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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056225
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】制御方法、及び、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/01 305
B41J2/01 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162969
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EB13
2C056EB29
2C056EB30
2C056EB31
2C056EC07
2C056EC38
2C056EC42
2C056EC70
2C056EC72
2C056EC73
2C056FA10
2C056HA29
2C056HA42
(57)【要約】
【課題】媒体に形成される画像の濃淡ムラの発生を抑制すること。
【解決手段】液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから水分を含む反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記媒体に画像を形成する印刷処理を実行する前の前記媒体の含水率を推定可能な含水率情報を取得し、前記含水率情報に基づいて、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出装置の制御方法であって、
前記液体吐出装置は、
媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記媒体に対して第2ノズルから水分を含む反応液を吐出する反応液吐出部と、
前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記媒体に画像を形成する印刷処理を実行する前の前記媒体の含水率を推定可能な含水率情報を取得し、
前記含水率情報に基づいて、前記反応液吐出部の動作を制御し、
前記反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項2】
前記制御部は、
前記含水率情報によって推定される含水率が第1の含水率である場合、第1の水分量を含む前記反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御し、
前記含水率情報によって推定される含水率が前記第1の含水率より低い第2の含水率である場合、前記第1の水分量より多い第2の水分量を含む前記反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記制御部は、
前記含水率情報によって推定される含水率が所定の基準値以上である場合、基準水分量を含む前記反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御し、
前記含水率情報によって推定される含水率が前記所定の基準値未満である場合、前記基準水分量より多い第2の水分量を含む前記反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御し、
前記含水率情報によって推定される含水率が低いことに応じて、前記第2の水分量が多い、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項4】
前記所定の基準値は、9パーセントである、
ことを特徴とする請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
前記液体吐出装置は、環境温度を計測する温度計測部を更に備え、
前記含水率情報は、前記環境温度を示す情報を含み、
前記制御部は、前記温度計測部から、前記含水率情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項6】
前記液体吐出装置は、環境湿度を計測する湿度計測部を更に備え、
前記含水率情報は、前記環境湿度を示す情報を含み、
前記制御部は、前記湿度計測部から、前記含水率情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項7】
前記液体吐出装置は、前記含水率情報が入力される入力部を更に備え、
前記制御部は、前記入力部から、前記含水率情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項8】
前記液体吐出装置は、
前記媒体を搬送する搬送ベルトを備える搬送機構と、
前記搬送ベルトを加熱する加熱部と、
を更に備え、
前記含水率情報は、前記加熱部の設定温度を示す設定情報を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項9】
前記液体吐出装置は、
環境温度を計測する温度計測部と、
環境湿度を計測する湿度計測部と、
を更に備え、
前記含水率情報は、前記環境温度を示す情報と、前記環境湿度を示す情報と、前記加熱部の設定温度を示す設定情報と、を含む、
ことを特徴とする請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記液体吐出装置は、前記インク吐出部と前記反応液吐出部とを収容する筐体を更に備え、
前記含水率情報は、前記筐体内の温度を示す情報及び前記筐体内の湿度を示す情報のいずれか一方又は両方を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御方法。
【請求項11】
前記反応液吐出部は、前記第2ノズルと、前記第2ノズルに連通する液室と、駆動信号に応じて前記液室内の液体の圧力を変動させる駆動素子とを備え、
前記制御部は、前記含水率情報に基づいて、前記駆動素子に供給される前記駆動信号を変更して前記反応液吐出部から吐出させる前記反応液の量を調整するように、前記反応液吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項12】
前記反応液吐出部は、含水率がそれぞれ異なる複数の反応液のうち一の反応液を吐出可能であり、
前記制御部は、前記複数の反応液の中から、前記含水率情報に基づき選択された反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項13】
前記液体吐出装置は、前記反応液に水分を追加することにより、前記反応液吐出部から吐出される反応液の含水率を調整する水分調整機構を更に備え、
前記制御部は、前記含水率情報に基づいた追加量の水分を追加した反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の制御方法。
【請求項14】
液体吐出装置の制御方法であって、
前記液体吐出装置は、
媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、
前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、
環境温度を計測する温度計測部と、
を備え、
前記制御部は、
前記温度計測部によって計測された環境温度が第1の温度である場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記温度計測部によって計測された環境温度が前記第1の温度より高い第2の温度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、
前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
液体吐出装置の制御方法であって、
前記液体吐出装置は、
媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、
前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、
環境湿度を計測する湿度計測部と、
を備え、
前記制御部は、
前記湿度計測部によって計測された環境湿度が第1の湿度である場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記湿度計測部によって計測された環境湿度が前記第1の湿度より低い第2の湿度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、
前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項16】
液体吐出装置の制御方法であって、
前記液体吐出装置は、
媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、
前記インク吐出部と前記反応液吐出部の動作を制御する制御部と、
前記媒体を搬送する搬送ベルトを備える搬送機構と、
前記搬送ベルトを加熱する加熱部と、
を備え、
前記制御部は、
前記加熱部の設定温度が第1の設定温度であった場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記加熱部の設定温度が前記第1の設定温度より高い第2の設定温度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、
前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項17】
液体吐出装置の制御方法であって、
前記液体吐出装置は、
媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、
前記インク吐出部と前記反応液吐出部の動作を制御する制御部と、
前記インク吐出部と前記反応液吐出部とを収容する筐体と、
を備え、
前記制御部は、
前記筐体内の温度が第1の温度であった場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記筐体内の温度が前記第1の温度より高い第2の温度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、
前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項18】
液体吐出装置の制御方法であって、
前記液体吐出装置は、
媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、
前記インク吐出部と前記反応液吐出部の動作を制御する制御部と、
前記インク吐出部と前記反応液吐出部とを収容する筐体と、
を備え、
前記制御部は、
前記筐体内の湿度が第1の湿度であった場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記筐体内の湿度が前記第1の湿度より低い第2の湿度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、
前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項19】
媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、
前記媒体に対して第2ノズルから水分を含む反応液を吐出する反応液吐出部と、
前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記媒体に画像を形成する印刷処理を実行する前の前記媒体の含水率を推定可能な含水率情報を取得し、
前記含水率情報に基づいて、前記反応液吐出部の動作を制御し、
前記反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法、及び、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インクを媒体に吐出し、媒体に画像を形成する液体吐出装置が知られている。媒体に対する液体の定着性を向上するため、例えば、特許文献1には、インクと、インクを凝集させる凝集剤を含む反応液とを吐出する液体吐出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-022329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、インクが媒体に十分に浸透せずに、媒体に形成される画像に濃淡ムラが発生する場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから水分を含む反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記媒体に画像を形成する印刷処理を実行する前の前記媒体の含水率を推定可能な含水率情報を取得し、前記含水率情報に基づいて、前記反応液吐出部の動作を制御し前記反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、ことを特徴とする。
【0006】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、環境温度を計測する温度計測部と、を備え、前記制御部は、前記温度計測部によって計測された環境温度が第1の温度である場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記温度計測部によって計測された環境温度が前記第1の温度より高い第2の温度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、ことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、環境湿度を計測する湿度計測部と、を備え、前記制御部は、前記湿度計測部によって計測された環境湿度が第1の湿度である場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記湿度計測部によって計測された環境湿度が前記第1の湿度より低い第2の湿度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、ことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部と前記反応液吐出部の動作を制御する制御部と、前記媒体を搬送する搬送ベルトを備える搬送機構と、前記搬送ベルトを加熱する加熱部と、を備え、前記制御部は、前記加熱部の設定温度が第1の設定温度であった場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記加熱部の設定温度が前記第1の設定温度より高い第2の設定温度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部と前記反応液吐出部の動作を制御する制御部と、前記インク吐出部と前記反応液吐出部とを収容する筐体と、を備え、前記制御部は、前記筐体内の温度が第1の温度であった場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記筐体内の温度が前記第1の温度より高い第2の温度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部と前記反応液吐出部の動作を制御する制御部と、前記インク吐出部と前記反応液吐出部とを収容する筐体と、を備え、前記制御部は、前記筐体内の湿度が第1の湿度であった場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記筐体内の湿度が前記第1の湿度より低い第2の湿度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様に係る液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから水分を含む反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記媒体に画像を形成する印刷処理を実行する前の前記媒体の含水率を推定可能な含水率情報を取得し、前記含水率情報に基づいて、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態にかかる液体吐出装置1の構成の一例を例示する模式図。
図2】液体吐出装置1を例示する模式図。
図3】液体吐出装置1の内部構造が示された概略図。
図4】記録ヘッドHDの概略的な一部断面図。
図5】ノズル面FNの平面図。
図6】液体吐出ヘッドHUの構成の一例を示すブロック図。
図7】液体吐出装置1の単位制御期間Tuにおける動作を説明するためのタイミングチャートを示す図。
図8】接続状態指定信号SLa[k]及びSLb[k]の生成を説明するための説明図。
図9】媒体PPの含水率と濃淡ムラとの関係を説明するための図。
図10】液体吐出装置1の動作を示すフローチャートを示す図。
図11】第1実施形態の実施例を説明するための図。
図12】第1実施形態の実施例を説明するための図。
図13】液体吐出装置1-Aを例示する模式図。
図14】液体吐出装置1-Aの動作を示すフローチャートを示す図。
図15】反応液テーブルGTの内容の一例を示す図。
図16】第2実施形態の実施例を説明するための図。
図17】液体吐出装置1-Bの構成の一例を例示する模式図。
図18】液体吐出装置1-Bを例示する模式図。
図19】液体吐出装置1-Bの動作を示すフローチャートを示す図。
図20】追加量テーブルATの内容の一例を示す図。
図21】液体吐出装置1-Cの構成の一例を例示する模式図。
図22】第4実施形態の実施例を説明するための図。
図23】第3変形例にかかる液体吐出装置1-Eの構成の一例を例示する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0014】
以下の説明では、相互に直交するX軸とY軸とZ軸とを想定する。任意の地点からみてX軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向の反対の方向をX2方向と表記する。同様に、任意の地点からY軸に沿って相互に反対の方向をY1方向及びY2方向と表記し、任意の地点からZ軸に沿って相互に反対の方向をZ1方向及びZ2方向と表記する。X軸とY軸とを含むX-Y平面は水平面に相当する。Z軸は鉛直方向に沿う軸線であり、Z1方向は鉛直方向の下方に相当する。
【0015】
1.第1実施形態
1-1.液体吐出装置1の概要
図1は、第1実施形態にかかる液体吐出装置1の構成の一例を例示する模式図である。図2は、液体吐出装置1を例示する模式図である。図3は、液体吐出装置1の内部構造が示された概略図である。図3では、液体吐出装置1をY-Z平面で切断した断面を、X1方向からX2方向に見た状態を示してある。液体吐出装置1は、インクと反応液とを媒体PPに吐出するインクジェット方式の印刷装置である。図3に示すように、液体吐出装置1は、水平面に平行な床SFに設定される。液体吐出装置1は、例えば、工場内に設置される。媒体PPは、例えば、綿、絹、及び、ポリエステル等の布帛である。
【0016】
反応液を媒体PPに吐出した後に、反応液が媒体PPに着弾する位置にインクを吐出することにより、反応液とインクとが媒体PP上、又は媒体PPの内部に浸透した位置で混合し、反応液によってインクが凝集することにより、媒体PPに対するインクの定着性を向上できる。
【0017】
反応液とインクとの具体的な組み合わせとしては、例えば、以下に示す2つの組み合わせがある。第1の組み合わせは、塩基性ポリマーを凝集剤として有する反応液と、アニオン染料を含むインクとである。第2の組み合わせは、1分子あたり2個以上のカチオン性基を有する有機化合物を凝集剤として有する反応液と、アニオン染料を含むインクとである。但し、反応液とインクとの組み合わせは、上記2つの組み合わせに限らない。
【0018】
図2に例示される通り、液体吐出装置1には、インクと反応液とをそれぞれ貯留する液体容器18が設置される。例えば液体吐出装置1に着脱可能なカートリッジ、可撓性のフィルムで形成された袋状のインクパック、又は、インクを補充可能なインクタンクが、液体容器18として利用される。液体容器18は、反応液を貯留する液体容器18gと、1色以上のインクを貯留する液体容器18iとを有する。図2に例示されるように、液体容器18gは、供給流路19gを経由して反応液吐出部GDに反応液を供給する。液体容器18iは、供給流路19iを経由してインク吐出部IDにインクを供給する。図2では、反応液吐出部GD及びインク吐出部IDを簡略化して表示してある。
【0019】
液体吐出装置1には、パーソナルコンピューターやデジタルカメラ等のホストコンピューターから、液体吐出装置1が形成すべき画像を示す印刷データImgと、液体吐出装置1が形成すべき画像の印刷部数を示す情報と、が供給される。液体吐出装置1は、ホストコンピューターから供給される印刷データImgが示す画像を媒体PPに形成する印刷処理を実行する。
【0020】
図1に例示するように、液体吐出装置1は、インクを吐出するインク吐出部ID及び反応液を吐出する反応液吐出部GDが設けられた液体吐出ヘッドHUと、液体吐出装置1の各部の動作を制御する制御モジュール10と、媒体PPを搬送する搬送機構7と、液体吐出ヘッドHUを移動させる移動機構8と、計測モジュール3と、加熱部5と、を備える。以下の記載において、インク吐出部IDと、反応液吐出部GDとを、吐出部Dと総称することがある。
【0021】
以下の説明において、液体吐出ヘッドHUは、K個の吐出部Dを有することとして説明する。更に、K個の吐出部Dの各々を区別するために、順番に、1番目、2番目、…、K番目と称することがある。また、k番目の吐出部Dを、吐出部D[k]と称する場合がある。変数kは、1以上K以下を満たす整数である。また、液体吐出装置1の構成要素や信号等が、吐出部D[k]に対応するものである場合には、当該構成要素や信号等を表すための符号に、吐出部D[k]に対応していることを示す添え字[k]を付して表現することがある。
【0022】
本実施形態において、液体吐出ヘッドHUは、複数のインク吐出部ID及び複数の反応液吐出部GDを具備する記録ヘッドHDと、切替回路20とを有する。但し、インク吐出部IDの個数、及び、反応液吐出部GDの個数は、1つでもよい。
【0023】
制御モジュール10は、インク吐出部ID及び反応液吐出部GDを駆動するための駆動信号Comを生成する駆動信号生成回路12と、液体吐出装置1の各部の動作を制御する制御部13と、印刷データImgと、液体吐出装置1の制御プログラム等の各種情報を記憶する記憶部14と、を有する。
【0024】
切替回路20は、複数のインク吐出部IDと複数の反応液吐出部GDとのそれぞれに、駆動信号生成回路12から出力される駆動信号Comを供給するか否かを切り替える。
【0025】
制御部13は、CPUを含んで構成される。CPUは、Central Processing Unitの略である。但し、制御部13は、CPUの代わりに、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを備えていてもよい。FPGAは、Field Programmable Gate Arrayの略である。
【0026】
記憶部14は、RAM等の揮発性のメモリーと、ROM、EEPROM、又は、PROM等の不揮発性メモリーと、を含んで構成される。RAMは、Random Access Memoryの略称である。ROMは、Read Only Memoryの略称である。EEPROMは、Electrically Erasable Programmable Read-Only Memoryの略称である。PROMは、Programmable ROMの略称である。
【0027】
本実施形態に係る液体吐出装置1は、シリアルプリンターである。具体的には、図2に示すように、液体吐出装置1は、副走査方向であるY1方向に媒体PPを搬送し主走査方向であるX1方向及びX2方向に液体吐出ヘッドHUを移動させつつ、反応液吐出部GDから反応液を吐出し、更に、インク吐出部IDからインクを吐出することで、印刷処理を実行する。
【0028】
図4を参照しつつ、記録ヘッドHDと、記録ヘッドHDに設けられる反応液吐出部GDについて説明する。
【0029】
図4は、反応液吐出部GDを含むように記録ヘッドHDを切断した、記録ヘッドHDの概略的な一部断面図である。
図4に示すように、反応液吐出部GDは、圧電素子PZと、内部に反応液が収容される圧力室320と、圧力室320に連通するノズルNと、振動板310と、を備える。吐出部Dは、圧電素子PZに駆動信号Comが供給されて当該圧電素子PZが駆動信号Comにより駆動されることにより、圧力室320内の反応液をノズルNから吐出させる。圧力室320は、圧力室基板340と、ノズルNが形成されたノズルプレート330と、振動板310と、により区画される空間である。ノズルNは、ノズルプレート330のZ1方向を向く面であるノズル面FNに設けられる。圧力室320は、供給口360を介してリザーバ350と連通している。リザーバ350は、取入口370を介して、液体容器18gと連通している。なお、反応液吐出部GDに含まれるノズルNが、「第2ノズル」の一例である。反応液吐出部GDに含まれる圧電素子PZが、「駆動素子」の一例である。反応液吐出部GDに含まれる圧力室320が、「液室」の一例である。
【0030】
本実施形態では、圧電素子PZとして、図4に示すようなユニモルフ型を採用する。なお、圧電素子PZは、ユニモルフ型に限らず、バイモルフ型や積層型等を採用してもよい。
【0031】
圧電素子PZは、共通電極Quと、個別電極Qdと、共通電極Qu及び個別電極Qdの間に設けられた圧電体Qmと、を有する。共通電極Quは、圧電体QmのZ2方向の面に設けられる。共通電極Quは、いわゆる上部電極である。個別電極Qdは、圧電体QmのZ1方向を向く面に設けられる。個別電極Qdは、いわゆる下部電極である。圧電素子PZは、駆動信号Comの電位変化に応じて変形する受動素子である。共通電極Quに定電位信号Vbsが供給され、個別電極Qdに駆動信号Comが供給されることで、共通電極Qu及び個別電極Qdの間に電圧が印加されると、当該印加された電圧に応じて圧電体QmがZ軸に沿う方向と直交する方向に変位する。なお、個別電極Qdが上部電極であり、共通電極Quが下部電極であってもよい。
【0032】
圧電体Qmは、例えば、電気機械変換作用を示す強誘電性セラミックス材料からなるペロブスカイト構造の結晶膜、いわゆるペロブスカイト型結晶から形成される。
【0033】
インク吐出部IDは、液体容器18gの替わりに液体容器18iに連通し、反応液の替わりにインクが供給され、ノズルNからインクを吐出する点で反応液吐出部GDと相違し、他の点で一致するため、図示を省略する。但し、反応液吐出部GDの各要素の形状と、インク吐出部IDの各要素の形状とが、互いに同一でもよいし異なってもよい。なお、インク吐出部IDに含まれるノズルNが、「第1ノズル」に相当する。
【0034】
複数のインク吐出部IDのそれぞれのノズルN、及び、複数の反応液吐出部GDのそれぞれのノズルNは、Y軸に沿って配列する。複数のインク吐出部IDのそれぞれのノズルN、及び、複数の反応液吐出部GDのそれぞれのノズルNの配列態様について、図5を用いて説明する。
【0035】
図5は、ノズル面FNの平面図である。ノズル面FNには、複数の反応液吐出部GDのそれぞれのノズルNから構成される反応液ノズル列LG1及び反応液ノズル列LG2と、複数のインク吐出部IDのそれぞれのノズルNから構成されるインクノズル列LI1、インクノズル列LI2、インクノズル列LI3、及び、インクノズル列LI4とが配置される。反応液ノズル列LG1、反応液ノズル列LG2、インクノズル列LI1、インクノズル列LI2、インクノズル列LI3、及び、インクノズル列LI4は、Y軸に沿って直線状に配列された複数のノズルNの集合である。
【0036】
反応液ノズル列LG1及び反応液ノズル列LG2の各ノズルNからは、反応液が媒体PPに対して吐出される。図5では、反応液を吐出するノズルNを「N[G]」と表記してある。インクノズル列LI1、インクノズル列LI2、インクノズル列LI3、及び、インクノズル列LI4の各ノズルNからは、インクが媒体PPに対して吐出される。図5の例では、インクノズル列LI1の各ノズルNからは、シアンインクが媒体PPに吐出され、インクノズル列LI2の各ノズルNからは、マゼンタインクが媒体PPに吐出され、インクノズル列LI3の各ノズルNからは、イエローインクが媒体PPに吐出され、インクノズル列LI4の各ノズルNからは、ブラックインクが媒体PPに吐出される。図5では、シアンインクを吐出するノズルNを「N[C]」と表記し、マゼンタインクを吐出するノズルNを「N[M]」と表記し、イエローインクを吐出するノズルNを「N[Y]」と表記し、ブラックインクを吐出するノズルNを「N[K]」と表記してある。反応液ノズル列LG1及び反応液ノズル列LG2は、相互に間隔をあけてX軸に沿って配列される。同様に、インクノズル列LI1、インクノズル列LI2、インクノズル列LI3、及び、インクノズル列LI4は、相互に間隔をあけてX軸に沿って配列される。
【0037】
反応液ノズル列LG1及び反応液ノズル列LG2は、インクノズル列LI1、インクノズル列LI2、インクノズル列LI3、及び、インクノズル列LI4に対してY2方向に位置する。より具体的には、図5に示す仮想直線GLに対して、反応液ノズル列LG1及び反応液ノズル列LG2はY2方向に位置し、インクノズル列LI1、インクノズル列LI2、インクノズル列LI3、及び、インクノズル列LI4はY1方向に位置する。図5に示すノズルNの配置態様によれば、反応液が媒体PPに着弾した後に、インクノズル列LI1~LI4の各ノズルNから吐出されたインクを媒体PPに着弾させることができる。
【0038】
説明を図1図3に戻す。搬送機構7は、制御部13の制御のもと、媒体PPをY1方向に搬送する。図3に示すように、搬送機構7は、駆動ローラー71と、従動ローラー72と、搬送ベルト73と、加圧ローラー75と、不図示の巻き取りローラーとを有する。駆動ローラー71は、X軸に平行な回転軸AX1によって回転する。従動ローラー72は、X軸に平行な回転軸AX2によって回転する。駆動ローラー71は、従動ローラー72に対してY1方向に配置される。駆動ローラー71の回転は、制御部13によって制御される。従動ローラー72は、駆動ローラー71の回転に連動して回転する。
【0039】
搬送ベルト73は、弾性を有する平板の両端を接合した無端ベルトとして構成される。搬送ベルト73は、駆動ローラー71の外周面及び従動ローラー72の外周面に巻き掛けられる。搬送ベルト73は、周回移動されることで媒体PPを搬送可能である。
【0040】
搬送ベルト73の表面73Dは、粘着性を有し、媒体PPを支持可能である。粘着性とは、他の部材と一時的に接着可能であり且つ接着状態からの剥離が可能となる特性を意味する。更に、搬送ベルト73の温度が上昇することに応じて、搬送ベルト73の粘着力が大きくなる性質を有する。以下の記載では、表面73Dのうち、回転軸AX1及び回転軸AX2よりもZ2方向に位置し、且つ、X-Y平面に沿った部分を上面部73Z2と記載することがある。上面部73Z2は、媒体PPを支持する。更に、表面73Dのうち、回転軸AX1及び回転軸AX2よりもZ1方向に位置し、且つ、X-Y平面に沿った部分を下面部73Z1と記載することがある。また、表面73Dのうち、駆動ローラー71に巻き掛けられる部位を曲面部73Y1と記載することがあり、従動ローラー72に巻き掛けられる部位を曲面部73Y2と記載することがある。
【0041】
加圧ローラー75は、搬送ベルト73と媒体PPとを圧着させるために、媒体PPを加圧する。加圧ローラー75は、上面部73Z2のZ2方向に設けられる。また、不図示の巻取ローラーが媒体PPを巻き取ることにより、曲面部73Y1から媒体PPを剥離させる。
【0042】
図3に示すように、液体吐出装置1は、更に、支持部25と、筐体27とを有する。支持部25は、搬送機構7に対してZ1方向に設けられ、搬送機構7を支持する。筐体27は、上面部73Z2の一部から曲面部73Y2までを覆う外装である。図3に示すように、筐体27は、液体吐出ヘッドHUと、制御モジュール10と、計測モジュール3とを収容する。筐体27は、液体吐出ヘッドHUと、制御モジュール10と、計測モジュール3とを外部から保護する。また、筐体27によって、筐体27内の空気と、筐体27外の空気とが混合しにくくなる。図1に示すように、液体吐出ヘッドHUには、インク吐出部ID及び反応液吐出部GDが含まれるから、インク吐出部ID及び反応液吐出部GDは、筐体27に収容されている。
【0043】
移動機構8は、制御部13の制御のもと、液体吐出ヘッドHUをX軸に沿って往復させる。図2に示すように、移動機構8は、液体吐出ヘッドHUを収容する略箱型のキャリッジ81と、キャリッジ81が固定された無端ベルト82とを具備する。図3では、無端ベルト82の表示を省略してある。なお、液体容器18を液体吐出ヘッドHUとともにキャリッジ81に搭載した構成も採用され得る。
【0044】
計測モジュール3は、媒体PPの含水率を推定可能な含水率情報WIを生成する。含水率とは、物質に含まれる水分の割合を意味する。媒体PPの含水率は、物質の重量に対する物質に含まれる水分の重量の割合でもよいし、物質の体積に対する物質に含まれる水分の体積の割合でもよい。計測モジュール3は、含水率情報WIを制御部13に出力する。含水率情報WIは、媒体PPの含水率そのものを示す情報でもよいし、媒体PPの含水率と相関関係を有することにより、媒体PPの含水率を推定可能な情報でもよい。相関関係は、2つのうち一方が変化すると他方も変化する関係を意味する。
【0045】
本実施形態に係る含水率情報WIは、媒体PPの含水率を推定可能な情報として、筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報を有する。媒体PPの含水率は、媒体PP付近の水蒸気量により推定できる。そして、水蒸気量は、温度と湿度とにより算出できる。例えば、ある材質からなる媒体PPにおいて、媒体PP付近の水蒸気量が約6.0[g/m]である場合、媒体PPの含水率は、約6.0[%]であり、水蒸気量が約7.8[g/m]である場合、媒体PPの含水率は、約7.4[%]である。また、他の材質からなる媒体PPにおいて、水蒸気量が約7.8[g/m]である場合、媒体PPの含水率は、約10.4[%]であり、水蒸気量が約10.9[g/m]である場合、媒体PPの含水率は、約11.6[%]である。[g/m]は、グラム毎立方メートルを意味する。[%]は、パーセントを意味する。
【0046】
筐体27内の温度が上昇することに応じて媒体PPの含水率が低下する傾向にあり、筐体27内の湿度が上昇することに応じて媒体PPの含水率が上昇する傾向にある。従って、含水率情報WIが筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報のいずれか一方のみを有する態様であっても、筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報の両方を含む態様と比較して推定精度は低下するものの、媒体PPの含水率を推定することはできる。従って、含水率情報WIは、筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報のいずれか一方のみを有してもよい。以下の説明では、含水率情報WIは、筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報の両方を含む態様であるとして説明する。
【0047】
図3に示すように、計測モジュール3は、筐体27内に設けられる。より具体的には、計測モジュール3は、筐体27内であって、上面部73Z2に対してZ2方向に位置し、且つ、制御モジュール10と加圧ローラー75との間に設置される。計測モジュール3は、温度計測部31と、湿度計測部33とを有する。温度計測部31は、筐体27内の温度を計測する。湿度計測部33は、筐体27内の湿度を計測する。計測モジュール3は、温度計測部31が計測した筐体27内の温度を示す情報と、湿度計測部33が計測した筐体27内の湿度を示す情報とを有する含水率情報WIを生成し、生成した含水率情報WIを制御部13に出力する。
【0048】
加熱部5は、制御部13の制御のもと、搬送ベルト73を加熱する。制御部13は、加熱部5の設定温度を示す設定情報TIを記憶部14から読み出して、読み出した設定情報TIを加熱部5に出力する。例えば、制御部13は、加熱部5の制御レジスターに、設定情報TIを書き込む。設定情報TIは、例えば、55[℃]又は45[℃]等である。[℃]は、摂氏温度を示す。加熱部5は、下面部73Z1に対してZ1方向に間を空けて配置される。加熱部5が加熱することにより、下面部73Z1が非接触状態で加熱される。上述したように、搬送ベルト73は、搬送ベルト73の温度が上昇することにより、粘着力が大きくなる。従って、加熱部5が搬送ベルト73を加熱することにより、媒体PPの搬送精度及び媒体PPの姿勢精度を向上できる。媒体PPの搬送精度とは、液体吐出装置1の設計者が想定する媒体PPの搬送速度と、媒体PPの実際の搬送速度との一致の程度を意味する。媒体PPの姿勢精度とは、Y軸に沿う方向と、媒体PPの実際の長手方向との一致の程度を意味する。
【0049】
印刷処理では、制御部13は、液体吐出ヘッドHUを制御するための印刷信号SIと、駆動信号生成回路12を制御するための波形指定信号dComと、搬送機構7を制御するための信号と、移動機構8を制御するための信号とを生成する。
ここで、波形指定信号dComは、駆動信号Comの波形を規定するデジタルの信号である。駆動信号Comとは、インク吐出部ID及び反応液吐出部GDを駆動するためのアナログの信号である。駆動信号生成回路12は、DA変換回路を含み、波形指定信号dComが規定する波形を有する駆動信号Comを生成する。なお、本実施形態では、駆動信号Comが、駆動信号Com-Aと駆動信号Com-Bとを含む場合を想定する。
【0050】
制御部13は、記憶部14に記憶された制御プログラムを読み出して、読み出した制御プログラムを実行することにより、取得部131と、吐出制御部133として機能する。取得部131は、計測モジュール3から含水率情報WIを取得する。吐出制御部133は、含水率情報WIに基づいて、インク吐出部ID及び反応液吐出部GDの動作を制御する。具体的には、吐出制御部133は、含水率情報WIに基づいた印刷信号SIと波形指定信号dComを出力することにより、インク吐出部ID及び反応液吐出部GDの動作を制御する。吐出制御部133のより詳細な動作は、後述する図10を用いて後述する。
【0051】
1-2.液体吐出ヘッドHUの構成
以下、図6を参照しつつ、液体吐出ヘッドHUの構成について説明する。
【0052】
図6は、液体吐出ヘッドHUの構成の一例を示すブロック図である。上述のように、液体吐出ヘッドHUは、記録ヘッドHDと、切替回路20と、を備える。また、液体吐出ヘッドHUは、駆動信号生成回路12から駆動信号Com-Aが供給される内部配線LHaと、駆動信号生成回路12から駆動信号Com-Bが供給される内部配線LHbと、定電位信号Vbsが供給される内部配線LHdと、を備える。内部配線LHdは、共通電極Quに電気的に接続される。
【0053】
図6に示すように、切替回路20は、K個のスイッチSWa[1]~SWa[K]と、K個のスイッチSWb[1]~SWb[K]と、各スイッチの接続状態を指定する接続状態指定回路21と、を備える。なお、各スイッチとしては、例えば、トランスミッションゲートを採用することができる。
接続状態指定回路21は、制御部13から供給される印刷信号SI、ラッチ信号LAT、及び、チェンジ信号CHの少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチSWa[1]~SWa[K]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLa[1]~SLa[K]と、スイッチSWb[1]~SWb[K]のオンオフを指定する接続状態指定信号SLb[1]~SLb[K]と、を生成する。
1からKまでの任意のkについて、スイッチSWa[k]は、接続状態指定信号SLa[k]に応じて、内部配線LHaと、吐出部D[k]に設けられた圧電素子PZ[k]の個別電極Qd[k]と、の導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWa[k]は、接続状態指定信号SLa[k]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
1からKまでの任意のkについて、スイッチSWb[k]は、接続状態指定信号SLb[k]に応じて、内部配線LHbと、吐出部D[k]に設けられた圧電素子PZ[k]の個別電極Qd[k]との、導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチSWb[k]は、接続状態指定信号SLb[k]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
【0054】
1-3.液体吐出ヘッドHUの動作
以下、図7及び図8を参照しつつ、液体吐出ヘッドHUの動作について説明する。
【0055】
本実施形態において、液体吐出装置1の動作期間は、1又は複数の単位制御期間Tuを含む。本実施形態に係る液体吐出装置1は、各単位制御期間Tuにおいて、印刷処理における各吐出部Dの駆動を実行する。液体吐出装置1は、連続的又は間欠的な複数の単位制御期間Tuに亘り印刷処理を繰り返し実行して、反応液吐出部GDが1又は複数回反応液を吐出し、インク吐出部IDから1又は複数回ずつインクを吐出させることで、印刷データImgが示す画像を形成する。
【0056】
図7は、液体吐出装置1の単位制御期間Tuにおける動作を説明するためのタイミングチャートである。図7に示すように、制御部13は、パルスPlsLを有するラッチ信号LATを出力する。これにより、制御部13は、パルスPlsLの立ち上がりから次のパルスPlsLの立ち上がりまでの期間として、単位制御期間Tuを規定する。また、制御部13は、パルスPlsCにより、単位制御期間Tuを2つの制御期間Tu1、及び制御期間Tu2に区分する。
【0057】
印刷信号SIは、各単位制御期間Tuにおける吐出部D[1]~D[K]の駆動の態様を指定する個別指定信号Sd[1]~Sd[K]を含む。そして、制御部13は、単位制御期間Tuにおいて印刷処理が実行される場合、図7に示すように、当該単位制御期間Tuの開始に先立って、個別指定信号Sd[1]~Sd[K]を含む印刷信号SIを、クロック信号CLに同期させて接続状態指定回路21に供給する。この場合、接続状態指定回路21は、1からKまでの任意のkについて、当該単位制御期間Tuにおいて、個別指定信号Sd[k]に基づいて、接続状態指定信号SLa[k]、SLb[k]を生成する。
【0058】
なお、本実施形態に係る個別指定信号Sd[k]は、各単位制御期間Tuにおいて、吐出部D[k]に対して、大ドットに相当する量のインクの吐出、中ドットに相当する量のインクの吐出、小ドットに相当する量のインクの吐出、及び、インク又は反応液の粘度の増大を抑制するための微振動駆動の4つの駆動態様のうち、いずれか一つの駆動態様を指定する信号である。以下、大ドットに相当する量を、「大程度の量」と称する場合がある。そして、大程度の量のインクの吐出を、「大ドットの形成」と称する場合がある。中ドットに相当する量を、「中程度の量」と称する場合がある。そして、中程度の量のインクの吐出を、「中ドットの形成」と称する場合がある。また、小ドットに相当する量を、「小程度の量」と称する場合がある。また、小程度の量のインクの吐出を、「小ドットの形成」と称する場合がある。
【0059】
図8に示すように、駆動信号生成回路12は、制御期間Tu1に設けられた中ドット用波形PYと、制御期間Tu2に設けられた大ドット用波形PXと、を有する駆動信号Com-Aを出力する。更に、駆動信号生成回路12は、制御期間Tu1に設けられた微振動駆動波形PSと、制御期間Tu2に設けられた小ドット用波形PWと、を有する駆動信号Com-Bを出力する。液体吐出装置1の設計者は、駆動電圧ΔVhXが最も大きく、駆動電圧ΔVhY、駆動電圧ΔVhW、駆動電圧ΔVhSの順に小さくなるように、大ドット用波形PX、中ドット用波形PY、小ドット用波形PW、及び、微振動駆動波形PSを設計する。駆動電圧ΔVhXは、大ドット用波形PXの最高電位VHXと最低電位VLXとの電位差である。駆動電圧ΔVhYは、中ドット用波形PYの最高電位VHYと最低電位VLYとの電位差である。駆動電圧ΔVhWは、小ドット用波形PWの最高電位VHWと最低電位VLWとの電位差である。駆動電圧ΔVhSは、微振動駆動波形PSの最高電位であり、初期電位V0と最低電位VLSとの電位差である。
【0060】
そして、1からKまでの任意のkについて、個別指定信号Sd[k]が吐出部D[k]に対して、大程度の量のインク又は反応液の吐出を指定する場合、接続状態指定回路21は、接続状態指定信号SLa[k]を、制御期間Tu1においてローレベルに設定し、制御期間Tu2においてハイレベルに設定し、接続状態指定信号SLb[k]を、単位制御期間Tuにおいてローレベルに設定する。これにより、吐出部D[k]は、制御期間Tu2において大程度の量のインク又は反応液を吐出する。
1からKまでの任意のkについて、個別指定信号Sd[k]が吐出部D[k]に対して、中程度の量のインク又は反応液の吐出を指定する場合、接続状態指定回路21は、接続状態指定信号SLa[k]を、制御期間Tu1においてハイレベルに設定し、制御期間Tu2においてローレベルに設定し、接続状態指定信号SLb[k]を、単位制御期間Tuにおいてローレベルに設定する。これにより、吐出部D[k]は、制御期間Tu1において中程度の量のインク又は反応液を吐出する。
1からKまでの任意のkについて、個別指定信号Sd[k]が吐出部D[k]に対して、小程度の量のインク又は反応液の吐出を指定する場合、接続状態指定回路21は、接続状態指定信号SLb[k]を、制御期間Tu1においてローレベルに設定し、制御期間Tu2においてハイレベルに設定し、接続状態指定信号SLa[k]を、単位制御期間Tuにおいてローレベルに設定する。これにより、吐出部D[k]は、制御期間Tu2において小程度の量のインク又は反応液を吐出する。
1からKまでの任意のkについて、個別指定信号Sd[k]が吐出部D[k]に対して、微振動駆動を指定する場合、接続状態指定回路21は、接続状態指定信号SLb[k]を、制御期間Tu1においてハイレベルに設定し、制御期間Tu2においてローレベルに設定し、接続状態指定信号SLa[k]を、単位制御期間Tuにおいてローレベルに設定する。これにより、吐出部D[k]は、制御期間Tu2においてノズルNのインク又は反応液を微振動させる。
【0061】
図8は、1からKまでの任意のkについて、接続状態指定信号SLa[k]及びSLb[k]の生成を説明するための説明図である。接続状態指定回路21は、図8に従って、個別指定信号Sd[k]をデコードし、接続状態指定信号SLa[k]及びSLb[k]を生成する。
【0062】
図8に示すように、本実施形態に係る個別指定信号Sd[k]は、大ドットの量の吐出を指定する値(1,1)、中ドットの量の吐出を指定する値(1,0)、小ドットの量の吐出を指定する値(0,1)、及び、微振動駆動を指定する値(0,0)のいずれかの値を示す。そして、接続状態指定回路21は、個別指定信号Sd[k]が(1,1)を示す場合、制御期間Tu2において接続状態指定信号SLa[k]をハイレベルとし、以上に該当しない場合において各信号をローレベルとする。また、接続状態指定回路21は、個別指定信号Sd[k]が(1,0)を示す場合、制御期間Tu1において接続状態指定信号SLa[k]をハイレベルとし、以上に該当しない場合において各信号をローレベルとする。また、接続状態指定回路21は、個別指定信号Sd[k]が(0,1)を示す場合、制御期間Tu2において接続状態指定信号SLb[k]をハイレベルとし、以上に該当しない場合において各信号をローレベルとする。
【0063】
1-4.インク吐出部ID及び反応液吐出部GDの制御
上述したように、加熱部5が搬送ベルト73を加熱することにより、媒体PPの搬送精度及び媒体PPの姿勢精度を向上できる。しかしながら、加熱部5の加熱を続けることにより、搬送ベルト73の温度及び筐体27内の温度が上昇して、媒体PPの含水率が低下する。そして、媒体PPの含水率が低下すると、媒体PPへのインクの浸透が十分に進まずに発色が低下し、また、埋まりも劣化するため、濃淡ムラが発生することが発明者らの実験により得られた。濃淡ムラの一例として、画像内のグラデーションに現れる濃淡の縞であるバンディングが発生し得る。発明者らの実験により、媒体PPの含水率を上昇させることにより濃淡ムラの発生を抑制できることがわかった。より具体的には、媒体PPの含水率が所定の基準値以上である場合に、濃淡ムラが発生しないという結果が得られた。所定の基準値は、例えば9[%]である。図9を用いて、媒体PPの含水率と濃淡ムラとの関係について説明する。
【0064】
図9は、媒体PPの含水率と濃淡ムラとの関係を説明するための図である。図9に示すように、媒体PPの含水率が7[%]又は8[%]である場合には、濃淡ムラが発生し、媒体PPの含水率が9[%]又は10[%]である場合には、濃淡ムラが発生しないという結果が得られた。
【0065】
そこで、第1実施形態において、制御部13は、印刷処理を実行する前の状態の媒体PPの含水率を推定可能な含水率情報WIに基づく動作態様によって反応液を吐出するように、反応液吐出部GDの動作を制御し、反応液が着弾した媒体PP上にインクを着弾させるように、インク吐出部の動作を制御する。
【0066】
1-5.液体吐出装置1の動作
図10は、液体吐出装置1の動作を示すフローチャートである。ステップS2において、取得部131は、計測モジュール3から、含水率情報WIを取得する。次に、ステップS4において、吐出制御部133は、含水率情報WIに基づいて、媒体PPの含水率が所定の基準値以上であるか否かを判定する。例えば、記憶部14には、筐体27内の温度と筐体27内の湿度と媒体PPの含水率との関係を示す含水率関係テーブルが記憶されている。吐出制御部133は、含水率関係テーブルと含水率情報WIとに基づいて、媒体PPの含水率を推定する。但し、記憶部14には、含水率関係テーブルの替わりに、筐体27内の温度を示す情報と筐体27内の湿度を示す情報とを入力することにより媒体PPの含水率を出力するプログラムが記憶されてもよい。吐出制御部133は、このプログラムを記憶部14から読み出して、このプログラムに含水率情報WIに含まれる筐体27内の温度を示す情報と筐体27内の湿度を示す情報とを入力することにより得られた含水率を、媒体PPの含水率として推定する。吐出制御部133は、推定した媒体PPの含水率が9[%]以上であるか否かを判定する。
【0067】
ステップS4の判定結果が肯定である場合、ステップS6において、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様に決定する。基準の吐出態様は、例えば、媒体PPの含水率が十分である場合に、媒体PPに対してインクが十分に定着できる程度の量の反応液を吐出する態様である。基準の吐出態様は、液体吐出装置1の設計者によって設定される。
【0068】
ステップS4の判定結果が否定である場合、ステップS8において、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となる吐出態様に決定する。具体的な吐出態様は、例えば、以下に示す3つの吐出態様がある。
【0069】
第1の吐出態様は、吐出の回数で媒体PPの含水率を調整する態様である。以下、吐出の回数を、ショット数と記載することがある。反応液には水が含まれるため、ショット数を基準回数よりも増加させることにより、基準の吐出態様と比較して、媒体PPの含水率をより上昇させることができる。第2の吐出態様は、駆動電圧で媒体PPの含水率を調整する態様である。駆動電圧を基準の駆動電圧より大きくすることにより吐出量が増加するため、基準の吐出態様と比較して、媒体PPの含水率を上昇させることができる。例えば、制御部13は、駆動電圧が高くなるように指定した波形指定信号dComを駆動信号生成回路12に出力する。第3の吐出態様は、ドットサイズで含水率を調整する態様である。具体的には、制御部13は、小ドットの量の吐出を指定する値の替わりに、中ドットの量、又は大ドットの量の吐出を指定する値を指定し、中ドットの量の吐出を指定する値の替わりに、大ドットの量の吐出を指定する値を指定する。基準の吐出態様より大きいドットサイズを選択することにより吐出量が増加するため、基準の吐出態様と比較して、媒体PPの含水率を上昇させることができる。
【0070】
上述した第1の吐出態様から第3の吐出態様までのいずれか1つの吐出態様により、反応液吐出部GDが1単位制御期間Tu内に吐出する反応液に含まれる水分量を、基準の吐出態様によって反応液吐出部GDが1単位制御期間Tu内に吐出する反応液に含まれる水分量より多くすることできる。第1の吐出態様から第3の吐出態様までのいずれか1つの吐出態様により反応液吐出部GDが吐出する反応液に含まれる水分量を、以下、「調整水分量」と記載することがある。また、基準の吐出態様によって反応液吐出部GDが吐出する反応液に含まれる水分量を、以下、「基準水分量」と記載することがある。調整水分量は、「第2の水分量」の一例である。
【0071】
ステップS6の処理終了後、又は、ステップS8の処理終了後、制御部13は、ステップS10において、印刷処理が終了したか否かを判定する。ステップS10の判定結果が否定である場合、ステップS12において、反応液吐出部GDは、吐出制御部133の制御のもと、ステップS6又はステップS8で決定した吐出態様で反応液を吐出する。
【0072】
次に、インク吐出部IDは、ステップS14において、吐出制御部133の制御のもと、反応液が着弾した媒体PP上にインクを着弾させるように、印刷信号SIに従ってインクを媒体PPに吐出する。より具体的には、インク吐出部IDは、媒体PP上の反応液と重なるように、インクを吐出する。例えば、反応液吐出部GDにより媒体PP上の印刷領域全域に一様にステップS6又はステップS8で決定した吐出態様で反応液を吐出し、その後、反応液が着弾している印刷領域上にインク吐出部IDにより印刷データImgに応じてインクを吐出する。ステップS14の処理終了後、吐出制御部133は、ステップS10の処理に戻る。ステップS10の判定結果が肯定である場合、液体吐出装置1は、図10に示す一連の処理を終了する。
【0073】
1-6.第1実施形態の実施例
以下、ステップS4及びステップS8の3つの吐出態様のそれぞれに対応する実施例を示すが、本発明は以下の例により限定されるものではない。以下、第1実施形態の実施例について、媒体PPの含水率を増加させない態様である比較例とともに説明する。
【0074】
図11及び図12は、第1実施形態の実施例を説明するための図である。図11では、比較例と、第1の吐出態様の実施例である第1実施例から第5実施例までと、を示してある。図12では、第2の吐出態様の実施例である第6実施例から第9実施例までと、第3の吐出態様の実施例である第10実施例から第13実施例までとを示してある。
【0075】
比較例及び第1実施例から第13実施例までは、環境温度が25[℃]であり、液体吐出装置1の環境湿度が60[%]であり、且つ、加熱部5を稼働させない基準状態で良好な印刷品質を得られる反応液の吐出態様を基準として説明してある。以下、この態様を、基準の吐出態様として記載することがある。基準水分量は、媒体PPの含水率が所定の基準値である場合に、良好な印刷品質が得られる、即ち、濃淡ムラが発生しない反応液の水分量とも言える。環境温度は、液体吐出装置1が設置されている空間の温度であり、言い換えると、液体吐出装置1の周囲の温度である。環境湿度は、液体吐出装置1が設置されている空間の湿度であり、言い換えると、液体吐出装置1の周囲の湿度である。媒体PPは、筐体27内に搬送される前では環境温度及び環境湿度の雰囲気中にさらされており、相対的に環境温度が高く環境湿度が低いほど媒体PPの含水率は低い傾向がある。比較例、及び、第1実施例から第13実施例までにおいて、加熱部5の設定温度は、55[℃]で共通であり、反応液の水分量は、60[%]で共通である。
【0076】
比較例は、環境温度が25[℃]であり、環境湿度が60[%]であり、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が10[%]となり、さらに、55[℃]に設定された加熱部5により搬送ベルト73が加熱され、筐体27内の温度が35[℃]であり、筐体27内の湿度が45[%]である状態で、ショット数を基準の吐出態様の1倍とし、ドットサイズを中ドットとし、中ドットの駆動電圧ΔVhYを20[V]として反応液を吐出した態様である。つまり、比較例は、上述した基準状態に対して加熱部5を設定温度55[℃]で稼働させている点で異なる。なお、[V]は、電圧を表す単位であるボルトを示す。比較例では、印刷処理初期時に含水率が10[%]であった媒体PPが加熱部5によって加熱された搬送ベルト73で搬送されることにより、媒体PPの含水率が上述した基準状態の媒体PPの含水率より低下したにもかかわらず、基準の吐出態様で反応液が吐出されたため、印刷処理時の媒体PPの含水率が所定の基準値の一例である9[%]未満である5[%]となり、そこに着弾させたインクに濃淡ムラが発生している。図11の濃淡ムラの欄に示すバツ記号は、濃淡ムラが発生することを意味している。図11及び図12の濃淡ムラの欄に示す丸記号は、濃淡ムラが発生しないことを意味している。
【0077】
1-6-1.第1の吐出態様の実施例
第1の吐出態様の実施例である第1実施例から第5実施例では、ショット数で媒体PPの含水率を調整する態様であるから、第1実施例から第5実施例までのそれぞれのショット数の欄に網掛けを付与してある。ショット数で媒体PPの含水率を調整することは、「駆動素子に供給される駆動信号を変更する」ことの一例である。
【0078】
第1実施例は、比較例と環境条件が同一である。第1実施例では、ステップS4において、吐出制御部133は、計測モジュール3から出力された含水率情報WIが有する筐体27内の温度35[℃]を示す情報および筐体27内の湿度45[%]を示す情報から、基準の吐出態様で反応液を吐出した場合の印刷処理時の媒体PPの含水率は5[%]と推定する。吐出制御部133は、推定した媒体PPの含水率5[%]が所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液のショット数を基準の吐出態様の1.5倍に設定した態様である。
第2実施例は、環境温度が30[℃]であり、環境湿度が70[%]であり、第1実施例と比べ高温高湿であり、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が第1実施例より高い12[%]である。第2実施例では、ステップS4において、吐出制御部133は、計測モジュール3から出力された含水率情報WIが有する筐体27内の温度が40[℃]であることを示す情報及び筐体27内の湿度が55[%]であることを示す情報から、基準の吐出態様で反応液を吐出した場合の印刷処理時の媒体PPの含水率は7[%]と推定する。吐出制御部133は、推定した媒体PPの含水率7[%]が所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液のショット数を基準の吐出態様の1.2倍に設定した態様である。
第3実施例では、環境温度が30[℃]であり、環境湿度が50[%]であり、第1実施例と比べ高温低湿であり、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が第1実施例より低い8[%]である。第3実施例では、ステップS4において、吐出制御部133は、計測モジュール3から出力された含水率情報WIが有する筐体27内の温度が40[℃]であることを示す情報及び筐体27内の湿度が30[%]であることを示す情報から、基準の吐出態様で反応液を吐出した場合の印刷処理時の媒体PPの含水率は3[%]と推定する。吐出制御部133は、推定した媒体PPの含水率3[%]が所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液のショット数を基準の吐出態様の2.0倍に設定した態様である。
第4実施例では、環境温度が20[℃]であり、環境湿度が70[%]であり、第1実施例と比べ低温高湿であり、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が第1実施例より高い12[%]である。第4実施例では、ステップS4において、吐出制御部133は、計測モジュール3から出力された含水率情報WIが有する筐体27内の温度が30[℃]であることを示す情報及び筐体27内の湿度が55[%]であることを示す情報から、基準の吐出態様で反応液を吐出した場合の印刷処理時の媒体PPの含水率は8[%]と推定する。吐出制御部133は、推定した媒体PPの含水率8[%]が所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液のショット数を基準の吐出態様の1.1倍に設定した態様である。
第5実施例では、環境温度が20[℃]であり、環境湿度が50[%]であり、第1実施例と比べ低温低湿であり、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が第1実施例より低い8[%]である。第5実施例では、ステップS4において、吐出制御部133は、計測モジュール3から出力された含水率情報WIが有する筐体27内の温度が30[℃]であることを示す情報及び筐体27内の湿度が30[%]であることを示す情報から、基準の吐出態様で反応液を吐出した場合の印刷処理時の媒体PPの含水率は4[%]と推定する。吐出制御部133は、推定した媒体PPの含水率4[%]が所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液のショット数を基準の吐出態様の1.8倍に設定した態様である。
第1実施例から第5実施例まででは、印刷処理時の媒体PPの含水率が9[%]以上である10[%]となり、濃淡ムラが発生していない。
【0079】
第1実施例から第5実施例までから理解されるように、加熱部5により搬送ベルト73が加熱されるため、環境温度に対して筐体27内の温度は高く、環境湿度に対し筐体27内の湿度は低くなるものの、環境温度と筐体27内の温度とは比例関係にあり、環境湿度と筐体27内の湿度とは比例関係にある。また、環境湿度が低下することに応じて、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が低下すると共に筐体27内の湿度が低下する。水蒸気量が一定である場合、環境温度が上昇すると環境湿度が低下する。従って、環境温度が上昇することに応じて、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が低下する。同様に、筐体27内の温度が上昇すると筐体27内の湿度が低下し、筐体27内に搬送された媒体PPの含水率も低下する。このような関係から、筐体27内の温度と湿度から媒体PPの含水率を推定することができる。濃淡ムラを発生させないために媒体PPの含水率が所定の基準値以上を維持しようとする前提では、高温低湿である場合の反応液の吐出量が最も多く、低温低湿、高温高湿、低温高湿の順に、反応液の吐出量を少なくすればよい。
【0080】
1-6-2.第2の吐出態様の実施例
第2の吐出態様の実施例である第6実施例から第9実施例では、駆動電圧で媒体PPの含水率を調整する態様であるから、第6実施例から第9実施例までのそれぞれの駆動電圧の欄に網掛けを付与してある。駆動電圧で媒体PPの含水率を調整することは、「駆動素子に供給される駆動信号を変更する」ことの一例である。
【0081】
第6実施例は、第2実施例と環境条件が同一であり、ステップS4において、第2実施例と同様に、媒体PPの含水率は、7[%]と推定し、所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液の駆動電圧を24[V]に設定した態様である。
第7実施例は、第3実施例と環境条件が同一であり、ステップS4において、第3実施例と同様に、媒体PPの含水率は、3[%]と推定し、所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液の駆動電圧を26[V]に設定した態様である。
第8実施例は、第4実施例と環境条件が同一であり、ステップS4において、第4実施例と同様に、媒体PPの含水率は、8[%]と推定し、所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液の駆動電圧を22[V]に設定した態様である。
第9実施例は、第5実施例と環境条件が同一であり、ステップS4において、第5実施例と同様に、媒体PPの含水率は、4[%]と推定し、所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液の駆動電圧を23[V]に設定した態様である。
第6実施例から第9実施例では、印刷処理時の媒体PPの含水率が9[%]以上である10[%]となり、濃淡ムラが発生していない。
【0082】
第6実施例から第9実施例までから理解されるように、駆動電圧を大きくすることにより、1回のショット数あたりの吐出量を増加させることによって、印刷処理時の媒体PPの含水率が9[%]以上を維持できる。
【0083】
1-6-3.第3の吐出態様の実施例
第3の吐出態様の実施例である第10実施例から第13実施例では、ドットサイズで媒体PPの含水率を調整する態様であるから、第10実施例から第13実施例までのそれぞれのドットサイズの欄に網掛けを付与してある。ドットサイズで媒体PPの含水率を調整することは、「駆動素子に供給される駆動信号を変更する」ことの一例である。
【0084】
第10実施例は、第2実施例と環境条件が同一であり、ステップS4において、第2実施例と同様に、媒体PPの含水率は、7[%]と推定し、所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液の複数のショット数の一部を中ドットから大ドットに設定した態様である。
第11実施例は、第3実施例と環境条件が同一であり、ステップS4において、第3実施例と同様に、媒体PPの含水率は、3[%]と推定し、所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液の複数のショット数の全てを中ドットから大ドットに設定した態様である。
第12実施例は、第4実施例と環境条件が同一であり、ステップS4において、第4実施例と同様に、媒体PPの含水率は、8[%]と推定し、所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液の複数のショット数の一部を中ドットから大ドットに設定した態様である。第10実施例における中ドットの回数に対する大ドットの回数の割合Rt10は、第12実施例における中ドットの回数に対する大ドットの回数の割合Rt12より大きい。
第13実施例は、第5実施例と環境条件が同一であり、ステップS4において、第5実施例と同様に、媒体PPの含水率は、4[%]と推定し、所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液の複数のショット数の全てを中ドットから大ドットに設定した態様である。
第10実施例から第13実施例まででは、媒体PPの含水率が9[%]以上である10[%]または12[%]となり、濃淡ムラが発生していない。
【0085】
第10実施例から第13実施例までから理解されるように、ドットサイズを大きくすることにより、1回のショット数あたりの吐出量が増加して、印刷処理時の媒体PPの含水率が9[%]以上を維持できる。
【0086】
1-7.第1実施形態のまとめ
以上説明したように、第1実施形態に係る液体吐出装置1は、媒体PPに対してノズルNからインクを吐出するインク吐出部IDと、媒体PPに対して第2ノズルからインクを凝集する凝集剤と水とを含む反応液を吐出する反応液吐出部GDと、インク吐出部IDの動作と反応液吐出部GDの動作とを制御する制御部13と、を備え、制御部13は、媒体PPに画像を形成する印刷処理を実行する前の媒体PPの含水率を推定可能な含水率情報WIを取得し、含水率情報WIに基づいて、反応液吐出部GDの動作を制御し、反応液が着弾した媒体PP上に、インクを着弾させるように、インク吐出部IDの動作を制御する。
第1実施形態に係る液体吐出装置1は、含水率情報WIによって媒体PPが乾燥しているか判定できるため、媒体PPが乾燥している場合でも水分を含む反応液の吐出を調整することにより、媒体PPを湿潤させることができる。媒体PPが湿潤することにより、媒体PPへのインクの浸透が進むため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0087】
また、吐出制御部133は、含水率情報WIによって推定される媒体PPの含水率が低いことに応じて、調整水分量が多くなるように反応液吐出部GDの動作を制御する。
第2実施例、第3実施例、第4実施例、及び、第5実施例のうち、環境条件が低温高湿である第4実施例が含水率情報WIによって推定される媒体PPの含水率が最も高く、高温高湿である第2実施例、中温中湿である第1実施例、低温低湿である第5実施例、高温低湿である第3実施例の順に、含水率情報WIによって推定される媒体PPの含水率が低くなる。従って、制御部13は、第4実施例、第2実施例、第1実施例、第5実施例、第3実施例、の順に調整水分量が多くなるように、ショット数を決定する。同様に、制御部13は、第8実施例、第6実施例、第9実施例、第7実施例、の順に調整水分量が多くなるように、駆動電圧を決定する。同様に、制御部13は、第12実施例、第10実施例、第13実施例、第11実施例、の順に調整水分量が多くなるように、ドットサイズを決定する。
具体的には、第1実施例と第2実施例とを比較した場合、吐出制御部133は、第2実施例の含水率情報WIによって推定される媒体PPの含水率が12[%]である場合、基準のショット数の1.2倍のショット数で反応液を吐出するように、反応液吐出部GDの動作を制御し、第1実施例の含水率情報WIによって推定される媒体PPの含水率が第2実施例より低い5[%]である場合、第2実施例より多い基準のショット数の1.5倍のショット数で反応液を吐出するように、反応液吐出部GDの動作を制御する。
第2実施例の含水率情報WIによって推定される媒体PPの含水率7[%]が「第1の含水率」の一例であり、第2実施例の基準のショット数の1.2倍のショット数で吐出される反応液が、「第1の水分量を含む反応液」の一例である。一方、第1実施例の含水率情報WIによって推定される媒体PPの含水率5[%]が「第2の含水率」の一例であり、第1実施例の基準のショット数の1.5倍のショット数で吐出される反応液が、「第2の水分量を含む反応液」の一例である。
同様に、第1実施例から第13実施例において、吐出制御部133は、含水率情報WIによって推定される媒体PPの含水率が低いほど反応液の水分量が多くなるように反応液吐出部GDの動作が制御される。
【0088】
また、制御部13は、含水率情報WIによって推定される含水率が所定の基準値以上である場合、基準水分量を含む反応液を吐出するように、反応液吐出部GDの動作を制御し、含水率情報WIによって推定される含水率が所定の基準値未満である場合、基準水分量より多い調整水分量を含む反応液を吐出するように、反応液吐出部GDの動作を制御し、含水率情報WIによって推定される含水率が低いことに応じて、調整水分量が多い。
含水率が所定の基準値以上である場合には、媒体PPを湿潤させるための反応液の吐出の調整は不要であり、媒体PPに対してインクが十分に定着できる程度の量の反応液を吐出すればよい。以上により、第1実施形態に係る液体吐出装置1は、含水率が所定の基準値以上である場合には基準水分量の反応液を吐出することにより、調整水分量を含む反応液を吐出する態様と比較して、反応液を吐出する量を抑制できる。更に、第1実施形態に係る液体吐出装置1は、含水率情報WIによって推定される媒体PPの含水率が低いことに応じて、調整水分量を多くすることにより、媒体PPの含水率に応じて適切の量の反応液を吐出できる。
【0089】
また、所定の基準値は、9[%]である。
上述したように、インクが着弾する媒体PPの含水率が9[%]以上である場合に、濃淡ムラが発生しないという結果が得られた。従って、第1実施形態に係る液体吐出装置1は、含水率情報WIによって推定される含水率が9[%]未満である場合、基準水分量より多い調整水分量を含む反応液を吐出することにより、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0090】
また、液体吐出装置1は、インク吐出部IDと反応液吐出部GDとを収容する筐体27を更に備え、含水率情報WIは、筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報の両方を含む。
含水率情報WIが筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報の両方を含むことにより、含水率情報WIが筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報のいずれか一方のみを有する態様と比較して、媒体PPの含水率を精度良く推定できる。媒体PPの含水率を精度良く推定できることにより、以下に示す2つの状況のいずれか一方が発生することを抑制できる。第1の状況は、媒体PPの含水率が実際には所定の基準値以上であるにも関わらず所定の基準値未満と誤推定して調整水分量を含む反応液を吐出してしまうことである。第2の状況は、媒体PPの含水率が実際には所定の基準値未満であるにも関わらず所定の基準値以上と誤推定して基準水分量を含む反応液を吐出してしまうことである。第1の状況では、反応液を必要以上に吐出することになり、第2の状況では、濃淡ムラが発生する可能性がある。
【0091】
また、反応液吐出部GDは、ノズルNと、ノズルNに連通する圧力室320と、駆動信号Comに応じて圧力室320内の反応液の圧力を変動させる圧電素子PZとを備え、第6実施例から第13実施例までのように、制御部13は、含水率情報WIに基づいて、圧電素子PZに供給される駆動信号Comを変更して反応液吐出部GDから吐出させる反応液の量を調整するように、反応液吐出部GDの動作を制御する。
第1実施形態に係る液体吐出装置1は、駆動信号Comを変更することにより反応液の吐出量を調整できるため、媒体PPが乾燥している場合にも媒体PPを湿潤させることができ、濃淡ムラの発生を抑制できる。
また、第6実施例から第13実施例までと、第1実施例から第5実施例までとを比較すると、第1実施例から第5実施例までは、反応液のショット数を増加させるため、印刷処理に要する期間が延びる。一方、第6実施例から第13実施例までは、駆動信号Comを変更することにより1回のショットにおける反応液の吐出量を増加させるため、印刷処理に要する期間が延びることがない。以上により、第6実施例から第13実施例までは、第1実施例から第5実施例までと比較して、濃淡ムラの発生を抑制しつつ、印刷処理に要する期間が延びることを抑止できる。
【0092】
2.第2実施形態
第1実施形態に係る液体吐出装置1は、1種類の反応液を吐出する。一方、第2実施形態では、それぞれ含水率の異なる複数の反応液を有し、複数の反応液の中から、媒体PPの含水率に適した反応液を選択し、選択した反応液を吐出する。以下、第2実施形態について説明する。
【0093】
2-1.第2実施形態に係る液体吐出装置1-Aの概要
図13は、液体吐出装置1-Aを例示する模式図である。液体吐出装置1-Aは、液体容器18の替わりに液体容器18-Aを有する点で、液体吐出装置1と相違する。液体容器18-Aは、液体容器18gの替わりに、M個の液体容器18g-1~液体容器18g-Mを有する点で、液体容器18と相違する。Mは、2以上の整数である。以下、Mを、反応液種類数Mと記載することがある。M個の液体容器18g-1~液体容器18g-Mのそれぞれは、それぞれ含水率が異なる反応液を貯留する。
【0094】
M個の液体容器18g-1~液体容器18g-Mのそれぞれは、それぞれ異なる反応液吐出部GDに反応液を供給する。例えば、反応液種類数Mが2である場合に、液体容器18g-1は、図5に示した反応液ノズル列LG1に属するノズルNを有する反応液吐出部GDに反応液を供給し、液体容器18g-2は、反応液ノズル列LG2に属するノズルNを有する反応液吐出部GDに反応液を供給する。図13に例示されるように、1からMまでの全ての整数mについて、液体容器18g-mは、供給流路19g-mを経由してノズル列LG[m]に属する複数の反応液吐出部GDに反応液を供給する。液体容器18iは、供給流路19iを経由してインク吐出部IDに反応液を供給する。図13では、反応液吐出部GD及びインク吐出部IDを簡略化して表示してある。
【0095】
2-2.液体吐出装置1-Aの動作
図14は、液体吐出装置1-Aの動作を示すフローチャートである。図14に示すフローチャートは、図10に示すフローチャートに対して、ステップS4、ステップS6、及び、ステップS8の替わりにステップS22を実行し、ステップS12の替わりにステップS24を実行する。以下、図10に示すフローチャートからの変更点のみ説明する。
【0096】
ステップS2の処理終了後、制御部13は、ステップS22において、含水率情報WIに基づいて、M種類の反応液の中から1つの反応液を選択する。反応液の選択方法の一例について説明する。記憶部14は、上述した含水率関係テーブルに加えて、媒体PPの含水率に応じた反応液の種類を示す反応液テーブルGTを記憶する。
【0097】
図15は、反応液テーブルGTの内容の一例を示す図である。図15では、反応液種類数Mが3である場合の反応液テーブルGTの内容の一例を示してある。また、図15では、液体容器18g-1、液体容器18g-2、液体容器18g-3のそれぞれに貯留された反応液のうち、液体容器18g-1に貯留された反応液の含水率が最も高く、液体容器18g-3に貯留された反応液の含水率が最も低いことを前提とする。反応液テーブルGTは、媒体PPの含水率がa1[%]未満である場合の適切な反応液が液体容器18g-1に貯留された反応液であることを示す。適切な反応液は、この反応液を吐出することで、媒体PPの含水率が所定の基準値以上を維持できることを意味する。a1は、0以上の実数である。反応液テーブルGTは、媒体PPの含水率がa1[%]以上且つa2[%]未満である場合の適切な反応液が液体容器18g-2に貯留された反応液であり、媒体PPの含水率がa2[%]以上である場合の適切な反応液が液体容器18g-3に貯留された反応液であることを示す。a2は、a1より大きい実数である。反応液テーブルGTは、液体吐出装置1-Aの設計者によって生成される。a2は、媒体PPの含水率の所定の基準値とすることができる。
【0098】
制御部13は、第1実施形態のステップS4と同様に、含水率関係テーブルと含水率情報WIとに基づいて、媒体PPの含水率を推定する。そして、制御部13は、反応液テーブルGTを参照して、M種類の反応液のうち、推定した媒体PPの含水率に対して適切な反応液を選択する。例えば、a2が媒体PPの含水率の所定の基準値とした場合、推定した媒体PPの含水率が基準値a2以上であると判定した場合、吐出制御部133は、基準水分量を含む反応液を選択する。推定した媒体PPの含水率がa2未満であると判定した場合、吐出制御部133は、基準水分量より多い水分量を含む反応液を選択する。
ステップS22の処理終了後、制御部13は、ステップS10の処理を実行する。
【0099】
ステップS10の判定結果が否定である場合、ステップS24において、反応液吐出部GDは、制御部13の制御のもと、ステップS22で選択した反応液を吐出する。ステップS24の処理終了後、インク吐出部IDは、ステップS14の処理を実行する。
【0100】
2-3.第2実施形態の実施例
以下、第2実施形態の実施例を示すが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
【0101】
図16は、第2実施形態の実施例を説明するための図である。図16では、第2実施形態の実施例である第14実施例から第17実施例までを示してある。第14実施例から第17実施例では、反応液の水分量を変更する態様であると言えるため、第14実施例から第17実施例までのそれぞれの反応液の水分量の欄に網掛けを付与してある。また、第14実施例から第17実施例まででは、反応液の水分量に加えて、ショット数も基準の吐出態様から変更している。
【0102】
第14実施例から第17実施例までにおいて、M個の液体容器18g-1~液体容器18g-Mは、基準水分量60[%]の反応液が貯留される液体容器、基準水分量より多い63[%]の反応液が貯留される液体容器、基準水分量より多い65[%]の反応液が貯留される液体容器、基準水分量より多い73[%]の反応液が貯留される液体容器、及び基準水分量より多い75[%]の反応液が貯留される液体容器を含む。
第14実施例は、第2実施例と環境条件が同一であり、第2実施例と同様に、媒体PPの含水率は、7[%]と推定し、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、水分量を65[%]の反応液が供給される複数の反応液吐出部GDを選択し、ショット数を基準の吐出態様の1.2倍に設定する態様である。
第15実施例は、第3実施例と環境条件が同一であり、第3実施例と同様に、媒体PPの含水率は、3[%]と推定し、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、水分量が75[%]の反応液が供給される複数の反応液吐出部GDを選択し、ショット数が基準の吐出態様の1.6倍に設定する態様である。
第16実施例は、第4実施例と環境条件が同一であり、第4実施例と同様に、媒体PPの含水率は、8[%]と推定し、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、水分量が63[%]の反応液が供給される複数の反応液吐出部GDを選択し、ショット数を基準の吐出態様の1.1倍に設定する態様である。
第17実施例は、第5実施例と環境条件が同一であり、第5実施例と同様に、媒体PPの含水率は、4[%]と推定し、吐出制御部133は、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、水分量が73[%]の反応液が供給される複数の反応液吐出部GDを選択し、ショット数を基準の吐出態様の1.5倍に設定する態様である。
第14実施例から第17実施例まででは、媒体PPの含水率が9[%]以上である10[%]となり、濃淡ムラが発生していない。
【0103】
2-4.第2実施形態のまとめ
反応液吐出部GDは、含水率がそれぞれ異なる複数の反応液のうち一の反応液を吐出可能であり、制御部13は、複数の反応液の中から、含水率情報WIに基づき選択された反応液を吐出するように、反応液吐出部GDの動作を制御する。
第1実施形態に係る液体吐出装置1は、媒体PPの含水率が所定の基準値未満である場合に、媒体PPの含水率が所定の基準値以上である場合と比較して、基準水分量を含む反応液の総量を多く吐出するため、本来多く吐出する必要のない凝集剤まで不必要に多く吐出してしまう。一方、第2実施形態に係る液体吐出装置1-Aは、含水率情報WIに基づき選択された反応液を吐出することで、濃淡ムラの発生を抑制しつつ、第1実施形態に係る液体吐出装置1と比較して、凝集剤が不必要に多く吐出されることを抑制できる。また、第1実施形態に係る液体吐出装置1と比較して、ショット数を抑えることができ、印刷処理に要する期間の延長を小さくすることができる。
【0104】
3.第3実施形態
第2実施形態では、それぞれ含水率の異なる複数の反応液が貯留される液体容器を予め有していたが、これに限らない。第3実施形態では、基準水分量の反応液に水分を追加することにより、反応液吐出部GDから吐出される反応液含水率を調整する水分調整機構6を有する。以下、第3実施形態について説明する。
【0105】
3-1.第3実施形態に係る液体吐出装置1-Bの概要
図17は、液体吐出装置1-Bの構成の一例を例示する模式図である。図18は、液体吐出装置1-Bを例示する模式図である。液体吐出装置1-Bは、水分調整機構6を更に有し、液体容器18の替わりに液体容器18-Bを有する点で、液体吐出装置1と相違する。図18に示すように、液体容器18-Bは、水を貯留する液体容器18wを更に有する点で、液体容器18と相違する。
【0106】
水分調整機構6は、基準水分量の反応液に水分を追加することにより、反応液吐出部GDから吐出される反応液の含水率を増加させる。具体的には、水分調整機構6は、液体容器61と、液体容器18gと液体容器61とを連通する連通流路62と、連通流路62の途中に設けられたポンプ63と、液体容器18wと液体容器61とを連通する連通流路64と、連通流路64の途中に設けられたポンプ65とを有する。ポンプ63及びポンプ65は、例えば、チューブポンプ、ダイアフラムポンプ、又は、シリンジポンプである。制御部13は、ポンプ63及びポンプ65の動作を制御可能である。図18に例示されるように、液体容器61は、供給流路19gを経由して反応液吐出部GDに反応液を供給する。液体容器18iは、供給流路19iを経由してインク吐出部IDに反応液を供給する。
【0107】
3-2.液体吐出装置1-Bの動作
図19は、液体吐出装置1-Bの動作を示すフローチャートである。図19に示すフローチャートは、図10に示すフローチャートに対して、ステップS4、ステップS6、及び、ステップS8の替わりにステップS32、及びステップS34を実行し、ステップS12の替わりにステップS36を実行する。以下、図10に示すフローチャートからの変更点のみ説明する。
【0108】
ステップS2の処理終了後、制御部13は、ステップS32において、含水率情報WIに基づいて、反応液への水分の追加量を決定する。追加量の決定方法の一例について説明する。記憶部14は、上述した含水率関係テーブルに加えて、媒体PPの含水率に応じた追加量を示す追加量テーブルATを記憶する。
【0109】
図20は、追加量テーブルATの内容の一例を示す図である。図20に示す追加量テーブルATは、媒体PPの含水率がc1[%]未満である場合に、水分の追加量がb1[g]とし、媒体PPの含水率がc1[%]以上且つ所定の基準値未満である場合、水分の追加量がb2[g]とし、媒体PPの含水率が所定の基準値以上である場合、水分の追加量が0[g]とすることを示す。c1は、所定の基準値未満である。b1は、b2より大きい。追加量テーブルATは、液体吐出装置1-Bの設計者によって生成される。
【0110】
制御部13は、第1実施形態のステップS4と同様に、含水率関係テーブルと含水率情報WIとに基づいて、媒体PPの含水率を推定する。そして、制御部13は、追加量テーブルATを参照して、推定した媒体PPの含水率に対応する追加量を決定する。ステップS32の処理終了後、ステップS34において、制御部13は、決定した追加量の水分を水分調整機構6の液体容器61に追加する。具体的には、制御部13は、ポンプ63を制御して、液体容器18gから所定量の反応液を液体容器61に供給する一方、ポンプ65を制御して、液体容器18wから追加量の水分を液体容器61に供給する。ステップS34の処理終了後、制御部13は、ステップS10の処理を実行する。
【0111】
ステップS10の判定結果が肯定である場合、ステップS36において、反応液吐出部GDは、制御部13の制御のもと、追加量の水分を追加した反応液を吐出する。ステップS36の処理終了後、インク吐出部IDは、ステップS14の処理を実行する。
【0112】
3-3.第3実施形態のまとめ
以上説明したように、第3実施形態に係る液体吐出装置1-Bは、反応液に水分を追加することにより、反応液吐出部GDから吐出される反応液の含水率を増加させる水分調整機構6を更に備え、制御部13は、含水率情報WIに基づいた追加量の水分を追加した反応液を吐出するように、反応液吐出部GDの動作を制御する。
第3実施形態に係る液体吐出装置1-Bは、含水率情報WIに基づいた追加量の水分を追加した反応液を吐出するため、濃淡ムラの発生を抑制しつつ、第2実施形態に係る液体吐出装置1-Aと同様に、凝集剤が不必要に多く吐出されることを抑制できる。
【0113】
なお、図17及び図18から理解されるように、水分調整機構6は、液体吐出ヘッドHUの外部に設けられていたが、液体吐出ヘッドHUの内部に水分調整機構6が設けられてもよい。
【0114】
4.第4実施形態
第1実施形態に係る液体吐出装置1は、含水率情報WIを取得するため、計測モジュール3を有したが、これに限らない。
【0115】
4-1.第4実施形態にかかる液体吐出装置1-Cの概要
図21は、液体吐出装置1-Cの構成の一例を例示する模式図である。液体吐出装置1-Cは、計測モジュール3の替わりに筐体外計測モジュール4を有し、制御部13の替わりに制御部13-Cを有する点で、液体吐出装置1と相違する。
筐体外計測モジュール4は、図示を省略するが、筐体27の外側に設けられる点で、計測モジュール3と相違する。筐体外計測モジュール4は、温度計測部41及び湿度計測部43を有する。温度計測部41は、液体吐出装置1-Cの周囲の環境温度を計測する。湿度計測部43は、液体吐出装置1-Cの周囲の環境湿度を計測する。筐体外計測モジュール4は、温度計測部41が計測した環境温度を示す情報と、湿度計測部43が計測した環境湿度を示す情報とを有する環境温湿度情報RIを生成し、生成した環境温湿度情報RIを制御部13-Cに出力する。
制御部13-Cは、記憶部14に記憶された制御プログラムを読み出して、読み出した制御プログラムを実行することにより、取得部131-Cと、吐出制御部133-Cとして機能する点で、制御部13と相違する。
【0116】
取得部131-Cは、筐体外計測モジュール4から出力された環境温湿度情報RIと、加熱部5の制御レジスターから設定情報TIとを取得する。なお、設定情報TIは記憶部14から読み出した情報であるから、取得部131-Cは、記憶部14から設定情報TIを取得してもよい。
【0117】
環境温度が上昇すると印刷処理初期時の媒体PPの含水率が低下する傾向にある。また、環境湿度が上昇すると印刷処理初期時の媒体PPの含水率が上昇する傾向にある。また、設定情報TIに従って、加熱部5が搬送ベルト73を加熱し、搬送ベルト73の温度及び筐体27内の温度が上昇して、媒体PPの含水率が低下する。
従って、環境温湿度情報RIと設定情報TIが示す設定温度とは、媒体PPの含水率と相関関係を有すると言える。従って、環境温湿度情報RI及び設定情報TIは、媒体PPの含水率を推定可能な含水率情報WI-Cである。なお、第4実施形態において、環境温湿度情報RI及び設定情報TIが「含水率情報」の一例である。
【0118】
吐出制御部133-Cは、含水率情報WI-Cに基づく吐出態様によって反応液を吐出するように、反応液吐出部GDの動作を制御する。例えば、記憶部14には、環境温度、環境湿度、及び加熱部5の設定温度と媒体PPの含水率との関係を示す環境温湿度関係テーブルが記憶されている。吐出制御部133-Cは、環境温湿度関係テーブルと環境温湿度情報RI及び設定情報TIとに基づいて、媒体PPの含水率を推定する。媒体PPの含水率を推定した後の処理は、第1実施形態の吐出制御部133と同一の処理であるため、説明を省略する。
【0119】
4-2.第4実施形態の実施例
以下、第4実施形態の実施例を示すが、本発明は以下の例により限定されるものではない。液体吐出装置1-Cの動作は、図10に示される液体吐出装置1の動作に対して、ステップS2で、含水率情報WIの替わりに含水率情報WI-Cを取得し、ステップS4で、含水率情報WIに替わって含水率情報WI-Cに基づいて媒体PPの含水率が所定の基準値以上か否かを判定する点で異なる。
【0120】
図22は、第4実施形態の実施例を説明するための図である。図22では、第4実施形態の実施例である第18実施例から第21実施例までを示してある。第18実施例から第21実施例までは、加熱部5の設定温度が55[℃]よりも低い場合に、ショット数で媒体PPの含水率を調整する態様である。加熱部5の設定温度は、搬送ベルト73の粘着素材の種類や、媒体PPの状態に合わせて、適宜温度設定される。具体的には、第18実施例から第21実施例までは、加熱部5の設定温度が45[℃]である場合に、ショット数で媒体PPの含水率を調整する態様である。
【0121】
第18実施例は、第2実施例と環境温度及び環境湿度が同一であり、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が第2実施例と等しい。しかし、第18実施例の加熱部5の設定温度は第2実施例より低い45[℃]であるため、第18実施例の筐体27内の温度は、第2実施例より低い35[℃]である。第18実施例では、ステップS4において、吐出制御部133-Cは、取得部131-Cが取得した含水率情報WI-Cから環境温度が30[℃]であることを示す情報、環境湿度が70[%]であることを示す情報、及び加熱部5の設定温度が45[℃]であることを示す情報から、基準の吐出態様で反応液を吐出した場合の印刷処理時の媒体PPの含水率は8[%]と推定する。吐出制御部133-Cは、推定した媒体PPの含水率8[%]が所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133-Cは、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液のショット数が基準の吐出態様の1.1倍とする態様である。
第19実施例は、第3実施例と環境温度及び環境湿度が同一であり、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が第3実施例と等しい。しかし、第19実施例の加熱部5の設定温度は第3実施例より低い45[℃]であるため、第19実施例の筐体27内の温度は、第3実施例より低い35[℃]である。第19実施例では、ステップS4において、吐出制御部133-Cは、取得部131-Cが取得した含水率情報WI-Cから環境温度が30[℃]であることを示す情報、環境湿度が50[%]であることを示す情報、及び加熱部5の設定温度が45[℃]であることを示す情報から、基準の吐出態様で反応液を吐出した場合の印刷処理時の媒体PPの含水率は4[%]と推定する。吐出制御部133-Cは、推定した媒体PPの含水率4[%]が所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133-Cは、媒体PPの含水率が所定の基準値以上となるように、反応液のショット数が基準の吐出態様の1.8倍とする態様である。
第20実施例は、第4実施例と環境温度及び環境湿度が同一であり、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が第4実施例と等しい。しかし、第20実施例の加熱部5の設定温度は第4実施例より低い45[℃]であるため、第20実施例の筐体27内の温度は、第4実施例より低い25[℃]である。第20実施例では、ステップS4において、吐出制御部133-Cは、取得部131-Cが取得した含水率情報WI-Cから環境温度が20[℃]であることを示す情報、環境湿度が70[%]であることを示す情報、及び加熱部5の設定温度が45[℃]であることを示す情報から、基準の吐出態様で反応液を吐出した場合の印刷処理時の媒体PPの含水率は10[%]と推定する。吐出制御部133-Cは、推定した媒体PPの含水率10[%]が所定の基準値である9[%]以上であると判定する。ステップS6において、吐出制御部133-Cは、反応液のショット数が基準の吐出態様の1倍、つまり基準のショット数とする態様である。
第21実施例は、第5実施例と環境温度及び環境湿度が同一であり、印刷処理初期時の媒体PPの含水率が第5実施例と等しい。しかし、第21実施例の加熱部5の設定温度は第5実施例より低い45[℃]であるため、第21実施例の筐体27内の温度は、第5実施例より低い25[℃]である。第21実施例では、ステップS4において、吐出制御部133-Cは、取得部131-Cが取得した含水率情報WI-Cから環境温度が20[℃]であることを示す情報、環境湿度が50[%]であることを示す情報、及び加熱部5の設定温度が45[℃]であることを示す情報から、基準の吐出態様で反応液を吐出した場合の印刷処理時の媒体PPの含水率は5[%]と推定する。吐出制御部133-Cは、推定した媒体PPの含水率5[%]が所定の基準値である9[%]以上でないと判定する。ステップS8において、吐出制御部133-Cは、反応液のショット数が基準の吐出態様の1.6倍とする態様である。
第18実施例、第19実施例、及び、第21実施例では、媒体PPの含水率が9[%]以上である10[%]となり、濃淡ムラが発生していない。第20実施例では、媒体PPの含水率が9[%]以上である11[%]となり、濃淡ムラが発生していない。
【0122】
なお、第18実施例から第21実施例では、含水率情報WI-Cに基づくショット数の調整により媒体PPの含水率を調整しているが、吐出制御部133-Cは、含水率情報WI-Cに基づく駆動電圧の調整により媒体PPの含水率を調整してもよいし、含水率情報WI-Cに基づくドットサイズの調整により媒体PPの含水率を調整してもよい。また、第2実施形態と同様に、吐出制御部133-Cは、含水率がそれぞれ異なる複数の反応液から、含水率情報WI-Cに基いて選択された反応液を吐出してもよい。また、第3実施形態と同様に、吐出制御部133-Cは、含水率情報WI-Cに基いた追加量の水分を追加した反応液を吐出してもよい。
【0123】
4-3.第4実施形態のまとめ
以上、第4実施形態に係る液体吐出装置1-Cは、環境温度を計測する温度計測部41と、環境湿度を計測する湿度計測部43と、媒体PPを搬送する搬送ベルト73を備える搬送機構7と、搬送ベルト73を加熱する加熱部5と、を更に備え、含水率情報WIは、環境温度を示す情報と環境湿度を示す情報である環境温湿度情報RIと、加熱部5の設定温度を示す設定情報TIと、を含む。
上述したように、環境温湿度情報THI及び設定情報TIは、媒体PPの含水率を推定可能な含水率情報である。従って、第4実施形態に係る液体吐出装置1-Cは、環境温湿度情報THI及び設定情報TIによって媒体PPの含水率を推定できるので、濃淡ムラの発生を抑制できる。
媒体PPは、筐体27内の搬入されるまで、筐体27外の環境温度および環境湿度の雰囲気内に置かれる期間が長いため、印刷処理初期時の媒体の含水率は環境温度と環境湿度の影響を受ける。さらに、加熱部5により加熱された搬入ベルトから伝導する熱に応じて媒体PPに含まれる水分が蒸発するため、加熱部5の設定温度に応じて媒体PPからの水分の蒸発量が変化する。従って、環境温湿度情報THI及び設定情報TIによって媒体PPの含水率をより正確に推定することができる。
【0124】
5.変形例
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
【0125】
5-1.第1変形例
上述した第1実施形態、第2実施形態、及び、第3実施形態では、含水率情報WIは、筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報の両方を含む含水率情報WIに基づいて媒体PPの含水率を推定していたが、筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報のいずれか一方を含んでもよい。
筐体27内の温度が上昇すると筐体27内の湿度が低下し、筐体27内に搬送された媒体PPの含水率も低下する。このような関係から、筐体27内の湿度を示す情報を用いずに筐体27内の温度を示す情報から媒体PPの含水率を推定することもできる。また、筐体27内の温度を示す情報を用いずに筐体27内の湿度を示す情報から媒体PPの含水率を推定することもできる。
従って、第1変形例では、含水率情報WI-Dは、筐体27内の温度を示す情報及び筐体27内の湿度を示す情報のいずれか一方又は両方を含む。吐出制御部は、含水率情報WI-Dに基づいて媒体PPの含水率を推定する。
ただし、第1実施形態、第2実施形態、及び、第3実施形態における含水率情報WIに基づく媒体PPの含水率の推定精度は、第1変形例における設定情報TIに基づく媒体PPの含水率の推定精度よりも高い。
【0126】
また、第1変形例では、含水率情報WI-Dにより推定される含水率が低いことに応じて反応液の水分量が多くなるように反応液吐出部GDの動作を制御したが、媒体PPの含水率を推定しなくてもよい。例えば、制御部13は、筐体27内の温度が高いことに応じて反応液の水分量が多くなるように反応液吐出部GDの吐出態様を決定し、決定した吐出態様によって反応液を吐出するように反応液吐出部GDを制御してもよい。具体的には、制御部13は、筐体27内の温度が第1の温度であった場合に第1の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させ、筐体27内の温度が第1の温度より高い第2の温度であった場合に第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させるように、反応液吐出部GDの動作を制御してもよい。例えば、第2実施例及び第4実施例の各数値を用いて説明すると、筐体27内の温度が30[℃]である場合、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様の1.1倍のショット数とする吐出態様に決定する。30[℃]が「第1の温度」の一例であり、基準の吐出態様の1.1倍のショット数によって吐出される反応液の量が、「第1の反応液量」の一例である。一方、筐体27内の温度が40[℃]である場合、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様の1.2倍のショット数とする吐出態様に決定する。40[℃]が「第2の温度」の一例であり、基準の吐出態様の1.2倍のショット数によって吐出される反応液の量が、「第2の反応液量」の一例である。
筐体27内の温度が高くなることに応じて、媒体PPの含水率が低下する傾向にある。従って、第1変形例に係る液体吐出装置1によれば、筐体27内の温度が高くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、媒体PPが乾燥している場合にも吐出された反応液によって媒体PPが十分に湿潤するため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0127】
また、制御部13は、筐体27内の湿度が低いことに応じて反応液の水分量が多くなるように反応液吐出部GDの動作を制御してもよい。具体的には、制御部13は、筐体27内の湿度が第1の湿度であった場合に第1の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させ、筐体27内の湿度が第1の湿度より低い第2の湿度であった場合に第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させるように、反応液吐出部GDの動作を制御してもよい。例えば、第2実施例及び第3実施例の各数値を用いて説明すると、筐体27内の湿度が55[%]である場合、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様の1.2倍のショット数とする吐出態様に決定する。55[%]が「第1の湿度」の一例であり、基準の吐出態様の1.2倍のショット数によって吐出される反応液の量が、「第1の反応液量」の一例である。一方、筐体27内の湿度が30[%]である場合、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様の2.0倍のショット数とする吐出態様に決定する。30[%]が「第2の湿度」の一例であり、基準の吐出態様の2.0倍のショット数によって吐出される反応液の量が、「第2の反応液量」の一例である。
筐体27内の湿度が低くなることに応じて、媒体PPの含水率が低下する傾向にある。従って、第1変形例に係る液体吐出装置1によれば、筐体27内の湿度が低くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、媒体PPが乾燥している場合にも吐出された反応液によって媒体PPが十分に湿潤するため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0128】
5-2.第2変形例
上述した第4実施形態に係る含水率情報WI-Cは、液体吐出装置1の周囲の温度である環境温度を示す情報、液体吐出装置1の周囲の湿度である環境温度を示す情報、及び加熱部5の設定温度を示す情報を含むが、環境温度を示す情報、環境湿度を示す情報、及び設定温度のいずれか一つを含んでもよい。
媒体PPは、筐体27内の搬入されるまで、筐体27外の環境温度および環境湿度の雰囲気内に置かれる期間が長いため、印刷処理初期時の媒体の含水率は環境温度と環境湿度の影響を受ける。環境温度が上昇すると環境湿度が低下し、筐体27内に搬送される前の媒体PPの含水率も低下する。このような関係から、環境湿度を示す情報及び加熱部5の設定温度を示す情報を用いずに環境温度を示す情報である含水率情報WI-E1から媒体PPの含水率を推定することもできる。また、環境湿度を示す情報及び加熱部5の設定温度を示す情報を用いずに環境湿度を示す情報である含水率情報WI-E2から媒体PPの含水率を推定することもできる。
また、加熱部5の設定温度が高いほど、媒体PPからの水分の蒸発量が多くなり、媒体PPの含水率が低下する。このような関係から、環境湿度を示す情報及び環境温度を示す情報を用いずに加熱部5の設定温度を示す情報である含水率情報WI-E3から媒体PPの含水率を推定することもできる。
【0129】
以上説明したように、第2変形例に係る液体吐出装置1-Eは、液体吐出装置1-Eの環境温度を計測する温度計測部41を更に備え、含水率情報WI-E1は、環境温度を示す情報を含み、制御部13-Eは、温度計測部41から、含水率情報WI-E1を取得する。
第2変形例によれば、計測モジュール3を有さなくても、環境温度によって媒体PPの含水率を推定できるため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0130】
また、第2変形例に係る液体吐出装置1-Eは、液体吐出装置1-Eの環境湿度を計測する湿度計測部43を更に備え、含水率情報WI-E2は、環境湿度を示す情報を含み、制御部13-Eは、湿度計測部43から、含水率情報WI-E2を取得する。
第2変形例によれば、計測モジュール3を有さなくても、環境湿度によって媒体PPの含水率を推定できるため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
また、第2変形例に係る液体吐出装置1-Eは、媒体PPを搬送する搬送ベルト73を備える搬送機構7と、搬送ベルト73を加熱する加熱部5と、を更に備え、含水率情報WI-E3は、加熱部5の設定温度を示す設定情報TIを含み、制御部13-Eは、含水率情報WI-E3に基づいて媒体PPの含水率を推定する。
第2変形例によれば、計測モジュール3及び筐体外計測モジュール4を有さなくても、加熱部5の設定温度から媒体PPの含水率を推定できるため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
なお、環境温度を示す情報、環境湿度を示す情報、及び加熱部5の設定温度のうちの2つの情報から媒体PPの含水率を推定してもよい。
ただし、第4実施形態における含水率情報WI-Cに基づく媒体PPの含水率の推定精度は、第2変形例における媒体PPの含水率の推定精度よりも高い。
また、第2変形例では、含水率情報WI-E1,WI-E2,WI-E3により推定される含水率が低いことに応じて反応液の水分量が多くなるように反応液吐出部GDの動作を制御したが、媒体PPの含水率を推定しなくてもよい。
【0131】
例えば、制御部13-Eは、環境温度が高いことに応じて反応液の水分量が多くなるように反応液吐出部GDの吐出態様を決定し、決定した吐出態様によって反応液を吐出するように反応液吐出部GDを制御してもよい。
具体的には、反応液吐出部GDの吐出態様を、温度計測部41によって計測された環境温度が第1の温度である場合に第1の反応液量の反応液を吐出する吐出態様に決定し、温度計測部41によって計測された環境温度が第1の温度より高い第2の温度であった場合に第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を吐出する吐出態様に決定してもよい。反応液吐出部GDは、ステップS12において、決定した吐出態様で反応液を吐出する、即ち、第1の反応液量の反応液、又は、第2の反応液量の反応液を吐出する。例えば、第2実施例及び第4実施例の各数値を用いて説明すると、温度計測部41によって計測された環境温度が20[℃]である場合、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様の1.1倍のショット数とする吐出態様に決定する。20[℃]が「第1の温度」の一例であり、基準の吐出態様の1.1倍のショット数によって吐出される反応液の量が、「第1の反応液量」の一例である。一方、温度計測部41によって計測された環境温度が30[℃]である場合、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様の1.2倍のショット数とする吐出態様に決定する。30[℃]が「第2の温度」の一例であり、基準の吐出態様の1.2倍のショット数によって吐出される反応液の量が、「第2の反応液量」の一例である。
【0132】
また、例えば、制御部13-Eは、環境湿度が低いことに応じて反応液の水分量が多くなるように反応液吐出部GDの吐出態様を決定し、決定した吐出態様によって反応液を吐出するように反応液吐出部GDを制御してもよい。
具体的には、反応液吐出部GDの吐出態様を、湿度計測部43によって計測された環境湿度が第1の湿度である場合に第1の反応液量の反応液を吐出する吐出態様に決定し、湿度計測部43によって計測された環境湿度が第1の湿度より低い第2の湿度であった場合に第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を吐出する吐出態様に決定してもよい。例えば、第2実施例及び第3実施例の各数値を用いて説明すると、湿度計測部43によって計測された環境湿度が70[%]である場合、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様の1.2倍のショット数とする吐出態様に決定する。70[%]が「第1の湿度」の一例であり、基準の吐出態様の1.2倍のショット数によって吐出される反応液の量が、「第1の反応液量」の一例である。一方、湿度計測部43によって計測された環境湿度が50[%]である場合、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様の2.0倍のショット数とする吐出態様に決定する。50[%]が「第2の湿度」の一例であり、基準の吐出態様の2.0倍のショット数によって吐出される反応液の量が、「第2の反応液量」の一例である。
【0133】
また、例えば、制御部13-Eは、設定情報TIが示す加熱部5の設定温度が高くなることに応じて、反応液の水分量が多くなるように反応液吐出部GDの動作を制御してもよい。
例えば、制御部13-Eは、加熱部5の設定温度が第1の設定温度であった場合に第1の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させ、加熱部5の設定温度が第1の設定温度より高い第2の設定温度であった場合に第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させるように、反応液吐出部GDの動作を制御する。例えば、第2実施例及び第18実施例の各数値を用いて説明すると、加熱部5の設定温度が45[℃]である場合、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様の1.1倍のショット数とする吐出態様に決定する。45[℃]が「第1の設定温度」の一例であり、基準の吐出態様の1.1倍のショット数によって吐出される反応液の量が、「第1の反応液量」の一例である。一方、加熱部5の設定温度が55[℃]である場合、吐出制御部133は、反応液吐出部GDの吐出態様を、基準の吐出態様の1.2倍のショット数とする吐出態様に決定する。55[℃]が「第2の含水率」の一例であり、基準の吐出態様の1.2倍のショット数によって吐出される反応液の量が、「第2の反応液量」の一例である。
加熱部5の設定温度が高くなることに応じて、媒体PPの含水率が低下する傾向にある。従って、第2変形例に係る液体吐出装置1-Eは、加熱部5の設定温度が高くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、媒体PPが乾燥している場合にも吐出された反応液によって媒体PPが十分に湿潤するため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0134】
第2変形例と第4実施形態とを比較すると、ある2つの環境条件において、環境温度及び環境湿度が同一であっても、加熱部5の設定温度が互いに異なることによって、媒体PPの含水率が異なる可能性がある。また、ある2つの環境条件において、加熱部5の設定温度が一定に保たれていても、環境温度が互いに異なることによって、媒体PPの含水率が異なる可能性がある。また、ある2つの環境条件において、加熱部5の設定温度が一定に保たれていても、環境湿度が互いに異なることによって、媒体PPの含水率が異なる可能性がある。従って、第4実施形態における含水率情報WI-Cに基づいて推定された媒体PPの含水率から決定された反応液の吐出態様は、第2変形例における含水率情報WI-E1,WI-E2,WI-E3の何れか一に基づいて決定された反応液の吐出態様より、印刷処理時の媒体PPの含水率を確実に所定の基準値以上とすることができる。
【0135】
また、第2変形例によれば、液体吐出装置1-Eは、媒体PPに対してノズルNからインクを吐出するインク吐出部IDと、媒体PPに対してノズルNから反応液を吐出する反応液吐出部GDと、インク吐出部IDの動作と反応液吐出部GDの動作とを制御する制御部13と、環境温度を計測する温度計測部41と、を備え、制御部13-Eは、温度計測部41によって計測された環境温度が第1の温度である場合に第1の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させ、温度計測部41によって計測された環境温度が第1の温度より高い第2の温度であった場合に第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させるように、反応液吐出部GDの動作を制御し、第1の反応液量の反応液又は第2の反応液量の反応液が着弾した媒体PP上にインクを着弾させるように、インク吐出部IDの動作を制御する、液体吐出装置1-Eの制御方法としても規定できる。
上述したように、環境温度が高くなることに応じて、媒体PPの含水率が低下する傾向にある。従って、第2変形例に係る液体吐出装置1-Eは、環境温度が高くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、媒体PPが乾燥している場合にも吐出された反応液によって媒体PPが十分に湿潤するため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0136】
また、第2変形例によれば、液体吐出装置1-Eは、媒体PPに対してノズルNからインクを吐出するインク吐出部IDと、媒体PPに対してノズルNから反応液を吐出する反応液吐出部GDと、インク吐出部IDの動作と反応液吐出部GDの動作とを制御する制御部13-Eと、環境湿度を計測する湿度計測部43と、を備え、制御部13-Eは、湿度計測部43によって計測された環境湿度が第1の湿度である場合に第1の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させ、湿度計測部43によって計測された環境湿度が第1の湿度より低い第2の湿度であった場合に第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させるように、反応液吐出部GDの動作を制御し、第1の反応液量の反応液又は第2の反応液量の反応液が着弾した媒体PP上にインクを着弾させるように、インク吐出部IDの動作を制御する、液体吐出装置1-Eの制御方法としても規定できる。
上述したように、環境湿度が低くなることに応じて、媒体PPの含水率が低下する傾向にある。従って、第2変形例に係る液体吐出装置1-Eは、環境湿度が低くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、媒体PPが乾燥している場合にも吐出された反応液によって媒体PPが十分に湿潤するため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
また、第2変形例によれば、液体吐出装置1-Eは、媒体PPに対してノズルNからインクを吐出するインク吐出部IDと、媒体PPに対してノズルNから反応液を吐出する反応液吐出部GDと、インク吐出部IDの動作と反応液吐出部GDの動作とを制御する制御部13-Eと、媒体PPを搬送する搬送ベルト73を備える搬送機構7と、搬送ベルト73を加熱する加熱部5と、を備え、制御部13-Eは、加熱部5の設定温度が第1の設定温度であった場合に第1の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させ、加熱部5の設定温度が第1の設定温度より高い第2の設定温度であった場合に第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を反応液吐出部GDから吐出させるように、反応液吐出部GDの動作を制御し、第1の反応液量の反応液又は第2の反応液量の反応液が着弾した媒体PP上にインクを着弾させるように、インク吐出部IDの動作を制御する、液体吐出装置1-Dの制御方法としても規定できる。
上述したように、加熱部5の設定温度が高くなることに応じて、媒体PPの含水率が低下する傾向にある。従って、第2変形例に係る液体吐出装置1-Eは、加熱部5の設定温度が高くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、媒体PPが乾燥している場合にも吐出された反応液によって媒体PPが十分に湿潤するため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0137】
なお、第2変形例に係る液体吐出装置1-Dは、温度計測部41及び湿度計測部43の両方を有したが、いずれか一方を有してもよい。
【0138】
5-3.第3変形例
含水率情報WIは、液体吐出装置1のユーザーから入力された情報でもよい。
【0139】
図23は、第3変形例にかかる液体吐出装置1-Fの構成の一例を例示する模式図である。液体吐出装置1-Fは、計測モジュール3の替わりに表示装置15及び入力装置16を有し、制御部13の替わりに制御部13-Fを有する点で、液体吐出装置1と相違する。
【0140】
表示装置15は、制御部13-Fによる制御のもとで各種の画像を表示する機器である。表示装置15は、例えば、液晶表示パネルまたは有機EL表示パネル等の各種の表示パネルを有する。ELは、electro-luminescenceの略称である。
【0141】
入力装置16は、液体吐出装置1-Fのユーザーの操作を受け付ける機器である。例えば、入力装置16は、タッチパッド、タッチパネルまたはマウス等のポインティングデバイス、及び、キーボードの一方及び両方である。入力装置16は、タッチパネルを有する場合、表示装置15と一体であってもよい。なお、入力装置16は、「入力部」の一例である。
【0142】
制御部13-Fは、記憶部14に記憶された制御プログラムを読み出して、読み出した制御プログラムを実行することにより、取得部131-Fと、吐出制御部133として機能する点で、制御部13と相違する。
【0143】
取得部131-Fは、入力装置16から含水率情報WI-Fを取得する。含水率情報WI-Fは、媒体PPの含水率そのものを示す情報でもよいし、媒体PPの含水率を推定できる情報、例えば、上述した、筐体27内の温度を示す情報、筐体27内の湿度を示す情報、環境温度を示す情報、環境湿度を示す情報、及び加熱部5の設定温度を示す情報のうち1つ又は複数の情報でもよい。
【0144】
例えば、制御部13-Fが、含水率情報WI-Fの入力を促す画像を表示装置15に表示させる。例えば、含水率情報WI-Fが環境温度である場合、含水率情報WI-Eの入力を促す画像は、「周囲の温度を入力して下さい」という文字列と、数値を入力する入力欄とを含む画像である。液体吐出装置1-Fのユーザーは、表示装置15に表示された画像に従って、入力装置16を操作して含水率情報WI-Fを入力する。
【0145】
以上説明したように、液体吐出装置1-Fは、含水率情報WI-Fが入力される入力装置16を更に備え、制御部13-Fは、入力装置16から、含水率情報WI-Eを取得する。
第3変形例に係る液体吐出装置1-Fは、含水率情報WI-Fを推測可能な情報を計測する機器、具体的には、計測モジュール3及び筐体外計測モジュール4を有さなくても、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0146】
なお、取得部131-Fは、入力装置16から含水率情報WI-Fを取得することに加えて、加熱部5又は記憶部14から、設定情報TIを取得してもよい。第3変形例に係る吐出制御部133は、含水率情報WI-Eと設定情報TIとに基づいて、反応液吐出部GDの動作を制御してもよい。
【0147】
5-4.第4変形例
上述の第2実施形態では、基準水分量の反応液が貯留される液体容器の他に、基準水分量より多い水分量を含む反応液が貯留される液体容器を用いたが、水分量は純水だけでなく保湿剤を含んでもよい。また、上述の第3実施形態では、液体容器18wに水を貯留していたが、液体容器18wに保湿剤を貯留する構成でもよい。
5-5.第5変形例
上述の各態様では、反応液吐出部GD及びインク吐出部IDは、圧電素子PZを備えるが、圧電素子PZの替わりに、圧力室320内の反応液又はインクを加熱する発熱素子を用いてもよい。第4変形例において、発熱素子が、「駆動素子」の一例である。第5変形例においても、ショット数で媒体PPの含水率を調整することができる。
【0148】
5-6.第6変形例
上述の各態様に係る液体吐出装置1は、媒体PPを搬送する搬送ベルト73を加熱する加熱部5を有したが、加熱部5を有さなくてもよい。加熱部5を有さない場合、媒体PPは、布帛に限定されなく、印刷用紙であってもよい。
【0149】
5-7.第7変形例
上述の各態様に係る液体吐出装置1は、液体吐出ヘッドHUを収容する筐体27を有するが、筐体27を有さなくてもよい。
【0150】
5-8.第8変形例
上述した各態様では、液体吐出ヘッドHUを、X軸に沿う方向に往復同させるシリアル方式の液体吐出装置1を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。液体吐出装置は、複数のノズルNが、媒体PPの全幅に亘り分布する、ライン方式の液体吐出装置であってもよい。
【0151】
5-9.その他の変形例
上述の液体吐出装置は、印刷に専用される機器のほか、ファクシミリ装置及びコピー機等の各種の機器に採用され得る。もっとも、本発明の液体吐出装置の用途は印刷に限定されない。例えば、色材の溶液を吐出する液体吐出装置は、液晶表示装置のカラーフィルターを形成する製造装置として利用される。また、導電材料の溶液を吐出する液体吐出装置は、配線基板の配線及び電極を形成する製造装置として利用される。
【0152】
6.付記
以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
【0153】
好適な態様である第1態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから水分を含む反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記媒体に画像を形成する印刷処理を実行する前の前記媒体の含水率を推定可能な含水率情報を取得し、前記含水率情報に基づいて、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する。
第1態様によれば、第1実施形態によれば、含水率情報によって媒体が乾燥しているか判定できるため、媒体が乾燥している場合でも水分を含む反応液の吐出を調整することにより、媒体PPを湿潤させることができる。媒体が湿潤することにより、媒体へのインクの浸透が進むため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0154】
第1態様の具体例である第2態様において、前記制御部は、前記含水率情報によって推定される含水率が第1の含水率である場合、第1の水分量を含む前記反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記含水率情報によって推定される含水率が前記第1の含水率より低い第2の含水率である場合、前記第1の水分量より多い第2の水分量を含む前記反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御する。
第2態様によれば、媒体PPの含水率に応じて適切の量の反応液を吐出できる。
【0155】
第1態様の具体例である第3態様において、前記制御部は、前記含水率情報によって推定される含水率が所定の基準値以上である場合、基準水分量を含む前記反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記含水率情報によって推定される含水率が前記所定の基準値未満である場合、前記基準水分量より多い第2の水分量を含む前記反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記含水率情報によって推定される含水率が低いことに応じて、前記第2の水分量が多い。
第3態様によれば、含水率が所定の基準値以上である場合には基準水分量の反応液を吐出することにより、調整水分量を含む反応液を吐出する態様と比較して、反応液を吐出する量を抑制できる。更に、第3態様によれば、含水率情報によって推定される媒体の含水率が低いことに応じて、調整水分量を多くすることにより、媒体の含水率に応じて適切の量の反応液を吐出できる。
【0156】
第3態様の具体例である第4態様において、前記所定の基準値は、9パーセントである。
媒体PPの含水率が9[%]以上である場合に、濃淡ムラが発生しないという結果が得られたため、含水率情報WIによって推定される含水率が9[%]未満である場合、基準水分量より多い調整水分量を含む反応液を吐出することにより、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0157】
第1態様の具体例である第5態様において、前記液体吐出装置は、環境温度を計測する温度計測部を更に備え、前記含水率情報は、前記環境温度を示す情報を含み、前記制御部は、前記温度計測部から、前記含水率情報を取得する。
第5態様によれば、環境温度によって媒体の含水率を推定できるため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0158】
第1態様の具体例である第6態様において、前記液体吐出装置は、環境湿度を計測する湿度計測部を更に備え、前記含水率情報は、前記環境湿度を示す情報を含み、前記制御部は、前記湿度計測部から、前記含水率情報を取得する。
第6態様によれば、環境湿度によって媒体の含水率を推定できるため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0159】
第1態様の具体例である第7態様において、前記液体吐出装置は、前記含水率情報が入力される入力部を更に備え、前記制御部は、前記入力部から、前記含水率情報を取得する。
第7態様によれば、液体吐出装置が温度計測部及び湿度計測部を有していなくても、入力された含水率情報を用いて、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0160】
第1態様の具体例である第8態様において、前記液体吐出装置は、前記媒体を搬送する搬送ベルトを備える搬送機構と、前記搬送ベルトを加熱する加熱部と、を更に備え、前記含水率情報は、前記加熱部の設定温度を示す設定情報を含む。
第8態様によれば、液体吐出装置が温度計測部及び湿度計測部を有していなくても、設定情報によって媒体の含水率を推定できるので、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0161】
第8態様の具体例である第9態様において、前記液体吐出装置は、環境温度を計測する温度計測部と、環境湿度を計測する湿度計測部と、を更に備え、前記含水率情報は、前記環境温度を示す情報と、前記環境湿度を示す情報と、前記加熱部の設定温度を示す設定情報と、を含む。
第9態様によれば、環境温度を示す情報と、環境湿度を示す情報と、加熱部5の設定温度を示す情報とに基づいて、媒体PPの含水率をより正確に推定し、印刷処理時の媒体PPの含水率をより確実に所定の基準値以上にできるので、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0162】
第1態様の具体例である第10態様において、前記液体吐出装置は、前記インク吐出部と前記反応液吐出部とを収容する筐体を更に備え、前記含水率情報は、前記筐体内の温度を示す情報及び前記筐体内の湿度を示す情報のいずれか一方又は両方を含む。
第10態様によれば、筐体内の温度を示す情報、又は、筐体内の湿度を示す情報によって、媒体の含水率を推定できるため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0163】
第1態様から第10態様までのいずれか1つの態様の具体例である第11態様において、前記反応液吐出部は、前記第2ノズルと、前記第2ノズルに連通する液室と、駆動信号に応じて前記液室内の液体の圧力を変動させる駆動素子とを備え、前記制御部は、前記含水率情報に基づいて、前記駆動素子に供給される前記駆動信号を変更して前記反応液吐出部から吐出させる前記反応液の量を調整するように、前記反応液吐出部の動作を制御する。
第11態様によれば、駆動信号を変更することにより反応液の吐出量を調整できるため、媒体が乾燥している場合にも媒体を湿潤させることができ、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0164】
第1態様から第10態様までのいずれか1つの態様の具体例である第12態様において、前記反応液吐出部は、含水率がそれぞれ異なる複数の反応液のうち一の反応液を吐出可能であり、前記制御部は、前記複数の反応液の中から、前記含水率情報に基づき選択された反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御する。
第12態様によれば、含水率情報に基づき選択された反応液を吐出することで、濃淡ムラの発生を抑制しつつ、第1態様と比較して、インクを凝集させる凝集剤が不必要に多く吐出されることを抑制できる。
【0165】
第1態様から第10態様までのいずれか1つの態様の具体例である第13態様において、前記液体吐出装置は、前記反応液に水分を追加することにより、前記反応液吐出部から吐出される反応液の含水率を調整する水分調整機構を更に備え、前記制御部は、前記含水率情報に基づいた追加量の水分を追加した反応液を吐出するように、前記反応液吐出部の動作を制御する。
第13態様によれば、含水率情報に基づいた追加量の水分を追加した反応液を吐出するため、濃淡ムラの発生を抑制しつつ、インクが凝集させる凝集剤が不必要に多く吐出されることを抑制できる。
【0166】
好適な態様である第14態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、環境温度を計測する温度計測部と、を備え、前記制御部は、前記温度計測部によって計測された環境温度が第1の温度である場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記温度計測部によって計測された環境温度が前記第1の温度より高い第2の温度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する。
環境温度が高くなることに応じて、媒体の含水率が低下する傾向にある。従って、第14態様によれば、環境温度が高くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0167】
好適な態様である第15態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、環境湿度を計測する湿度計測部と、を備え、前記制御部は、前記湿度計測部によって計測された環境湿度が第1の湿度である場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記湿度計測部によって計測された環境湿度が前記第1の湿度より低い第2の湿度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する。
環境湿度が低くなることに応じて、媒体の含水率が低下する傾向にある。従って、第15態様によれば、環境湿度が低くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、媒体が乾燥している場合にも吐出された反応液によって媒体が十分に湿潤するため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0168】
好適な態様である第16態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部と前記反応液吐出部の動作を制御する制御部と、前記媒体を搬送する搬送ベルトを備える搬送機構と、前記搬送ベルトを加熱する加熱部と、を備え、前記制御部は、前記加熱部の設定温度が第1の設定温度であった場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記加熱部の設定温度が前記第1の設定温度より高い第2の設定温度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する。
加熱部の設定温度が高くなることに応じて、媒体の含水率が低下する傾向にある。従って、第16態様によれば、加熱部の設定温度が高くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、媒体が乾燥している場合にも吐出された反応液によって媒体が十分に湿潤するため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0169】
好適な態様である第17態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部と前記反応液吐出部の動作を制御する制御部と、前記インク吐出部と前記反応液吐出部とを収容する筐体と、を備え、前記制御部は、前記筐体内の温度が第1の温度であった場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記筐体内の温度が前記第1の温度より高い第2の温度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する。
筐体内の温度が高くなることに応じて、媒体の含水率が低下する傾向にある。従って、第17態様によれば、筐体内の温度が高くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、媒体が乾燥している場合にも吐出された反応液によって媒体が十分に湿潤するため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0170】
好適な態様である第18態様に係る制御方法は、液体吐出装置の制御方法であって、前記液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部と前記反応液吐出部の動作を制御する制御部と、前記インク吐出部と前記反応液吐出部とを収容する筐体と、を備え、前記制御部は、前記筐体内の湿度が第1の湿度であった場合に第1の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させ、前記筐体内の湿度が前記第1の湿度より低い第2の湿度であった場合に前記第1の反応液量より多い第2の反応液量の反応液を前記反応液吐出部から吐出させるように、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記第1の反応液量の反応液又は前記第2の反応液量の反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する。
筐体内の湿度が低くなることに応じて、媒体の含水率が低下する傾向にある。従って、第18態様によれば、筐体内の湿度が低くなることに応じて反応液を吐出する量を増加させることにより、媒体が乾燥している場合にも吐出された反応液によって媒体が十分に湿潤するため、濃淡ムラの発生を抑制できる。
【0171】
好適な態様である第19態様に係る液体吐出装置は、媒体に対して第1ノズルからインクを吐出するインク吐出部と、前記媒体に対して第2ノズルから水分を含む反応液を吐出する反応液吐出部と、前記インク吐出部の動作と前記反応液吐出部の動作とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記媒体に画像を形成する印刷処理を実行する前の前記媒体の含水率を推定可能な含水率情報を取得し、前記含水率情報に基づいて、前記反応液吐出部の動作を制御し、前記反応液が着弾した前記媒体上に前記インクを着弾させるように、前記インク吐出部の動作を制御する。
第19態様によれば、第1態様と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0172】
1,1-A,1-B,1-C,1-D,1-E…液体吐出装置、3…計測モジュール、4…筐体外計測モジュール、5…加熱部、6…水分調整機構、7…搬送機構、8…移動機構、10…制御モジュール、12…駆動信号生成回路、13,13-C,13-D,13-E…制御部、14…記憶部、15…表示装置、16…入力装置、18,18-A,18-B,18g,18g-M,18i,18w…液体容器、19g,19g-m,19i…供給流路、20…切替回路、21…接続状態指定回路、25…支持部、27…筐体、31,41…温度計測部、33,43…湿度計測部、61…液体容器、62,64…連通流路、63,65…ポンプ、71…駆動ローラー、72…従動ローラー、73…搬送ベルト、73D…表面、73Y1,73Y2…曲面部、73Z1…下面部、73Z2…上面部、75…加圧ローラー、81…キャリッジ、82…無端ベルト、131,131-C,131-D,131-E…取得部、133,133-C,133-D…吐出制御部、310…振動板、320…圧力室、330…ノズルプレート、340…圧力室基板、350…リザーバ、360…供給口、370…取入口、AT…追加量テーブル、AX1,AX2…回転軸、CH…チェンジ信号、CL…クロック信号、Com,Com-A,Com-B…駆動信号、D…吐出部、FN…ノズル面、GD…反応液吐出部、GL…仮想直線、GT…反応液テーブル、HD…記録ヘッド、HU…液体吐出ヘッド、Img…印刷データ、LAT…ラッチ信号、LG1,LG2…反応液ノズル列、LHa,LHb,LHd…内部配線、LI1,LI2,LI3,LI4…インクノズル列、N…ノズル、PP…媒体、PS…微振動駆動波形、PW…小ドット用波形、PX…大ドット用波形、PY…中ドット用波形、PZ…圧電素子、PlsC,PlsL…パルス、Qd…個別電極、Qm…圧電体、Qu…共通電極、Rt10,Rt12…割合、SF…床、SI…印刷信号、SLa,SLb…接続状態指定信号、SWa,SWb…スイッチ、Sd…個別指定信号、TI…設定情報、Tu…単位制御期間、Tu1,Tu2…制御期間、V0…初期電位、VHW,VHX,VHY…最高電位、VLS,VLW,VLX,VLY…最低電位、Vbs…定電位信号、WI,WI-D,WI-E…含水率情報、dCom…波形指定信号、ΔVhS,ΔVhW,ΔVhX,ΔVhY…駆動電圧。
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