(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056272
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】燃料噴射弁
(51)【国際特許分類】
F02M 47/00 20060101AFI20240416BHJP
F02M 51/06 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F02M47/00 C
F02M51/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163038
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】奥原 伸二
(72)【発明者】
【氏名】小高 純一
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA07
3G066BA43
3G066BA49
3G066CC01
3G066CC08U
3G066CC14
3G066CC68U
3G066CC70
3G066CD30
3G066CE22
(57)【要約】
【課題】 燃料噴射弁の電磁弁において、摺動部の抵抗が増加した場合であっても、燃料噴射量が目標値からずれることを防ぐ。
【解決手段】 燃料噴射孔3を開閉するノズルニードル6と、燃料が流入する制御室10と、開閉弁20の開弁時に連通路13を介して制御室10と連通する排出室30と、を備え、制御室10内の燃料の圧力をノズルニードル6の駆動に利用する燃料噴射弁90であって、開閉弁20は、弁ニードル孔26が形成されている弁ニードル25と、弁ニードル孔26内に摺動自在に保持される圧力ピン61と、弁ニードル25と接触することによって、連通路13を閉塞する開閉弁シート部21aとを有し、電磁石43への通電時に弁ニードル25と開閉弁シート部21aとの間に形成される流路13bの断面積は、内燃機関の停止時に貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部と圧力ピン61との間に形成される開口部の面積よりも小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃焼室へ燃料を噴射する燃料噴射孔(3)が一端に形成された本体部(1)と、
前記本体部(1)の内部に往復動自在に設けられ、前記燃料噴射孔(3)を開閉するノズルニードル(6)と、
前記ノズルニードル(6)における前記燃料噴射孔(3)側とは反対側の端面である第1端面(6aa)と対向するように前記本体部(1)の内部に形成され、前記燃料が流入する制御室(10)と、
前記本体部の内部に形成され、連通路(13)を介して前記制御室(10)と連通し、前記制御室(10)に流入した前記燃料が前記連通路(13)を介して流入する排出室(30)と、
前記連通路(13)を開閉する開閉弁(20)と、
を備え、
前記制御室(10)内の前記燃料の圧力を前記ノズルニードル(6)の前記第1端面(6aa)に作用させ、当該圧力を前記ノズルニードル(6)の駆動に利用する燃料噴射弁(90)であって、
前記開閉弁(20)は、
前記本体部(1)の内部に往復動自在に設けられ、当該往復動の方向に貫通する弁ニードル孔(26)が形成されている弁ニードル(25)と、
前記弁ニードル孔(26)内に摺動自在に保持される圧力ピン(61)と、
前記本体部(1)の内部に固定され、前記弁ニードル(25)と接触することによって、前記連通路(13)を閉塞する開閉弁シート部(21a)と、
を有し、
前記弁ニードル(25)は、電磁石(43)への通電時に前記開閉弁シート部(21a)から離座することにより前記連通路(13)を解放し、
前記連通路(13)は、前記制御室(10)から前記開閉弁シート部(21a)までを貫通する貫通孔(13a)と、前記電磁石(43)への通電時に前記弁ニードル(25)と前記開閉弁シート部(21a)との間に形成される流路(13b)とを有し、
前記圧力ピン(61)は、前記内燃機関の停止時に前記貫通孔(13a)の前記開閉弁シート部(21a)側端部との間に開口部を形成し、
前記電磁石(43)への通電時に前記弁ニードル(25)と前記開閉弁シート部(21a)との間に形成される流路(13b)の断面積は、前記内燃機関の停止時に前記貫通孔(13a)の前記開閉弁シート部(21a)側端部と圧力ピン(61)との間に形成される前記開口部の面積よりも小さい、
燃料噴射弁(90)。
【請求項2】
前記貫通孔(13a)は、オリフィス(13c)を備え、前記オリフィス(13c)の流路断面積は、前記電磁石(43)への通電時に前記弁ニードル(25)と前記開閉弁シート部(21a)との間に形成される流路(13b)の断面積よりも小さい、請求項1に記載の燃料噴射弁(90)。
【請求項3】
前記内燃機関の停止時に前記貫通孔(13a)の前記開閉弁シート部(21a)側端部と前記圧力ピン(61)との間に形成される前記開口部は、前記弁ニードル孔(26)における、前記圧力ピン(61)が摺動する領域よりも内径が小さく形成された小径部(26a)に前記圧力ピン(61)が着座することにより形成される、請求項1に記載の燃料噴射弁(90)。
【請求項4】
前記内燃機関の停止時に前記貫通孔(13a)の前記開閉弁シート部(21a)側端部と前記圧力ピン(61)との間に形成される前記開口部は、前記圧力ピン(61)の、前記貫通孔(13a)の前記開閉弁シート部(21a)側端部に着座する面に形成された溝(61d)により形成される、請求項1に記載の燃料噴射弁(90)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射弁は、燃料を噴射する燃料噴射孔が一端に形成された本体部と、本体部の内部に往復動自在に設けられ、燃料噴射孔を開閉するノズルニードルと、を備えている。また、従来の燃料噴射弁には、ノズルニードルにおける燃料噴射孔側とは反対側の端面に燃料の圧力を作用させ、当該圧力をノズルニードルの駆動に利用する弁構造の燃料噴射弁も提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
詳しくは、このような弁構造の燃料噴射弁は、ノズルニードルの、燃料噴射孔側とは反対側の端面と対向するように本体部の内部に形成され、燃料が流入する制御室と、本体部の内部に形成され、連通路を介して制御室と連通し、制御室に流入した燃料が連通路を介して流入する排出室と、本体部の内部に配置された、連通路を開閉する電磁弁と、を備えている。電磁弁は、弁体と、通電時に弁体を引き付ける電磁石と、電磁石から遠ざかる方向へ弁体を押圧するバネと、を備えている。
【0004】
電磁弁への通電がなされない時、弁体はシート部へ着座し、制御室と排出室との連通を遮断する。電磁弁への通電がなされると、弁体は電磁石側へ引付けられることによりシート部から離座し、これにより制御室と排出室とが連通する。制御室と排出室とが連通すると、制御室内の燃料が排出室へ流出し、制御室内の燃料の圧力が低下する。これにより、制御室内の燃料によってノズルニードルを燃料噴射孔側へ押圧する力が減少するため、ノズルニードルが制御室側(燃料噴射孔とは反対側)へ移動して燃料噴射孔が開かれ、燃料噴射孔から燃焼室に燃料が噴射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
弁体には、弁体が往復動する方向に貫通する貫通孔が形成されている。貫通孔内には、圧力ピンが摺動自在に保持されている。内燃機関の運転時において、圧力ピンの連通路側の端部は、高い燃料圧力の空間内に位置しており、圧力ピンの連通路側の端部には高い燃料圧力がかかっている。一方、圧力ピンの連通路側と反対側の端部は、低い燃料圧力の空間に位置している。
【0007】
よって、内燃機関の運転時においては、圧力ピンは、連通路の燃料圧力により上昇し、圧力ピンの上部のストッパに当接する。一方、内燃機関の停止時においては、圧力ピンは、連通路を塞ぐ位置まで下降する。
【0008】
上述の弁体構造を持つ燃料噴射弁においては、経時劣化等に起因して弁体の貫通孔と圧力ピンとの間の摺動抵抗が増加し、次回の内燃機関の運転時に、圧力ピンの上昇が不十分となる、あるいは、圧力ピンが弁体に対して相対移動できない、いわゆるスティック状態となることがある。圧力ピンの上昇が不十分な状態になると、電磁弁への通電時に、圧力ピンの連通路側端部とシート部との間の燃料の流量が、弁体とシート部との間の通常時の燃料の流量を下回る恐れがある。この様な状態になると、制御室の燃料圧力の低下速度が遅くなることにより、燃料噴射の開始が遅れ、結果として燃料噴射量が目標値に対し低下する。
【0009】
弁体の貫通孔と圧力ピンとの間の摺動抵抗の増加については、いくつかの要因を挙げることができる。例えば、長期間の使用により、弁体の貫通孔と圧力ピンが摩耗し、摺動部の間隙が微小ながらも大きくなることがある。摺動部の間隙が大きくなると、圧力ピンの傾きが新品時に比べて変化し、摺動抵抗が増加することがある。
【0010】
また、長期間にわたり内燃機関が運転されないなどの理由により燃料が劣化し、その後、当該内燃機関が高負荷・高回転で運転されると、劣化した燃料が高温となり、燃料中にデポジットが生成されることがある。この様な状態で内燃機関が停止され、弁体の貫通孔と圧力ピンとの間の摺動部にデポジットが存在すると、次回の内燃機関の運転時に、弁体の貫通孔と圧力ピンとの間の摺動抵抗が増加することがある。
【0011】
また、経時劣化ではないものの、燃料中の微粒子、あるいは、異物等が弁体の貫通孔と圧力ピンとの間の摺動部に入り、摺動抵抗が増加することがある。
【0012】
本発明は、上記の様な課題を背景としてなされたものであり、弁体と圧力ピンとの間の摺動抵抗の増加により圧力ピンの上昇が不十分となった場合であっても、噴射量の目標値に対するずれが生じることのない燃料噴射弁を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、内燃機関の燃焼室へ燃料を噴射する燃料噴射孔が一端に形成された本体部と、前記本体部の内部に往復動自在に設けられ、前記燃料噴射孔を開閉するノズルニードルと、前記ノズルニードルにおける前記燃料噴射孔側とは反対側の端面である第1端面と対向するように前記本体部の内部に形成され、前記燃料が流入する制御室と、前記本体部の内部に形成され、連通路を介して前記制御室と連通し、前記制御室に流入した前記燃料が前記連通路を介して流入する排出室と、前記連通路を開閉する開閉弁と、を備え、前記制御室内の前記燃料の圧力を前記ノズルニードルの前記第1端面に作用させ、当該圧力を前記ノズルニードルの駆動に利用する燃料噴射弁であって、前記開閉弁は、前記本体部の内部に往復動自在に設けられ、当該往復動の方向に貫通する弁ニードル孔が形成されている弁ニードルと、前記弁ニードル孔内に摺動自在に保持される圧力ピンと、前記本体部の内部に固定され、前記弁ニードルと接触することによって、前記連通路を閉塞する開閉弁シート部と、を有し、前記弁ニードルは、電磁石への通電時に前記開閉弁シート部から離座することにより前記連通路を解放し、前記連通路は、前記制御室から前記開閉弁シート部までを貫通する貫通孔と、前記電磁石への通電時に前記弁ニードルと前記開閉弁シート部との間に形成される流路とを有し、前記圧力ピンは、前記内燃機関の停止時に前記貫通孔の前記開閉弁シート部側端部との間に開口部を形成し、前記電磁石への通電時に前記弁ニードルと前記開閉弁シート部との間に形成される流路の断面積は、前記内燃機関の停止時に前記貫通孔の前記開閉弁シート部側端部と圧力ピンとの間に形成される前記開口部の面積よりも小さい、燃料噴射弁が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の燃料噴射弁によれば、燃料噴射弁の電磁弁において、弁体と圧力ピンとの間の摺動抵抗が増加した場合であっても、燃料噴射量が目標値からずれることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る燃料噴射弁を模式的に示す断面図である。
【
図2】従来の燃料噴射弁における開閉弁であり、図示されない内燃機関の運転中であって、電磁石に通電がなされた状態を示す図である。
【
図3】従来の燃料噴射弁における開閉弁であり、図示されない内燃機関の運転中であって電磁石への通電が終了した状態を示す図である。
【
図4】従来の燃料噴射弁における開閉弁であり、図示されない内燃機関の運転が停止された状態を示す図である。
【
図5】従来の燃料噴射弁における開閉弁であり、弁ニードルの弁ニードル孔と圧力ピンとがスティックした状態を説明するための図である。
【
図6】本発明の第1の実施の形態に係る、内燃機関の運転が停止した状態における開閉弁を示す図である。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る、弁ニードルと圧力ピンとがスティックした状態において、電磁石に通電がなされた時の開閉弁を示す図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態に係る、内燃機関の運転が停止した状態における開閉弁を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、適宜図面を参照しつつ説明する。尚、以下に説明する部材、配置等は本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。また、それぞれの図中、同じ符号が付されているものは同一の要素を示しており、適宜説明が省略されている。また、各図において、詳細部分の図示が適宜簡略化または省略されている。また、重複する説明については、適宜簡略化または省略されている。
【0017】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態について、適宜図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る燃料噴射弁を模式的に示す断面図である。燃料噴射弁90は、燃料を噴射する燃料噴射孔3が一端に形成された本体部1を備えている。本実施の形態では、本体部1を、ノズル本体2、ユニオンナット4及び閉塞板5で構成している。なお、本体部1を構成するこれらの部品は、あくまでも一例である。燃料噴射弁90のデザインに応じて、本体部1の分割数は、換言すると本体部1を構成する部品数は、任意に変更可能である。また、本説明における燃料噴射弁90については、特に断りがない限り、
図1における燃料噴射孔3側を下側とし、その反対側、すなわち、閉塞板5側を上側とする。
【0018】
ノズル本体2は、本体部1の下部部分を構成するものであり、ユニオンナット4は、本体部1の上部部分を構成するものであり、共に筒状に形成されている。ユニオンナット4の下端部には、例えば圧入等により、ノズル本体2が気密に固定されている。また、ユニオンナット4の上端部は、閉塞板5によって気密に閉塞されている。
【0019】
ノズル本体2の内部には、高圧室52が形成されている。当該高圧室52には、ノズル本体2及びユニオンナット4に形成された燃料入口51を介して、外部(例えばコモンレール、燃料ポンプ等)から、高圧の燃料が供給される。ノズル本体2の下端には、燃料噴射孔3が形成されている。当該燃料噴射孔3を通して、高圧室52内の高圧燃料が、図示されない内燃機関の燃焼室へ噴射される。
【0020】
高圧室52の上端部(つまり、燃料噴射孔3側とは反対側の端部)は、弁板21により画定されている。当該弁板21は、ユニオンナット4の内周面に取り付けられた固定リング4aとノズル本体2との間に挟持されて本体部1の内部に固定され、高圧室52を気密に閉塞している。弁板21における高圧室52側の面を構成する壁部には、制御室10を包囲する筒状突出部14が形成されている。当該筒状突出部14における燃料噴射孔3側の端部は壁11により閉塞されている。また、当該壁11には、後述のノズルニードル6が挿入されるノズルニードル開口部11aが形成されている。また、制御室10を包囲する筒状突出部14には、制御室10と高圧室52とを連通させる貫通孔12が形成されている。貫通孔12は、流路断面積が絞られた領域として形成される上流側オリフィス12aを有する。すなわち、高圧室52内の高圧燃料は、上流側オリフィス12aを介して、制御室10に流入する構成となっている。
【0021】
ノズル本体2の内部には、高圧室52の軸線に沿って往復動自在(
図1では上下動自在)に、ノズルニードル6が設けられている。このノズルニードル6は、燃料噴射孔3を開閉するものである。ノズルニードル6は、制御室10付近の第1の部分6aと、燃料噴射孔3付近の第2の部分6bとを有する。なお、ノズルニードル6は、一体に構成されていてもよく、又は、互いに作動接続された複数の構成要素から構成されていてもよい。また、ノズルニードル6の第1の部分6aは、弁板21側の端面として、第1端面6aaを有する。
【0022】
ノズルニードル6の第1の部分6aは、壁11に形成されたノズルニードル開口部11aに挿入され、制御室10内に突出している。すなわち、制御室10は、ノズルニードル6の第1端面6aaに対し、下向きの燃料圧力を付与する。
【0023】
また、ノズルニードル6の外周面には、壁11の下方となる位置に、鍔状の突起部8が形成されている。そして、突起部8と壁11との間には、ノズルニードル6を燃料噴射孔3側へ付勢するバネ9が設けられており、ノズルニードル6には、下向き(つまり燃料噴射孔3に近づく方向)の力が加わることとなる。また、ノズルニードル6の第2の部分6bには、段部7が形成されている。高圧室52内の高圧燃料の圧力が段部7に作用することにより、ノズルニードル6には、上向き(つまり燃料噴射孔3から離れる方向)の力が加わることとなる。ノズル本体2内の燃料噴射孔3につながる部位には、シート部18が形成されており、ノズルニードル6がシート部18に対して着座(シート)することで燃料噴射孔3が閉塞され、高圧室52内の高圧燃料が燃料噴射孔3から噴射されない状態となる。一方、ノズルニードル6がシート部18から離間(リフト)することで、燃料噴射孔3が開放され、高圧室52内の高圧燃料が燃料噴射孔3から噴射される状態となる。
【0024】
弁板21における制御室10とは反対側の面、すなわち弁板21の上側端面には、筒状の壁31及び該壁31の上端部を閉塞する壁33に包囲されて、排出室30が形成されている。筒状の壁31及び該壁31の上端部を閉塞する壁33とは、一体として形成されていてもよい。また、筒状の壁31は、溶接等適宜の方法で弁板21の上側端面に固定される。排出室30は、本体部1の内部に形成され、連通路13を介して制御室10と連通し、制御室10に流入した燃料が連通路13を介して流入する。また、弁板21には、制御室10と排出室30とを連通させる連通路13の構成の一部である貫通孔13aが形成されている。貫通孔13aは、流路断面積が絞られた領域として形成される下流側オリフィス13cを有する。弁板21の排出室30側には、弁ニードル25が配置されている。この弁ニードル25は、弁板21と共に開閉弁20の構成要素となる。
【0025】
弁ニードル25は、弁板21に向かう方向及び弁板21から離れる方向に、往復動自在(
図1では上下動自在)となっている。弁ニードル25は、排出室30を構成する壁33に形成される開口部33aにガイドされる。弁ニードル25は、略円筒形状に形成されており、弁ニードル25内には、燃料噴射弁90の縦軸に沿って往復動の方向(
図1では上下方向)に貫通する弁ニードル孔26が形成されている。弁ニードル孔26内には、圧力ピン61が摺動自在に保持されている。圧力ピン61の上側端面は、図示されない内燃機関の運転時に、貫通孔13aの燃料圧力により上昇し、閉塞板5の下側に配置されたストッパ15の下側端面に当接する。圧力ピン61は、弁ニードル孔26と、後述する、アーマチャ板孔41aと、バネ42と、電磁石43と、の中央を通って伸張している。弁ニードル25は、後述するアーマチャ板41に対するバネ42の付勢力と電磁石の磁力とにより、排出室30を構成する壁33に形成される開口部33aに沿って上下方向に往復移動する。すなわち、開閉弁20は、弁ニードル25と、圧力ピン61と、弁板21と、アーマチャ板と41と、バネ42と、電磁石43と、を有する。
【0026】
そして、弁ニードル25の弁板21側端面である先端部25aは、弁板21における貫通孔13aの開口部の外周側に形成された開閉弁シート部21aに接触した状態では、つまり開閉弁20が閉じた状態では、弁ニードル25の先端部25aと開閉弁シート部21aとの間の流路13b(以下、第1開口部ともいう)を閉塞する。また、弁ニードル25の弁板21側の先端部25aは、弁板21における貫通孔13aの開口部の外周側に形成された開閉弁シート部21aから離れた状態では、つまり開閉弁20が開いた状態では、弁ニードル25の先端部25aと開閉弁シート部21aとの間の流路13b(第1開口部)を開く。すなわち、制御室10と排出室30とを連通する連通路13は、弁板21に形成された貫通孔13aと、弁板21と弁ニードル25との間の流路13b(第1開口部)と、で構成される。そして、開閉弁20は、連通路13を開閉するものである。
【0027】
上述のように開閉弁20が開くことにより、制御室10と排出室30とが、連通路13(貫通孔13a,流路13b)を介して連通する。このため、制御室10内の燃料は、連通路13を通って、排出室30に流入することとなる。ここで、貫通孔13aに形成された下流側オリフィス13cの流路断面積は、上流側オリフィス12aの流路断面積よりも大きく形成されている。また、開閉弁20が開いた状態における弁ニードル25の先端部25aと開閉弁シート部21aとの間の流路13b(第1開口部)の流路断面積は、下流側オリフィス13cの流路断面積よりも大きくなる様構成されている。このため、開閉弁20が開弁した際、高圧室52から制御室10へ流入する燃料の量よりも、制御室10から排出室30へ流出する燃料の量の方が多くなる。したがって、開閉弁20が開弁した際、制御室10内の燃料の圧力は、高圧室52内の燃料の圧力よりも低くなる。
【0028】
排出室30を包囲する壁31には、例えば2つの出口孔32が形成されている。当該出口孔32は、排出室30と、ユニオンナット4内において弁板21の上方に形成された低圧室53と、を連通する貫通孔である。低圧室53は、燃料噴射弁90内に供給された燃料を外部に排出させる燃料出口54と連通している。このため、低圧室53内には、高い燃料圧力は形成されない。
【0029】
弁ニードル25は、排出室30の上方を包囲する壁33に形成された開口部33aを通って、低圧室53へと伸張している。つまり、弁ニードル25の上端部(弁板21側とは反対側の端部)は、壁33よりも上方へ突出している。そして、弁ニードル25の該上端部には、円盤状に形成されたアーマチャ板41が設けられている。当該アーマチャ板41は、低圧室53において、燃料噴射弁90の縦方向と直角に伸張している。アーマチャ板41には、燃料噴射弁90の縦軸に沿って往復動の方向(
図1では上下方向)に貫通するアーマチャ板孔41aが形成されている。このアーマチャ板孔41a内には、圧力ピン61が挿通されている。なお、アーマチャ板41と弁ニードル25とが一体として形成されてもよい。アーマチャ板41と弁ニードル25とが一体として形成された場合、アーマチャ板孔41aも弁ニードル孔26の一部となる。
【0030】
アーマチャ板41とストッパ15との間には、バネ42が配置される。バネ42は、弁ニードル25が弁板21上に押圧されて両者の間が閉塞するように、アーマチャ板41を弁板21側へ付勢する。
【0031】
アーマチャ板41とストッパ15との間には、電磁石43が設けられている。当該電磁石43の作動により(電磁石43に電力が供給されることにより)、アーマチャ板41は、バネ42の力に逆らって上方に移動する。つまり、アーマチャ板41に取り付けられた弁ニードル25は、開閉弁20が開く方向に移動する。すなわち、開閉弁20は、電磁石43の作動により開放される。開閉弁20が開弁した際、制御室10内の燃料は、上述のように排出室30内に流入し、当該排出室30から、出口孔32を通ってさらに低圧室53及び燃料出口54へと流入する。なお、アーマチャ板41と、電磁石43との間の空間は低圧室53の一部であり低い燃料圧の空間となっている。
【0032】
制御室10からの燃料の流出によって制御室10内の燃料の圧力が低下すると、ノズルニードル6の段部7に作用する、高圧室52内の燃料圧力に起因するノズルニードル6を上向きに押圧する力が、制御室10内の燃料圧力とバネ9に起因するノズルニードル6を下向きに押圧する力を上回り、ノズルニードル6は上方へ移動して燃料噴射孔3を解放する。これにより、高圧室52内の燃料は、燃料噴射孔3を通って、図示されない内燃機関の燃焼室へ噴射される。
【0033】
燃料噴射孔3からの燃料の噴射を終了させるには、電磁石43への電力の供給を停止する。これにより、アーマチャ板41が、バネ42によって下の閉塞位置へと押圧される。そして、アーマチャ板41と共に弁ニードル25も下方に移動し、弁板21と接触する。すなわち、開閉弁20が閉弁する。開閉弁20が閉弁すると、制御室10内の燃料は、制御室10から排出室30へと流出できない。このため、制御室10内の燃料の圧力が高まる。制御室10内の高まった燃料圧力は、ノズルニードル6の第1端面6aaに対して、バネ9の力と共に当該ノズルニードル6を下の閉塞位置へと押圧する下向きの力を加える。これにより、ノズルニードル6が下降し、ノズルニードル6の第2の部分6bの下側端面6baは燃料噴射孔3を閉塞する。その結果、更なる燃料が、高圧室から燃料噴射孔3を通って噴射されることはない。
【0034】
次に、開閉弁20の詳細について説明する。まず、従来の燃料噴射弁190における開閉弁20について、
図2から
図5を参照しつつ説明する。
図2から
図5は、
図1のYで示された領域に相当する部分拡大図であり、従来の燃料噴射弁190に対応するものであある。尚、従来の燃料噴射弁190において、
図2から
図5に記載されていない部分については、
図1と同様の構成である。
【0035】
図2は、従来の燃料噴射弁190における開閉弁20であり、図示されない内燃機関の運転中であって、電磁石43に通電がなされた状態を示す図である。
図2の状態においては、電磁石43に通電がなされることにより、弁ニードル25及びアーマチャ板41が上昇し、制御室10の燃料が排出室30へ流出する。これにより制御室10内の燃料圧力が低下するため、ノズルニードル6が上昇し、燃料が噴射される。
【0036】
また、圧力ピン61は、制御室10側から受ける燃料の圧力により上昇し、圧力ピン61の上側端面が、閉塞板5の下側に配置されたストッパ15に当接している。この時、圧力ピン61の下側端部は、一部が貫通孔13a内に残っており、圧力ピン61は貫通孔13aから完全に抜け出してはいない。
【0037】
図2の状態において、弁ニードル25の先端部25aと開閉弁シート部21aとにより形成される流路13b(
図2においてBで示される領域に形成される流路、第1開口部)の断面積、すなわち、第1開口部の開口面積Sseatが、貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部と圧力ピン61との間に形成される開口部(
図2においてCで示される領域に形成される流路、以下、第2開口部ともいう)の断面積、すなわち、第2開口部の開口面積Sboltよりも小さくなる様、各部の寸法が設定されている。この時、第1開口部を通過する燃料の単位時間当たりの流量をQseat、第2開口部を通過する燃料の単位時間当たりの流量をQboltとすると、Qseat<Qboltとなる。
【0038】
また、
図2の状態において、下流側オリフィス13c(
図2においてAで示される領域の流路、以下、第3開口部ともいう)の断面積、すなわち、第3開口部の開口面積Saが、弁ニードル25の先端部25aと開閉弁シート部21aとにより形成される流路13bの断面積、すなわち、第1開口部の開口面積Sseatよりも小さくなる様、各部の寸法が設定されている。この時、第3開口部を通過する燃料の単位時間当たりの流量をQaとすると、Qa<Qseatとなる。
【0039】
すなわち、Qa<Qseat<Qboltの関係となる。
【0040】
図3は、従来の燃料噴射弁190における開閉弁20であり、図示されない内燃機関の運転中であって電磁石43への通電が終了した状態を示す図である。電磁石43への通電がなされていないため、弁ニードル25の先端部25aは開閉弁シート部21aに着座している。一方、圧力ピン61は、制御室10側からの燃料の圧力を受けるため、上昇したままである。すなわち、圧力ピン61は、燃料噴射弁190が搭載された図示されない内燃機関の運転中は常に上昇した状態にある。
【0041】
図4は、従来の燃料噴射弁190における開閉弁20であり、図示されない内燃機関の運転が停止された状態を示す図である。内燃機関の運転が停止されていることから、電磁石43への通電がなされず、弁ニードル25の先端部25aは開閉弁シート部21aに着座している。また、図示されない内燃機関が停止していることにより、制御室10内の燃料の圧力も低圧室53内の燃料の圧力と同程度に低下しており、圧力ピン61も下降する。この時、圧力ピン61の下端部付近に形成される、制御室10側へ向かうにつれ縮径する段部61bが、貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部に当接している。
【0042】
図5は、従来の燃料噴射弁190における開閉弁20であり、弁ニードル25の弁ニードル孔26と圧力ピン61とがスティックした状態を説明するための図である。この様な状態は、摩耗による摺動部の間隙の変化により摺動部における圧力ピンの傾きが新品時に比べて変化した場合や、燃料中にデポジットが存在した場合、あるいは、燃料中の微粒子や異物等が摺動部に入った場合などに、摺動部における摺動抵抗が増加することに起因して起きる。
【0043】
図5は、内燃機関の運転時であって、圧力ピン61が弁ニードル孔26に対し相対移動できない状態(スティック状態)において、電磁石43への通電がなされた状態を示す。圧力ピン61が弁ニードル孔26に対しスティックした状態において、電磁石43への通電がなされると、圧力ピン61は、弁ニードル25と共に上昇するが、弁ニードル25のストローク量しか上昇することができない。
【0044】
この時、貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部と圧力ピン61との間に形成される第2開口部の開口面積Sboltが、弁ニードル25の先端部25aと開閉弁シート部21aとにより形成される第1開口部の開口面積Sseat、あるいは、下流側オリフィス13cとして形成される第3開口部の開口面積Saよりも小さくなる。この時、第1開口部、第2開口部、第3開口部それぞれを通過する燃料の単位時間当たりの流量Qseat、Qbolt、Qaは、
Qa<Qbolt<Qseat、あるいは、Qbolt<Qa<Qseatの関係となる。
【0045】
この様な状態になると、電磁石43に通電がなされることにより開閉弁20が開弁した際、貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部と圧力ピン61との間に形成される第2開口部を燃料が通過する際の抵抗が大きくなり、制御室10の燃料圧力の低下速度が遅くなる。その結果、ノズルニードル6の上昇が遅れ、噴射量が目標値に対して低下する。
【0046】
次に、本発明の第1の実施の形態における開閉弁20について、
図6及び
図7を参照しつつ説明する。
図6は、本実施の形態に係る、図示されない内燃機関の運転が停止した状態における開閉弁20を示す図である。
【0047】
本実施の形態においては、弁ニードル25が、弁ニードル孔26の下端部付近に、所定の長さにわたる縮径部として形成された小径部26aを有する。また、圧力ピン61は、下端部付近に形成される、制御室10側へ向かうにつれ縮径する段部61aを有する。よって、内燃機関の運転が停止した際、圧力ピン61が下降し、圧力ピン61の段部61aが、小径部26aの上側に着座する。すなわち、内燃機関が停止した際、段部61aが貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部に着座しない。換言すれば、内燃機関が停止した際、従来と異なり、貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部と圧力ピン61との間に間隙が存在する。またこの時、圧力ピン61の下側は、一部が貫通孔13a内にある。
【0048】
この時、内燃機関の運転時に電磁石43に通電がなされた際の、第1開口部(
図7においてBで示される領域に形成される流路)の開口面積Sseatが、
図6(内燃機関の停止時)における、第2開口部(
図6においてCで示される領域に形成される流路)の開口面積Sboltよりも小さくなる様、各部の寸法が設定されている。
【0049】
図7は、弁ニードル25と圧力ピン61とがスティックした状態において、図示されない内燃機関の運転時に電磁石43に通電がなされた時の、開閉弁20を示す図である。
【0050】
この時、圧力ピン61は、弁ニードル25と共に上昇しているが、弁ニードル25と圧力ピン61との相対的な位置関係は、
図6に対して変わっていない。換言すれば、
図7における圧力ピン61は、下側から燃料圧力を受けているにもかかわらず、弁ニードル孔26内を上方へ移動していない。
【0051】
図7の状態においては、圧力ピン61が、弁ニードル25のリフト量だけ
図6の状態に対して上昇しているため、
図7における第2開口部の開口面積Sboltは、
図6における第2開口部の開口面積Sboltと同等、あるいは若干大きくなる。
【0052】
また、上述の様に、内燃機関の運転時に電磁石43に通電がなされた際の、第1開口部の開口面積Sseatは、内燃機関の停止時(圧力ピンの下降時)における、第2開口部の開口面積Sboltよりも小さい。従って、内燃機関の運転時に電磁石43に通電がなされた際、常にSseat<Sboltとなる。
【0053】
また、従来同様、Sa<Sseatであることから、内燃機関の運転時には、第1開口部の開口面積Sseat、第2開口部の開口面積Sbolt、第3開口部の開口面積Saの関係は、常にSa<Sseat<Sboltとなる。すなわち、第1開口部、第2開口部、第3開口部それぞれを通過する燃料の単位時間当たりの流量Qseat、Qbolt、Qaは、常にQa<Qseat<Qboltとなる。
【0054】
従って、本発明によれば、弁ニードル25の弁ニードル孔26と圧力ピン61とがスティックした状態であっても、燃料噴射量が目標値に対して低下することはない。また、弁ニードル25の弁ニードル孔26と圧力ピン61とがスティックしてはいないものの、摺動抵抗の増加により圧力ピン61の上昇量が通常よりも小さい場合であっても、スティックした状態に比べ、Qboltは同等、あるいは大きくなるため、この場合でも、Qa<Qseat<Qboltの関係が保たれる。
【0055】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態における、燃料噴射弁90について、
図8及び
図9を参照しつつ説明する。
図8は、本発明の第2の実施の形態に係る、図示されない内燃機関の運転が停止した状態における開閉弁20を示す図である。
【0056】
本実施の形態における弁ニードル25は、従来の燃料噴射弁190における弁ニードル25と同一の形状である。すなわち、弁ニードル孔26に、小径部26aが形成されていない。よって、
図8において、圧力ピン61は下降し、段部61aが貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部に着座している。
【0057】
図9は、
図8にYaで示す領域の拡大図であり、圧力ピン61の下端部付近を示す図である。
図9に示される様に、本実施の形態に係る圧力ピン61は、下降時に貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部に着座する部分である段部61aに縦方向の溝61dが複数形成されている。
【0058】
すなわち、本実施の形態においては、溝61dが、圧力ピン61が貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部に着座した際の、貫通孔13aの開閉弁シート部21a側端部と圧力ピン61との間に開口部を形成する。よって、本実施の形態においては、当該開口部が第2開口部となる。
【0059】
本実施の形態においても、内燃機関の運転時に電磁石43に通電がなされた際の、第1開口部の開口面積Sseatが、
図8(内燃機関の停止時)における、第2開口部の開口面積Sboltよりも小さくなる様、各部の寸法が設定されている。尚、当該SseatとSboltとの関係が保たれる限り、溝61dの寸法及び個数は任意に設定可能である。
【0060】
また、圧力ピン61と弁ニードル25がスティックした場合であっても、内燃機関の運転時に電磁石43に通電がなされた際、圧力ピン61は弁ニードル25のリフト量だけ上昇しているため、
図8の状態におけるSboltよりも若干大きくなる。
【0061】
上述の様に、内燃機関の運転時に電磁石43に通電がなされた際の、第1開口部の開口面積Sseatは、内燃機関の停止時(圧力ピンの下降時)における、第2開口部の開口面積Sboltよりも小さい。よって、内燃機関の運転時に電磁石43に通電がなされた際、常にSseat<Sboltとなる。
【0062】
また、第1の実施の形態同様、Sa<Sseatであることから、内燃機関の運転時には、第1開口部の開口面積Sseat、第2開口部の開口面積Sbolt、第3開口部の開口面積Saの関係は、常にSa<Sseat<Sboltとなる。すなわち、第1開口部、第2開口部、第3開口部それぞれを通過する燃料の単位時間当たりの流量Qseat、Qbolt、Qaは、常にQa<Qseat<Qboltとなる。
【0063】
従って、本実施の形態においても第1の実施の形態同様、圧力ピン61と弁ニードル25とがスティックした状態であっても、燃料噴射量が影響を受けることはない。また、弁ニードル25の弁ニードル孔26と圧力ピン61とがスティックしてはいないものの、摺動抵抗の増加により圧力ピン61の上昇量が通常よりも小さい場合であっても、スティックした状態に比べ、Qboltが大きくなるため、この場合でも、Qa<Qseat<Qboltの関係が保たれる。
【0064】
以上、説明した様に、本発明によれば、燃料噴射弁の電磁弁において、弁ニードル25の弁ニードル孔26と圧力ピン61との間の摺動抵抗が増加し、圧力ピン61の上昇が不十分となった場合であっても、燃料噴射量が目標値からずれることを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0065】
1:本体部、3:燃料噴射孔、6:ノズルニードル、6aa:第1端面、10:制御室、13:連通路、13a:貫通孔、13b:流路、13c:オリフィス、20:開閉弁、21a:開閉弁シート部、25弁ニードル、26:弁ニードル孔、26a:小径部、43:電磁石、61:圧力ピン、61d:溝、90:燃料噴射弁