(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056182
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】シャツ
(51)【国際特許分類】
A41B 1/14 20060101AFI20240416BHJP
A41D 27/18 20060101ALI20240416BHJP
A41B 3/00 20060101ALI20240416BHJP
A41B 3/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A41B1/14
A41D27/18 E
A41B3/00 A
A41B3/06 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162907
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】597008533
【氏名又は名称】フレックスジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 隆生
【テーマコード(参考)】
3B035
【Fターム(参考)】
3B035AA15
3B035AB17
3B035AC10
(57)【要約】
【課題】シャツの持つ紳士服としてのお洒落な雰囲気を損なうこと無く、衿の基端から折り返し部分に到る範囲に生じる皮脂汚れを従来よりも効果的に洗い落とし得るシャツを提供する。
【解決手段】衿3の内部の略全域に洗濯で剥離しない完全接着芯5を挟み込ませて接着させる一方、衿腰2に縫着される衿3の基端から折り返し部分8に到る所定範囲には初回の洗濯で剥離する水溶性仮接着芯9を前記完全接着芯5と前記衿3の表側の布地3aとの間に介在するよう挟み込ませて接着させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衿の内部の略全域に洗濯で剥離しない完全接着芯を挟み込ませて接着させる一方、衿腰に縫着される衿の基端から折り返し部分に到る所定範囲には初回の洗濯で剥離する水溶性仮接着芯を前記完全接着芯と前記衿の表側の布地との間に介在するよう挟み込ませて接着させたことを特徴とするシャツ。
【請求項2】
完全接着芯が高密度ポリエチレン系の接着樹脂を使用したものであることを特徴とする請求項1に記載のシャツ。
【請求項3】
水溶性仮接着芯が水溶性のポリビニルアルコールを接着樹脂として使用したものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6に示す如く、一般的なビジネス用のシャツ1’にあっては、衿腰2により支えられて下向きに折り返される衿3が首回りに装備されており、これら衿腰2及び衿3には、首回りの外観を美しく形作るための適度な硬さが求められるため、夫々の内部に高密度ポリエチレン系の接着樹脂を使用した完全接着芯4,5を芯地として挟み込み、高温高圧プレス機を用いて衿腰2及び衿3の表側と裏側の布地に対し前記完全接着芯4,5を夫々接着させて前記衿腰2及び衿3に適切な保形性を持たせるようにしてある。尚、
図6中における符号6は着用者の胸部及び腹部を覆う前身頃、7は肩部を覆うヨークを示す。
【0003】
この種のシャツ1’では、前記衿3の基端から折り返し部分8に到る範囲に頭皮からの汗等が溜まり易い上、この範囲が着用者の衿首に直接触れて首を動かすたびに擦れる箇所になるため、前記衿3の基端から折り返し部分8に到る範囲に集中的に皮脂汚れが生じてしまうことが知られているが、前述の如く衿3の内部に完全接着芯5を挟み込んで接着させてしまうと、洗濯時に完全接着芯5により布地に対する洗濯水の行き来が阻まれ、流水が布地に対し表面的に当たるのみとなって、繊維に絡みついた皮脂汚れを洗い落とすことが難しくなるという課題があった。
【0004】
尚、シャツ等の首回りの皮脂汚れに関しては、下記の特許文献1の如き提案も成されており、この特許文献1では、衿腰の前面に着脱自在に被覆カバーを貼り付け、この被覆カバーを必要に応じて交換できるようになっており、更には、前記被覆カバーの上縁辺に相対的に他の部位より断面を大きくした膨隆部を形成し、これにより衿の折り返し部分が衿首に直接触れないようにして皮脂汚れを防止するようにもなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1の如き従来提案をビジネス用のシャツ1’に適用したとしても、このシャツ1’を脱いだ際に、衿腰2の前面に汚れ防止の被覆カバーが宛がわれているのがあからさまに見て取れ、シャツ1’を着用した状態にあっても、被覆カバーの上縁辺が衿腰の前側に重なっているのが外観から分かり、特に特許文献1のように被覆カバーの上縁辺に膨隆部が形成されているとなれば、なおさら被覆カバーの存在が目立ってしまうことになるので、シャツ1’の持つ紳士服としてのお洒落な雰囲気が台無しとなって商品イメージの大幅な低下を招いてしまうことになる。
【0007】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、シャツの持つ紳士服としてのお洒落な雰囲気を損なうこと無く、衿の基端から折り返し部分に到る範囲に生じる皮脂汚れを従来よりも効果的に洗い落とし得るシャツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、衿の内部の略全域に洗濯で剥離しない完全接着芯を挟み込ませて接着させる一方、衿腰に縫着される衿の基端から折り返し部分に到る所定範囲には初回の洗濯で剥離する水溶性仮接着芯を前記完全接着芯と前記衿の表側の布地との間に介在するよう挟み込ませて接着させたことを特徴とするシャツに係るものである。
【0009】
而して、このように構成されたシャツでは、初回の洗濯で水溶性仮接着芯による仮接着部分が溶け、衿の表側の布地における基端から折り返し部分に到る範囲が水溶性仮接着芯から剥がれる結果、この範囲における表側の布地に対し洗濯水が行き来し易くなって、繊維に絡みついた皮脂汚れを従来よりも効果的に洗い落とすことが可能となる。
【0010】
他方、新品の状態で販売するにあたっては、衿の内部の略全域で完全接着芯が前記衿の表側の布地と裏側の布地に対し接着し、水溶性仮接着芯が介在する前記衿の基端から折り返し部分に到る所定範囲についても、前記水溶性仮接着芯を介して前記完全接着芯が前記衿の表側の布地と一体的に接着されることになるので、衿に適切な保形性を持たせて首回りの外観を美しく形作った状態で商品陳列することが可能となる。
【0011】
更に、初回の洗濯後にあっても、シャツの着用時に外観として現れる衿の折り返し部分より先の範囲については、完全接着芯が剥離せずに保形性を維持し続ける上、水溶性仮接着芯との仮接着が剥がれる範囲については、着用時に衿首に直接当たる部分となって隠れるため、シャツの持つ紳士服としてのお洒落な雰囲気を何ら損なうこと無く従前通りの外観を保つことが可能である。
【0012】
また、本発明においては、例えば、完全接着芯が高密度ポリエチレン系の接着樹脂を使用したものであることが好ましく、水溶性仮接着芯は水溶性のポリビニルアルコールを接着樹脂として使用したものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上記した本発明のシャツによれば、シャツの持つ紳士服としてのお洒落な雰囲気を損なうこと無く、衿の基端から折り返し部分に到る範囲に生じる皮脂汚れを従来よりも効果的に洗い落とすことができるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を実施する形態の一例を示す正面図である。
【
図2】
図1のシャツの衿及び衿腰についての展開図である。
【
図3】
図2の衿の表側の布地の内面に対する水溶性仮接着芯の配置図である。
【
図4】
図3の水溶性仮接着芯を被覆する完全接着芯の配置図である。
【
図5】
図1の形態例の要部を破断して模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0016】
図1~
図5は本発明を実施する形態の一例を示すもので、
図1に正面図で示す如く、本形態例のシャツ1においても、衿腰2により支えられて下向きに折り返される衿3が首回りに装備されており、これら衿腰2及び衿3には、
図2に展開図で示す如く、その内部の略全域に洗濯で剥離しない完全接着芯5が従前通り芯地として挟み込まれて接着されているが、
図3に示す如く、衿腰2に縫着される衿3の基端から折り返し部分8に到る所定範囲には、初回の洗濯で剥離する水溶性仮接着芯9も挟み込まれて接着されるようになっていて、
図4に示す如く、この水溶性仮接着芯9を被覆するように前記完全接着芯5が挟み込まれることによって、
図5に示す如く、前記水溶性仮接着芯9が前記完全接着芯5と前記衿3の表側の布地3aとの間に介在するようにしてある。
【0017】
即ち、
図5の場合には、前身頃6(
図1参照)と衿腰2との取り付け箇所について図示しているが、前身頃6の上端の衿刳り(ネックライン)に沿い表側の布地2aと裏側の布地2bとから成る衿腰2が縫着され、該衿腰2の上端には、表側の布地3aと裏側の布地3bとから成る衿3の基端が前記衿腰2の各布地2a,2bにより挟み込まれるように縫着されており、この縫着により衿腰2の完全接着芯5と衿3の完全接着芯5及び水溶性仮接着芯9も一緒に縫着されるようになっている。尚、
図5では、前身頃6と衿腰2との取り付け箇所の例で示しているが、衿腰2の背面側の範囲は型部分を覆うヨーク7(
図1参照)に対し取り付けられることになる。
【0018】
ここで、
図2~
図4においては、説明の便宜上から折り返し部分8の近くまでしか水溶性仮接着芯9が届いていない図示となっているが、実際の水溶性仮接着芯9は折り返し部分8に到達する位置まで延びており、衿3の折り返しに支障が無ければ、水溶性仮接着芯9が折り返し部分8を多少越えていても良い。
【0019】
尚、衿3の内部に挟み込まれて接着される完全接着芯5には、例えば、高密度ポリエチレン系の接着樹脂を使用することが可能であり、また、衿腰2に縫着される衿3の基端から折り返し部分8に到る所定範囲に用いられる水溶性仮接着芯9には、例えば、水溶性のポリビニルアルコール(PVA)を接着樹脂として使用することが可能である。
【0020】
而して、このようにすれば、初回の洗濯で水溶性仮接着芯9による仮接着部分が溶け、衿3の表側の布地3aにおける基端から折り返し部分8に到る範囲が水溶性仮接着芯9から剥がれる結果、この範囲における表側の布地3aに対し洗濯水が行き来し易くなって、繊維に絡みついた皮脂汚れを従来よりも効果的に洗い落とすことが可能となる。
【0021】
他方、新品の状態で販売するにあたっては、衿3の内部の略全域で完全接着芯5が前記衿3の表側の布地3aと裏側の布地3bに接着し、水溶性仮接着芯9が介在する前記衿3の基端から折り返し部分8に到る所定範囲についても、前記水溶性仮接着芯9を介して前記完全接着芯5が前記衿3の表側の布地3aと一体的に接着されることになるので、衿3に適切な保形性を持たせて首回りの外観を美しく形作った状態で商品陳列することが可能となる。
【0022】
更に、初回の洗濯後にあっても、シャツ1の着用時に外観として現れる衿3の折り返し部分8より先の範囲については、完全接着芯5が剥離せずに保形性を維持し続ける上、水溶性仮接着芯9との仮接着が剥がれる範囲については、着用時に衿首に直接当たる部分となって隠れるため、シャツ1の持つ紳士服としてのお洒落な雰囲気を何ら損なうこと無く従前通りの外観を保つことが可能である。
【0023】
従って、上記形態例によれば、シャツ1の持つ紳士服としてのお洒落な雰囲気を損なうこと無く、衿3の基端から折り返し部分8に到る範囲に生じる皮脂汚れを従来よりも効果的に洗い落とすことができる。
【0024】
尚、本発明のシャツは、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0025】
1 シャツ
2 衿腰
2a 表側の布地
2b 裏側の布地
3 衿
3a 表側の布地
3b 裏側の布地
4 完全接着芯
5 完全接着芯
8 折り返し部分
9 水溶性仮接着芯