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特開2024-56297スイングタイプの分類方法およびゴルフクラブの選定方法並びにゴルフクラブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056297
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】スイングタイプの分類方法およびゴルフクラブの選定方法並びにゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/36 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A63B69/36 541W
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163082
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】515185924
【氏名又は名称】株式会社プロギア
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】宮川 まもる
(72)【発明者】
【氏名】京村 正利
(57)【要約】
【課題】ゴルファーの身体的特徴に基づいてより好適なスイングタイプやゴルフクラブを提案する。
【解決手段】ゴルファーがゴルフクラブを把持してアドレスの姿勢をとった状態でゴルフクラブを手から離してゴルファーの体の前に垂らした場合、または、ゴルファーが直立して両腕30を垂らした場合、または、ゴルファーがシャドウスイングをしてインパクト位置で両腕30を静止させた場合の何れかの場合で、かつ、利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態を利き腕でない方の腕または手の甲の「基準位置」と定義した場合、「固有回旋角度」は、利き腕でない方の腕または手の甲が「基準位置」となす角度のことをいう。本発明者らは、ゴルファーの固有回旋角の大小に対応してスイングタイプが少なくとも2種類に分類されることを見出した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルファーがゴルフクラブを把持してアドレスの姿勢をとった状態で前記ゴルフクラブを手から離し両腕を脱力して前記ゴルファーの体の前に垂らした場合、または、前記ゴルファーが直立して両腕を脱力して垂らした場合、または、前記ゴルファーがシャドウスイングをしてインパクト位置で両腕を静止させた場合の何れかの場合において、前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の固有回旋角度または前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の手の甲の固有回旋角度を測定する固有回旋角度測定ステップと、
前記固有回旋角度測定ステップで測定された前記固有回旋角度に基づいて前記ゴルファーのスイングを少なくとも2種類のスイングタイプに分類するスイングタイプ分類ステップとを含み、
ゴルファーがゴルフクラブを把持してアドレスの姿勢をとった状態で前記ゴルフクラブを手から離し前記ゴルファーの体の前に垂らした場合、または、前記ゴルファーが直立して両腕を垂らした場合、または、前記ゴルファーがシャドウスイングをしてインパクト位置で両腕を静止させた場合の何れかの場合で、かつ、前記利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態を前記利き腕でない方の腕または手の甲の基準位置と定義した場合、前記固有回旋角度は、前記利き腕でない方の腕または手の甲が前記基準位置となす角度である、
ことを特徴とするスイングタイプの分類方法。
【請求項2】
前記スイングタイプ分類ステップは、前記固有回旋角度が第1境界角度未満であるときに前記スイングタイプをEタイプと分類し、前記固有回旋角度が前記第1境界角度以上であるときに前記スイングタイプをFタイプと分類し、
前記第1境界角度は、30度以上40度以下で設定される、
ことを特徴とする請求項1記載のスイングタイプの分類方法。
【請求項3】
ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングしたとき、インパクト時またはインパクト直前時の前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の固有回旋角度または前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の手の甲の固有回旋角度を測定する固有回旋角度測定ステップと、
前記固有回旋角度測定ステップで測定された前記固有回旋角度に基づいて前記ゴルファーのスイングを少なくとも2種類のスイングタイプに分類するスイングタイプ分類ステップとを含み、
インパクト時またはインパクト直前時の前記利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態を前記利き腕でない方の腕または手の甲の基準位置と定義した場合、前記固有回旋角度は、前記利き腕でない方の腕または手の甲が前記基準位置となす角度である、
ことを特徴とするスイングタイプの分類方法。
【請求項4】
前記スイングタイプ分類ステップは、前記固有回旋角度が第1境界角度未満であるときに前記スイングタイプをEタイプと分類し、前記固有回旋角度が前記第1境界角度以上であるときに前記スイングタイプをFタイプと分類し、
前記第1境界角度は、30度以上40度以下の範囲で設定される、
ことを特徴とする請求項3記載のスイングタイプの分類方法。
【請求項5】
ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングする過程において、アドレス位置における前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の相対回旋角度または前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の手の甲の相対回旋角度を第1相対回旋角度として測定する第1相対回旋角度測定ステップと、
前記スイングする過程において、トップ位置における前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の相対回旋角度または前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の手の甲の相対回旋角度を第2相対回旋角度として測定する第2相対回旋角度測定ステップと、
前記第1相対回旋角度と前記第2相対回旋角度との差分に基づいてゴルファーのスイングを少なくとも2種類のスイングタイプに分類するスイングタイプ分類ステップとを含み、
前記アドレス位置において前記利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態を前記利き腕でない方の腕または手の甲の基準位置と定義した場合、前記相対回旋角度は、前記利き腕でない方の腕または手の甲が前記基準位置となす角度である、
ことを特徴とするスイングタイプの分類方法。
【請求項6】
前記スイングタイプ分類ステップは、前記差分が第2境界角度未満であるときに前記スイングタイプをFタイプと分類し、前記差分が前記第2境界角度以上であるときに前記スイングタイプをEタイプと分類し、
前記境界角度は、65度以上75度以下の範囲で設定される、
ことを特徴とする請求項5記載のスイングタイプの分類方法。
【請求項7】
前記ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングする過程において、インパクト時のヘッドスピードVhとグリップスピードVgとの比Vh/Vgで定義されるリストターン比率を測定するリストターン比率測定ステップをさらに含み、
前記スイングタイプ分類ステップは、前記リストターン比率が大きいほど前記スイングタイプを前記Eタイプに分類する傾向を高くし、前記リストターン比率が小さいほど前記スイングタイプを前記Fタイプに分類する傾向を高くする、
ことを特徴とする請求項1、3、5の何れか1項記載のスイングタイプの分類方法。
【請求項8】
請求項2、4、6の何れか1項記載のスイングタイプの分類方法によって分類されたスイングタイプの分類結果に基づいて、前記Eタイプ向けのゴルフクラブおよび前記Fタイプ向けのゴルフクラブを選定するゴルフクラブの選定方法であって、
前記Eタイプ向けのゴルフクラブのフェース面上重心距離および重心深さは、前記Fタイプ向けのゴルフクラブヘッドのフェース面上重心距離および重心深さよりもそれぞれ小さい値で設定されている、
ことを特徴とするゴルフクラブ選定方法。
【請求項9】
請求項1または3に記載のスイングタイプの分類方法によって測定された前記固有回旋角度、または、請求項5のスイングタイプの分類方法によって測定された前記第1相対回旋角度に基づいて、前記利き腕でない方の腕の手の親指を置く目安となるガイドラインがグリップに表示されている、
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【請求項10】
請求項2、4、6の何れか1項記載のスイングタイプの分類方法によって分類されたスイングタイプの分類結果に基づいて、前記スイングタイプE、Fの分類を表示するスイングタイプ表示部が設けられている、
ことを特徴とするゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスイングタイプの分類方法およびゴルフクラブの選定方法並びにゴルフクラブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフクラブの販売店やショールームなどにおいては、ゴルファーのゴルフクラブスイング(以下単にスイングという)時のゴルフクラブヘッドやシャフトの挙動を様々な測定装置を用いて測定、分析し、その分析結果に基づいてそのゴルファーのスイングタイプを分類し、分類されたスイングタイプに対応したゴルフクラブ、すなわち、飛距離が出やすくミスショットが少ないゴルフクラブを選定するサービス(ゴルフクラブのフィッティング)がなされている。
例えば、特許文献1には、ゴルフクラブによってゴルフボールを打撃するときのゴルフクラブの挙動を画像解析によって解析し、ゴルフクラブヘッドの上下方向および左右方向の進入角の値に基づいてスイングを4種類のタイプに分類する分類方法が提案されている。
また、近年では、スイングを行なうゴルファーの身体の挙動を、例えば、3次元モーションキャプチャーなどの手法を用いて解析することで、スイングタイプの分類をより精度よく行なう技術も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5365486号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術においては、ゴルファーの骨格の形状や筋肉の付き方などの身体的特徴(体格)については特に考慮されていない。
本発明者らは、ゴルファーの身体とスイングタイプとの関連性について鋭意研究を重ねた結果、ゴルファーの身体的特徴の違いに対応したスイングタイプが存在することを発見した。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゴルファーの身体的特徴に基づいてより好適なスイングタイプやゴルフクラブを提案する上で有利なスイングタイプの分類方法およびゴルフクラブの選定方法並びにゴルフクラブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一実施の形態に係るスイングタイプの分類方法は、ゴルファーがゴルフクラブを把持してアドレスの姿勢をとった状態で前記ゴルフクラブを手から離し両腕を脱力して前記ゴルファーの体の前に垂らした場合、または、前記ゴルファーが直立して両腕を脱力して垂らした場合、または、前記ゴルファーがシャドウスイングをしてインパクト位置で両腕を静止させた場合の何れかの場合において、前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の固有回旋角度または前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の手の甲の固有回旋角度を測定する固有回旋角度測定ステップと、前記固有回旋角度測定ステップで測定された前記固有回旋角度に基づいて前記ゴルファーのスイングを少なくとも2種類のスイングタイプに分類するスイングタイプ分類ステップとを含み、ゴルファーがゴルフクラブを把持してアドレスの姿勢をとった状態で前記ゴルフクラブを手から離し前記ゴルファーの体の前に垂らした場合、または、前記ゴルファーが直立して両腕を垂らした場合、または、前記ゴルファーがシャドウスイングをしてインパクト位置で両腕を静止させた場合の何れかの場合で、かつ、前記利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態を前記利き腕でない方の腕または手の甲の基準位置と定義した場合、前記固有回旋角度は、前記利き腕でない方の腕または手の甲が前記基準位置となす角度であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態に係るスイングタイプの分類方法は、ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングしたとき、インパクト時またはインパクト直前時の前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の固有回旋角度または前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の手の甲の固有回旋角度を測定する固有回旋角度測定ステップと、前記固有回旋角度測定ステップで測定された前記固有回旋角度に基づいて前記ゴルファーのスイングを少なくとも2種類のスイングタイプに分類するスイングタイプ分類ステップとを含み、インパクト時またはインパクト直前時の前記利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態を前記利き腕でない方の腕または手の甲の基準位置と定義した場合、前記固有回旋角度は、前記利き腕でない方の腕または手の甲が前記基準位置となす角度であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態に係るスイングタイプの分類方法は、ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングする過程において、アドレス位置における前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の相対回旋角度または前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の手の甲の相対回旋角度を第1相対回旋角度として測定する第1相対回旋角度測定ステップと、前記スイングする過程において、トップ位置における前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の相対回旋角度または前記ゴルファーの利き腕でない方の腕の手の甲の相対回旋角度を第2相対回旋角度として測定する第2相対回旋角度測定ステップと、前記第1相対回旋角度と前記第2相対回旋角度との差分に基づいてゴルファーのスイングを少なくとも2種類のスイングタイプに分類するスイングタイプ分類ステップとを含み、前記アドレス位置において前記利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態を前記利き腕でない方の腕または手の甲の基準位置と定義した場合、前記相対回旋角度は、前記利き腕でない方の腕または手の甲が前記基準位置となす角度であることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態に係るゴルフクラブ選定方法は、前記何れかのスイングタイプの分類方法によって分類されたスイングタイプの分類結果に基づいて、前記Eタイプ向けのゴルフクラブおよび前記Fタイプ向けのゴルフクラブを選定するゴルフクラブの選定方法であって、前記Eタイプ向けのゴルフクラブのフェース面上重心距離および重心深さは、前記Fタイプ向けのゴルフクラブヘッドのフェース面上重心距離および重心深さよりもそれぞれ小さい値で設定されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態に係るゴルフクラブは、前記何れかのスイングタイプの分類方法によって測定された前記固有回旋角度、または、前記第1相対回旋角度に基づいて、前記利き腕でない方の腕の手の親指を置く目安となるガイドラインがグリップに表示されていることを特徴とする。
また、本発明の一実施の形態に係るゴルフクラブは、前記何れかのスイングタイプの分類方法によって分類されたスイングタイプの分類結果に基づいて、前記スイングタイプE、Fの分類を表示するスイングタイプ表示部が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一実施の形態によれば、固有回旋角度、あるいは、第1相対回旋角度と第2相対回旋角度との差分に基づいて少なくとも2種類のスイングタイプ、例えば、利き腕でない方の腕のローテーション(回旋)を積極的に行なうスイングと、ボディターンを利用するスイングとに分類するようにした。
そのため、ゴルファーの身体的特徴に合ったスイングタイプでスイングすることにより、スイングが円滑に行えるため、ヘッドスピードが向上し飛距離の向上を図る上で有利となる。
また、ゴルファーの身体的特徴にあったスイングタイプでスイングすることにより、身体のコントロールが円滑となりミスショットを低減する上で有利となる。
また、ゴルファーの身体的特徴にあったスイングタイプでスイングすることにより、身体に無理な負担がかからないため、ひじなどの怪我を防止する上で有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、分類されたスイングタイプに好適なフェース面上重心距離および重心深さのゴルフクラブを用いることができるため、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上でより一層有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、分類されたスイングタイプに好適なグリップ方法でゴルフクラブを把持する上で有利となるため、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上でより一層有利となる。
また、本発明の一実施の形態によれば、ゴルファーは、スイングタイプ表示部を視認することで、自らが分類されたスイングタイプを認識して、分類されたスイングタイプに合致してゴルフクラブをスイングすることができるため、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上でより一層有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施の形態に係るスイングタイプの分類方法で分類するスイングタイプとゴルファーの前腕の回旋との対応を示す説明図であり、(A)はEタイプのスイングタイプ、(B)はFタイプのスイングタイプを示している。
図2】第1の実施の形態におけるスイングタイプの分類方法のフローチャートである。
図3】第1の実施の形態におけるスイングタイプの分類方法を実施するためのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】(A)はスクエアグリップ、(B)はストロンググリップを示す図である。
図5】第2の実施の形態におけるスイングタイプの分類方法においてゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングした際のインパクト時での利き腕ではない左腕をゴルファーの正面から見た状態を示す説明図であり、(A)はEタイプ、(B)はFタイプに対応している。
図6】第3の実施の形態におけるスイングタイプの分類方法においてゴルフクラブを把持してスイングする過程におけるゴルファーの利き腕でない方の腕の相対回旋角度またはゴルファーの利き腕でない方の腕の手の甲の相対回旋角度の変化を示す図である。
図7】第3の実施の形態におけるスイングタイプの分類方法のフローチャートである。
図8】(A)は固有回旋角度に基づくスイングタイプの分類結果例を示す図、(B)はリストターン比率を考慮したスイングタイプの分類結果例を示す図である。
図9】ゴルフクラブヘッドを水平面HPに対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態とした場合のゴルフクラブの正面図である。
図10図9の平面図である。
図11】市販されているゴルフラブヘッドのフェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRをプロットした線図である。
図12】グリップに表示されたガイドラインを示す説明図である。
図13】Eタイプに対応する実験結果を示す図である。
図14】Fタイプに対応する実験結果を示す図である。
図15】3Dモーションキャプチャーを行なう解析装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1の実施の形態)
次に本発明の実施の形態について説明する。
本発明者らは、鋭意研究の結果、ゴルファーが所定の姿勢をとったときの身体的特徴の違いに対応したスイングタイプが存在することを発見した。
ここで、所定の姿勢とは、以下の3つの基準姿勢A、B、Cの何れかである。
(1)基準姿勢A:
ゴルファーがゴルフクラブを把持してアドレスの姿勢をとった状態でゴルフクラブを手から離し両腕を脱力してゴルファーの体の前に垂らした姿勢。
(2)基準姿勢B:
ゴルファーが直立して両腕を脱力して垂らした姿勢。
(3)基準姿勢C:
ゴルファーがシャドウスイングをしてインパクト位置で両腕を静止させた姿勢。
図1は、多数のゴルファーの姿勢のうち典型的な2つの姿勢を示している。
図1は、上記基準姿勢A、B、Cの何れかの基準姿勢をとったゴルファーの両腕30および下半身32の一部を正面から見た状態を示している。なお、本明細書においてゴルファーの腕とは断りの無い限り前腕を意味する。
符号32Aはゴルファーの腰、符号32Bはベルト、符号32Cはゴルファーの脚を示している。
なお、以下の説明において、ゴルファーが右利きであり、したがって、利き腕が右腕30Rであり、利き腕でない方の腕が左腕30Lである場合について説明する。なお、ゴルファーが左利きの場合は、利き腕が左腕30L、利き腕でない方の腕が右腕30Rとなる。
【0009】
そして、本実施の形態においてゴルファーの身体的特徴は、上記基準姿勢A、B、Cの何れかの状態において、ゴルファーの利き腕でない方の腕の「固有回旋角度」またはゴルファーの利き腕でない方の腕の手の甲の「固有回旋角度」である。
詳細に説明すると、ゴルファーがゴルフクラブを把持してアドレスの姿勢をとった状態でゴルフクラブを手から離してゴルファーの体の前に垂らした場合、または、ゴルファーが直立して両腕30を垂らした場合、または、ゴルファーがシャドウスイングをしてインパクト位置で両腕30を静止させた場合の何れかの場合で、かつ、利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態を利き腕でない方の腕または手の甲の「基準位置」と定義した場合、「固有回旋角度」は、利き腕でない方の腕または手の甲が「基準位置」となす角度のことをいう。また、固有回旋角度は、基準位置に対して利き腕でない方の腕または手の甲が内旋する方向に回旋した場合を正値で示し、基準位置に対して利き腕でない方の腕または手の甲が外旋する方向に回旋した場合を負値で示す。
なお、この場合、「利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態」とは、利き腕でない方の手の甲が目標点を向いてない場合には、利き腕でない方の手の甲が目標点を向くように、利き腕でない方の腕を意識的にあるいは意図的に回旋した状態をいう。
ここで、目標点とは、ゴルフクラブによってボールを打ち出す目標位置であって、例えば、フェアウェイの場合はグリーンであり、グリーンの場合はカップである。
また、回旋(プロネーション)とは腕を腕の骨(尺骨)の軸線周りに回すことをいう。回旋には内旋と外旋とがあり、内旋とは腕を内側(胴体側)に向かって回すことをいい、外旋とは腕を外側(胴体と反対側)に向かって回すことをいう。
【0010】
本発明者らは、多数のゴルファーの姿勢を分析した結果、ゴルファーの固有回旋角度の大小に対応してスイングタイプが少なくとも2種類に分類されることを見出した。
図1(A)は小さい固有回旋角度に対応し、図1(B)は大きい固有回旋角度に対応している。
本実施の形態では、固有回旋角度が第1境界角度未満であるときにスイングタイプをEタイプと分類し、固有回旋角度が第1境界角度以上であるときにスイングタイプをFタイプと分類し、第1境界角度は、30度以上40度以下で設定される。例えば、第1境界角度は35度とする。
このような固有回旋角度の違いは、個々のゴルファーの骨格の形状や筋肉の付き方を含む身体的特徴(体格)に起因するものと考えられ、固有回旋角度は、ゴルファーごとにほぼ固有の値となっている。
【0011】
EタイプとFタイプとについて説明する。
まず、ゴルフクラブをスイングする過程における左腕30Lの回旋について説明する。
ゴルフクラブをアドレス位置に静止させた状態からトップ位置までバックスイングする過程において、左腕30Lは次第に内旋していき、概ねトップ位置で最も内旋することになる。
そして、ゴルフクラブは、トップ位置からダウンスイング、インパクト、フォロースルー、フィニッシュの各段階を経過する。
このトップ位置からフィニッシュまでの過程において左腕30Lは最も内旋した状態から次第に外旋していくことになる。
また、インパクト位置においては、左腕30Lは、アドレス位置での固有回旋角度にほぼ一致した状態に戻ることになる。言い換えると、インパクト時に左手の甲31Lの位置は固有回旋角度と合致する。つまり、インパクト時に左腕30L(左手の甲31L)はアドレス時(脱力して左腕30Lを垂らした状態)の自然な姿勢に戻るといえる。
このようなゴルファーの身体や左腕30Lの挙動の解析にあたっては、後述するような3Dモーションキャプチャーなどの従来公知の技術を用いて行なうことが可能である。
【0012】
固有回旋角度が第1境界角度未満のEタイプでは、アドレス位置における固有回旋角度がもともと小さいので、アドレス位置からトップ位置までの間で左腕30Lをさらに内旋させることが支障なく楽に行え、トップ位置からインパクトまでの過程においては、左腕30Lを大きく外旋させることが容易に行える。
したがって、Eタイプの場合には、左腕30Lのローテーション(回旋)を積極的に行なうことが容易となり、腕のローテーションを利用するスイングに向いている。
【0013】
一方、固有回旋角度が第1境界角度以上のFタイプでは、アドレス位置における固有回旋角度がもともと大きいので、アドレス位置からトップ位置までの間で左腕30Lをさらに内旋させることが難しく、そのため、トップ位置からインパクトまでの過程においては、左腕30Lを大きく外旋させることが難しい。
したがって、Fタイプの場合には、左腕30Lのローテーションを積極的に行なうことが難しいので、ボディターンを利用するスイングに向いている。
【0014】
次に、図2のフローチャートを参照してスイングタイプの分類方法について具体的に説明する。
なお、本実施の形態では、図3に示すように、コンピュータ20を用いてスイングタイプの分類を行なう。
コンピュータには、3Dモーションキャプチャー装置22と、キーボードやマウスなどの入力装置24と、ディスプレイ26と、プリンタ28とが接続されており、コンピュータ20にインストールされた分類プログムをコンピュータ20が実行することに以下の処理が実行されるものとする。なお、コンピュータ20が行なう処理をオペレータが手作業で行なうようにしてもよいことは無論である。
まず、ゴルファーが前述した基準姿勢A、B、Cの何れかの基準姿勢をとり、利き腕でない方の左腕30Lの手の甲31Lの固有回旋角度を測定する(ステップS10:固有回旋角度測定ステップ)。
【0015】
固有回旋角度の測定は、例えば、3Dモーションキャプチャーによって行なう。
3Dモーションキャプチャーについて具体的に説明すると、以下の通りである。
図15は3Dモーションキャプチャーを行なう解析装置の説明図である。
解析装置38(22)は、いわゆる光学式のモーションキャプチャーを行なうものであって、カメラ42、光源44、マーカーセット48、コンピュータ46を含んで構成されている。
カメラ42は、2台以上設けられ、予め定められた測定エリアを異なった角度から撮像して画像データを生成しコンピュータ46に供給するものである。
光源44は、例えば、各カメラ42の光学系の光軸を中心にして円環状に設けられたリングライトで構成され、カメラ42の撮影対象である被験者であるゴルファー40の身体に不要な影が生じないように図られている。
マーカーセット48は、2つ設けられ、ゴルファー40の利き手でない方の左腕(前腕部)30Lおよび手の甲31Lにそれぞれ取り付けられる。
各マーカーセット48は、ゴルファー40の左腕30L、手の甲31Lに取り付けられる不図示のプレートと、プレートに固定された少なくとも3個以上の不図示の再帰反射マーカーとを備えている。
コンピュータ46は、3Dモーションキャプチャーを行なう従来公知の解析プログラムがインストールされており、コンピュータ46が上記解析プログラム実行することにより、カメラ42から供給された画像情報に基づいて3Dモーションキャプチャーを行ない、ゴルファー40の左腕30Lおよび手の甲31Lの3次元の動きを解析し、固有回旋角度を算出(検出)するものである。
【0016】
解析装置38の動作について説明する。
まず、予め2台以上のカメラ42を測定エリアに向けて設置し、それぞれの位置や向きをコンピュータ46によってキャリブレーションする。
また、各カメラ42によってマーカーセット48を撮像し、その画像データに基づいてプレート上における各再帰反射マーカーの位置情報を登録する。
次に、マーカーセット48を左腕30Lおよび手の甲31Lに装着したゴルファー40を測定エリアに立たせ、光源44から光を照射し、ゴルファー40に装着されたマーカーセット48の各再帰反射マーカーからの反射光を各カメラ42によって撮像する。
この際、ゴルファー40は、以下に示す互いに異なる2種類の姿勢をとると共に、カメラ42によってそれぞれの姿勢を撮像する。
1)基準位置を計測するために、利き腕でない方の手の甲31Lを目標点に向けた姿勢を取る。
2)固有回旋角度を計測するために、前述した基準姿勢A、B、Cの何れかの基準姿勢を取る(静止した状態を維持する)。
コンピュータ46は、各カメラ42で得られた上記1)、2)の2種類の姿勢に対応する画像データに基づいて、各再帰反射マーカーの位置情報とカメラ42のキャリブレーション情報から各再帰反射マーカーの3次元位置を特定する。
コンピュータ46は、特定された各再帰反射マーカーの3次元位置と登録された各再帰反射マーカーの位置情報から、マーカーセット48の位置および向きを算出する。
コンピュータ46は、このように算出されたマーカーセット48の位置および向きに基づいて前述した基準位置および固有回旋角度を算出する。
【0017】
なお、第1の実施の形態では、ゴルファー40が上述した基準姿勢A、B、Cの何れかの基準姿勢で静止している場合について説明した。
これに対して、後述する第2の実施の形態のようにスイング中におけるインパクト時のマーカーセット48の位置および向きに基づいて固有回旋角度を算出する場合、あるいは、第3の実施の形態のようにスイング中におけるアドレス位置とトップ位置とにおけるマーカーセット48の位置および向きに基づいて固有回旋角度(第1相対回旋角度、第2相対回旋角度)を算出する場合には、カメラ42のフレームレート(1秒当たりの撮影コマ数)を100(fps)以上確保することが、3Dモーションキャプチャーの精度を確保し、固有回旋角度を精度良く得る上で有利となる。
【0018】
また、上述したカメラ42を用いた光学式の3Dモーションキャプチャーに代えて、慣性センサをゴルファー40に装着する慣性センサ方式の3Dモーションキャプチャーを用いてもよく、あるいは、磁気センサをゴルファー40に装着する磁気センサ方式の3Dモーションキャプチャーを用いてもよく、従来公知の様々な3Dモーションキャプチャーを用いることができる。
【0019】
固有回旋角度の測定がなされたならば、測定された固有回旋角度に基づいてゴルファーのスイングを少なくとも2種類のスイングタイプに分類する(ステップS12:スイングタイプ分類ステップ)。
本実施の形態では、固有回旋角度が第1境界角度未満であるときにスイングタイプをEタイプと分類し、固有回旋角度が第1境界角度以上であるときにスイングタイプをFタイプと分類する。
ここで、第1境界角度は、30度以上40度以下の範囲で設定されることが、スイングタイプの分類結果に対応した後述する効果を奏する上で有利となる。
【0020】
分類結果は、例えば、コンピュータのディスプレイに表示され、あるいは、コンピュータに接続されたプリンタによって印刷媒体に出力されることで、ゴルファーに提示される(ステップS14:出力ステップ)。
【0021】
発明者らの知見によれば、第1境界角度を上記範囲内で設定することで、ゴルファーが分類されたスイングタイプに合わせたスイングを行なうことにより以下の効果が得られた。
1)ゴルファーの身体的特徴に合ったスイングタイプでスイングすることにより、すなわち、Eタイプは腕のローテーションを積極的に利用したスイング行なうことにより、また、Fタイプはボディターンを積極的に利用したスイングを行なうことにより、それぞれのスイングを円滑に行えるため、ヘッドスピードが向上し飛距離の向上を図る上で有利となる。
2)ゴルファーの身体的特徴にあったスイングタイプでスイングすることにより、身体のコントロールが円滑となりミスショットを低減する上で有利となる。
3)ゴルファーの身体的特徴にあったスイングタイプでスイングすることにより、身体に無理な負担がかからないため、ひじなどの怪我を防止する上で有利となる。
また、発明者らの知見によれば、スイングタイプがEタイプに分類されたゴルファーが、Fタイプのスイング、すなわち、ボディターンを積極的に利用するスイングを行なうと、振り遅れてボールが捕まりにくくスライスのミスをしやすいことが判明した。
一方、スイングタイプがFタイプに分類されたゴルファーが、Eタイプのスイング、すなわち、前腕のローテーションを積極的に利用するスイングを行なうと、ボールを引っ掛けるミスをしやすいことが判明した。
【0022】
ここで、図4を参照してEタイプ、Fタイプのそれぞれに好適なグリップ方法の種類について説明する。なお、図中符号31Rは右手の甲を示し、符号16はゴルフクラブ100のグリップを示す。
図4(A)に示すように、Eタイプは、アドレス時に左手の甲31Lがほぼ目標点を向くスクエアグリップが好ましい。スクエアグリップとすることで、バックスイング時に左腕30Lを内旋させる余裕を確保すると同時に、左腕30Lあるいは左手の甲30Lがインパクト時においてアドレス時と同じ固有回旋角度にスムーズに戻ることから、腕のローテーションを積極的に利用したスイングを無理なく円滑に行なう上で有利となるからである。
図4(B)に示すように、Fタイプは、アドレス時において左手の甲31Lが目標点よりもゴルファーの身体の前方寄りの方向を向くストロンググリップが好ましい。ストロンググリップとすることで、バックスイング時に左腕30Lを内旋させる余裕が少ないものの、左腕30Lあるいは左手の甲30Lがインパクト時においてアドレス時と同じ固有回旋角度にスムーズに戻ることから、ボディターンを積極的に利用したスイングを無理なく円滑に行なう上で有利となるからである。
このように、ゴルファーの身体的特徴に対応した好適なスイングタイプおよびグリップ方法を選択すると、無理なく自然にスイングすることができ、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上で有利となる効果が奏される。
【0023】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態では、固有回旋角度の定義および測定方法が第1の実施の形態と異なっている。
すなわち、第2の実施の形態では、固有回旋角度は、ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングしたとき、インパクト時またはインパクト直前時のゴルファーの利き腕でない方の腕の固有回旋角度またはゴルファーの利き腕でない方の腕(左腕30L)の手の甲31Lの固有回旋角度である。
インパクト時またはインパクト直前時の利き腕でない方の腕(左腕30L)の手の甲31Lを目標点に向けた状態を利き腕でない方の腕(左腕30L)または手の甲31Lの「基準位置」と定義した場合、「固有回旋角度」は、利き腕でない方の腕(左腕30L)または手の甲31Lが基準位置となす角度である。
なお、この場合、「利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態」とは、利き腕でない方の手の甲が目標点を向いてない場合には、利き腕でない方の手の甲が目標点を向くように、利き腕でない方の腕を意識的にあるいは意図的に回旋した状態をいう。
そして、スイングタイプの分類に際しては、固有回旋角度が第1境界角度未満であるときにスイングタイプをEタイプと分類し、固有回旋角度が第1境界角度以上であるときにスイングタイプをFタイプと分類し、第1境界角度は、30度以上40度以下の範囲内で設定される。
図5は、ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングした際のインパクト時での利き腕ではない左腕30Lをゴルファーの正面から見た状態を示す説明図であり、図5(A)はEタイプ、図4(B)はFタイプに対応している。なお、図中、利き腕とゴルフクラブの図示は省略している。
第2の実施の形態においても第1の実施の形態で説明した図2のフローチャートと同様の処理によってスイングタイプの分類がなされる。
また、固有回旋角度の測定を行なうためにスイング中のゴルファーの身体の挙動の解析が例えば3Dモーションキャプチャーを用いることでなされることは第1の実施の形態と同様である。
【0024】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、ゴルファーの身体的特徴に合ったスイングタイプでスイングすることにより、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上で有利となる効果が奏される。
【0025】
(第3の実施の形態)
次に第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態では、第1、第2の実施の形態で説明した「固有回旋角度」を用いる代わりに以下に説明する「相対回旋角度」を用いる点で第1、第2の実施の形態と異なっている。
第3の実施の形態では、ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングする過程のアドレス位置において利き腕でない方の左手の甲31Lを目標点に向けた状態を利き腕でない方の左腕30Lまたは左手の甲31Lの「基準位置」と定義した場合、「相対回旋角度」は、ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングする過程において、利き腕でない方の左腕30Lまたは左手の甲31Lが基準位置となす角度として定義される。また、相対回旋角度は、基準位置に対して利き腕でない方の腕または手の甲が内旋する方向に回旋した場合を正値で示し、基準位置に対して利き腕でない方の腕または手の甲が外旋する方向に回旋した場合を負値で示す。
なお、この場合、「利き腕でない方の手の甲を目標点に向けた状態」とは、利き腕でない方の手の甲が目標点を向いてない場合には、利き腕でない方の手の甲が目標点を向くように、利き腕でない方の腕を意識的にあるいは意図的に回旋した状態をいう。
図6は、ゴルフクラブを把持してスイングする過程におけるゴルファーの利き腕でない方の左腕30Lの相対回旋角度またはゴルファーの利き腕でない方の左腕30Lの手の甲31Lの相対回旋角度の変化を示す図である。
図6において横軸はスイングの各過程の名称を示し、縦軸は相対回旋角度を示しているが、図6では、EタイプおよびFタイプを比較しやすくするために、EタイプおよびFタイプのアドレス位置での相対回旋角度、すなわち後述する第1相対回旋角度がそれぞれ0度となるように表示している。したがって、実際のEタイプおよびFタイプの第1相対回旋角度自体は異なる値である。
【0026】
第3の実施の形態では、ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングする過程において、アドレス位置におけるゴルファーの利き腕でない方の左腕30Lの相対回旋角度またはゴルファーの利き腕でない方の左腕30Lの手の甲31Lの相対回旋角度を第1相対回旋角度とする。
したがって、第3の実施の形態における第1相対回旋角度は、第1、第2の実施の形態における固有回旋角度と同一あるいはほぼ同一の値となる。
そして、スイングする過程において、トップ位置におけるゴルファーの利き腕でない方の左腕30Lの相対回旋角度またはゴルファーの利き腕でない方の左腕30Lの手の甲31Lの相対回旋角度を第2相対回旋角度とする。
そして、第1相対回旋角度と第2相対回旋角度との差分に基づいてゴルファーのスイングを少なくとも2種類のスイングタイプに分類する。
そして、スイングタイプの分類に際しては、差分が第2境界角度未満であるときにスイングタイプをFタイプと分類し、差分が第2境界角度以上であるときにスイングタイプをEタイプと分類する。
ここで、第2境界角度は、65度以上75度以下の範囲で設定されることが、スイングタイプの分類結果に対応した以下の効果を奏する上で有利となる。例えば、第2境界角度は70度とする。
【0027】
図7のフローチャートを参照して説明すると、
まず、ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングする過程において、アドレス位置におけるゴルファーの利き腕でない方の左腕30Lの相対回旋角度またはゴルファーの利き腕でない方の左腕30Lの手の甲31Lの相対回旋角度を第1相対回旋角度として測定する(ステップS20:第1相対回旋角度測定ステップ)。
次いで、スイングする過程において、トップ位置におけるゴルファーの利き腕でない方の左腕30Lの相対回旋角度またはゴルファーの利き腕でない方の腕30Lの手の甲31Lの相対回旋角度を第2相対回旋角度として測定する(ステップS22:第2相対回旋角度測定ステップ)。
次いで、第1相対回旋角度と第2相対回旋角度との差分に基づいてゴルファーのスイングを少なくとも2種類のスイングタイプに分類する(ステップS24:スイングタイプ分類ステップ)。
図3を流用して説明すると、分類結果は、例えば、コンピュータ20によりディスプレイ26に表示され、あるいは、コンピュータ20に接続されたプリンタ28によって印刷媒体に出力されることで、ゴルファーに提示される(ステップS26:出力ステップ)。
また、第1、第2相対回旋角度の測定を行なうためにスイング中のゴルファーの身体の挙動の解析が例えば3Dモーションキャプチャーを用いることでなされることは第1、2の実施の形態と同様である。
【0028】
図6の例では、第1相対回旋角度と第2相対回旋角度との差分が85度と測定されたものが第2境界角度(70度)を上回るのでEタイプと分類されている。
また、第1相対回旋角度と第2相対回旋角度との差分が55度と測定されたものが第2境界角度(70度)を下回るのでFタイプと分類されている。
【0029】
発明者らの知見によれば、第2境界角度を上記範囲内で設定することにより、ゴルファーが分類されたスイングタイプに合わせたスイングを行なうことで、第1、第2の実施の形態と同様に、ゴルファーの身体的特徴に合ったスイングタイプでスイングすることにより、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上で有利となる効果が奏される。
【0030】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態は、第1、第2、第3の実施の形態の分類方法によるスイングタイプの分類の精度を高めるものである。
例えば、ゴルファーの固有回旋角が第1境界角度近辺の数値だった場合(言い換えると、EタイプとFタイプの境界部近辺の数値だった場合)、あるいは、第1相対回旋角度と第2相対回旋角度との差分が第2境界角度近辺の数値だった場合(言い換えると、EタイプとFタイプの境界部近辺の数値だった場合)、第1、第2、第3の実施の形態の分類方法を実行することに加えて、ゴルファーがゴルフクラブを把持してスイングする過程において、インパクト時のヘッドスピードVhとグリップスピードVgとの比Vh/Vgで定義されるリストターン比率を測定するリストターン比率測定ステップを実行し、EタイプとFタイプの分類の精度を高めても良い。
具体的には、スイングタイプ分類ステップにおいては、第1、第2、第3の実施の形態の分類方法に基づいてスイングタイプを分類しつつ、リストターン比率が大きいほどスイングタイプをEタイプに分類する傾向を高くし、リストターン比率が小さいほどスイングタイプをFタイプに分類する傾向を高くする。
すなわち、リストターン比率Vh/Vgが高いほど、グリップスピードに対するヘッドスピードが速いため、ローテーションを積極的に利用するスイング、すなわち、Eタイプが好適であると考えられるからである。
また、リストターン比率Vh/Vgが低いほど、グリップスピードに対するヘッドスピードが遅いため、ボディターンを積極的に利用するスイング、すなわち、Fタイプが好適であると考えられるからである。
【0031】
なお、リストターン比率の測定方法について具体的に説明すると、例えば、ゴルフクラブシャフトのグリップ部およびヘッドとの接合部(ホーゼル端)にマーカーをそれぞれ設け、ゴルファーがゴルフクラブをスイングした状態を撮像装置によって撮像し、撮像された画像データを解析し、各マーカーの挙動に基づいてインパクト時のヘッドスピードVhとグリップスピードVgとを求め、リストターン比率Vh/Vgを算出すればよい。
リストターン比率の測定方法として慣性センサを用いたものが知られている(例えば特開2015-139561号公報)。
これは、ゴルフクラブのグリップ部に取り付けた慣性センサを用いて、ゴルフクラブの位置および向きの時系列変化を計測するものである。すなわち、ゴルフクラブのシャフトを剛体と仮定し、シャフト軸上に延長したヘッド位置およびグリップ端位置のインパクト時の速度を算出し、グリップスピードを算出する。
なお、リストターン比率の測定方法として、上述した慣性センサを用いた測定方法に代えて、カメラや磁気センサを用いた従来公知の様々な測定方法を採用するなど任意である。
【0032】
第4の実施の形態によれば、リストターン比率Vh/Vgを考慮してスイングタイプの分類を行なうので、当該ゴルファーにとってより好適なスイングタイプを分類する上で有利となり、スイングタイプの分類の精度を高める上で有利となる。
例えば、図8(A)に示すように、第1、第2の実施の形態で測定された固有回旋角度のうち0度から30度未満をEタイプ、45度以上55度未満をFタイプと分類し、30度以上45度未満を境界タイプと分類する。
言い換えると、Eタイプ、Fタイプの何れに分類するかの判定基準となる第1境界角度を単一の数値とせずに、第1境界角度の上限値と下限値を設定して第1境界角度に幅を持たせている。また、第1境界角度の上限値と下限値をどのように設定するかは任意である。
そして、この境界タイプについては、さらにリストターン比率Vh/Vgを考慮してスイングタイプの分類を行なう。
図8(B)に示すように、本例では、リストターン比率Vh/Vgが9.5以上11未満をEタイプ、リストターン比率Vh/Vgが7以上8.5未満をFタイプと判定する。ただし、リストターン比率Vh/Vgが8.5以上9.5未満については、EタイプとFタイプの中間タイプとし、いずれのスイングタイプにも該当するものとする。
なお、リストターン比率Vh/VgをEタイプ、Fタイプの何れに分類するかの判定基準となる数値は、本例のように「8.5以上9.5未満」といったように幅を持たせてもよく、あるいは、「9.0」といった単一の値としてもよい。
また、第3の実施の形態の場合には、Eタイプ、Fタイプの何れに分類するかの判定基準となる第2境界角度を単一の数値とせずに、第2境界角度の上限値と下限値を設定して第2境界角度に幅を持たせればよく、第2境界角度の上限値と下限値をどのように設定するかは任意である。
このように、第1、第2、第3の実施の形態の分類方法によってスイングタイプが分類された際に、EタイプとFタイプの境界近傍の境界タイプにスイングタイプが分類された場合、リストターン比率Vh/Vgを考慮してスイングタイプの分類を行なうことにより、ゴルファーにとってより好適なスイングタイプを精度よく分類する上で有利となる。
【0033】
このような第4の実施の形態によれば、ゴルファーの身体的特徴に合ったスイングタイプでスイングすることにより、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上でより一層有利となる。
【0034】
(第5の実施の形態)
次に第5の実施の形態について説明する。
第5の実施の形態は、分類されたスイングタイプでスイングするためにより好適な特性を有するゴルフクラブを選定するものである。
本実施の形態では、ゴルフクラブの特性として以下に説明するフェース面上重心距離および重心深さを用いる。
【0035】
図9図10を参照して、フェース面上重心距離および重心深さについて説明する。
図9は、ゴルフクラブヘッドを水平面HPに対して予め定められたライ角およびロフト角通りに設置した基準状態とした場合のゴルフクラブの正面図、図10は、図9の平面図である。
図9図10に示すように、ゴルフクラブヘッドの重心点G0を通るフェース面12の法線とフェース面12との交点をフェース面上重心点FGとする。
フェース面上重心距離FGLは、フェース面上重心点FGとゴルフクラブヘッドに固定されるシャフトSの中心軸Xを通る直線とを通る最短直線の距離である。
重心深さGRは、図9図10に示すゴルフクラブヘッドの基準状態において、ゴルフラブヘッド10の重心点G0を水平面HPに投影した点G1から、シャフトSの中心軸Xを通る直線とを含み、かつ水平面HPに垂直な仮想面KPまでの最短距離である。
なお、図中、符号14はホーゼルを示す。
【0036】
一般的に、フェース面上重心距離FGLが短いほど、また、重心深さGRが浅い(小さい)ほど、シャフトSの中心軸Xと重心点G0が近接する傾向となることから、ゴルフラブヘッド10のシャフトS周りの回転操作が容易となる。
図11は、市販されているゴルフラブヘッドのフェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRをプロットした線図である。
図11から明らかなように、フェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRは正の相関関係にある。
【0037】
このような観点から、Eタイプ、Fタイプのスイングタイプに好適なゴルフクラブヘッドは以下のような特性を備えるものとなる。
Eタイプは、腕のローテーションを積極的に利用するスイングであることから、ゴルフラブヘッド10のシャフトS周りの回転操作が容易となることが有利となる。
一方、Fタイプは、腕のローテーションを利用することに代えてボディターンを積極的に利用するスイングであることから、ゴルフラブヘッド10のシャフトS周りの回転操作については重視する必要がない。また、フェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRの値がなるべく大きい方が、重心点G0がシャフトSの中心軸Xに沿ってグリップ16から離れる傾向となり、シャフトSの長さが長くなるのと同様な効果を奏することになり、ヘッドスピードを高める上で有利となる。
【0038】
したがって、Eタイプ向けのゴルフクラブのフェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRは、Fタイプ向けのゴルフクラブヘッドのフェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRよりもそれぞれ小さい値で設定されていることが、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上でより一層有利となる。
なお、図11において、符号A1でEタイプ向けのゴルフクラブヘッドのフェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRの範囲を示し、符号A2でFタイプ向けのゴルフクラブヘッドのフェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRの範囲を示している。
【0039】
このような第5の実施の形態によれば、分類されたスイングタイプに好適な仕様のゴルフクラブを用いることができるため、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上でより一層有利となる。
【0040】
(第6の実施の形態)
次に第6の実施の形態について説明する。
第6の実施の形態は、ゴルフクラブに、第1、第2の実施の形態で測定された回旋角度、または、第3の実施の形態で測定された第1相対回旋角度に基づいて、利き腕でない方の左腕30Lの手の親指を置く目安となるガイドラインがグリップ16に表示されている。
図12に示すように、本例では、ガイドラインは、複数の固有回旋角度または第1相対回旋角度に対応して表示されている。
例えば、ガイドライン18A、18Dは、それぞれ固有回旋角度(または第1相対回旋角度)55度、15度に対応し、ガイドライン18B、18Cはそれらの中間の角度に対応している。
すなわち、固有回旋角度または第1相対回旋角度が小さいガイドラインほど、そのガイドラインに沿って左腕30Lの手の親指を置くと、Eタイプに好適なスクエアグリップまたはスクエアグリップ寄りでグリップができるようにガイドラインが形成されている。
一方、固有回旋角度または第1相対回旋角度が大きいガイドラインほど、そのガイドラインに沿って左腕30Lの手の親指を置くと、グリップ方法がFタイプに好適なストロンググリップまたはストロンググリップ寄りでグリップができるようにガイドラインが形成されている。
なお、分類されたスイングタイプの種類に応じて単一のガイドラインを設けるようにしてもよいことは無論である。
【0041】
また、第5の実施の形態で説明したように、分類されたスイングタイプに好適な仕様となるようにゴルフクラブヘッドのフェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRを設定してもよい。
また、分類されたスイングタイプの分類結果に対応した好適な仕様としてフェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRの他にもシャフトSの調子(ゴルフクラブのシャフトSが一番しなる部分のこと)の仕様を設定してもよい。
例えば、タイプEには先調子のシャフトSを用い、タイプFには元調子のシャフトSを用いるようにしてもよい。
なお、シャフトSが先調子である場合には、シャフトSの手元が硬く先端が柔らかいため、腕のローテーションを積極的に利用するEタイプのようにトップ位置でのシャフトSのしなり具合を大きく確保できる(タメが強い)スイングに好適である。
また、シャフトSが元調子である場合には、シャフトSの手元が柔らかく先端が硬いため、ボディターンを積極的に利用するFタイプのようにトップ位置でのシャフトSのしなり具合を確保しにくい(タメが弱い)スイングに好適である。
【0042】
以上説明したように、第6の実施の形態によれば、分類されたスイングタイプに好適なグリップ方法でゴルフクラブを把持する上で有利となり、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上でより一層有利となる。
【0043】
(第7の実施の形態)
次に、第7の実施の形態について説明する。
第7の実施の形態は、ゴルフクラブ100に、第1、第2の実施の形態で測定された固有回旋角度、または、第3の実施の形態で測定された第1相対回旋角度と第2相対回旋角度との差分に基づいて分類されたスイングタイプE、Fの分類を表示するスイングタイプ表示部(不図示)がゴルフクラブ100に設けられているものである。
スイングタイプ表示部は、スイングタイプE、Fを視認可能に識別することができればよく、例えば、スイングタイプE、Fの何れかを文字や記号によって表示することで、あるいは、スイングタイプE、Fに対応する互いに異なる色で形成されたマークによって表示することで構成することができる。
スイングタイプ表示部を設ける箇所は、第6の実施の形態のようにグリップ16であっても、シャフトSであっても、ゴルフラブヘッド10であってもよい。
また、第7の実施の形態においても、分類されたスイングタイプに好適な仕様となるようにゴルフクラブヘッド10のフェース面上重心距離FGLおよび重心深さGRを設定したり、シャフトSの調子を設定してもよいことは無論である。
【0044】
このような第7の実施の形態によれば、ゴルファーは、スイングタイプ表示部を視認することで、自らが分類されたスイングタイプを認識して、分類されたスイングタイプに合致してゴルフクラブをスイングすることができるため、飛距離の向上、ミスショットの低減、ひじなどの怪我を防止する上でより一層有利となる。
【0045】
なお、従来技術で述べたように、ゴルファーがスイングを行なう際のゴルフクラブヘッドの挙動、シャフトの挙動、ゴルファーの身体の挙動を例えば、3次元モーションキャプチャーなどの手法を用いて解析して評価した評価結果を提示することが知られているが、そのような従来の評価結果に加えて、実施の形態で説明したスイングタイプの分類結果を提示するようにしてもよいことは無論である。
このように従来の評価結果に加えてスイングタイプの分類結果を提示するようにすれば、スイングの解析をより多面的に行なうことができ、ゴルファーにとってスイングを改善するために有益な情報を提供することができ、サービスの向上を図る上で有利となる。
【0046】
以下、本発明の実験例について説明する。
図13は、本発明に係る分類方法で分類したスイングタイプのうちEタイプによってゴルフクラブをスイングした場合の実験結果を示す図である。
図14は、本発明に係る分類方法で分類したスイングタイプのうちFタイプによってゴルフクラブをスイングした場合の実験結果を示す図である。
また、ゴルフクラブについては、その仕様(フェース面上重心距離FGLおよび重心深さGR)を異ならせて作成している。
Eタイプ、Fタイプのそれぞれにおいて、試料となるゴルフクラブヘッドを実験例毎に作成し、以下の4つの評価項目を測定し指数(評価点)を求めると共に、4つの指数の合計点を求めた。
【0047】
(1)ヘッドスピード
実際にゴルファーがゴルフボールをゴルフクラブヘッドで打撃した場合のヘッドスピードをドップラー式ヘッドスピード測定器で測定して指数で評価した。比較例に相当する実験例の指数を100とし指数が大きいほどヘッドスピードが高く優れていることを示す。
ここでは、20人の被験者について各実験例のゴルフクラブを用いてヘッドスピードの評価データをそれぞれ求め、各ゴルフクラブのそれぞれについて20人のヘッドスピードの評価データの平均値を求めた。そして、比較例に相当する実験例の評価データの平均値を100とし、比較例以外の実験例を指数((比較例に相当する実験例の評価データの平均値/比較例以外の実験例の評価データの平均値)×100)によって評価した。即ち、指数が高いほどヘッドスピードが高く優れている。
【0048】
(2)初速
ゴルフクラブヘッドを備えたゴルフクラブをスイングロボットに設置し、以下の条件で実打試験を行い9打点における初速の平均値を指数で評価した。比較例に相当する実験例の指数を100とし指数が大きいほど初速が速く、評価が良いことを示す。
ヘッドスピード:40m/s
ボール:株式会社プロギア製プロギアRSスピン(商品名)
打点位置は、以下の合計9打点とし、各打点で5回ずつボールを打撃した。
フェース面12の幾何学的な中心点Pcと、中心点Pcを通りフェースセンターラインCLと直交する直線上で中心点Pcからトウ方向に7mm離間した点と、ヒール方向に7mm離間した点の3打点。
フェースセンターラインCL上で中心点Pcからクラウン部方向に5mm離間した点と、この点を通りフェースセンターラインCLと直交する上5mmライン上で、上記点からトウ方向に7mm離間した点と、ヒール方向に7mm離間した点の3打点。
フェースセンターラインCL上で中心点Pcからソール部方向に5mm離間した点と、この点を通りフェースセンターラインCLと直交する下5mmライン上で、上記点からトウ方向に7mm離間した点と、ヒール方向に7mm離間した点の3打点。
【0049】
(3)飛距離
初速の試験における上記打点位置での実打試験で得られた飛距離を測定した。
合計9打点の飛距離平均値を求め、比較例に相当する実験例の指数を100とし指数が大きいほど飛距離が長く、評価が良いことを示す。
【0050】
(4)方向性
実際にゴルファーがゴルフボールをゴルフクラブヘッドで打撃した場合の方向性を指数で評価した。比較例に相当する実験例の指数を100とし指数が大きいほど方向性が良いことを示す。
ここで、方向性は以下のようにして求める。
すなわち、打球フィールドに目標点を設定してゴルファーが目標点に向かって打球する。そして打球する地点と目標点を結んだ直線と、打球されたボールが停止した点までの距離を方向ブレ幅(ヤード)として記録する。これらを1つのゴルフクラブに対して5球ずつ行い、方向ブレ幅の標準偏差の平均値を方向性の評価データとして求めた。
ここでは、20人の被験者について各実験例のゴルフクラブを用いて方向性の評価データをそれぞれ求め、各ゴルフクラブのそれぞれについて20人の方向性の評価データの平均値を求めた。そして、比較例に相当する実験例の評価データの平均値を100とし、比較例以外の実験例を指数((比較例に相当する実験例の評価データの平均値/比較例以外の実験例の評価データの平均値)×100)によって評価した。即ち、指数が高いほど方向性に優れている。
【0051】
(5)合計点
上述したヘッドスピード、初速、飛距離、方向性の4つの指数を合計したものを合計点とした。
比較例に相当する実験例の合計点を400とし合計点が大きいほど評価が良いことを示す。
【0052】
図13図14で示す各実験例で用いたゴルフクラブヘッドの各部の仕様のうち共通となる仕様は以下の通りである。
ヘッド本体12の材料:チタン合金 Ti-8Al-1Mo-1V
フェース部材14の材料:チタン合金 Ti-6Al-4V
ロフト角 10.5°
ライ角 59°
ヘッド質量 200g
ヘッド体積 460cc
【0053】
(Eタイプの実験)
次に、図13を参照してEタイプの場合の実験条件について説明する。
実験例1は、比較例であり、フェース面上重心距離FGL=45mm、重心深さGR=29mmとしている。
実験例2-11は、それぞれフェース面上重心距離FGL、重心深さGRの値を異ならせている。
また、図13の実験例2-11においては、フェース面上重心距離FGLが30mm以上40mm未満の範囲をEタイプ用の好適な仕様とし、上記範囲を下回るものをEタイプ用の好適な仕様に満たないものとする。
また、図13の実験例2-11においては、重心深さGRが15mm以上23mm未満の範囲をEタイプ用の好適な仕様とし、上記範囲を下回るものとEタイプ用の好適な仕様に満たないものとする。
なお、上記フェース面上重心距離FGL、重心深さGRのうちタイプEに好適な仕様の範囲は実験例の説明として便宜的に設定した数値であり、本発明に係るゴルフクラブの仕様は上記の範囲に限定されるものではない。
【0054】
また、各実験例1-11におけるゴルファーの固有回旋角度は15度に固定している。
なお、ゴルファーの固有回旋角度は、第1の実施の形態で説明する規定に基づいて測定しており、測定時の姿勢は、上述した基準姿勢A、すなわち、ゴルファーがゴルフクラブを把持してアドレスの姿勢をとった状態でゴルフクラブを手から離し両腕30を脱力してゴルファーの体の前に垂らした姿勢であるものとした。
また、ゴルファーの固有回旋角度は、第2の実施の形態で説明する規定に基づいて測定してもよく、あるいは、ゴルファーの固有回旋角度に代えて第3の実施の形態で説明する第1相対回旋角度を用いてもよい。
【0055】
図13を参照してEタイプの各実験例について説明する。
実験例1は比較例であり、4つの評価点が全て100であり、合計点が100である。
実験例2、3、6、7、10、11はフェース面上重心距離FGL、重心深さGRの双方がEタイプに対応した上記好適な範囲内であり、実験例1、4、5、8、9はフェース面上重心距離FGL、重心深さGRの少なくとも一方が上記好適な範囲外である。
したがって、フェース面上重心距離FGL、重心深さGRの双方が好適な範囲内にある実験例2、3、6、7、10、11の各評価点は、そうでない実験例1、4、5、8、9に比較して各評価点が高いものとなっている。
【0056】
(Fタイプの実験)
次に、図14を参照してEタイプの場合の実験条件について説明する。
実験例12は、比較例であり、フェース面上重心距離FGL=35mm、重心深さGR=19mmとしている。
実験例13-22は、それぞれフェース面上重心距離FGL、重心深さGRの値を異ならせている。
また、図14の実験例13-22においては、フェース面上重心距離FGLが40mm以上50mm未満の範囲をFタイプ用の好適な仕様とし、上記範囲を下回るものをFタイプ用の好適な仕様に満たないものとする。
また、図14の実験例13-22においては、重心深さGRが23mm以上35mm未満の範囲をFタイプ用の好適な仕様とし、上記範囲を下回るものとFタイプ用の好適な仕様に満たないものとする。
なお、上記フェース面上重心距離FGL、重心深さGRのうちタイプFに好適な仕様の範囲は実験例の説明として便宜的に設定した数値であり、本発明に係るゴルフクラブの仕様は上記の範囲に限定されるものではない。
【0057】
また、各実験例12-22におけるゴルファーの固有回旋角度は55度に固定している。
なお、ゴルファーの固有回旋角度は、図13(Eタイプの実験)と同様に、第1の実施の形態で説明する規定に基づいて測定した。
【0058】
図14を参照してFタイプの各実験例について説明する。
実験例12は比較例であり、4つの評価点が全て100であり、合計点が100である。
実験例13、14、17、18、21、22はフェース面上重心距離FGL、重心深さGRの双方がFタイプに対応した上記好適な範囲内であり、実験例15、16、19、20はフェース面上重心距離FGL、重心深さGRの少なくとも一方が上記好適な範囲外である。
したがって、フェース面上重心距離FGL、重心深さGRの双方が好適な範囲内にある実験例13、14、17、18、21、22の各評価点は、そうでない実験例12、15、16、19、20に比較して各評価点が高いものとなっている。
【0059】
したがって、実験例1-11の実験結果から明らかなようにEタイプのゴルファーがEタイプに好適な仕様のゴルフクラブを用いることによってヘッドスピード、初速、飛距離、方向性、合計点の向上を図る上で有利となっている。
また、実験例12-22の実験結果から明らかなようにFタイプのゴルファーがFタイプに好適な仕様のゴルフクラブを用いることによってヘッドスピード、初速、飛距離、方向性、合計点の向上を図る上で有利となっている。
【0060】
なお、本発明は、ドライバー、フェアウェイウッド、ユーテリティ、アイアンなどの様々なゴルフクラブヘッドに適用されることは無論のことである。
【符号の説明】
【0061】
100 ゴルフクラブ
10 ゴルフクラブヘッド
12 フェース面
14 ホーゼル
16 グリップ
18A-18D ガイドライン
20 コンピュータ
22 3Dモーションキャプチャー装置
24 入力装置
26 ディスプレイ
28 プリンタ
30 両腕
30R 右腕
30L 左腕
31L 左手の甲
32 下半身
32A 腰
32B ベルト
32 脚
38 解析装置
40 ゴルファー
42 カメラ
44 光源
46 コンピュータ
48 マーカーセット
S シャフト
X 中心軸
HP 水平面
FGL フェース面上重心距離
GR 重心深さ
G0 重心点
G1 投影した点
KP 仮想面
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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