(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056188
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
H02G 15/04 20060101AFI20240416BHJP
H01R 13/52 20060101ALI20240416BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20240416BHJP
H01B 7/282 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H02G15/04
H01R13/52 301E
H02G1/14 050
H01B7/282
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162915
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】山尾 萌
(72)【発明者】
【氏名】小林 利成
(72)【発明者】
【氏名】久保田 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】寺坂 元寿
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 浩行
(72)【発明者】
【氏名】魏 麟
【テーマコード(参考)】
5E087
5G313
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
5E087EE02
5E087FF03
5E087GG02
5E087LL12
5E087MM05
5E087QQ04
5E087RR12
5E087RR29
5G313FA01
5G313FB04
5G313FC05
5G355AA03
5G355BA02
5G355CA23
5G375AA02
5G375BA08
5G375BB46
5G375CA19
5G375CB05
5G375DA36
5G375DB16
(57)【要約】
【課題】防水栓をインサート部品とせずとも、モールド部と電線との隙間からの水の浸入を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【解決手段】配線部材10は、モールド部20と、前記モールド部20に覆われる第1区間と、前記第1区間に連なり前記モールド部20の外を延びる第2区間とを含む電線30と、前記モールド部20の外側に設けられて、前記モールド部20の外面における前記電線30との境界である環状境界線24を覆う防水栓40と、を備える。前記防水栓40は、前記環状境界線24よりも外周側で前記モールド部20の前記外面に止水可能に接する第1接触部41と、前記第2区間において前記電線30の外周部に止水可能に接する第2接触部42とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド部と、
前記モールド部に覆われる第1区間と、前記第1区間に連なり前記モールド部の外を延びる第2区間とを含む電線と、
前記モールド部の外側に設けられて、前記モールド部の外面における前記電線との境界である環状境界線を覆う防水栓と、
を備え、
前記防水栓は、前記環状境界線よりも外周側で前記モールド部の前記外面に止水可能に接する第1接触部と、前記第2区間において前記電線の外周部に止水可能に接する第2接触部とを含む、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記第1接触部と前記外面とは、前記電線の延在方向に沿って並んでいる、配線部材。
【請求項3】
請求項2に記載の配線部材であって、
前記モールド部及び前記電線に対する前記防水栓の接触状態を維持するリテーナをさらに備え、
前記リテーナは、前記モールド部への固定部と、前記防水栓を保持する保持部とを含み、
前記第1接触部は、前記リテーナによって前記延在方向に沿って前記モールド部に押し付けられる、配線部材。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の配線部材であって、
前記電線が複数設けられ、
板状に形成された前記防水栓に複数の貫通孔が形成され、
前記複数の貫通孔のそれぞれを前記電線が貫通しており、
前記複数の貫通孔それぞれの内周面が前記第2接触部とされる、配線部材。
【請求項5】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記モールド部は、本体部と、前記本体部から前記電線の延在方向に突出して前記電線の外周部を覆う筒状部とを含み、
前記第1接触部は、前記筒状部の外周部に接する、配線部材。
【請求項6】
請求項5に記載の配線部材であって、
前記モールド部及び前記電線に対する前記防水栓の接触状態を維持するリテーナをさらに備え、
前記リテーナは、前記モールド部への固定部と、前記防水栓を保持する保持部とを含み、
前記防水栓は、前記保持部に収容されている、配線部材。
【請求項7】
請求項6に記載の配線部材であって、
前記筒状部の基端部に係止受部が設けられ、
前記固定部は、前記保持部から前記延在方向に沿って前記本体部に向けて延在する突出片と、前記突出片に設けられて前記係止受部に係止する係止部とを有する、配線部材。
【請求項8】
請求項3又は請求項6に記載の配線部材であって、
前記電線の前記第1区間における端部に端子が設けられ、
前記電線の前記第2区間にシースが設けられ、
前記モールド部は、前記端子を保持するコネクタハウジングとされる部分を含み、
前記シースの端部は、前記防水栓及び前記リテーナと前記延在方向に沿って離れている、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電線と、前記電線の外周を被覆するシースと、を有するケーブルの止水構造を開示している。当該ケーブルの止水構造は、前記シースから露出した前記電線の外周に配置された防水栓と、前記電線が挿通されると共に前記防水栓を収容する挿通孔が形成された樹脂部材と、前記シースの一部と前記樹脂部材の少なくとも一部とを覆う樹脂からなるモールド成形体と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のケーブルの止水構造では、モールド成形体の成形時に、ケーブルと共に防水栓及び樹脂部材もインサート部品とする必要があった。
【0005】
そこで、防水栓をインサート部品とせずとも、モールド部と電線との隙間からの水の浸入を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、モールド部と、前記モールド部に覆われる第1区間と、前記第1区間に連なり前記モールド部の外を延びる第2区間とを含む電線と、前記モールド部の外側に設けられて、前記モールド部の外面における前記電線との境界である環状境界線を覆う防水栓と、を備え、前記防水栓は、前記環状境界線よりも外周側で前記モールド部の前記外面に止水可能に接する第1接触部と、前記第2区間において前記電線の外周部に止水可能に接する第2接触部とを含む、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、防水栓をインサート部品とせずとも、モールド部と電線との隙間からの水の浸入を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態1にかかる配線部材を示す平面図である。
【
図4】
図4は実施形態2にかかる配線部材を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)モールド部と、前記モールド部に覆われる第1区間と、前記第1区間に連なり前記モールド部の外を延びる第2区間とを含む電線と、前記モールド部の外側に設けられて、前記モールド部の外面における前記電線との境界である環状境界線を覆う防水栓と、を備え、前記防水栓は、前記環状境界線よりも外周側で前記モールド部の前記外面に止水可能に接する第1接触部と、前記第2区間において前記電線の外周部に止水可能に接する第2接触部とを含む、配線部材である。
【0012】
(1)の配線部材によると、第1接触部の外側の水がモールド部の外面を伝って環状境界線まで達することが、第1接触部によって抑制される。また、第2接触部の外側の水が電線の外面を伝って環状境界線まで達することが、第2接触部によって抑制される。これらより、環状境界線への水の浸入が、モールド部の外側に設けられた防水栓によって抑制されることから、防水栓をインサート部品とせずとも、モールド部と電線との隙間からの水の浸入を抑制できる。
【0013】
(2)(1)の配線部材において、前記第1接触部と前記外面とは、前記電線の延在方向に沿って並んでいてもよい。これにより、第1接触部がモールド部の外面に接する方向と、第2接触部が電線の外周部に接する方向とが互いに異なる方向となる。
【0014】
(3)(2)の配線部材において、前記モールド部及び前記電線に対する前記防水栓の接触状態を維持するリテーナをさらに備え、前記リテーナは、前記モールド部への固定部と、前記防水栓を保持する保持部とを含み、前記第1接触部は、前記リテーナによって前記延在方向に沿って前記モールド部に押し付けられてもよい。これにより、電線及びモールド部への防水栓の適切な接触状態が保たれやすい。
【0015】
(4)(2)又は(3)の配線部材において、前記電線が複数設けられ、板状に形成された前記防水栓に複数の貫通孔が形成され、前記複数の貫通孔のそれぞれを前記電線が貫通しており、前記複数の貫通孔それぞれの内周面が前記第2接触部とされてもよい。これにより、配線部材を構成する部品点数の増加を抑制できる。
【0016】
(5)(1)の配線部材において、前記モールド部は、本体部と、前記本体部から前記電線の延在方向に突出して前記電線の外周部を覆う筒状部とを含み、前記第1接触部は、前記筒状部の外周部に接してもよい。これにより、第1接触部がモールド部に接する方向と、第2接触部が電線に接する方向とが互いに同じ方向となる。
【0017】
(6)(5)の配線部材において、前記モールド部及び前記電線に対する前記防水栓の接触状態を維持するリテーナをさらに備え、前記リテーナは、前記モールド部への固定部と、前記防水栓を保持する保持部とを含み、前記防水栓は、前記保持部に収容されていてもよい。これにより、電線及びモールド部への防水栓の適切な接触状態が保たれやすい。
【0018】
(7)(6)の配線部材において、前記筒状部の基端部に係止受部が設けられ、前記固定部は、前記保持部から前記延在方向に沿って前記本体部に向けて延在する突出片と、前記突出片に設けられて前記係止受部に係止する係止部とを有してもよい。これにより、電線の径方向においてリテーナがモールド部よりも大きくなることを抑制できる。
【0019】
(8)(1)から(7)のいずれか1つの配線部材において、前記電線の前記第1区間における端部に端子が設けられ、前記電線の前記第2区間にシースが設けられ、前記モールド部は、前記端子を保持するコネクタハウジングとされる部分を含み、前記シースの端部は、前記防水栓及び前記リテーナと前記延在方向に沿って離れていてもよい。これにより、モールド部がコネクタハウジングとされる場合でも、モールド部と電線との隙間からの水の浸入を防水栓によって抑制でき、端子に水がかかることを抑制できる。また、防水栓及びリテーナに電線に通した状態で、電線の端部にモールド部を設けることが容易となる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかる配線部材について説明する。
図1は実施形態1にかかる配線部材10を示す平面図である。
図2は
図1のII-II線に沿った断面図である。
図3は配線部材10を示す分解斜視図である。
【0022】
配線部材10は、モールド部20と電線30と防水栓40とを備える。ここでは、配線部材10は、リテーナ50をさらに備える。配線部材10は、例えば、車両に搭載された機器同士を接続する。ここでは、配線部材10の一端部は、車両の足回りに配置された機器に接続される。かかる機器は、例えば、電動パーキングブレーキ(EPB:Electric Parking Brake)又はABS(Antilock Brake System)用の車輪速センサなどである。
【0023】
モールド部20は、電線30を覆う。モールド部20は、電線30をインサート部品として金型を用いてインサートモールド成形される。モールド部20は絶縁体である。例えば、モールド部20は、ナイロンなどの樹脂製である。モールド部20は、本体部21と係止受部25とを含む。本体部21は電線30を覆う。係止受部25は、リテーナ50との固定に用いられる。
【0024】
電線30は、第1区間と第2区間とを含む。第1区間は、モールド部20に覆われる。第2区間は、第1区間に連なる。第2区間は、モールド部20の外を延びる。電線30は、芯線31及び被覆層32を含む被覆電線である。芯線31は、導体である。芯線31は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの金属製である。被覆層32は、絶縁体である。例えば、被覆層32は、ポリエチレンなどの樹脂製である。ここでは複数(ここでは2つ)の電線30が1つのモールド部20に覆われる。ここでは、電線30の第2区間にシース33が設けられる。シース33は、樹脂などが複数の電線30の周囲に押出成形されて形成される。シース33は、例えば、ポリウレタンなどの樹脂製である。
【0025】
ここでは本体部21は、電線30の端部に設けられて、コネクタハウジングとされる。ここでは本体部21は、直方体状に形成されている。本体部21の1つの外面に相手側のコネクタと接続される接続口22が設けられている。本開示において、本体部21の外面のうち接続口22が設けられる外面を前面と称する。本体部21のうち前面とは別の外面から電線30が延び出る。ここでは、前面とは反対側の後面23から電線30が延び出る。本体部21のうち前面及び後面23とは別の側面から電線30が延び出てもよい。
【0026】
電線30の第1区間における端部に端子34が接続されている。電線30と端子34との接続態様は、特に限定されるものではなく、半田付け、圧着又は溶接などである。電線30と端子34との接続部分は本体部21に覆われる。端子34もインサート部品とされる。コネクタハウジングとしての本体部21は複数の端子34を所定の配列に保持する。電線30及び端子34は、互いに接続されて端子付き電線となった状態で、モールド部20の成形金型内に配置される。
【0027】
ここでは、端子34は、オス端子である。接続口22の内部は、複数のオス端子の先端が露出する空間とされている。本体部21のうち接続口22の内部の空間の周りを囲う部分は、フード部などとも呼ばれる。メス端子を保持する別のコネクタハウジングが接続口22に挿入されて、オス端子とメス端子とが接続される。
【0028】
係止受部25は、本体部21の外面に設けられる。ここでは係止受部25は、本体部21の外面のうち一対の側面にそれぞれ設けられる。ここでは係止受部25は、本体部21の外面の一部が凹んだ凹部とされる。
【0029】
モールド部20の外面(ここでは後面23)には、モールド部20と電線30との境界線が現れる。かかる境界線は、電線30の外周縁部に沿うように環状に延びる。本開示において、かかる境界線を環状境界線24と言う。モールド部20の後面23のうち環状境界線24の外周側に第1接触部41との接触面が設けられる。
【0030】
モールド部20の樹脂と被覆層32の樹脂とは互いに異なる種類の樹脂である。例えば、モールド部20はナイロン製であり、被覆層32はポリエチレン製である。モールド部20と被覆層32とは巨視的には接しているものの、微視的には完全に融着しておらず、モールド部20と被覆層32との間に水が浸入可能な隙間が生じている。当該隙間からの水の浸入を抑制するため、防水栓40が設けられる。
【0031】
防水栓40は、モールド部20の外側に設けられる。防水栓40はモールド部20のインサート部品とはされずに、成形後のモールド部20に外付けされる。防水栓40は、環状境界線24を覆うと共に、環状境界線24の周辺においてモールド部20及び電線30のそれぞれに接する。防水栓40は、第1接触部41と第2接触部42とを含む。第1接触部41は、環状境界線24よりも外周側でモールド部20の外面に止水可能に接する。第2接触部42は、第2区間において電線30の外周部に止水可能に接する。
【0032】
本開示において、止水可能に接するとは、接触部分において、水が浸入可能な隙間が生じないように接することを言う。上記したように、巨視的にはモールド部20及び電線30が互いに接しているが、微視的にはモールド部20と電線30との間に水が浸入可能な隙間が生じ得る。第1接触部41とモールド部20との間には隙間がないか、隙間があったとしても当該隙間はモールド部20と電線30との隙間よりも小さく、水の浸入を抑制可能である。同様に、第2接触部42と電線30との間には隙間がないか、隙間があったとしても当該隙間はモールド部20と電線30との隙間よりも小さく、水の浸入を抑制可能である。
【0033】
防水栓40は、板状に形成されている。防水栓40は、ゴムなどの弾性材料によって形成されている。防水栓40には、貫通孔43が形成されている。貫通孔43は、防水栓40を厚み方向に貫通する。防水栓40の主面のうち貫通孔43の周縁部が第1接触部41とされる。第1接触部41とモールド部20の外面における接触面とは、電線30の延在方向(モールド部20からの電線30の突出方向)に沿って並んでいる。防水栓40のうち貫通孔43の内周面が第2接触部42とされる。第2接触部42と電線30の外面における接触面とは径方向に並んでいる。電線30及び貫通孔43は共に円形状であり、貫通孔43の内径は、電線30の外径と同じかそれよりも小さい。
【0034】
ここでは防水栓40には、複数の貫通孔43が形成されている。複数の貫通孔43のそれぞれを電線30が貫通している。複数の電線30に1つの防水栓40が接触している。複数の貫通孔43それぞれの内周面が第2接触部42とされる。
【0035】
第1接触部41は、複数の貫通孔43それぞれを囲うように設けられていてもよい。つまり、複数の貫通孔43それぞれに対応するように複数の第1接触部41が設けられていてもよい。1つの第1接触部41が、複数の貫通孔43のすべてを囲うように設けられていてもよい。つまり、複数の貫通孔43が形成された1つの防水栓40に対して、第1接触部41が1つのみ設けられていてもよい。
【0036】
ここでは第1接触部41と後面23とは、平坦な面同士が接触している。第1接触部41と後面23とのうち少なくとも一方に環状凸部44が設けられていてもよい。
【0037】
リテーナ50は、モールド部20及び電線30に対する防水栓40の接触状態を維持する。リテーナ50は、固定部51と、保持部54とを含む。固定部51は、モールド部20へ固定される。保持部54は、防水栓40を保持する。第1接触部41は、リテーナ50によって電線30の延在方向に沿ってモールド部20に押し付けられる。防水栓40は、リテーナ50によって電線30の延在方向に沿って圧縮されていてもよい。リテーナ50と防水栓40とは止水可能に接していてもよいし、接していなくてもよい。
【0038】
固定部51は、突出片52と係止部53とを有する。突出片52は、保持部54から延在方向に沿ってモールド部20に向けて延在する。ここでは突出片52は、一対設けられる。係止部53は、突出片52に設けられる。係止部53は係止受部25に係止する。ここでは係止部53が凸状に形成され、係止受部25が凹状に形成されている。係止部53が凹状に形成され、係止受部25が凸状に形成されていてもよい。
【0039】
保持部54は、板状に形成されている。保持部54には挿通孔55が形成されている。挿通孔55は保持部54を厚み方向に貫通する。挿通孔55の数は電線30の数と同じである。複数の挿通孔55のそれぞれを電線30が貫通している。挿通孔55の内径は、電線30の外径と同じかそれよりも大きくてもよい。
【0040】
ここでは保持部54は防水栓40よりも大きい板状に形成されている。防水栓40は、モールド部20と保持部54との間に挟持される。保持部54には位置決め凹部56が形成されている。位置決め凹部56は、防水栓40に対応する大きさに形成されている。位置決め凹部56に防水栓40が収まる。位置決め凹部56の底に挿通孔55が形成されている。もっとも保持部54には位置決め凹部56が形成されていなくてもよい。
【0041】
保持部54のうち防水栓40と接する面(ここでは位置決め凹部56の底面)は平坦面である。保持部54のうち防水栓40と接する面に環状凸部44が設けられていてもよい。
【0042】
シース33の端部は、防水栓40及びリテーナ50と離れている。例えば、防水栓40及びリテーナ50に電線30が通されている状態で、電線30の端部にモールド部20が成形される。防水栓40及びリテーナ50が、モールド部20の成形金型に入らないように電線30の他端側に退避した状態で、モールド部20が成形される。
【0043】
モールド部20の成形後に、防水栓40及びリテーナ50が電線30に沿ってモールド部20に向けて移動される。防水栓40が後面23に接すると共に、係止部53が係止受部25に係止することによって、配線部材10とされる。
【0044】
シース33の端部が、防水栓40及びリテーナ50と離れていることによって、防水栓40及びリテーナ50が電線30の他端側に退避することが容易となる。電線30の他端側に退避する防水栓40及びリテーナ50はシース33の端部で止められ、シース33の端部より他端側には移動困難とされる。シース33の端部と、防水栓40及びリテーナ50との間隔は、防水栓40及びリテーナ50を退避させる長さ寸法などに応じて適宜設定可能である。
【0045】
以上のように構成された配線部材10によると、第1接触部41の外側の水がモールド部20の外面を伝って環状境界線24まで達することが、第1接触部41によって抑制される。また、第2接触部42の外側の水が電線30の外面を伝って環状境界線24まで達することが、第2接触部42によって抑制される。これらより、環状境界線24への水の浸入が、モールド部20の外側に設けられた防水栓40によって抑制されることから、防水栓40をインサート部品とせずとも、モールド部20と電線30との隙間からの水の浸入を抑制できる。
【0046】
また、第1接触部41と前記外面とは、前記電線30の延在方向に沿って並んでいる。これにより、第1接触部41がモールド部20の外面に接する方向と、第2接触部42が電線30の外周部に接する方向とが互いに異なる方向となる。
【0047】
また、モールド部20及び電線30に対する防水栓40の接触状態を維持するリテーナ50をさらに備え、第1接触部41は、リテーナ50によって延在方向に沿ってモールド部20に押し付けられる。これにより、電線30及びモールド部20への防水栓40の適切な接触状態が保たれやすい。
【0048】
また、複数の貫通孔43それぞれの内周面が第2接触部42とされる。これにより、配線部材10を構成する部品点数の増加を抑制できる。
【0049】
また、モールド部20が端子34を保持するコネクタハウジングとされる部分を含むことによって、モールド部20がコネクタハウジングとされる場合でも、モールド部20と電線30との隙間からの水の浸入を防水栓40によって抑制でき、端子34に水がかかることを抑制できる。また、シース33の端部が防水栓40及びリテーナ50と離れていることによって、防水栓40及びリテーナ50に電線30に通した状態で、電線30の端部にモールド部20を設けることが容易となる。
【0050】
[実施形態2]
実施形態2にかかる配線部材について説明する。
図4は実施形態2にかかる配線部材110を示す平面図である。
図5は
図4のV-V線に沿った断面図である。
図6は配線部材110を示す分解斜視図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
配線部材110において、モールド部120、防水栓140及びリテーナ150の形状が、上記モールド部20、防水栓40及びリテーナ50の形状とは異なる。
【0052】
モールド部120は、本体部21及び係止受部25に加えて筒状部26をさらに含む。筒状部26は、本体部21の後面23から電線30の延在方向に突出して電線30の外周部を覆う。筒状部26は、第1筒部分27と第2筒部分28とを有する。第1筒部分27は本体部21の後面23から突出する。第2筒部分28は第1筒部分27の先端から突出する。第2筒部分28の先端面から電線30が突出する。環状境界線24は第2筒部分28の先端面に設けられている。第1筒部分27は第2筒部分28よりも太い。第1筒部分27は、四角筒状に形成されている。ここでは第1筒部分27の横断面は正方形状に形成されている。第2筒部分28は、円筒状に形成されている。
【0053】
ここでは係止受部25は本体部21に設けられておらず、筒状部26に設けられている。係止受部25は筒状部26の基端部(ここでは第1筒部分27)に設けられる。係止受部25は、第1筒部分27の四面にそれぞれ設けられる。
【0054】
防水栓140は、電線30ごとに別に設けられている。第1接触部141は、筒状部26の外周部に止水可能に接する。ここでは第1接触部141は、第2筒部分28の外周部に止水可能に接する。防水栓140は、第1接触部141と第2接触部142とが延在方向に連続する形状に形成されている。ここでは、防水栓140の内周面及び外周面のそれぞれは、環状凸部44と環状凹部45とが軸方向に交互に連続する形状に形成されている。内周面の環状凸部44と外周面の環状凸部44とが軸方向に同じ位置に設けられている。内周面の環状凹部45と外周面の環状凹部45とが軸方向に互いに同じ位置に設けられている。防水栓140の軸方向一端側部分の内周面における環状凸部44が第1接触部141となり、軸方向他端側部分の内周面における環状凸部44が第2接触部142となっている。
【0055】
筒状部26の外周部は、電線30の外周部よりも太い。電線30及び筒状部26に装着される前の防水栓40において、第1接触部141の内径と第2接触部142の内径とが互いに異なってもよいし、同じであってもよい。電線30及び筒状部26に装着される前の防水栓140において、第1接触部141の外径と第2接触部142の外径とが互いに異なってもよいし、同じであってもよい。
【0056】
リテーナ150も、電線30ごとに別に設けられている。1つの防水栓140が1つのリテーナ150の保持部154に収容されている。
【0057】
保持部154は筒部57及び底部58を有する。筒部57は円筒状に形成されている。筒部57に防水栓140が収容されている。ここでは筒部57において、第1接触部141を収容する部分の横断面形状と第2接触部142を収容する部分の横断面形状とが同一形状とされている。筒部57において、第1接触部141を収容する部分の横断面形状と第2接触部142を収容する部分の横断面形状とが互いに異なる形状であってもよい。例えば、筒部57において、第1接触部141を収容する部分の内径が第2接触部142を収容する部分の内径よりも大きくてもよい。筒部57の内径は、第1筒部分27の正方形の一辺の長さと同程度である。筒部57の外径は、第1筒部分27の正方形の対角線の長さと同程度である。
【0058】
筒部57の一端部(軸方向に沿って本体部21側の端部)には底部58は設けられていない。底部58は筒部57の他端部に設けられている。底部58は筒部57の開口を狭める。底部58に1つの挿通孔55が形成されている。挿通孔55を電線30が貫通している。筒部57の一端部は他端部よりも大きく開口している。筒部57の一端部の開口を通じて筒部57内に防水栓40が収められる。防水栓140は底部58に当たって位置決めされる。筒部57の一端部における開口縁部は、第1筒部分27の正方形の角部分に当たる。これにより、本体部21側へのリテーナ150の移動が規制される。
【0059】
第1接触部141は、リテーナ150によって径方向に圧縮されていてもよいし、圧縮されていなくてもよい。第2接触部142は、リテーナ150によって径方向に圧縮されていてもよいし、圧縮されていなくてもよい。防水栓140が径方向に圧縮される場合、圧縮前の防水栓140の内径(環状凸部44の内径)が電線30及び第2筒部分28の外径よりも小さく形成されると共に、圧縮前の防水栓140の外径(環状凸部44の外径)が筒部57の内径よりも小さく形成されているとよい。防水栓140は、リテーナ150によって軸方向に圧縮されていてもよいし、圧縮されていなくてもよい。防水栓140が軸方向に圧縮される場合、圧縮前の防水栓140の軸方向の長さが、リテーナ150が筒状部26に固定されたときの底部58と第1筒部分27の先端面との間隔よりも小さく形成されているとよい。
【0060】
固定部151は、保持部154から突出する4つの突出片52を有する。4つの突出片52それぞれの係止部53が、第1筒部分27の四面の係止受部25のうち対応する係止受部25に係止する。
【0061】
このように構成された配線部材110によっても、上記配線部材10と同様に、第1接触部141の外側の水がモールド部120の外面を伝って環状境界線24まで達することが、第1接触部141によって抑制される。また、第2接触部142の外側の水が電線30の外面を伝って環状境界線24まで達することが、第2接触部142によって抑制される。これらより、環状境界線24への水の浸入が、モールド部120の外側に設けられた防水栓140によって抑制されることから、防水栓140をインサート部品とせずとも、モールド部120と電線30との隙間からの水の浸入を抑制できる。また、モールド部120がコネクタハウジングとされる場合でも、モールド部120と電線30との隙間からの水の浸入を防水栓140によって抑制でき、端子34に水がかかることを抑制できる。また、防水栓140及びリテーナ150がシース33の端部から離れているため、防水栓140及びリテーナ150を電線30に通した状態で、電線30の端部にモールド部120を設けることが容易となる。
【0062】
また、配線部材110によると、第1接触部141は、筒状部26の外周部に接する。これにより、第1接触部141がモールド部120に接する方向と、第2接触部142が電線30に接する方向とが互いに同じ方向となる。
【0063】
また、モールド部120及び電線30に対する防水栓140の接触状態を維持するリテーナ150をさらに備え、防水栓140は保持部154に収容されている。これにより、防水栓140は、筒状部26及び電線30に対して所定の位置に位置決めされ、電線30及びモールド部120への防水栓140の適切な接触状態が保たれやすい。
【0064】
また、筒状部26の基端部に係止受部25が設けられ、固定部151は、保持部154から軸方向に沿って本体部21に向けて延在する突出片52と、突出片52に設けられて係止受部25に係止する係止部53とを有する。これにより、電線30の径方向においてリテーナ150がモールド部120よりも大きくなることを抑制できる。
【0065】
[付記]
実施形態1において、1つの防水栓40が複数の電線30に対応するように設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。実施形態2のように、防水栓が電線30ごとに設けられていてもよい。同様に、実施形態1において、1つのリテーナ50が複数の電線30に対応するように設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。実施形態2のように、リテーナが電線30ごとに設けられていてもよい。
【0066】
実施形態2において、防水栓140が電線30ごとに設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。実施形態1のように、1つの防水栓が複数の電線30に対応するように設けられていてもよい。同様に、実施形態2において、リテーナ150が電線30ごとに設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。実施形態1のように、1つのリテーナが複数の電線30に対応するように設けられていてもよい。
【0067】
またこれまで、防水栓40、140の数と、リテーナ50、150の数とが同数であるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。例えば、1つの防水栓が複数の電線30に対応するように設けられ、かつ、リテーナが電線30ごとに設けられていてもよい。また例えば、防水栓が電線30ごとに設けられ、かつ、1つのリテーナが複数の電線30に対応するように設けられていてもよい。
【0068】
またこれまで、配線部材10、110がリテーナ50、150を備えるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。配線部材がリテーナを備えていなくてもよい。
【0069】
またこれまで、防水栓40、140において、第1接触部41、141と第2接触部42、142とを1つの部材に備えるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。第1接触部41、141を含む部材と、第2接触部42、142を含む部材とが別に設けられていてもよい。
【0070】
またこれまで、モールド部20、120は、電線30の端部に設けられて、コネクタハウジングとされる部分を含むものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。モールド部は、複数の電線30の分岐部に設けられて、各電線30の伸長方向を保持するものであってもよい。
【0071】
またこれまで、電線30の第2区間にシース33が設けられるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。電線30の第2区間にシース33が設けられていなくてもよい。
【0072】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0073】
10、110 配線部材
20、120 モールド部
21 本体部
22 接続口
23 後面
24 環状境界線
25 係止受部
26 筒状部
27 第1筒部分
28 第2筒部分
30 電線
31 芯線
32 被覆層
33 シース
34 端子
40、140 防水栓
41、141 第1接触部
42、142 第2接触部
43 貫通孔
44 環状凸部
45 環状凹部
50、150 リテーナ
51、151 固定部
52 突出片
53 係止部
54、154 保持部
55 挿通孔
56 位置決め凹部
57 筒部
58 底部