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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056271
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】レーザ加工装置用集塵装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/16 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
B23K26/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163037
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】310011114
【氏名又は名称】株式会社アフレアー
(74)【代理人】
【識別番号】100180976
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 一郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 明伸
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168BA00
4E168CB04
4E168DA23
4E168DA24
4E168DA26
4E168DA28
4E168EA15
4E168EA16
4E168EA24
4E168FC01
(57)【要約】
【課題】レーザ加工装置から出射されるレーザ光の光路を遮ることなく効果的に集塵することができるレーザ加工装置用集塵装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様は、レーザ加工装置から出射されるレーザ光の照射によって加工対象物から発生する粉塵等を集めるレーザ加工装置用集塵装置であって、加工対象物の上方を覆うように配置される本体と、本体の内側に配置され、上部開口部と下部開口部とを有し、上部開口部から下部開口部を通過して加工対象物に至るレーザ光の光路が中央部分に構成される円筒部と、本体に接続され、本体の内部と連通する流路を構成する流路部と、本体の内側に設けられ、所定の動力源から得た動力によって回転する羽根部と、を備え、羽根部の回転によって本体の内側に気流を発生させて上部開口部および下部開口部のうち少なくともいずれかから本体の内側に空気を引き込み流路部から排出させる集塵装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ加工装置から出射されるレーザ光の照射によって加工対象物から発生する煙や粉塵を集めるレーザ加工装置用集塵装置であって、
前記加工対象物の上方を覆うように配置される本体と、
前記本体の内側に設けられ、上部開口部と下部開口部とを有し、前記上部開口部から前記下部開口部を通過して前記加工対象物に至る前記レーザ光の光路が中央部分に構成される円筒部と、
前記本体に接続され、前記本体の内部と連通する流路を構成する流路部と、
前記本体の内側に設けられ、所定の動力源から得た動力によって回転する羽根部と、
を備え、
前記羽根部の回転によって前記本体の内側に気流を発生させ、前記気流によって前記上部開口部および前記下部開口部のうち少なくともいずれかから前記本体の内側に空気を引き込み前記流路部から排出させる、レーザ加工装置用集塵装置。
【請求項2】
前記本体と前記円筒部との間に構成される空間の上端側を閉じる蓋部をさらに備えた、請求項1記載のレーザ加工装置用集塵装置。
【請求項3】
前記羽根部は、前記本体と前記円筒部との間において前記円筒部の外周に沿って回転する複数枚の羽根を有する、請求項1または請求項2に記載のレーザ加工装置用集塵装置。
【請求項4】
動力用空気を噴射するノズルと、
前記羽根部に設けられ、前記ノズルから噴射される前記動力用空気を受けて前記羽根部を回転させる動力を受ける受圧片と、
をさらに備える請求項3記載のレーザ加工装置用集塵装置。
【請求項5】
レーザ加工装置から出射されるレーザ光の照射によって加工対象物から発生する煙や粉塵を集めるレーザ加工装置用集塵装置であって、
前記加工対象物の上方を覆うように配置される本体と、
前記本体の内側に配置され、上部開口部と下部開口部とを有し、前記上部開口部から前記下部開口部を通過して前記加工対象物に至る前記レーザ光の光路が中央部分に構成される円筒部と、
前記本体に隣接して設けられ、所定の動力源から得た動力によって回転する羽根部と、
を備え、
前記羽根部の回転によって前記本体の内側に気流を発生させ、前記気流によって前記上部開口部および前記下部開口部のうち少なくともいずれかから前記本体の内側に空気を引き込み前記羽根部から排出させる、レーザ加工装置用集塵装置。
【請求項6】
前記本体と前記円筒部との間に構成される空間の上端側を閉じる蓋部をさらに備えた、請求項5記載のレーザ加工装置用集塵装置。
【請求項7】
前記羽根部は、
前記本体の側面に設けられたポートと接続される筐体と、
前記筐体の内部に設けられた複数枚の羽根と、を有する、請求項5または請求項6に記載のレーザ加工装置用集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置から出射されるレーザ光の照射によって加工対象物から発生する煙や粉塵を集め、加工装置内から外部へ排出するレーザ加工装置用集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工装置は、加工の対象物に対してレーザ光を照射して切断、溶接、穴あけ、スクライブ、表面改質加工を行う装置である。レーザ加工装置では、レーザ光のエネルギーによって加工対象物が燃焼、溶融、気化する際に煙や粉塵が発生するとともに、スパッタやヒュームなどの飛散物も生じる。
【0003】
特許文献1では、加工機の外周囲に設けたエアー噴出手段より噴出するエアーによって加工機を取り囲むようにエアーによる壁を作り、かつ加工機の上部に設けた集塵部のファンを回転させて、ワークの加工時に発生する粉塵を上方に舞い上がらせて集塵するワーク加工装置の集塵方法が開示される。
【0004】
特許文献2では、加工ヘッドの直下となるワークテーブルの下部に、熱切断加工時に発生するスパッタ等を処理するため、渦巻状液体噴流を噴出せしめる複数のノズルを備えた集塵パイプを設けるとともに、廃液を処理する集塵処理装置を備えた熱切断加工機の集塵処理装置が開示される。
【0005】
特許文献3では、レーザ加工を行うに際し、アシストガスの噴出方向に対し交差する方向であって、加工部近傍にエアーを供給し、このエアーで加工時に発生する塵埃を集塵部へと集塵させるレーザ加工装置における集塵方法が開示される。
【0006】
特許文献4では、加工対象物の加工位置を覆うべく加工対象物の表面と隙間を設けて配置される筐体の、上面にレーザビームの透過孔と加工位置に向けて加工ガスを供給する加工ガス供給ノズルを設けるとともに、この加工ガス供給ノズルの設置側の側面を開口し、この開口した側面と対向する側面に加工時に発生するヒュームおよび粉塵を吸引する吸引ノズルを設け、筐体内の加工位置より吸引ノズル側に、上面から見て加工ガス供給ノズルによる加工ガス供給方向と直交する方向の両側面間に亘る長さの整流板を設けたレーザ加工機用集塵装置が開示される。
【0007】
特許文献5では、レーザ発振器と、レーザ発振器から出力されたレーザ光をワーク上の走査領域に照射するガルバノスキャナと、ガルバノスキャナとワークとの間に形成される加工領域空間を覆うブースダクトであって、加工領域空間を開閉させてワークの加工領域空間への出入を可能とする可動領域を備えているブースダクトと、ワークに向けて不活性ガスを吹き付けるアシストガスノズルと、加工領域空間内の気体を排気口に向けて強制的に流動させるエアーブローノズルとを有するレーザ加工用集塵装置が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-288782号公報
【特許文献2】特開平05-337676号公報
【特許文献3】特開平11-314190号公報
【特許文献4】実用新案登録第3143457号公報
【特許文献5】特開2015-182116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
レーザ加工装置において、レーザ光を対象物に照射して加工を行う際に煙や粉塵が舞い上がり、レーザ光の光路上に漂うと、レーザ光の散乱など悪影響を及ぼす。また、発生した煙や粉塵の一部が加工対象物表面に付着すると汚染の原因となる。このため、レーザ加工の際に発生した煙、粉塵はレーザ走査エリアの外側から局所的に吸引したり、吹き飛ばしたりするが、加工対象物表面に付着させることなく加工領域全域に於いて均一に除去することが望まれる。
【0010】
本発明は、レーザ加工装置から出射されるレーザ光の走査領域内の煙や粉塵を加工対象物に付着させることなく均一に除去するとともに、装置の小型化を図ることができるレーザ加工装置用集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、レーザ加工装置から出射されるレーザ光の照射によって加工対象物から発生する煙や粉塵を集めるレーザ加工装置用集塵装置であって、加工対象物の上方を覆うように配置される本体と、本体の内側に設けられ、上部開口部と下部開口部とを有し、上部開口部から下部開口部を通過して加工対象物に至るレーザ光の光路が中央部分に構成される円筒部と、本体に接続され、本体の内部と連通する流路を構成する流路部と、本体の内側に設けられ、所定の動力源から得た動力によって回転する羽根部と、を備え、羽根部の回転によって本体の内側に気流を発生させ、この気流によって上部開口部および下部開口部のうち少なくともいずれかから本体の内側に空気を引き込み流路部から排出させる集塵装置である。
【0012】
このような構成によれば、羽根部の回転によって本体の内部に陰圧の環境を作り出すことにより外部から流入する気流が発生し、この気流によって加工対象物から発生する煙や粉塵が本体の内側に引き込まれる。本体の内側に引き込まれた煙や粉塵は、この気流とともに回転しながら流路部に送出され、流路部から本体の外側へ排出される。この際、円筒部の中央部分に構成されるレーザ光の光路内で発生する煙や粉塵は、リング状の上部羽根部に向けて流れる気流に運ばれ本体外部に排出されるため、上部から照射されるレーザ光との接触は最小限に抑えられる。羽根部が本体の内部に設けられているため、外部のファンを接続する必要がなくなり、吸引ダクトの引き回しによる圧力損失を低減できる。
【0013】
上記レーザ加工装置用集塵装置において、本体と円筒部との間に構成される空間の上端側を閉じる蓋部をさらに備えていることが好ましい。これにより、本体の内側に引き込まれた空気に含まれる煙や粉塵を下端側から本体と円筒部との空間に吸い込み、効果的に流路部へ導いて排出することができる。
【0014】
上記レーザ加工装置用集塵装置において、羽根部は、本体と円筒部との間において円筒部の外周に沿って回転する複数枚の羽根を有していてもよい。これにより、複数枚の羽根の回転によって本体内部を陰圧にして外部から本体内部に空気を流入させることにより効率良く気流を発生させ、煙や粉塵を発生部より引き込むことができる。
【0015】
上記レーザ加工装置用集塵装置において、動力用空気を噴射するノズルと、羽根部に設けられ、ノズルから噴射される動力用空気を受けて羽根部を回転させる動力を受ける受圧片と、をさらに備えていてもよい。これにより、ノズルから噴射する動力用空気の圧力を受圧片で受けて、電源を使用することなく羽根部を回転させることができる。
【0016】

本発明の他の一態様は、レーザ加工装置から出射されるレーザ光の照射によって加工対象物から発生する煙や粉塵を集めるレーザ加工装置用集塵装置であって、加工対象物の上方を覆うように配置される本体と、本体の内側に配置され、上部開口部と下部開口部とを有し、上部開口部から下部開口部を通過して加工対象物に至るレーザ光の光路が中央部分に構成される円筒部と、本体に隣接して設けられ、所定の動力源から得た動力によって回転する羽根部と、を備え、羽根部の回転によって本体の内側に気流を発生させ、この気流によって上部開口部および下部開口部のうち少なくともいずれかから本体の内側に空気を引き込み羽根部から排出させる集塵装置である。
【0017】
このような構成によれば、羽根部の回転によって本体の内部に陰圧の環境を作り出すことにより外部から流入する気流が発生し、気流によってレーザ加工対象物から発生する煙や粉塵が本体の内側に引き込まれる。本体の内側に引き込まれた煙や粉塵は、本体内で発生する気流とともに羽根部から本体の外側へ排出される。この際、円筒部の中央部分に構成されるレーザ光の光路内で発生する煙や粉塵は、ドーナッツ状の上部吸引部に向けて流れる気流に運ばれ回収されるため円筒部中心から速やかに除去され、上部から照射されるレーザ光との接触は最小限に抑えられる。羽根部が本体内部に設けられるため、本体から離れた位置に外部のファンを接続する必要がなくなり、取り回しが困難で圧力損失の原因となる吸引ダクトが不要となる。
【0018】
上記レーザ加工装置用集塵装置において、本体と円筒部との間に構成される空間の上端側を閉じる蓋部をさらに備えていることが好ましい。これにより、本体下部の隙間から内側に引き込まれた上昇気流により加工で発生した煙や粉塵は素材から上部に引離され下端側から本体と円筒部との空間に吸い込まれ、効果的に羽根部へ導いて排出することができる。
【0019】
上記レーザ加工装置用集塵装置において、羽根部は、本体の側面に設けられたポートと接続される筐体と、筐体の内部に設けられた複数枚の羽根と、を有していてもよい。これにより、複数枚の羽根の回転によって本体内部が陰圧となり、下部の開口から気流が流入し、煙や粉塵を持ち上げる様に筐体内に引き込み、ポートを介して外側へ排出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、レーザ加工装置から出射されるレーザ光の光路上の煙や粉塵を効果的に除去するとともに、装置の小型化を図ることができるレーザ加工装置用集塵装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る集塵装置を適用するレーザ加工装置の構成を例示する模式図である。
図2】第1実施形態に係る集塵装置を説明する模式平面図である。
図3】第1実施形態に係る集塵装置を説明する模式斜視図である。
図4】空気圧による羽根部の回転について説明する模式断面図である。
図5】空気圧による羽根部の回転について説明する分解斜視図である。
図6】第2実施形態に係る集塵装置の構成を例示する模式断面図である。
図7】第2実施形態に係る集塵装置の構成を例示する模式斜視図である。
図8】第2実施形態に係る集塵装置の構成を例示する模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、同一の部材には同一の符号を付し、一度説明した部材については適宜その説明を省略する。
【0023】
(レーザ加工装置)
図1は、本実施形態に係る集塵装置を適用するレーザ加工装置の構成を例示する模式図である。
レーザ加工装置100は、対象物Wにレーザ光Lを照射して溶接や切断などの加工を施す装置である。レーザ加工装置100は、レーザ光源110と、駆動部120と、光学機器130と、ステージ140と、を備える。レーザ加工装置用集塵装置(以下、単に「集塵装置」と言う。)は、ステージ140の上に載置された対象物Wの上に配置される。本実施形態に係る集塵装置1Aの構成については後述する。
【0024】
レーザ光源110は、レーザ光Lを発生させる部分であり、例えばCOレーザ、YAGレーザ、半導体レーザ、ファイバレーザの発振器を有する。駆動部120は、レーザ光源110で発生したレーザ光Lの光路を制御する部分である。駆動部120は、例えばガルバノミラーまたはポリゴンミラーを有し、レーザ光Lを対象物Wの所定位置に走査する。
【0025】
光学機器130は、レーザ光Lを対象物Wに向けて集束させるレンズ131およびレンズ131のカバーとなるウィンドウ132を有する。COレーザを用いる場合、レンズ131には例えばZnSeレンズが用いられる。ウィンドウ132には、例えば円盤状の石英ガラスやZnSe結晶が用いられ、表面に無反射コーティングが施される。光学機器130にはウィンドウ132が設けられていない場合もあるが、レンズ131の保護のために設けられていることが望ましい。また、ウィンドウ132はレンズ131の直下に設けられていてもよいし、集塵装置1Aの上に取り付けられていてもよい。
【0026】
ステージ140は対象物Wを配置する部分である。ステージ140は対象物Wの位置を移動可能な駆動機構を備えていてもよい。また、加工の対象物Wが大きい場合、ステージ140を固定し駆動部120を自走させながら広範囲で加工を行うようにしてもよい。この際、集塵装置1Aを駆動部120と連動させることにより、加工領域の全域において集塵装置1Aによって効果的な集塵を行うことができる。
【0027】
(第1実施形態に係る集塵装置)
次に、第1実施形態に係る集塵装置1Aの構成を、図1図2および図3に基づき説明する。
図2は、第1実施形態に係る集塵装置を説明する模式平面図である。
図3は、第1実施形態に係る集塵装置を説明する模式斜視図である。
説明の便宜上、図2では本体10の上に設けられる部材が省略されている。また、図3では、一部を分解および透視した斜視図が示される。
【0028】
本実施形態に係る集塵装置1Aは、レーザ加工装置100から出射されるレーザ光Lの照射によって対象物Wから発生する煙や粉塵(以下、粉塵等ともいう。)を集めて排出する装置である。集塵装置1Aは、対象物Wの上方を覆うように配置される本体10と、本体10の内側に設けられる円筒部20と、本体10に接続される流路部30と、本体10の内側に設けられる羽根部40と、を備える。
【0029】
本体10は、レーザ加工装置100と対象物Wとの間において、対象物Wの上を覆うように配置される。本体10は、対象物Wが載置されるステージ140との間に隙間を設けるように配置される。
【0030】
円筒部20は、本体10の内側における中央部分に設けられる。円筒部20は、上部開口部21と、下部開口部22とを有する。円筒部20の上部開口部21と下部開口部との間(筒の中央部分)は、上部開口部21から下部開口部22を通過して対象物Wに至るレーザ光Lの光路が構成される。すなわち、レーザ光Lの光路上においてレーザ加工装置100と対象物Wとの間に円筒部20が配置される。
【0031】
流路部30は、本体10の側面に設けられたポート10aに接続される。流路部30は本体10の内部と連通する流路30aを構成する。流路部30は、本体10の側面から外方に延出しており、先端に排気口31が設けられる。
【0032】
羽根部40は、本体10の内側に設けられ、所定の動力源から得た動力によって回転するように設けられる。動力源としては、電気モータや空気圧装置が挙げられる。例えば、動力原を電気モータとした場合、図示しない電気モータの回転力を駆動ベルトなどの駆動手段によって羽根部40に伝達して羽根部40を回転させてもよいし、羽根部40をロータ、本体10または円筒部20をステータとした電気モータを構成し、ダイレクトドライブ方式で羽根部40を回転させてもよい。
【0033】
本体10と円筒部20との間に羽根部40が設けられる。本実施形態に係る集塵装置1Aでは、羽根部40は、円筒部20の外周に沿って回転する複数枚の羽根41を有する。すなわち、複数枚の羽根41を有する羽根部40の回転軸は、円筒部20の中心軸と一致しており、これにより、複数枚の羽根41が本体10の内側において円筒部20の外側を回転するように設けられる。
【0034】
本体10と円筒部20との間に構成される空間S2(羽根部40が配置される空間S2)の上端側には蓋部15が設けられる。例えば、蓋部15は円筒部20の上端側に接続されており、蓋部15を本体10の上に被せることで円筒部20が本体10の中央部分にセットされるようになっている。蓋部15は円筒部20の上部開口部21よりも外側に設けられるため、上部開口部21と下部開口部22との間のレーザ光Lの光路を遮ることはない。
【0035】
円筒部20の高さ(上下方向の長さ)は本体10の高さ(上下方向の長さ)よりも短くなっている。円筒部20の上端は本体10の上端と揃っているため、円筒部20の下端は本体10の下端よりも高い位置となる。また、本体10の下端は羽根部40の下端よりも低い位置となっている。したがって、本体10の内部においては、本体10の中央部分に設けられた円筒部20の内側に円筒状の空間S1が設けられ、円筒部20の外側と本体10の内側との間に羽根部40が回転する空間S2が設けられ、本体10の内側であって円筒部20および羽根部40の下方(本体10の下端側)に空間S2よりも径の大きな円筒状の空間S3が設けられる。
【0036】
(集塵装置の動作)
レーザ加工装置100によって対象物Wに対するレーザ加工を行うと、対象物Wから粉塵等が発生する。レーザ加工を行う際、本実施形態に係る集塵装置1Aをレーザ加工装置100から出射されるレーザ光Lの光路上において対象物Wの上に被せるように配置し、所定の動力原から得た動力によって羽根部40を回転させる。
【0037】
羽根部40の回転によって本体10の内部が陰圧となり、下部12から内部に流入する空気によって本体10の内部に上昇気流が発生する。本体10の内部には円筒部20の内側に設けられる円筒状の空間S1および本体10の下端側に設けられる円筒状の空間S3があることから、下部12から流入した気流はこれらの空間S1および空間S3を通過し排気口31より排出される。
【0038】
本体10の内部で発生する上昇気流によって対象物Wから発生する粉塵等が本体10の内側に引き込まれる。例えば、対象物Wから発生した粉塵等は本体10の下側から本体10の内側に引き込まれる。また、レーザ加工装置100と集塵装置1Aとの間の隙間からわずかに発生する下降気流は円筒部20で発生する煙等が上部光学機器に到達することを防ぐ役目を果たす。
【0039】
本体10の内側に引き込まれた粉塵等は、上昇気流とともに回転する羽根部40の空間S2に引き込まれ、本体10のポート10aから流路30aに送出され、さらに流路部30の排気口31から本体10の外側へ排出される。この際、円筒部20の中央部分に構成されるレーザ光Lの光路(走査領域)は、下部12から羽根部60に流れる上昇気流と上部開口部21からわずかに流入する下降気流によりクリーンな環境に保たれ、本体中心部分で発生した粉塵は速やかに除去される。したがってレーザ光路部分には粉塵が滞留せず、加工に及ぼす影響を最小限にすることが出来る。
【0040】
このような集塵動作において、本体10と円筒部20との間に構成される空間S2の上端側を閉じる蓋部15が設けられていることで、空間S2に空気を導く経路を円筒部20の下部開口部22側からに制限することができる。すなわち、蓋部15が設けられていることで、本体10の外側の空気は空間S2に直接導かれることはなく、一旦本体10の内側に引き込まれた後、円筒部20の下端と本体10との隙間から空間S2に引き込まれる。空間S2への空気の吸い込み口が制限されることで、本体10の内側に引き込まれた空気は外部からの気流によって効果的に空間S2に吸い込まれていくことになる。空間S2に吸い込まれた空気は、羽根部40の回転とともに空間S2を旋回しながら本体10のポート10aから流路部30へ効率良く排出される。
【0041】
また、羽根部40における各羽根41の下端には補助羽根42が設けられていてもよい。補助羽根42は、羽根41の下端から下方に延出するように設けられ、下方に向けて先端が回転方向に向く傾斜が付けられている。これにより、羽根部40の各羽根41が回転することで、補助羽根42に当たった空気が上方の羽根41側に向けて導かれ、羽根部40の下方の空気を羽根部40が設けられた空間S2に効果的に導くことができる。
【0042】
(空気圧による回転構造)
図4は、空気圧による羽根部の回転について説明する模式断面図である。
図5は、空気圧による羽根部の回転について説明する分解斜視図である。
図4および図5に示すように、本実施形態に係る集塵装置1Aは、羽根部40を空気圧で回転させるための構成として、動力用空気を噴射するノズル51と、動力用空気を受ける受圧片52と、を備えていてもよい。
【0043】
ノズル51は、本体10の外側から内側に向けて動力用空気Aを噴射する。ノズル51は例えば本体10の側面の下側において外側から内側に向けて本体10の側面を貫通するように設けられる。受圧片52は、例えば羽根部40の下端から下方に延出するように設けられる。受圧片52は輪状のベースプレート53の下面に所定のピッチで複数個設けられる。ベースプレート53の上面は羽根部40と連結している。これにより、ノズル51から噴射する動力用空気Aを複数の受圧片52で受けてベースプレート53とともに羽根部40を回転させることができる。
【0044】
ノズル51から噴射する動力用空気Aの噴射方向は、羽根部40の回転軌道の接線方向で羽根部40の回転方向に合わせた向きとなっている。これにより、ノズル51から噴射された動力用空気Aは羽根部40の回転の動力源として利用された後、本体10の外側に排出することが可能である一方、羽根部40の回転によって発生する回転気流に合流して、回転気流を効果的に補助する役目を果たすことも可能となる。
【0045】
このように、第1実施形態に係る集塵装置1Aによれば、本体10の内部に組み込まれた羽根部40の回転によって効果的に回転気流を発生させて集塵することができる。また、本体10の内部に羽根部40が配置されるため、例えば本体10から離れた位置にダクト等を介して吸引ファンを接続する場合に比べて空気の吸引(排出)における圧力損失を低減させることができる。これにより、集塵装置1A以外に別な吸引装置を本体10に接続する必要がなく、コンパクトでありながら効率良く集塵を行う集塵装置1Aを実現できる。
【0046】
(第2実施形態に係る集塵装置)
図6は、第2実施形態に係る集塵装置の構成を例示する模式断面図である。
図7は、第2実施形態に係る集塵装置の構成を例示する模式斜視図である。
図8は、第2実施形態に係る集塵装置の構成を例示する模式平面図である。
説明の便宜上、図7および図8では本体10の上に設けられる部材が省略されている。
本実施形態に係る集塵装置1Bは、第1実施形態に係る集塵装置1Aと同様、レーザ加工装置100から出射されるレーザ光Lの照射によって対象物Wから発生する粉塵等を集めて排出する装置である。集塵装置1Bは、対象物Wの上方を覆うように配置される本体10と、本体10の内側に設けられる円筒部20と、本体10に隣接して設けられる羽根部60と、を備える。
【0047】
集塵装置1Bでは、羽根部60が本体10の内側ではなく、本体10に隣接して設けられている。羽根部60は、所定の動力源(電気モータや空気圧装置など)から得た動力によって回転する。羽根部60は、本体10の側面に設けられたポート10aと接続される筐体61と、筐体61の内部に設けられた複数枚の羽根(図示せず)と、を有する。羽根部60は、例えばシロッコファンである。筐体61には排気口62が設けられる。本体10と筐体61との間にはフィルタ70を設けておくが好ましい。
【0048】
本体10と円筒部20との間に構成される空間S2の上端側には蓋部15が設けられる。例えば、蓋部15は円筒部20の上端側に接続されており、蓋部15を本体10の上に被せることで円筒部20が本体10の中央部分にセットされるようになっている。蓋部15は円筒部20の上部開口部21よりも外側に設けられるため、上部開口部21と下部開口部22との間のレーザ光Lの光路を遮ることはない。
【0049】
円筒部20の高さ(上下方向の長さ)は本体10の高さ(上下方向の長さ)よりも短くなっている。円筒部20の上端は本体10の上端と揃っているため、円筒部20の下端は本体10の下端よりも高い位置となる。したがって、本体10の内部においては、本体10の中央部分に設けられた円筒部20の内側に円筒状の空間S1が設けられ、円筒部20の外側と本体10の内側との間に空間S2が設けられ、本体10の内側であって円筒部20の下方(本体10の下端側)に空間S2よりも径の大きな円筒状の空間S3が設けられる。
【0050】
(集塵装置の動作)
レーザ加工装置100によって対象物Wに対するレーザ加工を行うと、対象物Wから粉塵等が発生する。レーザ加工を行う際、本実施形態に係る集塵装置1Bをレーザ加工装置100から出射されるレーザ光Lの光路上において対象物Wの上に被せるように配置し、所定の動力原から得た動力によって羽根部60を回転させる。
【0051】
羽根部60の回転によって本体10の内部の空気がポート10aから羽根部60に引き込まれ、これによって本体10の内部の空間S2は陰圧となり空間S3においては上昇、空間S1においては下降する回転気流が発生する。本体10の内部には円筒部20の内側に設けられる円筒状の空間S1および本体10の下端側に設けられる円筒状の空間S3があることから、空間S2が陰圧になることで方向の異なる2つの回転気流に倣ってこれらの空間S1および空間S3のそれぞれにおいて風量と方向の異なる回転気流が同時に発生する。
【0052】
本体10の内部で発生した上昇する回転気流によって対象物Wから発生する粉塵等が本体10の内側に引き込まれる。例えば、対象物Wから発生した粉塵等は本体10の下側から本体10の内側に引き込まれる。また、レーザ加工装置100と集塵装置1Aとの間に隙間がある場合には、下降する回転気流により本体10の上側から円筒部20に引き込まれる。
【0053】
本体10の内側に引き込まれた粉塵等は、回転する気流とともにポート10aからフィルタ70を介して羽根部60の筐体61内に引き込まれ、筐体61の排気口62から外側へ排出される。この際、円筒部20の中央部分に構成されるレーザ光Lの光路は、本体10の下部12から上昇する気流と上部開口部21からわずかに流入する下降気流によりクリーンな環境に保たれ、本体中心部分で発生した粉塵は速やかに除去される。したがって、レーザ光路部分には粉塵が滞留せず、加工に及ぼす影響を最小限にすることができる。
【0054】
このように、第2実施形態に係る集塵装置1Bによれば、本体10に隣接して設けられた羽根部60の回転によって効果的に回転気流を発生させて集塵することができる。また、本体10に隣接して羽根部60が設けられているため、例えば本体10から離れた位置にダクト等を介して吸引ファンを接続する場合に比べて空気の吸引(排出)における圧力損失を低減させることができる。これにより、集塵装置1B以外に別な吸引装置を設ける必要がなく、コンパクトでありながら効率良く集塵を行う集塵装置1Bを実現できる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る集塵装置1A、1Bによれば、レーザ加工装置100から出射されるレーザ光Lの光路上の粉塵等を効果的に除去するとともに、装置の小型化を図ることが可能となる。
【0056】
なお、上記に本実施形態およびその具体例を説明したが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例えば、前述の各実施形態またはその具体例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、各実施形態の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本実施形態に係る集塵装置1A、1Bはガルバノスキャナやポリゴンスキャナを使用したレーザ加工装置100以外にも、固定光学加工ヘッドを使用したレーザ加工装置100に適用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1A,1B…集塵装置(レーザ加工装置用集塵装置)
10…本体
10a…ポート
12…下部
15…蓋部
20…円筒部
21…上部開口部
22…下部開口部
30…流路部
30a…流路
31…排気口
40…羽根部
41…羽根
42…補助羽根
51…ノズル
52…受圧片
53…ベースプレート
60…羽根部
61…筐体
62…排気口
70…フィルタ
100…レーザ加工装置
110…レーザ光源
120…駆動部
130…光学機器
131…レンズ
132…ウィンドウ
140…ステージ
A…動力用空気
L…レーザ光
S1…空間
S2…空間
S3…空間
W…対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8