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特開2024-56344シール装置、シール構造、及びシール方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056344
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】シール装置、シール構造、及びシール方法
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3272 20160101AFI20240416BHJP
   F16J 15/3204 20160101ALI20240416BHJP
   F16J 15/16 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F16J15/3272
F16J15/3204 201
F16J15/16 A
F16J15/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163146
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】松本 啓佑
【テーマコード(参考)】
3J006
3J043
【Fターム(参考)】
3J006AE11
3J006AE15
3J006AE30
3J006AE33
3J006AE39
3J006AE46
3J006AE49
3J006CA01
3J043AA12
3J043BA06
3J043CA02
3J043CA05
3J043CB13
3J043CB20
3J043DA09
3J043DA10
3J043HA01
(57)【要約】
【課題】シール装置の交換を容易にする。
【解決手段】ダストシール1は、一対の補強環体11,12と、補強環体11,12に取り付けられ、環状に延びる弾性体から形成された弾性体部20とを備える。補強環体11,12は、補強環体11の2つの端11a,11bが夫々補環体12の2つの端12a,12bに間隙g1,g2を介して対向して、環状に延びている。弾性体部20は、内周側部材の内周側面に接触可能に形成されたリップ部21を有しており、弾性体部20は、補強環体11,12の間の間隙g1に隣接する、対向する2つの端20a,20bを有している。補強環体11,12は、外周側部材の外周側面に接触可能に形成された取付面12,13を有している。取付面12,13は、軸線xの延び方向の一方に向かって縮径している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の面である外周側面を有する部材である外周側部材の前記外周側面と、前記外周側面に内周側において対向する環状の面である内周側面を有する部材である内周側部材の前記内周側面との間の環状の隙間を閉塞するために前記環状の隙間に取り付けられるシール装置であって、
一対の補強環体と、
前記一対の補強環体に取り付けられ、軸線周りに環状に延びる弾性体から形成された弾性体部とを備え、
前記一対の補強環体の各々は、2つの端を有しており、前記2つの端の間を延びる部材であり、
前記一対の補強環体は、前記一対の補強環体の一方の前記2つの端が夫々前記一対の補強環体の他方の前記2つの端に間隙を介して対向して、前記軸線周りに環状に延びており、
前記弾性体部は、前記内周側部材の前記内周側面に接触可能に形成されたリップ部を有しており、前記弾性体部は、前記一対の補強環体の間の前記間隙の一方に隣接する対向する2つの端を有しており、
前記一対の補強環体の各々は、前記外周側部材の前記外周側面に接触可能に形成された取付面を有しており、
前記取付面は、前記軸線の方向の一方に向かって縮径していることを特徴とするシール装置。
【請求項2】
前記シール装置を前記軸線の方向の一方に押して前記環状の隙間に前記シール装置を取り付ける際に、前記一対の補強環体の間の前記間隙を介して互いに対向する前記一対の補強環体の前記端が互いに近接するように、前記一対の補強環体は形成されていることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記環状の隙間に前記シール装置を取り付ける際に前記シール装置を押す力の算出値が所定の大きさより小さくなるように、前記取付面は縮径していることを特徴とする請求項1又は2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記シール装置を押す力の算出値は、前記取付面と前記外周側面との接触に基づいて発生する力の算出値と、前記リップ部と前記内周側面との接触に基づいて発生する力の算出値との和であることを特徴とする請求項3に記載のシール装置。
【請求項5】
前記所定の大きさは、手動で発生可能な力の大きさであることを特徴とする請求項3に記載のシール装置。
【請求項6】
前記取付面は、円錐面に沿って延びる面であり、前記取付面の少なくとも一部の前記軸線に直交する方向の幅は、前記外周側面の前記軸線に直交する方向の幅よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のシール装置。
【請求項7】
環状の面である外周側面を有する部材である外周側部材の前記外周側面と、
前記外周側面に内周側において対向する環状の面である内周側面を有する部材である内周側部材の前記内周側面と、
前記外周側面と前記内周側面との間の環状の隙間を閉塞するために前記環状の隙間に取り付けられるシール装置とを備えるシール構造であって、
前記シール装置は、一対の補強環体と、前記一対の補強環体に取り付けられ、軸線周りに環状に延びる弾性体から形成された弾性体部とを備え、
前記一対の補強環体の各々は、2つの端を有しており、前記2つの端の間を延びる部材であり、
前記一対の補強環体は、前記一対の補強環体の一方の前記2つの端が夫々前記一対の補強環体の他方の前記2つの端に間隙を介して対向して、前記軸線周りに環状に延びており、
前記弾性体部は、前記内周側部材の前記内周側面に接触可能に形成されたリップ部を有しており、前記弾性体部は、前記一対の補強環体の間の前記間隙の一方に隣接する対向する2つの端を有しており、
前記一対の補強環体の各々は、前記外周側部材の前記外周側面に接触可能に形成された取付面を有しており、
前記取付面は、前記軸線の方向の一方に向かって縮径しており、
前記外周側面は、前記軸線の方向の一方に向かって縮径していることを特徴とするシール構造。
【請求項8】
環状の面である外周側面を有する部材である外周側部材の前記外周側面と、前記外周側面に内周側において対向する環状の面である内周側面を有する部材である内周側部材の前記内周側面との間の環状の隙間を閉塞するためのシール方法であって、
軸線周りに環状の補強環と、該補強環に取り付けられ、前記軸線周りに環状に延びる弾性体から形成された弾性体部とを備えるシール装置の前記補強環に、外周側に面する、前記軸線周りに環状の、前記軸線の延び方向の一方に向かって縮径する面である取付面を形成し、
前記シール装置の延び方向において互いに対向する2つの端を前記シール装置に形成し、
前記シール装置の前記2つの端の間を通して、前記内周側部材に前記シール装置を取り付け、前記シール装置を前記軸線の方向の一方に押して、前記環状の隙間に前記シール装置を取り付け、
前記環状の隙間への前記シール装置の取り付けの際に、前記取付面を、前記外周側部材の前記外周側面に接触させ、前記シール装置の径を縮小させることを特徴とするシール方法。
【請求項9】
2つの端を有しており、前記2つの端の間を延びる部材である補強環体の一対を、前記補強環において、前記一対の補強環体の一方の前記2つの端が夫々前記一対の補強環体の他方の前記2つの端に間隙を介して対向して、前記軸線周りに環状に延びるように設け、前記弾性体部に、前記一対の補強環体の間の前記間隙の一方に隣接する対向する2つの端を形成して、前記シール装置の延び方向において互いに対向する前記2つの端を形成し、
前記一対の補強環体の間の前記間隙を介して対向する前記一対の補強環体の前記端を互いに近接させて、前記シール装置の径を縮小させることを特徴とする請求項8に記載のシール方法。
【請求項10】
前記取付け面の縮径の程度を調整して、前記シール装置を押す力の算出値が所定の大きさより小さくなるようにすることを特徴とする請求項9に記載のシール方法。
【請求項11】
前記環状の隙間への前記シール装置の取り付けの際に、前記弾性体部のリップ部を前記内周側部材の前記内周側面に接触させ、
前記シール装置を押す力の算出値は、前記取付面と前記外周側面との接触に基づいて発生する力の算出値と、前記リップ部と前記内周側面との接触に基づいて発生する力の算出値との和であり、
前記所定の大きさは、手動で発生可能な力の大きさであることを特徴とする請求項10に記載のシール方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置、シール構造、及びシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧を利用して部材を駆動する油圧駆動装置、例えば油圧シリンダには、作動油を密封するための密封装置が設けられている。例えば、建設機械の油圧シリンダは、土埃や塵埃、ダスト等の異物に接触しやすい環境で用いられるため、建設機械の油圧シリンダの密封装置は異物に接触しやすい。密封装置のシールリップに異物が接触すると、油圧シリンダのロッドとシールリップとの間に異物が挟まり、作動油の漏れにつながる場合がある。例えば、油圧シリンダのロッドとシールリップとの間に異物が挟まると、ロッドとシールリップとの間の接触部分が損傷し、これにより作動油の漏れが発生する場合がある。
【0003】
このように、建設機械の油圧シリンダは異物に接触しやすく、異物に基づく作動油の漏れの発生のおそれがある。このため、異物に基づく作動油の漏れの発生を防止するために、建設機械の油圧シリンダには、密封装置のシールリップに向かう異物の進入を防ぐためのシール装置であるダストシールが設けられているものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-116997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
建設機械の油圧シリンダのダストシールは異物に接触しやすく、ダストシールは異物との接触によって損傷し、そのシール性能が低下する場合がある。ダストシールのシール性能が低下した場合、密封装置のシールリップに向かう異物の進入が可能になる。この異物の進入の発生を防ぐために、シール性能が低下した建設機械の油圧シリンダのダストシールを新しいものに交換することが行われている。
【0006】
ダストシールの交換作業が複雑な場合、ダストシールの交換に長い時間を要し、建設機械の稼働率が低下する。このため、従来の建設機械の油圧シリンダのダストシールには、油圧シリンダからの取り外し、及び油圧シリンダへの取り付けが容易な、交換が容易な構成が求められている。また、従来の建設機械の油圧シリンダにおける異物の進入を防ぐためのシール方法には、実施が容易な方法が求められている。
【0007】
本発明の課題は、交換が容易なシール装置及びシール構造、並びに実施が容易なシール方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るシール装置は、環状の面である外周側面を有する部材である外周側部材の前記外周側面と、前記外周側面に内周側において対向する環状の面である内周側面を有する部材である内周側部材の前記内周側面との間の環状の隙間を閉塞するために前記環状の隙間に取り付けられるシール装置であって、一対の補強環体と、前記一対の補強環体に取り付けられ、軸線周りに環状に延びる弾性体から形成された弾性体部とを備え、前記一対の補強環体の各々は、2つの端を有しており、前記2つの端の間を延びる部材であり、前記一対の補強環体は、前記一対の補強環体の一方の前記2つの端が夫々前記一対の補強環体の他方の前記2つの端に間隙を介して対向して、前記軸線周りに環状に延びており、前記弾性体部は、前記内周側部材の前記内周側面に接触可能に形成されたリップ部を有しており、前記弾性体部は、前記一対の補強環体の間の前記間隙の一方に隣接する対向する2つの端を有しており、前記一対の補強環体の各々は、前記外周側部材の前記外周側面に接触可能に形成された取付面を有しており、前記取付面は、前記軸線の方向の一方に向かって縮径していることを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るシール装置において、前記シール装置を前記軸線の方向の一方に押して前記環状の隙間に前記シール装置を取り付ける際に、前記一対の補強環体の間の前記間隙を介して互いに対向する前記一対の補強環体の前記端が互いに近接するように、前記一対の補強環体は形成されている。
【0010】
本発明の一態様に係るシール装置において、前記環状の隙間に前記シール装置を取り付ける際に前記シール装置を押す力の算出値が所定の大きさより小さくなるように、前記取付面は縮径している。
【0011】
本発明の一態様に係るシール装置において、前記シール装置を押す力の算出値は、前記取付面と前記外周側面との接触に基づいて発生する力の算出値と、前記リップ部と前記内周側面との接触に基づいて発生する力の算出値との和である。
【0012】
本発明の一態様に係るシール装置において、前記所定の大きさは、手動で発生可能な力の大きさである。
【0013】
本発明の一態様に係るシール装置において、前記取付面は、円錐面に沿って延びる面であり、前記取付面の少なくとも一部の前記軸線に直交する方向の幅は、前記外周側面の前記軸線に直交する方向の幅よりも大きい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明に係るシール構造は、環状の面である外周側面を有する部材である外周側部材の前記外周側面と、前記外周側面に内周側において対向する環状の面である内周側面を有する部材である内周側部材の前記内周側面と、前記外周側面と前記内周側面との間の環状の隙間を閉塞するために前記環状の隙間に取り付けられるシール装置とを備えるシール構造であって、前記シール装置は、一対の補強環体と、前記一対の補強環体に取り付けられ、軸線周りに環状に延びる弾性体から形成された弾性体部とを備え、前記一対の補強環体の各々は、2つの端を有しており、前記2つの端の間を延びる部材であり、前記一対の補強環体は、前記一対の補強環体の一方の前記2つの端が夫々前記一対の補強環体の他方の前記2つの端に間隙を介して対向して、前記軸線周りに環状に延びており、前記弾性体部は、前記内周側部材の前記内周側面に接触可能に形成されたリップ部を有しており、前記弾性体部は、前記一対の補強環体の間の前記間隙の一方に隣接する対向する2つの端を有しており、前記一対の補強環体の各々は、前記外周側部材の前記外周側面に接触可能に形成された取付面を有しており、前記取付面は、前記軸線の方向の一方に向かって縮径しており、前記外周側面は、前記軸線の方向の一方に向かって縮径していることを特徴とする。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係るシール方法は、環状の面である外周側面を有する部材である外周側部材の前記外周側面と、前記外周側面に内周側において対向する環状の面である内周側面を有する部材である内周側部材の前記内周側面との間の環状の隙間を閉塞するためのシール方法であって、軸線周りに環状の補強環と、該補強環に取り付けられ、前記軸線周りに環状に延びる弾性体から形成された弾性体部とを備えるシール装置の前記補強環に、外周側に面する、前記軸線周りに環状の、前記軸線の延び方向の一方に向かって縮径する面である取付面を形成し、前記シール装置の延び方向において互いに対向する2つの端を前記シール装置に形成し、前記シール装置の前記2つの端の間を通して、前記内周側部材に前記シール装置を取り付け、前記シール装置を前記軸線の方向の一方に押して、前記環状の隙間に前記シール装置を取り付け、前記環状の隙間への前記シール装置の取り付けの際に、前記取付面を、前記外周側部材の前記外周側面に接触させ、前記シール装置の径を縮小させることを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係るシール方法は、2つの端を有しており、前記2つの端の間を延びる部材である補強環体の一対を、前記補強環において、前記一対の補強環体の一方の前記2つの端が夫々前記一対の補強環体の他方の前記2つの端に間隙を介して対向して、前記軸線周りに環状に延びるように設け、前記弾性体部に、前記一対の補強環体の間の前記間隙の一方に隣接する対向する2つの端を形成して、前記シール装置の延び方向において互いに対向する前記2つの端を形成し、前記一対の補強環体の間の前記間隙を介して対向する前記一対の補強環体の前記端を互いに近接させて、前記シール装置の径を縮小させる。
【0017】
本発明の一態様に係るシール方法は、前記取付け面の縮径の程度を調整して、前記シール装置を押す力の算出値が所定の大きさより小さくなるようにする。
【0018】
本発明の一態様に係るシール方法において、前記環状の隙間への前記シール装置の取り付けの際に、前記弾性体部のリップ部を前記内周側部材の前記内周側面に接触させ、前記シール装置を押す力の算出値は、前記取付面と前記外周側面との接触に基づいて発生する力の算出値と、前記リップ部と前記内周側面との接触に基づいて発生する力の算出値との和であり、前記所定の大きさは、手動で発生可能な力の大きさである。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るシール装置及びシール構造によれば、シール装置及びシール構造の交換を容易にすることができる。また、本発明に係るシール方法によれば、シール方法の実施を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態に係るシール装置としてのダストシールの正面図である。
図2図1に示すダストシールの平面図である。
図3図1に示すダストシールの線A-Aに沿う断面における断面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るシール構造を有する油圧シリンダの一部の軸線に沿う断面における断面図である。
図5】シール構造を示すための図4に示す油圧シリンダの部分拡大図である。
図6】補強環体の取付面の直径とハウジングの押付面の直径との関係を説明するための断面図である。
図7】油圧シリンダへの取り付けの際のダストシールの状態をモデル化して示す図である。
図8】油圧シリンダからの取り外しの際のダストシールの状態をモデル化して示す図である。
図9】ダストシールの取付方法又は交換方法を説明するための油圧シリンダの一部を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
本発明に係るシール装置は、環状の面である外周側面を有する部材である外周側部材の外周側面と、この外周側面に内周側において対向する環状の面である内周側面を有する部材である内周側部材の内周側面との間の環状の隙間を閉塞するためにこの環状の隙間に取り付けられるシール装置である。本発明に係るシール装置は、土埃や塵埃、ダスト等の異物の進入を防ぐために用いられる。外周側部材は、例えばハウジングであり、内周側部材は、例えばハウジング内に収容され、往復運動可能にハウジングに支持される軸部材である。外周側部材及び内周側部材は夫々、具体的には例えば、建設機械の油圧シリンダのハウジングとロッドである。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態に係るシール装置としてのダストシール1の正面図であり、図2には、ダストシール1の平面図であり、図3は、ダストシール1の線A-Aに沿う断面における断面図である。図1~3に示すように、ダストシール1は、一対の補強環体11,12と、一対の補強環体11,12に取り付けられ、軸線x周りに環状に延びる弾性体から形成された弾性体部20とを備えている。一対の補強環体11,12の各々は、2つの端11a,11b又は端12a,12bを有しており、2つの端11a,11b又は端12a,12bの間を延びる部材である。一対の補強環体11,12は、一対の補強環体11,12の一方の2つの端11a,11b又は端12a,12bが夫々一対の補環環体11,12の他方の2つの端11a,11b又は端12a,12bに間隙g1,g2を介して対向して、軸線x周りに環状に延びている。弾性体部20は、内周側部材の内周側面に接触可能に形成されたリップ部21を有しており、弾性体部20は、一対の補強環体11,12の間の間隙g1,g2の一方に隣接する、対向する2つの端20a,20bを有している。一対の補強環体11,12の各々は、外周側部材の外周側面に接触可能に形成された取付面13又は取付面14を有している。取付面13,14は、軸線xの延び方向の一方に向かって縮径している。以下、ダストシール1について具体的に説明する。
【0024】
図1,2に示すように、ダストシール1において、補強環体11と補強環体12とは、軸線x周りに環状の補強環10を形成している。補強環10は、例えば図1に示すように、軸線xを中心又は略中心とする円又は略円に沿って延びる形状を有している。補強環10において、補強環体11の端11a,11bが夫々、間隙g1,g2を介して補強環体12の端12a,12bに対向している。
【0025】
図1,2に示すように、補強環体11は、有端の環状の部材であり、例えば、軸線xを中心又は略中心とする円又は略円に沿って延びる、正面視において円弧状又は略円弧状の形状を有する部材である。具体的には、例えば図1に示すように、補強環体11は、軸線xを中心とする半円よりも少し短い円弧の一端から他端までこの円弧に沿って延びている。端11aは、補強環体11の延び方向における一方の端であり、端11bは、補強環体11の延び方向における他方の端である。端11a,11bは、図1,2に示すように、補強環体11の延び方向に面する面を形成している。
【0026】
後述するように、ダストシール1を軸線x方向に押して、取付対象の外周側部材と内周側部材と間の環状の隙間にダストシール1を取り付ける際に、補強環体11,12の間の間隙g1,g2を介して互いに対向する補強環体11,12の端11a,12a及び端11b,12bが互いに近接するように、補強環体11,12は形成されている。
【0027】
補強環体11は、図3に示すように、フランジ部15aと、嵌合部15bと、フランジ部15aと嵌合部15bとを滑らかに接続する移行部15cとを有している。フランジ部15aは、図1~3に示すように、軸線xに直交する平面に沿って延びる有端環状の部分である。フランジ部15aは、例えば図1~3に示すように、軸線xに直交する平面に平行又は略平行に広がる、軸線xを中心軸又は略中心軸とする有端の円環状又は略円環状の部分である。嵌合部15bは、図1~3に示すように、軸線xに沿って延びる筒の一部を形成する有端環状の部分である。また、図3に示すように、嵌合部15bは、軸線xの方向における一方(以下、内側ともいう。)に向かって縮径している。嵌合部15bは、例えば図1~3に示すように、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円錐筒又は略円錐筒の一部を形成する部分である。図3に示すように、移行部15cは、軸線x方向において、フランジ部15aと嵌合部15bとを滑らかに接続している。なお、軸線x周りに環状の周方向において、フランジ部15aと嵌合部15bとの長さは同じ又は略同じである。
【0028】
補強環体11は、図3に示すように、一様又は略一様の厚さを有している。つまり、軸線xに沿う断面において、フランジ部15aは、軸線xに直交する方向(以下、径方向ともいう。)に向かうフランジ部15aの延び方向に亘って、一様又は略一様の厚さを有しており、嵌合部15bは、軸線xに対して傾斜する嵌合部15bの延び方向に亘って、一様又は略一様の厚さを有しており、移行部15cは、フランジ部15aと嵌合部15bとの間の延び方向に亘って、一様又は略一様の厚さを有している。また、フランジ部15a、嵌合部15b、及び移行部15cの厚さは、互いに同じ又は略同じとなっている。
【0029】
上述のように、補強環体11は、ダストシール1の取付対象の外周側部材の外周側面に接触可能に形成された取付面13を有しており、取付面13は、軸線xの延び方向(軸線x方向)の一方に向かって縮径している。具体的には、図3に示すように、補強環体11は、嵌合部15bに取付面13を有しており、取付面13は、嵌合部15bの外周側に面する面によって形成されている。取付面13は、軸線x方向においてフランジ部15aから離れる方向に向かって縮径している。取付面13は、図3に示すように、例えば、軸線xを中心軸とする円錐面に沿う有端環状の面であり、具体的には例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円錐面又は略円錐面上に広がる有端環状の面である。図3に示すように、図示の例において、取付面13は、断面において、軸線xに対して傾斜角αの角度だけ傾斜する直線又は略直線を描く面である。取付面13の傾斜角αは、例えば、後述するように、ダストシール1を取付対象に取り付ける際に必要となる力の算出値に基づいて設定されている。
【0030】
上述したように、ダストシール1を軸線x方向に押して、取付対象の外周側部材と内周側部材と間の環状の隙間にダストシール1を取り付ける際に、補強環体11,12の間の間隙g1,g2を介して互いに対向する補強環体11,12の端11a,12a及び端11b,12bが互いに近接するように、補強環体11,12は形成されている。例えば、取付面13の少なくとも一部の軸線xに直交する方向の幅(直径)は、外周側部材の外周側面の軸線に直交する方向の幅(直径)よりも大きくなっている。取付面13の直径と外周側面の直径との関係の詳細については後述する。
【0031】
補強環体11は、金属製の部材であり、一体の部材として形成されており、フランジ部15a、嵌合部15b、及び移行部15cは、同一の材料から一体に形成された補強環体11の各部分であり、一体的に連続している。補強環体11の金属材としては、例えば、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)がある。
【0032】
補強環体12は、補強環体11と同じ又は略同じ部材であり、補強環体11のフランジ部15a、嵌合部15b、及び移行部15cに対応する、フランジ部16a、嵌合部16b、及び移行部16cを有している。具体的には例えば、図1に示すように、補強環体12は、補強環体11と面対称又は略面対称である。補強環体12の取付面14は、取付面13と同様に嵌合部16bの外周側に面する面に形成されている。なお、図3は、補強環体11の部分におけるダストシール1の延び方向に直交する断面におけるダストシール1の断面を示すが、補強環体12の部分におけるダストシール1の延び方向に直交する断面におけるダストシール1の断面も、図3と同様に示される。
【0033】
補強環体12の取付面14も、補強環体11の取付面13と同様の形状となっている。つまり、補強環体12の取付面14は、軸線x方向の一方に向かって縮径している。具体的には、図3に示すように、取付面14は、軸線x方向においてフランジ部16aから離れる方向に向かって縮径している。取付面14は、図3に示すように、例えば、軸線xを中心軸とする円錐面に沿う有端環状の面であり、具体的には例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円錐面又は略円錐面上に広がる有端環状の面である。図3に示すように、図示の例において、取付面14は、断面において、軸線xに対して傾斜角αの角度だけ傾斜する直線又は略直線を描く面である。取付面14の傾斜角αは、例えば、後述するように、ダストシール1を取付対象に取り付ける際に必要となる力の算出値に基づいて設定されている。
【0034】
弾性体部20は、例えば図1~3に示すように、軸線x周りに円環状の又は略円環状の有端の環状部材であり、軸線xを中心又は略中心とする円又は略円に沿って一端からこの一端に接する他端まで延びている。端20aは、弾性体部20の延び方向における一方の端であり、端20bは、弾性体部20の延び方向における他方の端である。端20a,20bは、図1,2に示すように、弾性体部20の延び方向に面する面を形成している。端20a及び端20bは、補強環10における補強環体11と補強環体12との間の間隙の1つ(間隙g1)に隣接しており、端20aと端20bとの間の隙間が間隙g1につながるようになっている。具体的には、端20a及び端20bは、図1,2に示すように、補強環体11と補強環体12との間の間隙g1に、軸線x方向において外側及び径方向において内周側において、隣接する位置に設けられている。また、端20aと端20bとは互いに接触している。端20aと端20bとは互いに接触しておらず、端20aと端20bとの間に隙間が形成されてもよい。
【0035】
図3に示すように、弾性体部20は、軸線x周りに環状の部分である基部22と、基部22から延びる軸線x周りに環状の部分であるリップ部21とを有している。弾性体部20は、基部22において、補強環体11のフランジ部15aの内周側の端部15dに取り付けられており、また、補強環体12のフランジ部16aの内周側の端部16dに取り付けられている。弾性体部20の補強環体11,12への取り付けは、例えば、加硫接着等の接着によってなされている。リップ部21は、基部22の軸線x方向における他方の側(外側)の部分から、外側及び内周側に向かって延びている。リップ部21は、図3に示すように、外側の端部に内周側に突出する環状の部分であるリップ先端部21aを有している。リップ部21は、ダストシール1が取付対象である外周側部材及び内周側部材に取り付けられた後述する使用状態において、リップ先端部21aが内周側部材の内周側面に接触するように形成されている。
【0036】
弾性体部20の端20a及び端20bは、図1,2に示すようにリップ部21に形成されており、間隙g1に弾性体部20は延びておらず、間隙g1は、弾性体部20の一部に延びている。例えば図2に示すように、間隙g1は、弾性体部20の基部22の一部及びリップ部21の基部22側の一部に延びている。
【0037】
弾性体部20は、上述のように弾性体から形成されている部材であり、一体の部材として形成されており、リップ部21及び基部22は同一の材料から一体に形成された弾性体部20の各部分であり、一体的に連続している。弾性体部20の弾性体としては、例えば、各種ゴム材がある。各種ゴム材は、例えば、ウレタンゴム、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)、シリコンゴム、及びフッ素ゴム(FKM)等の合成ゴムである。なお、弾性体部20の弾性体は、合成樹脂製でもよい。
【0038】
補強環体11,12は、間隙g1,g2が形成されていない、無端環状の補強環10の中間体を形成し、この補強環10の中間体を軸線xに直交する線に沿って切断して2つに分割することにより作られてもよい。また、この補強環10の中間体に、端20a,20bが形成されていない弾性体部20の中間体を形成し、この互いに一体となっている補強環10の中間体及び弾性体部20の中間体において、補強環10の中間体を軸線xに直交する線に沿って切断し、この切断によって切り取られた補強環10の中間体の部分に重なる弾性体部20の中間体の部分が切り取られて、補強環体11,12及び弾性体部20に間隙g1,g2を形成し、次いで、間隙g1を通る軸線xに直交する線に沿ってリップ部21を切断して間隙g1に隣接する端20a,20bを形成して、ダストシール1が作られてもよい。間隙g1,g2の形成には、例えば、刃厚の厚いナイフのような工具が用いられ、また、端20a,20bの形成には、例えば、刃厚の薄いナイフのような工具が用いられる。
【0039】
次いで、本発明の実施の形態に係るシール構造について説明する。図4は、本発明の実施の形態に係るシール構造2を有する油圧シリンダ50の一部の軸線xに沿う断面における断面図であり、図5は、シール構造2を示すための図4の部分拡大図である。なお、油圧シリンダ50において、各部材の軸線は、ダストシール1の軸線xと一致又は略一致するようになっており、説明の便宜上、油圧シリンダ50の各部材の軸線を軸線xとする。
【0040】
油圧シリンダ50は、例えば、建築機械に使用されて建築機械の作動部を駆動するためのものである。油圧シリンダ50は、例えば図4に示すように、シリンダチューブ51と、ロッドガイド52と、ロッドガイド53と、ロッド4とを有している。シリンダチューブ51は、軸線xに沿って延びる筒状の部材である。ロッドガイド52,53は夫々、軸線xを周りに環状の部材である。ロッドガイド52は、シリンダチューブ51の開口に取り付けられ、また、ロッドガイド53は、ロッドガイド52の開口側に取り付けられ、シリンダチューブ51及びロッドガイド52,53は、油圧シリンダ50のハウジング3を構成する。ロッド4は、軸線xに沿って延びる棒状の部材であり、軸部材である。ロッド4は、シリンダチューブ51及びロッドガイド52,53内に収容されており、軸線xに沿って往復運動可能にシリンダチューブ51及びロッドガイド52,53に支持されている。シリンダチューブ51及びロッドガイド52,53は、ダストシール1の取付対象の外周側部材であり、ロッド4は、ダストシール1の取付対象の内周側部材である。ロッド4は、内周側部材の内周側面としての外周面4aを有している。外周面4aは、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円筒面又は略円筒面である。
【0041】
シリンダチューブ51内には、ロッド4に作用してロッド4を往復運動させるための作動油が収容されている。油圧シリンダ50には、この作動用をハウジング3内部に密封するための密封装置としてロッドシール54が設けられている。また、油圧シリンダ50には、ロッドシール54に加わる作動油の油圧を緩衝するためのバッファリング55が、ロッドシール54よりも内側に設けられている。図4に示すように、ロッドシール54及びバッファリング55は、ロッド4の外周面4aに接触するようにロッドガイド52に設けられている。
【0042】
また、油圧シリンダ50には、ハウジング3内部への異物の進入を防ぐためのダストシール1と他のダストシール56とが設けられている。ダストシール56は、公知のダストシールである。図4に示すように、ダストシール56及びダストシール1は、ロッド4の外周面4aに接触するようにロッドガイド53に設けられている。ダストシール56及びダストシール1は、ロッドシール54よりも外側に設けられており、異物がロッドシール54に接近することを防いでいる。なお、油圧シリンダ50には、ダストシール56が設けられておらず、ダストシール1のみが設けられていてもよい。
【0043】
油圧シリンダ50においてダストシール56及びダストシール1は、図5に示すように、互いに隣接して、ロッドガイド53に形成された凹部57に収容されて、ロッドガイド53に固定されている。凹部57は、ダストシール56が収容される部分である内側凹部58と、ダストシール1が収容される部分である外側凹部59とを有している。外側凹部59は、軸線x方向において内側に向かって縮径する凹部である。
【0044】
内側凹部58は、図5に示すように、軸線xに沿って延びる筒面状の面である嵌着面58aと、嵌着面58aの内側の端から内周側にロッドガイド53の内周面53bまで延びる環状の面であるストッパ面58bとによって形成される凹部であり、ロッド4の外周面4aの周りに環状の空間を形成している。嵌着面58aは、例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円筒面又は略円筒面であり、ダストシール56の軸線x方向の幅と同じ又は略同じ大きさの軸線x方向の幅を有している。また、嵌着面58aの径は、ダストシール56が外周側において全周に亘って嵌着面58aに接触して、ダストシール56が嵌着面58aに嵌着されるような大きさとなっている。ストッパ面58bは、例えば、軸線xに直交する平面に広がる、軸線xを中心又は略中心とする円環面又は略円環面である。
【0045】
外側凹部59は、図5に示すように、軸線x方向において内側に向かって縮径する面である、外周側部材であるハウジング3の外周側面としての押付面5と、押付面5の内側の端(内側端5a)から内周側に内側凹部58の嵌着面58aまで延びる環状の面であるストッパ面59aによって形成される凹部であり、ロッド4の外周面4aの周りに環状の空間を形成している。押付面5は、具体的には、外側凹部58内に収容されたダストシール1の補強環体11,12夫々の取付面13,14が接触するような形状となっている。押付面5は、例えば、軸線xに沿って延びる錐面状の面であり、具体的には例えば、軸線xを中心軸又は略中心軸とする円錐面又は略円錐面であり、図5に示すように、図示の例においては、ダストシール1の取付面13,14に対応して、断面において、軸線xに対して傾斜角βの角度だけ傾斜する直線又は略直線を描く面となっている。また、押付面5は、ダストシール1の補強環体11,12と基部22との間の軸線x方向の幅と同じ又は略同じ大きさの軸線x方向の幅を有している。
【0046】
ストッパ面59aは、例えば、軸線xに直交する平面に広がる、軸線xを中心又は略中心とする円環面又は略円環面である。図5に示すように、ストッパ面59aは、押付面5の内側端5aから、ダストシール1の補強環体11,12の嵌合部15b,16bの厚さよりも小さい距離だけ内周に延びている。このため、図5に示すように、凹部57において、ダストシール56は、ダストシール1の補強環体11,12の嵌合部15b,16bの一部と軸線x方向において対向している。補強環体11,12の嵌合部15b,16bの一部は、ダストシール56の軸線x方向における外側のストッパとなっている。補強環体11,12の嵌合部15b,16bの一部は、ダストシール56と軸線x方向において接触していてもよく、接触していなくてもよい。なお、外側凹部59に、ストッパ面59aは形成されていなくてもよい。
【0047】
図4,5に示すように、凹部57に収容されたダストシール56及びダストシール1は、保持部材60によって凹部57内に保持されている。保持部材60は、環状の部材であり、ロッドガイド53の外側に面する外側端面53aとダストシール1の弾性体部20の基部22とに、軸線x方向において外側から接触する環状の面である保持面61を有している。保持面61は、図5に示すように、ダストシール1のリップ部21に干渉しないように円盤状の空間を内周側に形成しており、この空間にリップ部21は延びている。
【0048】
保持部材60は、図4に示すように、複数のボルト62により、ロッドガイド53に着脱可能に固定されている。保持部材60がロッドガイド53に固定されることにより、ダストシール56は内側凹部58に固定され、ダストシール1は外側凹部59に固定され、ダストシール56及びダストシール1はロッドガイド53に固定される。なお、保持部材60は、ハウジング3を構成する部材である。
【0049】
上述のように、ダストシール1が油圧シリンダ50に取り付けられているダストシール1の使用状態において、ダストシール1の補強環体11の取付面13は、ロッドガイド53の外側凹部59の押付面5に接触しており、補強環体11は、内周側に押されている。同様に、ダストシール1の使用状態において、ダストシール1の補強環体12の取付面14は、ロッドガイド53の外側凹部59の押付面5に接触しており、補強環体12は、内周側に押されている。また、使用状態のダストシール1における補強環体11,12の端11a,12a及び端11b,12bは夫々、自由状態のダストシール1における補強環体11,12の端11a,12a及び端11b,12bよりも互いに近接している。つまり、ダストシール1の使用状態における補強環体11と補強環体12との間の間隙g1,g2の周方向の幅は、ダストシール1に力がかかっていない自由状態におけるダストシール1の間隙g1,g2の周方向の幅よりも減少している。このため、ダストシール1の使用状態における補強環10の径は、自由状態におけるダストシール1の補強環10の径よりも小さくなっている。
【0050】
図6は、補強環体11,12の取付面13,14の直径と、ハウジング3(ロッドガイド53)の押付面5の直径との関係を説明するための断面図である。図6において、ダストシール1は自由状態である。また、図6において、外側凹部59に収容された使用状態におけるダストシール1が破線で示されている。補強環体11の取付面13と補強環体12の取付面14とは同様な形状を有しているため、以下では取付面13と押付面5との関係についてのみ説明する。取付面13と押付面5との関係についての説明は、取付面14と押付面5との関係についても同様に当てはまる。
【0051】
上述のように、補強環体11の取付面13は、断面において軸線xに対して傾斜角αだけ傾いている。また、ハウジング3(ロッドガイド53)の押付面5は、断面において軸線xに対して傾斜角βだけ傾いている。押付面5は、取付面13に対応しており、押付面5は、断面において軸線xに対して取付面13と同じ又は略同じ角度だけ傾斜している。図示の例では、傾斜角α=傾斜角βである。自由状態におけるダストシール1の取付面13の内側の端(内側端13a)における取付面13の直径は直径D1aとなっており、また、自由状態におけるダストシール1の取付面13の外側の端(外側端13b)における取付面13の直径は直径D1bとなっている。また、ハウジング3(ロッドガイド53)の押付面5の外側の端(外側端5b)における直径は直径d1となっており、押付面5の内側端5aにおける直径は直径d2となっている。
【0052】
上述のように、取付面13の少なくとも一部の直径は、ハウジング3(ロッドガイド53)の押付面5の直径よりも大きくなっている。具体的には例えば、自由状態における取付面13の内側端13aの直径D1aは、押付面5の外側端5bの直径d1よりも小さくなっている(直径D1a<直径d1)。また、自由状態における取付面13の外側端13bの直径D1bは、押付面5の外側端5bの直径d1よりも大きくなっている(直径D1b>直径d1)。これにより、ダストシール1が外側凹部59に押し込まれて、取付面13の内側端13aが押付面5の内側端5aに達した際(使用状態)に、補強環体11は、内周側に押されて、取付面13の内側端13aの直径は、直径D1aよりも小さい直径D2となっている。なお、図示の例においては、使用状態における取付面13の内側端13aの直径D2は、押付面5の内側端5aにおける直径d2である(D2=d2)。
【0053】
このように、使用状態において、取付面13の内側端13aの直径は、直径D1aよりも小さい直径D2となるようになっており、同様に、補強環体12の取付面14の内側端14aの直径は、直径D1aよりも小さい直径D2となるようになっている。このため、使用状態において、補強環10は縮められて、その直径は減少し、補強環体11の端11aと補強環体12の端12aとは接触し、補強環体11の端11bと補強環体12の端12bとは接触する。なお、使用状態において、補強環10が縮められて、その直径が減少しても、補強環体11の端11aと補強環体12の端12aとは接触せず、また、補強環体11の端11bと補強環体12の端12bとは接触しないようになっていてもよい。また、使用状態において、補強環体11の端11aと補強環体12の端12aと、または、補強環体11の端11bと補強環体12の端12bとのいずれかが接触しないようになっていてもよい。使用状態において、補強環体11の端11aと補強環体12の端12aとが自由状態からどれだけ近づくか又は接触するか、また、補強環体11の端11bと補強環体12の端12bとが自由状態からどれだけ近づくか又は接触するかは、直径D1bと直径d2との関係を設定することにより調整することができる。
【0054】
なお、自由状態における取付面13,14の内側端13a,14aの直径D1aは、押付面5の外側端5bの直径d1と同じ又はそれよりも大きくなっていてもよい(直径D1a≧直径d1)。自由状態における取付面13,14の内側端13a,14aの直径D1aが、押付面5の外側端5bの直径d1よりも小さくなっている(直径D1a<直径d1)場合、補強環体11,12の内側端13a,14aを外側凹部59に入れる作業が容易になり、ダストシール1の取付作業を容易にすることができる。
【0055】
ダストシール1をハウジング3のロッドガイド53に取り付ける際、後述するように、補強環体11,12の取付面13,14がロッドガイド53の押付面5に押し付けられながら押付面5上を引きずられ、ダストシール1が外側凹部59内に押されていく。また、弾性体部20のリップ部21がロッド4に押し広げられ、リップ先端部21aがロッド4の外周面4a上を引きずられる。このため、ダストシール1をハウジング3のロッドガイド53に取り付ける際には、取付面13,14と押付面5との間に発生する摩擦力と、リップ部21と外周面4aとの間に発生する摩擦力とに抗して、ダストシール1が軸線x方向に押される必要がある。弾性体部20の弾性体の弾性係数をkとし、補強環体11,12とロッドガイド53との間の摩擦係数をμ1とし、弾性体部20とロッド4との間の摩擦係数をμ2とし、また、ダストシール1の取り付けの際の、取付面13,14と押付面5とが接触した位置からのダストシール1がロッドガイド53に固定されるまでのダストシール1の押し込み量をL1とし、ダストシール1を取り付ける際にダストシール1を押す力をN1とすると、押し込み時のダストシール1の状態は図7に示すようにモデル化することができ、ダストシール1を押す力N1は、下記の式(1)によって近似的に算出できる。なお、押し込み量L1は、軸線x方向の距離であり、ダストシール1を押す力N1は、軸線x方向の力である。
【0056】
[数1]
N1=kL1μ2+kL1μ1*cosα+kL1*sinα・・・・・・・ (1)
なお、kL1μ2は、弾性体部20のリップ部21とロッド4の外周面4aとの間で作用する摩擦抵抗力を表しており、kL1μ1*cosαは、補強環体11,12の取付面13,14とロッドガイド53の押付面5との間で作用する摩擦抵抗力を表しており、kL1*sinαは、挿入力(ダストシール1を押す力)の反作用としてかかる力を表している。
【0057】
ダストシール1を簡単に取り付けることができるようにするためには、取り付けの際に必要なダストシール1を押す力が手動で発生可能な大きさであることが好ましい。つまり、取り付けの際に必要なダストシール1を押す力が、作業者が発生可能な押込み力Pよりも小さいことが好ましい。このため、式(1)によって算出されるダストシール1を押す力の算出値N1が、作業者が発生可能な押込み力Pよりも小さい(N1<P)ことが好ましい。作業者が発生可能な押込み力Pは、例えば、ボルト62を締め付けながら保持部材60と共に保持部材60に接触するダストシール1を外側凹部59に押し込む際のボルト62の締め付けに必要な力であり、例えば、レンチ等の工具を押す力であり、500Nである。なお、式(1)によって算出されるダストシール1を押す力の算出値N1は、他の条件に基づいて設定されていてもよい。
【0058】
ダストシール1の取り付けを容易にするために、ダストシール1の補強環体11,12の取付面13,14及び押付面5の傾斜角αや、弾性体部20の弾性係数kは、式(1)のダストシール1を押す力の算出値N1が所定の値や所定の範囲となるように、設定されている。
【0059】
一方、ダストシール1をハウジング3のロッドガイド53から取り外す際、後述するように、外側凹部59において、補強環体11,12の取付面13,14がロッドガイド53の押付面5に押し付けられており、リップ先端部21aがロッド4の外周面4aに押し付けられているダストシール1を、軸線x方向において外側に引っ張る必要がある。このため、ダストシール1をハウジング3のロッドガイド53から取り外す際には、取付面13,14と押付面5との間に発生する摩擦力と、リップ部21と外周面4aとの間に発生する摩擦力とに抗して、ダストシール1が軸線x方向外側に引っ張られる必要がある。ロッドガイド53に取り付けられたダストシール1を、取付面13,14と押付面5との接触がなくなる位置まで引っ張る、ダストシール1の引っ張り量をL2とし、ダストシール1を引っ張る力をN2とすると、取り外しの際のダストシール1の状態は図8に示すようにモデル化することができ、下記の式(2),(3)を満たすとダストシール1を容易に取り外し可能にすることができる。なお、引っ張り量L2は、軸線x方向の距離であり、ダストシール1を引っ張る力N2は、軸線x方向の力である。また、式(3)は、式(2)を式変形したものである。
【0060】
[数2]
kL2μ2+kL2μ1*cosα<kL2*sinα・・・・・・・・ (2)
[数3]
kL2μ1*cosα-kL2*sinα>kL2μ2・・・・・・・・ (3)
なお、式(2)における、kL2μ2+kL2μ1*cosαは、摩擦力によりダストシール1が外側凹部59にとどまろうとする力を表しており、kL2*sinαは、ダストシール1の緊迫力の反作用としてダストシール1が外側凹部59から飛び出ようとする力を表している。
【0061】
ダストシール1の取り外しを容易にするために、ダストシール1の補強環体11,12の取付面13,14及び押付面5の傾斜角αや、弾性体部20の弾性係数kは、式(2),(3)を満たすように設定されている。式(2),(3)を満たすように取付面13,14及び押付面5の傾斜角αが設定されていると、取り外しの際にダストシール1が有する、ダストシール1の収縮に基づく力を大きくでき、ダストシール1が取り外し方向に移動しやすくすることができる。
【0062】
上述の式(1)~(3)に基づいて、取付面13,14及び押付面5の傾斜角αは、例えば、20°≦α≦40°である。取付面13,14及び押付面5の傾斜角αが小さいと、ダストシール1の取り外しの際に、ダストシール1が取り外し方向に移動し難くなり、また、取付面13,14及び押付面5の傾斜角αが大きいと、ダストシール1の取り付けの際に、ダストシール1の押し込みに対する抗力が大きくなる。このため、傾斜角αが20°以下の場合、ダストシール1の取り外し性の低下が懸念され、傾斜角αが40°以上の場合、ダストシール1の取り付け性の低下が懸念される。
【0063】
使用状態のダストシール1において、例えば、補強環体11の端11aと補強環体12の端12aとは互いに接触しており、また、補強環体11の端11bと補強環体12の端12bとは互いに接触しており、間隙g1,g2がなくなっている。また、例えば、使用状態のダストシール1において、補強環体11の端11aと補強環体12の端12aとが、または、補強環体11の端11bと補強環体12の端12bとが、互いに接触しており、間隙g1,g2のいずれかがなくなっている。また、例えば、使用状態のダストシール1において、補強環体11の端11aと補強環体12の端12aとは互いに自由状態よりも接近しており、また、補強環体11の端11bと補強環体12の端12bとは互いに自由状態よりも接近しており、間隙g1,g2が自由状態よりも小さくなっている。これにより、使用状態のダストシール1は、間隙g1,g2を介して異物が内部に進入することを抑制している。また、使用状態のダストシール1は、補強環体11,12とハウジング3(ロッドガイド53)の押付面5の間から異物が内部に進入することを抑制している。
【0064】
また、使用状態のダストシール1において、弾性体部20のリップ部21のリップ先端部21aは、所定の締め代を持ってロッド4の外周面4aに接触している。なお、締め代とは、リップ部21のリップ先端部21aとロッド4の外周面4aとの接触部分の軸線x方向の幅、または、リップ先端部21aとロッド4の外周面4aとの径方向における重なり幅である。これにより、使用状態のダストシール1は、リップ部21とロッド4の外周面4aとの間から異物が内部に進入することを抑制している。
【0065】
油圧シリンダ50において、ダストシール1、ハウジング3(ロッドガイド53)の押付面5,ロッド4の外周面4aは、シール構造2を構成しており、ハウジング3の内部に異物が進入することを防止している。
【0066】
ついで、本発明の実施の形態に係るシール方法について説明する。本発明の実施の形態に係るシール方法は、ダストシール1の取付方法又は交換方法を含む。図9は、ダストシール1の取付方法又は交換方法を説明するための油圧シリンダ50の一部を示す分解斜視図である。
【0067】
ダストシール1の取り付けの際は、先ず、上述の構成を有するダストシール1を用意し、また、図9に示すように、ダストシール1が取り付けられておらず、また、保持部材60が固定されていない油圧シリンダ50を用意する。次いで、図9に示すように、ダストシール1を広げる。つまり、間隙g2内又は間隙g2に近接する弾性体部20の部分を中心に補強環体11及び補強環体12を互いに離れる方向に回転させ、ダストシール1の端11aと端12aとの間隔及び端20aと端20bとの間隔を広げる。次いで、広げられたダストシール1の2つの端(端11a,20aと端12a,20b)の間を通して、広げられたダストシール1が囲む空間にロッド4を収容し、広げられたダストシール1を閉じる。つまり、間隙g2内又は間隙g2に近接する弾性体部20の部分を中心に補強環体11及び補強環体12を互いに近づく方向に回転させ、ダストシール1の端11aと端12aとの間隔及び端20aと端20bとの間隔を狭め、広げる前のダストシール1の状態又は広げる前のダストシール1の状態と略同じ状態に戻す。これにより、ダストシール1が囲む環状の空間内をロッド4が通るようになり、弾性体部20のリップ先端部21aの全周又は略全周がロッド4の外周面4aに接触する。
【0068】
次いで、ダストシール1をロッド4に沿って内側に押していき、ロッドガイド53の外側凹部59内にダストシール1を押し込んでいく。この際、補強環体11,12の内側端13a,14aにおける直径D1aは、外側凹部59の押付面5の外側端5bにおける直径d1よりも小さいため(図6参照)、ダストシール1の内側の端(補強環体11,12の内側端13a,14a)を外側凹部59内に容易に入れることができる。なお、補強環体11,12の内側端13a,14aにおける直径D1aが、外側凹部59の押付面5の外側端5bにおける直径d1よりも大きい場合は、ダストシール1の内側の端(補強環体11,12の内側端13a,14a)を外側凹部59内に入れる際に、補強環10の径を縮める必要がある。
【0069】
内側の端(補強環体11,12の内側端13a,14a)が外側凹部59内に入ったダストシール1を更に内側に向かって押し込んでいくと、補強環体11,12の取付面13,14がロッドガイド53の押付面5に接触する(図6参照)。補強環体11,12の取付面13,14がロッドガイド53の押付面5に接触した後も、ダストシール1を更に内側に向かって押し込んでいくと、補強環体11,12の取付面13,14はロッドガイド53の押付面5上を滑りながら内側に移動し、また、補強環10の径が減少していく。具体的には、間隙g1,g2近傍の弾性体部20が軸線x周りの周方向に圧縮され縮んでいく。そして、端11aと端12aとが接触し、また、端11bと端12bとが接触すると、ダストシール1の押し込みが終了し、ダストシール1が外側凹部59内に取り付けられた状態となる(図5参照。)。この時、補強環体11,12の内側端13a,14aが、押付面5の内側端5aに位置しており、補強環体11,12がストッパ面59aに接触している(図5,6参照。)。また、弾性体部20の基部22は、軸線x方向において外側に外側凹部59から突出している。なお、ダストシール1の押し込みの終了時に、補強環体11,12がストッパ面59aに接触していなくてもよく、また、弾性体部20の基部22は、軸線x方向において外側に外側凹部59から突出していなくてもよい。
【0070】
ダストシール1の押し込みの際、取付面13,14と押付面5との間に摩擦力が発生し、また、リップ部21と外周面4aとの間に摩擦力が発生する。また、ダストシール1の押し込みの際、弾性体部20を周方向に圧縮する力の反力が発生する。上述のように、ダストシール1は、補強環体11,12の取付面13,14の傾斜角α及び押付面5の傾斜角β(β=α)が所定の値に設定されており、上記摩擦力と弾性体部20の圧縮の反力に抗してダストシール1を押し込むための力が低減されており、作業者が手動で押すことができる力となっている。このため、ダストシール1の押し込みを手動で容易に行うことができる。
【0071】
次いで、外側凹部59内に収容されたダストシール1を保持部材60によって外側から覆い、保持部材60をボルト62によってロッドガイド53に固定して、ダストシール1をロッドガイド53に固定し、ダストシール1の取り付けが完了する。なお、ダストシール1の押し込みの際に、保持部材60の保持面61をダストシール1の弾性体部20の基部22に押し付けて、保持部材60を軸線xに沿って内側に押していくことにより、保持部材60と共にダストシール1を外側凹部59内に押し込むようにしてもよい。この場合、ボルト62の締め付けによって、ダストシール1と共に保持部材60を軸線xに沿って内側に押していってもよい。
【0072】
図5に示すように、ダストシール1がロッドガイド53に固定された状態において、弾性体部20の基部22は、補強環体11,12のフランジ部15a,16aと保持部材60との間で圧縮されている。なお、ダストシール1がロッドガイド53に固定された状態において、弾性体部20の基部22は、補強環体11,12のフランジ部15a,16aと保持部材60との間で圧縮されていなくてもよい。また、図5に示すように、ダストシール1がロッドガイド53に固定された状態において、補強環体11,12のフランジ部15a,16aがダストシール56と軸線x方向において接触して、ダストシール56が位置決めされている。なお、ダストシール1がロッドガイド53に固定された状態において、補強環体11,12のフランジ部15a,16aがダストシール56と軸線x方向において接触していなくてもよい。
【0073】
ロッドガイド53に固定されたダストシール1の取り外しの際は、先ず、ボルト62を外して、ロッドガイド53と保持部材60との固定を解除し、保持部材60を外側に動かす。この際、取付面13,14と押付面5との間に摩擦力が発生しており、リップ部21と外周面4aとの間に摩擦力が発生しており、また、圧縮されている弾性体部20の圧縮する力の反力が発生している。上述のように、ダストシール1は、取り外しを考慮して、補強環体11,12の取付面13,14の傾斜角α及び押付面5の傾斜角β(β=α)が所定の値に設定されており(式(2),(3))、取付面13,14の押付面5上での外側に向かう移動に抗する取付面13,14と押付面5との間の摩擦力は小さくなっており、リップ先端部21aの外周面4a上での外側に向かう移動に抗するリップ先端部21aと外周面4aとの間の摩擦力は小さくなっている。また、圧縮されている弾性体部20の圧縮する力の反力が大きくなっている。このため、保持部材60の固定を解除することにより、ダストシール1が外側凹部59から外側に出てくるようにすることができ、または、作業者が手動でダストシール1を外側凹部59から外側に出すようにすることができる。このように、ロッドガイド53に固定されたダストシール1の取り外しを手動で容易に行うことができる。
【0074】
油圧シリンダ50のダストシール1の交換は、上述のようにロッドガイド53に固定されたダストシール1を取り外し、その後、上述のようにロッドガイド53にダストシール1を取り付けて固定することによりなされる。上述のように、ロッドガイド53に固定されたダストシール1の取り外しは、作業者が手動で容易に行うことができ、また、ダストシール1のロッドガイド53への固定は、作業者が手動で容易に行うことができる。このため、油圧シリンダ50のダストシール1の交換は、作業者が手動で容易に行うことができる。従って、本発明の実施の形態に係るシール方法は、実施が容易であり、また、シールの解除が容易である。
【0075】
上述のように、本発明の実施の形態に係るダストシール1及びシール構造2によれば、ダストシール1の交換を容易にすることができる。また、本発明の実施の形態に係るシール方法によれば、シールの実施を容易にすることができる。また、本発明の実施の形態に係るシール方法によれば、シールの解除を容易にすることができ、シールの実施及び解除の繰り返しを容易にすることができる。
【0076】
このため、例えば油圧シリンダ50を有する建築機械の場合、この建築機械が使用されている場所において、作業員自身が容易にダストシール1の交換を行うことができ、建設機械の稼働率の低下を防ぐことができる。また、ダストシール1の交換が容易であるため、ダストシール1の適切な時期での交換を促すことができ、油圧シリンダ50の異物に基づく損傷を低減することができる。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施の形態に係るダストシール1、シール構造2、及びシール方法に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0078】
また、本発明の実施の形態に係るダストシール1、シール構造2、及びシール方法は、油圧シリンダ50に適用されるとしたが、本発明の実施の形態に係るダストシール1、シール構造2、及びシール方法の適用対象はこれに限られない。また、油圧シリンダ50は建築機械に使用されるものに限られない。
【符号の説明】
【0079】
1…ダストシール、2…シール構造、3…ハウジング、4…ロッド、4a…外周面、5…押付面、5a…内側端、5b…外側端、10…補強環、11,12…補強環体、11a,11b,12a,12b…端、13,14…取付面、13a,14a…内側端、13b,14b…外側端、15a,16a…フランジ部、15b,16b…嵌合部、15c,16c…移行部、15d,16d…端部、20…弾性体部、20a,20b…端、21…リップ部、21a…リップ先端部、22…基部、50…油圧シリンダ、51…シリンダチューブ、52,53…ロッドガイド、53a…外側端面、53b…内周面、54…ロッドシール、55…バッファリング、56…ダストシール、57…凹部、58…内側凹部、58a…嵌着面、58b…ストッパ面、59…外側凹部、59a…ストッパ面、60…保持部材、61…保持面、62…ボルト、D1a,D1b,D2,d1,d2…直径、g1,g2…間隙、x…軸線、α,β…傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9