(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005619
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】自転車用チャイルドシートカバー
(51)【国際特許分類】
B62J 1/00 20060101AFI20240110BHJP
B62J 1/16 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B62J1/00 D
B62J1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105884
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】503356451
【氏名又は名称】株式会社大久保製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100135437
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 哲三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 富彦
(72)【発明者】
【氏名】萩藤 紘行
(57)【要約】
【課題】シートの前面開閉部での幼児の乗り降りを容易にする
【解決手段】自転車のハンドルに固定され、ヘッドレストHを有する前部チャイルドシートの略全体を被覆することができ、幼児を内部のシートに着席させ且つ降ろすための前面開閉部を有するカバーである。当該カバーの背面部13内側に差し込み片25を設け、この差し込み片25を差し込むことができる差し込み受部23がその後面に設けられ、前記カバーとは別体に形成された固定部材20を前記ヘッドレストHの後面に装着する。この固定部材20の差し込み受部23に前記差し込み片25を差し込むことにより、カバーが適宜高さ位置に確保されてシートに装着される。シート内部に幼児を着席させ及び降ろす際には、前記差し込み片25を前記差し込み受部23から抜脱することによりシートの前面開閉部が斜め後方又は下方に移行するようにした。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のハンドル部に固定され、ヘッドレストを有する前部チャイルドシートの略全体を被覆することができ、幼児を内部のシートに着席させ且つ幼児をシートから外部に降ろすことができる前面開閉部を有するチャイルドシートカバーにおいて、
当該カバーの背面部内側に差し込み片を設け、
この差し込み片を差し込むことができる差し込み受部がその後面部に設けられ、前記カバーとは別体に形成された固定部材を前記ヘッドレストの背面部に装着し、
この固定部材の差し込み受部に前記カバーの背面部内側に設けた差し込み片を差し込むことにより、チャイルドシートカバーが適宜高さ位置に確保されてシートに装着され、
シート内部に幼児を着席させ及び降ろす際には、前記差し込み片を前記差し込み受部から抜脱することによりチャイルドシートの前面開閉部の上縁部が斜め後方に移行するようにしたことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項2】
請求項1において、前記差し込み受部が固定部材の後面部で上下に移動できるようにしたことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記固定部材に帯状部材を少なくとも2本縦方向に設け、これら帯状部材をチャイルドシートのヘッドレストに巻回して固定することによってこの固定部材をヘッドレストの背面部に装着できることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項4】
請求項1において、前記差し込み片を前記固定部材の後面部側に、前記差し込み受部をチャイルドシートカバーの背面部内側に設けたことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバー。
【請求項5】
請求項1において、チャイルドシートカバーが、自転車の後部荷台部に固定され、ヘッドレストを有する後部チャイルドシートの略全体を被覆することができ、幼児を内部のシートに着席させ且つ幼児をシートから外部に降ろすことができる前面開閉部を有するものであることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車のハンドル部中央に取り付け固定される後付けの前部チャイルドシートのほぼ全体を被覆することができる前部チャイルドシートカバーの改良に関するものであるが、自転車の荷台部に固定された後部チャイルドシートのカバーにも適用できるものである。
【背景技術】
【0002】
自転車用チャイルドシートカバーには、ハンドル部又は荷台部に固定された前部又は後部チャイルドシートの座部の底面部を除く略全体を被覆することができる各種形態のチャイルドシートカバーが市販されている。
下記特許文献に記載の発明は全て本願出願人が先に提案したものであるが、下記特許文献1に記載の発明は、後部チャイルドシートカバーに関するものであり、カバー内部の温度上昇及び蒸し暑さを低減させることを目的としたものである。
【0003】
その構成は、自転車の後部荷台に固定したチャイルドシートの全体を被覆できる底面開口のボックス形状を有し、前面部に透明部を設け、前面部と一方の側面部の境界線部にスライドファスナーを設け、両側面部の前面部側にはそれぞれ外気導入口を設け、背面部には排気口を設けている。更に、前面部の下方部分に横方向の全体にスライドファスナーの開閉による第2外気導入口を設けたものである。
【0004】
下記特許文献2に記載の発明は、幼児が着席した使用状態であっても、幼児と共にその全体を被覆できる前部チャイルドシートカバーに関するものである。
その構成は、カバー本体部がシートの全体を被覆でき、上面開口部に開閉自在の閉鎖シート部材を設け、更に、前記本体部に開閉カバー部材を着脱自在に連結したものから成る。この開閉カバー部材は透明の前面部を有し、その前方側面部である連結部の内側の係着部を本体部の係止具受部に係着することにより相互に連結できる。これにより本体部の閉鎖シート部材を巻回して開放し、この閉鎖シート部材を集束部材によって括り留めた状態で幼児をチャイルドシートに着席させ、開閉カバー部材の背面部をチャイルドシートの伸張したヘッドレストの上縁部に引っ掛けるように被覆することができるものである。
【0005】
この前部チャイルドシートカバーにおいては、上面開口部を閉鎖する閉鎖シート部材を無くして構成することもでき、その際は、開閉カバー部材を常時その前端部で本体部に連結しておけばよいものである。
【0006】
上記従来の前後何れのチャイルドシートカバーにおいても、その透明の前面部には窓部(前面開閉部)が設けられていないが、現在市販されているものは、この前面透明部分に上方に捲り上げることができる窓部が形成されているものが存在する。
より詳しくは、チャイルドシートカバーの前面部において、その上辺が天部に連続し、その両側辺と下辺の3辺が前面部と分離して窓部が形成され、この窓部の3辺はスライドファスナー等によって開閉される構成を有して、スライドファスナーを開放して上方に捲り上げるようにして窓部を開放することができるものである。
【0007】
このように窓部を前面部に設けたのは、チャイルドシートカバーをシートに装着した状態で、雨が上った際に、カバーを外す手間を無くし、カバー内部に外気を導入させ、内部の温度上昇を低減させるためである。
通常、このようなチャイルドシートカバーは、降雨時に使用するためのものとして開発されたのであるが、一旦これをシートに装着してしまうと、これを取り外す手間が掛り、カバーを装着したままで使用するということが常態と成って来たのである。
【0008】
従って、降雨時以外でもそのまま快適に使用できるようにするために、カバー前面部に大きな窓部が形成されたものが一般的になったのである。
この窓部となる前面開閉部が幼児のカバー内への着席及びカバー外への下車の際にも出入口として使用されるようにもなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-28617号公報
【特許文献2】特開2014-37236号公報
【特許文献3】特開2016-130073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献3に関しても本願出願人が先に提案したものであるが、上記従来のチャイルドシートカバーと同様に、これを装着したままの状態で、自転車の不使用時は勿論のこと、雨天、強風又は寒冷時、若しくは晴天時のどのような天候の際にも、幼児を乗せて使用することができるものを提供することをその基本としている。
【0011】
そして、この第3の従来例では、チャイルドシートに幼児を腰掛けさせた際に、その幼児の頭頂部ができる限りカバーの天部に接触しないようにすること、仮に接触しても幼児の頭頂部にカバーの重みがあまり掛らないようなチャイルドシートカバーを提供することをその課題としていた。
【0012】
更に、上記第3従来例では、幼児の座高も高低様々であり、これに対応できることもその課題とし、チャイルドシートカバー自体の外形形状もそれ自身で自立できるものとしてより保形性の高いものを提供することもその課題とした。
【0013】
上記課題を解決するために、上記第3の従来例においては、自転車のハンドル部に固定され、上下動自在のヘッドレストを有するチャイルドシートの略全体を被覆することができるチャイルドシートカバーにおいて、当該カバーの背面部内側には係着部材が設けられ、この係着部材と係着することができる係着部材がその後面に設けられ、前記カバーとは別体に形成された固定部材をチャイルドシートのヘッドレストの背面部に装着し、この固定部材の係着部材と前記カバーの背面部内側に設けた係着部材を相互に係着することにより、チャイルドシートカバーの背面部が適宜高さ位置に確保されることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーを提案した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明においては、前部又は後部チャイルドシートカバーにおいて、前面窓部である前面開閉部を幼児の出入口にするタイプのチャイルドシートカバーにおいて当該前面開閉部での幼児の乗り降りを容易にすることをその第一の課題としている。
従来のカバーでは、上記前面開口部を天部の上に捲り上げて、幼児をカバー内部に入れたり外部に出したりするのであるが、その際にカバーの天部の前縁部が邪魔となって幼児の頭部が開閉窓部(前面開閉部)の上縁部に引っ掛かり、出入りの障害となっていたのである。
この出入りの障害を簡単に無くすることが本発明の第一の課題となる。
【0015】
更には、幼児を着席させていない時、自転車運転者は前部カバーの天部は一番高位置に位置しているため、前方が見難く、運転がし難いという問題もあった。
以上の問題を解決するために本発明では前記固定部材とカバーとの固定方法乃至は取り付け方法を改良し以下の発明に至ったのである。
【0016】
本発明の第1のものは、自転車のハンドル部に固定され、ヘッドレストを有する前部チャイルドシートの略全体を被覆することができ、幼児を内部のシートに着席させ且つ幼児をシートから外部に降ろすことができる前面開閉部を有するチャイルドシートカバーにおいて、当該カバーの背面部内側に差し込み片を設け、この差し込み片を差し込むことができる差し込み受部がその後面部に設けられ、前記カバーとは別体に形成された固定部材を前記ヘッドレストの背面部に装着し、この固定部材の差し込み受部に前記カバーの背面部内側に設けた差し込み片を差し込むことにより、チャイルドシートカバーが適宜高さ位置に確保されてシートに装着され、シート内部に幼児を着席させ及び降ろす際には、前記差し込み片を前記差し込み受部から抜脱することによりチャイルドシートの前面開閉部の上縁部が斜め後方に移行するようにしたことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0017】
本発明の第2のものは、上記第1の発明において、前記差し込み受部が固定部材の後面部で上下に移動できるようにしたことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0018】
本発明の第3のものは、上記第1又は第2の発明において、前記固定部材に帯状部材を少なくとも2本縦方向に設け、これら帯状部材をチャイルドシートのヘッドレストに巻回して固定することによってこの固定部材をヘッドレストの背面部に装着できることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0019】
本発明の第4のものは、上記第1の発明において、前記差し込み片を前記固定部材の後面部側に、前記差し込み受部をチャイルドシートカバーの背面部内側に設けたことを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【0020】
本発明の第5のものは、上記第1の発明において、チャイルドシートカバーが、自転車の後部荷台部に固定され、ヘッドレストを有する後部チャイルドシートの略全体を被覆することができ、幼児を内部のシートに着席させ且つ幼児をシートから外部に降ろすことができる前面開閉部を有するものであることを特徴とする自転車用チャイルドシートカバーである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の第1のものにおいては、チャイルドシートカバー(以下、単に「カバー」という。)の背面部の内側に差し込み片が設けられ、この差し込み片が差し込まれる差し込み受部がその後面部に設けられた固定部材がカバーとは別体に形成され、この固定部材をシートのヘッドレストの背面部に装着しているため、この固定部材の差し込み受部にカバー側の差し込み片を差し込むことにより、容易にカバーの背面部が適宜高さ位置に確保され、即ち、カバー全体が所定の高さ位置に確保されることとなるのである。
【0022】
更に、シート内部に幼児を着席させ及び降ろす際には、前記差し込み片を前記差し込み受部から抜脱することによりチャイルドシートの前面開閉部が斜め後方に移行するようにしたため、この前面開閉部を出入口としているカバーでは、幼児の出入りを容易に行うことが出来ることとなるのである。
【0023】
また、幼児がシートを利用していない場合には、前記差し込み片を前記差し込み受部から抜脱することによりカバーの前面開閉部が斜め後方に移行するため、その天部も下方に下降することとなり、前部カバーの場合には自転車運転者の前方部の視界が開け、運転し易くなるし、カバー天部が邪魔にならないこととなるのである。
【0024】
本発明の第2のものにおいては、上記差し込み受部をより限定したものである。
即ち、前記差し込み受部が固定部材の後面部で上下に移動できるようにしたのである。
これにより、カバー天部の高さを高低自在に変更することが出来ることとなる。
【0025】
本発明の第3のものは、前記固定部材について帯状部材を少なくとも2本縦方向に設け、これら帯状部材をチャイルドシートのヘッドレストに巻回して固定することによってこの固定部材をヘッドレストの背面部に装着できるように特定したものである。
固定部材の装着手段を具体化したものである。
【0026】
本発明の第4のものにおいては、前記差し込み片を前記固定部材の側に、前記差し込み受部を前部チャイルドシートカバーの背面部内側に設けたことを特定したものであり、上記第1の発明と逆に差し込み片と差し込み受部を設けたものである。
この場合には、固定部材側に設ける差し込み片は上向きに延長するように設ける必要があるが、その原理は第1の発明と全く同じである。
【0027】
本発明の第5のものにおいては、上記第1の発明において、チャイルドシートカバーが、自転車の後部荷台部に固定され、ヘッドレストを有する後部チャイルドシートの略全体を被覆することができ、幼児を内部のシートに着席させ且つ幼児をシートから外部に降ろすことができる前面開閉部を有するものであることを特定したものである。
後部チャイルドシートカバーにおいては従来から前面部と側面部との縦方向境界部を開閉自在として幼児の出入口としているが、前面開閉部を有するものであれば、本発明に係るカバーは後部チャイルドシートカバーにも適用できるためにこの第5の発明として権利請求したものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る前部チャイルドシートカバーの一実施形態を図示する説明図であって、内部に幼児(図示省略)を着席させ、前面開閉部を上に開放した状態を示している。
【
図2】上記実施形態に係る前部チャイルドシートカバーの固定部材への係合を外し、カバーを斜め下方に下降させた状態を図示する説明図である。
【
図3】上記実施形態に係るカバーを装着し、運転者が乗車した状態を示す説明図である。
【
図4】上記実施形態に係るカバーの固定部材への係合を外し、カバーを斜め下方に下降させて、運転者が乗車した状態を示す説明図である。
【
図5】上記実施形態に係るカバーの係合装着について説明する説明図であって、固定部材の後面部側とカバーの背面部内側を図示したものである。
【
図6】上記実施形態に係るカバーの固定部材を後方側から視た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下添付の図面と共に、本発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明に係る前部チャイルドシートカバーの一実施形態を図示する説明図であって、内部に幼児(図示省略)を着席させ、前面開閉部を上に開放した状態を示している。
【0030】
この前部チャイルドシートカバー10は、ハンドルに後付けするタイプの前部チャイルドシートSのほぼ全体を被覆することができる。
その全体は、前面部11、天部12、背面部13、両側面部14、14とから構成されている。
【0031】
前面部11の上方部分には開閉自在の前面開閉部11wが設けられ、この前面開閉部11wは窓部となり、内部に幼児を着席させるための出入口となる。
従って、この前面開閉部11wは透明素材から形成され、同様に天部12、背面部13の上方部分、及び両側面部14、14の上方部分も透明素材から形成されている。
【0032】
即ち、内部に幼児が着席した際には、その頭部の全外周部が透明の素材により囲繞され、外部を見通すことができ、開放感のある構成を採用している。
両側面部14のハンドルグリップGの対応位置にはハンドル挿通口15が設けられ、ハンドルグリップ、ブレーキ及びブレーキワイヤー等を挿通させることができる。
【0033】
上記前部チャイルドシートカバー10をチャイルドシートSに装着するには、カバーとは別体の固定部材20を使用する。
この固定部材20は略矩形形状の薄い可撓性を有するプレートから成り、このプレートの両側縦方向に2本設けたベルト部材21、21をチャイルドシートSのヘッドレストHの後面側に重ね合わせた後に、巻き付けてアジャスターバックルや面ファスナー等を利用して固定できる。
【0034】
上記ベルト部材21をヘッドレストHに巻き付ける際には、ヘッドレストHに設けられているシートベルトBが装着されている穴部を利用することができる。
そして、上記固定部材20の後面部には、
図1には表れていないが、後に説明する差し込み受部が設けられており、この差し込み受部にカバーの背面部13の内面に設けられている差し込み片を差し込んでカバー10をシートSに装着することができる。
差し込み片と差し込み受け部についての詳細は後に説明する。
【0035】
図2は、上記実施形態に係る前部チャイルドシートカバーの固定部材への係合を外し、カバーを斜め下方に下降させた状態を図示する説明図である。
上で簡単に説明したが、固定部材に設けられた差し込み受部からカバーに設けられた差し込み片を抜脱すると、この
図2に示した状態となる。
【0036】
即ち、チャイルドシートSのヘッドレストHの背面(後面)部に固定した固定部材20の後面部に設けた差し込み受部からカバー10の背面部14の内面に設けた差し込み片を抜脱すると、カバー10全体が斜め後方又は下方にずれて
図2の状態となる。
【0037】
即ち、前面開閉部14の開口上縁部がヘッドレストHの上縁部の上に位置することとなる。
上記差し込み片と差し込み受部との係合が成されている際には、
図1に示した通り、前面開閉部14の開口の上縁部は、ヘッドレストHの上方かつ前方位置に位置することとなる。
【0038】
従って、
図1の状態では幼児を内部のシートに着席させる際には幼児の頭部が前面開閉部14の開口上縁部に接触してしまい、着席させ難くなるのであるが、
図2の状態とすることにより幼児頭部は前面開閉部14wの開口上縁部に接触することはなく、幼児を内部のシートSに着席させ易くなるのである。
【0039】
図3は、上記実施形態に係るカバーを装着し、運転者が乗車した状態を示す説明図である。
図4は、上記実施形態に係るカバーの固定部材への係合を外し、カバーを斜め下方に下降させて、運転者が乗車した状態を示す説明図である。
【0040】
これら2図により自転車運転者とカバーの位置関係が明確となる。
図3は、
図1の状態で運転者がサドルに腰掛けた状態であり、
図4は
図2の状態で運転者がサドルに腰掛けた状態である。
【0041】
図3の状態は、幼児(図示省略)を内部のシートに着席した状態で自転車運転者が運転している状態である。この状態で、前面開閉部11wは開放していても閉鎖していても何れでもよく、雨天の場合には閉鎖すればよいし、晴天の場合には開放して置けばよい。
従って、自転車運転者は、カバー天部11wが顔のすぐ前面に位置することとなり、前方の視界の内下方部分が遮られるが、カバー上方部分を透明にしていることからこの問題は解決される。
【0042】
他方、幼児を内部のシートSに着席させていない時は、
図4に図示したように、カバー10の天部11wを下方又は斜め後ろ下方に移行させることができるために、前方の視界は全面的に開放されるし、この状態にして幼児の乗降を容易に行うことも出来るのである。
【0043】
図5は、上記実施形態に係るカバーの係合装着について説明する説明図であって、固定部材の後面部側とカバーの背面部内側を図示したものである。
図6は、上記実施形態に係るカバーの固定部材を後方側から視た説明図である。
【0044】
これらの両図面から本発明に係るカバー装着手段が明確となる。
本発明に係る固定部材20は後方から見て略矩形形状をした合成樹脂製の可撓性を有するプレート(板状)のものからなる。
この固定部材の4つの角部はアールを持って形成されている。
この固定部材の形状は、上記矩形形状ばかりでなく、H字形状、横向H字形状、或いは格子形状、梯子形状等々、様々な形状・形態のものとすることができる。
【0045】
この固定部材20は、その両側の縦方向に設けた一対(2本)の帯状部材21、21によりシートのヘッドレストに巻回して固定することができる。
即ち、この帯状部材21の一方端部にはアジャスターバックル22が固定されており、このアジャスターバックル22の少し上方部でこの帯状部材21は固定部材に固着され、その他方端部をヘッドレストの後面側から前面側に巻回し、シートベルトの穴部を挿通させて後面側に引き出して上記アジャスターバックル22に挿通して固定できる。
【0046】
固定部材20の後面部には差し込み受部23が設けられている。
この差し込み受部23は、幅広の適宜厚みを有する布製のものからなり、即ち、形状変更し難い程度の厚みと強度を有するものから成り、その両側部に起立部を形成して固定部材20の後面部に固定されている。
従って、この差し込み受部23は、所定幅と後方への所定高さを持った穴部23hを形成する。
【0047】
固定部材20への差し込み受部23の固定は、雌雄留めホックを利用している。
即ち、固定部材20の後面の両側に4個の雄ホック24mを、差し込み受部23の両側に設けた雌留めホック24fを2個設け、固定部材20の雄留めホック24mの何れかを選択して差し込み受部23の雌留めホック24fを相互に係止することにより上下高さを選択しつつ固定することができる。
【0048】
雌雄留めホックは、雌雄何れかを固定部材20に又は差し込み受部23に設けることができ、自由に選択することができる。
【0049】
この差し込み受部23の穴部23hにカバーの背面部13の内面に設けた差し込み片25が差し込まれるのである。
これによって、カバーはその全体の高さ位置が確保され、シートに装着されることとなるのである。
【0050】
他方、上記差し込み片25を差し込み受部23の穴部23hから抜脱すると、カバーの天部は下方に又は斜め後ろ下方に下降するのである。
尚、カバーの下端縁部には挿通孔が設けられ、その挿通孔内に伸縮自在のゴム紐等が挿通されているために、カバーが下方に下がっても、カバーの下端部は上記ゴム紐等によりシートの底面部の中央部側に収束し、下方に垂れ下がることはない。
【0051】
差し込み片25は、背面部13に掛け渡された支持枠又は支持帯の中央部に固定され、当該支持帯等が設けられた背面部13には横方向に切れ目が設けられているために、その外側の支持枠又は支持帯を把持して、当該差し込み片25の根本部を把持して容易に前記差し込み受部23の穴部23hに差し込むことができる。
【0052】
また、差し込み片25は、厚地の生地から形成され、内部に芯材を配設しても良く、その形状は
図5に示した通り下方先端部が略円弧状をした舌形状を有しているが、この形状は自由に設計変更することができる。
その形状は自由であり、適宜下方延長長さを有するものが好適である。振動によって差し込み片25が差し込み受部の穴部から容易に抜脱しないためである。
【0053】
最後に、本発明における差し込み片は、これを固定部材の後面部に設け、差し込み受部をカバー背面部の内側に設けて実施することも可能である。
この場合には差し込み片は上向きに設ける必要があり、他方、差し込み受部はカバー背面部内側に例えば帯状部材又は枠部材を横方向に掛け渡し、後者の帯状部材又は枠部材を前者の開放部が上向きの差し込み片に引っ掛けて実施することも可能である。
【0054】
以上、実施形態について説明したが、以下の通り種々設計変更することができる。
本発明においては、固定部材を用いたチャイルドシートカバーであって、その固定部材とシートとの着脱自在の連結構造が最大の特徴となっており、その他のカバーの構造、形状等々は自由に設計変更することができる。
【0055】
即ち、カバーは、チャイルドシートのほぼ全体を被覆でき、少なくとも前面部に幼児の出入口としての前面開閉部を設けた形態のものであれば、その他の構成は自由に選択することができ、前部カバー又は後部カバーの何れのものについても適用できる。
カバー全体を一体的に形成したものや、カバーを上下の2分割にした2ピースタイプのものであってもよいし、外気導入口や排気口を設けたり、透明部の配設位置、カバーを立体形状とするための骨組の配設等々についても自由に設計変更することができる。
大きさ、形状、素材の選択も自由である。
【0056】
以上、本発明は、自転車のチャイルドシートに被覆して使用できるチャイルドシートカバーであって、その背面部内側に設けた差し込み片をヘッドレスト背面に固定された固定部材に設けた差し込み受部に差し込み且つ抜脱することによって、内部に着席させる幼児の出入口である前面開閉部を下方に又は斜め下方に移動させ幼児の出入りをしやすくし、尚且つ、前部カバーでは、幼児を乗せていない時にはカバーの天部を下方に下降させて運転することもできる極めて便利なチャイルドシートカバーを提供することができたものである。
【符号の説明】
【0057】
10 前部チャイルドシートカバー
11 前面部
11w 前面開閉部
12 天部
13 背面部
14 側面部
15 ハンドル挿通孔
20 固定部材
21 帯状部材
22 アジャスターバックル
23 差し込み受部
23h 穴部
24f 雌留めホック
24m 雄留めホック
25 差し込み片
G ハンドルグリップ
S チャイルドシート
H ヘッドレスト