(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056285
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】天板付什器及び什器システム
(51)【国際特許分類】
A47B 31/00 20060101AFI20240416BHJP
A47B 83/02 20060101ALI20240416BHJP
A61G 12/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A47B31/00 G
A47B83/02
A61G12/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163066
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】山根 隆雅
(72)【発明者】
【氏名】小林 遣
【テーマコード(参考)】
3B260
4C341
【Fターム(参考)】
3B260AC01
4C341LL01
(57)【要約】
【課題】物品収容空間内に収容された物品と執務者の下肢との干渉を抑制できる天板付什器及び什器システムを提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る天板付什器は、天板を有する什器本体と、什器本体を支持するとともに床面上を移動可能な走行部と、を備えている。什器本体には、少なくとも後方に開口する下肢収容空間と、下肢収容空間の前方において左右方向の少なくとも一方側に開口する物品収容空間と、が形成されている。什器本体は、下肢収容空間と物品収容空間との間を前後方向に仕切る仕切板を備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板を有する什器本体と、
前記什器本体を支持するとともに床面上を移動可能な走行部と、を備え、
前記什器本体には、
少なくとも後方に開口する下肢収容空間と、
前記下肢収容空間の前方において左右方向の少なくとも一方側に開口する物品収容空間と、が形成され、
前記什器本体は、前記下肢収容空間と前記物品収容空間との間を前後方向に仕切る仕切板を備えている天板付什器。
【請求項2】
前記什器本体は、前記下肢収容空間の内外を左右方向に仕切る左右仕切部を備えている請求項1に記載の天板付什器。
【請求項3】
前記什器本体は、前記物品収容空間の内外を前後方向に仕切る前方仕切部を備えている請求項1又は請求項2に記載の天板付什器。
【請求項4】
前記下肢収容空間は、前記什器本体の後方及び下方に向けて連続して開口している請求項1又は請求項2に記載の天板付什器。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の天板付什器と、
前記下肢収容空間の内部で前記什器本体に支持されて前記天板付什器と一体に移動可能な収容状態、及び前記下肢収容空間の外部に引き出された使用状態の間を切替可能な椅子と、を備える什器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天板付什器及び什器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば下記特許文献1には、什器本体と、什器本体を支持するキャスタと、を備えるカート装置が開示されている。什器本体は、上下方向に延びる支柱と、支柱の上端部に設けられた天板と、支柱のうち天板よりも下方に位置する部分に設けられた物品載置部と、を備えている。カート装置は、天板の後端部に設けられた把持部を介して押したり引いたりされることで、前進、後退又は旋回できるようになっている。これにより、カート装置は、必要な物品を天板や物品載置部上に載置した状態で、執務空間(オフィスや病院、公共施設等)を移動することができるので、必要に応じた場所まで移動して随時作業が行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術においては、支柱に対して前後両側に位置する空間(前方空間及び後方空間)が、支柱に対して左右方向の両側の空間(側方空間)を通じて連通している。この場合、例えば物品載置部上に載置された物品が、側方空間を通じて落下したり、後方空間に進入したりする可能性がある。
また、カート装置を移動させる際、支柱に対して後方に位置する空間は、執務者の下肢等が進入する可能性がある。そのため、執務者の下肢と、物品載置部上に載置された物品と、が側方空間を通じて干渉する等の可能性がある。
【0005】
本発明は、物品収容空間内に収容された物品と執務者の下肢との干渉を抑制できる天板付什器及び什器システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係る天板付什器は、天板を有する什器本体と、前記什器本体を支持するとともに床面上を移動可能な走行部と、を備え、前記什器本体には、少なくとも後方に開口する下肢収容空間と、前記下肢収容空間の前方において左右方向の少なくとも一方側に開口する物品収容空間と、が形成され、前記什器本体は、前記下肢収容空間と前記物品収容空間との間を前後方向に仕切る仕切板を備えている。
【0007】
本態様によれば、下肢収容空間及び物品収容空間間の連通が仕切板によって遮断される。そのため、物品収容空間から下肢収容空間への物品の落下や進入を抑制できる。
また、天板付什器を移動させる際には、下肢収容空間が執務者の下肢を避けるように配置される。これにより、執務者の下肢と什器本体との干渉を抑制でき、天板付什器のスムーズな移動が可能になる。この場合、下肢収容空間と物品収容空間とが仕切板によって遮蔽されているため、天板付什器を移動させる際に、執務者の下肢と、物品収容空間に収容された物品と、が干渉することを抑制できる。
その結果、執務時及び移動時の双方での使い勝手に優れた天板付什器を提供できる。
【0008】
(2)上記(1)の態様に係る天板付什器において、前記什器本体は、前記下肢収容空間の内外を左右方向に仕切る左右仕切部を備えていることが好ましい。
本態様によれば、左右仕切部によって下肢収容空間の内外が左右方向に仕切られる。これにより、天板付什器の体裁を良好なものとすることができる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の態様に係る天板付什器において、前記什器本体は、前記物品収容空間の内外を前後方向に仕切る前方仕切部を備えていることが好ましい。
本態様によれば、物品収容空間の内外が前後方向に仕切られるので、天板付什器の体裁を良好なものとすることができる。また、物品収容空間に対して左右方向のみからしかアクセスできなくなるので、執務者以外の者による物品収容空間へのアクセスを抑制し易い。
【0010】
(4)上記(1)から(3)の何れかの態様に係る天板付什器において、前記下肢収容空間は、前記什器本体の後方及び下方に向けて連続して開口していることが好ましい。
本態様によれば、天板付什器を後方から移動させる際に、執務者の下肢と什器本体の下端部との干渉を抑制できる。その結果、天板付什器のスムーズな移動が可能になる。
【0011】
(5)本態様に係る什器システムは、上記(1)から(4)の何れかの態様に係る天板付什器と、前記下肢収容空間の内部で前記什器本体に支持されて前記天板付什器と一体に移動可能な収容状態、及び前記下肢収容空間の外部に引き出された使用状態の間を切替可能な椅子と、を備えている。
本態様によれば、上記態様に係る天板付什器を備えているため、使い勝手に優れた什器システムを提供できる。
【発明の効果】
【0012】
上記各態様によれば、物品収容空間内に収容された物品と執務者の下肢との干渉を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】椅子が使用状態にあるときを示す第1実施形態に係る什器システムの斜視図である。
【
図2】椅子が収容状態にあるときを示す第1実施形態に係る什器システムの断面図である。
【
図3】椅子が使用状態にあるときを示す第1実施形態に係る什器システムの断面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線に対応する断面図である。
【
図5】椅子が使用状態にあるときを示す第1実施形態に係る什器システムの平面図である。
【
図7】椅子が収容状態にあるときを示す第2実施形態に係る什器システムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。なお、以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。また、本実施形態において、「向かい合う」とは、2つの面それぞれの直交方向(法線方向)が互いに一致している場合に限らず、直交方向同士が交差している場合も含んでいる。
【0015】
(第1実施形態)
[什器システム1]
図1は、椅子3が使用状態にあるときを示す什器システム1の斜視図である。
図2は、椅子3が収容状態にあるときを示す什器システム1の断面図である。
図3は、椅子3が使用状態にあるときを示す什器システム1の断面図である。
図1~
図3に示す什器システム1は、カート装置2と、カート装置2に対して着脱可能に搭載される椅子3と、を備えている。什器システム1は、カート装置2に椅子3を搭載した状態(
図2における収容状態P1)で、カート装置2と椅子3とが一体となって床面F上を走行可能である。一方、什器システム1は、カート装置2から取り外した椅子3に着座した状態(
図1に示す使用状態P2)で、カート装置2を利用した作業が可能である。
【0016】
以下の説明では、椅子3が使用状態P2にあるときを基準として什器システム1の構成を説明する。また、各図では、什器システム1全体での向き(前後上下左右方向)について座標を用いて表している。この場合、床面Fに垂直な方向を上下方向(矢印UPが上方)とし、上下方向から見て互いに直交する方向をそれぞれ前後方向(矢印FRが前方)及び左右方向(矢印LHが左方)としている。その上で、カート装置2の向きと椅子3の向きとが一致している場合は、単に前後方向、上下方向又は左右方向として説明する。一方、カート装置2の向きと椅子3の向きとが異なっている場合、カート装置2の向きについてはカート前後方向又はカート左右方向とした上で説明し、椅子3の向きについては椅子前後方向又は椅子左右方向とした上で説明する場合がある。なお、カート装置2の向きとは、カート装置2のうち把持部12が設けられている側に執務者が立った状態で執務者から見た向きである。椅子3の向きとは、執務者が椅子3に着座した状態で執務者から見た向きである。
【0017】
<カート装置2>
カート装置2は、執務空間において物品を搬送するために用いられる。カート装置2は、什器本体10と、キャスタ(走行部)11と、把持部12と、トレー13と、ストッパ14と、係止部15と、を備えている。
什器本体10は、カート装置2の外観を構成するものであって、直方体形状に形成されている。図示の例において、什器本体10の平面視形状は、前後方向を長手方向とし、左右方向を短手方向とする長方形状に形成されている。なお、カート装置2が病院で使用される場合、カート装置2によって搬送される物品としては、点滴や薬剤等の医薬品、血圧計や体温計等の医療機器、携帯電話やパソコン、タブレット等の携帯電子機器等が挙げられる。
【0018】
什器本体10は、底フレーム31と、縦壁32と、天板33と、を備えている。
底フレーム31は、床面Fに沿って配置されている。底フレーム31は、底板31aと、側部フレーム31bと、を備えている。
底板31aは、什器本体10のうち前部に位置している。側部フレーム31bは、底板31aにおける左右方向の両端縁に、前後方向に沿って設けられている。側部フレーム31bの後部は、底板31aに対して後方に突出している。
【0019】
図4は、
図1のIV-IV線に対応する断面図である。
図1~
図4に示すように、縦壁32は、前板35と、一対の側板36と、仕切板37と、を備えている。
前板35は、底フレーム31の前端縁から上方に延びている。
側板36は、各側部フレーム31bの後部(底板31aから突出した部分)からそれぞれ上方に延びている。各側板36は、左右方向で向かい合っている。
仕切板37は、底板31aの後端縁から上方に延びている。仕切板37は、一対の側板36の前端縁同士の間を接続している。仕切板37は、前板35と前後方向で向かい合っている。仕切板37の下部には、緩衝部37aが設けられている。緩衝部37aは、弾性変形可能な材料等により形成されている。緩衝部37aは、仕切板37の後面において、後述する下肢収容空間41内に露呈している。
【0020】
天板33は、平面視で長方形状に形成されている。天板33は、縦壁32(前板35、側板36及び仕切板37)に連結され、縦壁32に下方から支持されている。本実施形態において、天板33は、縦壁32を上方から覆うようにして設けられている。天板33の上面は、物品を載置可能な物品載置面を構成している。
【0021】
什器本体10のうち、底フレーム31、天板33、側板36及び仕切板37で囲まれた部分は、下肢収容空間41を構成している。下肢収容空間41は、天板33の下方において、仕切板37よりも後方に位置する空間である。すなわち、下肢収容空間41の内外は、天板33によって上下方向に仕切られ、側板36によって左右方向に仕切られ、仕切板37によって前後方向に仕切られている。
【0022】
下肢収容空間41は、後方及び下方に向けて連続して開口している。すなわち、下肢収容空間41は、天板33、側板36及び側部フレーム31bそれぞれの後端部で形成された後端開口部41aを通じて後方に開口している。また、下肢収容空間41は、底板31aの後端縁及び側部フレーム31bの後部で形成された下端開口部41bを通じて下方に開放されている。後端開口部41aの下端部及び下端開口部41bの後端部は、互いに連通している。
【0023】
什器本体10のうち、底フレーム31、天板33、前板35及び仕切板37で囲まれた部分は、物品収容空間42を構成している。物品収容空間42は、天板33の下方において、仕切板37よりも前方に位置する空間である。すなわち、物品収容空間42は、天板33によって上下方向に仕切られ、前板35によって前後方向に仕切られ、仕切板37によって下肢収容空間41との間が仕切られている。物品収容空間42は、左右方向の両側に位置する開口部(右側開口部及び左側開口部)を通じて左右方向の両側に開放されている。なお、物品収容空間42は、左右方向の一方側のみに開放されている構成でもよく、前方に開放されている構成であってもよい。
【0024】
キャスタ11は、什器本体10(底フレーム31)の下面に複数取り付けられている。本実施形態において、キャスタ11は、各側部フレーム31bの前後両端部に設けられている。キャスタ11は、上下方向に沿う軸線回りに旋回可能に構成されるとともに、床面Fに沿う軸線回りに回転可能に構成されている。これにより、カート装置2は、キャスタ11を介して床面F上を走行可能に構成されている。
【0025】
具体的に、キャスタ11は、取付座11aと、旋回部11bと、ステー11cと、車輪(転動部)11dと、を備えている。
取付座11aは、側部フレーム31bの下面に取り付けられている。
旋回部11bは、取付座11aとステー11cとの間を接続している。旋回部11bは、取付座11aに対してステー11cを上下方向に沿う軸線回りに旋回可能に支持している。
ステー11cは、旋回部11bから下方に向けて二股で延びている。
車輪11dは、ステー11cの内側に、床面Fに沿う軸線回りに回転可能に支持されている。
【0026】
把持部12は、執務者の持ち手となる部分である。把持部12は、平面視において前方に開口するU字状に形成されている。把持部12は、天板33(下肢収容空間41)よりも後方に突出した状態で、天板33の下面に固定されている。なお、把持部12は必須の構成ではない。
【0027】
トレー13は、物品収容空間42内に上下方向に亘って複数段設けられている。各トレー13は、前板35及び仕切板37に設けられた一対のスライドレール45に、それぞれ左右方向にスライド可能に支持されている。トレー13は、物品収容空間42の右側開口部又は左側開口部を通じて出し入れ可能に構成されている。本実施形態では、スライド可能なトレー13が物品収容空間42に設けられた構成について説明したが、この構成に限られない。物品収容空間42は、物品が収容可能な構成であればよく、トレー13に代えて抽斗や棚板等が設けられていてもよい。
【0028】
図4に示すように、ストッパ14は、物品収容空間42における右側開口端部及び左側開口端部それぞれに設けられている。各ストッパ14は、何れも同様の構成であるため、以下の説明では一方側(右側)のストッパ14を例にして説明する。
【0029】
ストッパ14は、物品収容空間42における仕切板37寄りに位置する部分に設けられている。ストッパ14は、底フレーム31及び天板33間で上下方向に沿う軸線回りに回転可能に設けられている。具体的に、ストッパ14は、左右方向から見てトレー13の一部に重なり合う規制位置(
図4中実線参照)と、左右方向から見てトレー13から退避した退避位置(
図4中鎖線参照)と、の間を回転する。ストッパ14が規制位置にあるとき、トレー13が左右方向の内側から突き当たることで、トレー13が物品収容空間42から抜け出すことを規制する。ストッパ14が退避位置にあるとき、物品収容空間42に対するトレー13の出し入れが許容される。なお、ストッパ14は、不図示の錠等によって規制位置に保持されている。
【0030】
図1~
図4に示すように、係止部15は、下肢収容空間41の内部に設けられている。係止部15は、左右方向に延びる杆状に形成されている。係止部15は、一対の側板36における前後方向の中央部において、一対の側板36の上端部同士の間に架け渡されている。
【0031】
<椅子3>
図1~
図3に示すように、椅子3は、足置き62eを備えた、いわゆるハイチェアである。椅子3は、着座部51と、支持構造体52と、を備えている。
着座部51は、座55と、背凭れ56と、を備えている。
【0032】
座55は、執務者が着座部51に着座した状態において、執務者の臀部から大腿部に至る部分を支持する。座55は、座シェル55aと、クッション55bと、を備えている。
座シェル55aは、平面視で矩形状に形成されている。クッション55bは、座シェル55aの上面を覆うように設けられている。クッション55bは、座シェル55aよりも軟質な材料により形成されている。なお、座55は、クッション55bを備えない構成であってもよい。
【0033】
背凭れ56は、執務者が着座部51に着座した状態において、執務者の腰部を支持する。背凭れ56は、座シェル55aに一体に形成されている。背凭れ56は、座シェル55aの後端部から上方に延びている。本実施形態において、背凭れ56の左右方向の幅は、把持部12の左右方向の幅よりも短くなっている。背凭れ56には、取っ手56aが形成されている。本実施形態において、取っ手56aは、背凭れ56を前後方向に貫通する貫通孔である。但し、取っ手56aは、背凭れ56の上端縁等に形成されていてもよい。なお、背凭れ56は、クッションを備えていてもよい。また、着座部51は、少なくとも座55を備えていればよい。
【0034】
支持構造体52は、着座部51を下方から支持する。支持構造体52は、固定プレート61(
図4参照)と、支持フレーム62と、突起部63と、を備えている。
固定プレート61は、上下方向を厚さ方向として、座シェル55aの下面に固定されている。
【0035】
支持フレーム62は、金属等からなる一本の杆材が屈曲形成されて構成されている。支持フレーム62は、左右方向から見て前方に向けて開口するC字状に形成されている。支持フレーム62は、座支持部62aと、起立脚62bと、接地脚62cと、立ち上がり部62dと、足置き62eと、を備えている。
座支持部62aは、固定プレート61の下方において、左右一対で設けられている。各座支持部62aは、前後方向に延びている。各座支持部62aの前端部は、固定プレート61に固定されている。
【0036】
起立脚62bは、各座支持部62aの後端部それぞれから下方に延びている。
接地脚62cは、起立脚62bの下端部それぞれから前方に延びている。各接地脚62cの前後両端部には、樹脂材料等からなる接地キャップ64が設けられている。
立ち上がり部62dは、接地脚62cの前端部それぞれから上方に延びている。図示の例において、立ち上がり部62dは、上方に向かうに従い漸次前方に延びている。
足置き62eは、立ち上がり部62dの上端部同士の間を接続している。本実施形態において、足置き62eは、着座部51よりも前方に位置している。足置き62eには、パッド65が設けられている。パッド65は、支持フレーム62よりも軟質な材料(例えば、ゴムや樹脂等の弾性変形可能な材料)により形成されている。
【0037】
突起部63は、ゴム等の弾性変形可能な材料により形成されている。突起部63は、固定プレート61のうち各座支持部62aの前方に位置する部分に設けられている。突起部63は、固定プレート61から下方に突出している。
【0038】
本実施形態の椅子3において、座55の下方には、椅子側空間68が形成されている。椅子側空間68は、後方及び下方に向けて連続して開口している。すなわち、椅子側空間68は、座55と一対の起立脚62bとで囲まれた後端開口部68aを通じて後方に開放されている。また、椅子側空間68は、一対の接地脚62cで囲まれた下端開口部68bを通じて下方に開口している。後端開口部68aの下端部及び下端開口部68bの後端部は、互いに連通している。
【0039】
(什器システム1の使用方法)
続いて、什器システム1の使用方法について説明する。
本実施形態の什器システム1において、
図3に示す使用状態P2では、椅子3が床面Fに接地した状態で、カート装置2に対して前後方向に向かい合っている。使用状態P2において、執務者は、着座部51に着座した状態で天板33を用いて作業を行うことができる。この際、執務者は、下肢収容空間41内に下肢を差し入れた状態で執務を行うことができる。但し、使用状態P2において、椅子3は、椅子前後方向をカート前後方向に一致させたカート装置2に対して後方に配置される場合に限られない。例えば、
図5に示すように、椅子前後方向をカート左右方向に沿わせてカート装置2に対してカート左右方向の一方側(右側)に、椅子3を配置する等してもよい。この場合には、着座部51に着座した状態で、物品収容空間42に簡単にアクセスすることができるため、トレー13に収容された物品等を簡単に出し入れすることができる。
【0040】
一方、什器システム1を執務空間で移動させる場合には、椅子3を使用状態P2から収容状態P1に移行させる。具体的には、
図2、
図3に示すように、取っ手56aを介して椅子3を持ち上げ、後端開口部41aを通じて椅子3を下肢収容空間41内に進入させる。そして、着座部51の前端部(座支持部62aと突起部63との間に位置する部分)を係止部15に上方から引っ掛ける。これにより、椅子3は、係止部15に吊り下げられた状態でカート装置2に支持される。また、椅子3が係止部15に吊り下げられた状態において、係止部15との接触部分を支点にして自重によって前方に回転しようとする。これにより、足置き62e(パッド65)が仕切板37(緩衝部37a)に後方から当接する。その結果、椅子3は、床面Fから離間し、かつ着座部51と足置き62eとがカート装置2に当接した状態で、下肢収容空間41内に収容される。
【0041】
図2において、椅子3は、キャスタ11よりも上方に位置している。具体的に、椅子3は、什器本体10の下面(底フレーム31)よりも上方に位置している。これにより、什器本体10と床面Fとの間には、キャスタ11の高さ分の空間(下方空間75)が形成されている。但し、椅子3は、収容状態P1において、少なくとも旋回部11bよりも上方に位置していれば、什器本体10よりも下方に突出していてもよい。なお、収容状態P1において、椅子3の後端部は、下肢収容空間41の後端開口部41aを通じて後方に突出している。但し、収容状態P1において、椅子3の全体が下肢収容空間41に収容されていてもよい。
【0042】
収容状態P1において、背凭れ56と把持部12とは、前後方向に隙間をあけた状態で向かい合っている。また、本実施形態において、背凭れ56の左右方向の幅は、把持部12の左右方向の幅よりも短くなっている。これにより、執務者は、背凭れ56と把持部12との間の隙間、又は背凭れ56に対して左右方向の外側を通じて把持部12を把持することができる。
【0043】
椅子3を収容状態P1に移行させた後、執務者は把持部12を把持した状態で、カート装置2を押したり引いたりすることで、什器システム1全体を前進、後退又は旋回させることができる。そして、収容状態P1の什器システム1を必要に応じた場所まで移動させた後、再度椅子3を使用状態P2に移行させることで、移動場所において椅子3に着座した状態で作業が行えるようになっている。これにより、執務者の作業性を向上させることができるとともに、執務者に掛かる負担を軽減することができる。
【0044】
ここで、本実施形態の什器システム1では、収容状態P1において、椅子側空間68が後方に向けて開放されている構成とした。そのため、収容状態P1の什器システム1を執務者が移動させる際、椅子側空間68が執務者の下肢を避けるように配置される。これにより、椅子3がカート装置2に搭載されている状態で什器システム1を移動させる場合であっても、執務者の下肢と椅子3との干渉を抑制でき、什器システム1のスムーズな移動が可能になる。
【0045】
このように、本実施形態のカート装置2において、什器本体10は、下肢収容空間41と物品収容空間42との間を前後方向に仕切る仕切板37を備える構成とした。
この構成によれば、下肢収容空間41及び物品収容空間42間の連通が仕切板37によって遮断される。そのため、物品収容空間42から下肢収容空間41への物品の落下や進入を抑制できる。
また、什器システム1を移動させる際には、下肢収容空間41が執務者の下肢を避けるように配置される。これにより、執務者の下肢と什器本体10との干渉を抑制でき、カート装置2のスムーズな移動が可能になる。この場合、下肢収容空間41と物品収容空間42とが仕切板37によって遮蔽されているため、什器システム1を移動させる際に、執務者の下肢と、物品収容空間42に収容された物品と、が干渉することを抑制できる。
その結果、執務時及び移動時の双方での使い勝手に優れたカート装置2を提供できる。
【0046】
本実施形態のカート装置2において、什器本体10は、下肢収容空間41を左右方向の両側から取り囲む側板(左右仕切部)36を備える構成とした。
この構成によれば、側板36によって下肢収容空間41が左右方向の両側から取り囲まれる。これにより、カート装置2の体裁を良好なものとすることができる。
【0047】
本実施形態のカート装置2において、什器本体10は、物品収容空間42を前方から閉塞する前板(前方仕切部)35を備えている構成とした。
この構成によれば、物品収容空間42の前方が閉塞されるため、カート装置2の体裁を良好なものとすることができる。また、物品収容空間42に対して左右方向のみからしかアクセスできなくなるので、執務者以外の者による物品収容空間42へのアクセスを抑制し易い。
【0048】
本実施形態のカート装置2において、下肢収容空間41は、什器本体10の後方及び下方に向けて連続して開口している構成とした。
この構成によれば、カート装置2(什器システム1)を後方から移動させる際に、執務者の下肢と什器本体10の下端部との干渉を抑制できる。その結果、什器システム1のスムーズな移動が可能になる。
【0049】
本実施形態の什器システム1は、上述したカート装置2を備えているため、使い勝手に優れた什器システム1を提供できる。
【0050】
(第1変形例)
上述した実施形態では、把持部12が天板33の下面に取り付けられた構成について説明したが、この構成に限られない。
図6に示すカート装置2のように、把持部12が各側板36に取り付けられる構成であってもよい。具体的に、各把持部12は、左右方向から見てC字状のものであって、その前端部が側板36の後端面に固定されている。これにより、各把持部12は、下肢収容空間41に対して後方に突出した状態で、什器本体10に取り付けられている。本変形例においては、把持部12が椅子3に対して左右方向の外側に配置されるため、収容状態P1において執務者が把持部12を把持し易い。
【0051】
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る什器システム1の断面図である。第2実施形態では、椅子3(支持フレーム62)の構成が第1実施形態と相違している。
図7に示す椅子3において、支持フレーム62は、左右方向から見て後方に向けて開口するC字状に形成されている。具体的に、支持フレーム62は、座支持部62aと、起立脚62bと、接地脚62cと、接続部62fと、足置き62eと、を備えている。
【0052】
座支持部62aは、固定プレート61の下方において、左右一対で設けられている。各座支持部62aは、前後方向に延びている。各座支持部62aの前端部は、固定プレート61に固定されている。
起立脚62bは、各座支持部62aの前端部それぞれから下方に延びている。
【0053】
接地脚62cは、起立脚62bの下端部それぞれから後方に延びている。
接続部62fは、接地脚62cにおける後端部同士を左右方向に接続している。
足置き62eは、起立脚62bにおける下端部同士を左右方向に接続している。
【0054】
本実施形態の椅子3において、支持フレーム62のうち、座支持部62a、起立脚62b及び接地脚62cで囲まれた部分は、後方に開口する椅子側空間68を構成している。椅子側空間68は、着座部51及び接続部62fとで囲まれた後端開口部68aを通じて後方に開放されている。
【0055】
本実施形態の椅子3においても、収容状態P1にあるとき、着座部51の前端部が係止部15に上方から引っ掛けられることで、椅子3が係止部15に吊り下げられた状態で支持される。このとき、椅子3が係止部15との接触部分を支点にして自重によって前方に回転しようとすることで、起立脚62bの下端部が仕切板37に後方から当接する。その結果、椅子3は、床面Fから離間し、かつ着座部51と足置き62eとがカート装置2に当接した状態で、下肢収容空間41内に収容される。
【0056】
(その他の変形例)
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は上述した説明によって限定されることはなく、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
上述した実施形態では、収容状態P1において、椅子3が椅子前後方向の前向き(背凭れ56が後方に位置した状態)でカート装置2に収容される構成について説明したが、この構成に限られない。什器システム1は、椅子3が椅子前後方向の後ろ向き(背凭れ56が前方に位置した状態)や横向き(椅子左右方向をカート前後方向に沿わせた状態)でカート装置2に収容される構成であってもよい。椅子3を横向きで収容した場合にあっては、椅子左右方向に開口する椅子側空間65を形成することで、収容状態P1において椅子側空間65が後方に開口することになる。
上述した実施形態では、本発明に係る天板付什器としてカート装置2を例にして説明したがこの構成に限られない。天板付什器は、ワゴン装置やデスク装置等であってもよい。
上述した実施形態では、什器本体10が側板36を備える構成について説明したが、この構成に限られない。下肢収容空間41は、左右方向の少なくとも一方側に開口する構成であってもよい。
【0057】
上述した実施形態では、下肢収容空間41及び椅子側空間68が後方及び下方に向けて連続して開口している構成について説明したが、この構成に限られない。下肢収容空間41及び椅子側空間68は、少なくとも後方に開口していればよい。
上述した実施形態では、椅子3がカート装置2に対して着脱可能(切替可能)な構成について説明したが、この構成に限られない。什器システム1は、椅子3がカート装置2に接続された状態で、収容状態P1及び使用状態P2間を移行する構成(切替可能)であってもよい。
【0058】
上述した実施形態では、収容状態P1において椅子3が床面Fから離間し、使用状態P2において椅子3が床面Fに接地する構成について説明したが、この構成に限られない。椅子3は、収容状態P1及び使用状態P2の双方において、床面Fから離間していてもよい。
上述した実施形態では、収容状態P1において、椅子3が旋回部11bよりも上方に位置する構成について説明したが、この構成に限られない。収容状態P1において、椅子3は、旋回部11bよりも下方に突出していてもよい。
【0059】
上述した実施形態では、カート装置2と椅子3とが組み合わされた什器システム1を例にして説明したが、この構成に限られない。本発明において、椅子3は必須の構成ではない。
上述した実施形態では、椅子3が椅子側空間65を備える構成について説明したが、この構成に限られない。椅子3は、椅子側空間65を備えない構成であってもよい。
上述した実施形態では、物品収容空間42が左右方向のみに開放された構成について説明したが、この構成に限られない。物品収容空間42は、左右方向に加え、前方に開放されていてもよい。
上述した実施形態では、前方仕切部の一例として前板35を採用し、左右仕切部の一例として側板36を採用した構成について説明したが、各仕切部は例えば支柱やスクリーン等であってもよい。
上述した実施形態では、椅子3が係止部15に吊り下げられる構成について説明したが、これに加えて、落下防止バンド等によって椅子3をカート装置2に固定してもよい。
【0060】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1:什器システム
3:椅子
10:什器本体
11:キャスタ(走行部)
33:天板
35:前板(前方仕切部)
36:側板(左右仕切部)
37:仕切板
41:下肢収容空間
42:物品収容空間
F:床面
P1:収容状態
P2:使用状態