサイズや蓋部92の開き角度θ1を設定すると、粉体と共に成型物も蓋部92で受け止めてダクト90に案内することになり好ましくない。そこで本実施形態では、以下に説明する篩を蓋部92に設置して成型物が回収されることを抑制している。
【0032】
篩93は、
図3に示すように、蓋部92によって閉じられた状態のダクト90の内部に格納される。また、篩93は、
図4に示すように、乾留炉1の内部に向かって蓋部92を回動させることによって、ダクト90の内部から引き出されるように構成される。篩93は、本実施形態においては、成型物と粉体のうち、粉体を通すように構成されていればよく、これにより、ダクト90に粉体を回収し、篩93を通らない成型物は乾留炉1の内部に装入される。従って、篩93の篩目は、粉体の粒径よりも大きく、成型物の粒径よりも小さく設定されている。篩93は、例えば、金網である。
【0033】
次に、ダクト90の内部に篩93を格納し、また、ダクト90の内部から引き出す構成について説明する。篩93の外周縁部のうちの一部分と、蓋部92の上端部とが回動可能に、あるいは、所定の角度を維持して連結される。また、篩93の外周縁部のうち、蓋部92に連結されている側とは反対側の他の部分は、上述したレールに沿って移動可能に、レールに連結されている。したがって、蓋部92の開き角度が次第に増大すると、篩93の外周縁部のうちの他の部分はレールに沿って乾留炉1側に次第に移動する。また、レールに代えて、上述した曲面に当該曲面に沿う溝を形成し、その溝に篩93の外周縁部のうちの他の部分を溝に沿って移動可能に係合させてもよい。
【0034】
蓋部92の開き角度θ1は、
図5に示す例では、60°程度に設定されている。これは、上述した式(1)及び式(2)を満たすように、蓋部92のサイズや装入シュート10に対する設置高さなどを設定することによって決定される。また、蓋部92が開き角度60°で開いた状態において水平面と篩93とが成す角度θ2は、粉体の安息角以上に設定されている。これは、篩93の上に、粉体が滞留することを抑制するためである。具体的には、水平面と篩93との成す角度θ2は30°以上に設定されることが好ましい。
【0035】
次に、上述した構成の高炉用原料製造装置の作用・効果について
図5を用いて説明する。装入ゲート20が閉じた状態の装入シュート10に、搬送装置によって1バッチ分の成型物が搬送される。搬送された成型物は、上述したように、搬送の過程での振動によりその一部が粉体となる。粉体は成型物同士の間の隙間を通って成型物の下側に移動するため、装入シュート10内では、成型物層40と粉体層50との二層に分離する。
【0036】
続いて、装入ゲート20が開放され、乾留炉1の内部に成型物が装入される。装入ゲート20の開放はオペレータによって行ってもよく、あるいは、装入ゲート20の開閉を行うアクチュエータや当該アクチュエータの動作を制御する制御装置(それぞれ図示せず)によって行われてもよい。
【0037】
装入ゲート20の開放とほぼ同時に、蓋部92が回動される。蓋部92の回動は上述したオペレータや制御装置によって行ってよい。蓋部92の開き角度の増大に伴って、篩93の外周縁部のうちの他の部分はレールに沿って乾留炉1側に移動し、ダクト90から乾留炉1の内部に篩93が引き出される。蓋部92の開き角度が最大の角度θ1になると、ダクト90の上端部と蓋部92の上端部との間に篩93が張られた状態となる。
【0038】
装入ゲート20を通過した成型物は拡散部30の上を通過し、これにより、装入シュート10の内部に拡がるように分散されて乾留炉1の内部に装入される。成型物は、粉体の上層にある分、粉体よりも高い位置から装入されるので、粉体よりも側壁部80,81のうち、他方の側壁部81側に落下する。
【0039】
これに対して粉体は一方の側壁部80側に落下する。蓋部92の上端部は、落下している成型物層40にやや干渉する位置にあるので、粉体及び成型物の一部は篩93上に落下し、粉体は篩93を通過する。篩93を通過した粉体は蓋部92によって案内されて、ダクト90に回収される。これにより、乾留炉1の内部での粉体の堆積が抑制され、成型物を主成分とした堆積物DMが形成される。よって、乾留炉1の内部で粉体が偏って堆積することを防止もしくは抑制することができ、粉体が偏って堆積することによる堆積物DMの内部での通気性の悪化を抑制することができる。
【0040】
乾留炉1の内部に1バッチ分の成型物が装入されると、装入ゲート20が閉じられて装入シュート10と乾留炉1との連通状態が遮断され、また、蓋部92が回動されてダクト90が閉じられる。これらの動作は、上述したように、オペレータによって行ってもよく、あるいは、装入ゲート20や蓋部92の開閉を制御する制御装置によって行ってもよい。または、図示しないタイマーによって装入ゲート20が開放されてからの経過時間を計測し、その経過時間が予め設定した時間を超えたときに、装入ゲート20及び蓋部92を閉じるようにしてもよい。
【0041】
以上のように、上述した構成の高炉用原料製造装置によれば、乾留炉1に装入される成型物に含まれる粉体をダクト90で回収できるので、粉体が偏った位置に堆積されることを抑制できる。これにより、乾留炉1の全体でガスの通気性をほぼ一様にすることができ、成型物の乾留度合いのばらつきを抑制できる。この結果、品質のばらつきが抑制された高品質なフェロコークスが製造でき、且つ、フェロコークスの生産性を向上させることができる。
【実施例0042】
次に、本発明の作用・効果を確認するために行った実施例について説明する。実施例1では、
図2に示す高炉用原料製造装置を模擬した試験用装置を用いた。乾留炉1に見立てた回収ボックスの内部に、成型物と粉体とを含む原料(以下、成型物と記す。)を装入した際における粉体の粉体除去率を調査した。装入シュートは
図2に示す高炉用原料製造装置に設置されているものと同形状のものを用い、装入シュートの出口側に乾留炉に見立てた回収ボックスを設置した。回収ボックスの側壁面のうち、装入シュートが接続された側壁面の下側には、上述したダクト90、開口部91、蓋部92及び篩93と同じダクト、開口部、蓋部及び篩を設置した。粉体除去率とは、ダクトに回収された粉体の質量を、装入シュートから回収ボックス内に装入した成型物の質量によって除算して算出した値を百分率(質量%)で表したものである。
【0043】
装入シュートから回収ボックス内に粉体を含む成型物を25kg装入した。成型物の装入中は、蓋部を開いて回収ボックス内に装入シュートから装入される粉体を、篩を介してダクトに回収した。回収ボックスに装入する成型物中における粉体の割合を10質量%に、成型物の割合を90質量%に設定した。この実施例では、便宜上、直径が20mm以上の粒子を「成型物」と定義し、直径が20mm未満の粒子を「粉体」と定義した。なお、成型物の粒径は25mmである。
【0044】
実施例1では、奥行方向Sにおける蓋部92の上端部と側壁部80との間の距離w2を変化させた場合の粉体除去率を調査した。開いた状態の蓋部92の上端部と、装入シュート10の開口部の下端部との間の距離dを、乾留炉1の内寸W1によって除した第1比(d/W1)を「0.4」に設定した(d/W1=0.4)。また、蓋部92の開き角度θ1は60°に設定した。
【0045】
この状態において、開いた状態の蓋部92の上端部と側壁部80との間の距離w2を変化させた。その結果を
図6に示す。
図6に示すように、距離w2を奥行方向Sにおける乾留炉1の内寸W1によって除した第2比(w2/W1)を0.35よりも小さくすると、第2比(w2/W1)を0.35以上にした場合よりも粉体除去率が低くなった。第2比(w2/W1)を0.35よりも小さくすると、蓋部92と粉体層50とが接触しにくくなり、粉体が回収されにくくなったためであると考えられる。また、第2比(w2/W1)が0.55よりも大きくなると、粉体除去率がほぼ一定になることが確認された。これは、上述した境界部分よりも成型物層40側に、蓋部92の上端部が位置することによって、回収ボックス内に装入される粉体のほぼ全量が蓋部によって受け止められ、ダクトに回収されたためであると考えられる。一方、第2比(w2/W1)が増大すると、それに伴って、蓋部92に衝突する成型物の量が増加するので、蓋部92の耐用年数が低下する可能性がある。したがって、第2比(w2/W1)が0.35以上であってかつ0.55以下となるように(0.35≦w2/W1≦0.55)、開いた状態の蓋部92の上端部と側壁部80との間の距離w2を調整することが好ましい。すなわち、上述した式(2)を満たすように、開いた状態の蓋部92の上端部と側壁部80との間の距離w2を調整することが好ましいことが確認された。