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  • 特開-居住者監視システム 図1
  • 特開-居住者監視システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056185
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】居住者監視システム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20240416BHJP
   G08B 25/08 20060101ALI20240416BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20240416BHJP
   G08B 21/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G08B25/04 K
G08B25/08 A
G08B25/00 510M
G08B21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162910
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】391015616
【氏名又は名称】株式会社アサヒ電子研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】和倉 慎治
【テーマコード(参考)】
5C086
5C087
【Fターム(参考)】
5C086AA22
5C086CA11
5C086CA22
5C086CA28
5C086FA11
5C087AA02
5C087AA19
5C087BB18
5C087DD03
5C087DD24
5C087EE18
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087FF16
5C087GG02
5C087GG08
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】プライバシを確保しながら独居老人などを見守ることを可能とする居住者監視システムを提供することである。
【解決手段】居住者監視システム10は、所定の空間内で居住する居住者を検知する居住者検知部12と、居住者検知部12が検知する検知データに基づいて居住者2を模したキャラクタを用いて居住者2の動きを表現するための表示データを形成する表示データ形成部と、居住者2を見守る関係者が閲覧可能な表示画面に表示データを表示する表示部16と、居住者検知部12が検知する検知データに基づいて、居住者2の動きに異常があるか否かを判断する異常判断部18と、居住者2の動きに異常があると異常判断部18が判断したときに関係者に通知する通知部19と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間内で居住する居住者を検知する居住者検知部と、
前記居住者検知部が検知する検知データに基づいて前記居住者を模したキャラクタを用いて前記居住者の動きを表現するための表示データを形成する表示データ形成部と、
前記居住者を見守る関係者が閲覧可能な表示画面に前記表示データを表示する表示部と、
前記居住者検知部が検知する検知データに基づいて、前記居住者の動きに異常があるか否かを判断する異常判断部と、
前記居住者の動きに前記異常があると前記異常判断部が判断したときに前記関係者に通知する通知部と、
を備えることを特徴とする居住者監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の居住者監視システムにおいて、
前記居住者検知部は、
前記所定の空間内の水平方向に沿った所定の視野角を有するレーザを用いて前記居住者の動きを検知する第1の2次元レーザ検知部と、
前記所定の空間内の垂直方向に沿った所定の視野角を有するレーザを用いて前記居住者の動きを検知する第2の2次元レーザ検知部と、
を有することを特徴とする居住者監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の居住者監視システムにおいて、
前記異常判断部は、前記第1の2次元レーザ検知部及び前記第2の2次元レーザ検知部が検知する距離データ、角度データ、強度データに基づいて、前記居住者の動きに前記異常があると判断することを特徴とする居住者監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居住者監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超高齢化社会となっており、様々な介護問題が生じている。この問題を解決する1つの手段として、例えば、独居老人を見守るシステムが多数開発されている。本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、独居者等の居室に援助コントローラが設置されており、又、居室及びその他の空間に監視センサが設けられており、援助コントローラには、PDA及び/又はスマートフォン・携帯電話、及び/又は固定電話、及び/又はパソコン、及び/又はタブレットが接続されており、シーケンサ装置を介して、モード切替スイッチに連結されており、該モード切替スイッチにより在宅モード及び/又はお出かけモード及び/又は行動管理モードとに切り替えられ、在宅モード及び/又は、お出かけモード及び/又は行動管理モードのいずれにおいても、条件が揃うと、次に自動通報システムに連結され、自動通報システムは、単数または複数の通報先に、自動的に通報される機能が搭載されていることを特徴とする独居者等の監視警備連絡装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-16609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
独居老人を見守るシステムとして、例えば、居住空間にカメラを設置して独居老人を撮像し、これを管理者である介護者などに送信して見守るといった手段がある。しかしながら、普段の生活を動画撮影されて表示されると独居老人のプライバシを保護しにくいという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、プライバシを確保しながら独居老人などを見守ることを可能とする居住者監視システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る居住者監視システムは、所定の空間内で居住する居住者を検知する居住者検知部と、前記居住者検知部が検知する検知データに基づいて前記居住者を模したキャラクタを用いて前記居住者の動きを表現するための表示データを形成する表示データ形成部と、前記居住者を見守る関係者が閲覧可能な表示画面に前記表示データを表示する表示部と、前記居住者検知部が検知する検知データに基づいて、前記居住者の動きに異常があるか否かを判断する異常判断部と、前記居住者の動きに前記異常があると前記異常判断部が判断したときに前記関係者に通知する通知部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る居住者監視システムにおいて、前記居住者検知部は、前記所定の空間内の水平方向に沿った所定の視野角を有するレーザを用いて前記居住者の動きを検知する第1の2次元レーザ検知部と、前記所定の空間内の垂直方向に沿った所定の視野角を有するレーザを用いて前記居住者の動きを検知する第2の2次元レーザ検知部と、を有することが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る居住者監視システムにおいて、前記異常判断部は、前記第1の2次元レーザ検知部及び前記第2の2次元レーザ検知部が検知する距離データ、角度データ、強度データに基づいて、前記居住者の動きに前記異常があると判断することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プライバシを確保しながら独居老人などを見守ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る実施の形態の居住者監視システムを示す図である。
図2】本発明に係る実施の形態の居住者監視システムにおいて、介護者の端末画面に表示される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0012】
図1は、本発明に係る実施の形態の居住者監視システム10を示す図である。図2は、本発明に係る実施の形態の居住者監視システム10において、介護者6の端末画面に表示される様子を示す図である。
【0013】
居住者監視システム10は、居住者2が介護施設の個室1で生活している様子についてプライバシを確保しながら見守るためのシステムである。居住者監視システム10は、居住者検知部12と、表示データ形成部14と、表示部16と、異常判断部18と、通知部19と、記憶部20とを備える。
【0014】
居住者検知部12は、介護施設の個室1で居住する居住者2を検知する機能を有する。居住者検知部12は、第1の2次元レーザ検知部と第2の2次元レーザ検知部とを備えて構成される。
【0015】
第1の2次元レーザ検知部は、介護施設の個室1内の水平方向に沿った所定の視野角を有するレーザを用いて居住者2の動きを検知する機能を有する。
【0016】
第2の2次元レーザ検知部は、介護施設の個室1内の垂直方向に沿った所定の視野角を有するレーザを用いて居住者2の動きを検知する機能を有する。
【0017】
第1の2次元レーザ検知部及び第2の2次元レーザ検知部は、高精度リニアチャープのFMCW方式(周波数変調連続波)レーダであり、FMCW方式レーダ波の周波数を徐々に変化させながら連続で発信し、送信波と受信波の周波数差から距離を算出することで対象物(居住者2)の有無を検出する。
【0018】
ここでは、2つの2次元レーザ検知部を用いて居住者2を検知しており、第1の2次元レーザ検知部が水平方向を検知し、第2の2次元レーザ検知部が垂直方向を検知するように、それぞれの役割が分担されている。
【0019】
第1の2次元レーザ検知部及び第2の2次元レーザ検知部は、1×4リニアアレイ受信アンテナで、複数動体の距離データ、角度データ、強度データ等を検知可能であり、望ましい検知範囲として、正面方向距離が10mであり、検知可能角度幅(視野角)が120°とされている。
【0020】
第1の2次元レーザ検知部及び第2の2次元レーザ検知部は、アンテナ、無線回路、A/Dコンバータ、FIFOメモリ、SPIインタフェースを含んで構成される。
【0021】
表示データ形成部14は、居住者検知部12が検知する検知データに基づいて、居住者2を模したキャラクタを用いて居住者2の動きを表現するための表示データを形成する機能を有する。
【0022】
具体的には、第1の2次元レーザ検知部及び第2の2次元レーザ検知部に基づいて検知した居住者2の距離データ、角度データ、強度データ等のデータに基づいて、モーショントラッキングを行い、居住者2を模したキャラクタを形成する。これにより、バーチャル空間上に居住者2とそっくりの動作をするキャラクタ(アバター)が出来る。
【0023】
表示部16は、居住者2を見守る関係者が閲覧可能な表示画面に表示データを表示する機能を有する。居住者2を見守る関係者は、ここでは、介護者6であるものとして説明するが、もちろん、家族4を含めてもよい。
【0024】
介護者6や家族4が閲覧可能な表示画面とは、タブレット端末やスマートフォンなどの携帯端末の画面であるものとして説明するが、もちろん、パーソナルコンピュータの画面であってもよい。
【0025】
携帯端末の画面に表示される例としては、例えば、図2(a)(b)に示されるような形で表示される。図2(a)のように、管理番号を表示する「番号」、施設名を表示する「施設」、施設の棟番号を示す「棟」、居住者2の氏名を示す「名前」、在室か外出かを表示する「所在」、居住者2の就寝中や歩行中などを表示する「状態」、居住者2の危険度を色分けて表示する「色」などが表示される。
【0026】
図2(a)では、部屋番号124の居住者2である「〇□〇□」さんがベッドから転落していることが表示されており、詳細確認を行うと、図2(b)のような画面に切り替わる。
【0027】
図2(b)では、居住者2の状態である「就寝中」「離床中」「転倒」「トイレ」「外出」「歩行」「介助中」が表示されており、「〇□〇□」さんは転倒しているため、転倒してからの経過時間が右横に表示されるとともに、その右横の画面には、個室1内で居住者2を模したキャラクタが倒れている様子が描かれている。
【0028】
図2(b)に示されるように、居住者監視システム10の特徴の1つは、居住者2の動きを、居住者2を模したキャラクタで表示することであり、例えば、図2(c)に示されるようにベッドで就寝中だったり、図2(d)に示されるようにベッドから転落したり、図(e)に示されるように歩行中だったり、図2(f)に示されるようにトイレに入っている様子が表示される。これにより、介護者6は、感覚的にも居住者2の様子を把握しやすいという利点がある。
【0029】
なお、図2(c)~図2(f)の状態において、図2(d)に示された状態は居住者2が転落して倒れた状態であり、異常状態であることを明確に区別するためにキャラクタを例えば赤色で表示し、その他の状態(例えば、図2(c)、図2(e)、図2(f))は赤色以外の色、例えば、金色にする。これにより、居住者2に異常があったときに介護者6は一目で異常状態を把握することが出来る。もちろん、これらの色は一例であり、適宜変更することが出来る。
【0030】
異常判断部18は、居住者検知部12が検知する検知データに基づいて、居住者2の動きに異常があるか否かを判断する機能を有する。異常判断部18は、第1の2次元レーザ検知部及び第2の2次元レーザ検知部が検知する距離データ、角度データ、強度データに基づいて、居住者2の動きに異常があるか否かを判断する。
【0031】
具体的には、異常判断部18は、第1の2次元レーザ検知部及び第2の2次元レーザ検知部が検知する距離データ、角度データ、強度データの時間的変化のグラフから居住者2の動作を推測し、居住者2の動きに異常があるか否かを推定する。
【0032】
この推定の一例として、例えば、個室1内の垂直方向を検知する第2の2次元レーザ検知部が所定の時刻に-10°の角度データを検知したときは居住者2がベッドに横たわっていると判断し、所定時間が経過した時刻に-40°を示すときに居住者2がベッドから落ちて転倒していると推測して居住者2の状態が異常であると判断する。
【0033】
異常判断部18は、個室1内の各種データ(面積、形状、ベッドの位置・大きさ、トイレなど)や距離データ、角度データ、強度データ等を多数の居住者2について取得して蓄積し、人工知能を用いて深層学習させることで、居住者2の状態が異常であるか否かの判断の推定精度を高めることが出来る。
【0034】
通知部19は、居住者2の動きに異常があると異常判断部18が判断したときに関係者に通知する機能を有する。例えば、居住者2を見守る介護者6や家族4の携帯電話などにメールやショートメッセージなどを送信する。これにより、介護者6や家族4は、携帯端末の画面などを用いて居住者2の詳細な状況を確認することが出来る。
【0035】
記憶部20は、介護施設の個室1及び個室1で居住する居住者2に関する情報を記憶する。例えば、個室1の情報(面積、形状、ベッドの位置・大きさ、トイレの位置・大きさなど)や居住者2の情報(氏名、身長、体重、血液型など)を記録する。また、記憶部20は、後述するプレイバック機能などに利用するために表示データを含む各種データを記録する。
【0036】
続いて、上記構成の居住者監視システム10の作用について説明する。超高齢化社会の独居老人を監視するシステムとして、例えば、独居老人が暮らす個室内にカメラを設定し、生活の様子を撮影することで監視することができるが、このようなシステムではプライバシを守ることが難しいという課題がある。このような課題に対し、居住者監視システム10は顕著な効果を発揮する。
【0037】
居住者監視システム10によれば、第1の2次元レーザ検知部及び第2の2次元レーザ検知部に基づいて検知した居住者2の距離データ、角度データ、強度データ等のデータに基づいて、モーショントラッキングを行い、居住者2を模したキャラクタを形成する。
【0038】
このようにモーショントラッキングされたキャラクタが介護者6や家族4の携帯端末の画面に居住者2の動きが表示されるため、介護者6は居住者2の現在の状態を遠方から把握することが出来るとともに、表示されるのはキャラクタであるため居住者2のプライバシを確保することが出来るという顕著な効果を奏する。
【0039】
また、居住者2の異常が通知部19によって通知された場合は、表示画面で居住者2の様子を確認するとともに、必要に応じて救急車を呼ぶなどの対応を迅速に行うことが出来る。
【0040】
そして、第1の2次元レーザ検知部及び第2の2次元レーザ検知部に基づいて居住者2のモーショントラッキングができるため、キャラクタを用いて居住者2の動きを表示する機能について、非常に高価な3次元レーザなどを使用することなく低コストで実現できるという利点がある。
【0041】
また、表示部19の特徴的な機能の1つとしてプレイバック機能がある。例えば、居住者2の異常が通知部19により通知され、介護者6がタブレット端末で該当の居住者2の様子を確認した際にプレイバック機能を使用するとよい。記憶部20に記憶された表示データは、時刻毎のキャラクタの動きが記録されている。例えば、図1に示されるように、100~103の時刻で居住者2が仰向きで就寝しており、104で寝返りをうち、105で転落し、その後、106で起き上がり、107で歩き出すといった一連の動きを再生することが出来る。
【0042】
このようなケースでは、105の転落した際に通知部19から通知が来るが、通知を受け取った介護者6がプレイバック機能を用いて異常状態に至るまでの動作及びその後の行動を分析することにより、居住者2のもとに迅速にかけつけるべきか否かを判断することも出来る。例えば、図1の例では、介護者2は転落した後、すぐに起き上がって部屋の中を歩いているため、緊急性が低いと判断することが出来る。
【0043】
超高齢化社会では、介護者6の不足などにより、一人の介護者6の負担が増えているため、上記のように緊急性の判断などをすることで、限られたリソースを適切に割り当て、効率良く介護を行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 個室、2 居住者、4 家族、6 介護者、10 居住者監視システム、12 居住者検知部、14 表示データ形成部、16 表示部、18 異常判断部、19 通知部、20 記憶部。

図1
図2