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  • 特開-介助プロテクター 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056371
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】介助プロテクター
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/05 20060101AFI20240416BHJP
【FI】
A41D13/05 118
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163194
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】394012245
【氏名又は名称】株式会社カーボーイ
(74)【代理人】
【識別番号】100166132
【弁理士】
【氏名又は名称】木船 英雄
(72)【発明者】
【氏名】廻本 一夫
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B211AA01
3B211AB01
(57)【要約】
【課題】トランス介助時のストレスや抵抗感を軽減できる新規な介助プロテクターの提供。
【解決手段】胸部に装着するプロテクター本体10の正面側にクッション層20を備える。これによって、介助者が要介護者をトランス介助するために正面から抱きかかえる動作をしても要介護者との間にはクッション層20が介在することになるため、介助者の胸部が直に要介護者に触れることがなくなり、この結果、自分の胸部が要介護者の身体に密着することに対する介助者のストレスや抵抗感が軽減される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部に装着するプロテクター本体の正面側にクッション層を備えたことを特徴とする介助プロテクター。
【請求項2】
請求項1に記載の介助プロテクターにおいて、
前記プロテクター本体は、両肩から胸部を覆う正面部と、両肩から背中部を覆う背面部とからなると共に、前記正面部と背面部は、前記背面部の両肩側から延びる一対の肩ベルトと、前記背面部の両側から延びる一対の脇ベルトとを前記正面部に対して面ファスナーで連結・分離できることを特徴とする介助プロテクター。
【請求項3】
請求項1または2に記載の介助プロテクターにおいて、
前記クッション層は、空気圧で膨張するエアークッションを縦横に複数配置してなることを特徴とする介助プロテクター。
【請求項4】
請求項3に記載の介助プロテクターにおいて、
前記各エアークッションは互いに空気通路を介して連通していると共に、前記各エアークッションのいずれかに手押し式のポンプと、他のいずれかにリリース弁を備えたことを特徴とする介助プロテクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランス介助をする際などに使用する介助プロテクターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から高齢者施設や病院などにおける介護作業の1つとしていわゆるトランス介助と呼ばれる作業がある。このトランス介助とは、介助者が要介護者を抱きかかえながら車いすやベットなどに移乗させる動作をいうが、要介護者をスムーズに移乗させるには相応の体力を要すると共に抱きかかえる位置や姿勢などのコツや経験が必要となってくる。
【0003】
このようなトランス介助をスムーズに行うために例えば以下の特許文献1では、伸縮性の帯状部材を要介護者に装着し、その帯状部材を介助者が持つことで移乗作業を容易にするとしたアイデアが開示されている。また、以下の特許文献2にも、同じく要介護者のウエストに取っ手付きのベルトを取り付け、これを介助者が持つことで移乗作業を容易にするとしたアイデアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-121548号公報
【特許文献2】特表2013-538614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなトランス介助を行う際には、介助者が要介護者に対して正面から抱き合うようにできるだけその身体を密着させる必要がある。しかしながら、介助者と要介護者同士が異性の場合、特に介助者が女性、要介護者が男性のようなケースでは互いに正面から抱き合うように身体を密着させる行為について心理的なストレスや抵抗感を感じることがある。そのため、無意識に身体の密着を避けるために無理な姿勢や不十分な体勢での動作となってしまいがちであることから、スムーズな移乗ができなかったり、腰や背中、腕などに無理な負担がかかって腰痛や筋肉痛を招くことがある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、これらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、トランス介助時のストレスや抵抗感を軽減できる新規な介助プロテクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために第1の発明は、胸部に装着するプロテクター本体の正面側にクッション層を備えたことを特徴とする介助プロテクターである。このような構成によれば、介助者が要介護者をトランス介助するために正面から抱きかかえる動作をしても要介護者との間にはクッション層が介在することになるため、介助者の胸部が直に要介護者に触れることがなくなる。これによって、自分の胸部が要介護者の身体に密着することに対する介助者のストレスや抵抗感が軽減される。
【0008】
第2の発明は第1の発明において、前記プロテクター本体は、両肩から胸部を覆う正面部と、両肩から背中部を覆う背面部とからなると共に、前記正面部と背面部は、前記背面部の両肩側から延びる一対の肩ベルトと、前記背面部の両側から延びる一対の脇ベルトとを前記正面部に対して面ファスナーで連結・分離できることを特徴とする介助プロテクターである。このような構成によれば、正面部と背面部を連結する一対の肩ベルトと脇ベルトの面ファスナーを連結・分離するだけで簡単に脱着することができる。
【0009】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記クッション層は、空気圧で膨張するエアークッションを縦横に複数配置してなることを特徴とする介助プロテクターである。このような構成によれば、クッション層のクッション性能がその全体に亘って均質となるだけでなく、その均質なクッション性を維持しつつクッション層がいずれの方向にも柔軟に変形可能となるため、介助者がトランス介助する際の身体の動きを邪魔することがない。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、前記各エアークッションは互いに空気通路を介して連通していると共に、前記各エアークッションのいずれかに手押し式のポンプと、他のいずれかにリリース弁を備えたことを特徴とする介助プロテクターである。このような構成によれば、一対の手押し式のポンプとリリース弁によってすべてのエアークッションを膨張・収縮できるため、使用時には手押し式のポンプを使用してすべてもエアークッションを膨らませてクッション層としての機能を発揮させ、不使用時にはリリース弁を操作してすべてのエアークッションの空気を抜いて収縮させればコンパクトに収納することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、介助者が要介護者をトランス介助するために正面から抱きかかえる動作をしても要介護者との間にはクッション層が介在することになるため、介助者の胸部が直に要介護者に触れることがなくなる。これによって、自分の胸部が要介護者の身体に密着することに対する介助者のストレスや抵抗感が軽減される、といった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る介助プロテクター100の実施の一形態を示す説明図である。
図2】プロテクター本体10の構成を示す説明図である。
図3】本発明に係る介助プロテクター100の装着方法を示す説明図である。
図4】本発明に係る介助プロテクター100の装着例を示す正面図である。
図5】本発明に係る介助プロテクター100を装着したトランス介助の一例を示す説明図である。
図6】クッション層20の一部を示す斜視図である。
図7】(A)は図1中A部を示す部分拡大図、(B)は図1中B部を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る介助プロテクター100の実施の一形態を示したものである。図示するようにこの介助プロテクター100は、介助者が装着するプロテクター本体10の正面(胸部)側にクッション層20を備えた構造となっている。
【0014】
このプロテクター本体10は、図2に示すように介護者の両肩から胸部を覆う正面部11と、両肩から背中部を覆う背面部12とからなっている。そして、正面部11と背面部12には、それぞれ介助者の胸部および背中部から両肩側に延びる肩ベルト11a、11a、12a、12aがそれぞれ一対ずつ形成されていると共に、さらに背面部12には、その両側から延びる一対の脇ベルト12b、12bが形成されている。
【0015】
この背面部12の肩ベルト12a、12aには、それぞれ面ファスナーの一方を構成するフック面f、fが取り付けられていると共に、正面部11の肩ベルト11a、11aには面ファスナーの他方を構成するループ面r、rが取り付けられており、このフック面f、fとループ面r、rとを圧着することによって、正面部11と背面部12とが介助者の両肩部分で連結・分離できるようになっている。
【0016】
また、この背面部12の両側から延びる一対の脇ベルト12b、12bにもフック面f、fが取り付けられていると共に、正面部11の下側にもその幅方向に亘ってループ面rが取り付けられており、この脇ベルト12b、12bのフック面f、fを正面部11の下側のループ面rと圧着することによって、正面部11と背面部12とが介助者の両脇腹部分で連結・分離可能となっている。
【0017】
従って、正面部11が胸部に位置し、背面部12を背中部に位置するように介助者の両肩部から装着した後、図3に示すように背面部12の脇ベルト12b、12bを正面部11のループ面rに圧着させて連結することで、介助者の胸部全体を覆うようにしっかりと介助者の身体に装着することができる。また、前記のようにこの脇ベルト12b、12bが連結される正面部11下側のループ面rがその幅方向全体に設けられているため、脇ベルト12b、12bの圧着位置を自在に調整可能となり、介護者の身体の大きさに拘わらず、誰でもしっかりと装着することができる。
【0018】
図4はこのような構成をした本発明の介助プロテクター100を装着した例を示したものであり、介助者の胸部を中心とした身体の上半身正面のほぼ全体をクッション層20で覆うことができる。このため、図5に示すように介助者が要介護者をトランス介助するために抱きかかえる動作をしても要介護者との間にはこのクッション層20が介在することになるため、介助者の胸部が直に要介護者に触れることがなくなる。これによって、自分の胸部が要介護者の身体に密着することに対する介助者の心理的なストレスや抵抗感が大幅に軽減される。
【0019】
また、このクッション層20は、図6に示すように空気圧で膨張するエアークッション21を縦横に複数(本実施の形態では約40個)配置して構成されている。また、これら各エアークッション21、21…は、図7に示すようにそれぞれ空気通路21a、21a…を介して連通している。さらに、各エアークッション21、21…のいずれか(本実施の形態では図1中下段右端のエアークッション)に手押し式のポンプpと、他のいずれか(本実施の形態では図1中下段左端のエアークッション)にリリース弁vを備えた構成となっている。
【0020】
従って、図7に示すように、この手押し式のポンプpを手で動かすと、外気が手押し式のポンプpがある下段左端のエアークッション21から空気通路21a、21a…を介して次々と隣接する他のエアークッション21、21…に送り込まれて各々膨張してクッション層20を形成し、各々がクッション性能を発揮することになる。しかも、このクッション層20が1つのエアークッションではなく複数のエアークッション21、21…からなることにより、クッション性能がその全体に亘って均質となるだけでなく、その均質なクッション性能を維持しつつクッション層20がいずれの方向にも柔軟に変形できるため、介助者がトランス介助する際の身体の動きを邪魔することがない。
【0021】
一方、リリース弁vを指で摘まむなどして弁を開放すると、各エアークッション21、21…内の空気が空気通路21a、21a…を介してリリース弁vがある下段左端のエアークッション21から外部に流れ出すため、各エアークッション21、21…が萎んで平らに収縮する。これによって、不使用時にはクッション層20を薄くしたり折りたたむことが可能となるため、コンパクトに収納することができる。
【0022】
なお、本実施の形態では、クッション層20を複数のエアークッション21、21…で構成した例で説明したが、このエアークッション21に代えてあるいはこれと共にスポンジや高反発ウレタン、ラテックス、ファイバーなどの従来公知のクッション性能のある材料で構成したものであってもよい。また、プロテクター本体10を構成する正面部11と背面部12の材質も特に限定されるものでなく、布や皮革などの柔軟で介助者の身体にフィットするものであればよいが、なかでもより柔軟、軽量で比較的強度が高いナイロン素材などの合成繊維からなるものを用いることが望ましい。
【符号の説明】
【0023】
10…プロテクター本体
11…正面部
11a、12a…肩ベルト
12…背面部
12b…脇ベルト
20…クッション層
21…エアークッション
21a…空気通路
100…介助プロテクター
f…フック面
p…ポンプ
r…ループ面
v…リリース弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7