IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東レ株式会社の特許一覧

特開2024-56180二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法
<>
  • 特開-二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 図1
  • 特開-二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 図2
  • 特開-二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 図3
  • 特開-二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 図4
  • 特開-二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 図5
  • 特開-二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 図6
  • 特開-二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 図7
  • 特開-二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 図8
  • 特開-二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 図9
  • 特開-二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056180
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162904
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荘司 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】多和田 誠司
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 翔太
【テーマコード(参考)】
4F071
【Fターム(参考)】
4F071AA43
4F071AA89
4F071AB03
4F071AF21
4F071AF30
4F071AF40Y
4F071AH12
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
(57)【要約】
【課題】遮光均一性と耐劈開性を両立し、さらにリサイクル性にも優れるポリエステルフィルムを提供すること。
【解決手段】カーボンブラックを0.01質量%以上5.50質量%以下含有するポリエステルフィルムであり、該カーボンブラックの面配向指数Mcが1.10以上2.00以下であり、広角X線回折法により求められるフィルムの結晶配向指数χiが5.0以上13.0以下である、二軸配向ポリエステルフィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを0.01質量%以上5.50質量%以下含有するポリエステルフィルムであり、該カーボンブラックの面配向指数Mcが1.10以上2.00以下であり、広角X線回折法により求められるフィルムの結晶配向指数χiが5.0以上13.0以下である、二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記カーボンブラックの平均一次粒子径a(nm)が10nm以上150nm以下である、請求項1に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記カーボンブラックの凝集サイズb(nm)と平均一次粒子径a(nm)が式(2)を満たす、請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
b/a≧10・・・(2)
【請求項4】
フィルム面内において、直交する二方向の周波数15GHzにおける誘電率差の絶対値が0.00以上0.20以下である、請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
【請求項5】
カーボンブラックを含有し、カーボンブラックの面配向指数Mcが1.03以上であるポリエステルフィルムを20%以上40%以下の質量比率で原料として用いる、請求項1または2に記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光均一性と耐劈開性、およびリサイクル性を両立した二軸配向ポリエステルフィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレン2,6-ナフタレンジカルボキシレートなど)樹脂は機械特性、熱特性、耐薬品性、電気特性、成形性に優れ、様々な用途に用いられている。そのポリエステルをフィルム化したポリエステルフィルム、中でも二軸配向ポリエステルフィルムは、その機械的特性、電気的特性などから、太陽電池バックシート用材料や給湯器モーター用電気絶縁材料、ハイブリッド車などに使用されるカーエアコン用モーターや駆動モーター用などの電気絶縁材料、テープ材料やコンデンサ用材料、包装材料、建築材料、写真用途、グラフィック用途、感熱転写用途などの各種用途に使用されている。
【0003】
これらの用途の中で、スマートフォンやスマートウォッチ等の電子デバイス内部で遮光部材として使用されるテープ材料では、カメラや光学センサーの機能向上に伴い、遮光性の要求が高度化している。特に、斜め入射光の遮光斑、遮光成分の不均一性による反射光の微細な斑など、遮光部材のわずかな不均一性が光学モジュールとしての性能に直結するため、より均一な遮光特性を有する部材が求められている。また、電子機器の小型化・薄型化に伴い、デバイス内部容積の高効率利用が必要となり、各モジュールの形態に合わせた複雑形状での使用環境が増加していることから、部材を変形して用いた際の耐久性が重要となっている。
【0004】
従来から、テープ材料において遮光性を向上させる手段としては、ポリエステルフィルムの上に黒色顔料を多く含有する印刷層を設ける方法(特許文献1、2)やポリエステルフィルムの内部に無機顔料を含有させた遮光性フィルムの検討がされている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2010/106999号
【特許文献2】特開2016-196527号公報
【特許文献3】特開2017-210557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に記載のフィルムは、薄膜フィルムにおいて高い遮光性が得られる一方で、加工が重なることにより欠点等の発生頻度が高く遮光均一性に問題点があり、また、印刷インキ層よる環境汚染の問題があることや、印刷層を有することから生産時にフィルムのリサイクルが困難となり環境負荷が大きい課題があった。また、特許文献3に記載のフィルムは、遮光性を高めるために添加している無機顔料をフィルム内部に多量に含んでいるため、複雑形状での使用時にフィルムに微細なクラックが生じ劈開することにより、コンタミ要因となる不具合があった。特に、リサイクルポリエステル原料を高濃度で使用する場合には、フィルム強度が低下し、耐劈開性と遮光性の両立が困難であった。
【0007】
本発明の課題は、かかる従来技術に鑑み、遮光均一性と耐劈開性を両立し、さらにリサイクル性に優れるポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するための本発明の好ましい一態様は以下のとおりである。
[1]カーボンブラックを0.01質量%以上5.50質量%以下含有するポリエステルフィルムであり、該カーボンブラックの面配向指数Mcが1.10以上2.00以下であり、広角X線回折法により求められるフィルムの結晶配向指数χiが5.0以上13.0以下である、二軸配向ポリエステルフィルム。
[2]前記カーボンブラックの平均一次粒子径a(nm)が10nm以上150nm以下である、[1]に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[3]前記カーボンブラックの凝集サイズb(nm)と平均一次粒子径a(nm)が式(2)を満たす、[1]または[2]に記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
b/a≧10・・・(2)
[4]フィルム面内において、直交する二方向の周波数15GHzにおける誘電率差の絶対値が0.00以上0.20以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルム。
[5]カーボンブラックを含有し、カーボンブラックの面配向指数Mcが1.03以上であるポリエステルフィルムを20%以上40%以下の質量比率で原料として用いる、[1]~[4]のいずれかに記載の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮光均一性に優れ、更には耐劈開性にも優れるポリエステルフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】面配向指数Mcが小さい二軸配向ポリエステルフィルムを斜めから見た場面の模式図。
図2】面配向指数Mcが大きい二軸配向ポリエステルフィルムを斜めから見た場面の模式図。
図3】面配向指数Mcが1.25となった二軸配向ポリエステルフィルムの一例におけるフィルム断面画像。
図4】面配向指数Mcが1.25となった二軸配向ポリエステルフィルムの一例における2値化画像。
図5】面配向指数Mcが1.25となった二軸配向ポリエステルフィルムの一例におけるパワースペクトル。
図6】面配向指数Mcが1.25となった二軸配向ポリエステルフィルムの一例における配向強度分布。
図7】面配向指数Mcが1.06となった二軸配向ポリエステルフィルムの一例におけるフィルム断面画像。
図8】面配向指数Mcが1.06となった二軸配向ポリエステルフィルムの一例における2値化画像。
図9】面配向指数Mcが1.06となった二軸配向ポリエステルフィルムの一例におけるパワースペクトル。
図10】面配向指数Mcが1.06となった二軸配向ポリエステルフィルムの一例における配向強度分布。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0012】
<二軸配向ポリエステルフィルム>
本発明の二軸配向ポリエステルフィルム(以下、単に「本発明のフィルム」とも呼ぶ場合もある。)を構成するポリエステル樹脂について、好ましい態様を以下に記載する。
【0013】
ポリエステル樹脂とはエステル結合を主鎖に持つ高分子をいうが、本発明に用いるポリエステル樹脂は、ジカルボン酸とジオールとが縮重合した構造を持つポリエステル樹脂が好ましい。ジカルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、パラオキシ安息香酸などのオキシカルボン酸などの各成分を挙げることができる。また、ジカルボン酸エステル誘導体成分として、上記ジカルボン酸化合物のエステル化物、たとえばテレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸2-ヒドロキシエチルメチルエステル、2,6-ナフタレンジカルボン酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、ダイマー酸ジメチルなどの各成分を挙げることができる。また、ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)などの脂肪族ジヒドロキシ化合物、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジヒドロキシ化合物、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族ジヒドロキシ化合物など各成分が挙げられる。これらはそれぞれ1種だけであっても2種以上用いられるものであってもよい。また、フィルムとして製膜性に影響が出なければトリメリット酸、ピロメリット酸およびそのエステル誘導体のうち1種以上を少量共重合されたものであっても構わない。
【0014】
ポリエステル樹脂の具体的な例は、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略称する)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレートなどは安価に入手でき、かつ製膜性も良好であるため、特に好適に用いることができる。
【0015】
また、ポリエステル樹脂はホモポリマーであってもコポリマーであってもよい。コポリマーにおける共重合成分としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸、炭素数2~15のジオール成分を挙げることができ、これらの例としては、たとえばイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、スルホン酸塩基含有イソフタル酸、およびこれらのエステル形成性化合物、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、数平均分子量400~20,000のポリアルキレングリコールなどを挙げることができる。
【0016】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、遮光性を制御する観点からカーボンブラックを0.01質量%以上5.50質量%以下含有することが好ましい。カーボンブラックが0.01質量%以上あることにより十分な遮光特性を得ることができ、また、5.50質量%以下であることにより複雑形状とした場合の耐劈開性を向上させることができる。カーボンブラックの濃度は1.00質量%以上4.50質量%以下がより好ましく、さらに2.00質量%以上4.00質量%以下が特に好ましい。遮光均一性の観点からは、3.10質量部以上がより好ましい。
【0017】
カーボンブラックの種類としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどを用いることができる。カーボンブラックは、公知の種類のものを用いることができるが、その平均一次粒子径a(nm)が10nm以上150nm以下であることが好ましい。より好ましくは20nm以上130nm以下である。平均一次粒子径aが10nm以上により表面積の増加によるフィルムでの分散性悪化を抑制でき、150nm以下であることによりカーボンブラック近傍にボイドが発生することを抑制し、フィルムの強度を高めることができる。ここで、本発明で言う「平均一次粒子径」とは、数平均粒子径のことを指す。
【0018】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、カーボンブラックの平均凝集サイズb(nm)と平均一次粒子径a(nm)が以下の式を満たすことが好ましい。
【0019】
b/a≧10・・・(2)
式(2)はカーボンブラックの凝集体を形成する一次粒子数に対応する。通常、押出時のろ過安定性やフィルム外観の均一性の観点からカーボンブラックはフィルムの3次元空間において均一かつ微細に分散していることが好ましく、式(2)をより小さい値に制御することが一般的である。しかしながら、式(2)であらわされるカーボンブラックの凝集体を形成する一次粒子数が多いほど、フィルムの延伸工程にて面方向に連続したカーボンブラックの配向体が形成され易く、後述するカーボンブラックの面配向指数Mcの制御が容易となり好ましい。さらに以下の式(3)の範囲を満たすとより好ましい。
【0020】
b/a≧15・・・(3)
なお、カーボンブラックの平均凝集サイズb(nm)と平均一次粒子径a(nm)は実施例に記載の方法で求めることとする。
【0021】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、カーボンブラックの面配向指数Mcが1.10以上2.00以下であることが好ましい。面配向指数Mcはカーボンブラックがフィルムの面方向に配向している場合に数値が高くなり、無配向の場合は1.00に近い値となる。面配向指数Mcが1.10以上であることにより、カーボンブラックが低濃度である場合においても遮光性を得ることができる。面配向指数Mcが2.00以下であることにより、カーボンブラックの配向方向に劈開が生じることを抑制できる。
【0022】
前記の範囲内に面配向指数Mcを制御することにより、フィルム平面に対してカーボンブラックをより高密度に分布させることで特に斜めからの光の透過を効率的に抑制し、カーボンブラックを低濃度とした場合にも高い遮光均一性を得ることができる。図を例にすると、面配向指数Mcが小さい場合(図1)、斜めから見た際にカーボンブラックにより光が遮蔽されない領域ができうるが、面配向指数Mcがある程度大きく、ある程度配向している場合(図2)、斜めから見た際にカーボンブラックにより光が遮蔽されるので、高い遮光均一性を得ることができる。
【0023】
面配向指数Mcは一般的な二軸配向フィルムの製造方法において、特別に高い延伸倍率条件とすることにより高めることが可能であるが、マトリックスとなるポリエステル樹脂自体の配向も同時に高まることで、劈開がより発生し易くなる課題があった。そこで発明者らが鋭意検討した結果、カーボンブラックが配向し、カーボンブラックの面配向指数Mcが1.03以上であるフィルムを粉砕しフレーク状としたリサイクル原料を用いることで、口金から押し出した無延伸シートの段階でカーボンブラックが配向しており、その後に延伸を行うことでマトリックス樹脂の配向抑制とカーボンブラックの配向促進を両立可能であることを見出した。
【0024】
同様の観点からカーボンブラックの面配向指数Mcは1.15以上1.80以下がより好ましく、1.20以上1.60以下が最も好ましい。カーボンブラックの面配向指数Mcを特定の範囲とする方法は特に限定されないが、前記のカーボンブラックの面配向指数Mcが1.03以上である二軸配向ポリエステルフィルムを粉砕した後に20%以上40%以下の質量比率でフィルムの原料として用いる方法等が挙げられる。カーボンブラックを含有するフィルムをリサイクル原料として溶融や化学処理等を行い再生チップとして用いる場合、カーボンブラックの配向度が減じることで十分な特性が得られない場合がある。しかしながら、カーボンブラックが配向した状態のフィルムをそのまま原料として用いることにより、溶融押し出し時にマトリックスのポリエステルは無配向となる一方、カーボンブラックは配向した状態をある程度維持することから、その後の二軸延伸工程にてさらにカーボンブラックの面配向度が高まり、前記特定の好ましい範囲とすることが可能である。なお、カーボンブラックの面配向指数Mcの測定方法は、実施例に記載の方法とする。
【0025】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、結晶配向指数χiが5.0以上13.0以下であることが好ましい。χiはマトリックス樹脂成分の結晶における配向状態を示すパラメータであり、5.0以上13.0以下の範囲とすることにより劈開が生じにくくかつ十分な強度を有する遮光性フィルムを得ることができる。χiは6.5以上12.0以下であるとより好ましく、7.0以上11.0以下であると最も好ましい。χiを前記の範囲とする方法は特に限定されないが、後述する延伸倍率条件にて製造する方法が挙げられる。
【0026】
Mcとχiを前記の範囲とする方法として、以下の方法を取ることを好ましく例示することができる。まず、カーボンブラックが配向し、カーボンブラックの面配向指数Mcが1.03以上であるフィルムを粉砕しフレークとしたリサイクル原料を、フィルム原料100質量%中に20質量%以上40質量%以下用いる。そして、後述する延伸倍率条件を適用することで、前述の原理によりカーボンブラックの面配向指数Mcとフィルムのマトリックス樹脂成分の配向とをそれぞれ好ましい範囲に制御することができる。面配向指数Mcを高めるために高倍率の延伸条件とした場合、マトリックス樹脂の配向が高まりすぎχiを好ましい範囲とすることが難しく、フィルムの劈開が起こりやすい課題がある。また、カーボンブラックを高濃度に添加することで一般的な延伸倍率の範囲においても光の透過量を低減せしめることができる場合があるが、面配向度が小さいために斜め方向に光抜けが生じ易く、またカーボンブラックを高濃度に含有することにより劈開が生じ易い課題が発生する場合がある。
【0027】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは結晶化度が38.0%以下であることが好ましい。本態様とすることにより、フィルムの脆さが改善されて耐劈開性が向上する。二軸配向ポリエステルフィルムの結晶化度は実施例に記載の方法で求めることができる。結晶化度を38.0以下とする方法として、上述したようにカーボンブラックの面配向指数Mcが1.03以上であるフィルムを粉砕しフレークとしたリサイクル原料を、フィルム原料100質量%中に20質量%以上40質量%以下用いつつ、後述する延伸倍率条件を適用する方法が好ましく挙げられる。なお、二軸配向後に熱固定(熱緩和)させることでポリエステル樹脂の配向を緩和することができるが、結晶化度が上昇する傾向がある。
【0028】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは、フィルム面内において直交する二方向の誘電率差の絶対値が0.00以上0.20以下であることが好ましい。
【0029】
誘電率はカーボンブラックとマトリックス樹脂の配向状態に相関する指標であり、高度にカーボンブラックが面配向していながら、その面内分布に偏りが小さいことにより、複雑形状とした際に配向方向に応力が集中することで生じる劈開を低減できる。誘電率差の絶対値は0.00以上0.10以下であることはより好ましい様態である。誘電率差の絶対値を特定の範囲とする方法は特に限定されないが、例えばポリマーを押し出す際のドラフト比を特定の範囲とすることで、無延伸フィルム中のカーボンブラックが流れ方向に配向することを抑制し、その後二軸方向の延伸倍率のバランスを適当な条件とすることで達成することができる。
【0030】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムは実施例に記載の耐劈開性評価をした際に、破断伸度が30%以上であることが好ましい。
【0031】
<二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法>
次に本発明の二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法について、好ましい態様を具体例を挙げて説明する。なお、本発明のフィルムは下記の製法により得られたものに限定されるものではない。
【0032】
使用する原料を真空乾燥し水分率が50ppm以下となるようにした後、単軸押出機に供給し溶融押出する。この際、樹脂温度は265℃~295℃に制御することが好ましい。その後、冷却固化せしめて未延伸(未配向)PETフィルムを作製する。押出された未延伸シートを冷却されたドラム上で密着冷却固化し、未延伸積層フィルムを得る。このとき、均一なフィルムを得るために静電気を印加してドラム上に密着させることが好まく、前述の誘電率を特定の範囲とする観点から、溶融状態のポリマーを口金から押し出す場合のドラフト比(=口金リップ間隙KL(mm)/未延伸フィルム厚みMT(mm))は2.0以上19.0以下であることが好ましい。ドラフト比が2.0未満の場合は、ポリマーが口金に接する時間が長いためスジなどの欠点が発生し易く、また、ドラフト比が19.0より大きい場合は面内各方向における誘電率を均一にすることが難しくなる場合がある。
【0033】
本発明の二軸配向ポリエステルフィルムに用いる原料において、カーボンブラックの面配向指数Mcが1.03以上であるポリエステルフィルムを20%以上40%以下の質量比率で用いることが好ましい。カーボンブラックが配向した状態のフィルムを粉砕などしてそのまま原料として用いることにより、溶融押し出し時にマトリックスのポリエステルは無配向となる一方、カーボンブラックは配向した状態をある程度維持することから、その後の二軸延伸工程にてさらにカーボンブラックの面配向度が高まり、前記特定の好ましい範囲とすることが可能である。該カーボンブラック含有原料の面配向指数Mcは1.07以上であるとより好ましく、1.15以上であると最も好ましい。また、カーボンブラックの面配向指数Mcが1.03以上であるポリエステルフィルムを20%以上40%以下の質量比率とすることで、チップ状でないことによりフィルム原料がブリッジし供給不良となる不具合やスクリューの噛みこみ不良を起こす等の工程不良なく、安定して前記の好ましいカーボンブラックの面配向指数Mcのフィルムを得ることができる。また、原料の供給安定性やスクリューの噛み込み安定性の観点から、カーボンブラックの面配向指数Mcが1.03以上であるポリエステルフィルムを一度溶融混錬したチップ状の原料を前記粉砕などした原料と併用して用いることが好ましい。また、本態様とすることにより出来上がるフィルムにおける面配向指数Mcの分布が広がり、遮光均一性と耐劈開性をより良いものとすることができる。
【0034】
この未延伸フィルムをロール加熱、必要に応じて赤外線加熱等でポリマーのガラス転移温度(Tg)以上に加熱し、長手方向(以降、MDと呼ぶ)に延伸する(MD延伸)。逐次二軸延伸の場合、MD延伸は2個以上のロールの周速差を利用して行う。MD延伸の倍率は1.5~3.8倍が好ましい。1.5倍以上、より好ましくは2.0倍以上、さらに好ましくは2.8倍以上とすることで、機械特性に優れたフィルムを得ることができる。また、3.8倍以下、より好ましくは3.5倍以下とすることで、製膜中の破断の発生を防ぐことができる。また、MD延伸の温度は、フィルムのTg以上Tg+20℃以下であることが均一な延伸とロール粘着を抑制する観点から好ましい。また、延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。
【0035】
MD延伸後、続いて、MDと直交する方向(以降、TDと呼ぶ)に延伸して(TD延伸)、熱固定、熱弛緩の処理を順次施して二軸配向フィルムとすることができる。これらの処理はフィルムを走行させながら行う。このとき、TD延伸のための予熱および延伸温度はポリマーのガラス転移温度Tgに対して、Tg以上、Tg+50℃以下で行うのが好ましい。TD延伸の倍率は、2.5~3.9倍が好ましい。2.5倍以上、より好ましくは3.0倍以上とすることで、機械特性に優れたフィルムを生産効率高く得ることができる。3.9倍以下、より好ましくは3.5倍以下とすることで、製膜中の破断の発生を抑制することができる。また、TD方向の延伸速度は1,000%/分以上200,000%/分以下であることが望ましい。
【0036】
さらに、二軸延伸の後にフィルムの熱処理を行う。熱処理はオーブン中、加熱したロール上など従来公知の任意の方法により行うことができる。熱処理の温度は150℃以上240℃以下とすると高い寸法安定性を付与することができる。熱処理時間は特性を悪化させない範囲において任意とすることができ、好ましくは5秒以上60秒以下、より好ましくは10秒以上40秒以下、最も好ましくは15秒以上30秒以下で行うのがよい。熱処理を行った後に、幅方向、あるいは長手方向に3~15%の弛緩処理を行うことが好ましい。その後、均一に徐冷後、室温まで冷却し、ロールに巻き取る。
【0037】
またここでは逐次二軸延伸法によって延伸する場合を例に詳細に説明したが、逐次二軸延伸法、同時二軸延伸法のいずれを採用してもよい。
【実施例0038】
以下、実施例により本発明を詳述する。なお、各特性値は以下の方法で測定した。
【0039】
(1)フィルム厚み、フィルム層構成
フィルムの幅方向に対する中心部分の断面を5枚切り出し、走査電子顕微鏡(日立製作所製電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)S-4000)を用いて、フィルムが厚み方向にわたって視野に収まるよう500~5,000倍に拡大観察し、撮影した断面写真より、フィルムの厚み、および積層構成の場合はフィルム層構成(各層厚み)を特定した。
【0040】
(2)樹脂組成
フィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H-NMRおよび13C-NMRを用いて各モノマー残基成分や副生ジエチレングリコールについて含有量を定量することができる。積層フィルムの場合は、積層厚みに応じて、フィルムの各層を削り取ることで各層単体を構成する成分を採取し評価することができる。なお、本発明のフィルムについては、フィルム製造時の混合比率から計算により、樹脂組成を算出した。
【0041】
(3)カーボンブラックの含有量
JIS K6813(2002年)に基づき、以下のように求める。試料を秤量し、質量をm1とする。秤量した試料を試料ボートに乗せ、あらかじめ550℃に加熱した円筒形電気炉にて窒素雰囲気下において45分間加熱する。窒素雰囲気下で試料ボートを10分間放冷した後、デシケータに移して室温まで放冷後、質量を秤量し、m2とする。その後、試料ボートをマッフル炉に入れ、900℃にてカーボンブラックの痕跡が無くなるまで灰化する。デシケータ内で室温まで試料ボートを冷却し、質量を秤量してm3とする。カーボンブラックの含有量(質量%)は以下の(a)式で算出する。この試行を5回行い、算術平均を以て含有量(質量%)とする。
(a)(m2-m3)/m1×100
なお、フィルムが異なる組成の積層構成である場合には、(1)で得られた各層の厚みに基づいて選択的にサンプリングを行い、各層について分析を行い特定した。
【0042】
(4)カーボンブラックの面配向指数Mc
本発明のフィルムを凍結せしめ、断面がフィルムの任意の方向×フィルム厚み方向になるよう切断し、樹脂層断面観察用の超薄切片サンプルを得た。サンプリングは上記の任意の方向から30°ずつ方向を変えた5方向について実施した。サンプルの断面について、TEM(透過型電子顕微鏡:(株)日立製作所製H7100FA型)を用いて2万倍の倍率、1000nm×1000nmの視野で撮影した画像を解析に用いた。
【0043】
TEMで得られた画像を2値化処理(使用ソフト:Scion Image)し、カーボンブラックのみを抽出した。2値化した画像を解析ソフト(FiberOri8single03)を用いてフーリエ変換した後、得られたパワースペクトルから配向強度の厚み方向を0°の基準とした角度分布を算出した。さらに、同ソフトにて配向強度の角度分布を楕円近似し、得られた楕円の長軸/短軸比をカーボンブラックの面配向指数Mcとした。これらの操作を方向を変えた各サンプルについて同様に行い、計6点について得られたデータの算術平均を算出し、さらにフィルムの異なる場所からサンプリングを5点行い、各点における面配向指数Mcの算術平均をサンプルにおける値として採用した。
【0044】
(5)結晶配向指数χi
理学電機(株)製のX線回折装置の試料ホルダーに設置する。フィルムの幅方向とX線の入射角を変えながら反射法で回折ピークを観測したとき、ポリエチレンテレフタレートの結晶の(100)、(11(―)0)面の回折角2Θに相当する26°、22.5°での回折強度をそれぞれI1、II2とし、結晶配向指数χiはそれらの比(II2/I1)より算出した。
【0045】
(6)カーボンブラックの平均一次粒子径、凝集サイズ
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率100000倍で観察した画像中の粒子について円相当粒子径を求めた。円相当粒子径が0.0002~1μmであった粒子から無作為に100個の粒子を選び、それら100個の粒子の円相当粒子径の平均値を求め、カーボンブラックの平均一次粒子径とした。また、倍率10000倍のSEM観察画像から、10個以上のカーボンブラック粒子が互いに接し連続している凝集体を抽出し、各凝集体について厚み方向および面方向の長さを測定し、平均値を求めた。視野を変え同じ計算を10視野行い、全ての観察視野(倍率10000倍での観察10視野分)における平均値をカーボンブラックの凝集サイズとした。
【0046】
(7)誘電率
王子計測機器(株)製のマイクロ波透過型分子配向計(MOAシリーズ)を用いて、15GHzでの誘電率測定を行った。測定は任意の箇所からフィルムの長手方向、および幅方向の直線上に5cm離れた箇所を選択して行い、計9回の算術平均値を誘電率とした。尚、方向性が不明な場合や概念が無い場合は任意の直線上と、その垂直方向の直線上の測定を実施した。
【0047】
(8)遮光均一性
ポリエステルフィルムを500mm×500mmの大きさに切り出し、暗室において蛍光灯下での透過光検査を行い、フィルムを正面および斜め45°、85°から見た際の遮光状態の斑を以下の基準で目視判定した。
正面および斜めの視点のいずれも光抜けや遮光斑が認められない:A
斜めの視点では光抜けや遮光斑がわずかに認められるが、正面の視点では光抜けや遮光斑が認められない:B
斜めの視点では光抜けや遮光斑が明らかに認められるが、正面の視点では光抜けや遮光斑が認められない:C
正面および斜めの視点のいずれも光抜けや遮光斑が明らかに認められる:D
遮光均一性はA~Cが良好であり、その中でもAが最も優れている。
【0048】
(9)耐劈開性
ポリエステルフィルムを10mm(幅方向)×150mm(長手方向)の大きさに切り出し、切り出したサンプルの150mmに切り出した方向の中央箇所(75mm位置)で当該方向と垂直に折り重ねた。二つ折りとなったサンプルをプレス機を用いて0.3MPaの圧力で5秒プレスした後取り出し、折れ曲がりを元に戻してサンプルとして用いた。“テンシロン”(登録商標)万能試験機RTG-1210((株)エー・アンド・デイ)を用いて、チャック間50mm、引張速度300mm/minにて、前記の折り曲げ箇所が引張長さ中に含まれるようにサンプルをセットし引張試験を行ったときの破断伸度を下記の基準で評価し耐劈開性を判定した。尚、測定は長手方向と幅方向でn=5で行い、合計10点の平均値を採用した。幅方向で測定するときにはポリエステルフィルムを10mm(長手方向)×150mm(幅方向)の大きさに切り出し、上記同様に測定する。本評価では、折り曲げにより微細なクラック(劈開)をフィルム中に発生させ破断伸度を測定することで、劈開の発生し易さに応じて破断伸度が小さくなる傾向から劈開性を評価している。
破断伸度が60%以上:A
破断伸度が50%以上、60%未満:B
破断伸度が40%以上、50%未満:C
破断伸度が30%以上、40%未満:D
破断伸度が30%未満:E
耐劈開性はA~Dが良好であり、その中でもAが最も優れている。
【0049】
(10)リサイクル性
本発明のポリエステルフィルム中のカーボンブラック含有回収ポリエステルの含有量によって、下記基準で評価した。
A:含有量が30質量%以上
B:含有量が20質量%以上30質量%未満
C:含有量が12質量%以上20質量%未満
D:含有量が12質量%未満。
【0050】
(11)結晶化度
JIS K7122(1987)に準じて、セイコー電子工業(株)製示差走査熱量測定装置ロボットDSC-RDC220を、データ解析には“ディスクセッション”SSC/5200を用いて、フィルムサンプル5mgをアルミニウム製受け皿上で室温から300°まで昇温速度20℃/分で昇温し、300℃で5分間保持した。そのとき、測定によって得られた吸熱ピーク熱量ΔHm、冷結晶化熱量ΔHc、完全結晶PETの融解熱量ΔHm (140.1J/g)より、下記式によって算出した。
結晶化度(%)=(ΔHm-ΔHc)/ΔHm ×100。
【0051】
(原料)
ポリエステル樹脂としては、以下の特性を有するものを用いた。
【0052】
(原料A:ポリエステル1)
テレフタル酸ジメチル100質量部、エチレングリコール57.5質量部、酢酸マグネシウム2水和物0.03質量部、三酸化アンチモン0.03質量部を150℃、窒素雰囲気下で溶融した。この溶融物を撹拌しながら230℃まで3時間かけて昇温し、メタノールを留出させ、エステル交換反応を終了した。エステル交換反応終了後、リン酸0.005質量部をエチレングリコール0.5質量部に溶解したエチレングリコール溶液(pH5.0)を添加した。このときのポリエステル組成物の固有粘度は0.2未満であった。この後、重合反応を最終到達温度285℃、真空度0.1Torrで行い、固有粘度0.65、末端カルボキシル基量が34当量/トンのポリエチレンテレフタレートを得た。
【0053】
(原料B:カーボンブラックマスター1)
前記ポリエステルAを75質量%とカーボンブラックとして三菱化学製のファーネスブラック(#3050B)を25質量%とをニーディングパドル混練部を設けた真空ベント付き同方向回転式二軸混練押出機(L/D=40)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数300回転/分、スクリュー回転数の変動率4%、290℃で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにチップ状にカッティングして、極限粘度0.58dl/gのカーボンブラックマスター1を得た。
【0054】
(原料C:リサイクルポリエステル1)
カーボンブラック濃度が4.5質量%、面配向指数Mcが1.04である二軸配向ポリエステルフィルムを粉砕し、嵩密度0.38g/cmのフレーク状としたリサイクルポリエステル原料1。
【0055】
(原料D:リサイクルポリエステル2)
カーボンブラック濃度が4.5質量%、面配向指数Mcが1.04である二軸配向ポリエステルフィルムを断裁し、温度280℃に加熱されたニーディングパドル混練部を3箇所設けた同方向回転タイプのベント式2軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に供給して溶融混錬し、チップ状のリサイクルポリエステルBを得た。得られた再生チップのガラス転移温度は78℃、融点は255℃、固有粘度は0.61dl/g、カルボキシル末端基量は70eq./tであった。なお、原料Dのカーボンブラックの面配向指数Mcを(4)カーボンブラックの面配向指数Mcと同様の方法で求めると、1.03を下回った。
【0056】
(原料E:リサイクルポリエステル3)
カーボンブラック濃度が4.5質量%、面配向指数Mcが1.18である二軸配向ポリエステルフィルムを粉砕し、嵩密度0.38g/cmのフレーク状としたリサイクルポリエステル原料3。
【0057】
(実施例1)
ポリエステル1、カーボンブラックマスター1、リサイクルポリエステル1および2を、表1に示す割合でブレンド後、窒素雰囲気下、ベント式押出機(L/D=28)に供給した。280℃で真空ベント部を脱気しながら溶融混練し、290℃に設定したフィルターで濾過した後、280℃に設定したTダイの口金から溶融押出して口金リップ間隙4.5mm、未延伸フィルム厚み0.3mm(ドラフト比15)にて表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、未延伸フィルムを得た。
【0058】
この未延伸フィルムを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、ロールの周速差を利用して、90℃の温度でフィルムの縦方向に3.0倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両端部をクリップで把持して、ステンターに導き、延伸温度95℃、延伸倍率3.6倍でフィルムの幅方向に延伸し、熱処理を225℃で6秒間行い、フィルム厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
【0059】
(実施例2~7、13、比較例1~5、7)
表1、2に記載の原料配合、条件にて、実施例1と同様にして厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
(実施例8、10)
実施例1のポリエステルフィルムを粉砕して原料として用い、表1、2に記載の原料配合、条件にした以外は、実施例1と同様にして厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
(実施例9)
比較例4のポリエステルフィルムを粉砕して原料として用い、表1、2に記載の原料配合、条件にした以外は、実施例1と同様にして厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
(実施例12)
口金リップ間隙1.2mm、未延伸フィルム厚み0.3mm(ドラフト比4)とした以外は実施例1と同様にして厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
(比較例6)
実施例1の製造にて生じた横延伸後のクリップ把持部分をスリットして得たエッジを粉砕して原料として用い、表1、2に記載の原料配合、条件にした以外は、実施例1と同様にして厚み50μmのポリエステルフィルムを得た。得られたポリエステルフィルムの評価結果を表2に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、遮光均一性と耐劈開性を両立し、さらにリサイクル性に優れた遮光部材として好適なポリエステルフィルムを得ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10