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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056243
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】再生樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 17/02 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162987
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平戸 勇馬
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 彰
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401AB07
4F401AC10
4F401CA13
4F401CA22
4F401CA30
4F401CA31
4F401CA51
4F401CB01
4F401EA02
4F401EA46
4F401EA59
(57)【要約】
【課題】さらに効率的にインキ層を除去することが可能な再生樹脂の製造方法を提供する。
【解決手段】再生樹脂の製造方法は、インキ層を備えた筒状シュリンクラベル(1)を準備する工程(S1)と、筒状シュリンクラベル(1)を予備加熱する工程(S2)と、予備加熱する工程(S2)後に筒状シュリンクラベル(1)からインキ層を除去する工程(S3)と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキ層を備えた筒状シュリンクラベルを準備する工程と、
前記筒状シュリンクラベルを予備加熱する工程と、
前記予備加熱する工程後に前記筒状シュリンクラベルから前記インキ層を除去する工程と、を含む、再生樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記準備する工程は、容器と前記容器に装着された前記筒状シュリンクラベルとを備えた筒状シュリンクラベル付き容器から前記筒状シュリンクラベルを回収する工程を含む、請求項1に記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記回収する工程は、前記筒状シュリンクラベル付き容器の前記筒状シュリンクラベルの装着箇所の前記容器の外周径を前記筒状シュリンクラベルの内周径よりも小さくする工程を含む、請求項2に記載の再生樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記回収する工程は、前記筒状シュリンクラベル付き容器の前記筒状シュリンクラベルの装着箇所を切断する工程を含む、請求項2または請求項3に記載の再生樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、再生樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、たとえばポリエチレンテレフタレート製ボトル(PETボトル)等のプラスチック製品が広く利用されている。省資源的な観点や環境的な観点等から、PETボトル等のプラスチック製品を再利用することが強く求められている。
【0003】
プラスチック製品の中でも特にPETボトルの再利用は既に構築されている。しかしながら、商品情報等の表示のための印刷が施されたインキ層を備えるプラスチック製のシュリンクラベルがPETボトルの胴部に装着されることがあるが、このシュリンクラベルの再利用はまだ一般的ではない。
【0004】
シュリンクラベルの再利用を阻害する要因の1つが、シュリンクラベルからインキ層を効率的に除去することができない点にある。シュリンクラベルからインキ層を効率的に除去することができない場合には、シュリンクラベルから利用価値のある再生樹脂であるペレットを作製することができないためである。
【0005】
そこで、たとえば特許文献1には、インキ層を備えたシュリンクラベルを予備加熱する工程と、予備加熱する工程の後にシュリンクラベルを破砕してシュリンクラベル片を作製する工程と、シュリンクラベル片からインキ層をアルカリ脱離により除去する工程と、を含み、予備加熱の温度が、アルカリ脱離の温度と同一、またはアルカリ脱離の温度よりも高いシュリンクラベルからのインキ層の除去方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2021/157399号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法でもインキ層を脱離除去することは可能であるが、近年の環境対応への高まりから、さらに効率的にインキ層を除去して再生樹脂を製造する方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで開示された実施形態によれば、インキ層を備えた筒状シュリンクラベルを準備する工程と、筒状シュリンクラベルを予備加熱する工程と、予備加熱する工程後に筒状シュリンクラベルからインキ層を除去する工程とを含む再生樹脂の製造方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0009】
ここで開示された実施形態によれば、さらに効率的にインキ層を除去することが可能な再生樹脂の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の再生樹脂の製造方法のフローチャートである。
図2】筒状シュリンクラベル付き容器の一例の模式的な正面図である。
図3図2に示す筒状シュリンクラベル付き容器の筒状シュリンクラベルの装着箇所のIII-IIIに沿った断面の一例である。
図4】筒状シュリンクラベル付き容器の筒状シュリンクラベルの装着箇所の容器の外周径を筒状シュリンクラベルの内周径よりも小さくする工程の一例を図解する模式的な断面図である。
図5】TD方向の両端部が接着された筒状シュリンクラベルの一例の模式的な斜視図である。
図6】TD方向の両端部が接着されていないシュリンクラベルの一例の模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態の再生樹脂の製造方法>
図1に、本開示の再生樹脂の製造方法の一例である実施形態の再生樹脂の製造方法のフローチャートを示す。図1に示すように、実施形態の再生樹脂の製造方法は、インキ層を備えた筒状シュリンクラベルを準備する工程S1と、筒状シュリンクラベルを予備加熱する工程S2と、筒状シュリンクラベルからインキ層を除去する工程S3と、を含んでいる。また、実施形態の再生樹脂の製造方法は、工程S2と工程S3との間に第1の破砕工程(破砕片の作製工程)S4を含んでいてもよい。また、実施形態の再生樹脂の製造方法は、工程S3の後に、第2の破砕工程(フラフの生成工程)S5とフラフをリペレットする工程S6とをこの順に含んでいてもよい。
【0012】
<工程S1>
工程S1は、インキ層を備えた筒状シュリンクラベルを準備することができればよく、たとえば、PETボトル等の容器と当該容器に装着された筒状シュリンクラベルとを備えた筒状シュリンクラベル付き容器からインキ層を備えた筒状シュリンクラベルを回収する工程により行うことができる。筒状シュリンクラベルを回収する工程は、たとえば、筒状シュリンクラベル付き容器の筒状シュリンクラベルの装着箇所の容器の外周径を筒状シュリンクラベルの内周径よりも小さくする工程を含むことができる。
【0013】
図2に、筒状シュリンクラベル付き容器の一例の模式的な正面図を示す。図2に示すように、筒状シュリンクラベル付き容器100は、PETボトル等の容器2と、容器2の外周面に装着された筒状シュリンクラベル1とを備えている。
【0014】
図3に、図2に示す筒状シュリンクラベル付き容器100の筒状シュリンクラベル1の装着箇所のIII-IIIに沿った断面の一例を示す。図3に示すように、筒状シュリンクラベル付き容器100の筒状シュリンクラベル1の装着箇所においては、容器2の外周径D2と、筒状シュリンクラベル1の内周径D1とは同一の大きさとなっている。ここで、たとえば図4に示すように、筒状シュリンクラベル1の内周径をD1に保ちつつ、容器2の外周径をD2よりも小さいD2’に縮小する(D2’<D2)ことによって、筒状シュリンクラベル1の装着箇所の容器2の外周径D2’を筒状シュリンクラベル1の内周径をD1よりも小さくすることができる。そのため、筒状シュリンクラベル付き容器100から筒状シュリンクラベル1を筒状の状態で分離して回収することが可能となる。なお、上記において、「筒状シュリンクラベル1の内周径」は、筒状シュリンクラベル1の軸方向(図3または図4が記載されている紙面に対する法線方向、以下「MD方向」ということもある。)の上端または下端の内周径であることが好ましい。
【0015】
容器2の外周径D2を外周径D2’に縮小する方法は、機械的に行ってもよく、手作業で行ってもよい。縮小する方法としては、たとえば、容器2を潰すことなく容器2の外周径D2を外周径D2’に縮小する方法、および容器2を潰すことによって容器2の外周径D2を外周径D2’に縮小する方法を挙げることができる。容器2を潰さない方法としては、たとえば、筒状シュリンクラベル付き容器100の筒状シュリンクラベル1の装着箇所のみを局所的に変形する方法を挙げることができる。容器2を潰す方法としては、たとえば、筒状シュリンクラベル付き容器100を一度上からプレスをした後に容器2の向きを変えて再びプレスすることによって容器2を潰す方法、筒状シュリンクラベル付き容器100の容器2を捩る方法、および容器2の内部の圧力を低下させる方法等を挙げることができる。容器2をより容易に潰す観点からは、容器2としては、たとえば、10g以上80g以下、好ましくは70g以下、より好ましくは60g以下のPET容器(容量が1L未満のPET容器の場合には、10g~40gのPET容器であることが好ましく、容量が1L以上3L以下のPET容器の場合には、25g~60gのPET容器であることが好ましい)、または10g以上100g以下、好ましくは90g以下、より好ましくは80g以下のオレフィン系容器等を用いることができる。また、容器2としては、たとえば図2に示すような最大径となる胴部の上下幅が大きい容器を用いることが後述する切断工程で切断しやすい観点から好ましい。また、容器2としては、横リブ(容器2の周方向に延びる溝)がなく、あっても10mm以下の深さの溝が浅い容器を用いることが後述する回収工程で筒状シュリンクラベル1を回収しやすくする観点から好ましい(深い溝があると容器2から筒状シュリンクラベル1が抜けにくい可能性がある)。
【0016】
また、筒状シュリンクラベル1を容器から分離して回収する工程は、たとえば、筒状シュリンクラベル付き容器100の筒状シュリンクラベル1の装着箇所を切断する工程を含んでいてもよい。切断する工程は、たとえば、図2に示す筒状シュリンクラベル付き容器100の筒状シュリンクラベル1の装着箇所をIII-IIIに沿って切断すること等の筒状シュリンクラベル1の軸方向と直交する方向に沿って切断(筒状シュリンクラベル1の筒状が保たれる方向に切断)することによって行うことができる。この場合には、2つに切断されたそれぞれの筒状シュリンクラベル付き容器100の切断面は、たとえば図3に示す断面形状を有する。その状態で、容器2の外周径D2を外周径D2’に縮小することによって、容器2の外周径D2’を筒状シュリンクラベル1の内周径をD1よりも小さくすることができるため、筒状シュリンクラベル付き容器100から筒状シュリンクラベル1を筒状の状態で分離して回収することが可能となる。また、筒状シュリンクラベル付き容器100の筒状シュリンクラベル1の装着箇所の切断箇所は1箇所に限定されず、2箇所以上としてもよい。筒状シュリンクラベル付き容器100の筒状シュリンクラベル1の装着箇所の切断箇所を2箇所以上とした場合には、筒状シュリンクラベル付き容器100を輪切りにすることも可能となる。
【0017】
筒状シュリンクラベル付き容器100の筒状シュリンクラベル1の装着箇所を切断する工程において、筒状シュリンクラベル付き容器100から筒状シュリンクラベル1をより容易に分離して回収する観点からは、たとえば図2の筒状シュリンクラベル1の装着箇所の高さHの半分程度となる高さの箇所で筒状シュリンクラベル付き容器100を切断することが好ましい。また、筒状シュリンクラベル付き容器100の筒状シュリンクラベル1の装着箇所を切断する工程において、筒状シュリンクラベル付き容器100から筒状シュリンクラベル1をより容易に分離して回収する観点からは、筒状シュリンクラベル付き容器100の径が他の箇所よりも大きい箇所で筒状シュリンクラベル付き容器100を切断することが好ましく、筒状シュリンクラベル1の最大周長となる箇所およびその周辺(筒状シュリンクラベル1の最大周長となる箇所から軸方向に±5cmの箇所)で筒状シュリンクラベル付き容器100を切断することがより好ましい。なお、上記の容器2の外周径D2を外周径D2’に縮小する工程と上記の切断する工程との順序は特に限定されないが、筒状シュリンクラベル付き容器100から筒状シュリンクラベル1をより容易に分離して回収する観点からは、上記の切断する工程を行なった後に上記の容器2の外周径D2を外周径D2’に縮小する工程を行うことが好ましい。また、上記の切断する工程は、上記の縮小する工程が必要なく、単独でも実施可能である。上記の切断する工程を単独で実施した場合には容器2が撓みやすくなるため、上記の容器2の外周径D2を外周径D2’に縮小することなく筒状シュリンクラベル1から容器2を引き抜くことが可能になる。
【0018】
筒状シュリンクラベル1としては、たとえば、少なくとも片方の表面にインキ層を備えたシート状の熱収縮性のシュリンクフィルムの主収縮方向であるTD方向の両端同士を接着して筒状としたもの等を用いることができる。筒状シュリンクラベル1に用いられるシュリンクフィルムとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等からなるポリエステルフィルム;スチレン-ブタジエンブロック共重合体等からなるスチレン系フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂からなるオレフィン系フィルム;塩化ビニル樹脂からなる塩化ビニル系フィルム等が挙げられる。これらは発泡フィルムであってもよい。また、シュリンクフィルムは単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。シュリンクフィルムの色は特に限定されず、たとえば乳白色または透明であってもよい。
【0019】
筒状シュリンクラベル1としては、筒状シュリンクラベル1のMD方向(筒状シュリンクラベル1の軸方向)の熱収縮率よりも筒状シュリンクラベル1のTD方向(筒状シュリンクラベル1の周方向)の熱収縮率が大きい筒状シュリンクラベルを用いることが好ましい。筒状シュリンクラベル1のMD方向の熱収縮率よりも筒状シュリンクラベル1のTD方向の熱収縮率を大きくすることによって、筒状シュリンクラベル1のMD方向(軸方向)の上端および/または下端の縁のシワの発生を抑制することができる。
【0020】
筒状シュリンクラベル1の熱収縮率は、未使用のまま工場から廃棄されたものであるのか、どのような装着条件で使用されたものであるのかにもよるが、たとえば、筒状シュリンクラベル1を90℃の熱水に10秒間浸漬させたときの筒状シュリンクラベル1のTD方向(周方向)の熱収縮率はたとえば10%以上90%以下程度であり、筒状シュリンクラベル1を90℃の熱水に10秒間浸漬させたときの筒状シュリンクラベル1のMD方向(軸方向)の熱収縮率はたとえば-3%以上10%以下程度である。
【0021】
また、容器2に装着されることになる筒状シュリンクラベル1として工場から廃棄された筒状シュリンクラベル1を90℃の熱水に10秒間浸漬させたときの筒状シュリンクラベル1のTD方向(周方向)の熱収縮率は、各種容器等への収縮密着性の点から、30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。また、容器2に装着されることになる筒状シュリンクラベル1として工場から廃棄された筒状シュリンクラベル1を90℃の熱水に10秒間浸漬させたときの筒状シュリンクラベル1のMD方向(軸方向)の熱収縮率は、たとえば-5%以上15%以下程度であり、-3%以上10%以下であることが好ましい。熱収縮することにより容器2に装着された筒状シュリンクラベル1は、たとえば、TD方向(周方向)に10%以上60%以下程度収縮可能であり、MD方向(軸方向)に-3%以上10%以下程度収縮可能である。
【0022】
筒状シュリンクラベル1に用いられるシュリンクフィルムの厚さは、シュリンクラベルの取扱性等を考慮して適宜選択することができるが、たとえば10~100μm程度、好ましくは15~60μm程度とすることができる。なお、これらのシュリンクフィルムの数値は、容器への装着前のシュリンクラベルの作製に用いられるシュリンクフィルムの数値である。
【0023】
筒状シュリンクラベル1に用いられるシュリンクフィルムの表面は、インキ層との接着性を高めるため、必要に応じてコロナ放電処理等の表面処理を施したり、アンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層は従来公知のアンカーコート剤等により形成することができる。
【0024】
インキ層は、アルカリ水溶液に溶解または膨潤して、基材より脱離可能であればよく、たとえば油性インキまたは水性インキのいずれかにより構成することができる。
【0025】
シュリンクフィルムの表面上へのインキ層の形成方法としては、たとえば、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、またはインクジェット印刷等によって、シュリンクフィルムの表面上にインキ層を形成する方法を用いることができる。インキ層は、単層であってもよく、多層であってもよい。インキ層の厚さは用途等により適宜選択することができ、たとえば0.1~100μm程度とすることができる。またインキ層が多層である場合、インキ層全体がアルカリ可溶性であってもよく、少なくともその積層構造において、最もシュリンクフィルム側に位置するインキ層がアルカリ可溶性であればよい。
【0026】
<工程S2>
工程S2は、たとえば、工程S1で準備された筒状シュリンクラベル1を筒状の状態で予備加熱して熱収縮することにより行うことができる。工程S2において筒状の状態で予備加熱されて熱収縮した筒状シュリンクラベル1は、工程S2後も筒状である。また、工程S2において筒状の状態で予備加熱されて熱収縮した筒状シュリンクラベル1は、少なくともそのTD方向(周方向)の寸法が工程S2前よりも小さくなっている。筒状シュリンクラベル1を予備加熱する方法は、たとえば後述する工程S3においてインキ層の除去に用いられるインキ除去液の温度と同一またはインキ除去液の温度よりも高くなるように筒状シュリンクラベル1を加熱することにより行うことが好ましい。後述する工程3において、筒状シュリンクラベル1からインキ層を効率的に除去する観点からは、工程S2における筒状シュリンクラベル1の予備加熱温度を、後述する工程S3において用いられるインキ除去液の温度よりも5℃以上高くしておくことが好ましい。
【0027】
筒状シュリンクラベル1を予備加熱する方法としては、たとえば、熱風トンネルに筒状シュリンクラベル1を通過させる方法、スチームトンネル若しくは過熱スチームトンネルに筒状シュリンクラベル1を通過させる方法、または温水槽中の熱水に筒状シュリンクラベル1を浸漬させる方法等を挙げることができる。
【0028】
ただし、以下の1)~3)の観点からは、筒状シュリンクラベル1を予備加熱する方法として、熱風トンネル、スチームトンネル若しくは過熱スチームトンネルに筒状シュリンクラベル1を通過させる方法よりも温水槽中の熱水に筒状シュリンクラベル1を浸漬させる方法を用いることが好ましい。
【0029】
1)熱水に浸漬させる方法は、熱風を用いる方法よりも温度制御が容易である。
【0030】
2)熱水に浸漬させる方法は、熱風を用いる方法よりも装置のフットプリントが小さい。
【0031】
3)熱水に浸漬させる方法は、熱風を用いる方法よりも筒状シュリンクラベル1の収縮ムラが生じにくく、均一に収縮可能である。
【0032】
温水槽中の熱水に筒状シュリンクラベルを浸漬させることによって筒状シュリンクラベル1を予備加熱する場合には、たとえば、80℃~90℃程度の熱水に筒状シュリンクラベル1を10秒~20秒程度浸漬させることにより行うことができる。
【0033】
予備加熱の温度は、予備加熱時の筒状シュリンクラベル1の表面温度であることを意味する。したがって、温水槽中の熱水に筒状シュリンクラベル1を浸漬させることによって筒状シュリンクラベル1を予備加熱する場合には、予備加熱の温度は、熱水の温度に置き換えることができる。また、スチームトンネル若しくは過熱スチームトンネルに筒状シュリンクラベル1を通過させることにより筒状シュリンクラベル1を予備加熱する場合には、予備加熱の温度は、スチームトンネルを通過させる場合にはスチームの温度(たとえば80℃以上100℃以下)、および過熱スチームトンネルを通過させる場合には過熱スチームの温度(たとえば100℃を超え130℃以下程度)に置き換えることができる。また、熱風トンネルに筒状シュリンクラベル1を通過させることにより筒状シュリンクラベル1を予備加熱する場合には、予備加熱の温度は熱風の温度に置き換えることができず、熱風の温度は予備加熱の温度よりも50~250℃程度大きい温度とすることができる(たとえば、80~130℃の予備加熱の温度にする場合、150℃~300℃程度の熱風が使用される。)。
【0034】
<工程S3>
工程S3は、たとえば、工程S2において予備加熱された筒状シュリンクラベル1からインキ層を除去することにより行うことができる。インキ層の除去は、たとえば、筒状シュリンクラベル1を処理液に浸漬することによって行うことができる。処理液は、インキ層を溶解可能なものであれば特に限定されない。処理液としては、たとえば、アルカリ水溶液、高級アルコール等の溶剤、または界面活性剤含有アルカリ水溶液等を挙げることができる。界面活性剤含有アルカリ水溶液は、たとえば、アニオン系、カチオン系、またはノニオン系の界面活性剤を含み得るが、アニオン系の界面活性剤を含むことが好ましい。
【0035】
アルカリ水溶液としては、たとえば、工程S2において予備加熱された筒状シュリンクラベル1を浸漬させることにより、当該筒状シュリンクラベル1からインキ層を除去することが可能なアルカリ水溶液を用いることができる。アルカリ水溶液としては、たとえば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩の水溶液、またはアンモニア水等を用いることができる。
【0036】
アルカリ水溶液中のアルカリ性物質の濃度は、インキ層の脱離能、操作性、または作業性等を損なわない範囲で適宜選択することができる。アルカリ水溶液中のアルカリ性物質の濃度は、たとえば0.1~10重量%程度、好ましくは0.5~5重量%、さらに好ましくは1~3重量%程度である。
【0037】
高級アルコールの具体例として、たとえば、インフィニティ株式会社製「ペイントソルブ」が挙げられる。高級アルコールは一般的に沸点が高いため、温浴槽で使用することが可能である。
【0038】
アニオン系界面活性剤としては、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ナトリウム-ホルムアルデヒド縮合物、スルホコハク酸ビス(2-エチルヘキシル)ナトリウム等のスルホコハク酸ジアルキルエステル塩等のスルホン酸型アニオン系界面活性剤;ラウリン酸ナトリウム等の脂肪族モノカルボン酸塩、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等のN-アシロイルグルタミン酸塩等のカルボン酸型アニオン系界面活性剤;硫酸ドデシルナトリウム等の硫酸アルキル塩等の硫酸エステル型アニオン系界面活性剤等を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。界面活性剤のアルカリ水溶液中における濃度は、たとえば、0.01~5.0重量%、好ましくは0.1~3重量%程度である。
【0039】
アルカリ水溶液中に、界面活性剤、特にアニオン系界面活性剤を含有させた場合には、インキ層の脱離が著しく促進される。これは、界面活性剤の作用により、アルカリ水溶液がインキ層中やインキ層とフィルムとの界面に浸透しやすくなり、インキ層が速やかに軟化するためと考えられる。
【0040】
処理液への浸漬は、たとえば、筒状シュリンクラベル1を、温度調節可能な温浴槽中に注がれたアルカリ水溶液に浸漬する方法が好ましい。アルカリ水溶液を用いたインキ層の除去は、たとえば、以下(1)または(2)のいずれかの処理により行うことができる。
【0041】
(1)1槽処理
当該処理は、たとえば、熱アルカリ槽中のアルカリ水溶液に筒状シュリンクラベル1を浸漬させながら攪拌することにより行うことができる。処理に要する時間は、攪拌速度およびアルカリ水溶液に対する筒状シュリンクラベル1の投下量等により異なるが、たとえば、30秒~20分程度とすることができる。当該処理によれば、アルカリ水溶液中において、筒状シュリンクラベル1からインキ層を効率的に除去することができる。
【0042】
実施形態の再生樹脂の製造方法においては、工程S3において筒状シュリンクラベル1からインキ層を除去する工程の温度は、工程S2において筒状シュリンクラベル1を予備加熱する温度よりも低いことが好ましい。この場合には、仮に、予備加熱後の筒状シュリンクラベル1に収縮能力が未だ残っている場合に、処理液への筒状シュリンクラベル1の浸漬中に筒状シュリンクラベル1がさらに熱収縮して、インキ層の除去が困難になるほど筒状シュリンクラベル1の端部がカールすることがあるためである。インキ層を除去する工程の温度は、インキ層が除去されることとなる筒状シュリンクラベル1の表面温度であることを意味する。したがって、インキ層を除去する工程の温度は、筒状シュリンクラベル1が浸漬させられる処理液の温度に置き換えることができる。インキ層を除去する工程において、筒状シュリンクラベル1からインキ層を効率的に除去する観点からは、処理液の温度は65℃以上であることが好ましい。なお、処理液の温度の上限は理論上は100℃であり、より好ましくは処理液の温度は85℃以上95℃以下であり、さらに好ましくは処理液の温度は80℃以上90℃以下である。たとえば、工程S2における予備加熱の温度が90℃であって、工程S3におけるインキ層を除去する工程の温度が90℃以下である場合に、筒状シュリンクラベル1から十分にインキ層を除去することができる傾向にある。
【0043】
(2)2槽処理
当該処理は、たとえば、熱アルカリ槽中のアルカリ水溶液に筒状シュリンクラベル1を30秒~20分程度浸漬させた後に熱アルカリ槽から取り出し、熱アルカリ槽から取り出した筒状シュリンクラベル1を水槽中の水に浸漬させながら攪拌することにより行うことができる。当該処理におけるアルカリ水溶液の好ましい温度およびアルカリ水溶液の種類は、たとえば、上述の(1)1槽処理に用いられるアルカリ水溶液と同様とすることができる。また、水槽中の水の温度は特に制限されないが、筒状シュリンクラベル1の意図しない熱収縮を避ける観点から、アルカリ脱離の温度よりも低い温度であることが好ましく、使用エネルギーの観点からは室温程度(27℃前後)であることが好ましい。
【0044】
当該処理によれば、アルカリ水溶液中に筒状シュリンクラベル1を静かに浸漬することができる。これにより、アルカリ水溶液中において、筒状シュリンクラベル1からのインキ層の完全な分離を抑制しつつ、インキ層の密着性を低下させることができる。なお、静かに浸漬されるとは、アルカリ水溶液が攪拌されない、または上記両者の完全な分離が起こらないような、極めて緩やかに攪拌される状態を意味する。そして、それに続く水槽中の水中への浸漬および攪拌により、水中において、筒状シュリンクラベル1からインキ層を除去することができる。筒状シュリンクラベル1からインキ層が除去された後の樹脂フィルムは、たとえば、ペレット等の再生樹脂として再利用することができる。また、インキ層は、たとえば、サーマルリサイクル工程で再利用またはインキとしてリサイクルすることができる。
【0045】
また、筒状シュリンクラベル1の処理液への浸漬後に、たとえば、インキ層を捕集することもできる。インキ層を捕集する方法としては、たとえば、相対的に大きな開口を有する第1の網で筒状シュリンクラベル1からインキ層が除去された後の樹脂フィルムを捕集し、相対的に小さな開口を有する第2の網で樹脂フィルムよりも小さいインキ層を捕集することができる。
【0046】
第1の網で捕集された樹脂フィルムは、たとえば、ペレット等の再生樹脂として再利用することができる。また、第2の網で捕集されたインキ層は、たとえば、サーマルリサイクル工程で再利用またはインキとしてリサイクルすることができる。
【0047】
また、実施形態の再生樹脂の製造方法は、筒状シュリンクラベル1からインキ層を除去する工程S3の前に筒状シュリンクラベル1を裏返すことによってインキ層を外側に位置させる工程を含んでいてもよい。筒状シュリンクラベル1はその内周面にインキ層が設けられていることが多いため、この場合には筒状シュリンクラベル1を裏返すことによってインキ層を外側に位置させる工程によってインキ層の除去が容易となる。
【0048】
<工程S4>
図1に示すように、実施形態の再生樹脂の製造方法は、工程S2と工程S3との間に第1の破砕工程(破砕片の作製工程)S4を含んでいてもよい。工程S4は、たとえば、工程S2において予備加熱された後の筒状シュリンクラベル1を破砕機により破砕して筒状シュリンクラベル1の破砕片を生成することにより行うことができる。予備加熱された後の筒状シュリンクラベル1は、たとえば、上述した工程3においてインキ層を効率的に除去することができる程度の大きさ(たとえば数cm角)に破砕することができる。
【0049】
<工程S5>
図1に示すように、実施形態の再生樹脂の製造方法は、工程S3の後に第2の破砕工程(フラフの生成工程)S5を含んでいてもよい。工程S5は、たとえば、工程S3において筒状シュリンクラベル1からインキ層が除去された後の樹脂フィルムを破砕機により破砕して、フラフを生成することにより行うことができる。これにより、フラフ状の再生樹脂を製造することが可能である。工程S5は、再生樹脂をフラフとして輸送することができるため、再生樹脂の輸送効率が向上するという点で有利である。なお、本明細書において、フラフとは、筒状シュリンクラベル1からインキ層が除去された樹脂フィルムを破砕することによって生成する樹脂片を意味する。
【0050】
<工程S6>
図1に示すように、実施形態の再生樹脂の製造方法は、工程S5の後にフラフをリペレットする工程S6を含んでいてもよい。工程S6は、たとえば、工程S5で生成されたフラフをペレット状にすることにより行うことができる。これにより、ペレット状の再生樹脂を製造することが可能である。工程S6により得られたペレット状の再生樹脂は、フラフ状の再生樹脂と比べて取り扱いやすい傾向にある。
【0051】
<実施形態の再生樹脂の製造方法の作用効果>
上述した実施形態の再生樹脂の製造方法によれば、さらに効率的にインキ層を除去することが可能となる。
【0052】
たとえば、特許文献1に記載の方法においては、予備加熱をしていないシュリンクラベルを破砕して作製されたシュリンクラベル片をアルカリ水溶液に浸漬させた場合には、アルカリ水溶液中でシュリンクラベル片がくるくると巻きついてカールしながら収縮し、カールしながら収縮した小片であるシュリンクラベル片からインキ層を除去するのは非常に難しいという課題を解決するために、シュリンクラベルを破砕してシュリンクラベル片とする前にアルカリ脱離の温度と同一またはそれよりも高い温度でシュリンクラベルの予備加熱を行って予め熱収縮させている。
【0053】
しかしながら、特許文献1に記載の方法においても効率的にインキ層を除去することが可能であったが、本発明者が鋭意検討した結果、さらに効率的にインキ層を除去することが可能な実施形態の再生樹脂の製造方法を見い出した。
【0054】
すなわち、実施形態の再生樹脂の製造方法においては、たとえば図5の模式的斜視図に示されるようなTD方向の両端部1a,1bが接着された筒状シュリンクラベル1を予備加熱するため、予備加熱によって筒状シュリンクラベル1のTD方向の両端部1a,1bがカールすることなく、筒状シュリンクラベル1の収縮能力を喪失させることができる。これにより、たとえば図6の模式的斜視図に示されるようなTD方向の両端部10a,10bが接着されていないシュリンクラベル10を準備して予備加熱した場合と比べて、TD方向の両端部のカールの発生を抑制することができることから、さらに効率的にインキ層を除去することが可能となる。
【0055】
また、実施形態の再生樹脂の製造方法が工程S4を含む場合であっても、工程S4の前の工程S2の予備加熱によって筒状シュリンクラベル1の収縮能力は既に喪失しているため、工程S4において作製された筒状シュリンクラベル1の破砕片も収縮能力を有していないことから、工程S4を含まない場合と同様に、さらに効率的にインキ層を除去することが可能となる。
【0056】
以上のように実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態の各構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
【0057】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 筒状シュリンクラベル、1a,1b,10a,10b 両端部、2 容器、100 筒状シュリンクラベル付き容器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6