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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056259
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】トレンチゲートタイプIGBT
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240416BHJP
   H01L 29/739 20060101ALI20240416BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
H01L29/78 652M
H01L29/78 653A
H01L29/78 655B
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163011
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】520366927
【氏名又は名称】ウィル セミコンダクター (シャンハイ) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】新井 寛己
(57)【要約】
【課題】ターンオフに要する時間を短縮し、エネルギー消費を小さくする。
【解決手段】トレンチゲートタイプIGBTは、複数のトレンチ120であって、内部にゲート領域を有する複数のゲートトレンチ120Gと、エミッタ電極に接続されるエミッタ領域を有する複数のエミッタトレンチ120Eを含む。トレンチ120に隣接するメサセクションであって、チャネルとして機能しない第2メサ領域と、前記エミッタ電極を接続するコンタクト132とを有し、第2メサ領域は、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eとに挟まれる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面上に形成されたエミッタ電極と、
前記半導体基板の裏面上に形成されたコレクタ電極と、
前記コレクタ電極の上の前記半導体基板の裏面側に形成されたPタイプのPコレクタ層と、
前記半導体基板中の前記Pコレクタ層の上に位置するNタイプのNドリフト層と、
前記Nドリフト層の上に形成され、前記Nドリフト層より不純物濃度が高いNタイプのキャリアストア層と、
前記半導体基板の前記キャリアストア層の表面側に形成されたPタイプのPボディー層と、
前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成され、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成されたゲート領域を有する複数のゲートトレンチと、
前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成された、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成され、前記エミッタ電極に接続されるエミッタ領域を有する複数のエミッタトレンチと、
前記ゲートトレンチに隣接する前記メサセクションであって、前記Pボディー層の表面側に形成され、前記エミッタ電極と接続されるエミッタ領域と、
前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていることでチャネルとして機能する第1メサ領域と、
前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていないことでチャネルとして機能しない第2メサ領域と、
を有し、
前記第2メサ領域は、前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチに挟まれている、
トレンチゲートタイプIGBT。
【請求項2】
請求項1に記載のトレンチゲートタイプIGBTであって、
前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチとが、整列して配置されており、前記ゲートトレンチをG、前記エミッタトレンチをEと表記した場合に、GGEGEGG配列を有する、
トレンチゲートタイプIGBT。
【請求項3】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面上に形成されたエミッタ電極と、
前記半導体基板の裏面上に形成されたコレクタ電極と、
前記コレクタ電極の上の前記半導体基板の裏面側に形成されたPタイプのPコレクタ層と、
前記半導体基板中の前記Pコレクタ層の上に位置するNタイプのNドリフト層と、
前記Nドリフト層の上に形成され、前記Nドリフト層より不純物濃度が高いNタイプのキャリアストア層と、
前記半導体基板の前記キャリアストア層の表面側に形成されたPタイプのPボディー層と、
前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成され、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成されたゲート領域を有する複数のゲートトレンチと、
前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成された、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成され、前記エミッタ電極に接続されるエミッタ領域を有する複数のエミッタトレンチと、
前記ゲートトレンチに隣接する前記メサセクションであって、前記Pボディー層の表面側に形成され、前記エミッタ電極と接続されるエミッタ領域と、
前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていることでチャネルとして機能する第1メサ領域と、
前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていないことでチャネルとして機能しない第2メサ領域と、
を有し、
前記第1メサ領域および第2メサ領域は、前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチに挟まれている、
トレンチゲートタイプIGBT。
【請求項4】
請求項3に記載のトレンチゲートタイプIGBTであって、
前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチとが、に整列して配置されており、前記ゲートトレンチをG、前記エミッタトレンチをEと表記した場合に、GEGEGEG配列を有する、
トレンチゲートタイプIGBT。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のトレンチゲートタイプIGBTであって、
前記コンタクトは、前記エミッタ電極から前記Pボディー層の中間部分まで伸びるコンタクトホール中を伸びる配線部と、前記配線部の先端側の前記Pボディー層内に設けられた不純物濃度の高いコンタクト領域を含む、
トレンチゲートタイプIGBT。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トレンチゲートタイプのIGBT、特にターンオフ特性の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大電力のモータを駆動する回路のスイッチング素子として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)が広く利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、トレンチゲートタイプのIGBTにおいて、IGBTのチャネルの下側にホールを蓄積するキャリアストア(Carrier Store)層を設けることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-347289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、キャリアストア層を設けると、IGBTのターンオン時のコレクタ・エミッタ間電圧VCEを低減することができる。しかしながら、IGBTのターンオフ時には、残留するホールの影響で、ターンオフに要する時間が長くなって、エネルギー消費が大きくなる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るトレンチゲートタイプIGBTは、半導体基板と、前記半導体基板の表面上に形成されたエミッタ電極と、前記半導体基板の裏面上に形成されたコレクタ電極と、前記コレクタ電極の上の前記半導体基板の裏面側に形成されたPタイプのPコレクタ層と、前記半導体基板中の前記Pコレクタ層の上に位置するNタイプのNドリフト層と、前記Nドリフト層の上に形成され、前記Nドリフト層より不純物濃度が高いNタイプのキャリアストア層と、前記半導体基板の前記キャリアストア層の表面側に形成されたPタイプのPボディー層と、前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成され、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成されたゲート領域を有する複数のゲートトレンチと、前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成された、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成され、前記エミッタ電極に接続されるエミッタ領域を有する複数のエミッタトレンチと、前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていることでチャネルとして機能する第1メサ領域と、前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていないことでチャネルとして機能しない第2メサ領域と、を有し、前記第2メサ領域は、前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチに挟まれている。
【0007】
前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチとが、整列して配置されており、前記ゲートトレンチをG、前記エミッタトレンチをEと表記した場合に、GGEGEGG配列を有することができる。
【0008】
また、本開示に係るトレンチゲートタイプIGBTは、半導体基板と、前記半導体基板の表面上に形成されたエミッタ電極と、前記半導体基板の裏面上に形成されたコレクタ電極と、前記コレクタ電極の上の前記半導体基板の裏面側に形成されたPタイプのPコレクタ層と、前記半導体基板中の前記Pコレクタ層の上に位置するNタイプのNドリフト層と、前記Nドリフト層の上に形成され、前記Nドリフト層より不純物濃度が高いNタイプのキャリアストア層と、前記半導体基板の前記キャリアストア層の表面側に形成されたPタイプのPボディー層と、前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成され、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成されたゲート領域を有する複数のゲートトレンチと、前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成された、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成され、前記エミッタ電極に接続されるエミッタ領域を有する複数のエミッタトレンチと、前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていることでチャネルとして機能する第1メサ領域と、前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていないことでチャネルとして機能しない第2メサ領域と、を有し、前記第1メサ領域および前記第2メサ領域は、前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチに挟まれている。
【0009】
前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチとが、に整列して配置されており、前記ゲートトレンチをG、前記エミッタトレンチをEと表記した場合に、GEGEGEG配列を有することができる。
【0010】
前記コンタクトは、前記エミッタ電極から前記Pボディー層の中間部分まで伸びるコンタクトホール中を伸びる配線部と、前記配線部の先端側の前記Pボディー層内に設けられた不純物濃度の高いコンタクト領域を含むことができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係るトレンチタイプIGBTによれば、ターンオフに要する時間を短縮して、ターンオフ時のエネルギー消費が小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るトレンチゲートタイプIGBTの構成を模式的に示す断面図である。
図2】比較例のトレンチゲートタイプIGBTの構成を模式的に示す断面図である。
図3】実施形態および比較例における、ターンオフ時の電流電圧特性を示す図である。
図4】他の実施形態に係るトレンチゲートタイプIGBTの構成を模式的に示す断面図である。
図5】他の実施形態および比較例における、ターンオフ時の電流電圧特性を示す図である。
図6】コンタクトが接続されるメサセクションの断面の位置を説明する図である。
図7】ターンオフ時の時刻を説明する図である。
図8】G-G構造におけるホール引き抜き(ホール電流密度)を示す図である。
図9】G-E構造におけるホール引き抜き(ホール電流密度)を示す図である。
図10】E-E構造におけるホール引き抜き(ホール電流密度)を示す図である。
図11】実施形態に係るIGBTの製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態について以下に説明する。なお、以下の実施形態は本開示を限定するものではなく、また複数の例示を選択的に組み合わせてなる構成も本開示に含まれる。
【0014】
「IGBTの構成」
図1は、実施形態に係るトレンチゲートタイプIGBTの構成を模式的に示す断面図である。
【0015】
半導体基板100の表面上には、相関絶縁膜102を介しエミッタ電極104が形成される。半導体基板100には、例えばFZ(Floating Zone)ウェハなどのシリコン(Si)ウェハが用いられるが、炭化ケイ素(SiC)のウェハなどでもよい。相関絶縁膜102は、酸化シリコンなどの絶縁性の材料が用いられる。エミッタ電極104には、通常アルミなどの金属材料が用いられる。
【0016】
半導体基板100の裏面上には、コレクタ電極106が形成される。コレクタ電極106には、通常アルミなどの金属材料が用いられる。
【0017】
コレクタ電極106の上側の半導体基板の裏面部には、不純物濃度の高い、P+のPコレクタ層110が形成され、その上には後述するNドリフト層114より不純物濃度が高い、N+のフィールドストップ層112が形成される。これらは半導体基板100内のNタイプ、Pタイプの領域は、それぞれのタイプの不純物ドープによって形成される。Pコレクタ層110は、コレクタ領域として機能し、フィールドストップ層112は、オフ時の空乏層の拡大を防止する。
【0018】
フィールドストップ層112の上には、Nタイプの半導体基板100で構成されるNドリフト層114が位置する。このNドリフト層114は、半導体基板100のボディーであり、IGBTのPNPバイポーラトランジスタのベースとしての機能を有する。
【0019】
前記Nドリフト層114の上には、Nドリフト層114よりは不純物濃度が高いNN+のキャリアストア層116が設けられている。このキャリアストア層116は、ホールを蓄積することでオン抵抗を下げ、オン時のVCEを下げる機能がある。
【0020】
キャリアストア層116の上には、比較的不純物濃度の低い、P-のPボディー層118が設けられる。このPボディー層118は、PNPバイポーラトランジスタのエミッタとして機能する。
【0021】
また、半導体基板100の表面から下方に向けて複数のトレンチ120が形成されている。トレンチ120は、半導体基板100の表面(相関絶縁膜102の下側)から下方に向けて伸び、Pボディー層118、キャリアストア層116を貫通して、Nドリフト層114にまで至る。
【0022】
トレンチ120は、周壁が例えば酸化シリコンからなる絶縁膜で周囲から絶縁されており、内部には導電性のポリシリコンのなどが充填されている。この例では、内部がゲート電極(図示せず)と接続され、ゲート領域を形成するゲートトレンチ120G、エミッタ電極104に接続されエミッタ領域を形成するエミッタトレンチ120Eとを含む。図においては、ゲートトレンチ120Gとゲート電極を接続する配線を模式的に示してあり、エミッタトレンチ120Eとエミッタ電極104は、エミッタ電極104の一部が延長されて接続されるように示してある。
【0023】
また、Pボディー層118の表面側であって、ゲートトレンチ120Gに隣接するエリアには、不純物濃度の高い、N+のエミッタ領域122が形成される。このエミッタ領域122は、エミッタ電極104と電気的に接続される。例えば、図示しない部分において、相関絶縁膜102が除去され、エミッタ電極104とエミッタ領域122が直接接続される。
【0024】
これによって、エミッタ領域122とキャリアストア層116の間の領域がFETのチャネルとして機能し、FETのオン時においてキャリアである電子はエミッタ領域からキャリアストア層116を介し、Nドリフト層114に流れ込む。
【0025】
また、エミッタ電極104からは、コンタクト132が伸びて、エミッタトレンチ120Eの内部に接続される。このコンタクト132はエミッタ電極104と同じアルミなどの金属で形成され、コンタクトホールを形成した後、その内部に金属が堆積される。これによって、エミッタ電極104と、エミッタトレンチ120Eが接続される。
【0026】
また、エミッタ電極104からのコンタクト132は、複数のトレンチ120の間に形成される各メサセクションのPボディー層118に伸びるように配置されている。そして、このコンタクト132はメサセクションのPボディー層118の内部(中間部分)に形成された不純物濃度の高い(P+)コンタクト領域134に接続されている。従って、エミッタ電極104が、コンタクト132、コンタクト領域134に電気的に接続され、ターンオフ時にNドリフト層114内にたまったホールを、Pボディー層118を介しエミッタ電極に引き抜くことができる。
【0027】
ここで、本実施形態では、表面部にはエミッタ領域122が形成されているチャネルとして機能するPボディー層118だけでなく、エミッタ領域122が形成されておらずチャネルとして機能しないPボディー層118についてもコンタクト領域134が設けられ、コンタクト132によりエミッタ電極104に接続されている。
【0028】
なお、ゲートトレンチ120Gの内部は、別に設けたゲート電極に接続されており、ゲートトレンチ120Gの周壁の絶縁膜がゲート絶縁膜として機能する。
【0029】
図1のIGBTでは、トレンチ120の並びが、ゲートトレンチをG、エミッタトレンチをEと表した場合に、「GGEGEGG」となるため、GGEGEGG配列と呼ぶ。
【0030】
「IGBTの動作」
コレクタ電極106とエミッタ電極104の間に電圧(例えば、コレクタ電極106に400V、エミッタ電極104を0V)をかけた状態で、ゲートトレンチ120Gに正の電圧(例えば、15V)を印加する。なお、上述のコレクタ電極106の印加電圧400Vは単なる一例であり、適用対象によっては10Vなどの低電圧の場合もある。
【0031】
これによって、ゲートトレンチ120Gの周辺のチャネルに反転層が生じてFETがオンし、エミッタ領域122からNドリフト層114に向けた電子電流が流れる。すなわちPボディー層118のP領域がゲートトレンチ120Gを+にすることにより、ゲートトレンチ120Gの側壁に-が蓄積され、このチャネル領域がP型からN型に反転することでここに電流が流れる。これによって、PNPバイポーラトランジスタがオンして、Nドリフト層114にコレクタ側からホールが供給され、エミッタ側から電子が供給されてIGBTがオンする。すなわち、ホールと電子の両方が移動することにより、コレクタ電極106からエミッタ電極104に向けた電流が流れる。
【0032】
また、フィールドストップ層112により、空乏層の広がりを抑制できるため、全体の厚みを小さくできる。
【0033】
本実施形態のIGBTでは、ゲートトレンチ120Gだけでなく、エミッタトレンチ120Eを設けるとともに、Pボディー層118において、その表面にエミッタ領域122のない領域を設けてある。
【0034】
すなわち、ゲートトレンチ120Gに隣接するPボディー層118領域であって、表面側にエミッタ領域122が存在する領域がチャネルとして機能する。この領域を第1メサ領域と呼ぶ。従って、このゲートエリア(図1におけるIGBT GATE)がIGBTのゲートとして機能する。
【0035】
一方、表面にエミッタ領域122のないPボディー層118は、ゲートトレンチ120Gに隣接していてもチャネルとして機能せず、さらにエミッタトレンチ120Eに隣接する領域もチャネルとして機能しない。この領域を第1メサ領域と呼ぶ。従って、この非ゲートエリア(図1におけるIGBT 非GATE)は、IGBTのゲートとして機能しない。この非ゲートエリアにおいては、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eが容量結合する。このため、IGBTのゲート・エミッタ容量に置換することができ、ミラー容量を減少することができる。
【0036】
特に、本実施形態では、非ゲート領域において、ゲートトレンチ120Gと、エミッタトレンチ120Eを交互に配置することでミラー容量を効果的に減少することができる。
【0037】
さらに、本実施形態のIGBTでは、コンタクト132を有し、これによって、チャネルとして機能しないPボディー層118にも接続されている。IGBTをターンオフした際には、ドリフト層114内に残留するホールをエミッタ電極104に早期に引き抜くことができる。なお、コンタクト132は、チャネルとして機能するPボディー層118についても配置されており、ここにおいてもターンオフ時にホールを引き抜くことができる。また、非ゲートエリアにゲートトレンチ120Gを配置しているが、このゲートトレンチ120Gの周辺のPボディー層118からも同様にホールが引き抜かれる。
特に、ゲートトレンチ120Gと、エミッタトレンチ120Eとの間のメサセクションにおいては、コンタクト132を介するホールの引き抜きが効果的に行われる。G-G及びE-E構造の場合はメサセクション部の電位は横方向で見ると同じになるが、G-Eの場合は横方向に電位差が生じる。それによりホールを有効的に引き抜くことが可能となる。
【0038】
<比較例の構成>
図2には、比較例の構成を示す。この比較例では、エミッタ電極104とPボディー層118を接続するコンタクト132は、エミッタ領域122が形成されたチャネルとして機能する領域のみに設けられている。すなわち、エミッタ領域122が設けられていないメサセクションについてはコンタクト132を設けていない。従って、ターンオフ時においてホールの十分な引き抜きが行えず、ホールが残留し、オフまでに時間がかかる。
【0039】
<ターンオフ時に特性>
図3は、図1の実施形態と、図2の比較例における、ターンオフ時の電流電圧特性を示す図である。実線が実施形態のVCE,VGE,ICを示し、破線が比較例のVCE,VGE,ICを示す。
【0040】
比較例では、コレクタ・エミッタ間電圧VCEについて、時間t2付近から上昇し始め、オーバーシュートして一定になる。ゲート・エミッタ間電圧VGEについては、VCEが最大点を超えたのと同様のタイミングで減少し始める。また、コレクタ電流ICは、VCEが電源電圧になった時点で減少し始める。
【0041】
一方、実施形態では、コレクタ・エミッタ間電圧VCEについて、時間t2よりだいぶ前のt1付近から上昇し始め、オーバーシュートして一定なる。ここで、VCEの上昇の傾きは比較例に比べ大きく、急激に上昇する。ゲート・エミッタ間電圧VGEも、時間t1付近から減少し始め、緩やかに減少を続ける。コレクタ電流ICは、時間t1付近で急激に減少し早期にほぼ0になる。
【0042】
実施形態では、ホールがPボディー層118からに速やかに引き抜かれることによってVCEが急激に上昇し、ICが急激に減少する。
【0043】
ターンオフの際の消費エネルギーEoffは、Eoff=VCE*IC×時間(VCE
が上がり始めてからICが切れるまでの時間)であり、実施形態では、VCEが急激に上昇するため、消費エネルギーが低く抑えられる。図3に示すシミュレーション結果によれば、消費電力を55%削減することができた。
【0044】
このように、本実施形態に係るIGBTによれば、IGBTのゲートとして機能しないエミッタトレンチまたはゲートトレンチを設け、それらトレンチに隣接するチャネルとして機能しないPボディー層118をコンタクト132でエミッタ電極またはゲート電極に接続することで、このPボディー層118からホールの抜出すことができる。このため、本実施形態によれば、IGBTのターンオフを高速に行え、これによってターンオフ時のエネルギー消費を抑制することができる。
【0045】
<他の構成例>
図4は、他の実施形態のIGBTの構成を示す図である。この例では、トレンチ120について、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eを交互に配置している。そして、トレンチ120間のメサセクションのPボディー層118については、すべてにコンタクト132およびコンタクト領域134を設け、エミッタ電極104に接続している。
【0046】
図4のIGBTでは、トレンチ120の並びが、ゲートトレンチをG、エミッタトレンチをEと表した場合に、「GEGEGEG」となるため、GEGEGEG配列と呼ぶ。
【0047】
このような構成によっても、上述の実施形態と同様に、ターンオフ時にホールを素早く引き抜くことができる。特に、この実施形態では、チャネル部もゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eが対向するGE構造にすることによりホールの引き抜きをより早くすることができる。
【0048】
図5は、図3と同様の図であり、図4の実施形態と、図2の比較例における、ターンオフ時の電流電圧特性を示す図である。実線が図4の実施形態のVCE,VGE,ICを示し、破線が比較例のVCE,VGE,ICを示す。
【0049】
このように、図5の構成によれば、IGBTのターンオフがより早期に完了する。これによって、ターンオフ時の消費電力は、53%削減できた。
【0050】
<GE構造>
図6図10に、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eの配列に応じたホール引き抜きの特性について説明する。図6は、コンタクト132が接続されるメサセクションの断面の位置を説明する図である。ゲートトレンチ120Gとゲートトレンチ120Gの間のメサセクションをG-G、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eの間のメサセクションをG-E、エミッタトレンチ120Eとエミッタトレンチ120Eの間のメサセクションをE-Eと表す。図7は、ターンオフ時の時刻を説明する図であり、ターンオフ開始時T0、ホール引き抜き開始T1、ホール引き抜きT2ホール引き抜き終了T3の4つの観測点を示している。
【0051】
図8は、G-G構造におけるホール引き抜き(ホール電流密度)を示す図であり、図9は、G-E構造におけるホール引き抜き(ホール電流密度)を示す図であり、図10は、E-E構造におけるホール引き抜き(ホール電流密度)を示す図である。
【0052】
図8のG-G構造では、定常状態からターンオフでチャネル部のコンタクト132から、ホールが沢山引き抜かれている。
【0053】
図9のG-E構造では、溜まったホールがミラー区間の初期段階で早く引き抜かれている。その後ターンオフで再びNドリフト層のホールが引き抜かれている。
【0054】
図10のE-E構造では、ミラー区間でも表面側にたまったホールが引き抜き切れていない。
【0055】
このように、メサセクションをG-E構造して、ここにコンタクト132を接続することでターンオフ時のホールの引き抜きを効果的に行えることがわかる。
【0056】
<製造工程>
図6は、実施形態に係るIGBTの製造工程を示す図である。まず、半導体基板100を用意し、製造工程に投入する(S11)。半導体基板100としては、例えばFZ(浮遊帯(Floating Zone))ウェハであって、Nタイプのものが利用される。
【0057】
まず、表面側を酸化して相関絶縁膜102を形成する(S12)。なお、1枚のウェハには複数の素子(この場合はIGBT)を作成するため、この段階で素子分離の処理を行うとよい。
【0058】
次に、表面側からのPタイプの不純物ドープによって、P+のPボディー層118を形成する(s13)。表面側からのエッチングによりトレンチを形成し(S14)、形成したトレンチの壁面に酸化膜を形成する(S15)。ゲートトレンチであれば、この酸化膜がゲート絶縁膜となる。そして、トレンチの内部にポリシリコンを堆積する(S16)。このポリシリコンは導電性である。
【0059】
次に、Nタイプの不純物の注入によってキャリアストア層(CS層)116を形成する(S17)。そして、表面側からのNタイプの不純物の注入によってエミッタ領域を形成する(S18)。
【0060】
表面側からのエッチングによってコンタクトホールを形成し、Pタイプ不純物の注入によって、コンタクト領域134を形成する。次に、メタルの堆積によって、コンタクトホール内にも伸びるエミッタ電極104を形成する(S20)。そして、表面側をパッシベーション膜で覆う(S21)。
【0061】
次に、裏面側を研磨し(S22)、裏面側からフィールドストップ層112、Pコレクタ層110を順に形成する(S22,S24)。そして、メタルの堆積によって、コレクタ電極106を形成する(S24)。
【0062】
このようにして、IGBTが形成され、次にこれについて各種検査を行い(S25)、製造工程を終了する。
【符号の説明】
【0063】
100 半導体基板、102 相関絶縁膜、104 エミッタ電極、106 コレクタ電極、110 コレクタ層、110 Pコレクタ層、112 フィールドストップ層、114 Nドリフト層、116 キャリアストア層、118 Pボディー層、120 トレンチ、120E エミッタトレンチ、120G :ゲートトレンチ、122 エミッタ領域、132 コンタクト、134 コンタクト領域。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2022-11-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面上に形成されたエミッタ電極と、
前記半導体基板の裏面上に形成されたコレクタ電極と、
前記コレクタ電極の上の前記半導体基板の裏面側に形成されたPタイプのPコレクタ層と、
前記半導体基板中の前記Pコレクタ層の上に位置するNタイプのNドリフト層と、
前記Nドリフト層の上に形成され、前記Nドリフト層より不純物濃度が高いNタイプのキャリアストア層と、
前記半導体基板の前記キャリアストア層の表面側に形成されたPタイプのPボディー層と、
前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成され、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成されたゲート領域を有する複数のゲートトレンチと、
前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成された、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成され、前記エミッタ電極に接続されるエミッタ領域を有する複数のエミッタトレンチと、
前記ゲートトレンチに隣接する前記メサセクションであって、前記Pボディー層の表面側に形成され、前記エミッタ電極と接続されるエミッタ領域と、
前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていることでチャネルとして機能する第1メサ領域と、
前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていないことでチャネルとして機能しない第2メサ領域と、
を有し、
前記第2メサ領域は、前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチに挟まれている、
トレンチゲートタイプIGBT。
【請求項2】
請求項1に記載のトレンチゲートタイプIGBTであって、
前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチとが、整列して配置されており、前記ゲートトレンチをG、前記エミッタトレンチをEと表記した場合に、GGEGEGG配列を有する、
トレンチゲートタイプIGBT。
【請求項3】
半導体基板と、
前記半導体基板の表面上に形成されたエミッタ電極と、
前記半導体基板の裏面上に形成されたコレクタ電極と、
前記コレクタ電極の上の前記半導体基板の裏面側に形成されたPタイプのPコレクタ層と、
前記半導体基板中の前記Pコレクタ層の上に位置するNタイプのNドリフト層と、
前記Nドリフト層の上に形成され、前記Nドリフト層より不純物濃度が高いNタイプのキャリアストア層と、
前記半導体基板の前記キャリアストア層の表面側に形成されたPタイプのPボディー層と、
前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成され、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成されたゲート領域を有する複数のゲートトレンチと、
前記半導体基板の表面側からメサセクションを介在させて離散的に形成された、裏面側に向けて前記Nドリフト層まで伸びる複数のトレンチであって、内部に絶縁膜を介し形成され、前記エミッタ電極に接続されるエミッタ領域を有する複数のエミッタトレンチと、
前記ゲートトレンチに隣接する前記メサセクションであって、前記Pボディー層の表面側に形成され、前記エミッタ電極と接続されるエミッタ領域と、
前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていることでチャネルとして機能する第1メサ領域と、
前記メサセクションの前記Pボディー層であって、コンタクトにより前記エミッタ電極に接続されるとともに、表面側に前記エミッタ領域が形成されていないことでチャネルとして機能しない第2メサ領域と、
を有し、
前記第1メサ領域および第2メサ領域は、前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチに挟まれている、
トレンチゲートタイプIGBT。
【請求項4】
請求項3に記載のトレンチゲートタイプIGBTであって、
前記ゲートトレンチと、前記エミッタトレンチとが、整列して配置されており、前記ゲートトレンチをG、前記エミッタトレンチをEと表記した場合に、GEGEGEG配列を有する、
トレンチゲートタイプIGBT。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載のトレンチゲートタイプIGBTであって、
前記コンタクトは、前記エミッタ電極から前記Pボディー層の中間部分まで伸びるコンタクトホール中を伸びる配線部と、前記配線部の先端側の前記Pボディー層内に設けられた不純物濃度の高いコンタクト領域を含む、
トレンチゲートタイプIGBT。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
一方、表面にエミッタ領域122のないPボディー層118は、ゲートトレンチ120Gに隣接していてもチャネルとして機能せず、さらにエミッタトレンチ120Eに隣接する領域もチャネルとして機能しない。この領域を第メサ領域と呼ぶ。従って、この非ゲートエリア(図1におけるIGBT 非GATE)は、IGBTのゲートとして機能しない。この非ゲートエリアにおいては、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eが容量結合する。このため、IGBTのゲート・エミッタ容量に置換することができ、ミラー容量を減少することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
<GE構造>
図6図10に、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eの配列に応じたホール引き抜きの特性について説明する。図6は、コンタクト132が接続されるメサセクションの断面の位置を説明する図である。ゲートトレンチ120Gとゲートトレンチ120Gの間のメサセクションをG-G、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eの間のメサセクションをG-E、エミッタトレンチ120Eとエミッタトレンチ120Eの間のメサセクションをE-Eと表す。図7は、ターンオフ時の時刻を説明する図であり、ターンオフ開始時T0、ホール引き抜き開始T1、ホール引き抜きT2ホール引き抜き終了T3の4つの観測点を示している。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
本開示に係るトレンチゲートタイプIGBTによれば、ターンオフに要する時間を短縮して、ターンオフ時のエネルギー消費が小さくすることができる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0035
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0035】
一方、表面にエミッタ領域122のないPボディー層118は、ゲートトレンチ120Gに隣接していてもチャネルとして機能せず、さらにエミッタトレンチ120Eに隣接する領域もチャネルとして機能しない。この領域を第メサ領域と呼ぶ。従って、この非ゲートエリア(図1におけるIGBT 非GATE)は、IGBTのゲートとして機能しない。この非ゲートエリアにおいては、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eが容量結合する。このため、IGBTのゲート・エミッタ容量に置換することができ、ミラー容量を減少することができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
さらに、本実施形態のIGBTでは、コンタクト132を有し、これによって、チャネルとして機能しないPボディー層118にも接続されている。IGBTをターンオフした際には、ドリフト層114内に残留するホールをエミッタ電極104に早期に引き抜くことができる。なお、コンタクト132は、チャネルとして機能するPボディー層118についても配置されており、ここにおいてもターンオフ時にホールを引き抜くことができる。また、非ゲートエリアにゲートトレンチ120Gを配置しているが、このゲートトレンチ120Gの周辺のPボディー層118からも同様にホールが引き抜かれる。
特に、ゲートトレンチ120Gと、エミッタトレンチ120Eとの間のメサセクションにおいては、コンタクト132を介するホールの引き抜きが効果的に行われる。G-G及びE-E構造の場合はメサセクション部の電位は横方向で見ると同じになるが、G-Eの場合は横方向に電位差が生じる。それによりホールを有効的に引き抜くことが可能となる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0047
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0047】
このような構成によっても、上述の実施形態と同様に、ターンオフ時にホールを素早く引き抜くことができる。特に、この実施形態では、チャネル部もゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eが対向するGE構造にすることによりホールの引き抜きをより早くすることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
<GE構造>
図6図10に、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eの配列に応じたホール引き抜きの特性について説明する。図6は、コンタクト132が接続されるメサセクションの断面の位置を説明する図である。ゲートトレンチ120Gとゲートトレンチ120Gの間のメサセクションをG-G、ゲートトレンチ120Gとエミッタトレンチ120Eの間のメサセクションをG-E、エミッタトレンチ120Eとエミッタトレンチ120Eの間のメサセクションをE-Eと表す。図7は、ターンオフ時の時刻を説明する図であり、ターンオフ開始時T0、ホール引き抜き開始T1、ホール引き抜きT2ホール引き抜き終了T3の4つの観測点を示している。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
<製造工程>
11は、実施形態に係るIGBTの製造工程を示す図である。まず、半導体基板100を用意し、製造工程に投入する(S11)。半導体基板100としては、例えばFZ(浮遊帯(Floating Zone))ウェハであって、Nタイプのものが利用される。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
表面側からのエッチングによってコンタクトホールを形成し、Pタイプ不純物の注入によって、コンタクト領域134を形成する(S19)。次に、メタルの堆積によって、コンタクトホール内にも伸びるエミッタ電極104を形成する(S20)。そして、表面側をパッシベーション膜で覆う(S21)。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
次に、裏面側を研磨し(S22)、裏面側からフィールドストップ層112、Pコレクタ層110を順に形成する(S23)。そして、メタルの堆積によって、コレクタ電極106を形成する(S24)。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
100 半導体基板、102 相関絶縁膜、104 エミッタ電極、106 コレクタ電極、110 Pコレクタ層、112 フィールドストップ層、114 Nドリフト層、116 キャリアストア層、118 Pボディー層、120 トレンチ、120E エミッタトレンチ、120G :ゲートトレンチ、122 エミッタ領域、132 コンタクト、134 コンタクト領域。