(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056248
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21V 5/00 20180101AFI20240416BHJP
F21S 8/04 20060101ALI20240416BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240416BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240416BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20240416BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240416BHJP
【FI】
F21V5/00 320
F21S8/04 100
F21S2/00 600
G02F1/13 505
G02F1/1347
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162995
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 延幸
(72)【発明者】
【氏名】小糸 健夫
【テーマコード(参考)】
2H088
2H189
【Fターム(参考)】
2H088EA42
2H088HA03
2H088HA06
2H088HA08
2H088HA21
2H088HA28
2H189AA32
2H189LA05
2H189LA08
2H189LA10
2H189LA19
2H189LA20
2H189MA15
(57)【要約】
【課題】1個の光源から複数の方向に光を照射することが出来、各光スポットの形状を任意に変えることが可能である、コンパクトな照明装置を実現する。
【解決手段】
本発明の構成は次のとおりである。光源が配置した第1の孔と光を出射する第2の孔と、前記第1の孔と前記第2の孔を連結する反射曲面を有し、前記第1の孔の中心と前記第2の孔の中心を結ぶ線を第1の方向とし、前記第1の方向に光を出射する第1の反射体10と;前記第1の反射体の前記第2の孔を覆って液晶レンズ100が配置し;底面と、3個以上の複数の傾斜面を有する多角錐30が、前記複数の傾斜面を前記液晶レンズに対向するように配置し;前記複数の傾斜面は反射面であり、前記反射面において、前記第1の方向に進む光は、前記第1の方向と交差する第2の方向に進路を変え、前記液晶レンズは、前記複数の傾斜面に対応してレンズを構成することが可能であることを特徴とする照明装置。
【選択図】
図23
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源が配置した第1の孔と光を出射する第2の孔と、前記第1の孔と前記第2の孔を連結する反射曲面を有し、前記第1の孔の中心と前記第2の孔の中心を結ぶ線を第1の方向とし、前記第1の方向に光を出射する第1の反射体と、
前記第1の反射体の前記第2の孔を覆って液晶レンズが配置し、
底面と、3個以上の複数の傾斜面を有する多角錐が、前記複数の傾斜面を前記液晶レンズに対向するように配置し、
前記複数の傾斜面は反射面であり、前記反射面において、前記第1の方向に進む光は、前記第1の方向と交差する第2の方向に進路を変え、
前記液晶レンズは、前記複数の傾斜面に対応してレンズを構成することが可能であることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記多角錐は四角錐であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記液晶レンズは、液晶分子を配光させることが出来る複数のレンズ要素がマトリクス状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記液晶レンズは、走査線が第1の方向に延在し、信号線が走査線と信号線と交差する第2の方向に延在し、前記走査線と前記信号線に囲まれた領域に液晶要素が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記液晶レンズは、4枚の液晶レンズパネルが重なって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1の方向と前記第2の方向のなす角度は90度であることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項7】
前記液晶レンズは矩形であり、対角線によって、3角形である4個の領域に分割可能であることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項8】
前記4角錐は平面で視て第1の辺を持つ矩形であり、前記液晶レンズは第2の辺を持つ矩形であり、前記4角錐の前記第1の辺は、前記液晶レンズの前記第2の辺と平行であることを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の方位角方向に任意の形状の光スポットを照射することが出来る照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内において、例えば天井に取り付けられた照明装置に対し、垂直方向、すなわち、床方向ではなく、水平方向、すなわち、壁方向に光を出射し、間接照明をおこなう需要がある。一方、公園等では、照明装置の側面方向に光を照射することによって、公園内の照明として使用する需要が存在する。
【0003】
特許文献1には、1個の光源を用いて、照明装置の周辺全体に均一に光を照射することが出来る構成が記載されている。また、特許文献2には複数の光源を用いて照明装置の周辺に均一に光を照射することが出来る構成が記載されている。
【0004】
特許文献3には、円錐状の反射体を用いて、整形された光ビームの方向を変化させる構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-12588号公報
【特許文献2】特開2015-167089号公報
【特許文献3】特開2009-302063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例による技術では、照明装置の側方に均一に光を放射することは可能であるが、側方の複数の方向に任意の形状の光スポットを照射する構成には対応することが出来ない。
【0007】
本発明の課題は、1個の光源により、複数の方位角方向に任意の形状の光スポットを形成することが出来る照明装置を実現することである。また、本発明の課題は、このような照明装置を小型の照明装置で実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、主な具体的な手段は次のとおりである。
【0009】
(1)光源が配置した第1の孔と光を出射する第2の孔と、前記第1の孔と前記第2の孔を連結する反射曲面を有し、前記第1の孔の中心と前記第2の孔の中心を結ぶ線を第1の方向とし、前記第1の方向に光を出射する第1の反射体と、前記第1の反射体の前記第2の孔を覆って液晶レンズが配置し、底面と、3個以上の複数の傾斜面を有する多角錐が、前記複数の傾斜面を前記液晶レンズに対向するように配置し、前記複数の傾斜面は反射面であり、前記反射面において、前記第1の方向に進む光は、前記第1の方向と交差する第2の方向に進路を変え、前記液晶レンズは、前記複数の傾斜面に対応してレンズを構成することが可能であることを特徴とする照明装置。
【0010】
(2)前記多角錐は四角錐であることを特徴とする(1)に記載の照明装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】コリメート光を出射する照明装置の側面図である。
【
図2】
図1の照明装置を用いて4方向に光を出射する場合の平面図である。
【
図3】本発明の照明装置の一部を示す斜視図である。
【
図7】本発明の照明装置の作用を示す断面図である。
【
図8】本発明の照明装置の作用を示す他の断面図である。
【
図13】液晶レンズの動作を説明する断面図である。
【
図14】液晶レンズの動作を説明する他の断面図である。
【
図15】液晶レンズの動作を説明するさらに他の断面図である。
【
図17】第1液晶レンズの電極形状を示す平面図である。
【
図18】第1液晶レンズと第2液晶レンズの動作を示す斜視図である。
【
図19】第1液晶レンズと第2液晶レンズを積層した状態を示す断面図である。
【
図20】第1液晶レンズ、第2液晶レンズ、第3液晶レンズ、第4液晶レンズの動作を示す斜視図である。
【
図21】4角錐反射体と液晶レンズの分割の関係を示す平面図である。
【
図29】4角錐反射体と液晶レンズの組み合わせを示す例である。
【
図30】
図29に対応する液晶レンズの分割例を示す平面図である。
【
図31】4角錐反射体と液晶レンズの組み合わせを示す他の例である。
【
図32】
図31に対応する液晶レンズの分割例を示す平面図である。
【
図33】液晶レンズの他の配線パターンと分割例を示す平面図である。
【
図34】液晶レンズのさらに他の配線パターンと分割例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【実施例0013】
図1は、所定の方向にコリメート光を出射する照明装置1の側面図である。
図1において、縦長の照明装置1の先端にレンズ等の光学部品2が配置され、レンズ等の光学部品2から光が放射される。コリメート光は所定の配向角θを有している。
【0014】
コリメート光を得るための照明装置1は、パラボラ曲面鏡を用いる場合が多い。このような照明装置1において、出射光4の配光角θを小さくするには、照明装置1の長さh1を大きくする必要がある。また、所定の光スポットを得るためには、対応したレンズ等の光学部品を配置する必要がある。
【0015】
図2は、4方向の側面方向に任意のスポット形状を有する光を放射する場合の平面図である。
図2は
図1に示す照明装置1を水平に方向に、方位角90度をもって配置したものである。
図2の照明装置セットによれば、4方向に任意の光スポットを形成するこが出来るが、
図2に示すように、照明装置セットの平面の径x1、y1が大きくなる。また、
図1で述べたように、コリメート光を得ようとすると。照明装置1の長さh1が大きくなり、その結果、照明装置セットの水平方向の径x1、y1がさらに大きくなる。
【0016】
図3は、このような問題を解決した本発明による照明装置の一部分を示す斜視図である。
図3において、ベース3の上にコリメート光を出射するファンネル型反射体10が配置している。ファンネル型反射体10は、外側は直方体で、内側に壁面がパラボラ曲面の反射面11が形成されている。ファンネル型反射体10の底面に形成された孔13にLED20が配置している。LED20からの光はパラボラ曲面11で反射しながら、出射孔12から出射する。
【0017】
出射孔12に対応して、四角錐反射体30が反射面を下側、すなわち、出射孔12と対向して配置している。四角錐反射体30の4個の反射面は、頂角が90度の3角形である。四角錐反射体30の頂点はファンネル型反射体10の中心軸、すなわち、光軸と一致している。したがって、ファンネル型反射体10の出射孔12から出射したコリメート光は四角錐反射体30の4面で反射して4方向に出射する。
【0018】
図3において、ファンネル型反射体10の外形は直方体であり、高さzfは20mm程度、幅xf、yfは例えば10mm程度である。また、ベース3はLED基板を収容する程度の高さがあればよいので、高さzbは、例えば、3mm程度で十分である。一方、四角錐反射体は1辺が10mmとすると、高さは3.5mm程度になる。したがって、
図3の構造は、断面の1辺が10mmの正方形で、高さは30mm以下の非常にコンパクトな外形となる。このようなコンパクトな照明装置から4方向にコリメート光を出射することが出来る。
【0019】
図3の構造では、所定のコリメート光を所定の4方向に放射することが出来るが、出射光の形状は変化させることが出来ない。
図4及び
図5に示す比較例は、
図3の構成において、四角錐反射体30で反射した光に対し、液晶レンズ100を作用させる構成である。
図4は、この構成を示す斜視図である。
【0020】
図4において、四角錐反射体30で反射した光の光路と直角の主面を有する液晶レンズ100が配置されている。
図4では、位置関係を示すために、液晶レンズ100は透明シートであるとして記載されている。液晶レンズ100は、実際には、薄い液晶レンズが積層された構成であるが、
図4では、図を複雑にしないために、1枚の透明シートとして記載されている。
【0021】
図5は
図4のA-A断面図である。
図5は、
図4の作用を示す断面図である。
図5において、外形が直方体であるファンネル型反射体10の内側に側壁がパラボラ曲面である反射面11が形成されている。ファンネル型反射体10の底面に形成されたLED用孔13にLED20が配置している。LED20はLED基板21に配置され、LED基板21はベース3内に収容されている。
【0022】
図5において、LED20を出射した光は、パラボラ曲面11で反射しながら出射孔12から四角錐反射体30に向かい、四角錐反射体30の反射面において、90度光路を曲げられ、水平方向(x方向)に向かう。水平方向に進路を変えた光は液晶レンズ100に入射し、レンズ作用を受ける。
【0023】
液晶レンズ100において、レンズ作用を受けなければ、光はそのまま水平方向に直進するが、液晶レンズ100によって、発散作用を受けると
図5の点線のように、光は発散する。後で述べるように、液晶レンズ100は電気的に種々な形状のレンズ作用を行うことが出来るので、種々の形状の光スポットを容易に得ることが可能である。
【0024】
しかし、この構成は、4か所に液晶レンズ100を配置する必要がある。
図5に示すように、液晶レンズは4枚の液晶表示パネルを必要とする。そうすると、4枚×4=16枚の液晶レンズが必要になり、製造コストを押し上げる。さらに、4枚セットの液晶レンズ100についても正確な位置合わせが必要であり、このセッティングコストも、照明装置の製造コストを押し上げることになる。
【0025】
図6は、本発明による照明装置の斜視図である。
図6において、光源は、LED20によって構成され、ファンネル型反射体10によって、コリメート光が形成されることは比較例である
図3乃至
図5と同じである。
図6の特徴は、光スポットの形状を変化させるための液晶レンズ100が、ファンネル型反射体10における、光の出口に配置されていることである。したがって、液晶レンズ100は1組4枚あればよい。また、液晶レンズ100のセッティングも容易であり、
図3乃至5の構成に比べて製造コストは大幅に削減することが出来る。
【0026】
図6において、液晶レンズ100の上には、4個の反射面を有する4角錐型反射体30が配置している。
図6においては、4個の反射面に入射する前に、光束は液晶レンズ100によって必要な制御を受ける。
図7及び
図8は、
図6の構成の動作を示す断面図である。
【0027】
図7は、液晶レンズ100によるレンズ作用を加えない場合の断面図である。
図7において、ファンネル型反射体10から出射した光は、液晶レンズ100によっては作用を受けず、4角錐型反射体30によって、進路を曲げられる。光が曲げられる方向は、4角錐型反射体30の反射面の頂角d1によって変えることが出来る。例えば、d1が90度であれば、光は直角方向に曲げられる。
【0028】
図8は、液晶レンズ100に発散作用を持つレンズが形成された場合の断面図である。
図8において、ファンネル型反射体10から出射した光は、液晶レンズ100によって発散作用を受け、4角錐型反射体30の反射面に入射する。4角錐型反射体30によって、進路を曲げられるが、この光は、液晶レンズ100によって発散作用を受けているので、進行するとともに断面の面積が大きくなる。
【0029】
図9は
図7の平面図である。
図9において、液晶レンズ100及び4角錐型反射体30の平面図は矩形であるが、液晶レンズ100の外形のほうが大きい。
図9において、中央の円は、光が液晶レンズ100を通って4角錐型反射体30の4個の反射面に投影された状態を示している。この光は、4角錐型反射体30の反射面で反射してx方向及びy方向に放射される。
【0030】
図10は
図8の平面図である。
図10において、液晶レンズ100及び4角錐型反射体30の平面図は矩形であるが、液晶レンズ100の外形のほうが大きい。
図9において、中央の円は、光が液晶レンズ100を通って4角錐型反射体30の4個の反射面に投影された状態を示している。この光は、反射面で反射してx方向及びy方向に放射される。但し、
図10においては、反射光は、液晶レンズ100による発散作用によって、広がりながら進行する。
【0031】
したがって、
図8及び
図10で示す照明装置のスポット径は、
図7及び
図9で示す照明装置のスポット径よりも大きい。どの程度大きくするかは、液晶レンズ100に形成される発散レンズの強度によって制御することが出来る。すなわち、液晶レンズ100によれば、光スポットの大きさを容易に制御することが出来る。
【0032】
図11はファンネル型反射体10の斜視図である。ファンネル型反射体10の外形は直方体となっている。直方体の内部には、ファンネル状に凹部が形成され、凹部の壁面はパラボラ曲面11となっている。この凹部の形状は、x-y平面では円であり、z軸方向の断面はパラボラ曲面となっている。パラボラ曲面によって、光は、z軸と平行方向にコリメートされる。なお、凹部の壁面は、一部がパラボラ曲面となっている構成でもよい。
【0033】
図11において、直方体の下面には、LED20用の孔13が形成されている。小型のLEDは平面で視て1.5mm□程度の小さいものも市販されている。LED孔13には、このような小さなLEDが組み込まれるだけのスペースが存在していればよい。直方体の上面には、出射孔12が形成されている。出射孔12は、例えば直径ddが6.5mm程度の円である。
【0034】
LED用孔13と出射孔12はパラボラ曲面11でつながっている。パラボラ曲面11によってLED20から出射した光はコリメートされて出射孔12から出射する。
図11において、出射孔12の径ddとファンネル型反射体10の高さの比(hf/dd)が大きいほど、よりコリメートされた光、すなわち、配光角の小さな出射光を得ることが出来る。(hf/dd)をアスペクト比と呼ぶこともある。
【0035】
アスペクト比は、2以上であることが好ましく、3以上であればより好ましく、4以上であればさらに好ましい。
図4の本発明の構成では、ファンネル型反射体10は縦向きで使用されるので、アスペクト比を大きくしても、照明装置の水平方向の幅には影響がない。
【0036】
図12は四角錐反射体30の斜視図である。
図6、
図7、
図8等では、図を複雑にしないために、四角錐反射体30が宙に浮いているように記載されているが、実際には、四角錐反射体30のコーナーに配置された支柱31によって支えられている。各支柱31は、ファンネル型反射体10の出光面側のコーナー付近に配置されることになる。四角錐反射体10のコーナーには光が入射しないので、
図12のような支柱31を配置するスペースが存在する。
【0037】
図13は、液晶レンズ100の原理を示す断面図である。
図13において、液晶層300の左側からコリメートされた光が入射している。
図13におけるPは入射光の偏向方向の意味である。通常の光の偏向方向はランダム分布しているが、液晶は屈折率に異方性があるので、
図13はP方向に偏向している光についての作用を示すものである。
【0038】
図13において、液晶層300には、電極によって液晶分子301が液晶層300の周辺に行くにしたがって、傾きが大きくなるように配向している。液晶分子301は細長い形状であり、液晶分子301の長軸方向の実効屈折率は、液晶分子301の短軸方向の実効屈折率よりも大きいので、液晶層300の周辺ほど屈折率が大きくなるため、凸レンズが形成される。
図13における点線は光波面WFであり、fはレンズのフォーカス距離である。
【0039】
液晶は、屈折率に異方性があるので、レンズを形成するには、第1のレンズが作用する光の偏向方向と直角方向に偏向する光に作用する第2のレンズが必要になる。
図14はこのレンズ構成を示す分解斜視図である。
図14において、左側の平行四辺形は光の波面である。つまり、X方向とY方向に偏向した光が液晶層300に入射する。第1液晶レンズ110はX偏光光に作用するレンズであり、第2液晶レンズ120はY偏光光に作用するレンズである。
【0040】
図14において、第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120では液晶分子301の初期配向方向が90度異なっている。液晶分子301の初期配向は、液晶レンズ内の配向膜の配向方向によって決定される。つまり、
図14では、2枚の液晶レンズ110、120において、光が入射する側の基板における配向膜の配向方向が互いに直角方向になっている。
【0041】
図15は液晶レンズによって凹レンズを形成する場合である。
図15において、波面WFが液晶層300に平行で、1方向に偏向した光が、左側から液晶層300に入射する。
図15において、液晶層300における液晶分子301は、電極によって光軸付近において最も大きく配向され、周辺に行くにしたがって、配向角度が小さくなっている。このような液晶配向によるレンズ構成によって、液晶層300を通過した光の波面WFは
図15の点線で示すような曲線になって凹レンズが形成される。なお、凹レンズの場合も、
図14に示すように、2枚の液晶レンズが必要なことは同じである。
【0042】
図16は、液晶レンズ110の詳細断面図である。
図16において、TFT基板111の上には、第1電極112が形成され、第1電極112を覆って第1配向膜113が形成されている。第1配向膜113の配向方向によって、入射光のうちの、液晶レンズによって作用を受ける方向の偏光光が決められる。対向基板115の内側には、第2電極116が形成され、第2電極116を覆って第2配向膜117が形成されている。第1配向膜113の配向方向と第2配向膜117の配向方向の関係は、どのような液晶を使用するかによって決められる。TFT基板111と対向基板115の間に液晶層300が挟持されている。
【0043】
図17の左側は第1基板111に形成された第1電極112の平面図である。第1電極112は同心円状の円となっている。円状の各電極112には電圧を印加するための引き出し配線114が接続されている。
図17の右側の図は、対向基板115に形成された第2電極116の形状を示す平面図である。第2電極116は、平面電極であり、対向基板115のほぼ全面にわたって形成されている。
【0044】
図17において、第1電極112と第2電極116間の電圧を変化させることによって種々の強度のレンズを形成することができる。
図16、
図17の例は、第1電極112が同心円で形成されているので、円形のレンズを容易に形成できるという特徴を有している。
【0045】
図16及び
図17で説明した液晶レンズ110は、1方向、例えば偏光光PXに対して作用するレンズである。しかし、LED10からの光は、あらゆる方向に偏光しているので、少なくとも、PXと直角方向に偏光した光PYに対して作用する液晶レンズが必要である。
【0046】
図18はこの構成を示す斜視図である。
図18において、LEDからの光LLが左側から入射すると、第1液晶レンズ110によってPX方向に偏光した光が液晶レンズの作用を受ける。PY方向に偏光した光は第1液晶レンズ110の影響を受けない。PY方向に偏光した光は、第2液晶レンズ120によって液晶レンズの作用を受ける。PX方向に偏光した光は、第2液晶レンズ120の作用は受けない。これによって、x方向に偏光した光もy方向に偏光した光も液晶レンズの作用を受けることが出来る。
【0047】
図19は、第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120を積層した状態を示す断面図である。第1液晶レンズ110と第2液晶レンズ120は透明接着材200によって接着している。
図19において、第2液晶レンズ120の電極構成は、第1液晶レンズ110と同じである。つまり、第2液晶レンズ120において、TFT基板121に第3電極122が形成され、その上に第3配向膜123が形成されている。対向基板125の上に第4電極126が形成され、その上に第4配向膜127が形成されている。
【0048】
第2液晶レンズ120が第1液晶レンズ110と異なる点は、配向膜123の配向方向である。
図19において、ALは配向膜113の配向方向を示している。
図19において、第1液晶レンズ110におけるTFT基板111に形成された第1配向膜113の配向方向は例えばx方向である。第2液晶レンズ120のTFT基板121に形成された第3配向膜123の配向方向は、例えばy方向である。つまり、x方向に偏光した光もy方向に偏光した光も、2枚の液晶レンズ110及び120によって作用を受けることが出来る。
【0049】
なお、第1液晶レンズ110における対向基板115に形成された第2配向膜117の配向方向、及び第2液晶レンズ120の対向基板125に形成された第4配向膜127の配向方向は、液晶300としてどのような液晶を使用するかによって決まる。つまり、第1液晶レンズ110における第2配向膜117は第1配向膜113と同じ方向に配向する場合もあるし、直角方向に配向する場合もある。第2液晶レンズ120における第3配向膜123と第4配向膜127の関係も同じである。
【0050】
ところで、LED10からの光は、全方向に偏光しているので、PXあるいはPYの偏光光にのみ作用したのでは、液晶レンズの十分な作用を得られない場合がある。この場合は、
図20に示すように、例えば、x方向に対して45度方向に偏光している光P45に対して作用する液晶レンズ130、x方向に対して135度方向に偏光している光P135に対して作用する液晶レンズ140を加えればよい。
【0051】
図21は4角錐反射体と液晶レンズ100の関係を示す平面図である。
図21の上側の図は、4角錐反射体30を反射面側から視た平面図である。
図21の下側の図は、液晶レンズ100の平面図である。
図21では、液晶レンズ100の領域を、4角錐反射体の反射面I、II、III、IVに合わせて、(1)、(2)、(3)、(4)の領域に分割している。すなわち、4角錐反射体30の4個の反射体面に液晶レンズ100のレンズ作用を異ならせることによって、4個の反射面からの光スポットの形状を変えることが出来る。
【0052】
図22はこのような構成を可能とする本発明による照明装置の平面図である。
図22において、液晶レンズ100は4角錐反射体30の反射面に合わせて、
図21に示すような4個の領域に分割されている。
図22は、
図21における領域(2)のみに、発散レンズを形成し、他の領域には、レンズ作用を形成しない場合の平面図である。
図22において、x方向右側に出射する光のスポットが他の方向に出射する光のスポット径よりも大きくなっている。
【0053】
図23は、
図22のB-B断面図である。
図23において、4角錐反射体30の左側の反射面で反射した光は、コリメート光として出射される。4角錐反射体30の右側の反射面で反射した光は、液晶レンズ100の作用を受けて発散をしながら、x方向右側に出射する。すなわち、
図23において、照明装置の左右において、異なった径の光スポットを得ることが出来る。
【0054】
図21に示す液晶レンズ100の4個の領域(1)、(2)、(3)、(4)のすべてについて異なったレンズ作用を形成すれば、4方向全てについて異なった光スポットを得ることが出来る。
図24はこれを示す平面図である。
図24では、x-y平面上では、B方向とC方向が液晶レンズ100によって拡散作用を受けている。
図24は、x-y平面なので、z方向の形状は記載されていないが、
図23等で説明したように、z方向にも、スポット径を変化させることが出来る。
【0055】
図25は、
図24のA、B、C、Dに示す方向における光スポットの形状を示す例である。Aは液晶レンズ100の作用を受けていない、コリメート光である。Bは液晶レンズ100によって、拡散作用を受けた場合である。Cは液晶レンズ100によって、横方向(
図24のy方向)にのみ拡散作用を受けた場合である。Dは液晶レンズ100によって、縦方向(
図24のz方向)にのみ拡散作用を受けた場合である。
【0056】
このように、
図21の領域(1)、(2)、(3)、(4)のレンズ作用を変えることによって各方向の光スポットの形状を変えることが出来るが、このような液晶レンズは、
図16に示すような液晶レンズでは構成することが出来ない。このような液晶レンズは、
図26乃至
図28に示すように液晶要素153をマトリクス状に配置することによって実現することが出来る。
【0057】
すなわち、マトリクス配置であれば、マトリクス状に配置した多数のレンズ要素に印加する電圧(具体的には、信号線電圧と走査線電圧)を制御することによって、任意の作用を有する液晶レンズを構成することが出来る。
図26において、点線の対角線は架空の線であるが、これによって、
図21に示す領域(1)、(2)、(3)、(4)が仕切られる。
【0058】
図26において、TFT基板111と対向基板115が周辺においてシール材150で接着し、内部に液晶が封入されている。TFT基板111と対向基板115が重なった領域がレンズ領域170となる。TFT基板111は対向基板115よりも大きく形成され、TFT基板111において、対向基板115と重なっていない部分は端子領域160である。端子領域160には、液晶レンズを駆動するドライバIC165等が配置している。
【0059】
図26のレンズ領域170において、横方向(x方向)に走査線151が延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、信号線152が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線151と信号線152に囲まれた領域にレンズ要素電極(以後単に要素電極という)を含むレンズ要素153が形成される。要素電極と対向基板に形成されたコモン電極との間に電圧を印加して、液晶分子を必要な方向に配向させて、光を屈折させる。
【0060】
図27はレンズ要素153の平面図である。
図27において、走査線151と信号線152に囲まれた領域に要素電極154が形成されている。要素電極154と信号線152との間に走査信号によってスイッチングされるTFT(Thin Film Trnsistor)が形成されている。TFTは走査線151から分岐したゲート電極210、半導体膜211、信号線153から分岐したドレイン電極212、及びソース電極123で形成され、ソース電極213はスルーホール214を介して要素電極154と接続する。他の液晶レンズ120、130、140も同様な構成となっている。
【0061】
図28は、液晶レンズの断面図である。
図28において、要素電極154が形成されたTFT基板111とコモン電極155が形成された対向基板115との間に液晶層300が挟持されている。TFT基板111と対向基板115はシール材150によって接着している。要素電極154とコモン電極155との間に液晶レンズの要素153が形成される。TFT基板111は対向基板115よりも大きく形成され、TFT基板111が対向基板115と重なっていない部分は端子領域160となっており、端子領域160にはドライバIC165が配置している。
【0062】
図26乃至28に示す液晶レンズは、レンズ要素153がマトリクス状に配置しているので、入射光を任意の方向に拡大、縮小させることが出来る。
以上の説明では、4角錐反射体を使用して、光を屈曲および分割している構成である。しかし、本発明は、これに限らず、3角錐反射体、あるいは、5角錐以上の多角錐反射体を使用する場合にも適用することが出来る。この場合の液晶レンズの分割方法、パターニング方法、液晶レンズと3角錐を含む多角錐反射体の配置方法等は、実施例1及び2で説明した、4角錐反射体30の場合を応用すればよい。