(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056364
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】断熱材、組電池、断熱材の製造方法及び組電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/02 20060101AFI20240416BHJP
F16L 59/04 20060101ALI20240416BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20240416BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240416BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20240416BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20240416BHJP
【FI】
F16L59/02
F16L59/04
H01M10/658
H01M10/647
H01M10/6554
H01M10/6557
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163186
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】000110804
【氏名又は名称】ニチアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】及川 純
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB01
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB23
3H036AB45
3H036AC01
3H036AD09
3H036AE11
3H036AE13
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE03
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】断熱性を向上させつつ、効率よく容易に製造することができる断熱材を提供する。
【解決手段】複数の空間部13を有するシート基材10と、複数の空間部13に充填された無機粉体20と、無機粉体20が充填されたシート基材10を覆うフィルム30と、を備える。複数の空間部13は、シート基材10のシート厚み方向に貫通して形成され、フィルム30は、複数の空間部13に無機粉体20が充填されたシート基材10の両面を覆う表面部31と、前記表面部31を前記シート基材に係止する係止部32と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の空間部を有するシート基材と、
前記複数の空間部に充填された無機粉体と、
前記無機粉体が充填された前記シート基材を覆うフィルムと、を備え、
前記複数の空間部は、前記シート基材のシート厚み方向に貫通して形成され、
前記フィルムは、前記複数の空間部に前記無機粉体が充填された前記シート基材の両面を覆う表面部と、前記表面部を前記シート基材に係止する係止部と、を有することを特徴とする断熱材。
【請求項2】
前記フィルムは、前記複数の空間部に前記無機粉体が充填された前記シート基材の両面及び、側面の少なくとも一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記複数の空間部は、コルゲート構造状、ハニカム構造状、又は格子状の貫通孔であり、
前記貫通孔は、前記シート基材のシート厚み方向に貫通して形成されることを特徴とする請求項2に記載の断熱材。
【請求項4】
前記無機粉体は、金属酸化物微粒子及び輻射散乱材を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の断熱材。
【請求項5】
前記無機粉体は、結合剤を実質的に含まないことを特徴とする請求項4に記載の断熱材。
【請求項6】
複数の電池セルと、前記複数の電池セルの間に配置される断熱材と、を備えた組電池であって、
前記断熱材は、複数の空間部を有するシート基材と、前記複数の空間部に充填された無機粉体と、前記シート基材及び前記無機粉体を覆うフィルムと、を備え、
前記複数の空間部は、前記シート基材のシート厚み方向に貫通して形成され、
前記フィルムは、前記複数の空間部に前記無機粉体が充填された前記シート基材の両面を覆う表面部と、前記表面部を前記シート基材に係止する係止部と、を有し、
前記断熱材は、前記シート基材の片面又は両面が前記電池セルに対向するように、前記電池セルの間に配置されることを特徴とする組電池。
【請求項7】
複数の空間部を有するシート基材を用意する基材用意工程と、
前記複数の空間部に無機粉体を充填する充填工程と、
前記無機粉体を充填した前記シート基材をフィルムで覆う被覆工程と、を含み、
前記充填工程では、前記シート基材のシート厚み方向に貫通して形成された前記複数の空間部に前記無機粉体を充填し、
前記被覆工程では、前記フィルムによって、前記複数の空間部に前記無機粉体が充填された前記シート基材の前記複数の空間部の両面を覆う表面部と、前記表面部を前記シート基材に係止する係止部と、を有することを特徴とする断熱材の製造方法。
【請求項8】
前記充填工程では、金属酸化物微粒子及び輻射散乱材を混合し、前記複数の空間部に混合した前記無機粉体を充填することを特徴とする請求項7に記載の断熱材の製造方法。
【請求項9】
前記充填工程では、前記複数の空間部に前記無機粉体を充填した後、すり切りして前記シート基材の表面を均すことを特徴とする請求項7又は8に記載の断熱材の製造方法。
【請求項10】
前記シート基材を洗浄する基材洗浄工程を更に含み、
前記基材用意工程では、コルゲート構造状、ハニカム構造状、又は格子状を有するシート積層体を切断することで、シート状の前記シート基材を形成し、
前記基材洗浄工程では、前記充填工程の前に前記基材用意工程で切断された前記シート基材を洗浄し、
前記充填工程では、前記基材洗浄工程で洗浄した前記シート基材の前記複数の空間部に前記無機粉体を充填することを特徴とする請求項7又は8に記載の断熱材の製造方法。
【請求項11】
複数の電池セルを用意する電池セル用意工程と、
断熱材を用意する断熱材用意工程と、
前記複数の電池セルの間に前記断熱材を配置する配置工程と、を含み、
前記断熱材は、複数の空間部を有するシート基材と、前記複数の空間部に充填された無機粉体と、前記シート基材及び前記無機粉体を覆うフィルムと、を備え、
前記複数の空間部は、前記シート基材のシート厚み方向に貫通して形成され、
前記フィルムは、前記複数の空間部に前記無機粉体が充填された前記シート基材の前記複数の空間部の両面を覆う表面部と、前記表面部を前記シート基材に係止する係止部と、を有し、
前記配置工程では、前記シート基材の片面又は両面が前記電池セルに対向するように、前記電池セルの間に前記断熱材を配置することを特徴とする組電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材、組電池、断熱材の製造方法及び組電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリッド車には、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。この電池セルにはリチウムイオンバッテリが主に用いられているが、一つの電池セルが内部短絡や過充電等が原因で異常発熱して熱暴走すると、隣接する他の電池セルへ熱の伝播が起こり、他の電池セルの熱暴走を引き起こすおそれがある。
【0003】
熱暴走の誘発を抑制する方法として、例えば、特許文献1には、波板状シートと平板状シートからなるコルゲート状の熱伝達抑制シートを、隣接する電池セルの間に配置した組電池が記載されている。この熱伝達抑制シートを構成する材料に、無機繊維や無機粒子を含むことで、断熱性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の熱伝達抑制シートは、乾式成形法を用いて製造する場合、断熱材となる無機繊維や無機粒子を混合機で混合した後、所定の型内に混合物を投入してプレスすることによりシート素材を形成する。また、湿式成形法を用いて製造する場合、断熱材となる無機繊維や無機粒子を水中で混合撹拌して分散させ、凝集剤を添加したスラリーを所定の型内に投入後、乾燥させることによりシート素材を形成する。そして、これらの方法により得たシート素材がコルゲート状に加工されることで、熱伝達抑制シートが製造される。
しかしながら、乾式成形法を用いて製造する場合、プレス圧が小さいと強度を保つことができずに崩れてしまうおそれがあった。また、湿式成形法を用いて製造する場合、溶媒として水を使用して乾燥させるため、時間や手間を要していた。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、断熱性を向上させつつ、効率よく容易に製造することができる断熱材、組電池、断熱材の製造方法及び組電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、本発明に係る断熱材によれば、複数の空間部を有するシート基材と、前記複数の空間部に充填された無機粉体と、前記無機粉体が充填された前記シート基材を覆うフィルムと、を備え、前記複数の空間部は、前記シート基材のシート厚み方向に貫通して形成され、前記フィルムは、前記複数の空間部に前記無機粉体が充填された前記シート基材の両面を覆う表面部と、前記表面部を前記シート基材に係止する係止部と、を有することにより解決される。
【0008】
上記の断熱材によれば、シート基材に断熱効果の高い無機粉体が充填されているため、断熱性を向上させることができる。また、シート基材の空間部に無機粉体が充填されているため、高圧プレス処理や乾燥処理をして成型する必要がなく、容易に製造することができる。
さらに、シート基材の両面をフィルムで覆うため、無機粉体がこぼれ落ちて断熱性が低下してしまうことを抑制できる。
すなわち、上記の断熱材によれば、断熱性を向上させつつ、効率よく容易に製造することができる。
【0009】
また、上記の断熱材において、前記フィルムは、前記複数の空間部に前記無機粉体が充填された前記シート基材の両面及び、側面の少なくとも一部を覆うと良い。
このように、シート基材を包むようにフィルムで覆うため、シート基材に片面ずつフィルムを貼り付ける構成よりも作業効率を向上できる。また、無機粉体がこぼれ落ちて断熱性が低下してしまうことをより抑制できる。
【0010】
また、上記の断熱材において、前記複数の空間部は、コルゲート構造状、ハニカム構造状、又は格子状の貫通孔であり、前記貫通孔は、前記シート基材のシート厚み方向に貫通して形成されると良い。
このように、複数の空間部がコルゲート構造状等であるため、無機粉体を充填する空間部を確保しつつ、シート基材の剛性を高めることができる。また、シート基材の表面に貫通孔の開口が設けられるため、シート基材に無機粉体を充填し易くなる。
【0011】
また、上記の断熱材において、前記無機粉体は、金属酸化物微粒子及び輻射散乱材を含むと良い。
このように、例えばヒュームドシリカのような金属酸化物微粒子は、高い断熱性を有し、さらにエアロゲルよりも低コストであるため、断熱材の製造コストを低減できる。また、例えば炭化珪素のような輻射散乱材を含むことにより、輻射による伝熱を低減することができる。
【0012】
また、上記の断熱材において、前記無機粉体は、結合剤を実質的に含まないと良い。
このように、無機粉体は、結合剤を実質的に含まないため、結合剤を使用する場合に行われる脱脂処理をする必要がないため、製造に要する工程数や時間を低減できる。また、結合剤による強度低下を抑制できる。さらに、結合剤の使用による環境負荷を低減できる。
【0013】
また前記課題は、本発明に係る組電池によれば、複数の電池セルと、前記複数の電池セルの間に配置される断熱材と、を備えた組電池であって、前記断熱材は、複数の空間部を有するシート基材と、前記複数の空間部に充填された無機粉体と、前記シート基材及び前記無機粉体を覆うフィルムと、を備え、前記複数の空間部は、前記シート基材のシート厚み方向に貫通して形成され、前記フィルムは、前記複数の空間部に前記無機粉体が充填された前記シート基材の両面を覆う表面部と、前記表面部を前記シート基材に係止する係止部と、を有し、前記断熱材は、前記シート基材の片面又は両面が前記電池セルに対向するように、前記電池セルの間に配置されること、によっても解決される。
このように、シート基材に断熱効果の高い無機粉体が充填されているため、断熱性を向上させることができる。また、シート基材の空間部に無機粉体が充填されているため、高圧プレス処理や乾燥処理をして成型する必要がなく、容易に製造することができる。
さらに、シート基材をフィルムで覆うため、無機粉体がこぼれ落ちて断熱性が低下してしまうことを抑制できる。
また、複数の電池セルの間に断熱材を配置する場合に、シート基材を覆うフィルムによって、無機粉体の電池セル内への拡散が抑制されるため、無機粉体が電池セルの通電部分に接触して短絡を引き起こしてしまうことを抑制できる。
すなわち、上記の組電池によれば、断熱性を向上させつつ、効率よく容易に製造することができる。
【0014】
また前記課題は、本発明に係る断熱材の製造方法によれば、複数の空間部を有するシート基材を用意する基材用意工程と、前記複数の空間部に無機粉体を充填する充填工程と、前記無機粉体を充填した前記シート基材をフィルムで覆う被覆工程と、を含み、前記充填工程では、前記シート基材のシート厚み方向に貫通して形成された前記複数の空間部に前記無機粉体を充填し、前記被覆工程では、前記フィルムによって、前記複数の空間部に前記無機粉体が充填された前記シート基材の両面を覆う表面部と、前記表面部を前記シート基材に係止する係止部と、を有すること、によっても解決される。
このように、シート基材に断熱効果の高い無機粉体が充填されているため、断熱性を向上させることができる。また、シート基材の空間部に無機粉体が充填されているため、高圧プレスや乾燥させて成型する必要がなく、容易に製造することができる。
さらに、シート基材をフィルムで覆うため、無機粉体がこぼれ落ちて断熱性が低下してしまうことを抑制できる。
すなわち、上記の断熱材の製造方法によれば、断熱性を向上させつつ、効率よく容易に製造することができる。
【0015】
また、上記の断熱材の製造方法において、前記充填工程では、金属酸化物微粒子及び輻射散乱材を混合し、前記複数の空間部に混合した前記無機粉体を充填すると良い。
このように、例えばヒュームドシリカのような金属酸化物微粒子は、高い断熱性を有し、さらにエアロゲルよりも低コストであるため、断熱材の製造コストを低減できる。また、例えば炭化珪素のような輻射散乱材を含むことにより、輻射による伝熱を低減することができる。
【0016】
また、上記の断熱材の製造方法において、前記充填工程では、前記複数の空間部に前記無機粉体を充填した後、すり切りして前記シート基材の表面を均すと良い。
このように、シート状に成形する際に、高圧プレス処理や乾燥処理を行う必要がないため、効率よく容易に製造することができる。
【0017】
また、上記の断熱材の製造方法において、前記シート基材を洗浄する基材洗浄工程を更に含み、前記基材用意工程では、コルゲート構造状、ハニカム構造状、又は格子状を有するシート積層体を切断することで、シート状の前記シート基材を形成し、前記基材洗浄工程では、前記充填工程の前に前記基材用意工程で切断された前記シート基材を洗浄し、前記充填工程では、前記基材洗浄工程で洗浄した前記シート基材の前記複数の空間部に前記無機粉体を充填すると良い。
このように、シート積層体からシート基材の形状に切断したときに生じる切断片を洗浄する(取り除く)ことで、無機粉体を充填する際に、空間部に切断片が入り込んでしまうことを抑制できる。
【0018】
また前記課題は、本発明に係る組電池の製造方法によれば、複数の電池セルを用意する電池セル用意工程と、断熱材を用意する断熱材用意工程と、前記複数の電池セルの間に前記断熱材を配置する配置工程と、を含み、前記断熱材は、複数の空間部を有するシート基材と、前記複数の空間部に充填された無機粉体と、前記シート基材及び前記無機粉体を覆うフィルムと、を備え、前記複数の空間部は、前記シート基材のシート厚み方向に貫通して形成され、前記フィルムは、前記複数の空間部に前記無機粉体が充填された前記シート基材の前記複数の空間部の両面を覆う表面部と、前記表面部を前記シート基材に係止する係止部と、を有し、前記配置工程では、前記シート基材の片面又は両面が前記電池セルに対向するように、前記電池セルの間に前記断熱材を配置すること、によっても解決される。
このように、シート基材に断熱効果の高い無機粉体が充填されているため、断熱性を向上させることができる。また、シート基材の空間部に無機粉体が充填されているため、高圧プレスや乾燥させて成型する必要がなく、容易に製造することができる。
さらに、シート基材をフィルムで覆うため、無機粉体がこぼれ落ちて断熱性が低下してしまうことを抑制できる。
すなわち、上記の組電池の製造方法によれば、断熱性を向上させつつ、効率よく容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の断熱材、組電池、断熱材の製造方法及び組電池の製造方法によれば、断熱性を向上させつつ、効率よく容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】
図2の断熱材の一部を示す部分拡大図である。
【
図6】本実施形態の断熱材の製造方法のフロー図である。
【
図7E】シート基材の斜視図であって、無機粉体を充填した状態を示す図である。
【
図7F】断熱材の斜視図であって、シート基材及び無機粉体をフィルムで被覆した状態を示す図である。
【
図8】本実施形態の組電池の製造方法のフロー図である。
【
図11】第二実施例のシート片の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<第一実施例>
以下、
図1~
図9に基づき、本発明の実施形態(以下、本実施形態)について説明する。本実施形態は、断熱材、組電池、断熱材の製造方法及び組電池の製造方法に関するものである。
【0022】
<断熱材>
本実施形態の断熱材1は、
図1~
図5に示すように、例えば、組電池40の複数の電池セル41の間に配置される断熱シートとして使用することが可能である。
断熱材1は、シート状のシート基材10と、シート基材10に充填される無機粉体20と、無機粉体20が充填されたシート基材10を覆うフィルム30と、から主に構成されている。
【0023】
<シート基材>
シート基材10は、
図1~
図4に示すように、例えばコルゲート構造を有するシート状の部材であって、平坦形状の平板部11と、波型形状の波板部12と、平板部11及び波板部12とから構成される複数の空間部13と、を有する。
【0024】
平板部11は、
図1~
図4に示すように、シート基材10のシート幅方向(
図2における左右方向)に長尺な平坦形状のペーパーである。
波板部12は、シート基材10のシート幅方向に進行する波型形状のペーパーである。
平板部11及び波板部12は、例えば厚さが500μm以下の無機繊維ペーパーであって、主無機繊維としては、ガラス繊維、ロックウール、AES繊維、アルミナ繊維から少なくとも1種類が選ばれる。これら繊維を2種以上組み合わせることも可能である。例えば、ロックウールを主繊維として含有し、ガラス繊維を含有する。加工性を向上させるために、パルプ、PET繊維などの有機繊維を少量含有させることも可能である。無機繊維ペーパーの厚さは、その形状を維持するために必要な所定値以上であって、例えば、10~500μmの範囲内とすることができ、好ましくは20~500μmの範囲内とすることができ、より好ましくは50~500μmの範囲内とすることができ、特に好ましくは100~500μmの範囲内とすることができる。
【0025】
無機繊維ペーパーは、ロックウール及びガラス繊維を含有するとともに、その厚さが上記の範囲内であることによって、コルゲート構造やハニカム構造の形成に適した特性を有することができる。したがって、例えばコルゲート構造に加工するときに、破断することなく、微細なコルゲート形状を有することができる。また、例えば無機繊維ペーパーから形成されたコルゲート構造体は、その形状を維持するために十分な強度を有することができる。
【0026】
複数の空間部13は、
図1~
図4に示すように、シート基材10のシート厚み方向(
図4における左右方向)に貫通して形成されたコルゲート構造状の貫通孔である。コルゲート構造状の貫通孔に無機粉体20が充填されるため、シート基材10の強度を高めつつ、充填容積を増加させて耐熱性を高めることができる。
また、シート基材10のシート両面に空間部13(貫通孔)の開口が設けられるため、複数の空間部13に無機粉体20を充填し易くなり、作業効率が向上する。そして、複数の空間部13に隙間なく無機粉体20を充填できるため、シート基材10の耐熱性をさらに高めることができる。
【0027】
シート基材10は、平板部11と波板部12とから形成されたコルゲート構造体を複数積層したものである。コルゲート構造体は、波板部12における各波型の山部分12aに接着剤が塗布され、平板部11と波板部12の山部分12aとがそれぞれ圧接されることにより形成される。シート基材10は、このコルゲート構造体をシート基材10の長さ方向(
図2における上下方向)に積層することで、平板部11と波板部12とが交互に配置されて構成される。また、シート基材10は、コルゲート構造体を複数積層した際、シート基材10の長さ方向における端部に、さらに平板部11を設けることにより、長さ方向における両端部に平板部11が配置されて構成される。
このように、シート基材10は、平板部11及び波板部12によってコルゲート構造状に形成された複数の空間部13を有する。なお、層の数や平板部11及び波板部12の配置は、これに限らず、シート基材10の大きさや形状によって適宜変更可能である。
【0028】
図3は、シート基材10における上記コルゲート構造体を一部拡大した図である。平板部11と波板部12からなる空間部13の山高hは、例えば、0.5~50mmの範囲内とすることができ、好ましくは0.7~30mmの範囲内とすることができ、より好ましくは1.0~20mmの範囲内とすることができる。また、空間部13の幅P(すなわち、複数の空間部13の間隔)は、例えば、1~50mmの範囲内とすることができ、好ましくは1.5~30mmの範囲内とすることができ、より好ましくは2.0~20mmの範囲内とすることができる。
無機繊維ペーパーは、ロックウールに加えて、ガラス繊維を含有することにより、平板部11及び波板部12の厚さtが500μm以下の無機繊維ペーパーでありながら、コルゲート構造の形成に適した特性を有することができる。
【0029】
<無機粉体>
無機粉体20は、
図1~
図4に示すように、シート基材10の複数の空間部13に充填され、金属酸化物微粒子及び輻射散乱材を混合した粉体である。
金属酸化物微粒子は、平均粒径(より具体的には、当該金属酸化物微粒子の一次粒子の平均粒径)が50nm以下のものであれば特に限られず、任意の1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。金属酸化物微粒子の平均粒径は、50nm以下であれば特に限られず、例えば、2nm以上、50nm以下とすることができ、2nm以上、30nm以下とすることもできる。
【0030】
このような金属酸化物微粒子は、その一次粒子が、分子間力等により会合して二次粒子を形成する。無機粉体20は、この金属酸化物微粒子の二次粒子が集合して形成された多孔構造を有する。すなわち、無機粉体20は、例えば、金属酸化物微粒子を含むことにより、その内部に、空気分子の平均自由行程よりも小さい(径がナノメートルオーダーの)孔が形成された多孔構造を有する。その結果、無機粉体20は、低温域から高温域までの幅広い温度範囲で優れた断熱性を発揮する。
【0031】
このような金属酸化物微粒子は、例えば、シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子であることが好ましく、シリカ微粒子であることが特に好ましい。無機粉体20がシリカ微粒子を含む場合、当該無機粉体20は、さらにアルミナ微粒子を含むこととしてもよい。また、無機粉体20がアルミナ微粒子を含む場合、当該無機粉体20は、さらにシリカ微粒子を含むこととしてもよい。シリカ微粒子のシリカ(SiO2)含有量及びアルミナ微粒子のアルミナ(Al2O3)含有量は、例えば、95質量%以上であることが好ましい。
【0032】
シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子としては、気相法で製造されたもの又は湿式法で製造されたものの一方又は両方を使用することができ、気相法で製造されたシリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子を好ましく使用することができる。
【0033】
すなわち、シリカ微粒子及び/又はアルミナ微粒子としては、気相法で製造された乾式シリカ微粒子(無水シリカ微粒子)及び/又は乾式アルミナ微粒子(無水アルミナ微粒子)を使用することができ、湿式法で製造された湿式シリカ微粒子及び/又は湿式アルミナ微粒子を使用することもでき、中でも乾式シリカ微粒子及び/又は乾式アルミナ微粒子を好ましく使用することができる。
【0034】
より具体的に、例えば、気相法で製造されたフュームドシリカ微粒子及び/又はフュームドアルミナ微粒子を好ましく使用することができ、中でも親水性フュームドシリカ微粒子及び/又は親水性フュームドアルミナ微粒子を好ましく使用することができる。
【0035】
金属酸化物微粒子のBET法による比表面積は、例えば、50m2/g以上であることが好ましい。より具体的に、この比表面積は、例えば、50~400m2/gであることが好ましく、100~400m2/gであることがより好ましい。
【0036】
輻射散乱材は、輻射による伝熱を低減することのできるものであれば特に限られず、任意の1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。
【0037】
輻射散乱材としては、例えば、炭化珪素、ジルコン、酸化鉄、ジルコニア及びチタニアからなる群より選択される1種以上を使用することができ、特に炭化珪素を好ましく使用することができる。炭化珪素は、チタニアやジルコニアに比べて輻射散乱能が優れている。このため、輻射散乱材として炭化珪素を使用する場合には、当該輻射散乱材の含有量を低く抑えることができる。その結果、金属酸化物微粒子の含有量を効果的に高めて、無機粉体20の特性を特に優れたものとすることができる。
【0038】
輻射散乱材の平均粒径は、例えば、1μm以上、50μm以下であることが好ましく、1μm以上、20μm以下であることがより好ましい。輻射散乱材としては、遠赤外線反射性を有するものを好ましく使用することができ、例えば、1μm以上の波長の光に対する比屈折率が1.25以上であるものを特に好ましく使用することができる。
【0039】
無機粉体20における金属酸化物微粒子及び輻射散乱材の含有量は、金属酸化物微粒子65質量%超(例えば、66質量%以上)、90質量%未満(例えば、89質量%以下)、輻射散乱材5質量%超(例えば、6質量%以上)、30質量%未満(例えば、29質量%以下)の範囲内であれば特に限られない。
【0040】
無機粉体20における金属酸化物微粒子の含有量を上記の比較的高い特定の範囲内とし、且つ輻射散乱材の含有量を上記の特定の範囲内とすることによって、断熱材1の断熱性を十分に維持しつつ、当該断熱材1を変形させた場合においても、当該無機粉体20の崩壊等の不具合の発生を効果的に抑制できる。また、上記特定の範囲内とすることによって、シート基材10の複数の空間部13に無機粉体20を充填し易くなり、作業効率を向上させることができる。
【0041】
なお、無機粉体20は、結合剤を実質的に含まないこととしてもよい。この場合、無機粉体20は、水ガラス接着剤等の無機結合剤や、樹脂等の有機結合剤といった、従来使用されていた結合剤を実質的に含有しない。結合剤を使用する場合には、例えば、脱脂を行う必要があり、この脱脂によって、製造に要する工程数、所要時間及びエネルギーの増大といった問題に加えて、無機粉体20の強度が低下するという問題が生じる。また、結合剤の使用によって環境への負荷が増大する。これに対し、無機粉体20が結合剤を含まないことにより、上述したような結合剤の使用に伴う問題を確実に回避することができる。
【0042】
また、無機粉体20は、補強繊維を含有しても良い。補強繊維を添加する場合、チョップドストランドと言われる数ミリメーター(mm)長さを有する補強繊維を用いると、無機粉体の無流動性が低下し、シート基材への充填性が低下してしまう。したがって、ミルドファイバーと言われる数十~数百マイクロメーター(μm)長さを有する補強繊維を用いるのが好しい。補強繊維は、無機粉体20を補強できるものであれば特に限られず、任意の1種を単独で又は2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。補強繊維としては、無機繊維及び/又は有機繊維を使用することができ、無機繊維を好ましく使用することができる。
【0043】
無機粉体20とシート基材10の重量比は、50:50~80:20であると好ましく、より好ましくは60:40~70:30である。また、シート基材10に無機粉体20を充填したときの密度は、150~300kg/m3であると好ましく、より好ましくは170~250kg/m3である。
断熱材1において、シート基材10の重量に対する無機粉体20の重量(充填量)を上記の特定の範囲内とすることで、断熱材1の断熱性を十分に維持しつつ、当該断熱材1を変形させた場合においても、当該無機粉体20の崩壊等の不具合の発生を効果的に抑制できる。
【0044】
<フィルム>
フィルム30は、
図1、
図2、
図4に示すように、無機粉体20が充填されたシート基材10の全体を包むように覆うものである。フィルム30は、特に限定されないが、合成樹脂フィルムやアルミラミネートフィルムを、パウチラミネート加工やシュリンク加工して、シート基材10の全体を包むように覆うものである。フィルムの種類は、特に限定されないが、UL94V-0の規格を満足する難燃性フィルムが好ましい。
また、フィルム30の形状は特に限定されず、フィルム30を袋状に加工したものを用いても良い。
【0045】
フィルム30は、シート基材10のシート両面を覆う表面部31と、表面部31をシート基材10に係止する係止部32と、を有する。表面部31は、シート基材10の複数の空間部13(貫通孔における開口面)の両面を覆う位置に配置される。係止部32は、シート基材10の側面(厚み部分)を覆う位置に配置される。すなわち、フィルム30は、袋状に形成された表面部31及び係止部32によって、無機粉体20が充填されたシート基材10の全体を包むように覆っている。
なお、シート基材10の側面の全体を覆うものに限らず、シート基材10の側面の一部のみを覆うものでも良い。
【0046】
また、フィルム30は、袋状に形成されたものに限らない。係止部32によって、表面部31がシート両面を覆う位置に、表面部31を係止できれば良い。例えば、表面部31がシート両面を覆う位置に固定されるように、接着テープ(係止部32)によって表面部31を係止しても良く、接着剤(係止部32)によって表面部31を係止しても良い。
【0047】
パウチラミネート加工の場合は、2枚の難燃性フィルムの間に無機粉体20が充填されたシート基材10が配置され、難燃性フィルムの周縁部が融着等により貼り合わされることによって、無機粉体20が充填されたシート基材10の全体を包み込むフィルム30が形成される。
【0048】
シュリンク加工の場合は、袋状の熱収縮性フィルムに無機粉体20が充填されたシート基材10を収容し、熱収縮性フィルム全体を加熱して収縮させることで、無機粉体20が充填されたシート基材10の全体を包み込むフィルム30が形成される。
なお、無機粉体20が充填されたシート基材10の全体を覆うとは、シート両面及び、少なくとも一部の側面(厚み部分)が、フィルム30によって覆われていることを意味する。したがって、例えばシュリンク加工により側面の一部分が開口している場合も含む。
【0049】
上記加工方法は、断熱材1の厚みや強度により使い分けることができる。例えば、薄くて柔軟性が高い断熱材1の場合は、パウチ加工を用いるのが好ましく、厚くて強硬な断熱材1の場合は、シュリンク加工を適用するのが好ましい。
なお本実施形態では、パウチラミネート加工やシュリンク加工を例示したが、これに限定されず、例えば、フィルム30を貼り合わせることによってシート基材10のシート両面及び、側面の少なくとも一部を覆うようにしても良い。また、袋状に加工したフィルム30で、シート基材10の全体を覆い、フィルム30の開口部分を溶着しても良い。
【0050】
<組電池>
組電池40は、
図5に示すように、複数の電池セル41と、複数の電池セル41の間に配置される断熱材1と、を主に備える。断熱材1は、シート基材10の両面がそれぞれ電池セル41に対向するように、電池セル41の間に配置される。つまり、断熱材1は、シート基材10のシート厚み方向において電池セル41と交互に並んで配置される。
また、断熱材1と電池セル41との間には、不図示のゴムシートが配置される。ゴムシートによって、充放電時の膨張収縮により発生する力をコントロールし、組電池40の信頼性を向上させることができる。
【0051】
なお本実施形態では、組電池40の両端部に電池セル41が配置されるが、組電池40の両端部に断熱材1が配置されても良い。また、組電池40は、断熱材1と電池セル41が交互に並んで配置される構成に限らず、複数の断熱材1によって電池セル41を挟むようにしても良い。
【0052】
<断熱材の製造方法>
本実施形態の断熱材1の製造方法について、
図6、
図7A~
図7Fに基づいて説明する。
図6に示すように、当該方法は、複数の空間部13を有するシート基材10を用意する基材用意工程(S1)と、シート基材10を洗浄する基材洗浄工程(S2)と、複数の空間部13に無機粉体20を充填する充填工程(S3)と、無機粉体20を充填したシート基材10をフィルム30で覆う被覆工程(S4)と、を少なくとも含むものである。以下、詳しく説明する。
なお、断熱材1の製造にあたって、その他の工程については、説明を省略する。
【0053】
「基材用意工程(S1)」では、平板部11となる平板シート11Aと、波板部12となる波板シート12Aとを貼り合わせて、シート片10Aを形成する。このシート片10Aを積層してコルゲート構造状を有するシート積層体10Bを形成し、このシート積層体10Bを切断することで、シート状のシート基材10を得ることができる。
【0054】
具体的には、
図7Aに示すように、シート形成装置Mによって、平板シート11Aと、波板シート12Aとを貼り合わせる。シート形成装置Mは、表面に波状の金型が形成された段ロールM1と、糊を波板シート12Aに塗布する塗布ロールM2と、を有する。
まず、シート形成装置Mの二つの段ロールM1を加熱し、加熱された段ロールM1の間へ波板シート12Aの原材料となる中芯シート12Bを送出する。中芯シート12Bは、表面に波状の金型が形成された段ロールM1に挟み込まれることで、波型の波板シート12Aとなる。この波板シート12Aの山頂部分に、塗布ロールM2によって糊を塗布する。そして、糊が塗布された波板シート12Aに接着させるように平板シート11Aを送出し、平板シート11Aと波板シート12Aとを接着することで、シート片10Aが形成される。
【0055】
図7Bに示すように、シート片10Aは、上記の方法で平板シート11Aと、波板シート12Aとを貼り合わせることにより形成される。
そして、
図7Cに示すように、このシート片10Aをシート基材10の長さ方向(
図7Cにおける上下方向)に接着剤を介して複数積層することで、シート積層体10Bが形成される。
【0056】
図7Dに示すように、シート片10Aを積層したシート積層体10Bをシート基材10の幅方向(波の進行方向)に沿って、上下に切断することで、所定の厚みを有するシート状のシート基材10が形成される。このように、平板シート11Aから形成された平板部11と、波板シート12Aから形成された波板部12とによって、コルゲート状の複数の空間部13を有するシート基材10が形成される。
【0057】
続いて、「基材洗浄工程(S2)」では、切断して形成されたシート基材10を洗浄する。具体的には、除塵装置を使用し、シート基材10に向けて空気を噴射して、切断されたシート基材10に付着した切断片(切断くず)を取り除く。
このように、充填工程(S3)の前に、基材用意工程(S1)で切断されたシート基材10を洗浄することで、無機粉体20を充填するときに、切断片が空間部13に混入してしまうことを抑制できる。
【0058】
続いて、「充填工程(S3)」では、
図7Eに示すように、シート基材10のシート厚み方向に貫通して形成された複数の空間部13に、無機粉体20を充填する。シート基材10に無機粉体20を充填する前に、金属酸化物微粒子及び輻射散乱材を混合することで無機粉体20を生成し、この混成した無機粉体20を複数の空間部13に充填する。このとき、無機粉体20は、空間部13の容積よりも多い量を充填した後、シート基材10の表面ですり切りしてシート基材10の表面を均す。
このように、シート基材10の表面ですり切りすることで、高圧プレスをする必要がなく、平坦な表面のシート基材10とすることができる。なお、さらに表面を平坦にするために、加圧成形をしても良い。
【0059】
続いて、「被覆工程(S4)」では、
図7Fに示すように、フィルム30によって、無機粉体20を充填したシート基材10の全体を包むように覆う。例えば、パウチラミネート加工で被覆する場合は、2枚の難燃性フィルムの間に無機粉体20が充填されたシート基材10を配置し、難燃性フィルムの周縁部を融着する。こうすることで、フィルム30で無機粉体20を充填したシート基材10の全体が包み込まれて、断熱材1が形成される。
また、シュリンク加工で被覆する場合は、袋状の熱収縮性フィルムに無機粉体20が充填されたシート基材10を収容する。そして、熱収縮性フィルム全体を加熱して収縮させる。こうすることで、フィルム30で無機粉体20を充填したシート基材10の全体が包み込まれて、断熱材1が形成される。
【0060】
ここで、例えば、シート基材10の片面に板状フィルムを貼り付けてから空間部13に無機粉体20を充填した後、反対面に板状フィルムを接着させることで、充填した無機粉体20を覆う構成とした場合は、シート基材10の表面に付着した無機粉体20によって、板状フィルムの接着が阻害され、接着不足によってフィルムが剥がれ落ちてしまうおそれがある。
しかしながら、シート基材10の両面を覆う表面部31を係止部32によって係止し、シート基材10の両面及び、側面の少なくとも一部を覆う構成とすると、接着不足によってフィルムが剥がれ落ちてしまうことをより抑制できる。したがって、無機粉体20がシート基材10からこぼれ落ちて、断熱性が低下してしまうことをより抑制できる。また、複数の電池セル41の間に断熱材1を配置する場合に、無機粉体20の電池セル41内への拡散がより抑制されるため、無機粉体20が電池セル41の通電部分に接触して短絡を引き起こしてしまうことを抑制できる。
【0061】
<組電池の製造方法>
本実施形態の組電池40の製造方法について、
図8に基づいて説明する。
図8に示すように、当該方法は、複数の電池セル41を用意する電池セル用意工程(S5)と、断熱材1を用意する断熱材用意工程(S6)と、複数の電池セル41の間に断熱材1を配置する配置工程(S7)と、を少なくとも含むものである。以下、詳しく説明する。
なお、組電池40の製造にあたって、その他の工程については、説明を省略する。
【0062】
「電池セル用意工程(S5)」では、組電池40を構成する複数の電池セル41を用意する。
「断熱材用意工程(S6)」では、上述した断熱材1の製造方法によって得られた複数の断熱材1を用意する。
【0063】
「配置工程(S7)」では、シート基材10の片面又は両面が電池セル41に対向するように、電池セル41の間に断熱材1を配置する。
具体的には、シート基材10のシート厚み方向において断熱材1と電池セル41とが交互に並ぶように配置する。
このように、組電池40は、隣接する電池セル41の間に、シート基材10に断熱効果の高い無機粉体20が充填された断熱材1が配置されるため、断熱性を向上させることができる。したがって、隣接する他の電池セル41への熱の伝播を抑制することができる。
なお、断熱材1と電池セル41との間に、不図示のゴムシートを配置する工程を含んでも良い。
【0064】
<フィルムの変形例>
フィルム30の変形例として、
図8に示すように、無機粉体20が充填されたシート基材10の両面及び側面の一部を覆うものであっても良い。
表面部31は、シート基材10の複数の空間部13(貫通孔における開口面)の両面を覆う位置に配置される。係止部32は、シート基材10の側面(厚み部分)の一部を覆う位置に配置される。すなわち、フィルム30は、表面部31及び係止部32によって、無機粉体20が充填されたシート基材10の一部を包むように覆っている。
このように、シート基材10の側面の一部のみを覆うものであっても、無機粉体20がシート基材10からこぼれ落ちて、断熱性が低下してしまうことを抑制できる。
【0065】
<第二実施例>
次に、第二実施例の断熱材100について、
図10、
図11に基づいて説明する。なお、上述の断熱材1と重複する内容については説明を省略する。第二実施例の断熱材100では、断熱材1と比較してシート基材110の構成及びシート基材110の製造方法が主に異なっている。
【0066】
シート基材110は、
図10に示すように、例えばハニカム構造を有するシート状の部材であって、六角形の平板部111と、六角形の平板部111によって蜂の巣状に構成される複数の空間部113と、を有する。
【0067】
複数の空間部113は、
図10に示すように、シート基材110のシート厚み方向に貫通して形成されたハニカム構造状の貫通孔である。ハニカム構造状の貫通孔に無機粉体120が充填されるため、シート基材110の強度を高めつつ、充填容積を増加させて耐熱性を高めることができる。
また、シート基材110のシート両面に空間部113(貫通孔)の開口が設けられるため、複数の空間部113に無機粉体120を充填し易くなり、作業効率が向上する。そして、複数の空間部113に隙間なく無機粉体120を充填できるため、シート基材10の耐熱性をさらに高めることができる。また、ハニカム構造状であるため、シート基材110をより高強度とすることができる。
【0068】
ハニカム構造を有するシート基材110の製造方法は、展張方式が代表的である。シート基材110は、
図11に示すように、平板部111となる平板シート111Aを、条線状に塗布された接着剤により貼り合わせてシート片110Aを形成する。このシート片110Aを、条線状に塗布された接着剤が半ピッチずつずれた位置関係で、シート基材110の長さ方向(
図11における上下方向)に積層し、シート積層体110Bを形成する。
そして、シート積層体110Bを所定の幅で切断し、展張することにより、ハニカム構造を有するシート基材110を得ることができる。
【0069】
このように、平板シート111Aから形成された平板部111よって、ハニカム状の複数の空間部113を有するシート基材110が形成される。そして、このシート基材110に無機粉体120を充填し、フィルム130で無機粉体120を充填したシート基材110の全体を覆うことで、断熱材100を形成することができる。
なお、第二実施例では、ハニカム構造を展張方式により形成したが、これに限られない。
【0070】
<その他の実施形態>
本発明の断熱材は、上記の実施形態に限定されるものではない。
断熱材1は、上述した通り、コルゲート構造またはハニカム構造を有するが、無機粉体20が充填可能であれば、別形状の複数の空間部13を有しても良い。例えば、シート基材10の複数の空間部13は、格子状であっても良い。格子状である場合、無機粉体20を一層充填し易くなるため、作業効率が向上する。
【0071】
上記実施形態では、主として本発明に係る断熱材、組電池、断熱材の製造方法及び組電池の製造方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【実施例0072】
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
<試験1 耐クラック性の評価>
実施例1では、厚さ0.1mmのガラス繊維ペーパーを、コロイダルシリカ、酢酸ビニルエマルション等を混合した接着剤で接着し、コルゲート構造状のシート基材10を得た。このシート基材10をシート長さ100mm×シート幅100mm×シート厚さ2.5mmに切断して使用した。使用したシート基材10のコルゲート構造状の空間部13のサイズは、ピッチPが3.0mm、山高hが1.6mmであった。
金属酸化物微粒子として、一次粒子の平均粒径が約13nmの無水シリカ微粒子(親水性フュームドシリカ微粒子)を使用した。輻射散乱材として、平均粒径1.8μmの炭化珪素(SiC)を使用した。この無水シリカ微粒子100重量部と、炭化珪素27重量部を混合し、結合剤を実質的に含まない無機微粒子混合粉体(無機粉体20)を得た。
この無機粉体20を、シート基材10の空間部13に充填し、すり切りして表面を均一にした。この、無機粉体20を充填したシート基材10を、ナイロンポリフィルム(クロリン化成株式会社製)にて覆い、ラミネート加工を行って断熱材1を得た。このフィルム30は外側がナイロン、内側がポリエチレンからなるフィルムである。この断熱材1の密度は、170kg/m3であった。
上記実施例1の断熱材1は、非常に柔軟性に優れたものであり、曲げてもクラックが入らないものであった。
【0074】
<試験2 断熱性の評価>
実施例2では、実施例1と同様に、コルゲート構造状のシート基材10を得た。金属酸化物微粒子として、一次粒子の平均粒径が約13nmの無水シリカ微粒子(親水性フュームドシリカ微粒子)を使用した。輻射散乱材として、平均粒径1.8μmの炭化珪素(SiC)を使用した。この無水シリカ微粒子100重量部と、炭化珪素27重量部を混合し、結合剤を実質的に含まない無機微粒子混合粉体(無機粉体20)を得た。
この無機粉体20を、シート基材10の空間部13に充填し、ローラープレスして表面を均一にした。この無機粉体20を充填したシート基材10を、φ60mm×シート厚さ1.8mmに切断して熱伝導測定の試験片とした。試験片とした無機粉体20を充填したシート基材10の密度は、200kg/m3であった。
上記実施例2の試験片は、熱伝導率測定装置(放熱材料用HC-110、英弘精機社製)を用いて、試験片の熱伝導率を測定した。
上記実施例2の断熱材1は、熱伝導率が20℃で0.029W/m・K、40℃で0.030W/m・K、60℃で0.031W/m・Kであった。
【0075】
上記試験1及び試験2の結果、簡易な製造方法で効率よく容易に製造することができ、十分なクラック耐性及び耐熱性を有することが明らかになった。したがって、本発明の断熱材1の特性は総合的に実用上、十分なものと評価された。