(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005621
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】水中探知装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/521 20060101AFI20240110BHJP
G01S 15/96 20060101ALI20240110BHJP
G01S 7/524 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01S7/521 Z
G01S15/96
G01S7/524 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105886
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】海老田 祐司
(72)【発明者】
【氏名】道上 法正
【テーマコード(参考)】
5J083
【Fターム(参考)】
5J083AA02
5J083AB01
5J083AB08
5J083AC32
5J083AF16
5J083BA01
5J083BC01
5J083BD05
5J083BD12
5J083CA03
5J083CA12
(57)【要約】
【課題】送波用の超音波振動子と受波用の超音波振動子が個別に配置される構成において、これら超音波振動子と送信回路および受信回路とを接続するケーブルの芯数を減少させることが可能な水中探知装置を提供する。
【解決手段】水中探知装置は、送信用の第1超音波振動子111と、受信用の第2超音波振動子121と、第1超音波振動子111に供給される送信信号を生成する送信回路211と、第2超音波振動子121から出力される受信信号を処理する受信回路221と、第1超音波振動子111および第2超音波振動子121と、送信回路211および受信回路221との間に介在するケーブル30と、ケーブル30の前段および後段にそれぞれ配置され、送信回路211と第1超音波振動子111との信号線、および、第2超音波振動子121と受信回路221との信号線を共通化させるための第1トラップ回路241および第2トラップ回路141と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信波を送波する第1超音波振動子と、
前記送信波の反射波を受波する第2超音波振動子と、
前記第1超音波振動子に供給される送信信号を生成する送信回路と、
前記第2超音波振動子から出力される受信信号を処理する受信回路と、
前記第1超音波振動子および前記第2超音波振動子と、前記送信回路および前記受信回路との間に介在するケーブルと、
前記ケーブルの前段および後段にそれぞれ配置され、前記送信回路と前記第1超音波振動子との信号線、および、前記第2超音波振動子と前記受信回路との信号線を共通化させるための第1トラップ回路および第2トラップ回路と、を備える、
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水中探知装置において、
前記第1超音波振動子を有する送波器および前記第2超音波振動子を有する受波器を、同期させて回転させる駆動部と、
前記ケーブルと前記第2トラップ回路との間に配置されたスリップリングと、を備える、
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項3】
請求項1に記載の水中探知装置において、
前記送信回路、前記受信回路、前記第1超音波振動子および前記第2超音波振動子の組を複数備え、
前記組ごとに、前記第1トラップ回路および前記第2トラップ回路を備える、
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項4】
請求項1に記載の水中探知装置において、
前記第2トラップ回路は、コンデンサ方式のトラップ回路であり、
前記第2トラップ回路のコンデンサは、前記第2超音波振動子のマッチング回路のコンデンサに共用されている、
ことを特徴とする水中探知装置。
【請求項5】
請求項1に記載の水中探知装置において、
前記送信回路および前記受信回路は、それぞれ、2本の信号線を用いて信号を伝送する差動の構成である、
ことを特徴とする水中探知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中に送信波を送波し、その反射波に基づいて、水中の物標を探知する水中探知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中に送信波を送波し、その反射波に基づいて、水中の物標を探知する水中探知装置が知られている。この種の水中探知装置では、たとえば、狭いビームを形成可能な超音波振動子を回転させることにより、自船周囲の物標が探知される。
【0003】
この種の水中探知装置では、たとえば、1つまたは複数の超音波振動子を有する送波器と、複数の超音波振動子を有する受波器とが、個別に配置される。水中探知装置は、送波器を回転させつつ、受波器を送波器に同期させて回転させる。このとき、受波器に配置された複数の超音波振動子からそれぞれ出力される信号に対するビームフォーミングにより、受信ビームが深さ方向にスキャンされる。こうして、自船周囲の全範囲において、エコー信号が生成される。生成されたエコー信号に基づいて、受波器からの位置とその位置のエコー強度とを対応付けたエコー画像が生成される。
【0004】
特許文献1には、この種の水中探知装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成の水中探知装置では、操舵室等に設置された制御ユニットと、船底に設置された送波器および受波器とが、通信可能に、ケーブルで接続される。この場合、送波器および受波器のチャンネル数分の芯数がケーブルに必要となる。また、送信および受信のケーブルがともに差動である場合、チャンネル数の2倍の芯数がケーブルに必要となる。このため、ケーブルは、サイズおよびコストの両面において大きくなってしまう。
【0007】
また、上記のように、送波器および受波器が回転する構成では、ケーブルと送波器および受波器との間にスリップリングが配置される。この場合、上記のようにケーブルの芯数が多いと、スリップリングの極数も多くなる。このため、スリップリングも、サイズおよびコストの両面において大きくなってしまう。
【0008】
さらには、スリップリングおよびケーブルの前後に接続用のコネクタが配置されると、ケーブルの芯数の増加に伴い、コネクタの極数も多くなる。このため、コネクタも、サイズおよびコストの両面において大きくなってしまう。
【0009】
このように、上記構成の水中探知装置では、ケーブルの芯数の増加に伴い、ケーブル、スリップリングおよびコネクタにおいて、サイズおよびコストの増大を招く。その結果、水中探知装置もまた、大型化およびコストの上昇を招いてしまう。
【0010】
かかる課題に鑑み、本発明は、送波用の超音波振動子と受波用の超音波振動子が個別に配置される構成において、これら超音波振動子と送信回路および受信回路とを接続するケーブルの芯数を減少させることが可能な水中探知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主たる態様に係る水中探知装置は、送信波を送波する第1超音波振動子と、前記送信波の反射波を受波する第2超音波振動子と、前記第1超音波振動子に供給される送信信号を生成する送信回路と、前記第2超音波振動子から出力される受信信号を処理する受信回路と、前記第1超音波振動子および前記第2超音波振動子と、前記送信回路および前記受信回路との間に介在するケーブルと、前記ケーブルの前段および後段にそれぞれ配置され、前記送信回路と前記第1超音波振動子との信号線、および、前記第2超音波振動子と前記受信回路との信号線を共通化させるための第1トラップ回路および第2トラップ回路と、を備える。
【0012】
本態様に係る水中探知装置によれば、第1トラップ回路および第2トラップ回路によって、送信回路と第1超音波振動子との信号線、および、第2超音波振動子と受信回路との信号線を共通化できる。このため、ケーブルの芯数を減少させることができる。
【0013】
本態様に係る水中探知装置は、前記第1超音波振動子を有する送波器および前記第2超音波振動子を有する受波器を、同期させて回転させる駆動部と、前記ケーブルと前記第2トラップ回路との間に配置されたスリップリングと、を備えるよう構成され得る。
【0014】
この構成によれば、上記のようにケーブルの芯数が減少するため、スリップリングの極数も減少させることができる。よって、スリップリングの小型化および低コスト化を実現できる。
【0015】
本態様に係る水中探知装置は、前記送信回路、前記受信回路、前記第1超音波振動子および前記第2超音波振動子の組を複数備え、前記組ごとに、前記第1トラップ回路および前記第2トラップ回路を備えるよう構成され得る。
【0016】
この構成によれば、組ごとに第1トラップ回路および第2トラップ回路が配置されるため、組ごとにケーブルの芯数を減少させることができる。よって、ケーブル全体の芯数を顕著に減少させることができる。
【0017】
本態様に係る水中探知装置において、前記第2トラップ回路は、コンデンサ方式のトラップ回路であり、前記第2トラップ回路のコンデンサは、前記第2超音波振動子のマッチング回路のコンデンサに共用されるよう構成され得る。
【0018】
この構成によれば、第2トラップ回路およびマッチング回路のコンデンサが共用されるため、回路構成の簡素化とコストの低減を実現できる。
【0019】
本態様に係る水中探知装置において、前記送信回路および前記受信回路は、それぞれ、2本の信号線を用いて信号を伝送する差動の構成とされ得る。
【0020】
この構成によれば、送信回路および受信回路にそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられる信号線を、第1トラップ回路および第2トラップ回路の配置により、2つの信号線に減少させることができる。よって、ケーブルの芯数を半分に減少させることができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、送波用の超音波振動子と受波用の超音波振動子が個別に配置される構成において、これら超音波振動子と送信回路および受信回路とを接続するケーブルの芯数を減少させることが可能な水中探知装置を提供することができる。
【0022】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下に示す実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、実施形態に係る水中探知装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る、送波器によって形成される送信ビームを模式的に示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る、受信ビームが電子的に走査される範囲であるファンエリアを模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、比較例に係る、送受信回路の構成を示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る、送受信回路の構成を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る、送信回路から送信信号が出力されたときの送信信号が伝搬する経路を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る、第2超音波振動子から受信信号が出力されたときの受信信号が伝搬する経路を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る、送信回路、受信回路、第1超音波振動子および第2超音波振動子の組が複数ある場合の送受信回路の構成を模式的に示す図である。
【
図9】
図9は、変更例に係る、抵抗方式の第1トラップ回路および第2トラップ回路を用いた場合の送受信回路の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、他の変更例に係る、ダイオードスイッチ方式の第1トラップ回路および第2トラップ回路を用いた場合の送受信回路の構成を示す図である。
【
図11】
図11は、さらに他の変更例に係る、送信および受信の両方がシングルエンドである場合の送受信回路の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る水中探知装置は、主に魚および魚群等の物標の探知に用いられる。水中探知装置は、他にも、岩礁のような海底の起伏、人工漁礁のような構造物の探知などに用いられる。
【0025】
図1は、水中探知装置1の構成を示すブロック図である。
【0026】
図1に示すように、水中探知装置1は、船底部10と、船上部20と、ケーブル30とを備える。船底部10は、船底に設置され、船上部20は、操舵室等の船上の位置に設置される。ケーブル30は、船底部10と船上部20との間で、送信信号および受信信号を伝送するための通信ケーブルである。
【0027】
船底部10は、送波器11と、受波器12と、駆動部13と、トラップ回路部14と、スリップリング15とを備える。駆動部13は、モータ13aと、回転角度検出部13bとを備える。船上部20は、送信部21と、受信部22と、信号処理ユニット23と、トラップ回路部24と、表示部25と、入力部26とを備える。
【0028】
送波器11は、1つまたは複数の超音波振動子を備える。送波器11は、3次元状の送信ビームTBを形成可能に構成される。送波器11は、パルス状の超音波(送信パルス波)を水中に送波する。
【0029】
図2は、送波器11によって形成される送信ビームTBを模式的に示す図である。
【0030】
図2において、Z軸は、送波器11から鉛直下向きに降ろした軸であり、Y軸は、水平面に平行で且つ自船SH1の進行方向を示す軸である。X軸は、Y軸およびZ軸に垂直な軸である。ここでは、鉛直方向に見て送信パルス波がX軸に平行な方向に送波されるタイミングの送信ビームTBの状態が示されている。
【0031】
送波器11は、送信ビームTBの中心軸Axが鉛直方向(Z軸方向)に対して斜めになるように、船底に設置される。送信ビームTBは、水平方向に角度α11の広がりを有し、かつ、Z軸を中心とする周方向に見て略扇形状を有する。角度α11は、たとえば30度である。これに限らず、角度α11は、たとえば、6~90度の範囲内に設定され得る。
【0032】
送信ビームTBは、鉛直下方向を0度として鉛直上方向に角度θ1の範囲で広がっている。角度θ1は、たとえば、90度である。角度θ1は、90度に限られるものではなく、たとえば、60度程度であってもよい。また、送信ビームTBの鉛直方向の広がりは、必ずしも、鉛直下方向が境界でなくてもよい。たとえば、鉛直下方向に対して鉛直方向に30~90度の範囲で送信ビームTBが鉛直方向に広がっていてもよい。また、鉛直下方を挟んで±60度の範囲に送信ビームTBが広がっていてもよい。
【0033】
図1に戻り、受波器12は、送波器11に対して分離して設置される。受波器12は、複数の超音波振動子を有する。これら超音波振動子は、受波器12の受波素子である。たとえば、受波器12は、8つの超音波振動子を備える。各超音波振動子の受波面は、たとえば、長方形状に形成される。受波器12に配置される超音波振動子の数は、8つに限らず、他の数であってもよい。
【0034】
受波器12の各超音波振動子は、送波器11から送波された送信パルス波の反射波を受波して、反射波のエコー強度に応じた受信信号を生成する。これら超音波振動子は、直線状に配列される。すなわち、受波器12は、リニアアレイである。リニアアレイの受波面に垂直な方向であって受信ビームRBが形成される側の方向と水平面とがなす角度は、俯角方向を正とした場合、たとえば30度である。ただし、この角度は、リニアアレイが鉛直方向に沿って配列されている場合の角度である0度から、リニアアレイが水平方向に沿って配列されている場合の角度である90度までの範囲内において、他の角度であってもよい。
【0035】
モータ13aは、鉛直方向に平行な回転軸について、送波器11を回転させる。これにより、送信ビームTBが、
図2の自船SH1(Z軸)を中心とした水平方向の全方位に亘って回転される。また、モータ13aは、送波器11の回転に同期するように、受波器12を、鉛直方向に平行な回転軸について回転させる。送波器11と受波器12は、互いに同じ方向を向くように回転する。これにより、送波器11から送波された超音波(送信パルス波)の反射波が、受波器12によって受波される。
【0036】
回転角度検出部13bは、モータ13aの回転角を検出する。回転角度検出部13bは、モータ13aに取り付けられている。回転角度検出部13bは、たとえば、ロータリーエンコーダである。ただし、モータ13aの回転角を検出する方法は、これに限られるものではない。たとえば、モータ13aがステッピングモータである場合、基準位置からのステップ数に基づいて、モータ13aの回転角が検出されてもよい。モータ13aの回転角により、水平面内における所定の基準軸に対する送波器11および受波器12の角度位置が検出され得る。この基準軸は、たとえば、
図2のX軸正側の軸に設定される。
【0037】
送波器11は、上記のようにモータ13aによって回転させられながら、基準軸に対して所定の角度ごとに、送信ビームTBを形成して、超音波(送信パルス波)を送波する。また、受波器12は、送波器11から送信ビームTBが送波される各角度位置において、受信ビームRBを形成して反射波の受信信号を生成する。各角度位置において、信号処理ユニット23が、受波器12の複数の超音波振動子に対するビームフォーミングを行うことにより、鉛直方向に受信ビームRBが電子的に走査される。受信ビームRBは、ファンエリアFA内において鉛直方向に電子的に走査される。
【0038】
図3は、受信ビームRBが電子的に走査される範囲であるファンエリアFAを模式的に示す図である。
図3のX軸、Y軸およびZ軸は、
図2と同様である。
【0039】
ファンエリアFAは、周方向の広がり角が6度程度と比較的薄く、自船SH1から鉛直方向に扇形状に広がっている。
図3では、角度位置が第1角度位置α21のときのファンエリアFAがFA(α21)で示され、角度位置が第2角度位置α22のときのファンエリアFAがFA(α22)で示されている。
【0040】
ファンエリアFAの鉛直方向の角度θ2は、たとえば約90度である。ファンエリアFAは、鉛直下方から水平方向に亘る範囲に形成される。ファンエリアFA内を電子的に走査される受信ビームRBは、ファンエリアFAとともに、
図1のモータ13aによって、水平面に沿ってα方向に回転させられる。これにより、自船SH1を中心とした半球形状状の3次元空間内において物標が探知され、当該空間内における物標の3次元的な位置が推定され得る。
【0041】
なお、角度θ2は、90度に限られるものではない。また、角度θ2の境界が鉛直下方向でなくてもよい。たとえば、角度θ2が、鉛直下方向に対して30度から90度に亘る角度範囲であってもよい。また、角度θ2が、鉛直下方向に対し±60度の範囲であってもよい。
【0042】
図1に戻り、トラップ回路部14は、送波器11に配置された1つの超音波振動子と、受波器12に配置された1つの超音波振動子との組ごとに、トラップ回路を備える。同様に、トラップ回路部24は、これらの超音波振動子の組ごとに、トラップ回路を備える。トラップ回路の詳細な構成および作用は、追って、
図5を参照して説明する。
【0043】
スリップリング15は、ケーブル30とトラップ回路部14とを電気的に接続するための回転コネクタである。すなわち、上記のように、送波器11および受波器12がモータ13aにより回転すると、これに伴い、トラップ回路部14が一体的に回転する。つまり、送波器11、受波器12およびトラップ回路部14は、共通の回転体に配置されている。スリップリング15は、こうして回転するトラップ回路部14と、ケーブル30との電気的な接続を維持する。
【0044】
送信部21は、信号処理ユニット23で生成された所定周波数の送信信号を増幅し、増幅後の送信信号を、トラップ回路部24、ケーブル30、スリップリング15、トラップ回路部14を介して、送波器11に印加する。これにより、送波器11から、増幅後の送信信号に対応する送信パルス波が送波される。
【0045】
受信部22は、トラップ回路部14、スリップリング15、ケーブル30、トラップ回路部24を介して受波器12から入力されるエコー信号(受信信号)を増幅するとともに、送信パルス波と同じ周波数成分を抽出する。さらに、受信部22は、抽出したエコー信号をA/D変換し、変換後のデジタル信号(エコー信号)を、信号処理ユニット23に出力する。
【0046】
信号処理ユニット23は、上述の送信信号を生成し、生成した送信信号を送信部21に出力する。また、信号処理ユニット23は、受信部22から入力されるエコー信号を処理し、物標の画像データを生成するための処理を行う。信号処理ユニット23は、たとえば、パーソナルコンピュータにより構成される。信号処理ユニット23が専用機であってもよい。信号処理ユニット23は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理回路と、ROM(ReadOnly Memory)、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等の記憶媒体を備える。記憶媒体には、水中探知のための処理を実現するためのプログラムが記憶されている。
【0047】
表示部25は、画像を表示するためのモニタを備え、信号処理ユニット23から出力された画像データに応じた画像を表示する。本実施形態では、表示部25には、自船下方における海中の状態が3次元的に表示される。これにより、使用者は、当該画像を参照することで、自船下方における海中の状態(たとえば、単体魚および魚群、海底の起伏、人工漁礁のような構造物の有無及び位置)を把握できる。
【0048】
ところで、上記のように、送波器11と受波器12とが個別に設けられる構成では、通常、送波器11の各超音波振動子と受波器12の各超音波振動子に対して、それぞれ、送信信号および受信信号を伝送するための信号線が個別に設けられる。このため、この信号線の数に対応する芯線がケーブル30に必要となり、ケーブル30の芯数が多くなる。同様に、この信号線の数に対応する極数がスリップリング15に必要となり、スリップリング15の極数が多くなる。このため、ケーブル30およびスリップリング15が大型化し、これら部材のコストが上昇する。
図1には図示していなが、ケーブル30やスリップリング15の前後にコネクタが配置され場合は、さらに、このコネクタについても、同様に、大型化およびコストの上昇の問題が生じる。
【0049】
本実施形態では、このような問題を解消するため、
図1に示したように、ケーブル30の前後に、トラップ回路部14、24が配置されている。これにより、送波器11の各超音波振動子と受波器12の各超音波振動子に対して、それぞれ、送信信号および受信信号を伝送するための信号線の数が減少される。以下、この構成および作用について、トラップ回路部14、24が配置されない場合の比較例と対照して説明する。
【0050】
図4は、比較例に係る、送受信回路の構成を示す図である。
図4には、1組の超音波振動子111、121に対する回路部の構成が示されている。
【0051】
送波器11は、超音波振動子111(以下、「第1超音波振動子111」という)と、マッチングトランス112とを備える。第1超音波振動子111は、送信信号の印加により送信パルス波(超音波)を送波する。マッチングトランス112は、第1超音波振動子111と、第1超音波振動子111までの送信信号の伝送系との間のインピーダンスを整合させて、送信信号を第1超音波振動子111に効率よく伝搬させる。
【0052】
受波器12は、超音波振動子121(以下、「第2超音波振動子121」という)と、LCマッチング回路122とを備える。第2超音波振動子121は、第1超音波振動子111から送波された送信パルス波の反射波を受波して、受信信号を出力する。LCマッチング回路122は、ケーブル30の特性インピーダンスとの関係から第2超音波振動子121の周波数特性が維持されるようにインピーダンスのマッチングを行う。
【0053】
送信回路211は、
図1の送信部21に含まれ、第1超音波振動子111に供給される送信信号を生成する。送信回路211は、FET211a、211bと、マッチング回路211cとを備える。FET211a、211bは、
図1の信号処理ユニット23から入力される所定周波数の送信信号を、電源電圧Vbにより増幅する。マッチング回路211cは、第1超音波振動子111の周波数特性が維持されるようにインピーダンスのマッチングを行う。
【0054】
受信回路221は、
図1の受信部22に含まれ、第2超音波振動子121から出力される受信信号を処理する。受信回路221は、トランス221aと、アンプ221bとを備える。トランス221aは、第2超音波振動子121やケーブル30に重畳されるコモンモードノイズを低減する。アンプ221bは、トランス221aから伝搬される受信信号を増幅して、後段回路に供給する。上記のように、受信回路221は、後段回路として、フィルタやアンプ、A/Dコンバータ等(図示せず)をさらに有している。
【0055】
図4の構成では、送信回路211および受信回路221が、それぞれ、2本の信号線を用いて信号を伝送する差動の構成となっている。このため、比較例の構成では、送信回路211に対して2本の信号線L11、L12が設けられ、受信回路221に対して2本の信号線L21、L22が設けられる。すなわち、1組の第1超音波振動子111および第2超音波振動子121に対する送受信に、4つの信号線L11、L12、L21、L22が設けられる。このため、1組の第1超音波振動子111および第2超音波振動子121について、ケーブル30は4つの芯線が必要となり、スリップリング15は4つの極が必要となる。
【0056】
したがって、第1超音波振動子111および第2超音波振動子121の組数が増加すると、ケーブル30の芯数およびスリップリング15の極数は、膨大な数となる。たとえば、第1超音波振動子111および第2超音波振動子121の組数が16である場合、64(4×16)の芯数および極数が、ケーブル30およびスリップリング15に必要となる。
【0057】
図5は、実施形態に係る、送受信回路の構成を示す図である。
図4と同様、
図5には、1組の第1超音波振動子111および第2超音波振動子121に対する回路部の構成が示されている。
【0058】
図5に示すように、実施形態の構成では、ケーブル30の前段および後段に、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141がそれぞれ配置されている。第1トラップ回路241および第2トラップ回路141は、送信回路211から送波器11に対する送信信号の供給と、受波器122から受信回路221に対する受信信号の供給とを切り替える。これらトラップ回路は、送受切替回路や送受分離回路と称される場合もある。
【0059】
第1トラップ回路241および第2トラップ回路141は、コンデンサ方式のトラップ回路である。第1トラップ回路241および第2トラップ回路141は、送信回路211と第1超音波振動子111との間の信号線、および、第2超音波振動子121と受信回路221との間の信号線を、信号線L31、L32に共通化させる。
【0060】
第1トラップ回路241は、3つのダイオード並列回路241a、241b、241cと、2つのコンデンサ241d、241eとを備える。第2トラップ回路141は、3つのダイオード並列回路141a、141b、141cと、2つのコンデンサ141d、141eとを備える。2つのコンデンサ141d、141eは、LCマッチング回路122と共用されている。
【0061】
ダイオード並列回路241a、241b、241cおよびダイオード並列回路141a、141b、141cは、2つのダイオードが逆向きに並列接続されて構成される。ダイオード並列回路241a、241b、241cおよびダイオード並列回路141a、141b、141cは、低電圧の信号にはオープンとなり、高電圧の信号には、最大0.7V程度の電圧を生じるインピーダンスとなる。
【0062】
ダイオード並列回路241a、241bおよびダイオード並列回路141a、141bは、差動の一方の信号線に直列に接続されている。ダイオード並列回路241cおよびダイオード並列回路141cは、差動の2つの信号線に跨るように、それぞれ接続されている。
【0063】
図5に示すように、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141によって、送信回路211と第1超音波振動子111との間の信号線、および、第2超音波振動子121と受信回路221との間の信号線を、信号線L31、L32に共通化できる。これにより、
図4に示した比較例に比べて、ケーブル30に繋がる信号線の数が半分に減少する。このため、
図4の比較例に比べて、ケーブル30の芯数が半分に減少し、また、スリップリング15の極数が半分に減少する。
【0064】
図6は、送信回路211から送信信号が出力されたときの送信信号が伝搬する経路を示す図である。
【0065】
図6には、送信信号が流れる経路が、太線で示されている。図示のとおり、送信信号は、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141の作用により、第1超音波振動子111には供給されるが、受信回路221および受波器12には遮断される。
【0066】
すなわち、第1トラップ回路241のダイオード並列回路241a、241bは、送信回路211で生じた高電圧の送信信号を導通させる。しかし、これらダイオード並列回路241a、241bを導通した送信信号は、コンデンサ241d、241eとダイオード並列回路241cとで分圧され、これにより、送信信号が受信回路221に回り込むことが抑制される。
【0067】
また、第2トラップ回路141のダイオード並列回路141a、141bは、ケーブル30およびスリップリング15を導通した高電圧の送信信号を導通させて、マッチングトランス112に供給する。しかし、ケーブル30およびスリップリング15を導通した送信信号は、コンデンサ141d、141eとダイオード並列回路141cとで分圧され、これにより、送信信号が受波器12に伝搬することが抑制される。
【0068】
さらに、第1トラップ回路241のダイオード並列回路241a、241bは、送信回路211で生じた低電圧のノイズ信号にはオープンとなって、このノイズ信号を遮断する。これにより、このノイズ信号が、受信回路221や第2超音波振動子121に回り込むことが抑制される。
【0069】
図7は、第2超音波振動子121から受信信号が出力されたときの受信信号が伝搬する経路を示す図である。
【0070】
図7には、受信信号が流れる経路が、太線で示されている。図示のとおり、受信信号は、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141の作用により、受信回路221には供給されるが、送信回路211および第1超音波振動子111には遮断される。
【0071】
すなわち、第2トラップ回路141のダイオード並列回路141cは、低電圧の受信信号に対してオープンとなって、受信信号をスリップリング15およびケーブル30に伝搬させる。また、第1トラップ回路241のダイオード並列回路241cは、ケーブル30から供給された低電圧の受信信号に対してオープンとなって、受信信号を受信回路221のトランス221aに伝搬させる。
【0072】
しかし、第2トラップ回路141のダイオード並列回路141a、141bは、ダイオード並列回路141cを通過した低電圧の受信信号に対してオープンとなって、受信信号を遮断する。これにより、受信信号が第1超音波振動子111に回り込むことが抑制される。
【0073】
また、第1トラップ回路241のダイオード並列回路241a、241bは、ケーブル30を介して伝搬した低電圧の受信信号に対してオープンとなって、受信信号を遮断する。これにより、受信信号が送信回路211に回り込むことが抑制される。
【0074】
さらに、第2トラップ回路141のダイオード並列回路141a、141bは、第1超音波振動子111が拾ったノイズに基づく低電圧のノイズ信号に対してオープンとなって、このノイズ信号を遮断する。これにより、このノイズ信号が、受信回路221や第2超音波振動子121に回り込むことが抑制される。
【0075】
なお、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141の各素子は、送信信号および受信信号の伝搬時に上述の挙動が実現されるよう、抵抗値等のパラメータ値が調整される。
【0076】
以上のように、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141は、送信信号および受信信号を、第1超音波振動子111および受信回路221にそれぞれ供給しつつ、送信信号および受信信号が第1超音波振動子111および受信回路221以外の回路部に回り込むことを抑制する。また、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141は、送信回路211や第1超音波振動子111で生じたノイズ信号が各回路部に回り込むことを抑制する。
【0077】
図8は、送信回路211、受信回路221、第1超音波振動子111および第2超音波振動子121の組が複数ある場合の送受信回路の構成を模式的に示す図である。
【0078】
図8には、便宜上、2つの組S1、S2が図示され、これらの組S1、S2以外の組の図示は省略されている。また、
図8では、便宜上、マッチングトランス112およびLCマッチング回路122の図示が省略されている。
【0079】
第1超音波振動子111の数と第2超音波振動子121の数が同じである場合、第1超音波振動子111および第2超音波振動子121は、余ることなく何れかの組に割り当てられる。第1超音波振動子111の数と第2超音波振動子121の数が同じでない場合、たとえば、なるべく多くの組が構成され、各組に
図8と同様の構成が適用される。組に割り当てられなかった余りの超音波振動子については、
図4と同様の構成が適用される。
【0080】
図8に示すように、組S1、S2ごとに第1トラップ回路241および第2トラップ回路141が配置されることにより、組S1、S2ごとにケーブル30の芯数を減少させることができる。よって、ケーブル30全体の芯数を顕著に減少させることができ、さらには、スリップリング15の極数を顕著に減少させることができる。
【0081】
<実施形態の効果>
上記実施形態によれば、以下の効果が奏され得る。
【0082】
図5~
図7を参照して説明したとおり、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141をケーブル30の前段および後段に配置することによって、送信回路211と第1超音波振動子111との間の信号線、および、第2超音波振動子121と受信回路221との間の信号線を、信号線L31、L32に共通化できる。このため、
図4に示した比較例に比べて、ケーブル30の芯数を減少させることができる。
【0083】
図1に示したように、水中探知装置1は、第1超音波振動子111を有する送波器11および第2超音波振動子121を有する受波器12を同期させて回転させる駆動部13と、ケーブル30と第2トラップ回路141(トラップ回路部14)との間に配置されたスリップリング15と、を備える。この構成によれば、上記のようにケーブル30の芯数が減少するため、スリップリング15の極数も減少させることができる。よって、スリップリング15の小型化および低コスト化を実現できる。
【0084】
図8の構成において、水中探知装置1は、送信回路211、受信回路221、第1超音波振動子111および第2超音波振動子121の組を複数備え、組S1、S2ごとに、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141を備える。この構成によれば、組S1、S2ごとに第1トラップ回路241および第2トラップ回路141が配置されるため、組S1、S2ごとにケーブル30の芯数を減少させることができる。よって、ケーブル30全体の芯数を顕著に減少させることができる。
【0085】
図5に示したように、第2トラップ回路141は、コンデンサ方式のトラップ回路であり、第2トラップ回路141のコンデンサ141d、141eは、第2超音波振動子121のLCマッチング回路122のコンデンサに共用されている。この構成によれば、第2トラップ回路141およびLCマッチング回路122のコンデンサが共用されるため、回路構成の簡素化とコストの低減を実現できる。
【0086】
図5に示したように、送信回路211および受信回路221は、それぞれ、2本の信号線(L11、L12/L21、L22)を用いて信号を伝送する差動の構成とされている。この構成によれば、
図4に示した比較例の構成では、送信回路211および受信回路221にそれぞれ2つずつ、合計4つ設けられる信号線(L11、L12、L21、L22)を、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141の配置により、2つの信号線L31、L32に減少させることができる。よって、ケーブル30の芯数を半分に減少させることができる。
【0087】
<変更例>
本発明は、上記実施形態に制限されるものではない。また、本発明の実施形態は、上記構成の他に種々の変更が可能である。
【0088】
たとえば、上記実施形態では、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141が何れもコンデンサ方式のトラップ回路であったが、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141として、抵抗方式やダイオードスイッチ方式等の他の方式のトラップ回路が用いられてもよい。
【0089】
図9は、抵抗方式の第1トラップ回路241および第2トラップ回路141を用いた場合の送受信回路の構成を示す図である。
【0090】
図9の構成では、
図6の構成のコンデンサ241d、241e、141d、141eが、それぞれ、抵抗241f、241g、141f、141gに置き換えられている。また、LCマッチング回路122は、インピーダンス整合のためのコンデンサを単独で含んでいる。
図9のその他の構成は、
図6と同様である。
【0091】
図9の構成では、送信回路211から出力される高電圧の送信信号は、第1トラップ回路241の抵抗241f、241gとダイオード並列回路241cとで分圧される。これにより、送信信号が受信回路221に伝搬することが抑制される。また、ケーブル30およびスリップリング15を伝搬した送信信号は、第2トラップ回路141の抵抗141f、141gとダイオード並列回路141cとで分圧される。これにより、送信信号が第2超音波振動子121に伝搬することが抑制される。送受波時における送受信回路のその他の挙動は、
図6の構成における挙動と同様である。
【0092】
図10は、ダイオードスイッチ方式の第1トラップ回路241および第2トラップ回路141を用いた場合の送受信回路の構成を示す図である。
【0093】
図10の構成では、
図6の構成のダイオード並列回路241cおよびコンデンサ241d、241eと、ダイオード並列回路141cおよびコンデンサ141d、141eに代えて、ダイオードブリッジ回路241h、241i、141h、141iが設けられている。また、LCマッチング回路122は、インピーダンス整合のためのコンデンサを単独で含んでいる。
図10のその他の構成は、
図6と同様である。
【0094】
ダイオードブリッジ回路241h、241i、141h、141iは、2つのダイオードが逆向きに接続される2つの位置に、逆極性の電圧+Vc、-Vcが印加される。ダイオードブリッジ回路241h、241i、141h、141iは、送信信号のような高電圧の信号は遮断し、受信信号のような低電圧の信号は伝搬させる。
【0095】
したがって、送信回路211から出力される送信信号は、ダイオードブリッジ回路241h、241iおよびダイオードブリッジ回路141h、141iでそれぞれ遮断される。これにより、送信信号が受信回路221や第2超音波振動子121に伝搬することが抑制される。送受波時における送受信回路のその他の挙動は、
図6の構成における挙動と同様である。
【0096】
図9および
図10の送受信回路によっても、上記実施形態と同様、信号線L31、L32が送受で共通化されるため、ケーブル30の芯数およびスリップリング15の極数を減少させ得る。但し、
図10の構成では、船底部10側のダイオードブリッジ回路141h、141iに電圧+Vc、-Vcを印加する必要があるため、この電圧を供給するための芯線および極が、ケーブル30およびスリップリング15に必要となる。このため、その分、上記実施形態に比べて、ケーブル30の芯数およびスリップリング15の極数が増加する。したがって、ケーブル30の芯数およびスリップリング15の極数をより効果的に減少させるためには、
図6または
図9の構成が用いられることが好ましいと言える。
【0097】
なお、
図6、
図9および
図10の構成では、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141の方式が同じであったが、第1トラップ回路241および第2トラップ回路141の方式が異なっていてもよい。たとえば、第1トラップ回路241としてコンデンサ方式のトラップ回路が用いられ、第2トラップ回路141として抵抗方式のトラップ回路が用いられてもよい。
【0098】
また、
図6、
図9および
図10の構成では、ダイオード並列回路241a、241bがダイオードのハーフブリッジ回路であったが、これに代えて、ダイオードのフルブリッジ回路や、プッシュプル回路が用いられてもよい。
【0099】
また、
図6、
図9および
図10の構成では、第2超音波振動子121にLCマッチング回路122が接続されたが、たとえば、ケーブル30が短かく、周波数特性の改善が不要である場合は、LCマッチング回路122が省略されてもよい。この場合、
図5のコンデンサ方式の第2トラップ回路141では、LCマッチング回路122を構成するインダクタLが省略され、コンデンサ方式の第2トラップ回路141を構成するコンデンサ141d、141eがそのまま残される。
【0100】
また、
図6、
図9および
図10の構成において、LCマッチング回路122がマッチングトランスに置き換えられてもよい。この場合も、
図5のコンデンサ方式の第2トラップ回路141では、コンデンサ方式の第2トラップ回路141を構成するコンデンサ141d、141eは、そのまま残されることになる。
【0101】
また、
図6、
図9および
図10の構成では、第1超音波振動子111にマッチングトランス112が接続されたが、たとえば、ケーブル30が短かく、周波数特性の改善が不要である場合や、高い送信電圧が必要ない場合は、マッチングトランス112が省略されてもよい。また、マッチングトランス112に代えてLCマッチング回路が用いられてもよい。
【0102】
また、
図5、
図9および
図10の送受信回路では、送信および受信の両方が差動であったが、送信および受信の一方または両方がシングルエンドであってもよい。
【0103】
図11は、送信および受信の両方がシングルエンドである場合の送受信回路の構成を示す図である。この場合、各組S1、S2のグランドの信号線L32が、ケーブル30の前段および後段において接続されて共通化される。これにより、差動の場合に比べて、ケーブル30の芯数およびスリップリング15の極数がさらに減少され、ケーブル20およびスリップリング15の小型化および低コスト化を実現できる。
【0104】
また、
図5、
図9および
図10の送受信回路では、送波器11および受波器12が回転するためにスリップリング15が用いられたが、送波器11および受波器12が回転しない方式の水中探知装置では、スリップリング15が省略される。この場合も、
図5、
図9および
図10の構成では、
図4の比較例に比べて、ケーブル30の芯数が減少するため、ケーブル30を小型化でき、コストの低減を実現できる。
【0105】
また、上記のように、ケーブル30の前後にコネクタが配置される場合は、ケーブル30の芯数の減少により、さらに、コネクタの極数を減少させることができ、コネクタの小型化およびコストの低減を実現できる。
【0106】
この他、本発明の実施形態は、特許請求の範囲に記載の範囲で適宜種々の変更可能である。
【符号の説明】
【0107】
1 水中探知装置
11 送波器
12 受波器
13 駆動部
15 スリップリング
30 ケーブル
111 第1超音波振動子
121 第2超音波振動子
122 LCマッチング回路(マッチング回路)
141 第2トラップ回路
141d、141e コンデンサ
211 送信回路
221 受信回路
241 第1トラップ回路