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特開2024-56321常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通ホイップドコンパウンドクリーム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056321
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通ホイップドコンパウンドクリーム
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20240416BHJP
   A23D 7/01 20060101ALI20240416BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20240416BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A23D7/00 508
A23D7/01
A23L9/20
A23G3/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163118
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 立志
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 敬宏
【テーマコード(参考)】
4B014
4B025
4B026
【Fターム(参考)】
4B014GG11
4B014GG14
4B014GK07
4B014GL06
4B014GL07
4B014GL10
4B014GP01
4B014GP04
4B014GP12
4B014GP26
4B014GY01
4B025LB21
4B025LG13
4B025LG15
4B025LG16
4B025LG24
4B025LG26
4B025LG27
4B025LG53
4B025LK01
4B025LP04
4B025LP10
4B025LP11
4B025LP12
4B025LP16
4B026DC06
4B026DG03
4B026DG15
4B026DH01
4B026DH02
4B026DH03
4B026DK03
4B026DK10
4B026DL03
4B026DL04
4B026DP01
4B026DP04
4B026DP10
4B026DX04
(57)【要約】
【課題】トランス脂肪酸含量及びパーム核ステアリンの含量が少なくても、口溶けが良好で、常温での保形性と離水耐性に優れる常温流通ホイップドコンパウンドクリーム、及び、該ホイップドコンパウンドクリームを作製するための起泡性コンパウンドクリームを安価に提供すること。
【解決手段】起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂中の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下、且つ前記油脂全体中、パーム核ステアリンの含有量が30重量%以下であり、前記油脂の上昇融点が29~37℃の起泡性コンパウンドクリームであって、起泡性コンパウンドクリーム全体中、前記油脂を25~38重量%、糖質(固形分換算)を27~40重量%、蛋白質(固形分換算)を0.5~3.5重量%、乳化剤を0.1~3重量%、水分を25~39重量%含有し、前記油脂全体中、油脂Aを45~97重量%、及び乳脂肪を3~55重量%含有する、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム。油脂A:構成脂肪酸全体中、炭素数14以下の飽和脂肪酸を66~75重量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸を23~28重量%、不飽和脂肪酸を2~8重量%含有し、且つ、上昇融点が31~35℃。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂中の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下、且つ前記油脂全体中、パーム核ステアリンの含有量が30重量%以下であり、前記油脂の上昇融点が29~37℃の起泡性コンパウンドクリームであって、
起泡性コンパウンドクリーム全体中、前記油脂を25~38重量%、糖質(固形分換算)を27~40重量%、蛋白質(固形分換算)を0.5~3.5重量%、乳化剤を0.1~3重量%、水分を25~39重量%含有し、
前記油脂全体中、油脂Aを45~97重量%、及び乳脂肪を3~55重量%含有する、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム。
油脂A:構成脂肪酸全体中、炭素数14以下の飽和脂肪酸を66~75重量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸を23~28重量%、不飽和脂肪酸を2~8重量%含有し、且つ、上昇融点が31~35℃。
【請求項2】
油脂Aがパーム核極度硬化油と、パーム核油及び/又はヤシ油とのエステル交換油脂である、請求項1に記載の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム。
【請求項3】
前記乳化剤が乳化剤Xを含有し、
前記乳化剤Xの含有量が、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中、0.03~0.45重量%である、請求項1に記載の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム。
乳化剤X:構成脂肪酸全体中、炭素数8~14の飽和脂肪酸を60~100重量%含み、HLBが12~18、重合度が8~12であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は構成脂肪酸全体中、炭素数8~14の飽和脂肪酸を60~100重量%含み、HLBが12~18であるショ糖脂肪酸エステル。
【請求項4】
請求項1~3の何れかに記載の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームがホイップされた、常温流通ホイップドコンパウンドクリーム。
【請求項5】
請求項4に記載の常温流通ホイップドコンパウンドクリームを含む食品。
【請求項6】
常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム全体中、油脂含量が25~38重量%、糖質含量(固形分換算)が27~40重量%、蛋白質含量(固形分換算)が0.5~3.5重量%、乳化剤含量が0.1~3重量%、水分含量が25~39重量%であり、前記油脂全体中、油脂Aの含量が45~97重量%、乳脂肪の含量が3~55重量%となるように、油脂A、糖質、蛋白質、乳化剤、水、及び必要に応じて乳脂肪を含有する混合物、並びに生クリームを調製し、
前記混合物に対し、予備乳化、1段目は2~4MPa及び2段目は1~2MPaの加圧条件で均質化、殺菌、及び予備冷却を実施してから、1段目を6~18MPa及び2段目を2~6MPaの加圧条件で均質化処理することにより乳化した後、冷却して起泡性水中油型乳化油脂組成物を得、
得られた前記起泡性水中油型乳化油脂組成物と、前記生クリームを混合する、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通ホイップドコンパウンドクリームに関する。
【背景技術】
【0002】
パンや菓子にサンドしたりトッピングするホイップドクリームは、常温、チルド、又は冷凍状態で流通するが、その内、常温流通するものは、常温での保形性、離水耐性と良好な口溶けが求められる。また、ホイップドクリームには、油脂成分として乳脂肪のみを含むもの、植物性油脂のみを含むもの、乳脂肪と植物性油脂の両方を含むものがある。これらホイップドクリームとしては、常温での保形性や離水耐性のような物性が安定で、且つ、乳風味が豊かな点において、乳脂肪と植物性油脂の両方を含む、所謂、ホイップドコンパウンドクリームが好まれる。しかしながら、乳脂肪を含むホイップドコンパウンドクリームは、乳脂肪が増えると乳風味が豊かになるものの、常温では保形性が低下したり、離水が発生しやすい。かつては、それらの欲求を満たすために部分水素添加油脂が使用されることが多かったが、健康への悪影響が懸念されるトランス脂肪酸を含むため、近年はその使用が敬遠されている。また、ホイップドクリームの保形性や離水耐性を改善するために、融点の高い油脂を使用すると口溶けが悪くなるという問題がある。そこで、通常は値段が高くても、パーム核ステアリンが油脂として主に使用されている。
【0003】
これらの問題を解決するために、例えば、特許文献1には、油相中に、SUSで表されるトリグリセリドを60質量%以上およびUSUで表されるトリグリセリドを0.3質量%以上含有することで、口溶けや安定性に優れ、生クリームと同時混合時の作業性に優れる起泡性水中油型乳化組成物が開示されている。しかしながら、油脂の構成脂肪酸については検討されておらず、実施例における評価も20℃で20時間しか保形性が保てず、常温での保形性や離水耐性は十分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-223176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、トランス脂肪酸含量及びパーム核ステアリンの含量が少なくても、口溶けが良好で、常温での保形性と離水耐性に優れる常温流通ホイップドコンパウンドクリーム、及び、該ホイップドコンパウンドクリームを作製するための起泡性コンパウンドクリームを安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、トランス脂肪酸及びパーム核ステアリン含有量が特定量以下であって、特定の油脂、糖質、蛋白質、乳化剤、及び水分をそれぞれ特定量含む常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームをホイップしたホイップドコンパウンドクリームは、トランス脂肪酸含有量及びパーム核ステアリン含量が少なくても、口溶けが良好で、常温での保形性と離水耐性に優れており、安価に提供できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第一は、起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂中の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下、且つ前記油脂全体中、パーム核ステアリンの含有量が30重量%以下であり、前記油脂の上昇融点が29~37℃の起泡性コンパウンドクリームであって、起泡性コンパウンドクリーム全体中、前記油脂を25~38重量%、糖質(固形分換算)を27~40重量%、蛋白質(固形分換算)を0.5~3.5重量%、乳化剤を0.1~3重量%、水分を25~39重量%含有し、前記油脂全体中、油脂Aを45~97重量%、及び乳脂肪を3~55重量%含有する、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームに関する。油脂A:構成脂肪酸全体中、炭素数14以下の飽和脂肪酸を66~75重量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸を23~28重量%、不飽和脂肪酸を2~8重量%含有し、且つ、上昇融点が31~35℃。好ましい実施態様は、油脂Aがパーム核極度硬化油と、パーム核油及び/又はヤシ油とのエステル交換油脂である、前記常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームに関する。好ましい実施態様は、前記乳化剤が乳化剤Xを含有し、前記乳化剤Xの含有量が、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中、0.03~0.45重量%である、前記常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームに関する。乳化剤X:構成脂肪酸全体中、炭素数8~14の飽和脂肪酸を60~100重量%含み、HLBが12~18、重合度が8~12であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は構成脂肪酸全体中、炭素数8~14の飽和脂肪酸を60~100重量%含み、HLBが12~18であるショ糖脂肪酸エステル。本発明の第二は、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームがホイップされた、常温流通ホイップドコンパウンドクリームに関する。本発明の第三は、常温流通ホイップドコンパウンドクリームを含む食品に関する。本発明の第四は、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム全体中、油脂含量が25~38重量%、糖質含量(固形分換算)が27~40重量%、蛋白質含量(固形分換算)が0.5~3.5重量%、乳化剤含量が0.1~3重量%、水分含量が25~39重量%であり、前記油脂全体中、油脂Aの含量が45~97重量%、乳脂肪の含量が3~55重量%となるように、油脂A、糖質、蛋白質、乳化剤、水、及び必要に応じて乳脂肪を含有する混合物、並びに生クリームを調製し、前記混合物に対し、予備乳化、1段目は2~4MPa及び2段目は1~2MPaの加圧条件で均質化、殺菌、及び予備冷却を実施してから、1段目を6~18MPa及び2段目を2~6MPaの加圧条件で均質化処理することにより乳化した後、冷却して起泡性水中油型乳化油脂組成物を得、得られた前記起泡性水中油型乳化油脂組成物と、前記生クリームを混合する、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、トランス脂肪酸含量及びパーム核ステアリンの含量が少なくても、口溶けが良好で、常温での保形性と離水耐性に優れる常温流通ホイップドコンパウンドクリーム、及び、該ホイップドコンパウンドクリームを作製するための起泡性コンパウンドクリームを安価に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、更に詳細に説明する。本発明の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームは、乳脂肪と植物性油脂の両方を使用した起泡性クリームであり、植物性油脂のみを含む起泡性水中油型乳化油脂組成物の植物性油脂の一部を乳脂肪に置き換えたものや、植物性油脂を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物と生クリームを混合したものを例示でき、何れも常温での保形性、離水耐性に優れているため、常温流通に適している。
【0010】
前記常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームは、乳脂肪が生クリーム由来の場合、植物性油脂を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物の原料として生クリームが乳化前に混合(先合わせともいう)されたものでも良いし、植物性油脂を含む乳化された起泡性水中油型乳化油脂組成物と生クリームが混合(後合わせともいう)されたものでも良く、どちらの場合も前記常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームとなるように成分を設計すれば良い。また、前記植物性油脂を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物の油脂中には、乳脂肪を含んでもいいし、含まなくても良い。
【0011】
前記起泡性水中油型乳化油脂組成物は、油脂と、必要に応じて油脂以外の油溶性原料とを含む油相、及び、水と必要に応じて水溶性原料とを含む水相からなる、水中油型の乳化物で、起泡性を有する。
【0012】
前記常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームは、トランス脂肪酸及びパーム核ステアリン含有量が特定量以下であって、特定の油脂A及び乳脂肪を特定量含む油脂、糖質、蛋白質、乳化剤、及び水分をそれぞれ特定量含むものである。このような常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームは、ホイップすることで、常温流通ホイップドコンパウンドクリームとなり、常温流通に好適に用いることができる。
【0013】
ここで、本発明における常温とは、一般に冷凍・冷蔵(チルド)・常温の3種類で呼ばれる配送・保管時の温度帯の1つであり、例えば、15~30℃であってよく、15~25℃であってよい。また流通とは、ホイップドクリーム作製直後から喫食されるまでをいう。
【0014】
前記コンパウンドクリームに含まれる油脂の構成脂肪酸として、トランス脂肪酸含有量は少なければ少ない程良く、前記構成脂肪酸全体中5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下が更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。ここで、トランス脂肪酸とは、トランス型の二重結合を持つ不飽和脂肪酸のことをいう。なお、トランス脂肪酸含有量を少なくするには、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物に部分硬化油(部分水素添加油)を配合しないか、又は、その含有量を低減すればよい。
【0015】
起泡性コンパウンドクリームを安価に提供する観点から、前記パーム核ステアリンの含有量は少なければ少ない程良く、前記起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂全体中30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましく、10重量%以下が更に好ましく、5重量%以下が特に好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0016】
また、前記常温流通ホイップドクリームの口溶けを損なうことなく、常温での保形性と離水耐性を良好にするため、前記起泡性コンパウンドクリーム中の油脂の上昇融点は29~37℃が好ましく、29~35℃がより好ましく、30~34℃が更に好ましい。
【0017】
前記起泡性コンパウンドクリームは、油脂を、前記コンパウンドクリーム全体中、25~38重量%含有することが好ましく、28~35重量%含有することがより好ましい。油脂の含有量が25重量%より少ないと、ホイップ時間が長くなりすぎる場合がある。また、38重量%より多いと、前記起泡性コンパウンドクリームの安定性やホイップ性が悪くなる場合がある。本開示において、起泡性コンパウンドクリームの安定性とは、ホイップ前のクリームの状態において、製造時や、製品温度の上昇又は輸送中の振動によっても著しい粘度上昇や固化(ボテとも称される)が生じないことをいい、ホイップ性とは、ホイップの際のホイップ時間、硬さ、オーバーラン、造花性をいう。
【0018】
前記起泡性コンパウンドクリームに含まれる前記油脂は、油脂A及び乳脂肪をそれぞれ特定量含むことが好ましい。ここで前記油脂Aとは、油脂Aの構成脂肪酸全体中、炭素数14以下の飽和脂肪酸を66~75重量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸を23~28重量%、不飽和脂肪酸を2~8重量%含有し、且つ、上昇融点が31~35℃の植物性油脂のことをいう。
【0019】
前記炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量は、油脂Aの構成脂肪酸全体中66~72重量%が好ましく、68~72重量%がより好ましい。炭素数14以下の飽和脂肪酸の含有量が66重量%より少ないと、ホイップドコンパウンドクリームの口溶けが劣る場合がある。また、75重量%より多いと、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性や離水耐性が悪くなる場合がある。
【0020】
前記炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量は、油脂Aの構成脂肪酸全体中24~28重量%が好ましく、25~27重量%がより好ましい。炭素数16以上の飽和脂肪酸の含有量が23重量%より少ないと、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性や離水耐性が悪くなる場合がある。また、28重量%より多いと、ホイップドコンパウンドクリームの口溶けが劣る場合がある。
【0021】
前記不飽和脂肪酸の含有量は2~7重量%が好ましく、2~6重量%がより好ましい。不飽和脂肪酸の含有量が2重量%より少ないと、ホイップドコンパウンドクリームの口溶けが劣る場合がある。また、8重量%より多いと、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性や離水耐性が悪くなる場合がある。
【0022】
前記油脂Aの上昇融点は、31~34℃が好ましく、32~34℃がより好ましい。上昇融点が31℃より低いと、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性や離水耐性が悪くなる場合がある。また、35℃より高いと、前記起泡性コンパウンドクリームの安定性やホイップ性が悪くなる場合がある。前記上昇融点は、基準油脂分析試験法3.2.2.2融点(上昇融点)に記載の方法により測定することができる。
【0023】
油脂Aは、上記条件を満たす食用油脂であれば特に限定されないが、具体的には、パーム核極度硬化油と、パーム核油及び/又はヤシ油とのエステル交換油脂が好ましい。
【0024】
油脂Aの含有量は、前記起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂全体中45~97重量%が好ましく、50~95重量%がより好ましく、65~93重量%が更に好ましい。油脂全体中の油脂Aの含有量が45重量%より少ないと、ホイップドコンパウンドクリームの口溶けが劣る、又は常温での保形性や離水耐性が悪くなる場合がある。また、97重量%を超えると乳風味が不足する場合がある。
【0025】
前記乳脂肪としては、バターオイル、生クリーム、バター、バターミルク、バターミルクパウダー、生乳、牛乳、全粉乳、濃縮乳、チーズ、サワークリーム、無糖練乳、加糖練乳等の乳原料由来のもの、又は、前記乳原料に含まれる乳脂肪分が例示でき、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。前記乳脂肪は、風味の観点から、生クリーム由来の乳脂肪であることが好ましい。なお、前記生クリームとは、乳等省令で定義される「生乳、牛乳または特別牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去し、乳脂肪分が18.0%以上にしたもの」をいう。
【0026】
前記乳脂肪の含有量は、前記起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂全体中、3~55重量%が好ましく、5~50重量%がより好ましく、7~35重量%が更に好ましい。油脂全体中の乳脂肪含量が3重量%より少ないと、乳風味が不足する場合があり、55重量%より多いと前記起泡性コンパウンドクリームをホイップしたホイップドクリームの常温での保形性や離水耐性が悪化する場合がある。
【0027】
油脂A及び乳脂肪以外に使用可能な油脂としては、特に限定されないが、原料コストの観点から、パーム核油、パーム核極度硬化油、ヤシ硬化油が例示でき、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0028】
前記糖質としては、特に限定されないが、例えば、ショ糖、果糖(フルクトース)、ブドウ糖(グルコース)、麦芽糖(マルトース)、乳糖(ラクトース)、ガラクトース、オリゴ糖、及びそれらの液糖類;マルトースシロップ、コーンシロップ等の分解糖化液糖類;ソルビトール、エリスリトール、マルチトール、キシリトール、ラクチトール、マンニトール、還元水飴等の糖アルコール;澱粉;並びにデキストリン等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0029】
前記糖質の含有量は、固形分換算で前記起泡性コンパウンドクリーム全体中27~40重量%が好ましく、27~35重量%がより好ましく、30~35重量%が更に好ましい。糖質の含有量が27重量%より少ないと、甘さが不足する場合がある。また、40重量%より多いと、甘くなり過ぎたり、前記起泡性コンパウンドクリームの粘度が高すぎて生産性が悪くなる場合がある。
【0030】
前記蛋白質としては、特に限定されないが、例えば、乳蛋白質、卵蛋白質、大豆蛋白質、小麦蛋白質、エンドウ豆蛋白質等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができ、その中でも風味の観点から乳蛋白質がより好ましい。
【0031】
前記乳蛋白質は、乳に由来する蛋白質の総称であり、生乳、牛乳、及び乳製品に多く含まれている。前記乳蛋白質としては、例えばカゼイン、トータルミルクプロテイン、ホエイ蛋白質、又は、これらの塩類もしくは濃縮物である、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイプロテインコンセントレート、ミルクプロテインコンセントレート等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。そして、乳蛋白質源としては、前記乳蛋白質そのものでもよいし、前記乳蛋白質を含有する生乳、牛乳、又は乳製品を使用することもできる。
【0032】
前記乳製品としては、例えば、脱脂粉乳、脱脂乳、脱脂濃縮乳、バターミルク、バターミルクパウダー、全脂粉乳、全脂濃縮乳、加糖練乳、無糖練乳、チーズ、ホエイパウダー等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0033】
前記蛋白質の含有量は、固形分換算で前記起泡性コンパウンドクリーム全体中、0.5~3.5重量%が好ましく、0.6~3重量%がより好ましく、1~2.5重量%が更に好ましい。蛋白質の含有量が0.5重量%より少ないと、前記起泡性コンパウンドクリームの安定性が悪くなる場合がある。また、3.5重量%より多いと、原料コストが上昇したり、前記起泡性コンパウンドクリームの乳化が不安定になる場合がある。
【0034】
前記乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート等の合成乳化剤、大豆レシチン、卵黄レシチン、及びこれらの分画レシチン、更には酵素分解したリゾレシチンといった改質レシチン等のレシチン類や乳由来のリン脂質を含む天然由来の乳化剤等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。その中でも特に、構成脂肪酸全体中、炭素数8~14の飽和脂肪酸を60~100重量%含み、HLBが12~18、重合度が8~12であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は構成脂肪酸全体中、炭素数8~14の飽和脂肪酸を60~100重量%含み、HLBが12~18であるショ糖脂肪酸エステル(以降、乳化剤Xともいう)を含むことが好ましい。なお、前記重合度とは、ポリグリセリン脂肪酸エステル中のグリセリン単位の数を指す。これらの乳化剤Xは、何れも乳脂肪と脂肪酸鎖長が近く、ホイップ構造形成時に合一部で相互作用して密に配列し、常温でも強固なホイップ構造を形成すると考えられ、保形性と離水耐性がより向上すると推察している。
【0035】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステル及び前記ショ糖脂肪酸エステルの何れにおいても炭素数8~14の飽和脂肪酸の含有量は、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性や離水耐性の観点から、乳化剤Xの構成脂肪酸全体中65~100重量%が好ましく、70~100重量%がより好ましい。
【0036】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのHLBは、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性の観点から、13~17がより好ましく、14~17が更に好ましい。また、前記ショ糖脂肪酸エステルのHLBは、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性の観点から、13~17がより好ましく、14~17が更に好ましい。
【0037】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルの重合度は、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性の観点から、9~11がより好ましい。
【0038】
前記乳化剤の含有量は、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中0.1~3重量%が好ましく、0.2~2重量%がより好ましく、0.2~1.5重量%が更に好ましい。乳化剤の含有量が0.1重量%より少ないと、前記起泡性コンパウンドクリームの安定性が悪くなる場合がある。また、3重量%より多いと、原料コストが上昇したり、乳化剤の異味が感じられる場合がある。
【0039】
また、前記乳化剤Xの含有量は、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中0.03~0.45重量%が好ましく、0.05~0.4重量%がより好ましく、0.05~0.25重量%が更に好ましく、0.07~0.15重量%が特に好ましい。乳化剤Xの含有量が上記範囲を外れると、ホイップドコンパウンドクリームの常温での保形性と離水耐性をより向上させる効果が得られない場合がある。
【0040】
前記常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームは、水分を、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中、25~39重量%含有することが好ましく、28~37重量%含有することがより好ましく、30~35重量%含有することが更に好ましい。水分含有量が25重量%より少ないと、前記起泡性コンパウンドクリームの安定性やホイップ性が悪くなる場合がある。また、39重量%より多いと、ホイップドコンパウンドクリームの保形性や離水耐性が悪くなる場合がある。なお、前記水分含有量は、添加水の量と、各原料(例えば糖質、乳製品、蛋白質)に含まれる水分量とを合計した値である。
【0041】
前記常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームは、必要に応じて、増粘剤、呈味剤、日持ち向上剤、着色料、香料、塩類、ビタミン類、ミネラル類、酸化防止剤、風味成分、その他の食品成分を含有してもよい。
【0042】
前記増粘剤としては、例えば、アシル基を有するジェランガム、グアガム、キサンタンガム、寒天、ペクチン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、ローカストビーンガム、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、結晶セルロース、微結晶セルロース等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0043】
前記呈味剤としては、前記生乳、牛乳、又は乳製品を酵素分解、加熱、分離、分画等をしたもの等が挙げられ、これらの群より少なくとも1種を使用することができる。
【0044】
前記日持ち向上剤としては、グリシン、酢酸ナトリウム、リゾチーム、ソルビン酸カリウム等、食品用途として使用できるものが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0045】
前記着色料としては、天然成分や人工成分に関わらず、食品用途として使用できるものが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0046】
前記香料としては、天然成分や人工成分に関わらず、食品用途として使用できるものが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0047】
前記塩類としては、一般に食品に用いられている塩類であれば特に制限はなく、例えば、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、乳酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸水素2ナトリウム等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0048】
前記ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKを主成分とする食品用途として使用できるものが挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0049】
前記ミネラル類としては、亜鉛、カリウム、クロム、セレン、鉄、銅、ナトリウム、マグネシウム、マンガン、モリブデン、ヨウ素、リン等が挙げられ、これらの成分を含む食品及び/又は食品添加物に分類されるものを少なくとも1種を使用することができる。
【0050】
前記酸化防止剤としては、ビタミンE、ローズマリー抽出物、エノキタケ抽出物等の抗酸化成分を主成分とする食品用途として使用できるもの等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0051】
前記風味成分としては、フルーツソース、キャラメル、ココアパウダー等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用することができる。
【0052】
また、ホイップ後の常温流通における静菌作用の観点から、本発明の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの水分活性(Aw)は、0.9~0.95が好ましく、0.9~0.94がより好ましく、0.9~0.935が更に好ましい。このような水分活性にするためには、例えば、前記常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの水中糖濃度が41.0~58重量%になるように水分と糖質の含有量を調節すればよい。
【0053】
なお、前記水分活性は、露点法(Fleischwirtschaft, vol.52, pp.1461-1462, 1972)に準拠して、例えばアイネクス株式会社製「AquaLab Seris4 TE DUO」を用いることにより測定することができる。また、水中糖濃度とは、コンパウンドクリーム全体中の糖質の含量/(コンパウンドクリーム全体中の糖質の含量と水分の含量の合計)×100で計算した値をいう。
【0054】
前記常温流通ホイップドコンパウンドクリームは、前記常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームをホイップすることで得られる。得られる常温流通ホイップドコンパウンドクリームは、乳脂肪を含有していても、常温での保形性、及び離水耐性に優れるため、常温で流通させることができる。また、トランス脂肪酸含量及びパーム核ステアリンの含量を少なくできる又は含有しなくてもよいので、健康への悪影響の懸念が低減でき、安価に提供することができる。
【0055】
そして前記常温流通ホイップドコンパウンドクリームは、様々な食品にトッピングしたり、ナッペしたり、フィリングしたり、サンドしたりして利用できる。前記食品としては、クリームパン、クリームサンド、サンドイッチ等のパン、ケーキ、シュー、オムレット、どら焼き等の菓子が挙げられる。前記常温流通ホイップドコンパウンドクリームは、ホイップドコンパウンドクリームの形状を維持しながら、常温で流通させることができるため、特に常温流通できる前記食品に有用である。
【0056】
本発明の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム及び常温流通ホイップドコンパウンドクリームの製造方法を以下に例示する。
【0057】
(植物性油脂のみを含む水中油型乳化油脂組成物の植物性油脂の一部を乳脂肪に置き換えた、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの製造方法)
まず、混合物全体中、油脂25~38重量%、糖質27~40重量%(固形分換算)、蛋白質0.5~3.5重量%(固形分換算)、乳化剤0.1~3重量%、
水分25~39重量%をそれぞれ含み、且つ前記油脂全体中、油脂Aの含有量が45~97重量%、乳脂肪の含有量が3~55重量%となるように混合物を調製する。
【0058】
その際、植物性油脂と必要に応じて乳脂肪を混ぜ合わせた油脂に、親油性乳化剤等を溶解させて予め作製した油相部と、水に親水性乳化剤や糖質、蛋白質源、必要に応じて生クリーム等を加えて別途作製した水相部を混合することによって、前記混合物を調製することが好ましい。親油性乳化剤とは、油に溶解もしくは分散する乳化剤を意味し、そのHLBはおおよそ0~9であってよい。また、親水性乳化剤とは、水に溶解もしくは分散する乳化剤を意味し、そのHLBはおおよそ7~20であってよい。
【0059】
次いで、前記混合物に対し、予備乳化、均質化、殺菌、及び予備冷却を実施し、次に、1段目は好ましくは6~18MPa及び2段目は好ましくは2~6MPaの加圧条件で均質化処理することにより乳化した後、冷却することで、本発明の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを得ることができる。1段目の均質化処理加圧条件は9~15MPaがより好ましく、2段目の均質化処理加圧条件は3~5MPaがより好ましい。
【0060】
予備乳化は、例えば、攪拌混合機を用いて前記混合物を攪拌することにより実施できる。殺菌前の均質化は、1段目は2~4MPa及び2段目は1~2MPaの加圧条件で実施することが好ましい。予備冷却は、殺菌後の混合物の品温を30~70℃になるまで冷却することが好ましい。また、均質化処理後の冷却は、プレート式冷却機等を使用することが好ましい。
【0061】
そして、該常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを常法に従ってホイップすることで、本発明の常温流通ホイップドコンパウンドクリームを得ることができる。
【0062】
(植物性油脂を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物と生クリームを混合した、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの製造方法)
まず、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム全体中、油脂含量が25~38重量%、糖質含量(固形分換算)が27~40重量%、蛋白質含量(固形分換算)が0.5~3.5重量%、乳化剤含量が0.1~3重量%、水分含量が25~39重量%であり、前記油脂全体中、油脂Aの含量が45~97重量%、乳脂肪の含量が3~55重量%となるように、油脂A、糖質、蛋白質、乳化剤、水、及び、必要に応じて乳脂肪を含有する混合物、並びに生クリームを調製する。
【0063】
その際、前記混合物は、油脂に親油性乳化剤等を溶解させて予め作製した油相部と、水に親水性乳化剤や糖質、蛋白質源等を加えて別途作製した水相部を混合することによって調製することが好ましい。
【0064】
次いで、前記混合物に対し、予備乳化、均質化、殺菌、及び予備冷却を実施し、次に、1段目は好ましくは6~18MPa及び2段目は好ましくは2~6MPaの加圧条件で均質化処理することにより乳化した後、冷却することで、起泡性水中油型乳化油脂組成物を調製する。1段目の均質化処理加圧条件は9~15MPaがより好ましく、2段目の均質化処理加圧条件は3~5MPaがより好ましい。
【0065】
予備乳化は、例えば、攪拌混合機を用いて前記混合物を攪拌することにより実施できる。殺菌前の均質化は、1段目は2~4MPa及び2段目は1~2MPaの加圧条件で実施することが好ましい。予備冷却は、殺菌後の混合物の品温を30~70℃になるまで冷却することが好ましい。また、均質化処理後の冷却は、プレート式冷却機等を使用することが好ましい。
【0066】
次いで、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物と、生クリームを混合して、本発明の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを得ることができる。前記起泡性水中油型乳化油脂組成物と、生クリームとを混合する際には、前記起泡性水中油型乳化油脂組成物と生クリーム以外の成分、例えば、糖類を添加してもよい。前記糖類としては、特に限定されないが、例えば、ブドウ糖、ガラクトース、果糖等の単糖類、ショ糖、マルトース、ラクトース等の二糖類等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0067】
該常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを常法に従ってホイップすることで、本発明の常温流通ホイップドコンパウンドクリームを得ることができる。
【0068】
以下の各項目では、本開示における好ましい態様を列挙するが、本発明は以下の項目に限定されるものではない。
[項目1]
起泡性コンパウンドクリームに含まれる油脂中の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸含有量が5重量%以下、且つ前記油脂全体中、パーム核ステアリンの含有量が30重量%以下であり、前記油脂の上昇融点が29~37℃の起泡性コンパウンドクリームであって、
起泡性コンパウンドクリーム全体中、前記油脂を25~38重量%、糖質(固形分換算)を27~40重量%、蛋白質(固形分換算)を0.5~3.5重量%、乳化剤を0.1~3重量%、水分を25~39重量%含有し、
前記油脂全体中、油脂Aを45~97重量%、及び乳脂肪を3~55重量%含有する、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム。
油脂A:構成脂肪酸全体中、炭素数14以下の飽和脂肪酸を66~75重量%、炭素数16以上の飽和脂肪酸を23~28重量%、不飽和脂肪酸を2~8重量%含有し、且つ、上昇融点が31~35℃。
[項目2]
油脂Aがパーム核極度硬化油と、パーム核油及び/又はヤシ油とのエステル交換油脂である、項目1に記載の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム。
[項目3]
前記乳化剤が乳化剤Xを含有し、
前記乳化剤Xの含有量が、前記起泡性コンパウンドクリーム全体中、0.03~0.45重量%である、項目1又は2に記載の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム。
乳化剤X:構成脂肪酸全体中、炭素数8~14の飽和脂肪酸を60~100重量%含み、HLBが12~18、重合度が8~12であるポリグリセリン脂肪酸エステル及び/又は構成脂肪酸全体中、炭素数8~14の飽和脂肪酸を60~100重量%含み、HLBが12~18であるショ糖脂肪酸エステル。
[項目4]
項目1~3の何れかに記載の常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームがホイップされた、常温流通ホイップドコンパウンドクリーム。
[項目5]
項目4に記載の常温流通ホイップドコンパウンドクリームを含む食品。
[項目6]
常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム全体中、油脂含量が25~38重量%、糖質含量(固形分換算)が27~40重量%、蛋白質含量(固形分換算)が0.5~3.5重量%、乳化剤含量が0.1~3重量%、水分含量が25~39重量%であり、前記油脂全体中、油脂Aの含量が45~97重量%、乳脂肪の含量が3~55重量%となるように、油脂A、糖質、蛋白質、乳化剤、水、及び必要に応じて乳脂肪を含有する混合物、並びに生クリームを調製し、
前記混合物に対し、予備乳化、1段目は2~4MPa及び2段目は1~2MPaの加圧条件で均質化、殺菌、及び予備冷却を実施してから、1段目を6~18MPa及び2段目を2~6MPaの加圧条件で均質化処理することにより乳化した後、冷却して起泡性水中油型乳化油脂組成物を得、
得られた前記起泡性水中油型乳化油脂組成物と、前記生クリームを混合する、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの製造方法。
【実施例0069】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0070】
<実施例及び比較例で使用した原料>
1)(株)カネカ製「パーム核極度硬化油」
2)(株)カネカ製「パーム核油」
3)(株)カネカ製「ヤシ油」
4)(株)カネカ製「パーム油」
5)横関油脂工業(株)製「ハイエルシン菜種極度硬化油」
6)阪本薬品工業(株)製「SYグリスターMS-3S」(テトラグリセリンモノステアリン酸エステル、炭素数8~14の飽和脂肪酸含量:0重量%、重合度:4、HLB:8.4)
7)ADM(株)製「Yelkin TS」(HLB:3.5)
8)昭和産業(株)製マルトースシロップ「MR25-50」(水分含有量:24.6重量%、糖質含有量:75.4重量%)
9)(株)林原製「サンマルトS」(水分含有量:5.3重量%、糖質含有量:94.7重量%)
10)Hilmar Cheese Company社製「ラクトース」(水分含有量:0.1重量%、乳蛋白質含有量:0.1重量%、糖質含有量:99.8重量%)
11)Friesland Campina DMV社製「カゼインカリウムSPRAY」(乳脂肪含有量:0.6重量%、水分含有量:5.7重量%、乳蛋白質含有量:89.0重量%、糖質含有量:0重量%)
12)よつ葉乳業(株)製「よつ葉脱脂粉乳」(乳脂肪含有量:0.7重量%、水分含有量:4.1重量%、乳蛋白質含有量:35.6重量%、糖質含有量:51.8重量%)
13)阪本薬品工業(株)製「SYグリスターMM-750」(デカグリセリンミリスチン酸エステル、炭素数8~14の飽和脂肪酸含量:99.8重量%、HLB:15.7、重合度:10)
14)三菱ケミカルフーズ(株)「P-1670」(ショ糖パルミチン酸エステル、炭素数8~14の飽和脂肪酸含量:20重量%以下、パルミチン酸含量:約80重量%、HLB:16)
15)扶桑化学工業(株)製「精製クエン酸ナトリウム」
16)(株)明治製「明治十勝フレッシュクリーム47」(乳脂肪含有量:47.3重量%、水分含有量:47.9重量%、乳蛋白質含有量:1.7重量%、糖質含有量:2.7重量%)
17)よつ葉乳業(株)製「無塩バター」(よつ葉バター(食塩不使用)を溶解し、遠心分離して水相部を除去して得たバターオイル)
【0071】
<上昇融点の測定>
上昇融点の測定は、基準油脂分析試験法3.2.2.2融点(上昇融点)に記載の方法により行った。
【0072】
<構成脂肪酸組成の測定>
構成脂肪酸組成の測定は、FID恒温ガスクロマトグラフ法により行った。FID恒温ガスクロマトグラフ法とは、社団法人日本油化学協会編「基準油脂分析試験法」(発行年:1996年)の「2.4.2.1 脂肪酸組成」に記載された方法である。油脂中の構成脂肪酸組成を測定することにより、構成脂肪酸中のトランス脂肪酸含有量、炭素数14以下の飽和脂肪酸含有量、炭素数16以上の飽和脂肪酸含有量、及び、不飽和脂肪酸含有量(重量%)をそれぞれ得ることができる。
【0073】
<ホイップドコンパウンドクリームの評価>
(ホイップドコンパウンドクリームの保形性評価)
実施例及び比較例で得られたホイップドコンパウンドクリームを、出口が星型の口金を用いて透明なポリカップ容器に高さ6cm程度、底辺の直径7cm程度で、できるだけ空洞ができないように渦を巻きながら三角錐状にホイップドクリームを絞り、該ホイップドコンパウンドクリームの塊の高さ(H1)を測定した。更に、25℃で24時間保存後のホイップドコンパウンドクリームの高さ(H2)を測定し、該高さの保持率(H2/H1×100(%))を以下の評価基準に従って評価した。
5点:高さの保持率が80%以上であり、常温での保形性が非常に良い
4点:高さの保持率が75%以上80%未満であり、常温での保形性が良い
3点:高さの保持率が70%以上75%未満であり、常温での保形性に問題がない
2点:高さの保持率が60%以上70%未満であり、常温での保形性がやや悪い
1点:高さの保持率が60%未満であり、常温での保形性が非常に悪い
【0074】
(ホイップドコンパウンドクリームの離水耐性評価)
実施例及び比較例で得られたホイップドコンパウンドクリーム40gを、出口が星型の口金を用いて透明なポリカップ容器に高さ6cm程度、底辺の直径7cm程度で、できるだけ空洞ができないように渦を巻きながら三角錐状にホイップドコンパウンドクリームを絞り、25℃で24時間保存し、保存後のホイップドコンパウンドクリームから完全に滲み出した水分を5mLシリンジで吸引して全量回収した際の水分量をシリンジ目盛りから読み取ることで離水の量を測定して5点満点で評価した。
5点:離水の量が0.3ml未満で、常温での離水耐性が非常に高い
4点:離水の量が0.3ml以上1ml未満で、常温での離水耐性が高い
3点:離水の量が1ml以上3ml未満で、常温での離水耐性に問題がない
2点:離水の量が3ml以上5ml未満で、常温での離水耐性が低く、問題がある
1点:離水の量が5ml以上で、常温での離水耐性が明らかに低く、非常に問題がある
【0075】
(ホイップドコンパウンドクリームの口溶け評価)
実施例及び比較例で得られたホイップドコンパウンドクリームを、熟練のパネラー10人が口に含み、口溶けを5点満点で評価して、その平均点を評価点とした。その際の評価基準は、以下の通りであり、口に入れた瞬間からの溶け始めが早く、溶け終わるまでが早く、後残り感が少ない程、口溶けが良いとした。
5点:実施例2よりも明らかによく、口溶けが非常に良好である
4点:実施例2と同等であり、口溶けが良好である
3点:実施例2よりも僅かに悪く、口溶けが若干劣るが、商品性に問題はない
2点:実施例2よりも悪く、口溶けが劣る
1点:実施例2よりも明らかに悪く、口溶けが非常に劣る
【0076】
(総合評価)
保形性、離水耐性、及び、口溶けの評価結果を基に、総合評価を行った。その際の評価基準は以下の通りである。
A:保形性及び離水耐性が4点以上5点以下で、4点が一つ以下であって、且つ口溶けが4.0点以上5.0点以下であるもの
B:保形性及び離水耐性がどちらも4点で、且つ口溶けが3.5点以上5.0点以下であるもの、又は、保形性及び離水耐性が4点以上5点以下であって、且つ口溶けが3.5点以上4.0点未満であるもの
C:保形性及び離水耐性が3点以上5点以下で、3点が少なくとも一つあって、且つ口溶けが3.0点以上5.0点以下であるもの、又は、保形性及び離水耐性が3点以上5点以下であって、且つ口溶けが3.0点以上3.5点未満であるもの
D:保形性及び離水耐性が2点以上5点以下で、2点が一つあって、且つ口溶けが2.0点以上5.0点以下であるもの、又は、保形性及び離水耐性が2点以上5点以下であって、且つ口溶けが2.0点以上3.0点未満であるもの
E:保形性及び離水耐性のどちらも2点、又は、保形性及び離水耐性の少なくともどちらか一つが1点、又は、口溶けが2.0点未満であるもの
【0077】
(製造例1) エステル交換油脂の作製
表1の配合に従って、パーム核極度硬化油:75重量部とパーム核油:25重量部を混合して90℃に加熱し、水分が200ppm以下になるまで減圧脱水した後、ナトリウムメチラート(東ソー株式会社製):0.2重量部を加えて減圧下30分間攪拌してエステル交換を行った。反応後水洗して触媒を除去した後、90℃に加熱して減圧脱水し、活性白土(水澤化学工業株式会社製):1重量部を加えて減圧下30分間攪拌して脱色した。脱色した油脂を200Paの減圧下で水蒸気を吹き込みながら240℃、45分間脱臭してエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂の構成脂肪酸の組成と上昇融点を表1に示した。
【0078】
【表1】
【0079】
(製造例2) エステル交換油脂の作製
表1の配合に従って、パーム核極度硬化油:75重量部を80重量部に、パーム核油:25重量部をヤシ油:20重量部に変更した以外は、製造例1と同様にしてエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂の構成脂肪酸の組成と上昇融点を表1に示した。
【0080】
(製造例3) エステル交換油脂の作製
表1の配合に従って、パーム核極度硬化油:75重量部を66重量部に、パーム核油:25重量部を30重量部に変更し、ハイエルシン菜種極度硬化油:4重量部を添加した以外は、製造例1と同様にしてエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂の構成脂肪酸の組成と上昇融点を表1に示した。
【0081】
(製造例4) エステル交換油脂の作製
表1の配合に従って、パーム核油:25重量部を添加せず、パーム核極度硬化油:75重量部を100重量部に変更した以外は、製造例1と同様にしてエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂の構成脂肪酸の組成と上昇融点を表1に示した。
【0082】
(製造例5) エステル交換油脂の作製
表1の配合に従って、パーム核極度硬化油:75重量部を80重量部に、パーム核油:25重量部をパーム油:20重量部に変更した以外は、製造例1と同様にしてエステル交換油脂を得た。得られたエステル交換油脂の構成脂肪酸の組成と上昇融点を表1に示した。
【0083】
(製造例6) 植物性油脂を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表2の配合に従って、起泡性水中油型乳化油脂組成物を作製した。即ち、製造例1のエステル交換油脂:33.0重量部を65℃に加熱したところに、ポリグリセリン脂肪酸エステル:0.1重量部と大豆レシチン:0.1重量部を溶解して油相を調製した。
【0084】
一方、マルトースシロップ:15.0重量部、マルトース:15.0重量部、ラクトース:4.5重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル:0.1重量部、ショ糖脂肪酸エステル:0.1重量部、クエン酸ナトリウム:0.1重量部、脱脂粉乳:2.0重量部、カゼインカリウム:0.5重量部、及び、香料:0.1重量部を表2の配合と最終的に同じになるようにスチームインジェクション(蒸気加熱工程)での水分増加量を考慮した量の60℃の温水に溶解して水相を調製した。
【0085】
水相を攪拌しているところに油相を加えて混合物を調製し、前記混合物を20分間攪拌することにより予備乳化を行った後、高圧ホモジナイザーで1段目2.0MPa/2段目1.0MPaの圧力で均質化した後に、プレート式加熱機を用いて90℃まで予備加熱した後、UHT殺菌機(スチームインジェクション)を用いて140℃で4秒間殺菌処理を行った。90℃まで蒸発冷却後、プレート式冷却機を用いて40℃まで予備冷却した。その後、再び高圧ホモジナイザーを用いて1段目9.0MPa/2段目3.0MPaの圧力で均質化処理した後、プレート式冷却機で12℃まで冷却したものを容器に充填し、起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。
【0086】
【表2】
【0087】
(製造例7) 植物性油脂を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表2の配合に従って、製造例1のエステル交換油脂:33.0重量部を、製造例2のエステル交換油脂:30.0重量部とパーム核油:3.0重量部に変更した以外は、製造例6と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。
【0088】
(製造例8、10~11) 植物性油脂を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表2の配合に従って、製造例2のエステル交換油脂:30.0重量部を、製造例3のエステル交換油脂(製造例8)、製造例4のエステル交換油脂(製造例10)、又は、製造例5のエステル交換油脂(製造例11)に変更した以外は、製造例7と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。
【0089】
(製造例9) 植物性油脂を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物の作製
表2の配合に従って、製造例1のエステル交換油脂:33.0重量部を15.0重量部に変更し、更にパーム核油:18.0重量部を添加した以外は、製造例6と同様にして起泡性水中油型乳化油脂組成物を得た。
【0090】
(実施例1) 常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通ホイップドコンパウンドクリームの作製
表3の配合に従い、製造例6の植物性油脂を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物:85.7重量部、生クリーム:9.5重量部、マルトース:4.8重量部を混合することで常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを作製し、これをカントーミキサー(関東混合機工業(株)製「CS型20」)に4kg入れ、品温を5℃に調整し、高速撹拌条件(6.3s-1)で、硬さが最大荷重として0.30Nになるまでホイップし、常温流通ホイップドコンパウンドクリームを得た。得られたホイップドコンパウンドクリームについて、25℃で24時間保存後の保形性と離水耐性、及び、口溶けの評価結果を表3に示した。
【0091】
なお、ホイップドクリームの最大荷重とは、ホイップ直後のサンプルを容器に入れた後、クリープメーター(「RE2-33005S」、株式会社山電製)を用いて直径16mmの円柱状のプランジャーにて、速度5mm/sの速さで1cm貫入時の最大荷重のことである。
【0092】
【表3】
【0093】
(実施例2、3) 常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通ホイップドコンパウンドクリームの作製
表3の配合に従い、製造例6の起泡性水中油型乳化油脂組成物:85.7重量部、生クリーム:9.5重量部、マルトース:4.8重量部をそれぞれ、95.5重量部、3.0重量部と1.5重量部(実施例2)、又は、72.7重量部、18.2重量部と9.1重量部(実施例3)に変更した以外は、実施例1と同様にして常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを作製し、これをホイップして、常温流通ホイップドコンパウンドクリームを得た。得られたホイップドコンパウンドクリームについて、25℃で24時間保存後の保形性と離水耐性、及び、口溶けの評価結果を表3に示した。
【0094】
(実施例4~5、比較例1~3) 常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通ホイップドコンパウンドクリームの作製
表3の配合に従い、製造例6の起泡性水中油型乳化油脂組成物を、製造例7の起泡性水中油型乳化油脂組成物(実施例4)、製造例8の起泡性水中油型乳化油脂組成物(実施例5)、製造例9の起泡性水中油型乳化油脂組成物(比較例1)、製造例10の起泡性水中油型乳化油脂組成物(比較例2)、又は、製造例11の起泡性水中油型乳化油脂組成物(比較例3)に変更した以外は、実施例1と同様にして常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを作製し、これをホイップして、常温流通ホイップドコンパウンドクリームを得た。得られたホイップドコンパウンドクリームについて、25℃で24時間保存後の保形性と離水耐性、及び、口溶けの評価結果を表3に示した。
【0095】
表3から明らかなように、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの油脂中の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸の含有量が5重量%以下、且つ起泡性コンパウンドクリームの油脂全体中、油脂Aの含有量が45~97重量%、及び乳脂肪の含有量が3~55重量%、パーム核ステアリンの含有量が30重量%以下、油脂の上昇融点が29~37℃で、起泡性コンパウンドクリーム全体中、油脂の含有量が25~38重量%、糖質(固形分換算)の含有量が27~40重量%、蛋白質(固形分換算)の含有量が0.5~3.5重量%、乳化剤の含有量が0.1~3重量%、水分の含有量が25~39重量%の範囲にある常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームがホイップされた常温流通ホイップドコンパウンドクリーム(実施例1~5)は、何れも常温での保形性と離水耐性、及び、口溶けの評価が良好であった。
【0096】
一方、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの油脂全体中、油脂Aの含有量が38.8重量%と少なく、油脂の上昇融点が28.5℃と低い常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームがホイップされた常温流通ホイップドコンパウンドクリーム(比較例1)は、常温での保形性、及び、離水耐性の評価が悪く、総合評価はEであった。また、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの油脂全体中、油脂Aを含有しない常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームがホイップされた常温流通ホイップドコンパウンドクリーム(比較例2、3)は、どちらも口溶けの評価が悪く、総合評価はDであった。
【0097】
(実施例6) 常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通ホイップドコンパウンドクリームの作製
表4の配合に従って、製造例6の植物性油脂を含む起泡性水中油型乳化油脂組成物において、製造例1のエステル交換油脂:33.0重量部を30.0重量部に変更し、乳脂肪:3.0重量部を添加した以外は、製造例6の起泡性水中油型乳化油脂組成物と同様にして常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを作製し、これをホイップして、常温流通ホイップドコンパウンドクリームを得た。得られたホイップドコンパウンドクリームについて、25℃で24時間保存後の保形性と離水耐性、及び、口溶けの評価結果を表4に示した。
【0098】
【表4】
【0099】
(実施例7) 常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通ホイップドコンパウンドクリームの作製
表4の配合に従って、実施例6において、乳脂肪は添加せず、製造例1のエステル交換油脂:30.0重量部を28.3重量部に変更し、更にパーム核油:2.6重量部と生クリーム:9.5重量部を添加し、全体量を水で調整した以外は実施例6と同様にして常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを作製し、これをホイップして、常温流通ホイップドコンパウンドクリームを得た。得られたホイップドコンパウンドクリームについて、25℃で24時間保存後の保形性と離水耐性、及び、口溶けの評価結果を表4に示した。
【0100】
(実施例8~9、比較例4~5) 常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通ホイップドコンパウンドクリームの作製
表4の配合に従って、実施例7において、製造例1のエステル交換油脂を、製造例2のエステル交換油脂(実施例8)、製造例3のエステル交換油脂(実施例9)、製造例4のエステル交換油脂(比較例4)、又は、製造例5のエステル交換油脂(比較例5)に変更した以外は、実施例7と同様にして常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを作製し、これをホイップして、常温流通ホイップドコンパウンドクリームを得た。得られたホイップドコンパウンドクリームについて、25℃で24時間保存後の保形性と離水耐性、及び、口溶けの評価結果を表4に示した。
【0101】
(実施例10) 常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリーム、及び、常温流通ホイップドコンパウンドクリームの作製
表4の配合に従って、実施例7において、水相部に添加しているポリグリセリン脂肪酸エステル(乳化剤X):0.09重量部を添加せず、水相部に添加しているショ糖脂肪酸エステル:0.09重量部を0.18重量部に変更した以外は、実施例7と同様にして常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームを作製し、これをホイップして、常温流通ホイップドコンパウンドクリームを得た。得られたホイップドコンパウンドクリームについて、25℃で24時間保存後の保形性と離水耐性、及び、口溶けの評価結果を表4に示した。
【0102】
表4から明らかなように、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの油脂中の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸の含有量が5重量%以下、且つ起泡性コンパウンドクリームの油脂全体中、油脂Aの含有量が45~97重量%、及び乳脂肪の含有量が3~55重量%、パーム核ステアリンの含有量が30重量%以下、油脂の上昇融点が29~37℃で、起泡性コンパウンドクリーム全体中、油脂の含有量が25~38重量%、糖質(固形分換算)の含有量が27~40重量%、蛋白質(固形分換算)の含有量が0.5~3.5重量%、乳化剤の含有量が0.1~3重量%、水分の含有量が25~39重量%の範囲にある常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームがホイップされた常温流通ホイップドコンパウンドクリーム(実施例6~10)は、何れも常温での保形性と離水耐性、及び、口溶けの評価が良好であった。特に、乳化剤Xを使用した常温流通ホイップドコンパウンドクリーム(実施例7)は、実施例7において乳化剤Xを別の乳化剤に変更した常温流通ホイップドコンパウンドクリーム(実施例10)に比べ、常温での保形性と離水耐性の評価が良好であった。
【0103】
一方、常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームの油脂全体中、油脂Aを含有しない常温流通ホイップドクリーム用起泡性コンパウンドクリームがホイップされた常温流通ホイップドコンパウンドクリーム(比較例4、5)は、どちらも口溶けの評価が悪く、総合評価はDであった。