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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056277
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】物理量センサー及び慣性計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20240416BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
G01P15/08 102B
G01P15/125 Z
G01P15/08 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163048
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100166523
【弁理士】
【氏名又は名称】西河 宏晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 悟
(57)【要約】
【課題】配線の自由度の向上と構造の適正化を両立させた物理量センサーの提供。
【解決手段】物理量センサー1は、基板2と、第1固定部11と、第1支持梁21と、可動体MBと、第1固定電極固定部31と、第2固定電極固定部32と、第1固定電極部41と、第2固定電極部42と、第1配線51と、を含む。第1固定部11は、基板2に固定される。第1支持梁21は、第1固定部11に一端が接続され、第2方向DR2に沿って延びる。第1支持梁21を回転軸として物理量を検出するときの第2可動電極部62の回転トルクは、第1支持梁21を回転軸として物理量を検出するときの第1可動電極部61の回転トルクよりも小さい。可動体MBは、第1支持梁21に対して第4方向DR4側に開口部Pを有し、第1配線51は、第1固定電極固定部31から開口部Pを通過して可動体MBの外部に引き出される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3つの方向を、第1方向、第2方向及び第3方向としたとき、前記第3方向での物理量を検出する物理量センサーであって、
基板と、
前記基板に固定された第1固定部と、
前記第1固定部に一端が接続され、前記第2方向に沿って延びる第1支持梁と、
前記第1支持梁の他端に接続された可動体と、
前記基板に固定された第1固定電極固定部と、
前記基板に固定された第2固定電極固定部と、
前記第1固定電極固定部に接続され、前記第1支持梁に対して前記第1方向側に設けられる第1固定電極部と、
前記第2固定電極固定部に接続され、前記第1支持梁に対して前記第1方向の反対方向である第4方向側に設けられる第2固定電極部と、
前記第1固定電極固定部に接続される第1配線と、
を含み、
前記可動体は、
前記第1固定電極部の固定電極に対向する可動電極を有する第1可動電極部と、
前記第2固定電極部の固定電極に対向する可動電極を有する第2可動電極部と、
を含み、
前記第1支持梁を回転軸として前記物理量を検出するときの前記第2可動電極部の回転トルクは、前記第1支持梁を前記回転軸として前記物理量を検出するときの前記第1可動電極部の前記回転トルクよりも小さく、
前記可動体は、
前記第1支持梁に対して前記第4方向側に開口部を有し、
前記第1配線は、
前記第1固定電極固定部から前記開口部を通過して前記可動体の外部に引き出されることを特徴とする物理量センサー。
【請求項2】
請求項1に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1固定電極固定部は、前記第1固定電極部と前記第2固定電極部の間の固定部配置領域に配置されることを特徴とする物理量センサー。
【請求項3】
請求項2に記載の物理量センサーにおいて、
前記第2固定電極固定部に接続される第2配線を含み、
前記第2固定電極固定部は、
前記固定部配置領域に配置され、
前記第2配線は、
前記第2固定電極固定部から前記開口部を通過して前記可動体の外部に引き出されることを特徴とする物理量センサー。
【請求項4】
請求項2に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1固定部に接続される第3配線を含み、
前記第1固定部は、
前記固定部配置領域に配置され、
前記第3配線は、
前記第1固定部から前記開口部を通過して前記可動体の外部に引き出されることを特徴とする物理量センサー。
【請求項5】
請求項4に記載の物理量センサーにおいて、
前記第3配線の他端に接続され、前記可動体の外側に設けられる可動電極端子を含むことを特徴とする物理量センサー。
【請求項6】
請求項2に記載の物理量センサーにおいて、
前記基板に固定される第2固定部と、
前記第2固定部に一端が接続され、他端が前記可動体に接続される第2支持梁と、
前記第2固定部に接続される第4配線を含み、
前記第2固定部は、
前記固定部配置領域に配置され、
前記第4配線は、
前記第2固定部から前記開口部を通過して前記可動体の外部に引き出されることを特徴とする物理量センサー。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1配線の他端に接続され、前記可動体の外側に設けられる第1固定電極端子を含むことを特徴とする物理量センサー。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記可動体は、
前記第1支持梁の他端に接続され、前記第1方向に沿って延びる第1連結部と、
前記第1支持梁の前記第1方向側に設けられ、前記第1連結部に接続されて、前記第2方向に沿って延び、前記第1可動電極部の可動電極が設けられる第1基部と、
前記第1支持梁の前記第4方向側に設けられ、前記第1連結部に接続されて、前記第2方向に沿って延び、前記第2可動電極部の可動電極が設けられる第2基部と、
を含むことを特徴とする物理量センサー。
【請求項9】
請求項8に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1可動電極部の可動電極は、前記第1基部から前記第4方向に沿って延び、前記第1固定電極部の固定電極と前記第2方向において対向し、
前記第2可動電極部の可動電極は、前記第2基部から前記第1方向に沿って延び、前記第2固定電極部の固定電極と前記第2方向において対向することを特徴とする物理量センサー。
【請求項10】
請求項8に記載の物理量センサーにおいて、
前記可動体は、
前記第1基部の前記第4方向側に設けられ、前記第1連結部に接続されて、前記第2方向に沿って延び、前記第1可動電極部の可動電極が設けられる第3基部を含むことを特徴とする物理量センサー。
【請求項11】
請求項10に記載の物理量センサーにおいて、
前記第1可動電極部の可動電極は、前記第3基部から前記第1方向に沿って延び、前記第1固定電極部の固定電極と前記第2方向において対向することを特徴とする物理量センサー。
【請求項12】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の物理量センサーにおいて、
前記基板に固定される第2固定部と、
前記第2固定部に一端が接続され、他端が前記可動体に接続される第2支持梁と、
を含み、
前記可動体は、
前記第1支持梁の他端に接続され、前記第1方向に沿って延びる第1連結部と、
前記第2支持梁の他端に接続され、前記第1方向に沿って延びる第2連結部と、
前記第1支持梁の前記第1方向側に設けられ、前記第1連結部に接続されて、前記第2方向に沿って延び、前記第1可動電極部の可動電極が設けられる第1基部と、
前記第1支持梁の前記第4方向側に設けられ、前記第1連結部に接続されて、前記第2方向に沿って延び、前記第2可動電極部の可動電極が設けられる第2基部と、
前記第2支持梁の前記第1方向側に設けられ、前記第2連結部に接続されて、前記第2方向に沿って延び、前記第1可動電極部の可動電極が設けられる第4基部と、
前記第2支持梁の前記第4方向側に設けられ、前記第2連結部に接続されて、前記第2方向に沿って延び、前記第2可動電極部の可動電極が設けられる第5基部と、
を含み、
前記可動体の前記開口部は、前記第2基部と前記第5基部との間に設けられることを特徴とする物理量センサー。
【請求項13】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の物理量センサーと、
前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、
を含むことを特徴とする慣性計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量センサー及び慣性計測装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、Z方向の加速度を検出する物理量センサーが開示されている。当該物理量センサーにおいて、複数の第1電極の1つの第1方向に沿う第1電極の長さは、第1導電部の第1方向に沿う第1導電部の長さよりも短いことが開示されている。また当該物理量センサーにおいて、複数の第2電極の1つの第1方向に沿う第2電極の長さは、第2導電部の第1方向に沿う第2導電部の長さよりも短いことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-032819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物理量センサーには更なる小型化、高感度化等、構造の最適化が要求されている。そのため、容量を検出するために用いる可動電極や固定電極に接続する配線の引き回し如何によって、物理量センサーの構造等の適正化を阻害しないことが望まれる。特許文献1には、物理量センサーの配線の引き回しに関する手法について開示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、互いに直交する3つの方向を、第1方向、第2方向及び第3方向としたとき、前記第3方向での物理量を検出する物理量センサーであって、基板と、前記基板に固定された第1固定部と、前記第1固定部に一端が接続され、前記第2方向に沿って延びる第1支持梁と、前記第1支持梁の他端に接続された可動体と、前記基板に固定された第1固定電極固定部と、前記基板に固定された第2固定電極固定部と、前記第1固定電極固定部に接続され、前記第1支持梁に対して前記第1方向側に設けられる第1固定電極部と、前記第2固定電極固定部に接続され、前記第1支持梁に対して前記第1方向の反対方向である第4方向側に設けられる第2固定電極部と、前記第1固定電極固定部に接続される第1配線と、を含み、前記可動体は、前記第1固定電極部の固定電極に対向する可動電極を有する第1可動電極部と、前記第2固定電極部の固定電極に対向する可動電極を有する第2可動電極部と、を含み、前記第1支持梁を回転軸として前記物理量を検出するときの前記第2可動電極部の回転トルクは、前記第1支持梁を前記回転軸として前記物理量を検出するときの前記第1可動電極部の前記回転トルクよりも小さく、前記可動体は、前記第1第1支持梁に対して前記第4方向側に開口部を有し、前記第1配線は、前記第1固定電極固定部から前記開口部を通過して前記可動体の外部に引き出される物理量センサーに関係する。
【0006】
本開示の他の態様は、上記に記載された物理量センサーと、前記物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、を含む慣性計測装置に関係する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】物理量センサーの例を説明する平面図。
図2】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図3】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図4】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図5】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図6】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図7】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図8】第1配線、第2配線及び第3配線の交差を説明する図。
図9図8のD-D断面を説明する図。
図10】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図11】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図12】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図13】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図14】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図15】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図16】第2固定電極と第2可動電極の厚さの関係の例を説明する図。
図17】第1可動電極の動作と第1固定電極の関係の例を説明する図。
図18】第2可動電極の動作と第2固定電極の関係の例を説明する図。
図19】第1可動電極の動作と第1固定電極の関係の別の例を説明する図。
図20】第2可動電極の動作と第2固定電極の関係の別の例を説明する図。
図21】第1可動電極の動作と第1固定電極の関係の別の例を説明する図。
図22】第2可動電極の動作と第2固定電極の関係の別の例を説明する図。
図23】第1可動電極の動作と第1固定電極の関係の別の例を説明する図。
図24】第2可動電極の動作と第2固定電極の関係の別の例を説明する図。
図25】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図26】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図27】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図28】物理量センサーの別の例を説明する平面図。
図29】物理量センサーを含む慣性計測装置の概略構成を示す分解斜視図。
図30】物理量センサーの回路基板の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお以下に説明する本実施形態は特許請求の範囲に記載された内容を不当に限定するものではなく、本実施形態で説明される構成の全てが必須構成要件であるとは限らない。
【0009】
本実施形態の物理量センサー1は、基板2と、第1固定部11と、第1支持梁21と、可動体MBと、第1固定電極固定部31と、第2固定電極固定部32と、第1固定電極部41と、第2固定電極部42と、第1配線51と、を含む。図1は、本実施形態の物理量センサー1の基板2に直交する方向での平面視における平面図である。また、図1において互いに直交する方向を第1方向DR1、第2方向DR2、第3方向DR3とし、第1方向DR1、第2方向DR2、第3方向DR3は、各々、例えば+X軸方向、+Y軸方向、+Z軸方向に対応する。本実施形態の物理量センサー1は、例えばMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)デバイスとしての慣性センサーであり、第3方向DR3での物理量を検出する。なお、「直交」とは90°で交わっているものの他、90°から若干傾いた角度で交わっている場合も含むものとする。また、本実施形態において、第1方向DR1の反対側の方向を第4方向DR4とする。つまり、図1において第4方向DR4は、例えば-X軸方向である。また、第3方向DR3と反対の方向を第5方向DR5とする。例えば、図1には図示していないが、第5方向DR5は、例えば-Z軸方向である。
【0010】
例えば、第1方向DR1及び第2方向DR2に沿った面であるXY平面を水平面とすると、第3方向DR3は鉛直方向となることから、本実施形態の物理量センサー1を例えば鉛直方向の加速度を検出する加速度センサーとして適用することができる。ただし、上記した第1方向DR1~第3方向DR3と、XYZ軸との対応関係はあくまでも例示であり、上記に限定されるものではない。以降の説明は、例えば第1方向DR1または第2方向DR2をZ軸として本実施形態を適用することを妨げるものではなく、第1方向DR1~第3方向DR3のいずれかが必ず鉛直方向に沿うことを必須としていない。
【0011】
また以下では、物理量センサー1が検出する物理量が加速度である場合を主に例にとって説明するが、物理量は加速度に限定されず、速度、圧力、変位、姿勢、角速度又は重力等の他の物理量であってもよく、物理量センサー1は圧力センサー又はMEMSスイッチ等として用いられるものであってもよい。また、本実施形態のいずれの図においても、各部材の寸法や部材間の間隔等は、説明の便宜のための模式的な図示であり、現実の寸法、間隔等を示すものではない。また、本実施形態の物理量センサー1は、一部の構成要素を省略して図示している。一部の構成要素とは、例えばシールド構造体等である。
【0012】
基板2は、例えば半導体シリコンで構成されたシリコン基板又はホウケイ酸ガラスなどのガラス材料で構成されたガラス基板などである。但し基板2の構成材料としては、特に限定されず、石英基板又はSOI(Silicon On Insulator)基板等を用いてもよい。
【0013】
第1固定部11は、基板2に固定され、可動体MBのシーソー運動におけるアンカーとしての役割を担う。なお、以降において、可動体MBのシーソー運動のことを揺動運動とも呼ぶことがある。具体的には、第1支持梁21の一端が第1固定部11に接続され、第1支持梁21の他端に可動体MBが接続されている。つまり、第1固定部11は、第1支持梁21を介して、可動体MBを基板2に接続させている。なお、断面図等による図示は省略するが、可動体MBの第5方向DR5側は、空洞部が形成され、可動体MBの動作によって可動体MBと基板2は干渉しないようになっている。
【0014】
なお本実施形態において、例えば「第1固定部11と基板2が固定されている」とは、本来別々であった第1固定部11の部材と基板2の部材が、所定の材料と所定の工法を用いて固定されていることをいうが、これに限らない。例えば、一体的に形成された一の部材に対し、説明の便宜上、第1固定部11に相当する部分と基板2に相当する部分を分けて呼んでいる場合を含む。同様に、例えば「第1支持梁21の他端に可動体MBが接続されている」とは、可動体MBの一部として第1支持梁21が一体的に形成されているが、可動体MBと第1支持梁21を便宜的に分けて説明している場合を含む。以降の説明における「固定」「接続」も同様である。
【0015】
第1支持梁21は、図1の平面視において、第2方向DR2を長手方向になるように設けられ、可動体MBのシーソー運動に対して撓むようになっている。つまり、第1支持梁21はY軸上で捻れることで、可動体MBのシーソー運動における復元力をもたらす。このように、第1支持梁21は、第2方向DR2を回転軸として捻れる捻れバネとしての性質を有する。これにより、可動体MBは第2方向DR2を回転軸とした揺動運動が実現される。なお、第1支持梁21の第1方向DR1の厚さは適宜調整されるものであり、図1等において図示は正確なものではない。例えば、第1支持梁21の第1方向DR1での厚みを、第1固定部11の第1方向DR1での厚みより薄くしても構わず、詳細は後述する。
【0016】
第1固定電極固定部31は基板2に固定されている。また、第1固定電極固定部31は、第1固定電極部41と接続されている。第1固定電極部41は第1支持梁21に対して第1方向DR1側に設けられている。つまり、第1固定電極部41は、第1固定電極固定部31を介して基板2に固定され、プローブ電極としての役割を担う。なお、図1では、第1固定電極固定部31は、第1固定電極部41から第4方向DR4に延在した第1固定電極基部を介して、第1固定電極部41と接続しているように図示しているが、これに限らず、第1固定電極基部を省略してもよく、適宜決めればよい。また、図1では、1つの第1固定電極固定部31を図示しているが、第1固定電極固定部31は複数有ってもよい。
【0017】
第2固定電極固定部32は基板2に固定されている。また、第2固定電極固定部32は、第2固定電極部42と接続されている。第2固定電極部42は第1支持梁21に対して第4方向DR4側に設けられる。第4方向DR4は、第1方向DR1の反対方向である。つまり、第2固定電極部42は、第2固定電極固定部32を介して基板2に固定され、プローブ電極としての役割を担う。
【0018】
可動体MBは、第1可動電極部61と、第2可動電極部62を含む。第1可動電極部61は、第1固定電極部41の固定電極に対向する可動電極を有する。第2可動電極部62は、第2固定電極部42の固定電極に対向する可動電極を有する。つまり、第1可動電極部61は、可動体MBと一体となって動くことのできるプローブ電極としての役割を担う。同様に、第2可動電極部62は、可動体MBと一体となって動くことのできるプローブ電極としての役割を担う。なお図1の例では、固定電極と可動電極はいずれも第1方向DR1において対向するが、これに限らない。例えば後述の図13図14図15等で説明されるように、第1固定電極部41の固定電極は、第1可動電極部61の可動電極と、第2方向DR2において対向するように設けられてもよい。同様に、第2固定電極部42の固定電極は、第2可動電極部62の可動電極と、第2方向DR2において対向するように設けられてもよい。
【0019】
また、図1の例において、第1固定電極部41の固定電極と、第1可動電極部61の可動電極は、第2方向DR2及び第3方向DR3に沿って所定の厚みを有している。これにより、第1固定電極部41の固定電極と、第1可動電極部61の可動電極は、所定の面積だけ対向し、所定の面積に対応する所定の物理量を検出することができる。所定の物理量は例えば静電容量等である。これにより、第1固定電極部41の固定電極と、第1可動電極部61の可動電極は、例えばプローブのP側の電極としての役割を担う。同様に、第2固定電極部42の固定電極と、第2可動電極部62の可動電極も、第2方向DR2及び第3方向DR3に沿って所定の厚みを有していることから、第2固定電極部42の固定電極と第2可動電極部62の可動電極が対向した面積に対応する所定の物理量を検出することができる。これにより、第2固定電極部42の固定電極と、第2可動電極部62の可動電極は、例えばプローブのN側の電極としての役割を担う。
【0020】
なお、ここでの厚みとはSEM(Scanning Electron Microscope)等により測定した物理的な厚みのみならず、薄膜の屈折率等の光学的特性から見積もられる膜厚を含む。また、説明の便宜上、第1固定電極部41の固定電極の第3方向DR3に沿った厚みを、第1固定電極部41の厚みと総称して呼ぶことがある。同様に、第2固定電極部42の固定電極の第3方向DR3に沿った厚みを第2固定電極部42の厚みと呼ぶことがある。同様に、第1可動電極部61の可動電極の第3方向DR3に沿った厚みを第1可動電極部61の厚みと呼ぶことがあり、第2可動電極部62の可動電極の第3方向DR3に沿った厚みを第2可動電極部62の厚みと呼ぶことがある。また、第1固定電極部41の厚み、第2固定電極部42の厚み、第1可動電極部61の厚み、第2可動電極部62の厚みは特に問わないが、互いに一定の関係があってもよく、詳細は後述する。なお、可動体MBに含まれる各構成である第1支持梁21、第1可動電極部61、第2可動電極部62等の第3方向DR3における厚みは同一にしておくことが望ましい。後述する第2支持梁22等を含む場合、櫛歯構造を含む場合等も同様である。
【0021】
そして、所定のタイミングにおいて、第1固定電極部41の固定電極と、第1可動電極部61の可動電極の対向面積に対応する所定の物理量と、第2固定電極部42の固定電極と、第2可動電極部62の可動電極の対向面積に対応する所定の物理量との合計が、所定のタイミングにおける物理量センサー1が検出する、所定の物理量となる。
【0022】
本実施形態の物理量センサー1において、第1支持梁21を回転軸とした場合の第2可動電極部62の回転トルクは、第1支持梁21を回転軸とした場合の第1可動電極部61の回転トルクよりも小さくなっている。なお以降の説明において、第1支持梁21を回転軸とした場合の第1可動電極部61の回転トルクを「第1可動電極部61の回転トルク」と呼び、第1支持梁21を回転軸とした場合の第2可動電極部62の回転トルクを、単に「第2可動電極部62の回転トルク」と呼ぶことがある。第1可動電極部61の回転トルクと第2可動電極部62の回転トルクに差をつける手法は特に問わない。例えば図1に示すように、可動体MBの回転軸としての第1支持梁21から第1可動電極部61の中心までの距離R1を、第1支持梁21から第1可動電極部61の中心までの距離R2よりも長くすることにより実現できるが、これに限られない。言い換えれば、所定の手法により第1支持梁21を回転軸とした場合の第2可動電極部62の回転トルクが、第1支持梁21を回転軸とした場合の第1可動電極部61の回転トルクよりも小さければ、図1の距離R1と距離R2は同一または略同一であっても構わない。所定の手法とは、例えば、後述する開口部Pを有することである。つまり、本実施形態において、仮に後述する開口部Pを有さない可動体MBが有った場合、当該可動体は第1支持梁21を軸として対称となってもよい。また、上述のように、距離R1を距離R2より長くすることで、第2可動電極部62の回転トルクが第1可動電極部61の回転トルクより既に小さくなっている可動体MBにおいて、さらに開口部Pを設けても構わない。或いは後述の図11で説明するように、可動体MBにおいて第1可動電極部61側に質量部となる部分を設けることで、第1可動電極部61に比べて第2可動電極部62の回転トルクを小さくしてもよい。
【0023】
例えば初期状態におけるタイミングを第1タイミングとし、物理量センサー1に第3方向DR3の加速度が生じた状態におけるタイミングを第2タイミングとする。ここでの初期状態とは重力加速度を除いて加速度の生じていない静止状態をいう。上記した回転トルクの関係により、例えば第1タイミングから第2タイミングに変化したとき、第1可動電極部61は、物理量センサー1に生じた加速度の方向と逆の方向、即ち第5方向DR5側に変位し、第2可動電極部62は第3方向DR3側に変位する。このようにすることで、第2タイミングにおいて、第1固定電極部41の固定電極と第1可動電極部61の可動電極の対向面積、第2固定電極部42の固定電極と第2可動電極部62の可動電極の対向面積が変化する。これにより、第2タイミングにおける対向面積の変化に基づく物理量の変化を検出できる。
【0024】
また、物理量センサー1に第5方向DR5の加速度が生じた状態におけるタイミングを第3タイミングとする。例えば第1タイミングから第3タイミングに変化したとき、同様の理由で、第1可動電極部61は第3方向DR3側に変位し、第2可動電極部62は第5方向DR5側に変位する。このようにすることで、第3タイミングにおいて、第1固定電極部41の固定電極と第1可動電極部61の可動電極の対向面積、第2固定電極部42の固定電極と第2可動電極部62の可動電極の対向面積が変化する。これにより、第3タイミングにおける対向面積の変化に基づく物理量の変化を検出できる。
【0025】
なお、本実施形態の物理量センサー1の可動体MBの構造は図1に限定されない。例えば、図1において可動体MBを構成する各部は第1方向DR1、第2方向DR2に沿った直線からなるように図示しているが、本実施形態の可動体MBは、これに限らず、例えば曲線形状からなる部分を含んでも構わない。
【0026】
第1配線51は、第1固定電極固定部31に接続される。例えば上記したように物理量が静電容量である場合、第1固定電極部41の固定電極と第1可動電極部61の可動電極からなるプローブ電極から、図1に不図示の差動増幅回路に対して、検出される物理量の情報を含む電気信号を伝達する役割を担う。
【0027】
また、本実施形態の物理量センサー1において、可動体MBは、第1支持梁21に対して第4方向DR4側に開口部Pを有する。例えば図1において、第2可動電極部62としての役割を担う部分は、開口部Pにより、2つに分割され、それぞれの第2可動電極部62が、第1固定部11をアンカーとし、第1支持梁21を回転軸とした揺動運動をしている。そのため、図1には、第2固定電極固定部32を介して基板2と固定された第2固定電極部42が2つ存在するように図示されている。なお、図1において例えば開口部Pに対して+Y方向側または-Y方向側の一方は、第2可動電極部62としての役割を持たなくてもよい。この場合、第2固定電極固定部32及び第2固定電極部42を、第2可動電極部62としての役割を持つ側に対向するように設ければよい。また、開口部Pは、可動体MBの耐衝撃性等に問題が生じない程度に開口されているものとする。
【0028】
そして、第1配線51は、第1固定電極固定部31から開口部Pを通過して可動体MBの外部に引き出される。これにより、第1固定電極部41の固定電極と第1可動電極部61の可動電極によって検出される物理量の情報が、基板2において可動体MBの外側へ出力される。
【0029】
このように、本実施形態の物理量センサー1は、互いに直交する3つの方向を、第1方向DR1、第2方向DR2及び第3方向DR3としたとき、第3方向DR3での物理量を検出する。物理量センサー1は、基板2と、第1固定部11と、第1支持梁21と、可動体MBと、第1固定電極固定部31と、第2固定電極固定部32と、第1固定電極部41と、第2固定電極部42と、第1配線51と、を含む。第1固定部11は、基板2に固定される。第1支持梁21は、第1固定部11に一端が接続され、第2方向DR2に沿って延びる。可動体MBは、第1支持梁21の他端に接続される。第1固定電極固定部31は基板2に固定される。第2固定電極固定部32は基板2に固定される。第1固定電極部41は、第1固定電極固定部31に接続され、第1支持梁21に対して第1方向DR1側に設けられる。第2固定電極部42は第2固定電極固定部32に接続され、第1支持梁21に対して第1方向DR1の反対方向である第4方向DR4側に設けられる。第1配線51は、第1固定電極固定部31に接続される。可動体MBは、第1固定電極部41の固定電極に対向する可動電極を有する第1可動電極部61と、第2固定電極部42の固定電極に対向する可動電極を有する第2可動電極部62と、を含む。第1支持梁21を回転軸として物理量を検出するときの第2可動電極部62の回転トルクは、第1支持梁21を回転軸として物理量を検出するときの第1可動電極部61の回転トルクよりも小さい。可動体MBは、第1支持梁21に対して第4方向DR4側に開口部Pを有し、第1配線51は、第1固定電極固定部31から開口部Pを通過して可動体MBの外部に引き出される。
【0030】
このように、本実施形態の物理量センサー1は、基板2と、可動体MBと、第1支持梁21と、第1固定電極部41と、第2固定電極部42を含むことから、両側シーソー型の物理量センサー1として機能させることができる。また、第1固定部11と、第1固定電極固定部31と、第2固定電極固定部32をさらに含むことで、第1支持梁21と、第1固定電極部41及び第2固定電極部42を基板2に固定することができる。また、第1可動電極部61と第2可動電極部62を含むことから、第1固定電極部41及び第2固定電極部42に対向するプローブ電極を形成することができる。また、第1配線51を含むことから、第1固定電極固定部31を介して第1固定電極部41を含むプローブ電極から電気信号を出力することができる。また、第2可動電極部62の回転トルクは第1可動電極部61の回転トルクよりも小さいことから、可動体MBの重量バランスが偏り加速度等の印加に対して高精度に物理量を検出できるようになる。また、第1支持梁21に対して第4方向DR4側に開口部Pを有することから、第2可動電極部62の回転トルクを減少させることができるので、可動体MBの重量バランスを容易に偏らせることができる。これにより、回転軸からの距離で可動体MBの重量バランスを偏らせなくても済ませることが可能になり、可動体MBのサイズを最適化することができる。また、第1配線51は、第1固定電極固定部31から開口部Pを通過して可動体MBの外部に引き出されるので、第1配線51の設計の自由度を向上させることができる。また、第1固定電極部41を第1可動電極部61より内側に位置させることができるので、物理量センサー1のサイズを小型化させることができる。これにより、配線の自由度の向上と、構造の適正化を両立した物理量センサー1とすることができる。
【0031】
本実施形態の手法は上記に限らず、上記した特徴に対し、さらに特徴を追加する等、種々の変形実施が可能である。例えば、第1固定電極固定部31は、基板2に直交する方向での平面視において、第1固定電極部41と第2固定電極部42の間の所定領域に設けるようにしてもよい。以降の説明において、当該所定領域を固定部配置領域ARと呼ぶ。つまり、本実施形態の物理量センサーにおいて、第1固定電極固定部31は、第1固定電極部41と第2固定電極部42の間の固定部配置領域ARに配置される。
【0032】
このようにすることで、第1固定電極部41に生じる、基板2の反りの影響を抑制することができる。基板2に配置された各種デバイスに対し、基板2の反りによって生じる影響は、基板2の中央から離れるほど大きい。その点、本実施形態の手法を適用することで、基板の中央付近に位置する固定部配置領域ARに第1固定電極固定部31を配置させることができる。これにより、例えば外部応力や温度変化により基板2に反りが発生した場合において、第1固定電極部41を含むプローブ電極から出力される電気信号の変動を抑制することができる。
【0033】
また、可動体MBは、基板2に直交する方向での平面視において、第1方向DR1または第2方向DR2に沿う部分を含めた構造としてもよい。具体的には、例えば図2に示すように、第1方向DR1に沿って延びる第1連結部81を第1支持梁21の他端に接続させてもよい。また、第1支持梁21よりも第1方向DR1側において、第2方向DR2に沿って延びる第1基部91を第1連結部81に接続させてもよく、第1支持梁21よりも第4方向DR4側において、第2方向DR2に沿って延びる第2基部92を第1連結部81に接続させてもよい。この例において、第1基部91に対し、不図示の可動電極を第3方向DR3または第5方向DR5に沿って形成することで、第1基部91は、第1可動電極部61として機能する。つまり、第1基部91の厚みは、第1可動電極部61の厚みに対応する。同様に、第2基部92に対し、不図示の可動電極を第3方向DR3または第5方向DR5に沿って形成することで、第2基部92は、第2可動電極部62として機能する。つまり、第2基部92の厚みは、第2可動電極部62の厚みに対応する。
【0034】
なお、図2において、第1基部91の一端は第1連結部81に接続され、第1基部91の他端は、C1に示すように、第4方向DR4側に向かう所定部と接続される。そして所定部は、少なくとも第1支持梁21よりも第4方向DR4側において、第1支持梁21を軸とした揺動運動ができるようになっている。なお、C1に示す所定部の構造は特に限定されず、図2に示す形状に限られない。例えば、第1基部91の他端は、円弧状の所定部と接続してもよい。このように、本実施形態の物理量センサー1において、可動体MBは、第1連結部81と、第1基部91と、第2基部92と、を含む。第1連結部81は、第1支持梁21の他端に接続され、第1方向DR1に沿って延びる。第1基部91は、第1支持梁21の第1方向DR1側に設けられ、第1連結部81に接続されて、第2方向DR2に沿って延び、第1可動電極部61の可動電極が設けられる。第2基部92は、第1支持梁21の第4方向DR4側に設けられ、第1連結部81に接続されて、第2方向DR2に沿って延び、第2可動電極部62の可動電極が設けられる。このようにすることで、第1基部91を第1可動電極部61として機能させることができるとともに、第2基部92を第2可動電極部62として機能させることができる。
【0035】
また、図3に示すように、第1配線51を第1固定電極端子71に接続してもよい。第1固定電極端子71は、可動体MBの外側に設けられ、不図示の外部装置との接続に用いられる。このように、本実施形態の物理量センサー1は、第1配線51の他端に接続され、可動体MBの外側に設けられる第1固定電極端子71を含む。このようにすることで、物理量センサー1の構造を適切にしつつ、可動体MBの内側に位置する第1固定電極部41から可動体MBの外側に引き出された第1配線51を外部機器等に接続することができる。
【0036】
また、図1に示すように、さらに第2固定電極固定部32を固定部配置領域ARに配置させてもよい。また、例えば図4に示すように、第2配線52を第2固定電極固定部32に接続させ、当該第2配線52を、開口部Pを通過して可動体MBの外部に引き出してもよい。第2配線52は、前述の第1配線51と同様の役割を担う。このように、本実施形態の物理量センサー1は、第2固定電極固定部32に接続される第2配線52を含み、第2固定電極固定部32は、固定部配置領域ARに配置され、第2配線52は、第2固定電極固定部32から開口部Pを通過して可動体MBの外部に引き出される。このようにすることで、第2配線52の設計の自由度を向上させるとともに、固定部配置領域ARに第1固定電極固定部31に加えて第2固定電極固定部32が配置されることで、第2固定電極部42に生じる、基板2の反りの影響を抑制することができる。即ち固定部配置領域ARに固定電極部の固定部がまとめて配置されることで、基板2の反りの影響を効果的に抑制できるようになる。
【0037】
また、図1に示すように、さらに第1固定部11を固定部配置領域ARに配置させてもよい。また、図5に示すように、第3配線53を第1固定部11に接続させ、当該第3配線53を、開口部Pを通過して可動体MBの外部に引き出してもよい。つまり、本実施形態の物理量センサー1は、第1固定部11に接続される第3配線53を含む。第1固定部11は、固定部配置領域ARに配置され、第3配線53は、第1固定部11から開口部Pを通過して可動体の外部に引き出される。このようにすることで、第3配線53の設計の自由度を向上させるとともに、第1支持梁21に生じる、基板2の反りの影響を抑制することができる。即ち固定部配置領域ARに固定電極部の固定部と可動電極部の固定部がまとめて配置されることで、基板2の反りの影響を効果的に抑制できるようになる。
【0038】
また、図6に示すように、第3配線53を可動電極端子73に接続してもよい。可動電極端子73は、可動体MBの外側に設けられ、不図示の外部装置との接続に用いられる。このように、本実施形態の物理量センサー1は、第3配線53の他端に接続され、可動体MBの外側に設けられる可動電極端子73を含む。このようにすることで、可動体MBの外側に引き出された第3配線53を外部機器等に接続することができる。
【0039】
また、図7に示すように、第2配線52をさらに第2固定電極端子72に接続してもよい。つまり、第1配線51、第2配線52及び第3配線53のいずれも、開口部Pを通過して可動体MBの外部に引き出ず例としてもよい。なお、この例においては図7のC2に示すように、第2配線52が第1配線51及び第3配線53と交差し得るが、図8のC3に示すように、第2配線52は第1配線51及び第3配線53と絶縁されている。なお、図8の二点破線で囲う領域は、より具体的には、図9のC5に示すように、第5方向DR5に溝を形成した後に絶縁材が埋め込まれた構造になっている。また、第2配線52と第1配線51及び第3配線53との間には、C6で示す当該絶縁材によって絶縁されている。また、第2配線52はC7に示す層とコンタクトすることで導通されている。C7の層は、可動体MB等と同じ材料の層、すなわちシリコン層である。これにより、第1配線51、第2配線52及び第3配線53を、互いにショートすることなく可動体MBの外部に引き出すことができる。
【0040】
また、図10に示すように、第1支持梁21と第2支持梁22によって、可動体MBのシーソー運動の復元力をもたらすようにしてもよい。第2支持梁22は、第1支持梁21と同様に、一端が第2固定部12に接続され、他端に可動体MBが接続されている。第2固定部12は、基板2に固定され、第1固定部11と同様に可動体MBのシーソー運動におけるアンカーとしての役割を担う。つまり、第2固定部12は、第1固定部11と同様に、第2支持梁22を介して、可動体MBを基板2に接続させる役割を担っている。
【0041】
また、図10に示すように、さらに第2固定部12を固定部配置領域ARに配置させてもよい。また、第4配線54の一端を第2固定部12に接続させ、当該第4配線54を、開口部Pを通過して可動体MBの外部に引き出すようにしてもよい。また、図示は省略するが、第4配線54の他端を例えば前述の可動電極端子73に接続するように、可動体MBの外部に引き出してもよい。この場合、図8図9で示した手法により、第1配線51等と絶縁させつつ、第4配線54と可動電極端子73の接続が実現できる。このように、本実施形態の物理量センサー1は、基板2に固定される第2固定部12と、第2固定部12に一端が接続され、他端が可動体MBに接続される第2支持梁22と、第2固定部12に接続される第4配線54を含む。第2固定部12は、固定部配置領域ARに配置され、第4配線54は、第2固定部12から開口部Pを通過して可動体MBの外部に引き出される。このようにすることで、第4配線54の設計の自由度を向上させるとともに、第2支持梁22に生じる、基板2の反りの影響を抑制することができる。即ち固定部配置領域ARに固定電極部の固定部と可動電極部の固定部がまとめて配置されることで、基板2の反りの影響を効果的に抑制できるようになる。
【0042】
また、例えば図11に示すように、可動体MBは第3基部93をさらに含んでもよい。第3基部93は、第1連結部81に接続されて、第2方向DR2に沿って延び、第1基部91よりも第4方向DR4側に位置する。また、第3基部93に対し、不図示の可動電極を第3方向DR3または第5方向DR5に沿って形成することで、第3基部93を第1可動電極部61として機能させてもよい。このように、本実施形態の物理量センサー1において、可動体MBは、第1基部91の第1方向DR1側に設けられ、第1連結部81に接続されて、第2方向DR2に沿って延び、第1可動電極部61の可動電極が設けられる第3基部93を含む。このようにすることで、第3基部93が可動体の質量部となって、第1可動電極部61の回転トルクを増大させることができる。これにより、物理量センサー1をより高感度化させることができる。なお、図示は省略しているが、C10に示す位置に第3基部93と同様の基部を設けてもよい。C10の位置は、第3基部93に対し、可動体MBのY方向の中心を通るY軸対称となる位置である。この場合、第3基部93は開口しているように見えるが、それは構わない。第3基部93は第1可動電極部61の回転トルクを増大させるための補助的なものだからである。
【0043】
また、本実施形態の物理量センサー1の可動体MBは、第1方向に沿って延びる部分と第2支持梁22が接続している構造をとるようにしてもよい。具体的には、図12に示すように、第2支持梁22の一端は第2固定部12と接続し、他端が第2連結部82と接続している。第2連結部82は、第1方向DR1に沿って延び、第2支持梁22の第1方向DR1側に第4基部94と接続し、第2支持梁22の第4方向DR4側に第5基部95と接続している。第2支持梁22の第1方向DR1側において、前述の第1基部91と第4基部94は一体化されてシーソー運動する。一方、前述の第2基部92と第5基部95は一体化されず、第2基部92と第5基部95の間に開口部Pが設けられる。つまり、第2基部92と第5基部95は別々に第2可動電極部62としてシーソー運動する。
【0044】
このように、本実施形態の物理量センサー1は、基板2に固定される第2固定部12と、第2固定部12に一端が接続され、他端が可動体MBに接続される第2支持梁22と、を含む、可動体MBは、第1連結部81と、第2連結部82と、第1基部91と、第2基部92と、第4基部94と、第5基部95と、を含む、可動体MBの開口部Pは、第2基部92と第5基部95との間に設けられる。第1連結部81は、第1支持梁21の他端に接続され、第1方向DR1に沿って延びる。第2連結部82は、第2支持梁22の他端に接続され、第1方向DR1に沿って延びる。第1基部91は、第1支持梁21の第1方向DR1側に設けられ、第1連結部81に接続されて、第2方向DR2に沿って延び、第1可動電極部61の可動電極が設けられる。第2基部92は、第1支持梁21の第4方向DR4側に設けられ、第1連結部81に接続されて、第2方向DR2に沿って延び、第2可動電極部62の可動電極が設けられる。第4基部94は、第2支持梁22の第1方向DR1側に設けられ、第2連結部82に接続されて、第2方向DR2に沿って延び、第1可動電極部61の可動電極が設けられる。第5基部95は、第2支持梁22の第4方向DR4側に設けられ、第2連結部82に接続されて、第2方向DR2に沿って延び、第2可動電極部62の可動電極が設けられる。このようにすることで、第2支持梁22に対して第2連結部82を介して第4基部94、第5基部95を接続した可動体MBを構成し、第4基部94を第1可動電極部61として機能させ、第5基部95を第2可動電極部62として機能させることができる。
【0045】
また、第1可動電極部61はいわゆる櫛歯構造にして機能させてもよい。具体的には、図13のC21に示すように、第1基部91からさらに第4方向DR4方向に沿って延びる櫛歯部分を複数設け、当該櫛歯部分の側面に可動電極を設ける。また、第1固定電極部41は、当該櫛歯部分に対応するように、第1方向DR1に沿った櫛歯構造とし、かかる櫛歯部分の側面に固定電極を設ける。これにより、第1固定電極部41の固定電極と第1可動電極部61の可動電極は、Y軸方向すなわち第2方向DR2において対向することにより、プローブ電極として機能する。同様に、図13のC22に示すように、第2固定電極部42と第2可動電極部62を櫛歯構造にして機能させてもよい。この場合、第2基部92からさらに第1方向DR1方向に沿って延びる櫛歯部分が複数設けられる。なお、櫛歯の数は図13に示す数に限られず、適宜調整することができる。このように、本実施形態の物理量センサー1において、第1可動電極部61の可動電極は、第1基部91から第4方向DR4に沿って延び、第1固定電極部41の固定電極と第2方向DR2において対向する。第2可動電極部62の可動電極は、第2基部92から第1方向DR1に沿って延び、第2固定電極部42の固定電極と第2方向DR2において対向する。このようにすることで、第1固定電極部41の固定電極に対向する、第1可動電極部61の可動電極の面積を増大させることができる。同様に、第2固定電極部42の固定電極に対向する、第2可動電極部62の可動電極の面積を増大させることができる。
【0046】
また、図14のC23に示すように、前述の第3基部93を櫛歯構造にしてもよい。この場合、第3基部93からさらに第1方向DR1方向に沿って延びる櫛歯部分が複数設けられる。なお、櫛歯の数は図14に示す数に限られず、適宜調整することができる。このように、本実施形態の物理量センサー1において、第1可動電極部61の可動電極は、第3基部93から第1方向DR1に沿って延び、第1固定電極部41の固定電極と第2方向において対向する。このようにすることで、第1固定電極部41の固定電極に対向する、第1可動電極部61の可動電極の面積をさらに増大させることができる。
【0047】
また、図1図14で述べた手法は、それぞれを任意に組み合わせてもよい。例えば図12の例に、図11の第3基部93を含ませてもよい。また、例えば図12図13を組み合わせたことにより、第5基部95と櫛歯構造からなる第2可動電極部62として機能させてもよい。また、さらに図7の特徴を組み合わせ、例えば図15のような物理量センサー1としてもよい。
【0048】
また、本実施形態の手法は上記に限られない。例えば第1固定電極部41の厚みと第1可動電極部61の厚みを特に問わないものとしたが、一定の関係を持たせてもよい。一定の関係とは、例えば、一方の厚みを他方の厚みよりも厚くすること、一方と他方の端部の位置を同じすること等である。同様に、第2固定電極部42の厚みと第2可動電極部62の厚みを特に問わないものとしたが、一定の関係を持たせてもよい。なお、例えば図13のように第2固定電極部42と第2可動電極部62が櫛歯構造を持つ場合、図16に示すように、第2固定電極部42の櫛歯部分をエッチングすることで、第2固定電極部42の厚みよりも第2可動電極部62の厚みを相対的に厚くすることができる。
【0049】
図17は、可動体MBのシーソー動作による、第3方向DR3における第1固定電極部41及び第1可動電極部61の位置関係の変化の例を説明する図である。なお、図17において第5方向DR5の側は、裏面側ともいうことができる。図18以降においても同様である。図17のA0とA1に示すように、初期状態において、第1固定電極部41及び第1可動電極部61の第5方向DR5での端部の位置は一致している。また、第1可動電極部61の第3方向DR3での厚みは、第1固定電極部41の第3方向DR3での厚みよりも大きい。そのため、第1可動電極部61の第3方向DR3での端部の位置は、第1固定電極部41の第3方向DR3での端部の位置よりも、第3方向DR3側に位置している。
【0050】
例えば初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、A2に示すように、第1可動電極部61は第5方向DR5側へ変位する。一方、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、A3に示すように、第1可動電極部61は第3方向DR3側へ変位する。B1とB2を比較すると、初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積は維持されていることが分かる。一方、B1とB3を比較すると、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積は減少していることが分かる。つまり、図17の例では、第5方向DR5への加速度が生じた場合、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積の減少による物理量の変化を検出することで、第5方向DR5の物理量を検出できるようになっている。
【0051】
図18は、第2固定電極部42及び第2可動電極部62の、第3方向DR3における位置関係の例を説明する図である。図18のA10とA11に示すように、初期状態において、第2固定電極部42及び第2可動電極部62の第5方向DR5での端部の位置は一致している。また、第2可動電極部62の第3方向DR3での厚みは、第2固定電極部42の第3方向DR3での厚みよりも大きい。そのため、第2可動電極部62の第3方向DR3での端部の位置は、第2固定電極部42の第3方向DR3での端部の位置よりも、第3方向DR3側に位置している。
【0052】
例えば初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、A12に示すように、第2可動電極部62は第3方向DR3側へ変位する。一方、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、A13に示すように、第2可動電極部62は第5方向DR5側へ変位する。B11とB12を比較すると、初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積は減少していることが分かる。一方、B11とB13を比較すると、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積は維持されていることが分かる。つまり、図18の例では、第3方向DR3への加速度が生じた場合、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積の減少による物理量の変化を検出することで、第3方向DR3の物理量を検出できるようになっている。
【0053】
このように、本実施形態の物理量センサー1において、第1可動電極部61の第3方向DR3での厚みは第1固定電極部41の第3方向DR3での厚みより大きく、第2可動電極部62の第3方向DR3での厚みを、第2固定電極部42の第3方向DR3での厚みより大きい。このようにすることで、第3方向DR3及び第5方向DR5の両方の物理量の変化を検出できる。また、第1固定電極部41と第1可動電極部61との裏面の第3方向での位置が一致し、第2固定電極部42と第2可動電極部62との裏面の第3方向での位置が一致する。このようにすることで、第1固定電極部41、第2固定電極部42、第1可動電極部61及び第2可動電極部62の各々を構成する電極材料の同一のプロセスで形成することで、プローブ電極の裏面側が面一になる構成を実現できる。これにより、製造プロセスを容易化できる。
【0054】
なお、第1固定電極部41及び第1可動電極部61の、第3方向DR3における厚み及び位置関係は図19に示す例のようにしてもよい。同様に、第2固定電極部42及び第2可動電極部62の、第3方向DR3における厚み及び位置関係は図20に示す例のようにしてもよい。図19の例は、第1固定電極部41の第3方向DR3での厚みが第1可動電極部61の第3方向DR3での厚みより大きい点で、図17の例と逆になっている。同様に、図20の例は、第2固定電極部42の第3方向DR3での厚みは、第2可動電極部62の第3方向DR3での厚みより大きい点で、図18の例と逆になっている。
【0055】
図19のA20とA21に示すように、初期状態において、第1固定電極部41及び第1可動電極部61の第5方向DR5での端部の位置は一致していることは、図17と同様である。また、前述のように第1固定電極部41の第3方向DR3での厚みは、第1可動電極部61の第3方向DR3での厚みよりも大きい。そのため、第1固定電極部41の第3方向DR3での端部の位置は、第1可動電極部61の第3方向DR3での端部の位置よりも、第3方向DR3側に位置している。
【0056】
例えば初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、A22に示すように、第1可動電極部61は第5方向DR5側へ変位する。一方、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、A23に示すように、第1可動電極部61は第3方向DR3側へ変位する。B21とB22を比較すると、初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積は減少していることが分かる。一方、B21とB23を比較すると、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積は維持されていることが分かる。つまり、図19の例では、第3方向DR3への加速度が生じた場合、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積の減少による物理量の変化を検出することで、第3方向DR3の物理量を検出できるようになっている点で、図17の例と異なる。
【0057】
図20のA30とA31に示すように、初期状態において、第2固定電極部42及び第2可動電極部62の第5方向DR5での端部の位置は一致している。また、前述のように第2固定電極部42の第3方向DR3での厚みは、第2可動電極部62の第3方向DR3での厚みよりも大きい。そのため、第2固定電極部42の第3方向DR3での端部の位置は、第2可動電極部62の第3方向DR3での端部の位置よりも、第3方向DR3側に位置している。
【0058】
例えば初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、A32に示すように、第2可動電極部62は第3方向DR3側へ変位する。一方、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、A33に示すように、第2可動電極部62は第5方向DR5側へ変位する。B31とB32を比較すると、初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積は維持されていることが分かる。一方、B31とB33を比較すると、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積は減少していることが分かる。つまり、図20の例では、第5方向DR5への加速度が生じた場合、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積の減少による物理量の変化を検出することで、第5方向DR5の物理量を検出できるようになっている点で、図18の例と異なる。
【0059】
また、第1固定電極部41及び第1可動電極部61の、第3方向DR3における厚み及び位置関係は図21に示す例のようにしてもよい。同様に、第2固定電極部42及び第2可動電極部62の、第3方向DR3における厚み及び位置関係は図22に示す例のようにしてもよい。
【0060】
図21のA40とA41に示すように、初期状態において、第1固定電極部41及び第1可動電極部61の第5方向DR5での端部の位置は異なるようになっている。また、第1固定電極部41及び第1可動電極部61の第3方向DR3での端部の位置も異なるようになっている。
【0061】
例えば初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、A42に示すように、第1可動電極部61は第5方向DR5側へ変位する。一方、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、A43に示すように、第1可動電極部61は第3方向DR3側へ変位する。B41とB42を比較すると、初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積は増加していることが分かる。一方、B41とB43を比較すると、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積は減少していることが分かる。つまり、図21の例では、第3方向DR3及び第5方向DR5のうちいずれの方向の加速度が生じた場合においても、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積の変化による物理量の変化を検出できるようになっている点で、図17図19の例と異なる。言い換えれば、図21の例は、図17図19の例と比較して検出感度が高いと言うことができる。
【0062】
図22のA50とA51に示すように、初期状態において、第2固定電極部42及び第2可動電極部62の第5方向DR5での端部の位置は異なるようになっている。また、第2固定電極部42及び第2可動電極部62の第3方向DR3での端部の位置も異なるようになっている。
【0063】
例えば初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、A52に示すように、第2可動電極部62は第3方向DR3側へ変位する。一方、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、A53に示すように、第2可動電極部62は第5方向DR5側へ変位する。B51とB52を比較すると、初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積は減少していることが分かる。一方、B51とB53を比較すると、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積は増加していることが分かる。つまり、図22の例では、第3方向DR3及び第5方向DR5のうちいずれの方向の加速度が生じた場合においても、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積の変化による物理量の変化を検出できるようになっている点で、図18図20の例と異なる。言い換えれば、図22の例は、図18図20の例と比較して検出感度が高いと言うことができる。
【0064】
また、第1固定電極部41及び第1可動電極部61の、第3方向DR3における厚み及び位置関係は図23に示す例のようにしてもよい。同様に、第2固定電極部42及び第2可動電極部62の、第3方向DR3における厚み及び位置関係は図24に示す例のようにしてもよい。図23の例は、図21の例と比較すると、第1固定電極部41及び第1可動電極部61の上下関係が逆になっている点で異なる。同様に、図24の例は、図22の例と比較すると、第2固定電極部42及び第2可動電極部62の上下関係が逆になっている点で異なる。
【0065】
図23において、例えば初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、A62に示すように、第1可動電極部61は第5方向DR5側へ変位する。一方、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、A63に示すように、第1可動電極部61は第3方向DR3側へ変位する。B61とB62を比較すると、初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積は減少していることが分かる。一方、B61とB63を比較すると、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積は増加していることが分かる。つまり、図23の例では、第3方向DR3及び第5方向DR5のうちいずれの方向の加速度が生じた場合においても、第1固定電極部41と第1可動電極部61の対向面積の変化による物理量の変化を検出できるようになっている点で、図21の例と共通する。
【0066】
図24において、初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、A72に示すように、第2可動電極部62は第3方向DR3側へ変位する。一方、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、A73に示すように、第2可動電極部62は第5方向DR5側へ変位する。B71とB72を比較すると、初期状態から第3方向DR3の加速度が印加された場合、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積は増加していることが分かる。一方、B71とB73を比較すると、初期状態から第5方向DR5の加速度が印加された場合、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積は減少していることが分かる。つまり、図24の例では、第3方向DR3及び第5方向DR5のうちいずれの方向の加速度が生じた場合においても、第2固定電極部42と第2可動電極部62の対向面積の変化による物理量の変化を検出できるようになっている点で、図22の例と共通する。
【0067】
このように、図21図24のような例とすることで、検出感度をより高くすることができるとともに、検出部のバリエーションをさらに増やすことができる。
【0068】
また、例えば図25に示すように、基板2に直交する方向での平面視において、第1固定部11を可動体MBの外側に配置させる構成例としてもよい。なお、図示は省略するが、物理量センサー1が第2支持梁22をさらに含む場合、第2固定部12を可動体MBの外側に配置させる構成例としてもよい。また、例えば図26に示すように、基板2に直交する方向での平面視において、第2固定電極固定部32を可動体MBの外側に配置させる構成例にしてもよい。また、図示は省略するが、図25の例と図26の例を組み合わせて、第1固定部11、第2固定部12及び第2固定電極固定部32のいずれも可動体MBの外側に配置させる構成例にしてもよい。
【0069】
また、例えば図27のC31及びC32に示すように、可動体MBの回転軸である第1支持梁21より第4方向DR4側に、所定の溝部を設けてもよい。溝部は、可動体MBの一部が凹んだ形状になっている。このようにすることで、第2可動電極部62の回転トルクを減らすことができるので、物理量センサー1の感度をより高くすることができる。なお、溝部の構造は図27のC31及びC32に限られず適宜変更でき、例えば図28のC41及びC42に示す構造にしてもよい。
【0070】
また、本実施形態の手法は、例えば図29図30の慣性計測装置2000によって実現してもよい。つまり、本実施形態の慣性計測装置2000は、上記した物理量センサー1と当該物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部としての制御IC2360を含む。このようにすることで、上記した物理量センサー1を含む加速度センサーユニット2350を用いているため、上記した物理量センサー1の効果を享受でき、高精度化等を実現できる慣性計測装置2000を提供できる。慣性計測装置2000(IMU:Inertial Measurement Unit)は、自動車やロボットなどの運動体の姿勢や挙動などの慣性運動量を検出する装置である。慣性計測装置2000は、3軸に沿った方向の加速度ax、ay、azを検出する加速度センサーと、3軸回りの角速度ωx,ωy,ωzを検出する角速度センサーと、を備えた、いわゆる6軸モーションセンサーである。
【0071】
慣性計測装置2000は、平面形状が略正方形の直方体である。また正方形の対角線方向に位置する2ヶ所の頂点近傍に、マウント部としてのネジ穴2110が形成されている。この2ヶ所のネジ穴2110に2本のネジを通して、自動車などの被装着体の被装着面に慣性計測装置2000を固定することができる。なお、部品の選定や設計変更により、例えば、スマートフォンやデジタルカメラに搭載可能なサイズに小型化することも可能である。
【0072】
慣性計測装置2000は、アウターケース2100と、接合部材2200と、センサーモジュール2300を有し、アウターケース2100の内部に、接合部材2200を介在させて、センサーモジュール2300を挿入した構成となっている。センサーモジュール2300は、インナーケース2310と回路基板2320を有している。インナーケース2310には、回路基板2320との接触を防止するための凹部2311や、後述するコネクター2330を露出させるための開口2312が形成されている。そしてインナーケース2310の下面には、接着剤を介して回路基板2320が接合されている。
【0073】
図30に示すように、回路基板2320の上面には、コネクター2330、Z軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340z、X軸、Y軸及びZ軸の各軸方向の加速度を検出する加速度センサーユニット2350などが実装されている。また回路基板2320の側面には、X軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340x及びY軸回りの角速度を検出する角速度センサー2340yが実装されている。
【0074】
加速度センサーユニット2350は、前述したZ軸方向の加速度を測定するための物理量センサー1を少なくとも含み、必要に応じて、一軸方向の加速度を検出したり、二軸方向や三軸方向の加速度を検出したりすることができる。なお角速度センサー2340x、2340y、2340zとしては、特に限定されないが、例えばコリオリの力を利用した振動ジャイロセンサーを用いることができる。
【0075】
また回路基板2320の下面には、制御IC2360が実装されている。物理量センサー1から出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部としての制御IC2360は、例えばMCU(Micro Controller Unit)であり、不揮発性メモリーを含む記憶部や、A/Dコンバーターなどを内蔵しており、慣性計測装置2000の各部を制御する。なお、回路基板2320には、その他にも複数の電子部品が実装されている。
【0076】
なお慣性計測装置2000は図29図30の構成には限定されない。例えば慣性計測装置2000に、角速度センサー2340x、2340y、2340zを設けずに、慣性センサーとして物理量センサー1だけを設ける構成としてもよい。この場合には、例えば物理量センサー1と、制御部を実現する制御IC2360を、収容容器であるパッケージに収容することで慣性計測装置2000を実現すればよい。
【0077】
以上に説明したように、本実施形態の物理量センサーは、互いに直交する3つの方向を、第1方向、第2方向及び第3方向としたとき、第3方向での物理量を検出する。物理量センサーは、基板と、第1固定部と、第1支持梁と、可動体と、第1固定電極固定部と、第2固定電極固定部と、第1固定電極部と、第2固定電極部と、第1配線と、を含む。第1固定部は、基板に固定される。第1支持梁は、第1固定部に一端が接続され、第2方向に沿って延びる。可動体は、第1支持梁の他端に接続される。第1固定電極固定部は基板に固定される。第2固定電極固定部は基板に固定される。第1固定電極部は、第1固定電極固定部に接続され、第1支持梁に対して第1方向側に設けられる。第2固定電極部は第2固定電極固定部に接続され、第1支持梁に対して第1方向の反対方向である第4方向側に設けられる。第1配線は、第1固定電極固定部に接続される。可動体は、第1固定電極部の固定電極に対向する可動電極を有する第1可動電極部と、第2固定電極部の固定電極に対向する可動電極を有する第2可動電極部と、を含む。第1支持梁を回転軸として物理量を検出するときの第2可動電極部の回転トルクは、第1支持梁を回転軸として物理量を検出するときの第1可動電極部の回転トルクよりも小さい。可動体は、第1支持梁に対して第4方向側に開口部を有し、第1配線は、第1固定電極固定部から開口部を通過して可動体の外部に引き出される。
【0078】
このように、第2可動電極部の回転トルクは第1可動電極部の回転トルクよりも小さいことから、可動体の重量バランスが偏り加速度等の印加に対して高精度に物理量を検出できるようになる。また、第1支持梁に対して第4方向側に開口部を有することから、第2可動電極部の回転トルクを減少させることができるので、可動体の重量バランスを容易に偏らせることができる。これにより、回転軸からの距離で可動体の重量バランスを偏らせなくても済ませること可能になり、可動体MBのサイズを最適化することができる。また、第1配線は、第1固定電極固定部から開口部を通過して可動体の外部に引き出されるので、第1配線の設計の自由度を向上させることができる。また、第1固定電極部を第1可動電極部より内側に位置させることができるので、物理量センサーのサイズを小型化させることができる。これにより、配線の自由度の向上と、構造の適正化を両立した物理量センサーとすることができる。
【0079】
また、第1固定電極固定部は、第1固定電極部と第2固定電極部の間の固定部配置領域に配置されてもよい。
【0080】
このようにすることで、第1固定電極部に生じる基板の反りの影響を抑制することができる。
【0081】
また、物理量センサーは、第2固定電極固定部に接続される第2配線を含んでもよく、第2固定電極固定部は、固定部配置領域に配置されてもよく、第2配線は、第2固定電極固定部から開口部を通過して可動体の外部に引き出されてもよい。
【0082】
このようにすることで、第2配線の設計の自由度を向上させるとともに、固定部配置領域に第1固定電極固定部に加えて第2固定電極固定部が配置されることで、第2固定電極部に生じる、基板の反りの影響を抑制することができる。
【0083】
また、物理量センサーは、第1固定部に接続される第3配線を含んでもよく、第1固定部は、固定部配置領域に配置されてもよく、第3配線は、第1固定部から開口部を通過して可動体の外部に引き出されてもよい。
【0084】
このようにすることで、第3配線の設計の自由度を向上させるとともに、第1支持梁に生じる、基板の反りの影響を抑制することができる。
【0085】
また、物理量センサーは、第3配線の他端に接続され、可動体の外側に設けられる可動電極端子を含んでもよい。
【0086】
このようにすることで、可動体の外側に引き出された第3配線を外部機器等に接続することができる。
【0087】
また、物理量センサーは、基板に固定される第2固定部と、第2固定部に一端が接続され、他端が可動体に接続される第2支持梁と、第2固定部に接続される第4配線を含んでもよく、第2固定部は、固定部配置領域に配置されてもよく、第4配線は、第2固定部から開口部を通過して可動体の外部に引き出されてもよい。
【0088】
このようにすることで、第4配線の設計の自由度を向上させるとともに、第2支持梁に生じる、基板の反りの影響を抑制することができる。
【0089】
また、物理量センサーは、第1配線の他端に接続され、可動体の外側に設けられる第1固定電極端子を含んでもよい。
【0090】
このようにすることで、物理量センサー1の構造を適切にしつつ、可動体の内側に位置する第1固定電極部から可動体MBの外側に引き出された第1配線を外部機器等に接続することができる。
【0091】
また、可動体は、第1連結部と、第1基部と、第2基部と、を含んでもよい。第1連結部は、第1支持梁の他端に接続され、第1方向に沿って延びる。第1基部は、第1支持梁の第1方向側に設けられ、第1連結部に接続されて、第2方向に沿って延び、第1可動電極部の可動電極が設けられる。第2基部は、第1支持梁の第4方向側に設けられ、第1連結部に接続されて、第2方向に沿って延び、第2可動電極部の可動電極が設けられる。
【0092】
このようにすることで、第1基部を第1可動電極部として機能させることができるとともに、第2基部を第2可動電極部として機能させることができる。
【0093】
また、第1可動電極部の可動電極は、第1基部から第4方向に沿って延び、第1固定電極部の固定電極と第2方向において対向してもよく、第2可動電極部の可動電極は、第2基部から第1方向に沿って延び、第2固定電極部の固定電極と第2方向において対向してもよい。
【0094】
このようにすることで、第1固定電極部の固定電極に対向する、第1可動電極部の可動電極の面積を増大させることができる。同様に、第2固定電極部の固定電極に対向する、第2可動電極部の可動電極の面積を増大させることができる。
【0095】
また、可動体は、第1基部の第4方向側に設けられ、第1連結部に接続されて、第2方向に沿って延び、第1可動電極部の可動電極が設けられる第3基部を含んでもよい。
【0096】
このようにすることで、第1可動電極部の回転トルクを増大させることができる。これにより、物理量センサーをより高感度化させることができる。
【0097】
また、第1可動電極部の可動電極は、第3基部から第1方向に沿って延び、第1固定電極部の固定電極と第2方向において対向してもよい。
【0098】
このようにすることで、第1固定電極部の固定電極に対向する、第1可動電極部の可動電極の面積をさらに増大させることができる。
【0099】
また、物理量センサーは、基板に固定される第2固定部と、第2固定部に一端が接続され、他端が可動体に接続される第2支持梁と、を含んでもよく、可動体は、第1連結部と、第2連結部と、第1基部と、第2基部と、第4基部と、第5基部と、を含んでもよく、可動体の開口部は、第2基部と第5基部との間に設けられてもよい。第1連結部は、第1支持梁の他端に接続され、第1方向に沿って延びる。第2連結部は、第2支持梁の他端に接続され、第1方向に沿って延びる。第1基部は、第1支持梁の第1方向側に設けられ、第1連結部に接続されて、第2方向に沿って延び、第1可動電極部の可動電極が設けられる。第2基部は、第1支持梁の第4方向側に設けられ、第1連結部に接続されて、第2方向に沿って延び、第2可動電極部の可動電極が設けられる。第4基部は、第2支持梁の第1方向側に設けられ、第2連結部に接続されて、第2方向に沿って延び、第1可動電極部の可動電極が設けられる。第5基部は、第2支持梁の第4方向側に設けられ、第2連結部に接続されて、第2方向に沿って延び、第2可動電極部の可動電極が設けられる。
【0100】
このようにすることで、第2支持梁に対して第2連結部を介して第4基部、第5基部を接続した可動体を構成し、第4基部を第1可動電極部として機能させ、第5基部を第2可動電極部として機能させることができる。
【0101】
また、本実施形態の慣性計測装置は、上記した物理量センサーと、当該物理量センサーから出力された検出信号に基づいて制御を行う制御部と、を含む。
【0102】
なお、上記のように本実施形態について詳細に説明したが、本開示の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるであろう。従って、このような変形例はすべて本開示の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また本実施形態及び変形例の全ての組み合わせも、本開示の範囲に含まれる。また物理量センサー、慣性計測装置等の構成及び動作等も、本実施形態で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0103】
1…物理量センサー、2…基板、11…第1固定部、12…第2固定部、21…第1支持梁、22…第2支持梁、31…第1固定電極固定部、32…第2固定電極固定部、41…第1固定電極部、42…第2固定電極部、51…第1配線、52…第2配線、53…第3配線、54…第4配線、61…第1可動電極部、62…第2可動電極部、71…第1固定電極端子、72…第2固定電極端子、73…可動電極端子、81…第1連結部、82…第2連結部、91…第1基部、92…第2基部、93…第3基部、94…第4基部、95…第5基部、2000…慣性計測装置、2100…アウターケース、2110…ネジ穴、2200…接合部材、2300…センサーモジュール、2310…インナーケース、2311…凹部、2312…開口、2320…回路基板、2330…コネクター、2340x,2340y,2340z…角速度センサー、2350…加速度センサーユニット、DR1…第1方向、DR2…第2方向、DR3…第3方向、DR4…第4方向、DR5…第5方向、MB…可動体、P…開口部、R1,R2…距離、ax,ay,az…加速度、ωx…角速度
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