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特開2024-56324水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056324
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/30 20060101AFI20240416BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20240416BHJP
   C04B 24/18 20060101ALI20240416BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20240416BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20240416BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
C04B24/30 Z
C04B24/06 A
C04B24/18 A
C04B24/22 B
C04B24/26 E
C04B24/30 A
C04B28/02
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163121
(22)【出願日】2022-10-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100217102
【弁理士】
【氏名又は名称】冨永 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】内藤 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓
(72)【発明者】
【氏名】古田 章宏
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MD01
4G112PB17
4G112PB23
4G112PB25
4G112PB31
4G112PB35
4G112PC03
4G112PC08
(57)【要約】      (修正有)
【課題】流動性と材料分離抵抗性を共に有する水硬性組成物を得ることができる水硬性組成物用添加剤を提供する。
【解決手段】一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させた縮合物(A)を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。

(但し、一般式(1)中、Rは、炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させた縮合物(A)を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【化1】
(但し、一般式(1)中、Rは、炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基である。)
【請求項2】
更に、オキシカルボン酸系分散剤、リグニンスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤、及び、ナフタレンスルホン酸系分散剤からなる群より選択される少なくとも1種の分散剤(B)を含有する、請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項3】
前記縮合物(A)と、前記分散剤(B)との質量比((A)/(B))が、5/1~1/20である、請求項2に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるAOは、総量の30モル%以上がオキシエチレン基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項5】
前記一般式(1)におけるnは、1~120の数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項6】
前記縮合物(A)は、その平均縮合度が1.1~5.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項7】
炭素数14~30のスチレン化フェノールとカルボニル化合物(A2)とを縮合反応させ、その後、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを平均付加モル数1~300で付加反応させた反応物(a)及び更に当該反応物(a)の末端水酸基の水素原子を炭素数1~6の炭化水素基に置換させた反応物(b)の少なくとも一方を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物に関する。更に詳しくは、流動性と材料分離抵抗性を共に付与することができる水硬性組成物用添加剤及びこれを含有する水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物は、作業性を向上させるという観点から、適切な流動性を有しているものであることがよい。また、水硬性組成物の硬化体の耐久性の観点から、水硬性組成物の単位水量を減少させる場合があるが、このような場合には流動性が低下する傾向があることから、単位水量を減少させない場合と同様の流動性を付与するために、その調製時に分散剤が用いられている。つまり、分散剤によって、高い流動性を付与できれば、より単位水量を減少させることができ、また、幅広い流動性の設定に対応できる(即ち、使用環境ごとに水硬性組成物に求められる流動性は大きく異なることがあるが、このような幅広い要求に対応しても適切に流動性を設定できる)。分散剤としては、リグニンスルホン酸系分散剤、ナフタレンスルホン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤やポリカルボン酸系分散剤などが知られている。
【0003】
上記分散剤の中でも、アルデヒドとの縮合により製造されるナフタレンスルホン酸系分散剤やメラミンスルホン酸系分散剤は、ポリカルボン酸系分散剤と比べて、水硬性組成物に良好な流動性を付与しつつ、添加により強度発現性が損なわれにくい特徴があり、近年でも広く用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
なお、特許文献1には、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)所定の化合物とを含有し、(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下である水硬性組成物用分散剤組成物が開示されている。特許文献2には、所定の芳香族化合物又は複素芳香族化合物、所定の芳香族化合物、及び所定のアルデヒドからなる重縮合生成物が開示されている。
【0005】
しかし、水硬性組成物の流動性を大きくすると、水硬性組成物を構成する各材料の比重差により均一性が損なわれ、その骨材等の材料の分離が生じやすくなる。また、水硬性組成物中の結合材の比率が小さくなるほど、流動性の増大に伴う材料の分離は生じやすい傾向にある。そして、材料の分離が生じると、水硬性組成物におけるポンプ圧送性の低下や品質低下の原因となる。そこで、流動性と材料分離抵抗性を共に付与できる混和剤などが報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
なお、特許文献3には、カルボキシル基を有する2種類の共重合体からなるセメント混和剤液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-172687号公報
【特許文献2】特開2008-517080号公報
【特許文献3】特開2001-89212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3のように流動性を付与しつつも材料分離抵抗性を付与できる水硬性組成物用添加剤が知られているが、これらの性能を有する新たな添加剤の開発が更に求められている。
【0009】
そこで、本発明の課題は、上記実情に鑑み、流動性と材料分離抵抗性を共に付与することができる水硬性組成物用の添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定の化合物(一般式(1)で表される化合物)とカルボニル化合物とを縮合させた縮合物(A)を含有することによって上記課題を解決できることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物が提供される。
【0011】
[1] 下記一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させた縮合物(A)を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【0012】
【化1】
(但し、一般式(1)中、Rは、炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0013】
[2] 更に、オキシカルボン酸系分散剤、リグニンスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤、及び、ナフタレンスルホン酸系分散剤からなる群より選択される少なくとも1種の分散剤(B)を含有する、前記[1]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0014】
[3] 前記縮合物(A)と前記分散剤(B)との質量比((A)/(B))が、5/1~1/20である、前記[2]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0015】
[4] 前記一般式(1)におけるAOは、総量の30モル%以上がオキシエチレン基である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0016】
[5] 前記一般式(1)におけるnは、1~120の数である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0017】
[6] 前記縮合物(A)は、その平均縮合度が1.1~5.0である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0018】
[7] 炭素数14~30のスチレン化フェノールとカルボニル化合物(A2)とを縮合反応させ、その後、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを平均付加モル数1~300で付加反応させた反応物(a)及び更に当該反応物(a)の末端水酸基の水素原子を炭素数1~6の炭化水素基に置換させた反応物(b)の少なくとも一方を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【0019】
[8] 前記[1]~[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、流動性と材料分離抵抗性を共に付与することができるという効果を奏するものである。
【0021】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有することによって、流動性と材料分離抵抗性を共に有するという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0023】
(1)水硬性組成物用添加剤:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、下記一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させた縮合物(A)を含有するものである。
【0024】
【化2】
【0025】
但し、一般式(1)中、Rは、炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基である。
【0026】
このような水硬性組成物用添加剤は、縮合物(A)を含有することによって、流動性と材料分離抵抗性を共に有する水硬性組成物を得ることができる。
【0027】
(1-1)縮合物(A):
縮合物(A)は、一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させた縮合物である。つまり、縮合物(A)は、一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させて形成される構造を有する化合物である。
【0028】
縮合物(A)は、その平均縮合度が1.1~5.0であることが好ましい。このような範囲とすることによって、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0029】
縮合物(A)の平均縮合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて縮合物(A)の質量平均分子量を測定し、式:平均縮合度=縮合物(A)の質量平均分子量÷(一般式(1)で示される化合物(A1)の質量平均分子量+カルボニル化合物(A2)の質量分子量)に基づいて算出することができる。
【0030】
縮合物(A)は、一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させて得られる縮合反応物であり、一般式(1)で示される化合物(A1)に由来する構造と、カルボニル化合物(A2)に由来する構造と、を含有する化合物である。別言すれば、本発明における縮合物(A)は、スチレン化フェニル化合物に由来する構造と、アルキレンオキサイド構造と、カルボニル化合物(A2)に由来する構造と、を含有する化合物と言うこともできる。なお、縮合物(A)は、上記の通り、一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させて得られる縮合反応物であり、「縮合反応の最終生成物」である(但し、本発明の水硬性組成物用添加剤には、未反応の「一般式(1)で示される化合物(A1)」や未反応の「カルボニル化合物(A2)」を含んでもよい)。
【0031】
(1-1a)一般式(1)で示される化合物(A1):
一般式(1)におけるRは、炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。このような範囲であると、流動性と材料分離抵抗性を共に有する水硬性組成物を得ることができる。
【0032】
一般式(1)におけるAOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。そして、AOは、その総量の30モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、総量の80モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。このような範囲であると、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0033】
一般式(1)におけるnは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。そして、nは、1~120の数であることが好ましく、1~80であることが更に好ましい。このような範囲であると、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0034】
一般式(1)におけるRは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり、水素原子またはメチル基であることが好ましい。このような構成であると、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0035】
(1-1b)カルボニル化合物(A2):
カルボニル化合物(A2)は、特に制限はなく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これらの中でも、ホルムアルデヒドであることが好ましい。ホルムアルデヒドであると、一般式(1)で示される化合物(A1)との縮合反応物が良好に生成し、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0036】
縮合物(A)の含有割合は、水硬性組成物用添加剤中、1~100質量%で含有することが好ましく、2~80質量%で含有することが更に好ましい。このような割合で配合することによって、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0037】
(1-2)分散剤(B):
本発明の水硬性組成物用添加剤は、更に、分散剤を含有することができるが、分散剤の中でも、オキシカルボン酸系分散剤、リグニンスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤、及び、ナフタレンスルホン酸系分散剤からなる群より選択される少なくとも1種の分散剤(B)を含有することが好ましい。このような分散剤(B)を更に含有することによって、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0038】
オキシカルボン酸系分散剤としては、例えば、オキシカルボン酸、オキシカルボン酸塩等が挙げられ、より具体的にはグルコン酸塩等が挙げられる。
【0039】
リグニンスルホン酸系分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸、その塩等が挙げられる。
【0040】
ポリカルボン酸系分散剤としては、例えば、不飽和モノカルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体の少なくとも一つと、これらと共重合可能な不飽和単量体であって分子中に1~300個(好ましくは5~150個)である炭素数2~4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する不飽和単量体と、を構成単位として含む共重合体、当該共重合体の塩、または、これらの両方からなるものが挙げられる。ポリカルボン酸系分散剤の市販品として、具体的には、チューポールHP-11(竹本油脂製)、マイテイ3000S(花王製)、シーカメント1100NT(日本シーカ製)、マスターグレニウムSP8SV(ポゾリスソリューションズ製)、フローリックSF500S(フローリック製)等が挙げられる。
【0041】
メラミンスルホン酸系分散剤としては、例えば、メラミンスルホン酸またはその塩とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられ、市販品として、具体的には、ポールファインMF(竹本油脂製)、MELMENT F10(BASF製)、アクセリート100(日産化学製)等が挙げられる。
【0042】
ナフタレンスルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸またはその塩とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられ、市販品として、具体的には、ポールファイン510-AN(竹本油脂製)、マイテイ150(花王製)、セルフロー110P(第一工業製薬製)等が挙げられる。
【0043】
上記分散剤の塩については、特に制限するものではないが、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
【0044】
分散剤(B)の含有割合は、水硬性組成物用添加剤中、0~99質量%で含有することが好ましく、20~98質量%で含有することが更に好ましい。このような割合で配合することによって、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0045】
(1-3)質量比((A)/(B)):
縮合物(A)と、前記分散剤(B)との質量比((A)/(B))は、特に制限はないが、5/1~1/20であることが好ましく、2.5/1~1/10であることが更に好ましい。このような範囲とすることによって、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0046】
(1-4)その他の構成成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、縮合物(A)及び分散剤(B)以外に、その他の構成成分を更に含んでいてもよい。
【0047】
その他の構成成分としては、例えば、糖類等からなる凝結遅延剤や、各種減水剤、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤などを挙げることができる。
【0048】
その他の構成成分の含有割合としては、例えば、縮合物(A)及び分散剤(B)の合計量100質量部に対して、0~20質量部とすることができ、好ましくは0~10質量部とすることができる。
【0049】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、炭素数14~30のスチレン化フェノールとカルボニル化合物(A2)とを縮合反応させ、その後、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを平均付加モル数1~300で付加反応させた反応物(a)及び更にこの反応物(a)の末端水酸基の水素原子を炭素数1~6の炭化水素基に置換させた反応物(b)の少なくとも一方を含有するものと言うこともできる。この反応物は、反応手順は異なるが、縮合物(A)と同様の構造を有する。
【0050】
(2)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有するものである。
【0051】
このような水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有することによって、流動性と材料分離抵抗性を共に有するものである。即ち、本発明の水硬性組成物用添加剤を添加することによって、水硬性組成物に流動性と分離抵抗性が共に付与される。
【0052】
本発明の水硬性組成物は、従来公知の水硬性組成物と同様に、結合材(水硬性結合材)、水、細骨材、及び粗骨材等を含むものとすることができる。
【0053】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合については特に制限はなく適宜設定することができる。例えば、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合は、結合材100質量部に対して、0.01~5.0質量部とすることができる。
【0054】
結合材としては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種のセメントを挙げることができる。
【0055】
更に、結合材は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、石粉、シリカフューム、膨張材等の各種混和材を併用してもよい。
【0056】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材等が挙げられるが、粘土質等の微粒成分等を含むものであってもよい。
【0057】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材等が挙げられる。
【0058】
本発明の水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類やオキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延剤、各種減水剤、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0059】
その他の成分の含有割合としては、例えば、結合材100質量部に対して、0~5質量部とすることができる。
【0060】
本発明の水硬性組成物は、その水と結合材の比率(水/結合材比)としては従来公知の割合を適宜採用することができるが、例えば、20~70質量%とすることができる。
【実施例0061】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
まず、以下の合成例1~19のようにして縮合物(縮合物A-1~A-16、RA-2、RA-3、化合物RA-1)の合成を行った。
【0063】
(合成例1)縮合物A-1の合成:
(ポリ(15モル)オキシエチレントリスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
撹拌機、還流管及び温度計を備えた反応容器中に、トリスチレン化フェノールを主成分とする三光製のTSP(商品名)406.56gとp-トルエンスルホン酸0.69g、パラホルムアルデヒド17.66gを加え、還流しながら110℃で3時間縮合して中間縮合物を得た。なお、「三光製のTSP(商品名)」は、モノ体(即ち、モノスチレン化フェノール)0モル%、ジ体(即ち、ジスチレン化フェノール)30モル%以下、トリ体(即ち、トリスチレン化フェノール)65モル%以上の割合のものである。
【0064】
得られた中間縮合物を回収し、撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に移し、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド660.75gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、縮合物A-1を得た。
【0065】
(合成例2)縮合物A-2の合成:
(ポリ(45モル)オキシエチレントリスチリルフェニルメチルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
撹拌機、還流管及び温度計を備えた反応容器中に、トリスチレン化フェノールを主成分とする三光製のTSP(商品名)406.56gとp-トルエンスルホン酸0.69g、パラホルムアルデヒド17.66gを加え、還流しながら110℃で3時間縮合して中間縮合物を得た。
【0066】
得られた中間縮合物を回収し、撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に移し、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド1982.25gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。
【0067】
更に、48%水酸化カリウム水溶液116.90gを加え、減圧脱水を行った後、メチルクロライド50.49gを0.1MPaのゲージ圧にて添加し、90±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、縮合物A-2を得た。
【0068】
(合成例3,9)縮合物A-3,A-9の合成:
所定量のエチレンオキサイドを添加して1時間熟成した後、同様のゲージ圧にて所定量のプロピレンオキサイドを添加して130±5℃で1時間熟成することで、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをブロック付加させたこと以外は、合成例1と同様にして、縮合物A-3,A-9を得た。
【0069】
(合成例4)縮合物A-4の合成:
(ポリ(30モル)オキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
撹拌機、還流管及び温度計を備えた反応容器中に、ジスチレン化フェノールを主成分とする三光製のSP-24(商品名)302.41gとp-トルエンスルホン酸0.69g、パラホルムアルデヒド17.66gを加え、還流しながら110℃で3時間縮合して中間縮合物を得た。なお、「三光製のSP-24(商品名)」は、モノ体(即ち、モノスチレン化フェノール)0モル%、ジ体(即ち、ジスチレン化フェノール)60モル%以上、トリ体(即ち、トリスチレン化フェノール)40モル%以下の割合のものである。
【0070】
得られた中間縮合物を回収し、撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に移し、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド1321.5gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、縮合物A-4を得た。
【0071】
(合成例5,14)縮合物A-5,A-14の合成:
エチレンオキサイドの仕込み量を変化させたこと以外は、合成例4と同様にして、縮合物A-5,A-14を得た。
【0072】
(合成例6)縮合物A-6の合成:
(ポリ(35モル)オキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
撹拌機、還流管及び温度計を備えた反応容器中に、モノスチレン化フェノールを主成分とする三光製のSP-F(商品名)198.26gとp-トルエンスルホン酸0.69g、パラホルムアルデヒド17.66gを加え、還流しながら110℃で3時間縮合して中間縮合物を得た。なお、「三光製のSP-F(商品名)」は、モノ体(即ち、モノスチレン化フェノール)65モル%以上、ジ体(即ち、ジスチレン化フェノール)32モル%以下、トリ体(即ち、トリスチレン化フェノール)1モル%以下の割合のものである。
【0073】
得られた中間縮合物を回収し、撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に移し、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド1541.75gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、縮合物A-6を得た。
【0074】
(合成例7,11)縮合物A-7,A-11の合成:
エチレンオキサイドの仕込み量を変化させたこと以外は、合成例6と同様にして、縮合物A-7,A-11を得た。
【0075】
(合成例8)縮合物A-8の合成:
(ポリ(80モル)オキシエチレンポリ(10モル)オキシプロピレンジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
所定量のエチレンオキサイドの添加時に、所定量のプロピレンオキサイドを同時に添加し、130±5℃で1時間熟成することで、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダム付加させたこと以外は、合成例4と同様にして、縮合物A-8を得た。
【0076】
(合成例10,13,15,16)縮合物A-10,A-13,A-15,A-16の合成:
エチレンオキサイドの仕込み量を変化させたこと以外は、合成例1と同様にして、縮合物A-10,A-13,A-15,A-16を得た。
【0077】
(合成例12)縮合物A-12の合成:
(ポリ(15モル)オキシエチレンポリ(40モル)オキシプロピレンモノスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
所定量のエチレンオキサイドの添加時にプロピレンオキサイドを同時に添加し、130±5℃で1時間熟成することで、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダム付加させたこと以外は、合成例6と同様にして、縮合物A-12を得た。
【0078】
(合成例17)化合物RA-1の合成:
(ポリ(20モル)オキシエチレントリスチリルフェニルエーテルの合成)
撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に、トリスチレン化フェノールを主成分とする三光製のTSP(商品名)406.56g、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド881.00gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、化合物RA-1を得た。
【0079】
(合成例18)縮合物RA-2の合成:
(トリスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
中間縮合物を回収した後、エチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加を行わないこと以外は、合成例1と同様にして、縮合物RA-2を得た。
【0080】
(合成例19)縮合物RA-3の合成:
(ポリ(20モル)オキシエチレン4-tert-ブチルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
撹拌機、還流管及び温度計を備えた反応容器中に、4-tert-ブチルフェノール(試薬:東京化成工業製)150.22gとp-トルエンスルホン酸0.69g、パラホルムアルデヒド20.02gを加え、還流しながら110℃で3時間縮合して中間縮合物を得た。
【0081】
得られた中間縮合物を回収し、撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に移し、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド881.0gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、縮合物RA-3を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
なお、表1中、「オキシエチレン(mol)」は、オキシエチレンの平均付加モル数を示し、「オキシプロピレン(mol)」は、オキシプロピレンの平均付加モル数を示している。また、オキシエチレン、オキシプロピレンの平均付加モル数の計算は、モノ体、ジ体、トリ体のうちの主成分を100とした場合の計算値とした。
【0084】
(平均縮合度)
調製した縮合物(A)について、下記に示す測定条件に従ってゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて質量平均分子量を測定し、以下の式を用いて平均縮合度を算出した。
【0085】
<平均縮合度の算出方法>
平均縮合度=縮合物(A)の質量平均分子量÷(一般式(1)で示される化合物(A1)の質量平均分子量+カルボニル化合物(A2)の質量分子量)
【0086】
<縮合物の質量平均分子量の測定条件>
装置:HLC-8120GPC(東ソー製)
カラム:TSK gel Super H4000+TSK gel Super H3000+TSK gel Super H2000(東ソー製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.5mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:ポリスチレン(東ソー製)
【0087】
次に、水硬性組成物用添加剤の調製に使用した分散剤(B)について以下の表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
(実施例1~16、比較例1~5)
(1)水硬性組成物用添加剤の調製:
下記表3に示す種類及び割合にて、上述のようにして得られた縮合物(A)及び分散剤(B)を配合して、水硬性組成物用添加剤(F-1~F-16、R-1~R-5)を調製した。なお、表3中、縮合物(A)及び分散剤(B)が水などの液体(通常は水)を含むものである場合、縮合物(A)と分散剤(B)のそれぞれの「割合(質量%)」は、水などの液体を除いた残り(残分)の割合を表し、上記の場合、「縮合物(A)/分散剤(B)質量比」は、縮合物(A)の残分と、分散剤(B)の残分との質量比を表す。分散剤(B)のうちB-2、B-4、B-5は、水を含むものである。
【0090】
【表3】
【0091】
(3)水硬性組成物(コンクリート組成物)の調製:
次に、調製した各水硬性組成物用添加剤を用いて、以下のようにして実施例1~16、比較例1~5の水硬性組成物を調製した。なお、表4には、水硬性組成物(コンクリート)の配合条件を示す。
【0092】
まず、55Lの強制二軸ミキサーに、セメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋セメント製、密度=3.16g/cm)と、骨材として細骨材(大井川水系産陸砂、密度=2.58g/cm)及び粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm)と、をそれぞれ表4に示す割合で配合し、更に、水硬性組成物用添加剤(F-1~F-16、R-1~R-5)を15%水溶液となるように希釈したものを、セメントに対して1.0質量%配合して、実施例1~16及び比較例1~5の水硬性組成物(コンクリート組成物)を調製した。
【0093】
なお、各実施例及び比較例のコンクリート組成物において、市販のAE剤であるAE-300(竹本油脂製)及び消泡剤であるAFK-2(竹本油脂製)を適宜用い、目標空気量を3.5±1.0%の範囲内となるようにこれらの添加量の調整を行った。
【0094】
また、練り上がりのコンクリート組成物の温度がいずれも20±2℃の範囲内となるように、調製前に各材料を温調した。なお、上記練り上がりのコンクリート組成物の温度は、JIS-A1156(2014)に準拠して測定した。
【0095】
【表4】
【0096】
次に、調製した水硬性組成物について、各種評価(スランプ、コンクリートの流動性評価、空気量(%)、コンクリートの材料分離抵抗性評価、及び、総合評価)を行った。評価結果を表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
なお、表5中、「C×%」は、セメントに対する、水硬性組成物用添加剤(F-1~F-16、R-1~R-5)の15%水溶液の質量%を表す。
【0099】
調製した水硬性組成物の各評価の評価方法及び評価基準を以下に示す。
【0100】
(スランプ)
練混ぜ直後の水硬性組成物(コンクリート組成物)について、JIS-A1101(2020)に準拠して測定した。
【0101】
(コンクリートの流動性評価)
コンクリート組成物の流動性評価は、練混ぜ直後のコンクリート組成物のスランプの値を以下の評価基準で評価した。
S:15cm以上
A:13cm以上、15cm未満
B:11cm以上、13cm未満
C:11cm未満
【0102】
(空気量(容積%))
練混ぜ直後の水硬性組成物(コンクリート組成物)について、JIS-A1128(2020)に準拠して測定した。
【0103】
(コンクリートの材料分離抵抗性評価)
コンクリート組成物の材料分離抵抗性評価は、練混ぜ直後のコンクリート組成物を目視し、その状態を確認して行った。
S:コンクリート組成物に粘性があり、材料分離が全く確認されない場合
A:コンクリート組成物にやや粘性があり、材料分離もほとんど確認されない場合
B:コンクリート組成物の粘性がやや低く、材料分離も少し確認される場合
C:コンクリート組成物の粘性が低く、材料分離が確認される場合
【0104】
(総合評価)
「コンクリートの流動性評価」(評価1)及び「コンクリートの材料分離抵抗性評価」(評価2)の評価結果に基づいて以下の基準で評価を行った。
S:評価1及び評価2の結果がともに「S」である場合
A:評価1の結果が「S」で評価2の結果が「A」であるか、或いは、評価1の結果が「A」で評価2の結果が「S」である場合
B:評価1及び評価2の結果がともに「A」である場合
C:評価1の結果が「B」で評価2の結果が「A」であるか、或いは、評価1の結果が「A」で評価2の結果が「B」である場合
D:評価1及び評価2の結果の少なくとも1つが「C」である場合
【0105】
(結果)
表5に示すように、本実施例の水硬性組成物用添加剤を水硬性組成物に添加することで、流動性と材料分離抵抗性を共に有する水硬性組成物が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、コンクリートやモルタル等の水硬性組成物に用いられる添加剤として利用することができる。また、本発明の水硬性組成物は、コンクリート硬化体やモルタル硬化体等の水硬性組成物硬化体を形成するものとして利用することができる。

【手続補正書】
【提出日】2023-01-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)であるホルムアルデヒドと、を縮合させた縮合物(A)を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【化1】
(但し、一般式(1)中、Rは、炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基である。)
【請求項2】
更に、オキシカルボン酸系分散剤、リグニンスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤、及び、ナフタレンスルホン酸系分散剤からなる群より選択される少なくとも1種の分散剤(B)を含有する、請求項1に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項3】
前記縮合物(A)と、前記分散剤(B)との質量比((A)/(B))が、5/1~1/20である、請求項2に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項4】
前記一般式(1)におけるAOは、総量の30モル%以上がオキシエチレン基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項5】
前記一般式(1)におけるnは、1~120の数である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項6】
前記縮合物(A)は、その平均縮合度が1.1~5.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項7】
炭素数14~30のスチレン化フェノールとカルボニル化合物(A2)であるホルムアルデヒドとを縮合反応させ、その後、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを平均付加モル数1~300で付加反応させた反応物(a)及び更に当該反応物(a)の末端水酸基の水素原子を炭素数1~6の炭化水素基に置換させた反応物(b)の少なくとも一方を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【請求項8】
請求項1~3のいずれか一項に記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物に関する。更に詳しくは、流動性と材料分離抵抗性を共に付与することができる水硬性組成物用添加剤及びこれを含有する水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モルタルやコンクリートなどの水硬性組成物は、作業性を向上させるという観点から、適切な流動性を有しているものであることがよい。また、水硬性組成物の硬化体の耐久性の観点から、水硬性組成物の単位水量を減少させる場合があるが、このような場合には流動性が低下する傾向があることから、単位水量を減少させない場合と同様の流動性を付与するために、その調製時に分散剤が用いられている。つまり、分散剤によって、高い流動性を付与できれば、より単位水量を減少させることができ、また、幅広い流動性の設定に対応できる(即ち、使用環境ごとに水硬性組成物に求められる流動性は大きく異なることがあるが、このような幅広い要求に対応しても適切に流動性を設定できる)。分散剤としては、リグニンスルホン酸系分散剤、ナフタレンスルホン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤やポリカルボン酸系分散剤などが知られている。
【0003】
上記分散剤の中でも、アルデヒドとの縮合により製造されるナフタレンスルホン酸系分散剤やメラミンスルホン酸系分散剤は、ポリカルボン酸系分散剤と比べて、水硬性組成物に良好な流動性を付与しつつ、添加により強度発現性が損なわれにくい特徴があり、近年でも広く用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
なお、特許文献1には、(A)ナフタレン環を含むモノマー単位を有する高分子化合物と、(B)所定の化合物とを含有し、(A)中のナフタレン環を含むモノマー単位に対する(B)の総量のモル比が、3%以上16%以下である水硬性組成物用分散剤組成物が開示されている。特許文献2には、所定の芳香族化合物又は複素芳香族化合物、所定の芳香族化合物、及び所定のアルデヒドからなる重縮合生成物が開示されている。
【0005】
しかし、水硬性組成物の流動性を大きくすると、水硬性組成物を構成する各材料の比重差により均一性が損なわれ、その骨材等の材料の分離が生じやすくなる。また、水硬性組成物中の結合材の比率が小さくなるほど、流動性の増大に伴う材料の分離は生じやすい傾向にある。そして、材料の分離が生じると、水硬性組成物におけるポンプ圧送性の低下や品質低下の原因となる。そこで、流動性と材料分離抵抗性を共に付与できる混和剤などが報告されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
なお、特許文献3には、カルボキシル基を有する2種類の共重合体からなるセメント混和剤液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-172687号公報
【特許文献2】特開2008-517080号公報
【特許文献3】特開2001-89212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献3のように流動性を付与しつつも材料分離抵抗性を付与できる水硬性組成物用添加剤が知られているが、これらの性能を有する新たな添加剤の開発が更に求められている。
【0009】
そこで、本発明の課題は、上記実情に鑑み、流動性と材料分離抵抗性を共に付与することができる水硬性組成物用の添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、所定の化合物(一般式(1)で表される化合物)とカルボニル化合物とを縮合させた縮合物(A)を含有することによって上記課題を解決できることを見出した。本発明によれば、以下の水硬性組成物用添加剤及び水硬性組成物が提供される。
【0011】
[1] 下記一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)であるホルムアルデヒドと、を縮合させた縮合物(A)を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【0012】
【化1】
(但し、一般式(1)中、Rは、炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基である。)
【0013】
[2] 更に、オキシカルボン酸系分散剤、リグニンスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤、及び、ナフタレンスルホン酸系分散剤からなる群より選択される少なくとも1種の分散剤(B)を含有する、前記[1]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0014】
[3] 前記縮合物(A)と前記分散剤(B)との質量比((A)/(B))が、5/1~1/20である、前記[2]に記載の水硬性組成物用添加剤。
【0015】
[4] 前記一般式(1)におけるAOは、総量の30モル%以上がオキシエチレン基である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0016】
[5] 前記一般式(1)におけるnは、1~120の数である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0017】
[6] 前記縮合物(A)は、その平均縮合度が1.1~5.0である、前記[1]~[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤。
【0018】
[7] 炭素数14~30のスチレン化フェノールとカルボニル化合物(A2)であるホルムアルデヒドとを縮合反応させ、その後、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを平均付加モル数1~300で付加反応させた反応物(a)及び更に当該反応物(a)の末端水酸基の水素原子を炭素数1~6の炭化水素基に置換させた反応物(b)の少なくとも一方を含有することを特徴とする水硬性組成物用添加剤。
【0019】
[8] 前記[1]~[3]のいずれかに記載の水硬性組成物用添加剤を含有することを特徴とする水硬性組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、流動性と材料分離抵抗性を共に付与することができるという効果を奏するものである。
【0021】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有することによって、流動性と材料分離抵抗性を共に有するという効果を奏するものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し適宜変更、改良等が加えられ得ることが理解されるべきである。なお、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【0023】
(1)水硬性組成物用添加剤:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、下記一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)であるホルムアルデヒドと、を縮合させた縮合物(A)を含有するものである。
【0024】
【化2】
【0025】
但し、一般式(1)中、Rは、炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。AOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。nは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。Rは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基である。
【0026】
このような水硬性組成物用添加剤は、縮合物(A)を含有することによって、流動性と材料分離抵抗性を共に有する水硬性組成物を得ることができる。
【0027】
(1-1)縮合物(A):
縮合物(A)は、一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させた縮合物である。つまり、縮合物(A)は、一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させて形成される構造を有する化合物である。
【0028】
縮合物(A)は、その平均縮合度が1.1~5.0であることが好ましい。このような範囲とすることによって、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0029】
縮合物(A)の平均縮合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて縮合物(A)の質量平均分子量を測定し、式:平均縮合度=縮合物(A)の質量平均分子量÷(一般式(1)で示される化合物(A1)の質量平均分子量+カルボニル化合物(A2)の質量分子量)に基づいて算出することができる。
【0030】
縮合物(A)は、一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させて得られる縮合反応物であり、一般式(1)で示される化合物(A1)に由来する構造と、カルボニル化合物(A2)に由来する構造と、を含有する化合物である。別言すれば、本発明における縮合物(A)は、スチレン化フェニル化合物に由来する構造と、アルキレンオキサイド構造と、カルボニル化合物(A2)に由来する構造と、を含有する化合物と言うこともできる。なお、縮合物(A)は、上記の通り、一般式(1)で示される化合物(A1)と、カルボニル化合物(A2)と、を縮合させて得られる縮合反応物であり、「縮合反応の最終生成物」である(但し、本発明の水硬性組成物用添加剤には、未反応の「一般式(1)で示される化合物(A1)」や未反応の「カルボニル化合物(A2)」を含んでもよい)。
【0031】
(1-1a)一般式(1)で示される化合物(A1):
一般式(1)におけるRは、炭素数14~30のスチレン化フェニル基である。このような範囲であると、流動性と材料分離抵抗性を共に有する水硬性組成物を得ることができる。
【0032】
一般式(1)におけるAOは、炭素数2~4のオキシアルキレン基(但し、当該オキシアルキレン基が複数存在する場合、1種単独又は2種以上とすることができる)である。そして、AOは、その総量の30モル%以上がオキシエチレン基であることが好ましく、総量の80モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。このような範囲であると、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0033】
一般式(1)におけるnは、AOの平均付加モル数であり、1~300の数である。そして、nは、1~120の数であることが好ましく、1~80であることが更に好ましい。このような範囲であると、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0034】
一般式(1)におけるRは、水素原子または炭素数1~6の炭化水素基であり、水素原子またはメチル基であることが好ましい。このような構成であると、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0035】
(1-1b)カルボニル化合物(A2):
カルボニル化合物(A2)は、特に制限はなく、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。これらの中でも、ホルムアルデヒドであることが好ましく、本発明においてカルボニル化合物(A2)はホルムアルデヒドである。ホルムアルデヒドであると、一般式(1)で示される化合物(A1)との縮合反応物が良好に生成し、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0036】
縮合物(A)の含有割合は、水硬性組成物用添加剤中、1~100質量%で含有することが好ましく、2~80質量%で含有することが更に好ましい。このような割合で配合することによって、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0037】
(1-2)分散剤(B):
本発明の水硬性組成物用添加剤は、更に、分散剤を含有することができるが、分散剤の中でも、オキシカルボン酸系分散剤、リグニンスルホン酸系分散剤、ポリカルボン酸系分散剤、メラミンスルホン酸系分散剤、及び、ナフタレンスルホン酸系分散剤からなる群より選択される少なくとも1種の分散剤(B)を含有することが好ましい。このような分散剤(B)を更に含有することによって、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0038】
オキシカルボン酸系分散剤としては、例えば、オキシカルボン酸、オキシカルボン酸塩等が挙げられ、より具体的にはグルコン酸塩等が挙げられる。
【0039】
リグニンスルホン酸系分散剤としては、例えば、リグニンスルホン酸、その塩等が挙げられる。
【0040】
ポリカルボン酸系分散剤としては、例えば、不飽和モノカルボン酸単量体、不飽和ジカルボン酸単量体の少なくとも一つと、これらと共重合可能な不飽和単量体であって分子中に1~300個(好ましくは5~150個)である炭素数2~4のオキシアルキレン単位で構成された(ポリ)オキシアルキレン基を有する不飽和単量体と、を構成単位として含む共重合体、当該共重合体の塩、または、これらの両方からなるものが挙げられる。ポリカルボン酸系分散剤の市販品として、具体的には、チューポールHP-11(竹本油脂製)、マイテイ3000S(花王製)、シーカメント1100NT(日本シーカ製)、マスターグレニウムSP8SV(ポゾリスソリューションズ製)、フローリックSF500S(フローリック製)等が挙げられる。
【0041】
メラミンスルホン酸系分散剤としては、例えば、メラミンスルホン酸またはその塩とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられ、市販品として、具体的には、ポールファインMF(竹本油脂製)、MELMENT F10(BASF製)、アクセリート100(日産化学製)等が挙げられる。
【0042】
ナフタレンスルホン酸系分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸またはその塩とホルムアルデヒドとの縮合物が挙げられ、市販品として、具体的には、ポールファイン510-AN(竹本油脂製)、マイテイ150(花王製)、セルフロー110P(第一工業製薬製)等が挙げられる。
【0043】
上記分散剤の塩については、特に制限するものではないが、ナトリウムやカリウム等のアルカリ金属塩、マグネシウムやカルシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アミン塩等が挙げられる。
【0044】
分散剤(B)の含有割合は、水硬性組成物用添加剤中、0~99質量%で含有することが好ましく、20~98質量%で含有することが更に好ましい。このような割合で配合することによって、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0045】
(1-3)質量比((A)/(B)):
縮合物(A)と、前記分散剤(B)との質量比((A)/(B))は、特に制限はないが、5/1~1/20であることが好ましく、2.5/1~1/10であることが更に好ましい。このような範囲とすることによって、流動性と材料分離抵抗性がより良好な水硬性組成物を得ることができる。
【0046】
(1-4)その他の構成成分:
本発明の水硬性組成物用添加剤は、縮合物(A)及び分散剤(B)以外に、その他の構成成分を更に含んでいてもよい。
【0047】
その他の構成成分としては、例えば、糖類等からなる凝結遅延剤や、各種減水剤、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物等からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤などを挙げることができる。
【0048】
その他の構成成分の含有割合としては、例えば、縮合物(A)及び分散剤(B)の合計量100質量部に対して、0~20質量部とすることができ、好ましくは0~10質量部とすることができる。
【0049】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、炭素数14~30のスチレン化フェノールとカルボニル化合物(A2)であるホルムアルデヒドとを縮合反応させ、その後、炭素数2~4のアルキレンオキサイドを平均付加モル数1~300で付加反応させた反応物(a)及び更にこの反応物(a)の末端水酸基の水素原子を炭素数1~6の炭化水素基に置換させた反応物(b)の少なくとも一方を含有するものと言うこともできる。この反応物は、反応手順は異なるが、縮合物(A)と同様の構造を有する。
【0050】
(2)水硬性組成物:
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有するものである。
【0051】
このような水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤を含有することによって、流動性と材料分離抵抗性を共に有するものである。即ち、本発明の水硬性組成物用添加剤を添加することによって、水硬性組成物に流動性と分離抵抗性が共に付与される。
【0052】
本発明の水硬性組成物は、従来公知の水硬性組成物と同様に、結合材(水硬性結合材)、水、細骨材、及び粗骨材等を含むものとすることができる。
【0053】
本発明の水硬性組成物は、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合については特に制限はなく適宜設定することができる。例えば、本発明の水硬性組成物用添加剤の含有割合は、結合材100質量部に対して、0.01~5.0質量部とすることができる。
【0054】
結合材としては、例えば、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、シリカフュームセメント等の各種のセメントを挙げることができる。
【0055】
更に、結合材は、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石微粉末、石粉、シリカフューム、膨張材等の各種混和材を併用してもよい。
【0056】
細骨材としては、例えば、川砂、山砂、陸砂、海砂、珪砂、砕砂、各種スラグ細骨材等が挙げられるが、粘土質等の微粒成分等を含むものであってもよい。
【0057】
粗骨材としては、例えば、川砂利、山砂利、陸砂利、砕石、各種スラグ粗骨材、軽量骨材等が挙げられる。
【0058】
本発明の水硬性組成物は、効果が損なわれない範囲内で、適宜その他の成分を更に含有していてもよい。このようなその他の成分としては、例えば、糖類やオキシカルボン酸塩等からなる凝結遅延剤、各種減水剤、陰イオン界面活性剤等からなるAE剤、オキシアルキレン系化合物等からなる消泡剤、アルカノールアミン等からなる硬化促進剤、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等からなる収縮低減剤、セルロースエーテル系化合物からなる増粘剤、イソチアゾリン系化合物等からなる防腐剤、亜硝酸塩等からなる防錆剤等を挙げることができる。
【0059】
その他の成分の含有割合としては、例えば、結合材100質量部に対して、0~5質量部とすることができる。
【0060】
本発明の水硬性組成物は、その水と結合材の比率(水/結合材比)としては従来公知の割合を適宜採用することができるが、例えば、20~70質量%とすることができる。
【実施例0061】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
まず、以下の合成例1~19のようにして縮合物(縮合物A-1~A-16、RA-2、RA-3、化合物RA-1)の合成を行った。
【0063】
(合成例1)縮合物A-1の合成:
(ポリ(15モル)オキシエチレントリスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
撹拌機、還流管及び温度計を備えた反応容器中に、トリスチレン化フェノールを主成分とする三光製のTSP(商品名)406.56gとp-トルエンスルホン酸0.69g、パラホルムアルデヒド17.66gを加え、還流しながら110℃で3時間縮合して中間縮合物を得た。なお、「三光製のTSP(商品名)」は、モノ体(即ち、モノスチレン化フェノール)0モル%、ジ体(即ち、ジスチレン化フェノール)30モル%以下、トリ体(即ち、トリスチレン化フェノール)65モル%以上の割合のものである。
【0064】
得られた中間縮合物を回収し、撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に移し、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド660.75gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、縮合物A-1を得た。
【0065】
(合成例2)縮合物A-2の合成:
(ポリ(45モル)オキシエチレントリスチリルフェニルメチルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
撹拌機、還流管及び温度計を備えた反応容器中に、トリスチレン化フェノールを主成分とする三光製のTSP(商品名)406.56gとp-トルエンスルホン酸0.69g、パラホルムアルデヒド17.66gを加え、還流しながら110℃で3時間縮合して中間縮合物を得た。
【0066】
得られた中間縮合物を回収し、撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に移し、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド1982.25gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。
【0067】
更に、48%水酸化カリウム水溶液116.90gを加え、減圧脱水を行った後、メチルクロライド50.49gを0.1MPaのゲージ圧にて添加し、90±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、縮合物A-2を得た。
【0068】
(合成例3,9)縮合物A-3,A-9の合成:
所定量のエチレンオキサイドを添加して1時間熟成した後、同様のゲージ圧にて所定量のプロピレンオキサイドを添加して130±5℃で1時間熟成することで、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをブロック付加させたこと以外は、合成例1と同様にして、縮合物A-3,A-9を得た。
【0069】
(合成例4)縮合物A-4の合成:
(ポリ(30モル)オキシエチレンジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
撹拌機、還流管及び温度計を備えた反応容器中に、ジスチレン化フェノールを主成分とする三光製のSP-24(商品名)302.41gとp-トルエンスルホン酸0.69g、パラホルムアルデヒド17.66gを加え、還流しながら110℃で3時間縮合して中間縮合物を得た。なお、「三光製のSP-24(商品名)」は、モノ体(即ち、モノスチレン化フェノール)0モル%、ジ体(即ち、ジスチレン化フェノール)60モル%以上、トリ体(即ち、トリスチレン化フェノール)40モル%以下の割合のものである。
【0070】
得られた中間縮合物を回収し、撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に移し、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド1321.5gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、縮合物A-4を得た。
【0071】
(合成例5,14)縮合物A-5,A-14の合成:
エチレンオキサイドの仕込み量を変化させたこと以外は、合成例4と同様にして、縮合物A-5,A-14を得た。
【0072】
(合成例6)縮合物A-6の合成:
(ポリ(35モル)オキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
撹拌機、還流管及び温度計を備えた反応容器中に、モノスチレン化フェノールを主成分とする三光製のSP-F(商品名)198.26gとp-トルエンスルホン酸0.69g、パラホルムアルデヒド17.66gを加え、還流しながら110℃で3時間縮合して中間縮合物を得た。なお、「三光製のSP-F(商品名)」は、モノ体(即ち、モノスチレン化フェノール)65モル%以上、ジ体(即ち、ジスチレン化フェノール)32モル%以下、トリ体(即ち、トリスチレン化フェノール)1モル%以下の割合のものである。
【0073】
得られた中間縮合物を回収し、撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に移し、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド1541.75gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、縮合物A-6を得た。
【0074】
(合成例7,11)縮合物A-7,A-11の合成:
エチレンオキサイドの仕込み量を変化させたこと以外は、合成例6と同様にして、縮合物A-7,A-11を得た。
【0075】
(合成例8)縮合物A-8の合成:
(ポリ(80モル)オキシエチレンポリ(10モル)オキシプロピレンジスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
所定量のエチレンオキサイドの添加時に、所定量のプロピレンオキサイドを同時に添加し、130±5℃で1時間熟成することで、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダム付加させたこと以外は、合成例4と同様にして、縮合物A-8を得た。
【0076】
(合成例10,13,15,16)縮合物A-10,A-13,A-15,A-16の合成:
エチレンオキサイドの仕込み量を変化させたこと以外は、合成例1と同様にして、縮合物A-10,A-13,A-15,A-16を得た。
【0077】
(合成例12)縮合物A-12の合成:
(ポリ(15モル)オキシエチレンポリ(40モル)オキシプロピレンモノスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
所定量のエチレンオキサイドの添加時にプロピレンオキサイドを同時に添加し、130±5℃で1時間熟成することで、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドをランダム付加させたこと以外は、合成例6と同様にして、縮合物A-12を得た。
【0078】
(合成例17)化合物RA-1の合成:
(ポリ(20モル)オキシエチレントリスチリルフェニルエーテルの合成)
撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に、トリスチレン化フェノールを主成分とする三光製のTSP(商品名)406.56g、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド881.00gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、化合物RA-1を得た。
【0079】
(合成例18)縮合物RA-2の合成:
(トリスチリルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
中間縮合物を回収した後、エチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加を行わないこと以外は、合成例1と同様にして、縮合物RA-2を得た。
【0080】
(合成例19)縮合物RA-3の合成:
(ポリ(20モル)オキシエチレン4-tert-ブチルフェニルエーテルのホルムアルデヒド縮合物の合成)
撹拌機、還流管及び温度計を備えた反応容器中に、4-tert-ブチルフェノール(試薬:東京化成工業製)150.22gとp-トルエンスルホン酸0.69g、パラホルムアルデヒド20.02gを加え、還流しながら110℃で3時間縮合して中間縮合物を得た。
【0081】
得られた中間縮合物を回収し、撹拌機、圧力計及び温度計を備えた圧力容器中に移し、48%水酸化カリウム水溶液2.34gを加え、減圧脱水を行った。その後、エチレンオキサイド881.0gを0.4MPaのゲージ圧にて添加し、130±5℃で1時間熟成した。その後、協和化学工業製のキョーワード600(商品名)を用いて中和濾過し、縮合物RA-3を得た。
【0082】
【表1】
【0083】
なお、表1中、「オキシエチレン(mol)」は、オキシエチレンの平均付加モル数を示し、「オキシプロピレン(mol)」は、オキシプロピレンの平均付加モル数を示している。また、オキシエチレン、オキシプロピレンの平均付加モル数の計算は、モノ体、ジ体、トリ体のうちの主成分を100とした場合の計算値とした。
【0084】
(平均縮合度)
調製した縮合物(A)について、下記に示す測定条件に従ってゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて質量平均分子量を測定し、以下の式を用いて平均縮合度を算出した。
【0085】
<平均縮合度の算出方法>
平均縮合度=縮合物(A)の質量平均分子量÷(一般式(1)で示される化合物(A1)の質量平均分子量+カルボニル化合物(A2)の質量分子量)
【0086】
<縮合物の質量平均分子量の測定条件>
装置:HLC-8120GPC(東ソー製)
カラム:TSK gel Super H4000+TSK gel Super H3000+TSK gel Super H2000(東ソー製)
検出器:示差屈折計(RI)
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:0.5mL/分
カラム温度:40℃
試料濃度:試料濃度0.5質量%の溶離液溶液
標準物質:ポリスチレン(東ソー製)
【0087】
次に、水硬性組成物用添加剤の調製に使用した分散剤(B)について以下の表2に示す。
【0088】
【表2】
【0089】
(実施例1~16、比較例1~5)
(1)水硬性組成物用添加剤の調製:
下記表3に示す種類及び割合にて、上述のようにして得られた縮合物(A)及び分散剤(B)を配合して、水硬性組成物用添加剤(F-1~F-16、R-1~R-5)を調製した。なお、表3中、縮合物(A)及び分散剤(B)が水などの液体(通常は水)を含むものである場合、縮合物(A)と分散剤(B)のそれぞれの「割合(質量%)」は、水などの液体を除いた残り(残分)の割合を表し、上記の場合、「縮合物(A)/分散剤(B)質量比」は、縮合物(A)の残分と、分散剤(B)の残分との質量比を表す。分散剤(B)のうちB-2、B-4、B-5は、水を含むものである。
【0090】
【表3】
【0091】
(3)水硬性組成物(コンクリート組成物)の調製:
次に、調製した各水硬性組成物用添加剤を用いて、以下のようにして実施例1~16、比較例1~5の水硬性組成物を調製した。なお、表4には、水硬性組成物(コンクリート)の配合条件を示す。
【0092】
まず、55Lの強制二軸ミキサーに、セメントとして普通ポルトランドセメント(太平洋セメント製、密度=3.16g/cm)と、骨材として細骨材(大井川水系産陸砂、密度=2.58g/cm)及び粗骨材(岡崎産砕石、密度=2.66g/cm)と、をそれぞれ表4に示す割合で配合し、更に、水硬性組成物用添加剤(F-1~F-16、R-1~R-5)を15%水溶液となるように希釈したものを、セメントに対して1.0質量%配合して、実施例1~16及び比較例1~5の水硬性組成物(コンクリート組成物)を調製した。
【0093】
なお、各実施例及び比較例のコンクリート組成物において、市販のAE剤であるAE-300(竹本油脂製)及び消泡剤であるAFK-2(竹本油脂製)を適宜用い、目標空気量を3.5±1.0%の範囲内となるようにこれらの添加量の調整を行った。
【0094】
また、練り上がりのコンクリート組成物の温度がいずれも20±2℃の範囲内となるように、調製前に各材料を温調した。なお、上記練り上がりのコンクリート組成物の温度は、JIS-A1156(2014)に準拠して測定した。
【0095】
【表4】
【0096】
次に、調製した水硬性組成物について、各種評価(スランプ、コンクリートの流動性評価、空気量(%)、コンクリートの材料分離抵抗性評価、及び、総合評価)を行った。評価結果を表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
なお、表5中、「C×%」は、セメントに対する、水硬性組成物用添加剤(F-1~F-16、R-1~R-5)の15%水溶液の質量%を表す。
【0099】
調製した水硬性組成物の各評価の評価方法及び評価基準を以下に示す。
【0100】
(スランプ)
練混ぜ直後の水硬性組成物(コンクリート組成物)について、JIS-A1101(2020)に準拠して測定した。
【0101】
(コンクリートの流動性評価)
コンクリート組成物の流動性評価は、練混ぜ直後のコンクリート組成物のスランプの値を以下の評価基準で評価した。
S:15cm以上
A:13cm以上、15cm未満
B:11cm以上、13cm未満
C:11cm未満
【0102】
(空気量(容積%))
練混ぜ直後の水硬性組成物(コンクリート組成物)について、JIS-A1128(2020)に準拠して測定した。
【0103】
(コンクリートの材料分離抵抗性評価)
コンクリート組成物の材料分離抵抗性評価は、練混ぜ直後のコンクリート組成物を目視し、その状態を確認して行った。
S:コンクリート組成物に粘性があり、材料分離が全く確認されない場合
A:コンクリート組成物にやや粘性があり、材料分離もほとんど確認されない場合
B:コンクリート組成物の粘性がやや低く、材料分離も少し確認される場合
C:コンクリート組成物の粘性が低く、材料分離が確認される場合
【0104】
(総合評価)
「コンクリートの流動性評価」(評価1)及び「コンクリートの材料分離抵抗性評価」(評価2)の評価結果に基づいて以下の基準で評価を行った。
S:評価1及び評価2の結果がともに「S」である場合
A:評価1の結果が「S」で評価2の結果が「A」であるか、或いは、評価1の結果が「A」で評価2の結果が「S」である場合
B:評価1及び評価2の結果がともに「A」である場合
C:評価1の結果が「B」で評価2の結果が「A」であるか、或いは、評価1の結果が「A」で評価2の結果が「B」である場合
D:評価1及び評価2の結果の少なくとも1つが「C」である場合
【0105】
(結果)
表5に示すように、本実施例の水硬性組成物用添加剤を水硬性組成物に添加することで、流動性と材料分離抵抗性を共に有する水硬性組成物が得られることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、コンクリートやモルタル等の水硬性組成物に用いられる添加剤として利用することができる。また、本発明の水硬性組成物は、コンクリート硬化体やモルタル硬化体等の水硬性組成物硬化体を形成するものとして利用することができる。