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特開2024-56350電子内視鏡用プロセッサ、電子内視鏡システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056350
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】電子内視鏡用プロセッサ、電子内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/06 20060101AFI20240416BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20240416BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
A61B1/06 614
A61B1/00 630
A61B1/00 683
A61B1/06 510
G02B23/24 A
G02B23/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163153
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】山邉 俊明
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040AA02
2H040BA14
2H040DA36
4C161AA00
4C161BB00
4C161CC06
4C161GG01
4C161HH51
4C161NN01
4C161QQ10
(57)【要約】
【課題】発光素子を有する光源を備えた電子内視鏡用プロセッサにおいて、発光素子に対してパルス幅変調による調光を行う場合にLEDを保護する。
【解決手段】本発明の一態様は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡に用いられる電子内視鏡用プロセッサである。このプロセッサは、生体組織に対する照明光を生成するための複数の光源と、複数の光源の各々の出射光を受けて電気を発生する複数の太陽光発電モジュールと、複数の太陽光発電モジュールの各々によって発生する電気を蓄える複数の蓄電デバイスと、主電源又は複数の蓄電デバイスの一方が複数の光源に接続されるように切り替えを行う切り替え部と、複数の光源に対する主電源の供給が停止した場合に、複数の蓄電デバイスが複数の光源に接続されるように切り替え部を制御する制御部と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡に用いられる電子内視鏡用プロセッサであって、
前記生体組織に対する照明光を生成するための複数の光源と、
前記複数の光源の各々の出射光を受けて電気を発生する複数の太陽光発電モジュールと、
前記複数の太陽光発電モジュールの各々によって発生する電気を蓄える複数の蓄電デバイスと、
主電源又は前記複数の蓄電デバイスの一方が前記複数の光源に接続されるように切り替えを行う切り替え部と、
前記複数の光源に対する前記主電源の供給が停止した場合に、前記複数の蓄電デバイスが前記複数の光源に接続されるように前記切り替え部を制御する制御部と、
を備えた電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項2】
前記切り替え部は、前記主電源又は前記複数の蓄電デバイスの各々の一方が前記複数の光源の各々に接続されるように切り替えるための複数のスイッチを含み、
前記制御部は、前記複数の光源に対する前記主電源の供給が停止した場合に、前記複数の蓄電デバイスの各々が前記複数の光源の各々に接続されるように前記複数のスイッチを制御する、
請求項1に記載された電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項3】
前記複数の蓄電デバイスは直列に接続され、
前記切り替え部は、前記主電源、又は直列に接続された前記複数の蓄電デバイスの一方が前記複数の光源の各々に接続されるように切り替えるためのスイッチを含み、
前記制御部は、前記複数の光源に対する前記主電源の供給が停止した場合に、前記複数の蓄電デバイスが前記複数の光源の各々に接続されるように前記スイッチを制御する、
請求項1に記載された電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項4】
前記複数の太陽光発電モジュールは直列に接続され、
隣接する太陽光発電モジュールの間に接続されているバイパスダイオードを備えた、
請求項3に記載された電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項5】
前記制御部は、起動時に前記複数の光源を動作させて前記複数の蓄電デバイスの各々の充電量を監視し、前記複数の蓄電デバイスのうちいずれかの蓄電デバイスの充電量が所定値以下である場合に警告出力を行う、
請求項1から5のいずれか一項に記載された電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項6】
少なくとも前記複数の光源と前記複数の太陽光発電モジュールを収容する筐体と、
前記筐体内の空気を排気する冷却ファンと、を備え、
前記制御部は、前記複数の光源に対する前記主電源の供給が停止した後、前記複数の蓄電デバイスにより前記冷却ファンを動作させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載された電子内視鏡用プロセッサ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の電子内視鏡用プロセッサと、
前記電子内視鏡用プロセッサに接続され、前記生体組織の撮像画像を取得する撮像素子を備えた電子内視鏡と、
を備える電子内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡に用いられる電子内視鏡用プロセッサ、及び、電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器分野においては、体腔内の生体組織を照明し、照明された体腔内の生体組織を被写体として撮像することにより、体腔内に潜む病変部の診断を行うのに好適な画像を生成することが可能な内視鏡システムが知られている。従来、照明光として白色光を発するキセノンランプやハロゲンランプ等のランプ光源が使用されていたが、最近では、ランプ光源に代えて、特定の波長帯域の光を発する発光ダイオード(LED:Light emitting diode)やレーザダイオード(LD:Laser diode)等の発光素子を有する半導体光源が用いられている。
【0003】
例えば特許文献1には、複数のLEDによって照明光を得るようにした内視鏡装置が記載されている。特許文献1によれば、この内視鏡装置は、複数のLEDのそれぞれに対応する複数の光センサを設け、各光センサの検知結果に基づいて各LED間の光量比を補正することで、LEDの温度特性に拘わらず最適な光量比を得ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6138203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の電子内視鏡システムは、通常、交流商用電源に接続されており、この交流商用電源から交流電圧を直流電圧(DC)に変換し、電子内視鏡用プロセッサに内蔵される光源装置に主電源が供給される。しかし、術者がシステムを使用して患者の診断を行っている最中に、突然の停電や意図しない電源コンセントの抜去により光源装置に対する主電源の供給が一時的にでも停止すると、診断を継続的に行うことが困難となる場合がる。
【0006】
そこで、本発明は、生体組織を照明するための光源を備えた電子内視鏡用プロセッサにおいて、光源に対する主電源が停止した後においても使用者の視野を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、生体組織の撮像を行うように構成された撮像素子を備える電子内視鏡に用いられる電子内視鏡用プロセッサであって、
前記生体組織に対する照明光を生成するための複数の光源と、
前記複数の光源の各々の出射光を受けて電気を発生する複数の太陽光発電モジュールと、
前記複数の太陽光発電モジュールの各々によって発生する電気を蓄える複数の蓄電デバイスと、
主電源又は前記複数の蓄電デバイスの一方が前記複数の光源に接続されるように切り替えを行う切り替え部と、
前記複数の光源に対する前記主電源の供給が停止した場合に、前記複数の蓄電デバイスが前記複数の光源に接続されるように前記切り替え部を制御する制御部と、
を備える。
【0008】
前記切り替え部は、前記主電源又は前記複数の蓄電デバイスの各々の一方が前記複数の光源の各々に接続されるように切り替えるための複数のスイッチを含んでもよい。その場合、前記制御部は、前記複数の光源に対する前記主電源の供給が停止した場合に、前記複数の蓄電デバイスの各々が前記複数の光源の各々に接続されるように前記複数のスイッチを制御する。
【0009】
前記複数の蓄電デバイスは直列に接続され、前記切り替え部は、前記主電源、又は直列に接続された前記複数の蓄電デバイスの一方が前記複数の光源の各々に接続されるように切り替えるためのスイッチを含んでもよい。その場合、前記制御部は、前記複数の光源に対する前記主電源の供給が停止した場合に、前記複数の蓄電デバイスが前記複数の光源の各々に接続されるように前記スイッチを制御する。
【0010】
前記複数の太陽光発電モジュールは直列に接続され、隣接する太陽光発電モジュールの間に接続されているバイパスダイオードを備えてもよい。
【0011】
前記制御部は、起動時に前記複数の光源を動作させて前記複数の蓄電デバイスの各々の充電量を監視し、前記複数の蓄電デバイスのうちいずれかの蓄電デバイスの充電量が所定値以下である場合に警告出力を行ってもよい。
【0012】
前記電子内視鏡用プロセッサは、少なくとも前記複数の光源と前記複数の太陽光発電モジュールを収容する筐体と、前記筐体内に配置され、前記筐体内の温度を検出する温度センサと、前記筐体内の空気を排気する冷却ファンと、を備えてもよい。
その場合、前記制御部は、前記複数の光源に対する前記主電源の供給が停止した後、前記筐体内の温度が所定値以上である場合、又は、前記複数の光源の連続使用時間が所定値以上である場合には、前記複数の蓄電デバイスにより前記冷却ファンを動作させる。
【0013】
本開示の別の態様は、前記電子内視鏡用プロセッサと、前記電子内視鏡用プロセッサに接続され、前記生体組織の撮像画像を取得する撮像素子を備えた電子内視鏡と、を備える電子内視鏡システムである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、発光素子を有する光源を備えた電子内視鏡用プロセッサ、及び、当該プロセッサを備えた電子内視鏡システムにおいて、発光素子に対してパルス幅変調による調光を行う場合にLEDを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の電子内視鏡システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2】一実施形態の電子内視鏡用プロセッサに含まれる光源装置の構成を示すブロック図である。
図3図2に示す光源装置の構成を簡略化して説明するための図である。
図4図2に示す光源装置にセルバランス回路を加えた実施形態を示す図である。
図5】セルバランス回路を含む、図4とは異なる光源装置の実施形態を示す図である。
図6】ソーラーパネルが直列接続されている光源装置の実施形態を示す図である。
図7】一実施形態の電子内視鏡用プロセッサの起動時処理を示すフローチャートである。
図8】一実施形態の電子内視鏡用プロセッサの起動後処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態の電子内視鏡システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、医療用に特化されたシステムであり、電子スコープ(内視鏡)100、電子内視鏡用プロセッサ200(以下、単に「プロセッサ200」という。)及びモニタ300を備えている。
【0017】
プロセッサ200は、システムコントローラ21(制御部の一例)を備えている。システムコントローラ21は、メモリ23に記憶された各種プログラムを実行し、電子内視鏡システム1全体を統合的に制御する。また、システムコントローラ21は、操作パネル24に接続されている。システムコントローラ21は、操作パネル24に入力される術者からの指示に応じて、電子内視鏡システム1の各動作及び各動作のためのパラメータを変更する。システムコントローラ21は、各部の動作のタイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に出力する。
【0018】
プロセッサ200は、光源装置30を備えている。光源装置30は、体腔内の生体組織等の被写体を照明するための照明光Lを出射する。照明光Lは、白色光、擬似白色光、あるいは特殊光を含む。一実施形態によれば、光源装置30は、白色光あるいは擬似白色光を照明光Lとして常時射出するモードと、白色光あるいは擬似白色光と、特殊光が交互に照明光Lとして射出するモードの一方を選択し、選択したモードに基づいて、白色光、擬似白色光、あるいは特殊光を射出することが好ましい。白色光は、可視光帯域においてフラットな分光強度分布を有する光であり、擬似白色光は、分光強度分布はフラットではなく、複数の波長帯域の光が混色された光である。特殊光は、可視光帯域の中の青色あるいは緑色等の狭い波長帯域の光である。青色あるいは緑色の波長帯域の光は、生体組織中の特定の部分を強調して観察する時に用いられる。光源装置30から出射した照明光Lは、集光レンズ25によりLCB(Light Carrying Bundle)11の入射端面に集光されてLCB11内に入射される。
【0019】
LCB11内に入射された照明光Lは、LCB11内を伝播する。LCB11内を伝播した照明光Lは、電子スコープ100の先端に配置されたLCB11の射出端面から射出され、配光レンズ12を介して被写体に照射される。配光レンズ12からの照明光Lによって照明された被写体からの戻り光は、対物レンズ13を介して固体撮像素子14の受光面上で光学像を結ぶ。
【0020】
固体撮像素子14は、ベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサである。固体撮像素子14は、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R(Red)、G(Green)、B(Blue)の画像信号を生成して出力する。なお、固体撮像素子14は、CCDイメージセンサに限らず、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやその他の種類の撮像装置に置き換えられてもよい。固体撮像素子14はまた、補色系フィルタを搭載したものであってもよい。
【0021】
電子スコープ100の接続部内には、ドライバ信号処理回路15が備えられている。ドライバ信号処理回路15には、固体撮像素子14から被写体の画像信号が所定のフレーム周期で入力される。フレーム周期は、例えば、1/30秒である。ドライバ信号処理回路15は、固体撮像素子14から入力される画像信号に対してA/D変換を含む所定の処理を施してプロセッサ200の画像処理部22に出力する。
画像処理部22は、後述する所定の画像処理を行ってビデオフォーマット信号を生成し、モニタ300に出力する。
【0022】
ドライバ信号処理回路15は、また、メモリ16にアクセスして電子スコープ100の固有情報を読み出す。メモリ16に記録される電子スコープ100の固有情報には、例えば、固体撮像素子14の画素数や感度、動作可能なフレームレート、型番等が含まれる。ドライバ信号処理回路15は、メモリ16から読み出された固有情報をシステムコントローラ21に出力する。この固有情報には、例えば、固体撮像素子14の画素数や解像度等の素子特有の情報、さらには、光学系に関する画角、焦点距離、被写界深度等の情報も含まれてもよい。
【0023】
システムコントローラ21は、電子スコープ100の固有情報に基づいて各種演算を行い、制御信号を生成する。システムコントローラ21は、生成された制御信号を用いて、プロセッサ200に接続されている電子スコープ100に適した処理がなされるようにプロセッサ200内の各種回路の動作やタイミングを制御する。
【0024】
システムコントローラ21は、ドライバ信号処理回路15にクロックパルスを供給する。ドライバ信号処理回路15は、システムコントローラ21から供給されるクロックパルスに従って、固体撮像素子14をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。
電源部26は、商用交流(AC)電源を基にプロセッサ200の各部で使用するための直流電圧を生成し、各部に供給する。
【0025】
次に、プロセッサ200に内蔵される光源装置30について説明する。
一般に光源装置では、白色の照明光を得るために光源として複数のLEDを使用し、その複数のLEDの出射光を合成することが行われている。例えば、光源として青色LED、緑色LED、及び、赤色LEDの3個のLEDを使用する場合があり、UV(Ultra Violet)LED、青色LED、緑色LED、アンバーLED、及び、赤色LEDの5個のLEDを使用する場合もある。以下の説明では、後者の5個のLEDを使用する場合を例にして説明する。
各LEDはアナログ調光とPWM調光が可能であるが、本実施形態はいずれの調光方式を採用してもよい。アナログ調光とは、LEDに流す電流の大きさによってLEDの出射光の光強度を制御することである。他方、PWM調光とは、LEDに流す電流をPWM(Pulse Width Modulation)波形の電流とし、PWMのデューティ比によってLEDの出射光の光強度を制御することである。
【0026】
本実施形態では、術者がシステムを使用して患者の診断を行っている最中に、突然の停電や意図しない電源コンセントの抜去により光源装置に対する主電源の供給が一時的にでも停止した場合でも診断を継続的に行うことが可能となるように、光源装置30が予備電源を備えていることを特徴としている。主電源の供給が一時的に停止した場合に予備電源から各LED光源に電源が供給されることで、術者の視野を確保し、診断を継続的に行うことができる。
【0027】
図2に、一実施形態の光源装置30の構成を示す。
一実施形態の光源装置30は、LED光源31-1~31-5、ソーラーパネル(SOLAR PANEL)32-1~32-5、充電回路33-1~33-5、プロテクト回路34-1~34-5、セル35-1~35-5、スイッチ回路36-1~36-5、及び、LEDドライバ回路37-1~37-5を含む。
【0028】
5個のLED光源31-1~31-5は、それぞれ異なる波長帯域λ1~λ5のUV光、青色光、緑色光、アンバー光、及び、赤色光を出射するLED光源である。
ソーラーパネル32-1~32-5(複数の太陽光発電モジュールの一例)は、それぞれ対応するLED光源31-1~31-5の出射光を電気信号に変換する(つまり、電気を発生させる)。
【0029】
充電回路33-1~33-5は、ソーラーパネル32-1~32-5によって生成された電気信号を基に、それぞれ対応するセル35-1~35-5を充電する回路である。各充電回路は、公知のMPPT(Maximum Power Point Tracking;最大電力点追従制御)回路を含む。
プロテクト回路34-1~34-5は、それぞれ対応する充電回路33-1~33-5に対して設けられ、電流制限回路、定電圧回路、及び、逆流防止素子を含み、後段のセル35-1~35-5を保護する。
【0030】
セル35-1~35-5(複数の蓄電デバイスの一例)は、実質的に予備電源として機能し、それぞれ例えばリチウムイオン電池やリチウム金属電池等の二次電池、又は大容量キャパシタである。セル35-1~35-5は、それぞれプロテクト回路34-1~34-5に接続される。各セルには、対応する充電回路及びプロテクト回路を通して電荷が蓄えられる。
【0031】
スイッチ回路36-1~36-5(複数のスイッチの一例、及び、切り替え部の一例)は、それぞれ対応するセル(予備電源)と電源部26(主電源)に接続され、主電源又は予備電源のいずれか一方を選択するようにシステムコントローラ21によって制御される。
LEDドライバ回路37-1~37-5は、それぞれスイッチ回路36-1~36-5に接続されており、例えばFPGA(Field-Programmable gate Array)で構成されたハードウェアモジュールで構成される。LEDドライバ回路37-1~37-5は、セル(予備電源)又は電源部26(主電源)のいずれか一方の電源を基に、対応するLED光源を駆動する。なお、各LEDドライバ回路は、システムコントローラ21(図1)から制御信号により点灯制御される。
突然の停電や意図しない電源コンセントの抜去により主電源が失われた場合、システムコントローラ21は、主電源の異常を検出し、システムコントローラ21は、LEDドライバ回路37-1~37-5にセルの電源(予備電源)が供給されるように各スイッチ回路を制御する。それによって、主電源が失われた後もLED光源31-1~31-5が動作して術者の視野を確保し、診断を継続的に行うことができる。
【0032】
以下の説明では、LED光源31-1~31-5の各々に共通した事項について言及する場合には、「LED光源31」と表記することがある。同様に、ソーラーパネル32-1~32-5について「ソーラーパネル32」と表記し、充電回路33-1~33-5について「充電回路33」と表記し、プロテクト回路34-1~34-5について「プロテクト回路34」と表記し、セル35-1~35-5について「セル35」と表記し、スイッチ回路36-1~36-5について「スイッチ回路36」と表記し、LEDドライバ回路37-1~37-5について「LEDドライバ回路37」と表記することがある。
【0033】
図2に示した光源装置30では、各LED光源31の出射光からソーラーパネル32によって生成された電気を基にセル35が充電される。スイッチ回路36により予備電源(つまり、セル35)が選択されるときには、予備電源によってLEDドライバ回路37を駆動し、各LED光源31を発光させる。そのため、予備電源が選択されるときには、自律的にLED光源31の発光が継続して行われる。
【0034】
一実施形態では、光源装置30は図3に示すように構成してもよい。
図3は、図2とほぼ同じ構成を示しているが、ファンドライバ回路39及び冷却ファン40を備えている点で図2の構成とは異なる。
冷却ファン40は、図示しないプロセッサ200の筐体内に設けられ、光源装置30によって生ずる熱を排熱するために設けられる。ファンドライバ回路39は、例えばPWM信号によって冷却ファン40を駆動する。スイッチ回路36によって予備電源(つまり、セル35)が選択されるときには、予備電源によってファンドライバ回路39が動作する。したがって、主電源の供給が停止した場合には、スイッチ回路36によって電源部26から供給される主電源から予備電源に切り替えられ、冷却ファン40が継続して動作する。そのため、主電源が失われた後もプロセッサ200の内部を冷却させることができる。
【0035】
一実施形態の光源装置30Aを図4に示す。図4に示すように、光源装置30Aは、セルバランス回路42を備える。
光源装置30Aは、図2に示した光源装置30とは、セルバランス回路42を有する点で異なる。セルバランス回路42は、セル35-1~35-5の各々の充電量を監視する。セルバランス回路42は、適切な充電量が得られていないセルがある場合には、当該セルに接続されているLED光源が故障であるため、そのLEDが故障していることをシステムコントローラ21に通知する。セルバランス回路42はまた、各セルの充電量にばらつきがある場合には、ばらつきが少なくなるように各セルの充電量を制御してもよい。
また、光源装置30Aは、図2に示した実施形態と異なり、単一のスイッチ回路36(切り替え部の一例)により、電源部26による主電源、又はセル35-1~35-5による予備電源のいずれかが選択されるように制御される。
【0036】
一実施形態の光源装置30Bを図5に示す。図5に示すように、光源装置30Bは、セルバランス回路42を備えつつ、各セル35に対応してスイッチ回路36-1~36-5が設けられている点で、図4の実施形態と異なる。セルバランス回路42は、システムコントローラ21(図1)からの指令に応じて各スイッチ回路を制御する。
【0037】
一実施形態の光源装置30Cを図6に示す。図6に示すように、光源装置30Cでは、ソーラーパネル32-1~32-5が直列に接続され、セルバランス回路42に接続される。この場合、セルバランス回路42は、ソーラーパネル32-1~32-5が適切に電気を発生させているか監視する。
【0038】
光源装置30Cでは、隣接するソーラーパネル間に接続されるバイパスダイオードを備えることが好ましい。直列接続された複数のソーラーパネルのうちいずれかのソーラーパネルが発電できない場合、当該ソーラーパネルに対応するセルが充電できない。そこで、発電できなくなったソーラーパネルに対応するセルが充電できるように、各ソーラーパネルに対して並列にバイパスダイオードを接続するとよい。ソーラーパネルが正常である場合には、当該ソーラーパネルに電流が流れてバイパスダイオードには電流が流れないが、当該ソーラーパネルが故障した場合には、当該ソーラーパネルに並列接続された、相対的に抵抗の低いバイパスダイオードに電流が流れるようになる。
なお、LED光源の基本構成はダイオードであるため、LED光源をバイパスダイオードに代えて設けてもよい。
【0039】
次に、プロセッサ200の動作について図7及び図8を参照して説明する。
図7は、プロセッサ200の起動時処理を示すフローチャートである。図8は、プロセッサ200の起動後処理を示すフローチャートである。
この起動時処理と起動後処理は、システムコントローラ21によって実行される。
【0040】
[起動時処理]
先ず起動時処理について説明する。
図7を参照すると、システムコントローラ21は、図示しない電源ボタンの操作に応じて主電源をオンすると(ステップS2)、LED光源31-1~31-5をすべて点灯するように光源装置30を制御する(ステップS4)。次いでシステムコントローラ21は、セル35-1~35-5の各々の充電量、又は直列接続されたセルの合計の充電量(合計充電量)を光源装置30から取得する(ステップS6)。図4に示したように、セルバランス回路42が設けられている場合は、セルバランス回路42は各セルの充電量、又は合計充電量を取得し、セルバランス回路42がシステムコントローラ21に対して充電量に関するデータを送信する。
【0041】
システムコントローラ21は、セルの充電量が適切である場合(例えば、セルの充電量が所定値より大きい場合)には、すべてのセルが正常であると判断して起動時処理を終了する(ステップS8:YES)。システムコントローラ21は、セルでも充電量が適切でない場合(例えば、セルの充電量が所定値以下である場合)(ステップS8:NO)、モニタ300に警告表示出力を行う。例えば、LED光源31-1~31-5のうちいずれかのLED光源がオープン故障している場合には、ステップS4の点灯によって所定値までセルが充電できないため、LED光源の故障を検知できる。警告表示出力を行うことで、術者あるいはプロセッサ200の管理者が異常の発生を認識できる。
セルの充電量は、等価的にセルの両端の電圧の値であってもよいし、セルが二次電池である場合にはセルのSOC(State Of Charge)の値であってもよい。
ステップS8では、セル35-1~35-5の各々の充電量について所定値と比較してもよいし、セル35-1~35-5の合計充電量を所定値と比較してもよい。
【0042】
[起動後処理]
次に起動時処理について説明する。
図8を参照すると、システムコントローラ21は常時、LED光源31の主電源の電源異常(つまり、電源部26から供給される電圧の異常)を監視している(ステップS20)。主電源の電源異常がなく(ステップS20:NO)、電源OFFの操作が行われない限り(ステップS22:NO)、システムコントローラ21は、電源部26からの主電源がLEDドライバ回路37及びファンドライバ回路39に供給されるように、スイッチ回路36(図3参照)を制御する。その場合、電源OFFの操作が行われた場合(ステップS22:YES)、システムコントローラ21は、主電源をファンドライバ回路39に供給し続け、ファンドライバ回路39が冷却ファン40を駆動する(ステップS32)。
【0043】
他方、突然の停電や意図しない電源コンセントの抜去により主電源が失われた場合、電源部26からLED光源31に対して主電源が供給されなくなり、システムコントローラ21は、主電源の電源異常であると判断する(ステップS20:YES)。その場合、システムコントローラ21は、光源装置30を補助灯モードに移行させるとともに(ステップS24)、モニタ300に警告表示出力を行う(ステップS26)。補助灯モードでは、システムコントローラ21は、セル35からの予備電源がLEDドライバ回路37及びファンドライバ回路39に供給されるように、スイッチ回路36(図3参照)を制御する。それ以降、電源OFFの操作が行われない限り(ステップS28:NO)、補助灯モードが継続される。
【0044】
補助灯モードで電源OFFの操作が行われた場合(ステップS28:YES)、システムコントローラ21は、予備電源がファンドライバ回路39に供給されるように制御し(ステップS30)、ファンドライバ回路39が冷却ファン40を駆動する(ステップS32)。
【0045】
以上説明したように、本実施形態の電子内視鏡システム1によれば、光源装置30がソーラーパネル32を備え、LED光源31の出射光を基にソーラーパネル32によって変換された電気がセル35に充電される。そして、術者がシステムを使用して患者の診断を行っている最中に、突然の停電や意図しない電源コンセントの抜去により光源装置に対する主電源の供給が一時的にでも停止した場合には、補助灯モードに移行し、セル35の電源(つまり、予備電源)により各LED光源を動作させる。そのため、主電源が失われた後も術者の視野を確保し、診断を継続的に行うことができる。
一実施形態では、補助灯モードでは冷却ファン40を予備電源によって動作させるため、主電源が失われた後もプロセッサ200内を冷却させることができる。
【0046】
以上、本発明の電子内視鏡用プロセッサ及び電子内視鏡システムについて詳細に説明したが、本発明の電子内視鏡用プロセッサ及び電子内視鏡システムは上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0047】
1…電子内視鏡システム
11…LCB
12…配光レンズ
13…対物レンズ
14…固体撮像素子
15…ドライバ信号処理回路
16…メモリ
21…システムコントローラ
22…画像処理部
23…メモリ
24…操作パネル
25…集光レンズ
26…電源部
30,30A,30B…光源装置
31-1~31-5(31)…LED光源
32-1~32-5(32)…ソーラーパネル
33-1~33-5(33)…充電回路
34-1~34-5(34)…プロテクト回路
35-1~35-5(35)…セル
36-1~36-5(36)…スイッチ回路
37-1~37-5(37)…LEDドライバ回路
39…ファンドライバ回路
40…冷却ファン
42…セルバランス回路
100…電子スコープ
200…プロセッサ
300…モニタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8