(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024056381
(43)【公開日】2024-04-23
(54)【発明の名称】冷却庫の制御方法、冷却庫および冷却庫用制御装置
(51)【国際特許分類】
F25D 16/00 20060101AFI20240416BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20240416BHJP
【FI】
F25D16/00
F25D11/00 101B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022163207
(22)【出願日】2022-10-11
(71)【出願人】
【識別番号】509317531
【氏名又は名称】株式会社MARS Company
(74)【代理人】
【識別番号】100144886
【弁理士】
【氏名又は名称】大坪 賢吾
(72)【発明者】
【氏名】大野 正樹
【テーマコード(参考)】
3L045
【Fターム(参考)】
3L045AA02
3L045BA01
3L045CA02
3L045DA02
3L045EA01
3L045EA02
3L045KA16
3L045LA05
3L045LA15
3L045LA16
3L045MA00
3L045MA13
3L045NA16
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
(57)【要約】
【課題】電力需給ひっ迫状態を改善、解消することのできる冷却庫の制御方法、冷却庫および冷却庫用制御装置を提供すること。
【解決手段】冷却庫の制御方法は、収容物を収容する本体2と、本体2内を冷却する冷却ユニット3と、を備えた冷凍冷蔵庫1の制御方法であって、本体2内に蓄冷剤6を配置し、給電により冷却ユニット3を駆動して本体2内を冷却する通常時モードで駆動しているときに、外部から節電要請信号を受信した場合、冷却ユニット3の駆動を停止し、通常時モードでの駆動により冷却された蓄冷剤6により本体2内を冷却する非常時モードに切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物を収容する冷却庫本体と、前記冷却庫本体内を冷却する冷却ユニットと、を備えた冷却庫の制御方法であって、
前記冷却庫本体内に蓄冷剤を配置し、
給電により前記冷却ユニットを駆動して前記冷却庫本体内を冷却する通常時モードで駆動しているときに、外部から節電要請信号を受信した場合、前記冷却ユニットの駆動を停止し、前記通常時モードでの駆動により冷却された前記蓄冷剤により前記冷却庫本体内を冷却する非常時モードに切り替えることを特徴とする冷却庫の制御方法。
【請求項2】
前記節電要請信号は、電力供給元である管轄者の電気予備率に基づいて発信される請求項1に記載の冷却庫の制御方法。
【請求項3】
前記節電要請信号は、公的機関が発表する電力需給ひっ迫情報に基づいて発信される請求項2に記載の冷却庫の制御方法。
【請求項4】
前記節電要請信号を受信した場合、電力需要のピーク時に合わせて前記通常時モードから前記非常時モードに切り替える請求項1に記載の冷却庫の制御方法。
【請求項5】
前記非常時モードでの駆動が所定時間経過すると、前記非常時モードから前記通常時モードに切り替える請求項1に記載の冷却庫の制御方法。
【請求項6】
前記通常時モードでの駆動が連続して所定時間経過していないときは、前記節電要請信号を受信しても前記非常時モードに切り替えない請求項1に記載の冷却庫の制御方法。
【請求項7】
前記節電要請信号は、インターネットを介して受信する請求項1に記載の冷却庫の制御方法。
【請求項8】
収容物を収容する冷却庫本体と、
前記冷却庫本体内を冷却する冷却ユニットと、
前記冷却ユニットの駆動を制御する制御装置と、
外部との通信を行う通信部と、を有し、
前記冷却庫本体内に蓄冷剤を配置して使用され、
前記制御装置は、給電により前記冷却ユニットを駆動して前記冷却庫本体内を冷却する通常時モードで駆動しているときに、外部から節電要請信号を受信した場合、前記冷却ユニットの駆動を停止し、前記通常時モードでの駆動により冷却された前記蓄冷剤により前記冷却庫本体内を冷却する非常時モードに切り替えることを特徴とする冷却庫。
【請求項9】
庫内に蓄冷剤を配置して使用される冷却庫の駆動を制御する冷却庫用制御装置であって、
給電により前記冷却ユニットを駆動して前記冷却庫本体内を冷却する通常時モードで駆動しているときに、外部から節電要請信号を受信した場合、前記冷却ユニットの駆動を停止し、前記通常時モードでの駆動により冷却された前記蓄冷剤により前記冷却庫本体内を冷却する非常時モードに切り替えることを特徴とする冷却庫用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却庫の制御方法、冷却庫および冷却庫用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品を冷蔵保存する機器として、特許文献1のような冷蔵庫が知られている。特許文献1の冷蔵庫は、外箱と内箱との間に断熱部材が充填されて構成された冷蔵庫本体と、冷蔵庫本体内を冷却する冷却ユニットと、を有する。
【0003】
また、冷却ユニットは、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を有する。圧縮機により圧縮された高温・高圧のガス冷媒は、凝縮器により凝縮され、常温・高圧の液冷媒となる。この液冷媒は、膨張弁により低温・低圧の液冷媒となり、蒸発器に流入する。蒸発器に流入した低温・低圧の液冷媒は、蒸発器において蒸発され、この蒸発時の吸熱作用により冷凍冷蔵庫本体内が冷却される。そして、蒸発器を通過した低温・低圧のガス冷媒は、圧縮機へ戻って再び圧縮される。このようなサイクルを繰り返すことにより、冷凍冷蔵庫本体内が冷却される。
【0004】
なお、上述のようなコンプレッサ方式の冷蔵庫と共に、ペルチェ素子(半導体素子)を用いたペルチェ方式の冷蔵庫についても広く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような冷蔵庫は、給電により冷却ユニットを駆動することにより作動しているため、停電等によって冷蔵庫への給電がストップしてしまうと冷蔵庫内を低温に維持することができず、庫内温度が上昇してしまう。庫内温度が上昇すると庫内の食品が傷んで食することができない状態となり、廃棄せざるを得なくなる。このようなフードロス問題は、近年、世界的な環境問題として問題視されている。
【0007】
ここで、東南アジア地域、アフリカ地域等のインフラ(Infrastructure)が十分に整っていない地域では、停電(計画的な停電、突発的な停電を含む。)が頻繁に発生し、かつ、気温も比較的高い地域が多いため、上述の問題が特に生じ易い。そのため、当該地域では、庫内に蓄冷剤を配置した冷蔵庫(以下、「蓄冷剤搭載型冷蔵庫」とも言う。)の需要が高い。
【0008】
このような冷蔵庫によれば、給電時(非停電時)には冷却ユニットを駆動させて食品と共に蓄冷剤を冷却し、停電時には給電時に冷却しておいた蓄冷剤の冷熱を利用して食品を冷却する。このような冷蔵庫によれば、停電時においても庫内の食品を冷却することができるため、停電から一定時間、好ましくは復電までの間、食品を低温で保存し続けることができる。これにより、停電に起因するフードロスを低減することができる。
【0009】
しかしながら、このような蓄冷剤搭載型冷蔵庫では、給電時に外部からの要請を受けて冷却ユニットの駆動を停止するモードを備えていない。
【0010】
本発明の目的は、電力需給がひっ迫するとき等、外部からの要請を受けて冷却ユニットの駆動を停止するモードを備え、節電に協力することのできる冷却方法および冷却庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
【0012】
(1) 収容物を収容する冷却庫本体と、前記冷却庫本体内を冷却する冷却ユニットと、を備えた冷却庫の制御方法であって、
前記冷却庫本体内に蓄冷剤を配置し、
給電により前記冷却ユニットを駆動して前記冷却庫本体内を冷却する通常時モードで駆動しているときに、外部から節電要請信号を受信した場合、前記冷却ユニットの駆動を停止し、前記通常時モードでの駆動により冷却された前記蓄冷剤により前記冷却庫本体内を冷却する非常時モードに切り替えることを特徴とする冷却庫の制御方法。
【0013】
(2) 前記節電要請信号は、電力供給元である管轄者の電気予備率に基づいて発信される上記(1)に記載の冷却庫の制御方法。
【0014】
(3) 前記節電要請信号は、公的機関が発表する電力需給ひっ迫情報に基づいて発信される上記(2)に記載の冷却庫の制御方法。
【0015】
(4) 前記節電要請信号を受信した場合、電力需要のピーク時に合わせて前記通常時モードから前記非常時モードに切り替える上記(1)に記載の冷却庫の制御方法。
【0016】
(5) 前記非常時モードでの駆動が所定時間経過すると、前記非常時モードから前記通常時モードに切り替える上記(1)に記載の冷却庫の制御方法。
【0017】
(6) 前記通常時モードでの駆動が連続して所定時間経過していないときは、前記節電要請信号を受信しても前記非常時モードに切り替えない上記(1)に記載の冷却庫の制御方法。
【0018】
(7) 前記節電要請信号は、インターネットを介して受信する上記(1)に記載の冷却庫の制御方法。
【0019】
(8) 収容物を収容する冷却庫本体と、
前記冷却庫本体内を冷却する冷却ユニットと、
前記冷却ユニットの駆動を制御する制御装置と、
外部との通信を行う通信部と、を有し、
前記冷却庫本体内に蓄冷剤を配置して使用され、
前記制御装置は、給電により前記冷却ユニットを駆動して前記冷却庫本体内を冷却する通常時モードで駆動しているときに、外部から節電要請信号を受信した場合、前記冷却ユニットの駆動を停止し、前記通常時モードでの駆動により冷却された前記蓄冷剤により前記冷却庫本体内を冷却する非常時モードに切り替えることを特徴とする冷却庫。
【0020】
(9) 庫内に蓄冷剤を配置して使用される冷却庫の駆動を制御する冷却庫用制御装置であって、
給電により前記冷却ユニットを駆動して前記冷却庫本体内を冷却する通常時モードで駆動しているときに、外部から節電要請信号を受信した場合、前記冷却ユニットの駆動を停止し、前記通常時モードでの駆動により冷却された前記蓄冷剤により前記冷却庫本体内を冷却する非常時モードに切り替えることを特徴とする冷却庫用制御装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明の冷却庫の制御方法、冷却庫および冷却庫用制御装置では、それぞれ、給電により冷却ユニットを駆動して冷却庫本体内を冷却する通常時モードで駆動しているときに外部から節電要請信号を受信した場合、冷却ユニットの駆動を停止し、冷却済みの蓄冷剤により冷却庫本体内を冷却する非常時モードに切り替える。
【0022】
このような方法および構成によれば、電力需給がひっ迫した状況では、冷却庫が電力を殆ど消費しない非常時モードで駆動する。これにより、一時的に消費電力を削減することができ、電力需給がひっ迫した状態を改善することができる。そのため、電力需給のひっ迫による停電(計画的な停電、突発的な停電を含む。)の発生を効果的に抑制することができ、生活、経済活動への影響を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態に係る冷凍冷蔵庫を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す冷凍冷蔵庫の貯蔵室内を示す正面図である。
【
図4】制御装置による制御方法を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施形態に係る冷却庫用制御装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の冷却庫の制御方法、冷却庫および冷却庫用制御装置を添付図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0025】
<第1実施形態>
本発明の冷却庫の制御方法、冷却庫および冷却庫用制御装置の説明に先立って、特に日本における電力需給の問題について簡単に説明する。なお、以下の説明は、出願人が調査した結果であるため、実際とは若干異なっている可能性がある。
【0026】
日本では2019年度時点で全体の約76%の電力が環境負荷の大きい火力発電で作られている。しかしながら、電力自由化や脱炭素の流れから火力発電は縮小傾向にあり、それに伴って電力供給量が低下している。これに対して、比較的クリーンな発電である太陽光発電、風力発電等の環境発電(再生可能エネルギー)や原子力発電により電力供給量を補うことが考えられる。
【0027】
原子力発電について言えば、日本国では、2010年度までは原子力発電により全体の約25%の電力が作られていた。しかしながら、2011年3月の東日本大震災に伴う福島原子力発電所の事故後、各地の原子力発電所は、安全対策を強化するためにすべての運転を停止した。そして、その後、新しい規制基準の審査に時間を要し、2022年2月の時点では、当該審査に合格しているのは10基のみである。さらに、そのうち定期検査や、テロ対策施設の工事が遅れているといった理由で停止しているものが多く、現在運転しているのは西日本にある4基に留まる。したがって、原子力発電により電力供給量を補うことは困難である。
【0028】
一方、太陽光発電、風力発電等の環境発電について言えば、近年では全体の約18%の電力が環境発電で作られており、今後も増加する見込みであるため、電力供給量を補う発電として期待されている。しかしながら、環境発電の発電量は、その時の環境に大きく左右されるため、最大需要時つまり電力が最も必要な時に十分な量の発電を行っている保証はない。したがって、環境発電により電力供給量を補うことも困難である。
【0029】
このような電力不足の問題に加えて、日本では、真夏日(最高気温が30℃以上を記録した日)および猛暑日(最高気温が35℃以上を記録した日)の日数が年々増加傾向にある。また、最高気温も上昇傾向にあり、近年では最高気温が40℃を超える地域も珍しくない。このような現象は、自然変動、都市化(ヒートアイランド現象)、地球温暖化等が原因であると考えられている。そして、真夏日や猛暑日の増加、最高気温の上昇等により、夏季(7月~9月)の冷房(エアコンディショナ)の稼働率および負荷が高まり、これが電力需要を大きく上昇させる要因となっている。出願人の調べでは、夏季における各家庭の主な電化製品の消費電力割合は、冷房が約35%であった。
【0030】
以上のように、日本においては、電力供給量を容易に増やすことができない状況のところに温暖化による夏季の冷房の稼働率の上昇および可動負荷の増大の影響を受け、電力需給がひっ迫する状況が生じ易くなっている。電力需給がひっ迫すると、突発的な停電が生じたり、計画的な停電(計画停電)が行われたりし、管轄内の人々の生活、経済活動等に著しい支障を来すことになる。
【0031】
そこで、本願出願人は、電力需給ひっ迫状態(電力需給がひっ迫した状態)となった場合に駆動が停止し、最大需要時の消費電力を削減することのできる冷却庫である冷凍冷蔵庫を発明した。後述するように、この冷凍冷蔵庫は、駆動を停止しても電力を使わずに庫内を一定時間低温に維持する機能が搭載されており、庫内の食品を一定時間低温で保存し続けることができる。各家庭における冷凍冷蔵庫の消費電力割合は、約18%であり、冷房の約35%に次いで2番目に高い割合を有する。そのため、冷凍冷蔵庫を停止し、冷凍冷蔵庫の消費電力を削減することができれば、単純に約18%の節電となり、最大需要時の消費電力を効果的に削減することができる。
【0032】
なお、上述のデータから最大需要時の消費電力を削減するには冷房の駆動を停止することが最も効果的であると考えられるが、冷房の駆動停止は、身体に大きな負担がかかるため現実的ではない。また、照明、給湯、炊事、洗濯機、テレビ等の不使用では、節電効果が小さいし、生活に支障を来してしまう。このようなことから、冷凍冷蔵庫を用いた節電が節電効果と生活支障とのバランスに最も優れていると考えられる。
【0033】
以下、本発明の冷却庫としての冷凍冷蔵庫1について説明する。冷凍冷蔵庫1は、電力供給ひっ迫状態において優れた節電効果を発揮することができ、最大需要時の消費電力を効果的に削減することができる。そのため、電力供給ひっ迫状態の改善、解消を図ることができる。また、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の取り組みとしても非常に有効である。具体的には、SDGsの7番目(エネルギー)、13番目(気候変動)、15番目(陸上資源)に対する取り組みとして非常に有効である。
【0034】
冷凍冷蔵庫1は、
図1ないし
図3に示すように、本体2(冷却庫本体)と、本体2内を冷却する冷却ユニット3と、本体2内に配置された蓄冷剤6と、冷却ユニット3の駆動を制御する制御装置4と、外部との通信を行う通信装置5と、を有する。これらのうち、主要部である本体2および冷却ユニット3については従来の構成と同様である。
【0035】
本体2は、外箱と内箱との間に断熱部材が充填されて構成されており、収容物を収容するための複数の貯蔵室Rが区画形成されている。本実施形態では、貯蔵室Rとして、冷蔵室R1、野菜室R2、製氷室R3および冷凍室R4が設けられている。また、各貯蔵室Rは、前面に開口し、この開口には扉が設けられている。そのため、扉を開閉することにより、貯蔵室Rを開閉することができる。なお、各貯蔵室Rに収容される収容物は、特に限定されないが、以下では、説明の便宜上、食品とする。
【0036】
また、冷却ユニット3は、圧縮機、凝縮器、膨張弁および蒸発器を有する。圧縮機により圧縮された高温・高圧のガス冷媒は、凝縮器により凝縮され、常温・高圧の液冷媒となる。この液冷媒は、膨張弁により低温・低圧の液冷媒となり、蒸発器に流入する。蒸発器に流入した低温・低圧の液冷媒は、蒸発器において蒸発され、この蒸発時の吸熱作用により各貯蔵室R内が冷却される。そして、蒸発器を通過した低温・低圧のガス冷媒は、圧縮機へ戻って再び圧縮される。
【0037】
ただし、冷却ユニット3の構成は、各貯蔵室R内を冷却することができれば、特に限定されない。例えば、本実施形態のようなコンプレッサ方式ではなく、ペルチェ素子(半導体素子)を用いたペルチェ素子方式であってもよい。
【0038】
なお、以下では、冷却ユニット3の駆動によって各貯蔵室Rを冷却するモードを「通常時モード」とも言い、冷却ユニット3の駆動を停止し、各貯蔵室R内に配置された蓄冷剤6の冷熱を用いて各貯蔵室Rを冷却するモードを「非常時モード」とも言う。
【0039】
蓄冷剤6は、その冷熱を利用して、非常時モードのときの各貯蔵室R内の温度上昇を抑制する。なお、本願明細書では、説明の便宜上、この作用を「冷却する」と言う。蓄冷剤6としては、特に限定されず、硬質な容器に充填されたハードタイプの蓄冷剤、軟質な容器に充填されたソフトタイプの蓄冷剤等、公知の蓄冷剤を用いることができる。また、蓄冷剤6は、本体2と別体で設けられていてもよい。この場合、各貯蔵室Rに蓄冷剤6を配置する箇所が予め設けられていてもよい。そのような箇所がない場合は、各貯蔵室Rの任意の箇所に自由に配置してもよい。また、蓄冷剤6は、本体2と一体で設けられていてもよい。この場合、例えば、容器を貯蔵室Rの壁、床、天井等と一体形成すればよい。
【0040】
蓄冷剤6は、配置された貯蔵室R内で凍結するものが用いられる。つまり、冷蔵室R1の温度は、一般的に2℃~6℃程度であり、冷蔵室R1に配置する蓄冷剤6は、上記の温度帯で凍結する。また、野菜室R2の温度は、一般的に3℃~8℃程度であり、野菜室R2に配置する蓄冷剤6は、上記の温度帯で凍結する。製氷室R3および冷凍室R4の温度は、一般的に-20℃~-18℃程度であり、製氷室R3および冷凍室R4に配置する蓄冷剤6は、上記の温度帯で凍結する。例えば、冷蔵室R1および野菜室R2には、5℃程度で凍り10℃程度で解ける蓄冷剤6が配置され、製氷室R3および冷凍室R4には、-18℃程度で凍り-15℃程度で解ける蓄冷剤6が配置されている。ただし、蓄冷剤6の特性は、特に限定されない。
【0041】
このように、蓄冷剤6を凍結させることにより、融解熱(潜熱)によって、より長い間、各貯蔵室R内の温度上昇を抑制することができる。つまり、蓄冷剤6が完全に融解するまでは、蓄冷剤6の温度が融点に維持されるため、より長い間、各貯蔵室R内の温度上昇を抑制することができる。
【0042】
通信装置4は、インターネットIに接続されており、インターネットIを介して外部から送信された節電要請信号を受信する。なお、節電要請信号の受信方法としては、特に限定されず、公知の技術を用いることができる。例えば、通信装置4が定期的にサーバーにアクセスすることにより、管轄者が送信した節電要請信号を取得することができる。
【0043】
制御装置4は、例えば、コンピューターから構成されており、情報を処理するプロセッサー(CPU)と、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部装置との接続を行う外部インターフェースと、を有する。メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶されたプログラム等を読み込んで実行することができる。
【0044】
以上、冷凍冷蔵庫1の構成について説明した。次に、
図4に示すフローチャートに基づいて、制御装置4による冷凍冷蔵庫1の制御方法について説明する。以下では、説明の便宜上、冷凍冷蔵庫1に電力を供給する電力供給元である管轄者としての電力会社をA電力として説明する。
【0045】
前述したように、冷凍冷蔵庫1には駆動モードとして、冷却ユニット3の駆動によって各貯蔵室Rを冷却する通常時モードと、冷却ユニット3の駆動を停止し蓄冷剤6の冷熱を用いて各貯蔵室Rを冷却する非常時モードと、が設定されている。制御装置4は、節電要請信号の受信の有無に基づいて通常時モードと非常時モードとを切り替える。
【0046】
通信装置4が節電要請信号を受信しない場合、制御装置4は、冷凍冷蔵庫1を通常時モードで駆動する。つまり、A電力から供給される電力を用いて冷却ユニット3を駆動することにより、各貯蔵室R内を冷却する。これにより、各貯蔵室R内に収容された食品が冷却され、冷蔵状態または冷凍状態が維持される。各貯蔵室R内に収容された蓄冷剤6は、この通常時モードのときに冷却されて凍結する。
【0047】
このような通常時モードで冷凍冷蔵庫1が駆動している際に、通信装置4が節電要請信号を受信すると、制御装置4は、冷凍冷蔵庫1の駆動モードを通常時モードから非常時モードに切り替える。つまり、冷却ユニット3の駆動を停止して、凍結させておいた蓄冷剤6の冷熱を利用して各貯蔵室R内を冷却する。このように、冷却ユニット3の駆動を停止することにより、一時的に冷凍冷蔵庫1の消費電力を大きく下げることができる。この間、蓄冷剤6によって各貯蔵室R内が冷却されるため、各貯蔵室R内の食品の劣化を効果的に抑制することができる。
【0048】
ここで、外部からの節電要請信号としては、特に限定されない。本実施形態では、節電要請信号は、電力供給元であるA電力の電気予備率に基づいて発信される信号である。節電要請信号をA電力の電気予備率に基づいて発信することにより、冷凍冷蔵庫1(冷凍冷蔵庫1のユーザー)に対して必要な場合にのみ節電を要請することができる。言い換えると、冷凍冷蔵庫1(冷凍冷蔵庫1のユーザー)に対して過度な節電を要請してしまうことを防止することができる。現在の日本において、公的機関としての経済産業省は、A電力管内の電力需給のひっ迫を知らせる情報として、電力需給ひっ迫準備情報、電力需給ひっ迫注意報、電力需給ひっ迫警報の3つを発令する。
【0049】
電力需給ひっ迫準備情報は、供給予備率が5%を下回ると予想される日の前々日の18時を目途に発信される。また、電力需給ひっ迫注意報は、供給予備率が3%~5%となると予想される日の前日の16時を目途に発信される。また、電力需給ひっ迫警報は、供給予備率が3%以下となると予想される日の前日の16時を目途に発信される。なお、以下では、説明の便宜上、これら3つの情報を総称して「電力需給ひっ迫情報」とも言う。また、電力需給ひっ迫すると予想される日を「電力需給ひっ迫日」とも言う。
【0050】
節電要請信号は、発令された電力需給ひっ迫情報で予想された電力需給ひっ迫日に関する情報を含む。より好ましくは、節電要請信号は、さらに、電力需要のピーク時間帯(最大需要時)に関する情報を含む。このように、節電要請信号を公的機関が発令する電力需給ひっ迫情報に基づいた信号とすることにより、冷凍冷蔵庫1(冷凍冷蔵庫1のユーザー)に対して、より精度および信ぴょう性の高い節電要請を行うことができる。なお、節電要請信号を冷凍冷蔵庫1に送信する者は、特に限定されず、例えば、経済産業省等の公的機関、A電力、冷凍冷蔵庫1の製造メーカ、冷凍冷蔵庫1のメンテナンスメーカ、あるいはこれらの下請け会社等が挙げられる。
【0051】
制御装置4は、節電要請信号を受信した場合、電力需給ひっ迫日の最大需要時に合わせて通常時モードから非常時モードに切り替える。これにより、より効果的に最大需要時の消費電力を削減することができる。そのため、電力需給ひっ迫状態の改善、解消を図ることができる。
【0052】
なお、制御装置4は、節電要請信号に最大需要時に関する情報が含まれている場合にはその情報に基づいて最大需要時を判断し、最大需要時の少なくとも一部において非常時モードとなるように冷凍冷蔵庫1の駆動を制御する。例えば、最大需要時が14時から15時であれば、14時から15時の少なくとも一部において非常時モードとなるように冷凍冷蔵庫1の駆動を制御する。一方、節電要請信号に最大需要時に関する情報が含まれていない場合には、予め設定された予想最大需要時に基づいて冷凍冷蔵庫1の駆動を制御する。例えば、予想最大需要時が12時から17時に設定されている場合には、12時から17時の少なくとも一部において非常時モードとなるように冷凍冷蔵庫1の駆動を制御する。
図4に示すように、本実施形態では、最大需要時(予想最大需要時)の到達とともに非常時モードに切り替える。
【0053】
ここで、
図5に示すように、A電力の管内に複数の冷凍冷蔵庫1が設置されている場合、これらを複数のグループに分け、グループ毎に非常時モードに切り替える時刻をずらしてもよい。図示の例では、複数の冷凍冷蔵庫1を3つのグループGa、Gb、Gcに分け、グループGaに属する冷凍冷蔵庫1については節電要請信号に含める最大需要時を12時に設定し、グループGbに属する冷凍冷蔵庫1については節電要請信号に含める最大需要時を14時に設定し、グループGcに属する冷凍冷蔵庫1については節電要請信号に含める最大需要時を16時に設定してもよい。このように、複数の冷凍冷蔵庫1で、非常時モードに切り替える時刻をずらすことで、最大需要時が不明であったり、予想とずれてしまったりした場合でも、より確実に、最大需要時の消費電力を削減することができる。
【0054】
また、制御装置4は、非常時モードでの駆動が連続して所定時間T1を経過すると、非常時モードから通常時モードに切り替える。前述したように、非常時モードでは、蓄冷剤6の冷熱を利用して各貯蔵室R内を冷却するため、蓄冷剤6が融解してしまうと、各貯蔵室R内を冷却することができず、各貯蔵室R内の温度が徐々に上昇する。そのため、非常時モードでの駆動を長時間続けると、貯蔵室R内の食品が劣化するおそれが高まる。したがって、非常時モードでの駆動が連続して所定時間を経過した場合に非常時モードから通常時モードに切り替えることにより、各貯蔵室R内の温度上昇を効果的に抑制することができる。
【0055】
なお、所定時間T1としては、特に限定されず、蓄冷剤6の容量、各貯蔵室Rに収容された食品の量等によっても異なるが、例えば、1時間以上3時間以内程度であることが好ましい。このような制御方法によれば、食品の劣化をより確実に防止しつつ、最大需要時における消費電力の削減を図ることができる。
【0056】
なお、制御装置4は、上述した所定時間T1ではなく、各貯蔵室Rの温度に基づいて非常時モードから通常時モードに切り替えてもよい。例えば、各貯蔵室Rの温度を検出する温度センサを設け、非常時モードでの駆動中、温度センサの検出温度が所定温度以上となった場合に非常時モードから通常時モードに切り替えてもよい。具体的には、例えば、所定温度として、冷蔵室R1および野菜室R2で10℃、製氷室R3および冷凍室R4で-15℃とし、これらのうちの少なくとも1つの貯蔵室Rの温度が所定温度以上となった場合に非常時モードから通常時モードに切り替えてもよい。このような制御方法によっても、食品の劣化をより確実に防止しつつ、最大需要時における消費電力の削減を図ることができる。
【0057】
ここで、制御装置4は、現在の通常時モードでの駆動が連続して所定時間T2経過していないときは、通信装置5が節電要請信号を受信しても非常時モードに切り替えない。言い換えると、制御装置4は、各貯蔵室Rの蓄冷剤6が凍結するまでは、節電要請信号を受信しても非常時モードに切り替えない。これにより、蓄冷剤6が未凍結状態のまま非常時モードに切り替わることを防止することができる。そのため、非常時モードにおいて、より確実に各貯蔵室R内の冷却を行うことができる。なお、所定時間T2は、蓄冷剤6の凍結に要する時間に応じて適宜設定されるが、例えば、5時間~10時間程度とすることができる。
【0058】
<第2実施形態>
図6に示すように、第2実施形態では、前述した第1実施形態では冷凍冷蔵庫1に内蔵されていた制御装置4および通信装置5が冷却庫用制御装置7として冷凍冷蔵庫1と別体で構成されている。そして、冷蔵庫1は、冷却庫用制御装置7を介して電源(コンセント)に接続されている。このような構成によれば、前述した第1実施形態の制御方法を行うことができない冷蔵庫1についても、その冷蔵庫1に冷却庫用制御装置7を接続するだけで、前述した第1実施形態の制御を行うことができる。
【0059】
このような第2実施形態によっても前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0060】
以上、本発明の冷却庫の制御方法、冷却庫および冷却庫用制御装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0061】
例えば、上述した実施形態では、冷却庫を冷凍冷蔵庫1に適用した構成について説明したが、これに限定されず、対象物を冷却することを目的とする如何なる機器に適用することができる。例えば、冷却庫は、貯蔵室Rとして冷蔵室R1を備えた冷蔵庫であってもよいし、貯蔵室Rとして冷凍庫R4を備えた冷凍庫であってもよい。また、冷却庫は、例えば、ワインセラー、薬品の保管庫等であってもよい。また、冷却庫は、家庭用、業務用を問わない。
【符号の説明】
【0062】
1…冷凍冷蔵庫、2…本体、3…冷却ユニット、4…制御装置、5…通信装置、6…蓄冷剤、7…冷却庫用制御装置、Ga…グループ、Gb…グループ、Gc…グループ、I…インターネット、R…貯蔵室、R1…冷蔵室、R2…野菜室、R3…製氷室、R4…冷凍室、T1…所定時間、T2…所定時間