(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056335
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】背凭れ及び椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/40 20060101AFI20240416BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20240416BHJP
A47C 7/64 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A47C7/40
A47C7/38
A47C7/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163137
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000561
【氏名又は名称】株式会社オカムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】石丸 俊介
(72)【発明者】
【氏名】ハーフォード アレキザンダー
【テーマコード(参考)】
3B084
【Fターム(参考)】
3B084DA01
3B084DA03
3B084EC01
3B084EC06
(57)【要約】
【課題】オプション部材を取付可能な背凭れにおいて、背凭れを移動させる際に作業者の手にオプション部材に関する部材が接触することを抑止し、作業者に違和感を与えることを抑止可能とする。
【解決手段】背凭れ5は、後方から前方に向けて窪むように背シェル5bに対して設けられた手掛部23と、手掛部23の外側に位置して背シェル5bに設けられると共に、オプション部材が取付可能なオプション部材取付部25とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方から前方に向けて窪むように骨格部に対して設けられた手掛部と、
前記手掛部の外側に位置して前記骨格部に設けられると共に、オプション部材が取付可能なオプション部材取付部と
を備える
背凭れ。
【請求項2】
前記オプション部材取付部の後端面は、前記手掛部の奥面よりも後方に位置する請求項1記載の背凭れ。
【請求項3】
前記オプション部材取付部に対して後方から前記オプション部材が取付可能であり、
前記骨格部は、前方から前記オプション部材取付部を露出する孔部を有する
請求項1または2記載の背凭れ。
【請求項4】
前記オプション部材取付部は、
前記オプション部材を前記オプション部材取付部に固定するボルトの軸部を後方から前方に挿通可能な筒状部と、
前記筒状部の前方に位置すると共に、前記軸部が螺合可能なナットを保持可能なナット保持部と
を有する
請求項3記載の背凭れ。
【請求項5】
前記孔部の直径は、前記ナットの外形寸法よりも大きい請求項4記載の背凭れ。
【請求項6】
前記手掛部の少なくとも一部を露出する開口部を有すると共に、前記骨格部を覆う表皮材と、
前記表皮材の前記開口部の周縁部を遮蔽すると共に、前記手掛部の前記一部を露出させた状態で前記骨格部に固定された遮蔽部材と
を備え、
前記遮蔽部材は、前記オプション部材取付部を露出する取付部露出開口を有する
請求項1または2記載の背凭れ。
【請求項7】
請求項1または2記載の背凭れを備える椅子。
【請求項8】
前記背凭れの前記オプション部材取付部に取り付けられるオプション部材を備える請求項7記載の椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背凭れ及び椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、背凭れを把持するためのハンドル部を備える椅子が開示されている。また、特許文献1に開示された椅子は、背凭れに固定されたハンガ本体を備えている。ハンガ本体は、ハンドル部の下方に配置されたボルトによって背凭れに固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された椅子において、作業者は、椅子を移動させる場合に、上方からハンドル部に手を差し込み、ハンドル部を握った状態で椅子を移動させる。しかしながら、ハンドル部に上方から手を差し込んだ際に、指先がハンドル部の下方に位置するボルトと接触する可能性がある。つまり、特許文献1に開示された椅子は、ハンガ本体等のオプション部材を背凭れに締結するボルトが作業者の指先に触れることで、作業者に違和感を与える可能性がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、オプション部材を取付可能な背凭れにおいて、背凭れを移動させる際に作業者の手にオプション部材に関する部材が接触することを抑止し、作業者に違和感を与えることを抑止可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
本発明の第1の態様は、背凭れであって、後方から前方に向けて窪むように骨格部に対して設けられた手掛部と、上記手掛部の外側に位置して上記骨格部に設けられると共に、オプション部材が取付可能なオプション部材取付部とを備えるという構成を採用する。
【0008】
本発明の第1の態様では、手掛部は、骨格部に設けられ、後方から前方に窪むように形成されている。また、オプション部材取付部は、手掛部の外側に位置している。このような本発明の第1の態様では、作業者は、手掛部に手を差し込む場合に、手を前後方向に移動させる。オプション部材取付部が手掛部の外側に位置することから、前後方向に移動する手は、オプション部材取付部さらにはオプション部材取付部に取り付けれたオプション部材に接触することがない。したがって、本発明の第1の態様は、背凭れを移動させる際に作業者の手にオプション部材に関する部材が接触することを抑止し、作業者に違和感を与えることを抑止することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、上記第1の態様において、上記オプション部材取付部の後端面が、上記手掛部の奥面よりも後方に位置するという構成を採用する。
【0010】
本発明の第2の態様では、オプション部材取付部の後端面は、手掛部の奥面よりも後方に位置している。オプション部材が取り付けられた状態で、オプション部材を作業者が触った場合には、オプション部材取付部にモーメントが作用する可能性がある。このとき、オプション部材取付部の後端面が、手掛部の奥面よりも後方に位置すると、後端面が手掛部の奥面よりも前方に位置する場合よりも、上記モーメントによるオプション部材取付部に掛かる負荷が低減される。したがって、本発明の第2の態様は、オプション部材取付部に掛かる負荷を低減できる。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第1または第2の態様において、上記オプション部材取付部に対して後方から上記オプション部材が取付可能であり、上記骨格部が、前方から上記オプション部材取付部を露出する孔部を有するという構成を採用する。
【0012】
本発明の第3の態様では、骨格部は、前方からオプション部材取付部を露出する孔部を有する。このような孔部を設けることで、オプション部材取付部の状態を骨格部の前側から視認することができる。このため、背凭れの組立作業者は、オプション部材がオプション部材取付部に正しく装着されているか否かを目視することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、上記第3の態様において、上記オプション部材取付部が、上記オプション部材を上記オプション部材取付部に固定するボルトの軸部を後方から前方に挿通可能な筒状部と、上記筒状部の前方に位置すると共に、上記軸部が螺合可能なナットを保持可能なナット保持部とを有するという構成を採用する。
【0014】
本発明の第4の態様では、オプション部材取付部は、ナット保持部を有する。このため、本発明の第4の態様は、ナットを保持することができ、オプション部材を強固に背凭れに固定することが可能となる。
【0015】
本発明の第5の態様は、上記第4の態様において、上記孔部の直径が、上記ナットの外形寸法よりも大きいという構成を採用する。
【0016】
本発明の第5の態様では、孔部の直径は、ナットの外形寸法よりも大きい。このため、ナットは、骨格部を形成した後に、孔部を介して、オプション部材取付部に保持させることができる。このため、本発明の第5の態様は、ナットのオプション部材取付部への取付作業を容易化することができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、上記第1~第5のいずれか一つの態様において、上記手掛部の少なくとも一部を露出する開口部を有すると共に、上記骨格部を覆う表皮材と、上記表皮材の上記開口部の周縁部を遮蔽すると共に、上記手掛部の上記一部を露出させた状態で上記骨格部に固定された遮蔽部材とを備え、上記遮蔽部材が、上記オプション部材取付部を露出する取付部露出開口を有するという構成を採用する。
【0018】
本発明の第6の態様は、遮蔽部材を備える。このため、表皮材の開口部の周縁部は、外部から視認されない。したがって、本発明の第6の態様は、背凭れの外観体裁を向上させることができる。さらに、遮蔽部材は、オプション部材取付部を露出する取付部露出開口を有する。このため、本発明の第6の態様は、遮蔽部材を介して、オプション部材をオプション部材取付部に取り付けることができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、椅子であって、上記第1~第6のいずれか一つの背凭れを備える。したがって、本発明の第7の態様は、作業者に違和感を与えることを抑止可能な椅子となる。
【0020】
本発明の第8の態様は、上記第7の態様において、上記背凭れの上記オプション部材取付部に取り付けられるオプション部材を備えるという構成を採用する。したがって、本発明の第8の態様は、オプション部材を備えた椅子となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、手掛部は、骨格部に設けられ、後方から前方に窪むように形成されている。また、オプション部材取付部は、手掛部の外側に位置している。したがって、本発明によれば、背凭れを移動させる際に作業者の手にオプション部材に関する部材が接触することを抑止し、作業者に違和感を与えることを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態における椅子を前方から見た正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態における椅子を斜め後方から見た斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態における椅子が備える背凭れの内部構造を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態における椅子が備える背凭れの後側の部分的な分解斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態における椅子が備える連結部材の斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態における椅子が備える背シェルを後側から見た背面図である。
【
図7】左側部枠杆に設けられたランバサポート移動用凹部及び貫通スリットを含む模式図である。
【
図10】手掛部を含む背シェルの模式的な断面図である。
【
図11】オプション部材取付部を含む模式的な断面図である。
【
図12】本発明の一実施形態における椅子が備えるランバサポート機構の斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態における椅子が備えるサポート板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明に係る背凭れ及び椅子の一実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態の椅子1を前方から見た正面図である。また、
図2は、本実施形態の椅子1を斜め後方から見た斜視図である。本実施形態の椅子1は、着座者を着座姿勢の状態で支持する什器であり、例えばオフィスや店舗で用いられる。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の椅子1は、脚部2と、支基3と、座4と、背凭れ5と、ヘッドレスト6(オプション部材)とを備える。
【0025】
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、座4に正規姿勢で着座した着座者から見た方向を椅子1の方向とする。例えば、着座者から見て前側は椅子1の前側とする。また、着座者から見て後側は椅子1の後側とする。また、着座者から見て左側は椅子1の左側とする。また、着座者から見て右側は椅子1の右側とする。また、着座者から見て上側は椅子1の上側とする。また、着座者から見て下側は椅子1の下側とする。
【0026】
脚部2は、床面に接触し、下方から直接的あるいは間接的に支基3、座4及び背凭れ5を支持する。脚部2は、
図1及び
図2に示すように、多岐脚2aと、脚柱2bとを有する。多岐脚2aは、中央部から放射状に延伸する複数の脚体2a1を有している。各々の脚体2a1の先端部は、キャスタ2a2が設置されている。各々のキャスタ2a2は、床面に対して転動可能に接触する。
【0027】
脚柱2bは、多岐脚2aの中央部に立設されており、多岐脚2aの中央部から上方に向けて延伸している。脚柱2bは、外筒2b1と、内筒2b2とを有している。外筒2b1は、多岐脚2aに固定されている。内筒2b2は、下部が外筒2b1に接続されており、外筒2b1に対して上下方向に移動可能に接続されている。内筒2b2は、脚柱2bの内部に収容された不図示のスプリングによって支持されている。また、内筒2b2の上端部は、支基3に固定されている。このような脚柱2bは、支基3を介して、座4を上下方向に移動可能に支持する。
【0028】
支基3は、脚部2の上方に位置するボックス状の部位である。支基3は、内部に、例えば、座4の昇降機構と、背凭れ5の傾動機構とを備える。支基3は、座4の下方に位置し、座4を下方から支持する。支基3の後部は、背凭れ5が接続される。座4は、着座者が直接的に座る部位であり、上面が着座面である。なお、椅子1は、着座者の肘や腕先が載せ置かれる肘掛けを備えてもよい。このような肘掛けは、例えば、座4の側部に固定される。
【0029】
背凭れ5は、着座者を後方から支持する部位である。
図3は、背凭れ5の内部構造を示す斜視図である。
図3に示すように、背凭れ5は、連結部材5aと、背シェル5b(骨格部)と、ランバサポート機構5cと、前側芯材5dと、後側芯材5eとを備える。また、
図4は、背凭れ5の後側の部分的な分解斜視図である。
図4に示すように、背凭れ5は、表皮材5fと、カバー部材5g(遮蔽部材)と、キャップ5hとを備える。
【0030】
連結部材5aは、背凭れ5を支基3に接続するための部材である。
図5は、連結部材5aの斜視図である。
図5に示すように、連結部材5aは、差込部10と、背シェル固定部11と、接続部12とを有する。連結部材5aは、例えば樹脂の射出成形によって形成される射出成形体である。つまり、差込部10と、背シェル固定部11と、接続部12とは、一体化されている。
【0031】
差込部10は、支基3が差し込まれて固定される部位であり、連結部材5aの下部に位置する。支基3は、本体部と、本体部に対して傾動する傾動部とを備えている。傾動部は、左右方向に延びる軸芯を中心に本体部に傾動可能に接続されている。差込部10は、前方に向けて開口する箱形状に形成されており、このような支基3の傾動部が差し込まれて固定される。傾動部は、例えば、不図示のネジによって差込部10に締結される。
【0032】
背シェル固定部11は、接続部12を介して差込部10の上方に位置するように形成されている。背シェル固定部11は、背シェル5bの下部に設けられた連結部材挿入凹部26(
図6参照)に下方から差し込まれる片状部位である。この背シェル固定部11は、背シェル5bの連結部材挿入凹部26に差し込まれた状態で、不図示のネジによって背シェル5bに締結される。
【0033】
接続部12は、差込部10から左右方向に二股に分岐するように立設されており、背シェル固定部11を下方から支持する。なお、本実施形態においては、接続部12は、金型設計や外観体裁等を考慮して二股に分岐した形状を有する。ただし、この接続部12の形状は、変更可能である。
【0034】
背シェル5bは、着座者から受ける荷重を後側から受け止め、連結部材5aを介して、支基3や脚部2に伝達する骨格部である。
図6は、背シェル5bを後側から見た背面図である。
図6に示すように、背シェル5bは、枠体20と、可撓部21と、カバー部材収容凹部22(後面凹部)と、手掛部23と、カバー部材取付部24と、オプション部材取付部25とを有している。背シェル5bは、例えば樹脂の射出成形によって形成される射出成形体である。つまり、枠体20と、可撓部21と、カバー部材収容凹部22と、手掛部23と、カバー部材取付部24と、オプション部材取付部25とは、一体化されている。
【0035】
枠体20は、枠状に形成された部位であり、可撓部21を囲う。この枠体20は、
図6に示すように、上部枠杆20aと、下部枠杆20bと、左側部枠杆20c(側部枠杆)と、右側部枠杆20d(側部枠杆)とを有している。枠体20は、
図6に示すように、略矩形状に形成されている。
【0036】
上部枠杆20aは、枠体20の上部に位置する。上部枠杆20aは、左右方向に沿って延伸する杆状部である。上部枠杆20aには、カバー部材収容凹部22、手掛部23、カバー部材取付部24及びオプション部材取付部25が設けられている。下部枠杆20bは、枠体20の下部に位置する。下部枠杆20bは、左右方向に沿って延伸する杆状部である。下部枠杆20bには、上述の連結部材挿入凹部26(背シェル固定部11が下方から挿入される凹部)が設けられている。
【0037】
左側部枠杆20cは、枠体20の左部に位置する。左側部枠杆20cは、上下方向に沿って延伸し、上部枠杆20aの左端部と下部枠杆20bの左端部とを接続する。右側部枠杆20dは、枠体20の右部に位置する。右側部枠杆20dは、上下方向に沿って延伸し、上部枠杆20aの右端部と下部枠杆20bの右端部とを接続する。
【0038】
また、例えば
図3に示すように、枠体20は、左側部枠杆20cと右側部枠杆20dとの各々に対して設けられたランバサポート移動用凹部20eを有する。また、枠体20は、枠体20の外壁面からランバサポート移動用凹部20eに貫通する貫通スリット20f(
図7参照)を有する。
図7は、左側部枠杆20cに設けられたランバサポート移動用凹部20e及び貫通スリット20fを含む模式図である。なお、
図7(a)は、ランバサポート機構5cの後述するサポート板30の移動方向(上下方向)と直交する方向(前方)から見た図である。また、
図7(b)は、
図7(a)のA-A断面図である。
【0039】
ここで、
図7を参照して、左側部枠杆20cに設けられたランバサポート移動用凹部20e及び貫通スリット20fについて説明する。なお、右側部枠杆20dに設けられたランバサポート移動用凹部20e及び貫通スリット20fは、左側部枠杆20cに設けられたランバサポート移動用凹部20e及び貫通スリット20fと左右対称形状であるため、詳細な説明を省略する。
【0040】
図7に示すように、ランバサポート移動用凹部20eは、左側部枠杆20cの前面から後方に向けて窪む凹部である。ランバサポート移動用凹部20eは、上下方向に沿って直線状に延伸するように形成されている。貫通スリット20fは、左側部枠杆20cの左外壁面からランバサポート移動用凹部20eに連通するように設けられている。貫通スリット20fは、上下方向に沿って直線状に延伸するように形成されている。また、
図7(b)に示すように、貫通スリット20fは、ランバサポート移動用凹部20eの奥面(奥側の底面)よりも前方に位置する。ランバサポート移動用凹部20eの内部であって、ランバサポート移動用凹部20e奥面から貫通スリット20fまでの空間は、ランバサポート機構5cの後述する波板部33の設置スペースとなっている。
【0041】
図6に戻り、可撓部21は、枠体20で囲われた空間に位置し、枠体20に接続されている。可撓部21は、複数の棒状開口部21aが上下方向と左右方向とに配列された板状に形成されている。可撓部21の上端は、上部枠杆20aに接続されている。また、可撓部21の下端は、下部枠杆20bに接続されている。また、可撓部21の左端は、左側部枠杆20cに接続されている。また、可撓部21の右端は、右側部枠杆20dに接続されている。なお、可撓部21は、一部が枠体20に接続されていればよく、上部枠杆20a、下部枠杆20b、左側部枠杆20c及び右側部枠杆20dの全てに必ずしも接続されている必要はない。
【0042】
また、可撓部21は、枠体20の後端縁部よりも前方に位置している。このため、可撓部21と、枠体20に当接する表皮材5fとの間に空間が形成される。この結果、可撓部21は、表皮材5fに干渉することなく変形できる。
【0043】
また、本実施形態では、各々の棒状開口部21aは、上下方向に沿って直進状に延伸している。これらの棒状開口部21aは、上下方向に例えば4~5つ(複数)配置されている。また、各々の棒状開口部21aの左右方向の幅寸法は、本実施形態において同一である。ただし、各々の棒状開口部21aの左右方向の幅寸法は、異なってもよい。
【0044】
このような可撓部21は、着座者から荷重を受けた場合に、各々の棒状開口部21aを左右方向に広げるように弾性変形する。また、可撓部21は、着座者から受ける荷重がなくなると、元の形状に復元する。つまり、可撓部21は、着座者から受ける荷重に応じて柔軟に変形する。
【0045】
また、可撓部21は、左右方向の中央部に位置する縦長スリット21b(縦長開口部)を有している。縦長スリット21bは、上下方向に直線状に延伸して設けられている。本実施形態では、縦長スリット21bは、可撓部21の上端から下端まで連続して設けられている。本実施形態において縦長スリット21bの左右方向の幅寸法は、棒状開口部21aの左右方向の幅寸法と同一である。ただし、本実施形態において縦長スリット21bの左右方向の幅寸法は、棒状開口部21aの左右方向の幅寸法と異なってもよい。また、縦長スリット21bの上下方向の寸法は、いずれの棒状開口部21aの上下方向の寸法よりも大きい。
【0046】
図8は、背シェル5bの後方から見た模式図である。なお、
図8においては、縦長スリット21bの左右方向の幅寸法を大きく図示し、棒状開口部21aを省略している。また、
図9は、
図8のB-B断面図である。
【0047】
図8に示すように、可撓部21は、縦長スリット21bの左側に位置する左側部位21c(第1部位)と、縦長スリット21bの右側に位置する右側部位21d(第2部位)とを有する。左側部位21cは、可撓部21が着座者からの荷重を受けた場合に、縦長スリット21b側の縁部21c1が後方に向けて弾性変形する。この左側部位21cの縦長スリット21b側の縁部21c1は、前後方向への移動に対する拘束力が弱く、可撓部21が着座者からの荷重を受けた場合に、左側部位21cの他の部位よりも大きく後方に向けて変形する。右側部位21dは、可撓部21が着座者からの荷重を受けた場合に、縦長スリット21b側の縁部21d1が後方に向けて弾性変形する。この右側部位21dの縦長スリット21b側の縁部21d1は、前後方向への移動に対する拘束力が弱く、可撓部21が着座者からの荷重を受けた場合に、右側部位21dの他の部位よりも大きく後方に向けて変形する。
【0048】
図9に示すように、左側部位21cは、突出部21eと、上方部位21fと、下方部位21gとを有する。突出部21eは、左側部位21cの最も前方に位置する部位である。突出部21eは、上下方向における左側部位21cの中央位置よりも下方に位置する。上方部位21fは、左側部位21cの一部であり、突出部21eの上方に位置する部位である。上方部位21fは、上方に向かうに連れて後方に向かうように傾斜されている。下方部位21gは、左側部位21cの一部であり、突出部21eの下方に位置する部位である。下方部位21gは、下方に向かうに連れて後方に向かうように傾斜されている。
【0049】
上述のように、突出部21eは、上下方向における左側部位21cの中央位置よりも下方に位置する。このため、下方部位21gの上下方向の寸法は、上方部位21fの上下方向の寸法よりも小さい。したがって、下方部位21gの剛性は、上方部位21fよりも高い。
【0050】
なお、右側部位21dは、左側部位21cと同一の形状を有する。つまり、右側部位21dは、突出部21eと、上方部位21fと、下方部位21gとを有する。このため、右側部位21dの形状について詳細な説明は省略する。
【0051】
このような可撓部21は、
図8に示すように、左側部位21cの上方部位21fと、左側部位21cの下方部位21gと、右側部位21dの上方部位21fと、右側部位21dの下方部位21gとの4つの部位を有している。本実施形態では、左側部位21cの突出部21eと、右側部位21dの突出部21eとは、上下方向にて同じ高さに位置する。このため、左側部位21cの上方部位21fと、右側部位21dの上方部位21fとの上下方向の寸法は同一である。また、左側部位21cの下方部位21gと、右側部位21dの下方部位21gとの上下方向の寸法は同一である。
【0052】
例えば
図4や
図6に示すように、カバー部材収容凹部22は、上部枠杆20aの後面側に設けられている。カバー部材収容凹部22は、上部枠杆20aの後側の外壁面20a1(骨格部の後面)から前方に向けて窪む凹部であり、カバー部材5gが配置される。つまり、カバー部材5gは、カバー部材収容凹部22に収容されるように配置される。
【0053】
このようなカバー部材収容凹部22の奥面(前方側に位置する面)には、複数の肉盗み用凹部22aが設けられている。複数の肉盗み用凹部22aは、左右方向に配列されている。カバー部材収容凹部22の内部には、手掛部23、カバー部材取付部24及びオプション部材取付部25が位置する。
【0054】
手掛部23は、背凭れ5(すなわち椅子1)を移動させる場合に、作業者が手を掛ける部位である。
図10は、手掛部23を含む背シェル5bの模式的な断面図である。この図に示すように、手掛部23は、カバー部材収容凹部22の奥面から、さらに前方に向けて窪んで形成されている。つまり、本実施形態において手掛部23は、背シェル5bの一部が後方から前方に窪んで形成された凹部からなる。
【0055】
図10に示すように、手掛部23は、前方に向かうに連れて上方に向かうように傾斜した上面を有する。この上面は、作業者の指の腹が触れる面である。この上面は、手掛部23の一部であり、指当面23aと称する。また、
図10に示すように、手掛部23は、前方に向かうに連れて上方に向かうように傾斜した下面を有する。この下面は、カバー部材5gの後述する半環状部5g2が当接される面である。この下面は、手掛部23の一部であり、カバー部材当接面23bと称する。
図4及び
図6に示すように、手掛部23の入口開口23cは、カバー部材取付部24及びオプション部材取付部25よりも下方に位置する。
【0056】
カバー部材取付部24は、カバー部材5gを取付可能な部位である。
図4及び
図6に示すように、背シェル5bは、3つのカバー部材取付部24を有している。これらのカバー部材取付部24は、手掛部23の上方に位置し、左右方向に配列されている。つまり、カバー部材取付部24は、後方から見て、手掛部23の外側にてカバー部材収容凹部22の内部に位置する。
【0057】
各々のカバー部材取付部24は、カバー部材収容凹部22の奥面から後方に向けて突出するように設けられている。各々のカバー部材取付部24は、略円柱形状に形成されており、円柱形状の軸芯に沿って設けられた雌ネジ部を有する。各々のカバー部材取付部24は、カバー部材5gを背シェル5bに締結するためのカバー部材固定ネジ5i(
図4参照)が螺合される。
【0058】
オプション部材取付部25は、オプション部材を取り付けるための部位である。
図4及び
図6に示すように、背シェル5bは、2つのオプション部材取付部25を有している。これらのオプション部材取付部25は、手掛部23の上方に位置し、左右方向に配列されている。つまり、オプション部材取付部25は、後方から見て、手掛部23の外側にてカバー部材収容凹部22の内部に位置する。
【0059】
図11は、オプション部材取付部25を含む模式的な断面図である。この図に示すように、筒状部25aと、ナット保持部25bとを有する。筒状部25aは、ナット保持部25bの後方に位置する。筒状部25aは、軸芯が前後方向に沿う円筒形状に形成されており、前後方向に貫通する挿通孔25a1を有する。挿通孔25a1は、ボルト7(
図4参照)の軸部7aが後方から挿通される。つまり、オプション部材取付部25は、ボルト7の軸部7aを後方から前方に挿通可能な筒状部25aを有する。なお、ボルト7は、ヘッドレスト6を背凭れ5に固定するための部材である。
【0060】
また、筒状部25aの後端面25a2は、オプション部材取付部25の後端面である。この筒状部25aの後端面25a2は、手掛部23の奥面よりも後方に位置する。つまり、本実施形態において、オプション部材取付部25の後端面25a2は、手掛部23の奥面よりも後方に位置する。ヘッドレスト等のオプション部材を着座者や周囲の者が触った場合には、筒状部25aのオプション部材との接触箇所にモーメントが作用する可能性がある。このとき、オプション部材取付部25の後端面25a2が、手掛部23の奥面よりも後方に位置すると、後端面25a2が手掛部23の奥面よりも前方に位置する場合よりも、上記モーメントによるオプション部材取付部25に掛かる負荷を低減できる。
【0061】
ナット保持部25bは、筒状部25aの前方に位置し、筒状部25aの前端面に接続されている。ナット保持部25bは、筒状部25aの軸芯に沿った方向から見て、各々が軸芯を中心とする放射方向に弾性変形可能な複数の爪部を有している。ナット保持部25bは、これらの爪部によって、ナット5jを保持可能である。ナット5jは、ボルト7の軸部7aが螺合可能である。
【0062】
また、
図11に示すように、背シェル5bは、前方からオプション部材取付部25を露出可能なナット挿入孔部27(孔部)を有する。ナット挿入孔部27は、枠体20の上部枠杆20aに設けられている。ナット挿入孔部27は、背シェル5bの前面から後方に向かうように形成された孔部である。ナット挿入孔部27の直径は、ナット5jの外形寸法よりも大きいが、ナット5jの外形寸法と微細なクリアランスを介してほぼ等しい場合もある。このようなナット挿入孔部27を設けることで、オプション部材取付部25の状態を背シェル5bの前側から視認することができる。このため、椅子1の組立作業者は、オプション部材がオプション部材取付部25に正しく装着されているか否かを目視することができる。また、ナット5jは、背シェル5bを成形した後に、ナット挿入孔部27を介して、オプション部材取付部25に保持させることができる。また、背シェル5bを表皮材5fにより被覆しない形態を採用した場合においては、このナット挿入孔部27は、前方から背シェル5bに係合されるカバー部材等により遮蔽されることもある。
【0063】
図3に示すように、ランバサポート機構5cは、背凭れ5の上下方向の中央部に位置し、着座者の腰回りを支持する。
図12は、ランバサポート機構5cの斜視図である。この図に示すように、ランバサポート機構5cは、サポート板30と、操作部31と、ガイド部32とを備えている。また、
図12では省略しているが、ランバサポート機構5cは、波板部33(
図7参照)を備えている。
【0064】
サポート板30は、着座者の腰回りを支持する板部材である。サポート板30は、操作部31を操作することで、上下方向に移動可能である。
図13は、サポート板30の斜視図である。この図に示すように、サポート板30は、基部30aと、差込端部30bとを有する。
【0065】
基部30aは、左右方向を長手方向とする板状に形成されている。基部30aは、背シェル5bの前方に位置し、背シェル5bの前面に対向した状態で上下方向に移動可能である。差込端部30bは、基部30aの左右方向の両端部の各々に設けられている。各々の差込端部30bは、基部30aから後面から後方に向けて突出している。
【0066】
各々の差込端部30bは、中空の有底筒状形状に形成されており、外側に向けて開口された側部開口30b1を有する。例えば、基部30aの左側の端部に設けられた差込端部30bは、左側に向けて開口された側部開口30b1を有する。また、基部30aの右側の端部に設けられた差込端部30bは、右側に向けて開口された側部開口30b1を有する。
【0067】
各々の差込端部30bは、枠体20に設けられたランバサポート移動用凹部20eに差し込まれる。例えば、基部30aの左側の端部に設けられた差込端部30bは、枠体20の左側部枠杆20cに形成されたランバサポート移動用凹部20eに前方から差し込まれる。また、基部30aの右側の端部に設けられた差込端部30bは、枠体20の右側部枠杆20dに形成されたランバサポート移動用凹部20eに前方から差し込まれる。各々のランバサポート移動用凹部20eは、上下方向に沿って延伸するように形成されている。このため、各々の差込端部30bが各々のランバサポート移動用凹部20eに差し込まれたサポート板30は、上下方向に移動可能である。
【0068】
また、各々の差込端部30bは、側部開口30b1よりも、差込端部30bの先端側(基部30aの反対側)に位置する複数の突起部30b2を有する。各々の突起部30b2は、外側に向けて突出されている。例えば、基部30aの左側の端部に設けられた差込端部30bは、左側に向けて突出する突起部30b2を有する。また、基部30aの右側の端部に設けられた差込端部30bは、右側に向けて突出する突起部30b2を有する。
【0069】
本実施形態では、各々の差込端部30bは、2つの突起部30b2を有する。同一の差込端部30bに設けられた2つの突起部30b2は、上下方向に配列されている。各々の突起部30b2は、表面が球面状となるように形成されている。これらの突起部30b2は、ランバサポート移動用凹部20eの内部に位置する波板部33に対して摺動可能に当接している。
【0070】
操作部31は、着座者が操作する部位であり、各々の差込端部30bに対して設けられている。つまり、本実施形態では、操作部31は、2つ設けられている。一方の操作部31は、左側の差込端部30bに固定されている。また、他方の操作部31は、右側の差込端部30bに固定されている。
【0071】
図7に示すように、各々の操作部31は、摘持部31aと、係合爪部31bとを有する。摘持部31aは、例えば、着座者に摘ままれた状態で操作される部位である。なお、ここで言う操作とは、操作部31を上下方向に移動させることを意味する。これらの摘持部31aは、例えば
図1に示すように、背シェル5bの外側に位置する。係合爪部31bは、背シェル5b側に向けて突出した爪部である。各々の係合爪部31bは、枠体20に設けられた貫通スリット20fに挿通され、先端部が差込端部30bの側部開口30b1に差し込まれる。係合爪部31bの先端部は、側部開口30b1に差し込まれることで差込端部30bに係止される。これによって、操作部31は、貫通スリット20fに挿通された状態で差込端部30bに固定される。
【0072】
ガイド部32は、枠体20に設けられた各々の貫通スリット20fに嵌合された部位であり、操作部31の移動を案内する。つまり、本実施形態では、ガイド部32は、2つ設けられている。一方のガイド部32は、左側部枠杆20cに設けられた貫通スリット20fに嵌合されている。また、他方のガイド部32は、右側部枠杆20dに設けられた貫通スリット20fに嵌合されている。各々のガイド部32は、案内開口32aを有する。案内開口32aは、操作部31が左右方向に挿通される共に上下方向移動可能とする。また、ガイド部32は、ランバサポート移動用凹部20eの内壁面に係止される可撓爪部32bを有する。
【0073】
波板部33は、各々のランバサポート移動用凹部20eの内部に位置する。つまり、本実施形態では、波板部33は、2つ設けられている。一方の波板部33は、左側部枠杆20cに設けられたランバサポート移動用凹部20eの内部に位置する。また、他方の波板部33は、右側部枠杆20dに設けられたランバサポート移動用凹部20eの内部に位置する。本実施形態では、波板部33は、背シェル5bと一体的に設けられている。ただし、波板部33を背シェル5bと別体で形成し、後加工で背シェル5bと接合するようにしてもよい。
【0074】
各々の波板部33は、例えば
図7(b)に示すように前後方向から見て波形となるように形成されており、左右方向に対して弾性変形可能である。このような波板部33は、上下方向に山部と谷部とが繰り返えされる波形に形成されており、サポート板30の突起部30b2が左右方向から当接される。各々の波板部33は、上下方向にサポート板30が移動され、突起部30b2が山部を通過する場合に弾性変形する。また、各々の波板部33は、突起部30b2が谷部に位置する場合には元の形状に復元する。このような波板部33は、突起部30b2が谷部に位置する場合に、突起部30b2が容易に上下方向に移動することを規制する。この結果、着座者が操作部31を操作していないような場合に、サポート板30が上下方向に移動することが防止される。
【0075】
このようなランバサポート機構5cは、着座者が操作部31を操作することで、サポート板30の上下方向の位置を変更できる。このため、着座者が自らの着座姿勢や体型に応じて、快適に感じる位置にサポート板30を配置することが可能となる。
【0076】
図3に戻り、前側芯材5d及び後側芯材5eは、背シェル5bと連結部材5aとの境界部位に位置する強度部材である。前側芯材5dは、背シェル5b及び連結部材5aの前側に位置し、背シェル5b及び連結部材5aに固定されている。後側芯材5eは、背シェル5b及び連結部材5aの後側に位置し、背シェル5b及び連結部材5aに固定されている。
【0077】
例えば
図1及び
図2に示すように、表皮材5fは、背凭れ5の着座者が接触する外表面を形成している。表皮材5fは、材質が特に限定されるものではないが、例えば布材や皮材によって形成できる。この表皮材5fは、例えば
図4に示すように、背シェル5bを覆うように設けられている。
【0078】
表皮材5fは、
図4に示すように、手掛部23の少なくとも一部を露出する開口部5f1を有している。具体的には、本実施形態において開口部5f1は、手掛部23の指当面23aを露出する。なお、ここで言う指当面23aを露出するとは、外部から手掛部23に差し込まれた作業者の手が、指当面23aへの接触を妨げないことを意味する。つまり、指当面23aに指腹を当てようとする手の移動経路に表皮材5fが位置しないことを意味する。したがって、ここで言う指当面23aを露出するとは、外部から指当面23aが視認可能である状態に限られるものではない。
【0079】
図4や
図10に示すように、表皮材5fの開口部5f1の周縁部5f2の少なくとも一部は、手掛部23の外側にてカバー部材収容凹部22の奥面とカバー部材5gとの間に位置する。本実施形態では、周縁部5f2の上部がカバー部材収容凹部22の奥面とカバー部材5gとの間に位置する。このような表皮材5fの周縁部5f2は、背シェル5bとカバー部材5gとで挟持されている。なお、周縁部5f2の下部は、カバー部材5gの後述する半環状部5g2の表面に貼付されている。
【0080】
カバー部材5gは、表皮材5fの開口部5f1の周縁部5f2の少なくとも一部を遮蔽する部材である。
図4及び
図10に示すように、カバー部材5gは、本体部5g1と、半環状部5g2とを有する。カバー部材5gは、例えば樹脂を射出成形することで形成された射出成形体からなる。つまり、本体部5g1と半環状部5g2とは一体化されている。
【0081】
本体部5g1は、カバー部材収容凹部22の手掛部23が設けられていない部位に嵌合される。例えば、
図4に示すように、本体部5g1は、左右方向を長手とする帯状に形成されている。また、本体部5g1は、後面から前方に窪む突部凹部5g3を有する。さらに、本体部5g1は、カバー部材用開口部5g4と、オプション部材用開口部5g5(取付部露出開口)とを有している。
【0082】
突部凹部5g3は、ヘッドレスト6の後述する突部42が収容される凹部である。カバー部材用開口部5g4は、カバー部材取付部24を露出する開口部である。本実施形態では、カバー部材取付部24が3つ設けられているため、カバー部材用開口部5g4も3つ設けられている。オプション部材用開口部5g5は、オプション部材取付部25を露出する開口部である。本実施形態では、オプション部材取付部25が2つ設けられているため、オプション部材用開口部5g5も2つ設けられている。
【0083】
半環状部5g2は、両端が本体部5g1に接続されるように湾曲された部位である。この半環状部5g2は、本体部5g1との間に間隙Kを形成している。この間隙Kは、カバー部材5gが背シェル5bに固定された状態で、手掛部23の指当面23aを露出した状態とする。このような半環状部5g2は、手掛部23の内部に収容されており、手掛部23のカバー部材当接面23bに当接されている。
【0084】
このようなカバー部材5gは、カバー部材固定ネジ5iによって、背シェル5bに対して締結される。カバー部材固定ネジ5iは、後方側からカバー部材用開口部5g4に挿入され、カバー部材取付部24に螺合される。
【0085】
キャップ5hは、ヘッドレスト6の後述するキャップ収容凹部40に嵌合される部材である。キャップ5hは、キャップ収容凹部40に嵌合されることで、キャップ収容凹部40の内部が外部から視認されないように隠す。このようなキャップ5hは、例えばネームプレートとして用いることができる。
【0086】
ヘッドレスト6は、背凭れ5の上部に固定されており、着座者の頭部を後方から支持可能なオプション部材である。このヘッドレスト6は、例えば
図4に示すように、ヘッドレスト本体部6aと、固定プレート部6bとを有する。
【0087】
ヘッドレスト本体部6aは、着座者の頭部を直接的に支持する部位であり、
図1や
図2に示すように、背凭れ5の上方に位置する。このヘッドレスト本体部6aは、例えば、強度部材となる骨材と、骨材の周囲に位置するクッション材と、クッション材を被覆するカバーとを有する。
【0088】
固定プレート部6bは、ヘッドレスト本体部6aを下方から支持しており、カバー部材5gを介して背凭れ5のオプション部材取付部25に固定される部位である。この固定プレート部6bは、カバー部材5gに後方から積層された場合に、手掛部23の入口開口23cやカバー部材5gの間隙Kを覆わない大きさに形成されている。このような固定プレート部6bは、キャップ収容凹部40と、ボルト取付開口部41と、突部42とを有している。
【0089】
キャップ収容凹部40は、固定プレート部6bの後面から前方に窪むように設けられた凹部であり、キャップ5hが嵌合される。ボルト取付開口部41は、キャップ収容凹部40の奥面に形成されており、後方から見て、カバー部材5gのオプション部材用開口部5g5と重なるように設けられている。本実施形態では、カバー部材5gのオプション部材用開口部5g5が2つ設けられている。このため、ボルト取付開口部41も2つ設けられている。各々のボルト取付開口部41は、ボルト7の軸部7aが後方から挿通される貫通孔である。ボルト7の頭部がボルト取付開口部41の周囲の縁部に当接されることで、固定プレート部6bがカバー部材5gを介して背凭れ5に締結される。突部42は、固定プレート部6bの前面から前方に向けて突出する部位である。この突部42は、カバー部材5gの突部凹部5g3に後方から嵌合される。
【0090】
このようなヘッドレスト6は、ボルト7の軸部7aがナット5jに螺合され、ボルト7の頭部が後方から当接されることで、背凭れ5のオプション部材取付部25に固定される。
【0091】
ボルト7は、ナット5jと共に、ヘッドレスト6を背凭れ5に対して締結するための部材である。各々のボルト7の軸部7aは、ボルト取付開口部41、オプション部材用開口部5g5を通じて、オプション部材取付部25の挿通孔25a1に挿通され、ナット5jに螺合される。ヘッドレスト6と背凭れ5とは、ボルト7の頭部とナット5jとで前後方向から挟持されることで締結される。
【0092】
このような本実施形態の椅子1の背凭れ5を作業者が移動させる場合には、作業者は、手掛部23に手を差し入れ、手掛部23の指当面23aに指の腹を接触させる。作業者は、指の腹が手掛部23の指当面23aに当接させた状態で、椅子1を押し引きすることで、椅子1を移動可能である。
【0093】
以上のような本実施形態における背凭れ5は、手掛部23と、オプション部材取付部25とを備える。手掛部23は、後方から前方に向けて窪むように背シェル5bに対して設けられている。オプション部材取付部25は、手掛部23の外側に位置して背シェル5bに設けられると共に、オプション部材(本実施形態ではヘッドレスト6)が取付可能である。
【0094】
このような本実施形態における背凭れ5では、手掛部23は、背シェル5bに設けられ、後方から前方に窪むように形成されている。また、オプション部材取付部25は、手掛部23の外側に位置している。このような本実施形態における背凭れ5では、作業者は、手掛部23に手を差し込む場合に、手を前後方向に移動させる。オプション部材取付部25が手掛部23の外側に位置することから、前後方向に移動する手は、オプション部材取付部25さらにはオプション部材取付部25に取り付けれたオプション部材に接触することがない。したがって、本実施形態における背凭れ5は、背凭れ5を移動させる際に作業者の手にオプション部材に関する部材が接触することを抑止し、作業者に違和感を与えることを抑止することができる。
【0095】
また、本実施形態における背凭れ5は、オプション部材取付部25の後端面25a2が、手掛部23の奥面よりも後方に位置する。このような本実施形態における背凭れ5では、オプション部材取付部25の後端面25a2は、手掛部23の奥面よりも後方に位置している。オプション部材が取り付けられた状態で、オプション部材を作業者が触った場合には、オプション部材取付部25にモーメントが作用する可能性がある。このとき、オプション部材取付部25の後端面25a2が、手掛部23の奥面よりも後方に位置すると、後端面25a2が手掛部23の奥面よりも前方に位置する場合よりも、上記モーメントによるオプション部材取付部25に掛かる負荷が低減される。したがって、本実施形態における背凭れ5は、オプション部材取付部25に掛かる負荷を低減できる。
【0096】
また、本実施形態における背凭れ5は、オプション部材取付部25に対して後方からオプション部材が取付可能である。また、背シェル5bは、前方からオプション部材取付部25を露出するナット挿入孔部27を有する。このようなナット挿入孔部27を設けることで、オプション部材取付部25の状態を背シェル5bの前側から視認することができる。このため、背凭れの組立作業者は、オプション部材がオプション部材取付部25に正しく装着されているか否かを目視することができる。
【0097】
また、本実施形態における背凭れ5において、オプション部材取付部25は、筒状部25aと、ナット保持部25bとを有する。筒状部25aは、オプション部材をオプション部材取付部25に固定するボルト7の軸部7aを後方から前方に挿通可能である。ナット保持部25bは、筒状部25aの前方に位置すると共に、軸部7aが螺合可能なナット5jを保持可能である。このような本実施形態における背凭れ5では、オプション部材取付部25は、ナット保持部25bを有する。このため、本実施形態における背凭れ5は、ナット5jを保持することができ、オプション部材を強固に背凭れに固定することが可能となる。
【0098】
また、本実施形態における背凭れ5は、上記第4の態様において、ナット挿入孔部27の直径が、ナット5jの外形寸法よりも大きい。このため、ナット5jは、背シェル5bを形成した後に、ナット挿入孔部27を介して、オプション部材取付部25に保持させることができる。このため、本実施形態における背凭れ5は、ナット5jのオプション部材取付部25への取付作業を容易化することができる。
【0099】
また、本実施形態における背凭れ5は、表皮材5fと、カバー部材5gとを備える。表皮材5fは、手掛部23の少なくとも一部を露出する開口部5f1を有すると共に、背シェル5bを覆う。カバー部材5gは、表皮材5fの開口部の周縁部5f2を遮蔽すると共に、手掛部23の一部を露出させた状態で背シェル5bに固定されている。また、カバー部材5gは、オプション部材取付部25を露出するオプション部材用開口部5g5を有する。
【0100】
このような本実施形態における背凭れ5は、カバー部材5gを備える。このため、表皮材5fの開口部の周縁部5f2は、外部から視認されない。したがって、本実施形態における背凭れ5は、背凭れ5の外観体裁を向上させることができる。さらに、カバー部材5gは、オプション部材取付部25を露出するオプション部材用開口部5g5を有する。このため、本実施形態における背凭れ5は、カバー部材5gを介して、オプション部材をオプション部材取付部25に取り付けることができる。
【0101】
本実施形態における椅子1は、上述の背凭れ5を備える。背凭れ5は、背凭れ5を移動させる際に作業者の手にオプション部材に関する部材が接触することを抑止し、作業者に違和感を与えることを抑止することができる。したがって、椅子1も、作業者に違和感を与えることを抑止可能である。
【0102】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0103】
例えば、上記実施形態においては、オプション部材がヘッドレスト6である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、オプション部材の機能が特に限定されるものではない。例えば、オプション部材は、ハンガ部材であってもよい。また、オプション部材は、ヘッドレスト及びハンガ部材の両方を備えるようにしてもよい。
【0104】
また、上記実施形態においては、オプション部材の固定プレート部6bがカバー部材5gを介して背凭れ5に固定された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。固定プレート部6bが直接的に背凭れ5に固定されてもよい。この場合、カバー部材5gは、固定プレート部6bを介して背凭れ5に固定してもよい。また、カバー部材5gは、設けなくてもよい。
【0105】
また、上記実施形態においては、可撓部21が棒状開口部21aを有する構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、可撓部21が棒状開口部21aを備えない構成を採用することも可能である。例えば、可撓部21の厚さ寸法を背シェル5bの他の部位と比較して薄くすることで、可撓部21に可撓性を付与することも可能である。
【0106】
また、上記実施形態においては、枠体20にカバー部材収容凹部22が設けられた構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、枠体20にカバー部材収容凹部22を設けない構成を採用することも可能である。
【0107】
また、上記実施形態においては、背凭れ5がランバサポート機構5cを備える構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ランバサポート機構5cを備えない構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0108】
1……椅子、5……背凭れ、5a……連結部材、5b……背シェル(骨格部)、5g……カバー部材(被覆部材)、5g1……本体部、5g2……半環状部、5g3……突部凹部、5g4……カバー部材用開口部、5g5……オプション部材用開口部(取付部露出開口)、5h……キャップ、5i……カバー部材固定ネジ、5j……ナット、5f……表皮材、5f1……開口部、5f2……周縁部、6……ヘッドレスト(オプション部材)、6a……ヘッドレスト本体部、6b……固定プレート部、23……手掛部、23a……指当面、24……カバー部材取付部(取付部)、25……オプション部材取付部、25a……筒状部、25a1……挿通孔、25a2……後端面、25b……ナット保持部、26……連結部材挿入凹部、27……ナット挿入孔部(孔部)、40……キャップ収容凹部、41……ボルト取付開口部、42……突部