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特開2024-5624パワーモジュール用コンデンサ、及びこれを備えている電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005624
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】パワーモジュール用コンデンサ、及びこれを備えている電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240110BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105889
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】真田 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】飯田 亮
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770BA02
5H770DA03
5H770PA12
5H770PA22
5H770PA42
5H770PA43
5H770QA01
5H770QA05
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA12
5H770QA14
5H770QA22
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】コンデンサ素子とパワーモジュールとを繋ぐ導体におけるインダクタンスの発生を抑制しつつ、導体が高温化することを抑制する。
【解決手段】コンデンサは、筐体内で隣接配置された複数のコンデンサ素子と、各コンデンサ素子の正極と、パワーモジュールの正極とを接続する正極導体と、正極導体とともに複数のコンデンサ素子を間に挟んだ状態で、各コンデンサ素子の負極とパワーモジュールの負極とを接続する負極導体と、筐体内で筐体内面、複数のコンデンサ素子、正極導体、及び負極導体のそれぞれの間の空間を埋めるように配置されることでこれらを互いに絶縁する絶縁部と、絶縁部よりも熱伝導性が高い材料で形成され、筐体内でコンデンサ素子からパワーモジュールへ延びる正極導体の電流経路と、コンデンサ素子からパワーモジュールへ延びる負極導体の電流経路との間で、これら正極導体及び負極導体と絶縁部を介して配置された導電板とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に収容され、隣接配置された複数のコンデンサ素子と、
複数の前記コンデンサ素子の正極と、前記筐体の外部に配置されたパワーモジュールの正極とを接続する正極側導体と、
前記正極側導体とともに複数の前記コンデンサ素子を間に挟んだ状態で、複数の前記コンデンサ素子の負極と前記パワーモジュールの負極とを接続する負極側導体と、
前記筐体に収容され、前記筐体の内面、複数の前記コンデンサ素子、前記正極側導体、及び前記負極側導体のそれぞれの間に形成された空間を埋めるように配置されることで、前記筐体、前記コンデンサ素子、前記正極側導体、及び前記負極側導体を互いに絶縁する絶縁部と、
前記筐体に収容され、
前記コンデンサ素子から前記パワーモジュールへ延びる前記正極側導体の電流経路と、前記コンデンサ素子から前記パワーモジュールへ延びる前記負極側導体の電流経路との間で、これら正極側導体及び負極側導体と前記絶縁部を介して配置された導電板と、
を備え、
前記導電板は、前記絶縁部よりも熱伝導性が高い材料によって形成されているパワーモジュール用コンデンサ。
【請求項2】
前記導電板は、
前記正極側導体の前記電流経路及び前記負極側導体の前記電流経路のうち、前記コンデンサ素子よりも前記パワーモジュール側の前記電流経路間に配置された第一部分と、
前記第一部分と一体に形成され、隣り合う前記コンデンサ素子間に配置された第二部分と、
を有する請求項1に記載のパワーモジュール用コンデンサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のパワーモジュール用コンデンサと、
前記パワーモジュールと、
前記パワーモジュール用コンデンサ及び前記パワーモジュールを冷却する冷却器と、
を備え、
前記筐体は、前記冷却器に接続され、
前記導電板は、前記筐体と一体に配置されている電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーモジュール用コンデンサ、及びこれを備えている電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、複数のコンデンサセル(コンデンサ素子)のうちの少なくとも一つに近接した調整部材が配設されたコンデンサモジュールが開示されている。調整部材がコンデンサセルに近接することで、この調整部材がコンデンサセルを流れるループ電流によって生じる磁束に影響を与える結果、コンデンサセルのインダクタンスが調整されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-017319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1のコンデンサセルは、バスバー(導体)を通じてスイッチング部に繋がっている。ループ電流が流れる電流経路におけるインダクタンスは、コンデンサセルよりも、スイッチング部に繋がるバスバーの方でより発生する場合がある。
【0005】
また、近年、パワーモジュールを備える電力変換装置の分野では、付加価値向上のためにパワーモジュールの高電圧化・大電流化・高周波化・高速スイッチング化の機運が高まっている。それに伴って、コンデンサセルと、上記スイッチング部としてのパワーモジュールとを接続するバスバーがより高温化する場合がある。そのため、コンデンサモジュールでは、バスバーの高温化を抑制することが要求される。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、コンデンサ素子とパワーモジュールとを繋ぐ導体におけるインダクタンスの発生を抑制しつつ、この導体が高温化することを抑制することができるパワーモジュール用コンデンサ、及び電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係るパワーモジュール用コンデンサは、筐体と、前記筐体に収容され、隣接配置された複数のコンデンサ素子と、複数の前記コンデンサ素子の正極と、前記筐体の外部に配置されたパワーモジュールの正極とを接続する正極側導体と、前記正極側導体とともに複数の前記コンデンサ素子を間に挟んだ状態で、複数の前記コンデンサ素子の負極と前記パワーモジュールの負極とを接続する負極側導体と、前記筐体に収容され、前記筐体の内面、複数の前記コンデンサ素子、前記正極側導体、及び前記負極側導体のそれぞれの間に形成された空間を埋めるように配置されることで、前記筐体、前記コンデンサ素子、前記正極側導体、及び前記負極側導体を互いに絶縁する絶縁部と、前記筐体に収容され、前記コンデンサ素子から前記パワーモジュールへ延びる前記正極側導体の電流経路と、前記コンデンサ素子から前記パワーモジュールへ延びる前記負極側導体の電流経路との間で、これら正極側導体及び負極側導体と前記絶縁部を介して配置された導電板と、を備え、前記導電板は、前記絶縁部よりも熱伝導性が高い材料によって形成されている。
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る電力変換装置は、上記のパワーモジュール用コンデンサと、前記パワーモジュールと、前記パワーモジュール用コンデンサ及び前記パワーモジュールを冷却する冷却器と、を備え、前記筐体は、前記冷却器に接続され、前記導電板は、前記筐体と一体に配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、コンデンサ素子とパワーモジュールとを繋ぐ導体におけるインダクタンスの発生を抑制しつつ、この導体が高温化することを抑制することができるパワーモジュール用コンデンサ、及び電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示の第一実施形態に係る電力変換装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るパワーモジュール用コンデンサ及びパワーモジュールを図1に示すII-II線方向から見た時の図である。
図3図2に示すIII-III線方向のパワーモジュール用コンデンサの断面図である。
図4】本開示の第二実施形態に係るパワーモジュール用コンデンサの内部を示すものであり、図2で示した部分を一部拡大したものに対応した図である。
図5】本開示の第二実施形態に係るパワーモジュール用コンデンサの内部を示すものであり、図3で示した部分に対応した図である。
図6】本開示の第三実施形態に係るパワーモジュール用コンデンサの内部を示すものであり、図2で示した部分を一部拡大したものに対応した図である。
図7】本開示の第三実施形態に係るパワーモジュール用コンデンサの内部を示すものであり、図3で示した部分に対応した図である。
図8】本開示のその他の実施形態に係るパワーモジュール用コンデンサの内部を示すものであって、図3で示した部分に対応した図である。
図9】本開示のその他の実施形態に係るパワーモジュール用コンデンサの内部を示すものであって、図2で示した部分を一部拡大したものに対応した図である。
図10】本開示のその他の実施形態に係るパワーモジュール用コンデンサの内部を示すものであって、図3で示した部分に対応した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本開示によるパワーモジュール用コンデンサ、及びこれを備えている電力変換装置を実施するための形態を説明する。
【0012】
<第一実施形態>
[電力変換装置]
電力変換装置は、直流電力を三相交流電力等に変換する装置である。本実施形態の電力変換装置には、例えば、発電所等の系統で用いられるインバータや、電気自動車等の電動機(モータ)の駆動に用いられるインバータ等が挙げられる。
【0013】
図1に示すように、電力変換装置100は、ケーシング1と、外部入力導体20と、パワーモジュール用コンデンサ2と、電力変換部3と、冷却器4とを備えている。なお、図1中では、ケーシング1及び冷却器4は、二点鎖線で示されている。
【0014】
(ケーシング)
ケーシング1は、電力変換装置100の外殻を成している。ケーシング1は、アルミニウム等の金属、又は合成樹脂等により形成されている。本実施形態におけるケーシング1は、アルミニウムによって形成されており、直方体状を成している。ケーシング1の外面は、互いに背合わせとなるように配置されている二つの側面を有している。
【0015】
以下、説明の便宜上、これら二つの側面のうち、一方側を向く側面を「入力側側面1a」と称し、他方側を向く側面を「出力側側面1b」と称する。入力側側面1aからは、直流電力を入力するための外部入力導体20が引き出されている。本実施形態における入力側側面1aと出力側側面1bとは、平行の関係にある。
【0016】
(外部入力導体)
外部入力導体20は、電力変換装置100の外部の電力系統や、バッテリ等の直流電源から供給される直流電力をパワーモジュール用コンデンサ2へ供給する一対の電気導体である。本実施形態における外部入力導体20は、銅等を含む金属により形成されている。
【0017】
外部入力導体20は、正極としての第一導体20aと、負極としての第二導体20bとを有している。第一導体20a及び第二導体20bの一端は、パワーモジュール用コンデンサ2に接続されており、これら第一導体20a及び第二導体20bの他端は、ケーシング1の入力側側面1aと交差する方向でケーシング1の外部に延びている。本実施形態における第一導体20aと第二導体20bとは、同一の形状を成している。
【0018】
(パワーモジュール用コンデンサ)
パワーモジュール用コンデンサ2は、外部入力導体20から入力された電荷を蓄えるとともに、電力の変換に伴う電圧変動を抑えるための平滑コンデンサモジュールである。パワーモジュール用コンデンサ2は、ケーシング1に収容されている。
【0019】
外部入力導体20から入力された直流電圧は、このパワーモジュール用コンデンサ2を経由することでリプルが抑えられて平滑化されるとともに、電力変換部3へ印加される。以下では、説明の便宜上、パワーモジュール用コンデンサ2を単に「コンデンサ2」と称する。
【0020】
図1から図3に示すように、コンデンサ2は、筐体21と、コンデンサ素子22と、正極側導体23と、負極側導体24と、絶縁部25と、導電板26とを備えている。
【0021】
(筐体)
筐体21は、コンデンサ2の外殻を成しており、コンデンサ2を構成する各部品を収容する。筐体21は、例えば、アルミニウム等の金属によって形成されている。本実施形態における筐体21は、断面が長方形状(矩形状)であり、ケーシング1に収容された際に入力側側面1aから出力側側面1bに向かって延びる筒状を成している。したがって、筐体21は、内面210と、二つの開口部を有している。
【0022】
内面210は、コンデンサ2が備える筐体21以外の上記各部品を収容するための直方体状の空間を画定している。内面210は、四つの面によって構成されている。以下、説明の便宜上、この内面210を構成する四つの面のうち、一の内面210を「天面211」と称し、この天面211と対向する内面210を底面212と称する。天面211と底面212とは、例えば平行の状態にある。
【0023】
また、これら天面211と底面212とを接続するとともに互いに対向する二つの内面210を「側面213」と称する。二つの側面213は、例えば平行の状態にあり、天面211及び底面212と、例えば垂直な状態にある。二つの上記開口部は、ケーシング1の入力側側面1a及び出力側側面1bの広がる方向に対して垂直な方向に向かって開口している。
【0024】
(コンデンサ素子)
コンデンサ素子22は、筐体21に収容されているフィルムコンデンサである。コンデンサ素子22は、内面210における天面211と底面212との間に配置され、これら天面211と底面212との間で延びる柱状を成している。コンデンサ素子22は、筐体21内で複数が隣接配置されている。図2に示すように、各コンデンサ素子22は、筐体21内で隣り合うコンデンサ素子22に対して隙間Sをあけて配置されている。
【0025】
コンデンサ素子22は、内面210における天面211に対向する上面22aと、この上面22aとは反対側を向く下面22bとを有している。即ち、下面22bは、内面210における底面212と対向している。図2及び図3に示すように、コンデンサ素子22は、上面22aに配置された正極22pと、下面22bに配置された負極22nとを有している。
【0026】
(正極側導体)
正極側導体23は、コンデンサ素子22の正極22pと、コンデンサ2の外部に配置された電力変換部3におけるパワーモジュール30の正極とを電気的に接続する導体である。正極側導体23は、例えば、銅等を含む金属によって形成されている。正極側導体23は、第一板部232と、Pバスバー233とを有している。
【0027】
本実施形態における第一板部232は、平板状を成している。第一板部232は、複数のコンデンサ素子22の各上面22aに亘るように配置されており、複数のコンデンサ素子22の各正極22pに接続されている。第一板部232は、筐体21内で天面211と隙間をあけて配置されている。第一板部232は、この第一板部232の厚みの部分に相当する面としての外縁部232aを有している。
【0028】
Pバスバー233は、第一板部232から筐体21の外部に配置されたパワーモジュール30へ向かってこの第一板部232と一体に延びている。Pバスバー233は、第一垂下部233aと、第一接続部233bとを有している。第一垂下部233aは、第一板部232の外縁部232aのうち、出力側側面1b側を向く外縁部232aから、筐体21の内面210における底面212側に向かって延びている。
【0029】
第一接続部233bは、第一垂下部233aが延びた先からこの第一垂下部233aと一体に、出力側側面1bに向かって延びている。第一接続部233bは、筐体21の内部から、出力側側面1b側を向く筐体21の開口部を通過してパワーモジュール30へ延びている。第一接続部233bの延びた先は、パワーモジュール30の正極に接続されている。本実施形態における第一接続部233bは、第一垂下部233aが延びる方向に対して垂直な方向に延びている。
【0030】
また、第一板部232の外縁部232aのうち、入力側側面1a側を向く外縁部232aには、外部入力導体20の第一導体20aの上記一端が接続されている。
【0031】
(負極側導体)
負極側導体24は、コンデンサ素子22の負極22nと、コンデンサ2の外部に配置された電力変換部3におけるパワーモジュール30の負極とを電気的に接続する導体である。負極側導体24は、例えば、銅等を含む金属によって形成されている。負極側導体24は、第二板部242と、Nバスバー243とを有している。
【0032】
本実施形態における第二板部242は、平板状を成しており、第一板部232と同一の形状を成している。第二板部242は、複数のコンデンサ2の各下面22bに亘るように配置されており、複数のコンデンサ2の各負極22nに接続されている。第二板部242は、正極側導体23の第一板部232とともに複数のコンデンサ素子22を間に挟んでいる。第二板部242は、筐体21内で底面212と隙間をあけて配置されている。第二板部242は、この第二板部242の厚みの部分に相当する面としての外縁部242aを有している。
【0033】
Nバスバー243は、第二板部242から筐体21の外部に配置されたパワーモジュール30へ向かってこの第二板部242と一体に延びている。Nバスバー243とPバスバー233とは、同一の形状を成している。Nバスバー243は、第二垂下部243aと、第二接続部243bとを有している。第二垂下部243aは、第二板部242の外縁部242aのうち、出力側側面1b側を向く外縁部242aから、筐体21の内面210における天面211側に向かって延びている。
【0034】
第二接続部243bは、第二垂下部243aが延びた先からこの第二垂下部243aと一体に、出力側側面1bに向かって延びている。第二接続部243bは、筐体21の内部から、出力側側面1b側を向く筐体21の開口部を通過してパワーモジュール30へ延びている。第二接続部243bの延びた先は、パワーモジュール30の負極に接続されている。
【0035】
本実施形態における第二接続部243bは、第二垂下部243aが延びる方向に対して垂直な方向に延びている。第二接続部243bは、第一接続部233bとギャップGを介して並設されている。第二接続部243bは、筐体21の内面210における側面213同士が互いに対向する方向で第一接続部233bと並んでいる。
【0036】
第二接続部243bと第一接続部233bとが並んで配置されることで生じるギャップGには、空間距離(絶縁距離)が確保されている。本実施形態におけるギャップGの寸法は、例えば、1mm以上10mm以下である。
なお、これら第一接続部233bと第二接続部243bとの間のギャップGを埋めるように絶縁紙や合成樹脂等によって形成された絶縁部材(図示省略)が間に配置された場合、ギャップGの寸法は、例えば0mmよりも大きく、1mm未満であってもよい。
【0037】
第二板部242の外縁部242aのうち、入力側側面1a側を向く外縁部242aには、外部入力導体20の第二導体20bの上記一端が接続されている。
【0038】
(絶縁部)
絶縁部25は、筐体21に収容されている絶縁部材である。絶縁部25は、合成樹脂材料等によって形成されている。図面中における絶縁部25は、紙面の都合上、ハッチングで示されている。
【0039】
絶縁部25は、筐体21の内面210、複数のコンデンサ素子22、正極側導体23、及び負極側導体24のそれぞれの間に形成された空間を埋めるように配置されることで、これら筐体21、コンデンサ素子22、正極側導体23、及び負極側導体24を互いに絶縁する。即ち、絶縁部25は、コンデンサ2を構成する各部品間に介在している。同時に、絶縁部25は、コンデンサ2を構成する各部品を筐体21内で支持するとともに位置決めしている。
【0040】
なお、絶縁部25は、筐体21内にポッティング材が充填された後、所定の温度と時間がかけられ、このポッティング材が硬化することによって形成される。ポッティング材には、例えばシリコンゲルやエポキシ樹脂等が採用される。
【0041】
ポッティング材は、例えば、筐体21における一方側の開口部を所定の部材を用いて閉塞するとともに、他方側の開口部を鉛直方向における上方側に向かせた状態で、上方側からこの他方側の開口部を通じて筐体21内に充填される。
【0042】
(導電板)
図1から図3に示すように、導電板26は、筐体21に収容されており、平板状を成す導電性部材である。本実施形態における導電板26は、正極側導体23におけるPバスバー233と、負極側導体24におけるNバスバー243との間に絶縁部25を介して配置されている。
【0043】
具体的には、導電板26は、Pバスバー233の第一接続部233bとNバスバー243の第二接続部243bとの間におけるギャップG、Pバスバー233の第一垂下部233aと筐体21内の側面213との間、及びNバスバー243の第二垂下部243aと筐体21内の側面213との間に亘るように配置されている。
【0044】
また、導電板26は、筐体21の内面210における天面211及び底面212を互いに接続した状態で、筐体21と一体に配置されている。導電板26は、絶縁部25よりも熱伝導性の高い材料によって形成されている。本実施形態における導電板26は、筐体21と同一の材質によって形成されている。したがって、導電板26は、アルミニウムによって形成されている。
【0045】
したがって、導電板26は、コンデンサ素子22からパワーモジュール30へ延びる正極側導体23の電流経路と、コンデンサ素子22からパワーモジュール30へ延びる負極側導体24の電流経路との間で、これら正極側導体23及び負極側導体24と絶縁部25を介して配置されている。
【0046】
(電力変換部)
電力変換部3は、コンデンサ2から入力された電力を変換するとともに、変換した電力を外部に出力する。電力変換部3は、ケーシング1に収容されている。本実施形態における電力変換部3は、三相交流電力を出力するために、U相、V相、及びW相用の出力をそれぞれ担当する三つのパワーモジュール30を有している。したがって、本実施形態における電力変換装置100は、三つのパワーモジュール30を備える三相インバータである。
【0047】
(パワーモジュール)
パワーモジュール30は、入力された電力を変換して出力する。図2に示すように、パワーモジュール30は、ベースプレート31と、回路基板32と、外部出力導体34と、樹脂ケース35と、封止部36と、ボンディングワイヤWbとを備えている。
【0048】
ベースプレート31は、平板状を成す部材である。ベースプレート31は、表面31aと、この表面31aの裏側に位置する裏面31bとを有している。即ち、ベースプレート31の表面31aと裏面31bとは互いに平行を成した状態で背合わせになっている。ベースプレート31の裏面31bは、接合材等(図示省略)を介して、冷却器4に固定されている。本実施形態におけるベースプレート31には、例えば銅等を含む金属が採用される。なお、ベースプレート31には、アルミニウム等を含む金属が採用されてもよい。
【0049】
回路基板32は、絶縁板321と、表面パターン322と、パワー半導体素子323と、裏面パターン(図示省略)とを有している。
【0050】
絶縁板321は、平板状を成している。絶縁板321は、第一面321aと、この第一面321aの裏側に位置する第二面321bとを有している。即ち、絶縁板321の第一面321aと第二面321bとは互いに平行を成した状態で背合わせになっている。絶縁板321の第二面321bには、銅箔等のパターンである裏面パターンが一面に形成されている。当該裏面パターンは、接合材を介してベースプレート31の表面31aの中央に固定されている。
【0051】
本実施形態における絶縁板321は、例えばセラミック等の絶縁材料により形成されている。なお、絶縁板321を形成する絶縁材料としては、セラミック以外にも、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ガラスポリイミド、フッ素樹脂等を採用することができる。
【0052】
表面パターン322は、絶縁板321の第一面321aに形成された平面状に広がる銅箔等のパターンである。表面パターン322は、例えば、絶縁板321の第一面321aに接合等で固定された後、エッチング等がなされることにより形成される。
【0053】
表面パターン322は、絶縁板321の第一面321a上に複数配置されている。これら複数の表面パターン322は、絶縁板321が広がる方向で隙間を介して互いに隣接配置されている。本実施形態では、三つの表面パターン322が第一面321a上に配置されている場合を一例として説明する。以下、説明の便宜上、これら三つの表面パターン322を第一表面パターン322a、第二表面パターン322b、及び第三表面パターン322cと称する。
【0054】
第一表面パターン322a及び第二表面パターン322bは、コンデンサ2と直流電流の入出力をやり取りするためのパターンであり、表面パターン322に形成されるPN間のループにおける入口部分もしくは出口部分に相当する。第三表面パターン322cには、パワー半導体素子323によって変換された交流電流を電力変換装置100の外部に設けられた交流回転電機等の負荷(図示省略)へ出力するための外部出力導体34が接続されている。
【0055】
パワー半導体素子323は、電圧や電流をオンオフするスイッチング動作により電力を変換する回路素子である。パワー半導体素子323は、例えば、IGBTやMOSFET等のスイッチング素子である。本実施形態では、一例として、パワー半導体にMOSFETを適用した場合を示しており、四つのパワー半導体素子323が回路基板32の表面パターン322に接続されている。なお、IGBTを使用する場合は、このIGBTと逆方向へ電流を流すダイオードを並列配置する必要がある。
【0056】
本実施形態における四つのパワー半導体素子323は、二つの第一パワー半導体素子323aと、二つの第二パワー半導体素子323bとによって構成されている。第一パワー半導体素子323aは、第一表面パターン322aに接続されている。第二パワー半導体素子323bは、第三表面パターン322cに接続されている。
【0057】
パワー半導体素子323がMOSFETの場合、パワー半導体素子323は、ドレインに相当する入力用端子(図示省略)が形成された入力面と、ソースに相当する出力用端子(図示省略)が形成された出力面と、パワー半導体素子323のスイッチングを制御するための制御信号入力用端子に相当するゲートとを有する。
【0058】
パワー半導体素子323の入力面は、表面パターン322に接合材等を介して電気的に接続されている。パワー半導体素子323の出力面には、導線としてのボンディングワイヤWbの一端が電気的に接続されている。ボンディングワイヤWbは、アルミニウム等を含む金属によって形成されている。即ち、第一面321aに形成された表面パターン322同士は、ワイヤボンディングによって電気的に接続されている。
【0059】
第一パワー半導体素子323aの入力面は、第一表面パターン322aに接続されている。一端が第一パワー半導体素子323aの出力面に接続されたボンディングワイヤWbの他端は、第三表面パターン322cに接続されている。第二パワー半導体素子323bの入力面は、第三表面パターン322cに接続されている。一端が第二パワー半導体素子323bの出力面に接続されたボンディングワイヤWbの他端は、第二表面パターン322bに接続されている。
【0060】
第一パワー半導体素子323aには、第一表面パターン322aを介して直流電力が入力され、第二パワー半導体素子323bには、第二表面パターン322b、及びこの第二表面パターン322bと第二パワー半導体素子323bとを接続するボンディングワイヤWbを介して直流電力が入力される。第一パワー半導体素子323aと第二パワー半導体素子323bとがスイッチング動作を行うことにより、上記の直流電力が交流電力へ変換され第三表面パターン322cへ出力される。
【0061】
パワー半導体素子323には、回路基板32の外部に設けられたゲート駆動回路基板等を含む制御部(図示省略)によって生成された制御信号が入力される。パワー半導体素子323は、この制御信号に従ってスイッチングを行う。なお、パワー半導体素子323がIGBTの場合、パワー半導体素子323は、コレクタに相当する入力面と、エミッタに相当する出力面と、制御信号入力用端子に相当するゲートとを有する。
【0062】
なお、ベースプレート31の表面31aと絶縁板321の第二面321bに形成された裏面パターンとの接合、パワー半導体素子323と表面パターン322との接合、及び、ベースプレート31の裏面31bと冷却器4との接合に用いられる接合材には、例えば、半田や焼結材(金属等の粉末)等を採用することができる。
【0063】
主端子部33は、コンデンサ2と回路基板32との間で直流電力をやり取りする電気導体である。主端子部33は、銅等を含む金属によって形成されている。主端子部33は、パワーモジュール30における正極としてのP端子331と、パワーモジュール30における負極としてのN端子332とを有している。これらP端子331及びN端子332は、上記ギャップGと同じ間隔のギャップを介して並んで配置されている。
【0064】
P端子331は、コンデンサ2のPバスバー233における第一接続部233bに、例えばボルト等の締結部によって接続されている。N端子332は、コンデンサ2のNバスバー243における第二接続部243bに、例えばボルト等の締結部によって接続されている。なお、図2中では、P端子331と第一接続部233bとの接続部分、及びN端子332と第二接続部243bとの接続部分の図示が省略されている。
【0065】
外部出力導体34は、パワー半導体素子323によって変換された後の交流電力を電力変換装置100の外部へ出力するための電気導体である。外部出力導体34は、銅等を含む金属により形成されている。外部出力導体34の一端は、回路基板32における第三表面パターン322cに接続されている。図1に示すように、外部出力導体34の他端は、出力側側面1bと交差する方向でケーシング1の外部に延びている。外部出力導体34の他端には、例えば、モータ等の負荷につながる電力出力用の配線(図示省略)が接続される。
【0066】
図2に示すように、樹脂ケース35は、ベースプレート31の表面31aに固定された状態で、外部出力導体34、及び主端子部33を機械的に補強する部材である。樹脂ケース35は、例えば、合成樹脂材料(絶縁材料)等により形成されている。本実施形態における樹脂ケース35を形成する材料には、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)を採用することができる。なお、PPS以外の合成樹脂材料を、樹脂ケース35に採用してもよい。樹脂ケース35は、ベースプレート31の表面31aに、例えば接着剤等によって固定されている。
【0067】
樹脂ケース35は、主端子部33のP端子331及びN端子332、並びに外部出力導体34を外側から覆った状態で、回路基板32を外側から囲っている。樹脂ケース35は、ベースプレート31の表面31aに沿う方向で、回路基板32を周囲から囲む樹脂ケース35を成している。したがって、樹脂ケース35は、ベースプレート31とともに回路基板32が収容される空間を画成している。本実施形態では、説明の便宜上、回路基板32が収容されるこの空間を「ポッティング空間Rp」と称する。
【0068】
封止部36は、ポッティング空間Rp内に配置されている絶縁部材である。ポッティング空間Rpには、外部から液状のポッティング材が充填され(ポッティング)、ポッティング空間Rp内で露出する部材を封止する。ポッティング空間Rp内に充填されたポッティング材は、所定の温度及び時間がかけられることで硬化し、ポッティング空間Rp内における各部材間、及び各部材とパワーモジュール30外部の空間とを電気的に絶縁する。本実施形態におけるポッティング材には、コンデンサ2の筐体21内に充填されるポッティング材と同一のものを採用することができる。
【0069】
したがって、封止部36は、このポッティング材によって形成されている。ポッティング空間Rp内における封止部36は、回路基板32、ボンディングワイヤWb、外部出力導体34、及び主端子部33のそれぞれの表面を覆うように配置されている。
【0070】
(冷却器)
冷却器4は、コンデンサ2及び電力変換部3のパワーモジュール30を冷却する装置である。図1に示すように、冷却器4は、ケーシング1に積層されるように設けられており、ケーシング1に固定され一体化されている。図3に示すように、冷却器4は、基部41と、放熱フィン42とを有している。なお、図3中では、基部41及び放熱フィン42は、点線で示されている。
【0071】
基部41は、板状を成している。基部41は、接合面41aと、放熱面41bとを有している。接合面41aは、コンデンサ2の筐体21の外面、及びパワーモジュール30におけるベースプレート31の裏面31bに接合材等を介して接合される面である(図2も参照)。放熱面は、接合面41aとは反対側を向く面である。即ち、冷却器4の基部41は、コンデンサ2の筐体21、及びパワーモジュール30のベースプレート31に接続されている。
【0072】
接合面41aと放熱面41bとは、互いに平行を成した状態で背合わせになっている。放熱フィン42は、基部41の放熱面41bに複数配置されている柱状を成す部材である。各放熱フィン42は、基部41を中心に、コンデンサ2及びパワーモジュール30とは反対の側へ放熱面41bから突出している。
【0073】
冷却器4には、例えば、外部から水等の液冷媒Wが導入される。基部41の放熱面41bと、放熱フィン42は、この外部から導入された液冷媒Wと接触することで冷却される。液冷媒Wは、コンデンサ2、及びパワーモジュール30から基部41及び放熱フィン42へ伝導した熱と熱交換して温められると同時に、これらコンデンサ2及びパワーモジュール30を冷却する。
【0074】
(作用効果)
正極としての外部入力導体20の第一導体20aを通じて、正極側導体23の第一板部232に入力された直流電力は、Pバスバー233の第一垂下部233a及び第一接続部233bを通じて、パワーモジュール30の正極であるP端子331へ入力される。また、正極側導体23に入力された直流電力は、コンデンサ素子22の正極22pからコンデンサ素子22内に入力される。P端子331から表面パターン322へ入力された直流電力は、パワー半導体素子323で交流電力に変換される。この交流電力は、表面パターン322に接続された外部出力導体34を通じて、電力変換装置100外部の交流回転電機等の負荷で利用される。外部の負荷から戻る交流電力は、外部出力導体34を通じて、再び表面パターン322に入力され、パワー半導体素子323によって直流電力に変換された後、N端子332に入力される。N端子332に入力された直流電力は、負極側導体24、及び外部入力導体20の第二導体20bを流れる。コンデンサ素子22の正極22pから入力された直流電力は、コンデンサ素子22内で電荷として蓄えられつつ(充電)、負極22nを通じた放電が繰り返される。コンデンサ素子22における上記の充放電が繰り返されることによって、正極側導体23及び負極側導体24を流れる直流電流が平滑化される。正極側導体23のPバスバー233及び負極側導体24のNバスバー243を直流電流が流れた際、これらPバスバー233及びNバスバー243のそれぞれから磁束が発生する。
【0075】
上記構成によれば、導電板26がPバスバー233及びNバスバー243の間に配置されているため、これらPバスバー233及びNバスバー243を流れる電流によって発生する磁束が導電板26に鎖交する。これにより、導電板26に鎖交した磁束の量に応じた誘導電流(逆起電力)がこの導電板26中を流れるとともに、この誘導電流によって発生する磁束によってPバスバー233及びNバスバー243からの磁束が打ち消される。つまり、筐体21内のPバスバー233及びNバスバー243を流れる電流によって発生する磁束の密度が低下する。その結果、正極側導体23及び負極側導体24におけるインダクタンスが低減される。
【0076】
また、Pバスバー233及びNバスバー243で生じた熱は、絶縁部25を通じて導電板26へ伝導する。導電板26に伝導した熱は、導電板26中を拡散する。上記構成によれば、導電板26は、熱伝導性が絶縁部25の熱伝導性よりも高いため、導電板26が配置されない構成と比較して、Pバスバー233及びNバスバー243から生じた熱を筐体21内でより拡散させることができる。つまり、Pバスバー233及びNバスバー243をより冷却することができる。
【0077】
したがって、コンデンサ素子22とパワーモジュール30とを繋ぐ導体におけるインダクタンスの発生を抑制しつつ、導体が高温化することを抑制することができる。
【0078】
また、上記構成によれば、冷却器4に接続された筐体21と導電板26とが一体であるため、Pバスバー233及びNバスバー243から導電板26に伝導した熱を筐体21へ逃がしつつ、筐体21が冷却器4によって冷却される。したがって、導体が高温化することをより抑制することができる。
【0079】
<第二実施形態>
次に、本開示に係る電力変換装置100の第二実施形態について図4及び図5を参照して説明する。なお、以下に説明する第二実施形態では、上記の第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第二実施形態では、コンデンサ2における導電板26aの構成が、第一実施形態で説明した導電板26の構成と異なっている。
【0080】
(導電板)
導電板26aは、筐体21に収容されている。導電板26aは、絶縁部25よりも熱伝導性の高い材料によって形成されており、筐体21と同一の材質によって形成されている。本実施形態における導電板26aは、第一部分261と、第二部分262とを有している。
【0081】
第一部分261は、平板状を成している導電性部材である。第一部分261は、正極側導体23におけるPバスバー233と、負極側導体24におけるNバスバー243の間に絶縁部25を介して配置されている。
【0082】
具体的には、第一部分261は、Pバスバー233の第一接続部233bとNバスバー243の第二接続部243bとの間におけるギャップG、Pバスバー233の第一垂下部233aと筐体21内の側面213との間、及びNバスバー243の第二垂下部243aと筐体21内の側面213との間に配置されている。
【0083】
したがって、第一部分261は、正極側導体23の電流経路及び負極側導体24の電流経路のうち、コンデンサ素子22よりもパワーモジュール30側の電流経路間に配置されている。また、第一部分261は、筐体21の内面210における天面211及び底面212を互いに接続した状態で、筐体21と一体に配置されている。
【0084】
第二部分262は、第一部分261と一体に形成されている導電性部材である。第二部分262は、隣り合うコンデンサ素子22間の隙間Sに配置されている。本実施形態における第二部分262は、隣り合うコンデンサ素子22を仕切るように、絶縁部25を介した状態で隣り合うコンデンサ素子22間に配置されている。また、第二部分262は、正極側導体23の第一板部232、及び負極側導体24の第二板部242に絶縁部25を介して挟まれている。
【0085】
なお、図5に示すように、第一部分261と第二部分262とによって構成された導電板26aは、筐体21の内面210における側面213同士が対向する方向から見て、T字状を成している。
【0086】
(作用効果)
上記構成によれば、導電板26aの第二部分262が隣り合うコンデンサ素子22間に配置されているため、コンデンサ素子22を流れる電流によって発生する磁束がこの第二部分262に鎖交する。これにより、第二部分262に鎖交した磁束の量に応じた誘導電流(逆起電力)が第二部分262中を流れるとともに、この誘導電流によって発生する磁束によってコンデンサ素子22からの磁束が打ち消される。つまり、コンデンサ素子22を流れる電流によって発生する磁束の密度が低下する。その結果、電流経路としてのコンデンサ素子22におけるインダクタンスが低減される。
【0087】
また、コンデンサ素子22で生じた熱は、絶縁部25を通じて導電板26aの第二部分262へ伝導する。第二部分262に伝導した熱は、この第二部分262中を拡散する。上記構成によれば、第二部分262は、熱伝導性が絶縁部25の熱伝導性よりも高いため、第二部分262がコンデンサ素子22間に配置されない構成と比較して、コンデンサ素子22から生じた熱を筐体21内でより拡散させることができる。つまり、コンデンサ素子22をより冷却することができる。
【0088】
また、上記構成によれば、冷却器4に接続された筐体21と導電板26aの第一部分261とが一体であり、第一部分261と第二部分262とが一体であるため、Pバスバー233及びNバスバー243から第一部分261に伝導した熱、及びコンデンサ素子22から第二部分262に伝導した熱を筐体21へ逃がすことができる。したがって、導体及びコンデンサ素子22が高温化することをより抑制することができる。
【0089】
<第三実施形態>
次に、本開示に係る電力変換装置100の第三実施形態について図6及び図7を参照して説明する。なお、以下に説明する第三実施形態では、上記の第二実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第三実施形態では、正極側導体23のPバスバー233、及び負極側導体24のNバスバー243の構成が、第二実施形態で説明したPバスバー233及びNバスバー243の構成と異なっている。
【0090】
本実施形態におけるPバスバー233は、第一延在部233cと、第一垂下部233aと、第一接続部233bとを有している。第一延在部233cは、第一板部232の外縁部232aのうち、出力側側面1b側を向く外縁部232aから出力側側面1bに向かうように延びている。第一垂下部233aは、第一延在部233cの延びた先からこの第一延在部233cと一体に、筐体21の内面210における底面212側に向かって延びている。
【0091】
第一接続部233bは、第一垂下部233aが延びた先からこの第一垂下部233aと一体に、出力側側面1bに向かって延びている。第一接続部233bは、筐体21の内部から、出力側側面1b側を向く筐体21の開口部を通過してパワーモジュール30へ延びている。第一接続部233bの延びた先は、パワーモジュール30の正極に接続されている。本実施形態における第一接続部233bは、第一垂下部233aが延びる方向に対して垂直な方向に延びている。また、第一接続部233bは、第一延在部233cが延びる方向と同一の方向に延びている。
【0092】
本実施形態におけるNバスバー243とPバスバー233とは、同一の形状を成している。Nバスバー243は、第二延在部243cと、第二垂下部243aと、第二接続部243bとを有している。第二延在部243cは、第二板部242の外縁部242aのうち、出力側側面1b側を向く外縁部242aから出力側側面1bに向かうように延びている。第二垂下部243aは、第二延在部243cの延びた先からこの第二延在部243cと一体に、筐体21の内面210における天面211側に向かって延びている。
【0093】
第二接続部243bは、第二垂下部243aが延びた先からこの第二垂下部243aと一体に、出力側側面1bに向かって延びている。第二接続部243bは、筐体21の内部から、出力側側面1b側を向く筐体21の開口部を通過してパワーモジュール30へ延びている。
【0094】
本実施形態における第二接続部243bは、第二垂下部243aが延びる方向に対して垂直な方向に延びている。第二接続部243bは、第一接続部233bとギャップGを介して並設されている。第二接続部243bは、筐体21の内面210における側面213同士が互いに対向する方向で第一接続部233bと並んでいる。
【0095】
(作用効果)
第三実施形態の構成によれば、第二実施形態で説明した構成に対して、コンデンサ素子22間に配置された導電板26aにおける第一部分261の面積を増加させることができきる。例えば、導電板26aの第一部分261の表面積を、第一延在部233c及び第二延在部243cの長さ分増加させることができる。したがって、コンデンサ素子22、Pバスバー233、及びNバスバー243から導電板26aに作用(鎖交)する磁束の量を増加させることができる。その結果、インダクタンスをより低減することができる。
【0096】
また、第二実施形態で説明した構成に対して、筐体21の側面213同士の対向方向で隣り合う区間が、第一延在部233cの長さ分、及び第二延在部243cの長さ分短くなる。したがって、例えば、Pバスバー233及びNバスバー243に電流が流れて発熱した際、これらPバスバー233及びNバスバー243から絶縁部25を介して導電板26aの第一部分261に伝導する熱が集中することを抑制することができる。
【0097】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0098】
図8に示すように、上記実施形態で説明したコンデンサ2は、筐体21の内面210上に筐体21と一体に配置された筐体絶縁層27を更に備えていてもよい。この場合、筐体絶縁層27は、筐体21を形成する金属材料の酸化物である。筐体21がアルミニウムによって形成されている場合、筐体21を形成するアルミニウムをアルマイト加工することによって形成される酸化物(陽極酸化被膜)である。これにより、正極側導体23及び負極側導体24と筐体21との間における絶縁性を高めることができる。したがって、筐体21の内面210における天面211及び底面212と、正極側導体23の第一板部232及び負極側導体24の第二位板部との間の距離を縮めることができる。その結果、第一板部232及び第二板部242を流れる電流によって生じる磁束のうち、筐体21の内面210における天面211及び底面212に鎖交する磁束の量を増大させることができ、インダクタンスを低減させることができる。なお、上記筐体絶縁層27は、合成樹脂材料等によって形成されている絶縁コーティング材であってもよい。
【0099】
また、図9に示すように、第一実施形態で説明したコンデンサ2は、導電板26の表面に導電板26と一体に配置された導電板絶縁層28を更に備えていてもよい。この場合、導電板絶縁層28は、導電板26を形成する金属材料の酸化物である。導電板26がアルミニウムによって形成されている場合、導電板26を形成するアルミニウムをアルマイト加工することによって形成される酸化物(陽極酸化被膜)である。これにより、正極側導体23のPバスバー233及び負極側導体24のNバスバー243と導電板26との間における絶縁性を高めることができる。したがって、導電板26と、Pバスバー233及びNバスバー243との間の距離を縮めることができる。その結果、Pバスバー233及びNバスバー243を流れる電流によって生じる磁束のうち、導電板26に鎖交する磁束の量を増大させることができ、インダクタンスを低減させることができる。なお、上記導電板絶縁層28は、合成樹脂材料等によって形成されている絶縁コーティング材であってもよい。また、導電板絶縁層28は、第二実施形態で説明した導電板26aの表面にこの導電板26aと一体に配置されてもよい。
【0100】
また、図10に示すように、上記実施形態で説明したコンデンサ2は、正極側導体23及び負極側導体24の外面上にこれら正極側導体23及び負極側導体24と一体に配置された導体絶縁層29を更に備えていてもよい。この場合、導体絶縁層29は、合成樹脂材料等によって形成されている絶縁コーティング材である。これにより、正極側導体23と負極側導体24との間における絶縁性を高めることができる。したがって、筐体21の内面210における天面211及び底面212と、正極側導体23の第一板部232及び負極側導体24の第二板部242との間の距離を縮めることができる。また、正極側導体23におけるPバスバー233の第一接続部233bと、負極側導体24におけるNバスバー243の第二接続部243bとの間の距離を縮めることができる。これらの結果、第一板部232及び第二板部242を流れる電流によって生じる磁束のうち、筐体21の内面210における天面211及び底面212に鎖交する磁束の量、及び導電板26,26aに鎖交する磁束の量を増大させることができ、インダクタンスを低減させることができる。なお、詳細な図示は省略するが、導体絶縁層29は、外部入力導体20の第一導体20a及び第二導体20bの外面上に配置されてもよい。
【0101】
また、上記実施形態で説明した導電板26,26aは、筐体21と一体に形成されず、絶縁部25によって筐体21内で位置決めされている構成であってもよい。
【0102】
また、上記実施形態で説明したコンデンサ2のコンデンサ素子22は、フィルムコンデンサに限定されることはない。コンデンサ素子22は、例えば、電解コンデンサ等であってもよい。
【0103】
また、上記実施形態で説明したコンデンサ素子22は、上面22aに配置された正極22pと、下面22bに配置された負極22nとを有しているが、この構成に限定されることはない。コンデンサ素子22は、上面22aに配置された負極22nと、下面22bに配置された正極22pとを有していてもよい。
この際、正極側導体23の第一板部232は、下面22bに配置された正極22pに接続され、第一導体20a、及び正極側導体23のPバスバー233は、この第一板部232に接続されればよい。また、負極側導体24の第二板部242は、上面22aに配置された負極22nに接続され、第二導体20b、及び負極側導体24のNバスバー243は、この第二板部242に接続されればよい。
したがって、上記実施形態で説明した第一導体20a及び正極側導体23のそれぞれの配置と、第二導体20b及び負極側導体24それぞれの配置とは、互いに入れ替わってもよい。この場合であっても、Pバスバー233の第一接続部233bは、パワーモジュール30におけるP端子331に接続され、Nバスバー243の第二接続部243bは、パワーモジュール30におけるN端子332に接続されればよい。
【0104】
また、上記実施形態では、導電板26,26aが筐体21と同じ材質によって形成される構成を説明したが、この構成に限定されることはない。導電板26,26aは、筐体21を形成する金属材料よりも熱伝導性の高い金属材料によって形成されていてもよい。
【0105】
また、上記実施形態で説明した、「平行」、「垂直」、及び「同一の形状」とは、実質的に平行、垂直、及び同一の形状である状態を指すものであって、製造上のわずかな誤差や設計上の公差等は許容される。なお、平行及び垂直な状態から多少傾斜している構成であってもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、電力変換装置100としてインバータを一例にして説明したが、電力変換装置100はインバータに限定されることはない。電力変換装置100は、例えば、コンバータや、インバータとコンバータとを組み合わせたもの等、パワー半導体素子323により電力変換を行う装置であってもよい。電力変換装置100がコンバータの場合は、外部の入力電源等(図示省略)から外部出力導体34に交流電圧が入力されて回路基板32におけるパワー半導体素子323がこの交流電圧を直流電圧に変換し、パワー半導体素子323からの直流電圧が正極側導体23及び負極側導体24を通じて電力変換装置100の外部へ出力される構成であってもよい。
【0107】
<付記>
各実施形態に記載のパワーモジュール用コンデンサ、及び電力変換装置は、例えば以下のように把握される。
【0108】
(1)第1の態様に係るパワーモジュール用コンデンサ2は、筐体21と、前記筐体21に収容され、隣接配置された複数のコンデンサ素子22と、複数の前記コンデンサ素子22の正極22pと、前記筐体21の外部に配置されたパワーモジュール30の正極とを接続する正極側導体23と、前記正極側導体23とともに複数の前記コンデンサ素子22を間に挟んだ状態で、複数の前記コンデンサ素子22の負極22nと前記パワーモジュール30の負極とを接続する負極側導体24と、前記筐体21に収容され、前記筐体21の内面210、複数の前記コンデンサ素子22、前記正極側導体23、及び前記負極側導体24のそれぞれの間に形成された空間を埋めるように配置されることで、前記筐体21、前記コンデンサ素子22、前記正極側導体23、及び前記負極側導体24を互いに絶縁する絶縁部25と、前記筐体21に収容され、前記コンデンサ素子22から前記パワーモジュール30へ延びる前記正極側導体23の電流経路と、前記コンデンサ素子22から前記パワーモジュール30へ延びる前記負極側導体24の電流経路との間で、これら正極側導体23及び負極側導体24と前記絶縁部25を介して配置された導電板26,26aと、を備え、前記導電板26,26aは、前記絶縁部25よりも熱伝導性が高い材料によって形成されている。
【0109】
これにより、導電板26,26aが正極側導体23及び負極側導体24の電流経路間に配置されているため、それぞれの電流経路を流れる電流によって発生する磁束が導電板26,26aに鎖交する。磁束が導電板26,26aに鎖交することで、鎖交したこの磁束の量に応じた誘導電流(逆起電力)がこの導電板26,26a中を流れるとともに、この誘導電流によって発生する磁束によって各電流経路からの磁束が打ち消される。また、熱伝導性が絶縁部25の熱伝導性よりも高いため、導電板26,26aが電流経路間に配置されない構成と比較して、各電流経路から生じた熱を筐体21内でより拡散させることができる。
【0110】
(2)第2の態様に係るパワーモジュール用コンデンサ2は、(1)のパワーモジュール用コンデンサ2であって、前記導電板26aは、前記正極側導体23の前記電流経路及び前記負極側導体24の前記電流経路のうち、前記コンデンサ素子22よりも前記パワーモジュール30側の前記電流経路間に配置された第一部分261と、前記第一部分261と一体に形成され、隣り合う前記コンデンサ素子22間に配置された第二部分262と、を有してもよい。
【0111】
これにより、導電板26aの第二部分262が隣り合うコンデンサ素子22間に配置されているため、コンデンサ素子22を流れる電流によって発生する磁束がこの第二部分262に鎖交する。磁束が第二部分262に鎖交することで、鎖交したこの磁束の量に応じた誘導電流(逆起電力)が第二部分262中を流れるとともに、この誘導電流によって発生する磁束によってコンデンサ素子22からの磁束が打ち消される。
【0112】
(3)第3の態様に係る電力変換装置100は、(1)又は(2)のパワーモジュール用コンデンサ2と、前記パワーモジュール30と、前記パワーモジュール用コンデンサ2及び前記パワーモジュール30を冷却する冷却器4と、を備え、前記筐体21は、前記冷却器4に接続され、前記導電板26,26aは、前記筐体21と一体に配置されている。
【0113】
これにより、正極側導体23の電流経路、及び負極側導体24の電流経路から導電板26,26aに伝導した熱を筐体21へ逃がしつつ、筐体21が冷却器4によって冷却される。
【符号の説明】
【0114】
1…ケーシング 1a…入力側側面 1b…出力側側面 2…パワーモジュール用コンデンサ(コンデンサ) 3…電力変換部 4…冷却器 20…外部入力導体 20a…第一導体 20b…第二導体 21…筐体 22…コンデンサ素子 22a…上面 22b…下面 22p…正極 22n…負極 23…正極側導体 24…負極側導体 25…絶縁部 26,26a…導電板 27…筐体絶縁層 28…導電板絶縁層 29…導体絶縁層 30…パワーモジュール 31…ベースプレート 31a…表面 31b…裏面 32…回路基板 33…主端子部 34…外部出力導体 35…樹脂ケース 36…封止部 41…基部 41a…接合面 41b…放熱面 42…放熱フィン 100…電力変換装置 210…内面 211…天面 212…底面 213…側面 232…第一板部 232a,242a…外縁部 233…Pバスバー 233a…第一垂下部 233b…第一接続部 242…第二板部 243…Nバスバー 243a…第二垂下部 243b…第二接続部 261…第一部分 262…第二部分 321…絶縁板 321a…第一面 321b…第二面 322…表面パターン 322a…第一表面パターン 322b…第二表面パターン 322c…第三表面パターン 323…パワー半導体素子 323a…第一パワー半導体素子 323b…第二パワー半導体素子 331…P端子 332…N端子 G…ギャップ Rp…ポッティング空間 S…隙間 W…液冷媒 Wb…ボンディングワイヤ
図1
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図10