IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋製罐グループホールディングス株式会社の特許一覧

特開2024-56310可食性ゲル状組成物、可食性塗膜の形成方法、及び可食性塗膜形成用の溶液キット
<>
  • 特開-可食性ゲル状組成物、可食性塗膜の形成方法、及び可食性塗膜形成用の溶液キット 図1
  • 特開-可食性ゲル状組成物、可食性塗膜の形成方法、及び可食性塗膜形成用の溶液キット 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056310
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】可食性ゲル状組成物、可食性塗膜の形成方法、及び可食性塗膜形成用の溶液キット
(51)【国際特許分類】
   C09D 193/00 20060101AFI20240416BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20240416BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240416BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240416BHJP
   A23L 29/231 20160101ALI20240416BHJP
   A23L 29/256 20160101ALI20240416BHJP
   C08L 3/14 20060101ALI20240416BHJP
   C08L 5/04 20060101ALI20240416BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240416BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240416BHJP
【FI】
C09D193/00
B05D5/00 Z
B05D7/24 301C
B05D1/36 B
B05D7/24 302C
A23L29/231
A23L29/256
C08L3/14
C08L5/04
C08J5/18 CEP
C08J7/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163101
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 大地
(72)【発明者】
【氏名】長▲濱▼ 英昭
(72)【発明者】
【氏名】前田 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】三木 祥平
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 沙耶
【テーマコード(参考)】
4B041
4D075
4F006
4F071
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4B041LC10
4B041LD01
4B041LH06
4B041LH10
4B041LK02
4B041LP09
4D075AA01
4D075AE06
4D075CA07
4D075DC38
4D075DC41
4D075EA06
4D075EB07
4D075EB52
4D075EB56
4D075EC08
4F006AA11
4F006AA31
4F006AB03
4F006AB73
4F006BA11
4F006CA07
4F006DA04
4F006EA01
4F071AA08
4F071AB15
4F071AB17
4F071AE02
4F071AE19
4F071AF14
4F071AG05
4F071AH05
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC02
4J002AB04W
4J002AB05X
4J002DD066
4J002DE086
4J002FD146
4J002GF00
4J002GG00
4J002GT00
4J038BA152
4J038BA171
4J038MA08
4J038MA15
4J038PB02
4J038PB04
(57)【要約】
【課題】各種容器類又は食器類などの基材表面に、可食性ゲル状組成物からなる塗膜を十分なゲル強度を以て形成することで、使用に際しての防汚性を高めることによって、洗浄などの手間を低減してそれらを繰り返し再利用できるようにする。
【解決手段】ローメトキシペクチンとアルギン酸とを含む水溶液Aを塗布した後に、その上に重ねて金属塩を含む水溶液Bを塗布することによって、ローメトキシペクチンとアルギン酸とに金属イオンを接触させて、これらをゲル化させることによって、可食性ゲル状組成物からなる塗膜1を形成する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローメトキシペクチンと、アルギン酸と、金属塩とを含むことを特徴とする可食性ゲル状組成物。
【請求項2】
前記アルギン酸100重量部に対する前記ローメトキシペクチンの含有量が、0.1~250重量部である請求項1に記載の可食性ゲル状組成物。
【請求項3】
前記金属塩が、カルシウム塩である請求項1又は2に記載の可食性ゲル状組成物。
【請求項4】
ローメトキシペクチンとアルギン酸とを含む水溶液Aと、金属塩を含む水溶液Bとを別々に調製し、基材表面に前記水溶液Aを塗布した後に、その上に重ねて前記水溶液Bを塗布することによって、前記ローメトキシペクチンと前記アルギン酸とに金属イオンを接触させて、これらをゲル化させることによって、前記基材表面に塗膜を形成することを特徴とする可食性塗膜の形成方法。
【請求項5】
前記水溶液Aに含まれる前記アルギン酸100重量部に対する前記ローメトキシペクチンの含有量が、0.1~250重量部となるように調製された請求項4に記載の可食性塗膜の形成方法。
【請求項6】
前記水溶液Aは、常温でせん断速度72~120s-1における粘度が600mPa・s未満となるように調製された請求項4又は5に記載の可食性塗膜の形成方法。
【請求項7】
前記水溶液A及び前記水溶液Bは、スプレーによる噴霧によってそれぞれ塗布する請求項6に記載の可食性塗膜の形成方法。
【請求項8】
ローメトキシペクチンとアルギン酸とを含む水溶液Aと、金属塩を含む水溶液Bとを含むことを特徴とする可食性塗膜形成用の溶液キット。
【請求項9】
前記水溶液Aに含まれる前記アルギン酸100重量部に対する前記ローメトキシペクチンの含有量が、0.1~250重量部となるように調製された請求項8に記載の可食性塗膜形成用の溶液キット。
【請求項10】
前記水溶液Aは、常温でせん断速度72~120s-1における粘度が600mPa・s未満となるように調製された請求項8又は9に記載の可食性塗膜形成用の溶液キット。
【請求項11】
前記水溶液A及び前記水溶液Bは、それぞれスプレー容器に収容される請求項10に記載の可食性塗膜形成用の溶液キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性ゲル状組成物、可食性塗膜の形成方法、及び可食性塗膜形成用の溶液キットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題に対する意識が高まっており、例えば、特許文献1には、使い捨てのプラスチック製容器の代替品として、アルギン酸塩を主成分とする可食容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-363324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、そのような可食容器が好んで食されるとは考え難く、市場に受け入れられたとしても使い捨てされてしまうことになり兼ねない。
【0005】
本発明者らは、従来の「使い捨て」という考えを改めて、リデュースの観点から、例えば、各種容器類又は食器類などの基材表面に、可食性ゲル状組成物からなる塗膜を十分なゲル強度を以て形成することで、使用に際しての防汚性を高めることによって、洗浄などの手間を低減してそれらを繰り返し再利用できるようにすべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る可食性ゲル状組成物は、ローメトキシペクチンと、アルギン酸と、金属塩とを含む構成としてある。
【0007】
また、本発明に係る可食性塗膜の形成方法は、ローメトキシペクチンとアルギン酸とを含む水溶液Aと、金属塩を含む水溶液Bとを別々に調製し、基材表面に前記水溶液Aを塗布した後に、その上に重ねて前記水溶液Bを塗布することによって、前記ローメトキシペクチンと前記アルギン酸とに金属イオンを接触させて、これらをゲル化させることによって、前記基材表面に塗膜を形成する方法としてある。
【0008】
また、本発明に係る可食性塗膜形成用の溶液キットは、ローメトキシペクチンとアルギン酸とを含む水溶液Aと、金属塩を含む水溶液Bとを含む構成としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可食性ゲル状組成物からなる塗膜を十分なゲル強度を以て形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る可食性ゲル状組成物の利用の一例を示す説明図である。
図2】ゲル強度の測定治具の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
本実施形態に係る可食性ゲル状組成物は、例えば、図1に示す平皿などの食器類2の表面を覆う塗膜1を形成するために利用することができる。これにより、盛り付けられた料理などが食器類2に直接触れるのを避けて、喫食後の後かたづけに際しては、可食性ゲル状組成物からなる塗膜1を剥離するだけで食器類2の洗浄を不要としたり、期せずして付着した残滓を洗浄する必要がある場合であっても、洗浄の手間や洗浄水の使用量を大幅に削減したりすることを可能とする。
【0013】
また、可食性ゲル状組成物は、可食性の天然成分由来の組成物とすることで、料理に紛れて人間の口に入っても問題はなく、廃棄するに際しても、肥料や飼料などとしての二次利用も可能であり、自然環境において微生物によって分解され得ることから、自然環境に与える負荷も低減できる。
【0014】
本実施形態において、可食性ゲル状組成物は、ローメトキシペクチンと、アルギン酸と、金属塩とを含む。
【0015】
アルギン酸は、褐藻類から抽出される多糖類である。純粋なアルギン酸は水に不溶であることから、本実施形態において、可食性ゲル状組成物中に含まれるアルギン酸は、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩などの水に可溶なアルギン酸塩として含まれているのが好ましく、水に対する溶解度が高いことなどから、アルギン酸ナトリウムとして含まれているのが特に好ましい。
【0016】
また、アルギン酸は、β-D-マンヌロン酸(M)とα-L-グルロン酸(G)の二種類のブロックが1,4-グリコシド結合した直線状のポリマーであり、孤立電子対を有する官能基と金属イオンとの配位結合により、いわゆるエッグボックス構造をとることによってゲル化すると考えられている。その際、Gブロックの含有率が高いと、金属イオンを取り込み易くなってゲル強度が高くなることから、MブロックとGブロックの量的比率(M/G比)は、0.1~1.3であるのが好ましく、0.1~0.6であるのがより好ましい。
【0017】
ペクチンは、ガラクツロン酸を主体とする複合多糖類であり、そのエステル化度によって、ハイメトキシペクチンとローメトキシペクチンとに大別され、ローメトキシペクチンは、アルギン酸と同様に、孤立電子対を有する官能基と金属イオンとの配位結合によるエッグボックス構造をとることによってゲル化すると考えられている。
【0018】
ローメトキシペクチンは、一般に、そのエステル化度は42.9%以下とされているが、本実施形態において、可食性ゲル状組成物中に含まれるローメトキシペクチンのエステル化度は、6~40%であるのが好ましく、6~12%であるのがより好ましい。
【0019】
金属塩は、ローメトキシペクチンとアルギン酸とをゲル化させる金属イオンを含んでいれば特に限定されない。これらが安定にエッグボックス構造をとる上で、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン、アルミニウムイオン、銅イオン、亜鉛イオンなどの二価以上の金属イオンを含む金属塩が好ましい。より具体的には、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、クエン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、乳酸カルシウム、リン酸カルシウム、グルタミン酸カルシウム、アスパラギン酸カルシウムなどのカルシウム塩が、可食性の観点から好ましい。
【0020】
前述したように、食器類2の表面を覆う塗膜1を可食性ゲル状組成物により形成するにあたっては、ローメトキシペクチンとアルギン酸(水に可溶なアルギン酸塩)とを含む水溶液Aと、金属塩を含む水溶液Bとを別々に調製しておき、食器類2の表面に水溶液Aを塗布した後に、その上に重ねて水溶液Bを塗布することによって、ローメトキシペクチンとアルギン酸とに金属イオンを接触させて、これらをゲル化させるようにすればよい。
【0021】
これらの水溶液A,Bを食器類に塗布するにあたり、その塗布方法は特に限定されない。例えば、はけ塗り、ヘラ塗り、ローラブラシ塗り、ディップコートなどによってもよいが、塗膜1がより均一に形成されるようにする上で、スプレーによる噴霧によって塗布するのが好ましい。均一な塗膜1をより良好に形成できることから、エアゾール式のスプレーによる噴霧によって塗布するのが特に好ましい。
【0022】
スプレーによる噴霧、特に、エアゾール式のスプレーによる噴霧を可能とする上で、ローメトキシペクチンとアルギン酸とを含む水溶液Aは、常温(例えば、15~25℃)でせん断速度72~120s-1における粘度が、好ましくは600mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは400mPa・s以下となるように調製するのが好ましい。スプレー容器の性能にもよるが、特に、400mPa・s以下とすることで、噴霧対象に対して十分な液量を速やかに噴霧することができる。
【0023】
また、可食性ゲル状組成物からなる塗膜1を介して食器類2に盛り付けられた料理を喫食する際に、箸、スプーン、フォーク、ナイフなどのカトラリー類が可食性ゲル状組成物を突き破ってしまったりするのは好ましくない。このような不具合を有効に抑制するために、可食性ゲル状組成物は、十分なゲル強度を以て塗膜1を形成できるのが好ましい。
ここで、塗膜1のゲル強度は、鉛直方向に沿って降下させたピン状の押圧体を塗膜1の表面に突き刺して、当該押圧体の先端が塗膜1の表面を突き破る際の最大応力とするものとし、その具体的な測定方法は後述の実施例に示す。
【0024】
可食性ゲル状組成物のゲル強度を向上させるには、例えば、可食性ゲル状組成物に含まれるアルギン酸の含有量を多くすることが考えられるが(後述の比較例1~5参照)、そうすると、水溶液Aを調製する際に、アルギン酸含有量の増加に伴ってその粘度が高くなってしまい、スプレーによる噴霧(特に、エアゾール式のスプレーによる噴霧)が難しくなってしまう。このため、本実施形態にあっては、塗布方法に応じて、水溶液Aの粘度を所望の粘度に調整できる範囲の含有量でアルギン酸を含むとともに、アルギン酸と同様に、エッグボックス構造をとることによってゲル化するローメトキシペクチンを含ませて、これらを一緒にゲル化させることによって、可食性ゲル状組成物のゲル強度を向上させている。このようにして、可食性ゲル状組成物のゲル強度を向上させるにあたり、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量は、好ましくは0.1~250重量部であり、より好ましくは1~250量部であり、さらに好ましくは40重量部未満である。
【0025】
このような観点から、ローメトキシペクチンとアルギン酸とを含む水溶液Aを調製するにあたっては、アルギン酸の濃度は、1~2.5重量%であるのが好ましく、1~2.0重量%であるのがより好ましい。
【0026】
アルギン酸とともにローメトキシペクチンを含ませて、これらを一緒にゲル化させることによって、可食性ゲル状組成物のゲル強度が向上するメカニズムは明確には解明できていないが、可食性ゲル状組成物のゲル強度が向上するのは事実であり、このことは、後述する実施例からも確認できる。
【0027】
以上のような本実施形態において、ローメトキシペクチンとアルギン酸とを含む水溶液Aと、金属塩を含む水溶液Bとは、これらを含む可食性塗膜形成用の溶液キットとして市場に供されるようにすることができる。その際、水溶液Aは、前述したように、常温でせん断速度72~120s-1における粘度が、好ましくは600mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは400mPa・s以下となるように調製する。水溶液Aと水溶液Bとは、それぞれスプレー容器に収容されて、これらをスプレーによって噴霧できるようにするのが好ましい。
【実施例0028】
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
【0029】
[実施例1]
水溶液Aの調製
精製水を攪拌しながら2.0重量%のアルギン酸ナトリウム(キミカ社製:キミカアルギン)を徐々に加えて、ダマが残らないように攪拌を続けることによって均一に溶解させ、次いで、0.1重量%のローメトキシペクチン(三昌社製:GENU pectinLM-5CSJ)を加えて均一に溶解させることによって、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が5重量部となるように水溶液Aを調製した。調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、296mPa・sであった。
【0030】
水溶液Bの調製
金属塩として10重量%の塩化カルシウム(和光純薬工業社製)を精製水に均一に溶解させることによって水溶液Bを調製した。
【0031】
ゲル強度の測定
図2に示すように、縦12mm×横20mm×深さ5mmの賦形部4が上面に刻設された測定治具3を用意し、当該賦形部4に水溶液Aを550μL注入した。次いで、水溶液Aに対して十分な量の水溶液Bを注入して、水溶液A中のローメトキシペクチンとアルギン酸とをゲル化させて塗膜を形成した。塗膜が形成されたのを確認した後、測定治具3を水平に固定し、先端面が直径4mmの平坦な円形状に形成されたピン状の押圧体を鉛直方向に沿って30mm/分の速度で降下させ、賦形部4内に形成された塗膜の表面に突き刺して、当該押圧体の先端が塗膜の表面を突き破る際の最大応力を測定した。その結果は、5.78Nであった。
【0032】
[実施例2]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を0.2重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が10重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、5.19Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、331mPa・sであった。
【0033】
[実施例3]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を0.3重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が15重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、4.31Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、334mPa・sであった。
【0034】
[実施例4]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を0.4重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が20重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、5.29Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、334mPa・sであった。
【0035】
[実施例5]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を0.5重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が25重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、4.49Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、342mPa・sであった。
【0036】
[実施例6]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を0.6重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が30重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、3.72Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、357mPa・sであった。
【0037】
[実施例7]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を0.7重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が35重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、3.92Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、360mPa・sであった。
【0038】
[実施例8]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を0.8重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が40重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、3.63Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、364.3mPa・sであった。
【0039】
[実施例9]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を0.9重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が45重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、3.43Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、371mPa・sであった。
【0040】
[実施例10]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を1.0重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が50重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、3.43Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、397mPa・sであった。
【0041】
[実施例11]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を2.0重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が100重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、3.72Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、512mPa・sであった。
【0042】
[実施例12]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を3.0重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が150重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、3.63Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、648mPa・sであった。
【0043】
[実施例13]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を4.0重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が200重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、3.63Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、812mPa・sであった。
【0044】
[実施例14]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.0重量%、ローメトキシペクチンの濃度を5.0重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が250重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、3.53Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、1038mPa・sであった。
【0045】
[実施例15]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.5重量%、ローメトキシペクチンの濃度を0.5重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が5重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、4.48Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、670mPa・sであった。
【0046】
[実施例16]
アルギン酸ナトリウムの濃度を2.5重量%、ローメトキシペクチンの濃度を1.0重量%として、アルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量が40重量部となるように水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、4.04Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、704mPa・sであった。
【0047】
[比較例1]
ローメトキシペクチンを含まずに、1.0重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液として水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、1.61Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度120s-1における粘度を測定したところ、44.5mPa・sであった。
【0048】
[比較例2]
ローメトキシペクチンを含まずに、1.5重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液として水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、2.20Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度120s-1における粘度を測定したところ、124mPa・sであった。
【0049】
[比較例3]
ローメトキシペクチンを含まずに、2.0重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液として水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、2.50Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度120s-1における粘度を測定したところ、272mPa・sであった。
【0050】
[比較例4]
ローメトキシペクチンを含まずに、2.5重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液として水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、3.87Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、552mPa・sであった。
【0051】
[比較例5]
ローメトキシペクチンを含まずに、3.0重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液として水溶液Aを調製した以外は、実施例1と同様にして塗膜のゲル強度を測定した。その結果は、5.30Nであった。
また、調製された水溶液Aについて、常温でのせん断速度72s-1における粘度を測定したところ、973mPa・sであった。
【0052】
実施例1~16におけるゲル強度、粘度についての評価を表1に示す。
[ゲル強度の評価基準]
アルギン酸ナトリウムの濃度が同じアルギン酸ナトリウム単独の水溶液を水溶液Aとした場合と比較して、ゲル強度が向上しているものを「〇」とした。
[粘度の評価基準]
エアゾール式のスプレー容器を改良しつつ、アルギン酸ナトリウム単独で濃度を調整して噴霧適性を検討したところ、比較例4で調整した水溶液Aにあっては、噴霧対象に対して十分な液量を速やかに噴霧することができず、ゲル化による塗膜形成に必要な液量が噴霧されるまで時間を要するものの噴霧可能であった。このことに鑑みて、比較例4を基準に、552mPa・s未満を「〇」、552mPa・s以上を「△」とした。
【0053】
【表1】
※:表中、[A]はアルギン酸ナトリウムの濃度、[B]はローメトキシペクチンの濃度、[C]はアルギン酸100重量部に対するローメトキシペクチンの含有量である。
【0054】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0055】
例えば、前述した実施形態では、食器類2の表面に可食性ゲル状組成物からなる塗膜1を形成し、盛り付けられた料理などが食器類2に直接触れるのを避けて、その防汚性を高めた使用例を挙げて説明したが、これに限定されない。食器類に限らず、各種容器類、さらには、従来は使い捨てされていたプラスチック製又は紙製の食器類又は容器類などの基材表面に、可食性ゲル状組成物からなる塗膜を十分なゲル強度を以て形成することで、それらを使用する際の防汚性を高めることができる。これによって、洗浄などの手間を低減してそれらを繰り返し再利用できるようにすることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 塗膜(可食性ゲル状組成物)
2 食器類(基材)
図1
図2